説明

リジェネバーナシステム

【課題】被加熱物を局所的に加熱してしまうことを防止できると共に、コンパクトな加熱炉に使用できるリジェネバーナシステムを提供すること。
【解決手段】バーナ3は、燃料ガスFを噴出させるガスノズル41と、燃焼用空気Aを噴出させる燃焼用空気ノズル51とを有しており、ガスノズル41と燃焼用空気ノズル51とを加熱炉1の内壁11から環状燃焼空間13に突出させている。ガスノズル41は、燃焼用空気ノズル51よりも被加熱物2に近い位置に配設してあり、燃料ガスFの噴出方向を燃焼用空気Aの噴出方向に交錯させるよう構成してある。リジェネバーナシステム10は、燃料ガスFを内壁11に向けて噴出させることにより、燃料ガスFと燃焼用空気Aとの燃焼による火炎Mを、被加熱物2に接触させることなく内壁11に沿って円弧状に形成するよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナによる燃焼と排気とを交互に行うよう構成したリジェネバーナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一対のバーナを用いて燃焼と排気とを交互に行い、被加熱物を加熱するよう構成されたリジェネバーナシステムは、種々の加熱炉に使用されている。そして、リジェネバーナシステムを用いて、熱処理を行う焼鈍炉を形成したものとしては、特許文献1に示すものがある。
この焼鈍炉においては、焼鈍炉における内壁の下部の円周方向に互いに180°ずれた対称位置にそれぞれバーナを配設し、各バーナより交互に燃焼を行って上記被加熱物の加熱を行う。
【0003】
しかしながら、上記従来のリジェネバーナシステムにおいては、上記被加熱物にバーナの燃焼による火炎が接触することにより起こる影響については、十分な考慮がなされていない。すなわち、被加熱物に火炎が直接接触すると、この接触部分が局所的に激しく加熱されてしまう。そのため、上記従来のリジェネバーナシステムは、火炎が接触すると不都合を生じる被加熱物を加熱するために用いる場合には適していない。
【0004】
また、限られたスペースに上記加熱炉を設置しようとする場合、上記加熱炉を小さくする必要がある。しかし、上記被加熱物の大きさは維持したまま上記加熱炉を小さくするためには、上記バーナによる燃焼ガスを通過させる上記内壁と被加熱物との間の空間を狭くする必要が生じる。そのため、上記燃焼による火炎が上記被加熱物に一層接触し易くなってしまう。
【0005】
【特許文献1】特開平9−170032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、被加熱物を局所的に加熱してしまうことを防止できると共に、コンパクトな加熱炉に使用することができるリジェネバーナシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、複数のバーナを有し、各バーナによる燃焼と排気とを交互に行うよう構成したリジェネバーナシステムにおいて、
上記各バーナは、加熱炉内に配置した被加熱物を加熱するよう構成されていると共に、上記加熱炉の内壁と上記被加熱物との間に形成された燃焼空間に向けて火炎を発生させるよう構成されており、
かつ上記各バーナは、燃料ガスを噴出させるガスノズルと、燃焼用空気を噴出させる燃焼用空気ノズルとを有していると共に、上記ガスノズルと上記燃焼用空気ノズルとを上記内壁から上記環状燃焼空間に向けて配設してなり、
上記ガスノズルは、上記燃焼用空気ノズルよりも上記被加熱物に近い位置に配設すると共に、上記燃料ガスの噴出方向を上記燃焼用空気の噴出方向に交錯させるよう配設してあり、
上記燃料ガスを上記内壁に向けて噴出させることにより、上記燃料ガスと上記燃焼用空気との燃焼による火炎を、上記被加熱物に接触させることなく形成するよう構成してあることを特徴とするリジェネバーナシステムにある(請求項1)。
【0008】
本発明のリジェネバーナシステムは、上記バーナにおけるガスノズル及び燃焼用空気ノズルを、上記内壁から上記燃焼空間に向けて配設してなり、ガスノズルを、燃焼用空気ノズルよりも上記被加熱物に近い位置に配設してなる。また、ガスノズルは、燃料ガスの噴出方向を燃焼用空気の噴出方向に交錯させるよう配設されている。
