説明

リチウムイオン二次電池制御システムおよび組電池制御システム

【課題】電池のサイクル特性の向上が図ることができるリチウムイオン二次電池制御システムの提供。
【解決手段】リチウムイオン二次電池制御システム201は、劣化進行速度算出部202と、劣化進行速度記憶部203と、劣化進行速度比較部204と、充放電制御回路205、充放電可能な電池206を少なくとも備え、劣化進行速度算出部202は、電池206の劣化進行速度チェックを開始するトリガを受け取ると、劣化進行速度を演算し、劣化進行速度比較部204は、劣化進行速度算出部202より、現在の劣化進行速度を、劣化進行速度記憶部203より過去の劣化速度をそれぞれ受け取り、その比較を行う。その結果、過去の劣化進行速度より、現在の劣化進行速度が一定値以上大きい場合、充放電条件の制限を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の充放電の制御を行うリチウムイオン二次電池制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有するため、例えば鉄道、自動車等の車両搭載用、若しくは太陽光発電又は風力発電等で発電した電力を蓄え、電力系統に供給する用途等に用いられる電池として注目されている。例えば、リチウムイオン二次電池(以下、適宜「電池」と言う。)を自動車に搭載して用いる場合、このような自動車としては、エンジンを搭載しないゼロエミッション電気自動車、エンジンと二次電池の両方を搭載したハイブリッド電気自動車、さらには系統電源から直接充電させるプラグイン・ハイブリッド電気自動車等がある。また、電力系統が遮断された非常時に電力を供給する定置式電力貯蔵システムとしての用途も期待されている。
【0003】
このような多様な用途に対し、電池に対して優れた耐久性が要求されている。例えば、環境温度が高くなったり充放電サイクルを繰り返したりしても、充電可能な電池容量(即ち電池容量)の減少率が低く、長期にわたって電池容量維持率が高いことが要求されている。また、路面からの輻射熱あるいは車内からの熱伝導により、例えば60℃以上の高温環境における保存特性及びサイクル寿命が、重要な要求性能となっている。
【0004】
しかしながら、リチウムイオン二次電池は、高温環境下にて放置したり、充放電サイクルを行ったりすることで、電池容量の低下が起こる。この容量低下は、高電圧で放置したり広い電圧範囲や大電流でサイクルを行ったりした場合により顕著となる。
【0005】
このような事情に鑑み、例えば特許文献1には、充放電終止電圧と、充放電後の開回路電圧の差分値より、劣化状態(SOH:State of Health)を算出し、算出されたSOHに基づいて充放電時間および充放電終止電圧を変更する劣化抑制方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−192607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、サイクル特性について鋭意検討した結果、図7のように、サイクル劣化が進むと電池の劣化が加速されてしまう場合があることを見出した。この劣化は、リチウムイオン二次電池の駆動方法や、放置温度等の環境要因、作製時のばらつき等によって大きく左右され、同じ条件で作製された電池であっても、電池のSOHが異なる数値で劣化の加速が起こることが特徴である。
【0008】
ところが、電池の駆動方法や放置温度等の環境要因は、ユーザの使用形態に大きく左右される。そのため、特許文献1に記載されたようなSOHの絶対値で、あらかじめ充放電制御を設定する劣化抑制方法を用いることは難しい。また、作製時のばらつきに対しても、特許文献1の方法では対応できない。
【0009】
本発明は上記の課題を解決するべくなされたものであり、その目的は、リチウムイオン二次電池のサイクル特性の向上を可能にするリチウムイオン二次電池制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、電池の劣化の進行速度(ΔSOH)に基づいて、所定の条件が満たされた場合に充放電条件を適宜変更することにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性の向上を可能にするリチウムイオン二次電池制御システムを提供することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明の特徴は、以下の通りである。
(1)リチウムイオン二次電池の充放電を制御する充放電制御回路と、リチウムイオン二次電池の過去の劣化状態の進行速度を記憶する劣化進行速度記憶部と、リチウムイオン二次電池の現在の劣化状態の進行速度を算出する劣化進行速度算出部と、現在の劣化状態の進行速度と過去の劣化状態の進行速度とを比較し、現在の劣化状態の進行速度が過去の劣化状態の進行速度に対して、一定値以上大きい場合に、リチウムイオン二次電池の充放電条件を変更する信号を充放電制御回路に送る劣化進行速度比較部と、を備えるリチウムイオン二次電池制御システム。
(2)上記において、現在の劣化状態の進行速度および過去の劣化状態の進行速度として、一定容量充放電前後での劣化状態の進行速度を用いるリチウムイオン二次電池制御システム。
(3)上記において、変更する充放電条件に上限充電電流を下げることを含むリチウムイオン二次電池制御システム。
(4)上記において、変更する充放電条件に上限放電電流を下げることを含むリチウムイオン二次電池制御システム。
(5)上記において、変更する充放電条件に上限充電電圧を下げることを含むリチウムイオン二次電池制御システム。
(6)上記において、変更する充放電条件に下限放電電圧を上げることを含むリチウムイオン二次電池制御システム。
(7)上記において、劣化進行速度比較部は、現在の劣化状態の進行速度と過去の劣化状態の進行速度とを比較し、現在の劣化の進行速度が過去の劣化進行速度に対して、一定値より小さい場合に、現在の劣化状態の進行速度を過去の劣化状態の進行速度として、劣化進行速度記憶部に上書きさせるリチウムイオン二次電池制御システム。
(8)上記において、劣化進行速度算出部は、充放電条件変更後の劣化状態の進行速度を算出し、劣化進行速度比較部は、劣化進