上記リジェネバーナシステムを動作させるときには、燃焼用空気ノズルより噴出させた燃焼用空気と、ガスノズルより噴出させた燃料ガスとを加熱炉内において燃焼させ、この燃焼によって生じた燃焼ガスにより被加熱物を加熱する。
【0009】
そして、この加熱の際には、燃料ガスを内壁の方向に向けて噴射させる。これにより、燃料ガスと燃焼用空気との燃焼による火炎は、内壁に沿って形成され、上記被加熱物との接触が避けられる。
そのため、上記リジェネバーナシステムによれば、被加熱物の一部を火炎により局所的に加熱してしまうことがなく、この局所的な加熱により被加熱物が悪影響を受けることを防止することができる。
【0010】
また、上記燃焼による火炎は、上記内壁に沿って形成されることにより、被加熱物より離れた方向に向けられる。そのため、リジェネバーナシステムは、被加熱物と内壁との間の距離が小さくなるよう狭く形成した上記燃焼空間を有する加熱炉に対して使用した場合でも、火炎が被加熱物に接触することを防止することができる。
【0011】
それ故、本発明のリジェネバーナシステムは、被加熱物を局所的に加熱してしまうことを防止できると共に、コンパクトな加熱炉に使用することができる。そして、本発明のリジェネバーナシステムは、設置スペースが限られている状況下で用いる加熱炉に対しても、使用が可能となる。
また、上記のごとく、リジェネバーナシステムを燃焼空間が狭い加熱炉に使用することにより、上記バーナによる燃焼ガスを充満させる空間の体積が小さくなる。そのため、本発明のリジェネバーナシステムによれば、加熱炉の熱効率を向上させることもできる。
【0012】
第2の発明は、複数のバーナを有し、各バーナによる燃焼と排気とを交互に行うよう構成したリジェネバーナシステムにおいて、
上記各バーナは、加熱炉内に配置した被加熱物を加熱するよう構成されていると共に、上記加熱炉の内壁と上記被加熱物との間に形成された燃焼空間に向けて火炎を発生させるよう構成されており、
かつ上記各バーナは、燃料ガスを噴出させるガスノズルと、燃焼用空気を噴出させる燃焼用空気ノズルとを有していると共に、上記ガスノズルと上記燃焼用空気ノズルとを上記内壁から上記燃焼空間に向けて配設してなり、
上記ガスノズルと上記燃焼用空気ノズルとは、上記燃料ガスの噴出方向と上記燃焼用空気の噴出方向とを互いに交錯させるよう配設してあり、
上記ガスノズルの先端部の外周には、該先端部よりも突出すると共に上記燃焼用空気ノズルの先端部よりも突出した隔壁が形成されていることを特徴とするリジェネバーナシステムにある(請求項2)。
【0013】
本発明のリジェネバーナシステムは、上記バーナにおけるガスノズル及び燃焼用空気ノズルを、燃料ガスの噴出方向と燃焼用空気の噴出方向とが互いに交錯するよう上記内壁から上記燃焼空間に向けて配設してなる。
そして、リジェネバーナシステムを動作させ、被加熱物を加熱する際には、燃料ガス又は燃焼用空気の少なくともいずれかを内壁の方向に向けて噴射させる。これにより、燃料ガスと燃焼用空気との燃焼による火炎は、内壁に沿って形成され、上記被加熱物との接触が避けられる。
【0014】
そのため、本発明のリジェネバーナシステムにおいても、被加熱物の一部を火炎により局所的に加熱してしまうことがなく、この局所的な加熱により被加熱物が悪影響を受けることを防止することができる。また、本発明のリジェネバーナシステムもまた、上記発明と同様に、被加熱物を局所的に加熱してしまうことを防止できると共に、コンパクトな加熱炉に使用することができ、加熱炉の熱効率を向上させることもできる。
【0015】
さらに、本発明においては、ガスノズルの先端部の外周には、この先端部よりも突出すると共に燃焼用空気ノズルの先端部よりも突出した隔壁が形成されている。
そして、いずれかのバーナにおいて燃焼を行い、他方のバーナにおいて排気を行うと共に上記火炎をパイロット火炎として形成するときには、上記隔壁により、他方のバーナにおいてパイロット火炎を形成するためにガスノズルから噴出された燃料ガスが、他方のバーナにおける燃焼用空気ノズルに排気される排気ガスと共に排気されてしまうことを防止することができる。そのため、上記隔壁により、パイロット火炎を形成するための燃料ガスが燃焼を行わずに直接排出されてしまうことを防止することができる。
それ故、本発明においては、パイロット火炎を安定して形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上述した第1、第2の発明における好ましい実施の形態につき説明する。
上記第1、第2の発明において、上記リジェネバーナシステムは、例えば、筒状の内壁の略軸中心部に被加熱物を配置してなる加熱炉に使用することができる。そして、リジェネバーナシステムは、上記燃料ガスと上記燃焼用空気との燃焼による火炎を、上記被加熱物に接触させることなく上記内壁に沿って円弧状に形成するよう構成することができる。
【0017】
また、上記第2の発明において、上記隔壁は、ガスノズルの先端部の全外周に形成することができ、また、ガスノズルの先端部の外周の一部に形成することもできる。
また、上記第2の発明においては、上記ガスノズルを、上記燃焼用空気ノズルよりも上記被加熱物に近い位置に配設し、燃料ガスを内壁に向けて噴出させると共に燃料ガスの噴出方向を燃焼用空気の噴出方向に交錯させるよう構成することができる。また、燃焼用空気ノズルを、ガスノズルよりも被加熱物に近い位置に配設し、燃焼用空気を内壁に向けて噴出させると共に燃焼用空気の噴出方向を燃料ガスの噴出方向に交錯させるよう構成することもできる。
【0018】
また、上記第2の発明において、上記隔壁は、円筒形状を有しており、上記ガスノズルの先端部の全外周を覆っていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記火炎の保炎を一層効果的に行うことができる。
【0019】
また、上記第1、第2の発明において、上記ガスノズルは、燃料ガスを通過させるストレートパイプの先端部において、該ストレートパイプの軸方向に傾斜して形成したガス噴出口を有していることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記バーナの構造が簡単であり、上記リジェネバーナシステムをコンパクトに形成することができる。
【0020】
また、上記燃焼用空気ノズルは、該燃焼用空気ノズルが上記ガスノズルと並ぶ並設方向と直交する方向に長い縦長形状の空気噴出口を有していることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記燃料ガスと燃焼用空気との燃焼による火炎を、上記並設方向と直交する方向に長い縦長形状に形成することができ、上記被加熱物との接触を避けて形成することが一層容易になる。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明のリジェネバーナシステムにかかる実施例につき、図面と共に説明する。
本例のリジェネバーナシステム10は、図1、図2に示すごとく、複数のバーナ3を有し、各バーナ3による燃焼と排気とを交互に行うよう構成されている。各バーナ3は、加熱炉1内に配置した被加熱物2を加熱するよう構成されていると共に、加熱炉1の内壁11と被加熱物2との間に形成された環状燃焼空間13に向けて火炎Mを発生させるよう構成されている。
【0022】
上記各バーナ3は、燃料ガスFを噴出させるガスノズル41と、燃焼用空気Aを噴出させる燃焼用空気ノズル51とを有していると共に、上記ガスノズル41と上記燃焼用空気ノズル51とを上記内壁11から上記環状燃焼空間13に向けて配設させてなる。また、本例のガスノズル41及び燃焼用空気ノズル51は、内壁11から環状燃焼空間13に向けて突出した位置に配設されている。
【0023】
上記ガスノズル41と燃焼用空気ノズル51とは、燃料ガスFの噴出方向と燃焼用空気Aの噴出方向とを互いに交錯させるよう配設してある。また、ガスノズル41は、燃焼用空気ノズル51よりも被加熱物2に近い位置に配設してあり、ガスノズル41におけるガス噴出口411が燃焼用空気ノズル51に向けて傾斜形成してあることにより、燃料ガスFの噴出方向を燃焼用空気Aの噴出方向に交錯させる。
【0024】
そして、図1、図2に示すごとく、上記加熱炉1は、燃料ガスFを内壁11に向けて噴出させることにより、燃料ガスFと燃焼用空気Aとの燃焼による火炎Mを、被加熱物2に接触させることなく内壁11に沿って円弧状に形成するよう構成してある。
また、図3に示すごとく、上記ガスノズル41の先端部46の外周には、この先端部46よりも突出すると共に燃焼用空気ノズル51の先端部56よりも突出した隔壁32が形成されている。
以下に、これを詳説する。
【0025】
図1、図2に示すごとく、本例のリジェネバーナシステム10を配設した加熱炉1は、略円形断面形状を有する環状の内壁11を有しており、上記被加熱物2は略円形断面形状を有している。そして、上記環状燃焼空間13は、略円環断面形状に形成されており、被加熱物2の全周において、内壁11と被加熱物2との間に略一定の幅の隙間を形成している。
【0026】
また、本例のリジェネバーナシステム10は、2つのバーナ3を有しており、各バーナ3には、燃焼用空気Aを燃焼用空気ノズル51に導く燃焼用空気通路5が形成されており、この燃焼用空気通路5には、熱量を蓄えるための蓄熱体52が配置されている。
また、各バーナ3における燃焼用空気ノズル51は、各バーナ3における燃焼後に上記環状燃焼空間13を進んだ燃焼ガスG1の流れ方向に対して互いに対向するよう配設してある。
【0027】
また、図3に示すごとく、各ガスノズル41は、上記各バーナ3の内部に設けたストレートパイプ(直管)としてのガス管4の先端部46に形成されている。そして、ガスノズル41は、ガス管4の軸方向に対して傾斜形成したガス噴出口411を有している。
また、各燃焼用空気ノズル51は、各バーナ3の内部に設けた燃焼用空気通路5の先端部に形成されている。各燃焼用空気ノズル51は、図4に示すごとく、この燃焼用空気ノズル51がガスノズル41と並ぶ並設方向Xと直交する方向Yに長い縦長形状の空気噴出口511を有している。
また、各バーナ3において、各ガス管4と各燃焼用空気通路5とは別々に配設してあり、各バーナ3は、各燃焼用空気ノズル51に対して上記被加熱物2に近い側に各ガスノズル41が位置するよう上記加熱炉1に配設してある。
【0028】
図3、図4に示すごとく、各バーナ3は、セラミックス等の耐火材料からなる耐火ボディ31内に、ガス管4及び燃焼用空気通路5を配設してなる。また、各ガス管4及び各燃焼用空気通路5は、耐火ボディ31内において互いに略平行に配設されている。
また、本例の各燃焼用空気ノズル51は、各燃焼用空気通路5の先端部における通路断面積を傾斜状に絞ることによって形成されている。そして、各燃焼用空気ノズル51は、各燃焼用空気通路5に略平行な方向に燃焼用空気Aを噴出させるよう構成されている。
一方、各ガスノズル41のガス噴出口411は、燃焼用空気Aの噴出方向に交錯する方向に向けて傾斜形成されている。そして、各ガスノズル41は、燃焼用空気Aの噴出方向に対して交錯する方向に燃料ガスFを噴出させるよう構成されている。
【0029】
また、図4に示すごとく、本例の各ガスノズル41は、各燃焼用空気ノズル51に隣接して各バーナ3における1箇所に形成されており、各燃焼用空気ノズル51の上下方向における略中央部分に隣接して形成されている。これに対し、各ガスノズル41は、各バーナ3において複数箇所に形成することもでき、例えば、図5に示すごとく、縦長形状の燃焼用空気ノズル51の縦長方向に沿って並ぶ2箇所に形成することもできる。
【0030】
また、図1、図2に示すごとく、各バーナ3の燃焼用空気通路5には、それぞれ3方弁54が接続されており、各燃焼用空気通路5は、各3方弁54の切換動作によって燃焼用空気Aの供給通路55に接続されるか、又は排気ガスG2の排気通路56に接続されるよう構成されている。なお、図示は省略するが、各3方弁54の代わりに、4方弁を用いることもできる。
【0031】
図3に示すごとく、上記ガス管4は、燃焼用空気Aが流れる空気パイプ43と、この空気パイプ43内に挿通され、燃料ガスFと燃焼用空気AとのパイロットガスF1が流れるパイロットパイプ44と、このパイロットパイプ44内に挿通され、燃料ガスFが流れるガスパイプ45とを有する3重管構造を有している。
本例のガスノズル41は、ガスパイプ45の先端に配設されており、本例のパイロットノズル42は、空気パイプ43の先端に形成されている。
【0032】
また、パイロットパイプ44の先端は閉塞されており、パイロットパイプ44の外周には、パイロットガスF1を空気パイプ43内を流れる燃焼用空気Aに混合させるためのパイロット噴出口441が形成されている。そして、本例では、パイロットガスF1と燃焼用空気Aとの混合気がパイロット混合気F2となり、このパイロット混合気F2は、空気パイプ43の先端に形成されたパイロットノズル42から噴出される。
【0033】
そして、ガスノズル41から噴出された燃料ガスFは、燃焼用空気ノズル51から噴出された燃焼用空気Aと混合燃焼してメイン火炎Mを形成し、パイロットノズル42から噴出されたパイロット混合気F2は、燃焼してガスノズル41の外周側にパイロット火炎Pを形成する。このパイロット火炎Pは、ガスノズル41から噴出された燃料ガスFと燃焼用空気ノズル51から噴出された燃焼用空気Aとの混合気に着火させるために用いることができる。
【0034】
図3に示すごとく、本例の隔壁32は、円筒形状を有しており、この隔壁は、ガスノズル41の先端部46の全外周を覆っている。また、隔壁32は、上記耐火ボディ31の一部を突出させることによって形成されている。そして、隔壁32は、パイロットノズル42から形成されたパイロット火炎Pの一部を覆うことができ、パイロットノズル42から形成したパイロット火炎Pの保炎を効果的に行うことができる。
【0035】
以下に、上記加熱炉1に配設したリジェネバーナシステム10における燃焼動作につき説明すると共にこのリジェネバーナシステム10による作用効果につき説明する。
なお、以下の第1ガス管4A、第1ガスノズル41A、第1燃焼用空気通路5A、第1燃焼用空気ノズル51A及び第1蓄熱体52Aは、第1バーナ3A内に形成されているもののことをいい、第2ガス管4B、第2ガスノズル41B、第2燃焼用空気通路5B、第2燃焼用空気ノズル51B及び第2蓄熱体52Bは、第2バーナ3B内に形成されているもののことをいう。
【0036】
図1に示すごとく、第1バーナ3Aにおいて燃焼を行う際には、第1ガス管4Aに燃料ガスFを流入させると共に第1燃焼用空気通路5Aに燃焼用空気Aを流入させる。また、第1バーナ3Aにおいて燃焼を行う際には、第1バーナ3A及び第2バーナ3Bに設けた3方弁54の切換動作により、第1バーナ3Aの第1燃焼用空気通路5Aは燃焼用空気Aの供給通路55に接続され、第2バーナ3Bの第2燃焼用空気通路5Bは排気ガスG2の排気通路56に接続されている。
【0037】
また、各バーナ3において、燃焼及び排気を交互に行うリジェネ燃焼を行う際には、各バーナ3におけるパイロットノズル42からは、パイロット混合気F2を常に噴出させておき、各バーナ3においてパイロット火炎Pを形成しておく。そして、各バーナ3においては、パイロット火炎Pを着火源として燃焼を再開することができる。
【0038】
そして、図1に示すごとく、第1ガスノズル41Aから燃料ガスFを噴出させると共に第1燃焼用空気ノズル51Aから燃焼用空気Aを噴出させ、これらの混合気は、上記パイロット混合気F2により形成されたパイロット火炎Pにより着火されて燃焼する。
このとき、燃料ガスFの噴出方向は、内壁11の方向を向いており、燃焼用空気Aの噴出方向に交錯している。そして、内壁11に沿うように燃焼用空気Aが噴出されると共に、これに交錯するよう内壁11の方向に向けて燃料ガスFが噴出される。これにより、燃料ガスFと燃焼用空気Aとの燃焼によるメイン火炎Mは、内壁11に沿った円弧状に形成され、被加熱物2との接触が避けられる。
こうして、本例のメイン火炎Mは、内壁11に沿って円弧状に形成されると共に、被加熱物2との接触が避けられた状態で、内壁11に沿って被加熱物2の回りを旋回するようにして形成される。
【0039】
その後、上記燃焼による燃焼ガスG1は、被加熱物2を加熱しながら、この被加熱物2の回りを旋回して環状燃焼空間13を通過する。そして、被加熱物2を加熱した後の排気ガスG2は、第2燃焼用空気ノズル51Bから入って第2バーナ3Bの第2燃焼用空気通路5Bを通過し、排気通路56から加熱炉1の外部に排気される。このとき、この排気ガスG2は、第2燃焼用空気通路5Bに配置した第2蓄熱体52Bに熱量を与え、第2蓄熱体52Bは、排気ガスG2における排熱を蓄える。こうして、第1バーナ3Aによる燃焼と第2バーナ3Bによる排気とが行われる。
【0040】
次いで、図2に示すごとく、上記第1バーナ3Aにおける燃焼が終わると、第2バーナ3Bにおいて燃焼を行うために第1バーナ3A及び第2バーナ3Bに設けた各3方弁54の切換動作により、第1バーナ3Aの第1燃焼用空気通路5Aは上記排気通路56に接続され、第2バーナ3Bの第2燃焼用空気通路5Bは上記供給通路55に接続される。
【0041】
そして、同図に示すごとく、上記第2ガス管4Bに燃料ガスFを流入させると共に上記第2燃焼用空気通路5Bに燃焼用空気Aを流入させる。このとき、この燃焼用空気Aには、第1バーナ3Aからの排気ガスG2による排熱を蓄えた第2蓄熱体52Bにおける熱量が与えられる。そのため、第2バーナ3Bにおいて燃焼を行う際には、第2蓄熱体52Bにおける熱量を利用して燃焼を行うことができ、第1バーナ3Aの排気ガスG2における排熱を回収することができる。
【0042】
その後、第2バーナ3Bにおいても、第1バーナ3Aと同様に燃焼が行われ、燃焼によるメイン火炎Mが、内壁11に沿って円弧状に形成される。また、第2バーナ3Bによる燃焼ガスG1が被加熱物2を加熱しながら環状燃焼空間13を通過し、被加熱物2を加熱した後の排気ガスG2が第1燃焼用空気ノズル51Aから入って第1バーナ3Aの第1燃焼用空気通路5Aを通過して、上記排気通路56から加熱炉1の外部に排気される。そして、このときには、第1バーナ3Aにおける第1蓄熱体52Aに排気ガスG2における排熱が蓄えられる。
次いで、第1バーナ3Aにおいて燃焼が行われる際には、第1蓄熱体52Aにおける排熱を回収して燃焼が行われる。そして、以降は、同様にして、各バーナ3において交互に燃焼と排気とが繰り返される。
【0043】
本例のリジェネバーナシステム10においては、上記のごとく、燃料ガスFと燃焼用空気Aとの燃焼によるメイン火炎Mは、内壁11に沿った円弧状に形成され、被加熱物2との接触が避けられる。そのため、上記リジェネバーナシステム10によれば、被加熱物2の一部をメイン火炎Mにより局所的に加熱してしまうことがなく、局所的な加熱により被加熱物2が悪影響を受けることを防止することができる。
【0044】
また、上記燃焼によるメイン火炎Mは、内壁11に沿った円弧状に形成されることにより、被加熱物2より離れた方向に向けられる。そのため、リジェネバーナシステム10は、被加熱物2と内壁11との間の距離が小さくなるよう狭く形成した上記環状燃焼空間13を有する加熱炉1に対して使用した場合でも、メイン火炎Mが被加熱物2に接触することを防止することができる。
【0045】
それ故、上記リジェネバーナシステム10は、被加熱物2を局所的に加熱してしまうことを防止できると共に、コンパクトな加熱炉1に使用することができる。そして、上記リジェネバーナシステム10は、設置スペースが限られている状況下で用いる加熱炉1に対しても、使用が可能となる。
また、上記のごとく、リジェネバーナシステム10を環状燃焼空間13が狭い加熱炉1に使用することにより、各バーナ3による燃焼ガスを充満させる空間の体積が小さくなる。そのため、上記リジェネバーナシステム10によれば、加熱炉1の熱効率を向上させることもできる。
【0046】
また、本例においては、各バーナ3において、排気ガスG2の排気を行う際には、上記耐火ボディ31の一部を突出させて形成した隔壁32により、パイロットノズル42から噴出させたパイロット混合気F2が燃焼に使われずに、直接燃焼用空気ノズル51に排気されてしまうことを防止することができる。
すなわち、排気ガスG2がバーナ3の燃焼用空気ノズル51に向けて排気される際には、この排気ガスG2は、バーナ3の先端側表面に衝突するようにして、燃焼用空気ノズル51から排気されることになる。このとき、排気ガスG2が直接パイロットノズル42に向けて流れると、パイロットノズル42から噴出されたパイロット混合気F2は、排気ガスG2の流れの影響を受けることになる。
【0047】
これに対し、本例においては、ガスノズル41の先端部46の全外周に形成された隔壁32により、パイロットノズル42から噴出されたパイロット混合気F2が排気ガスG2の流れに引き寄せられて、排気ガスG2と共に燃焼用空気ノズル51から排気されてしまうことを防止することができる。
それ故、本例においては、パイロット火炎Pを安定して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例における、第1バーナにおいて燃焼を行うと共に第2バーナにおいて排気を行っている状態のリジェネバーナシステムを示す断面説明図。
【図2】実施例における、第2バーナにおいて燃焼を行うと共に第1バーナにおいて排気を行っている状態のリジェネバーナシステムを示す断面説明図。
【図3】実施例における、バーナの要部を拡大して示す断面説明図。
【図4】実施例における、バーナを示す斜視図。
【図5】実施例における、他のバーナを示す斜視図。
【符号の説明】
【0049】
1 加熱炉
10 リジェネバーナシステム
11 内壁
13 環状燃焼空間
2 被加熱物
3 バーナ
31 耐火ボディ
32 隔壁
4 ガス管
41 ガスノズル
42 パイロットノズル
5 燃焼用空気通路
51 燃焼用空気ノズル
52 蓄熱体
F 燃料ガス
F1 パイロットガス
F2 パイロット混合気
A 燃焼用空気
G1 燃焼ガス
G2 排気ガス
M メイン火炎
P パイロット火炎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバーナを有し、各バーナによる燃焼と排気とを交互に行うよう構成したリジェネバーナシステムにおいて、
上記各バーナは、加熱炉内に配置した被加熱物を加熱するよう構成されていると共に、上記加熱炉の内壁と上記被加熱物との間に形成された燃焼空間に向けて火炎を発生させるよう構成されており、
かつ上記各バーナは、燃料ガスを噴出させるガスノズルと、燃焼用空気を噴出させる燃焼用空気ノズルとを有していると共に、上記ガスノズルと上記燃焼用空気ノズルとを上記内壁から上記環状燃焼空間に向けて配設してなり、
上記ガスノズルは、上記燃焼用空気ノズルよりも上記被加熱物に近い位置に配設すると共に、上記燃料ガスの噴出方向を上記燃焼用空気の噴出方向に交錯させるよう配設してあり、
上記燃料ガスを上記内壁に向けて噴出させることにより、上記燃料ガスと上記燃焼用空気との燃焼による火炎を、上記被加熱物に接触させることなく形成するよう構成してあることを特徴とするリジェネバーナシステム。
【請求項2】
複数のバーナを有し、各バーナによる燃焼と排気とを交互に行うよう構成したリジェネバーナシステムにおいて、
上記各バーナは、加熱炉内に配置した被加熱物を加熱するよう構成されていると共に、上記加熱炉の内壁と上記被加熱物との間に形成された燃焼空間に向けて火炎を発生させるよう構成されており、
かつ上記各バーナは、燃料ガスを噴出させるガスノズルと、燃焼用空気を噴出させる燃焼用空気ノズルとを有していると共に、上記ガスノズルと上記燃焼用空気ノズルとを上記内壁から上記燃焼空間に向けて配設してなり、
上記ガスノズルと上記燃焼用空気ノズルとは、上記燃料ガスの噴出方向と上記燃焼用空気の噴出方向とを互いに交錯させるよう配設してあり、
上記ガスノズルの先端部の外周には、該先端部よりも突出すると共に上記燃焼用空気ノズルの先端部よりも突出した隔壁が形成されていることを特徴とするリジェネバーナシステム。
【請求項3】
請求項2において、上記隔壁は、円筒形状を有しており、上記ガスノズルの先端部の全外周を覆っていることを特徴とするリジェネバーナシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記ガスノズルは、燃料ガスを通過させるストレートパイプの先端部において、該ストレートパイプの軸方向に傾斜して形成したガス噴出口を有していることを特徴とするリジェネバーナシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記燃焼用空気ノズルは、該燃焼用空気ノズルが上記ガスノズルと並ぶ並設方向と直交する方向に長い縦長形状の空気噴出口を有していることを特徴とするリジェネバーナシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−250429(P2006−250429A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67367(P2005−67367)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000140362)株式会社横井機械工作所 (9)
【Fターム(参考)】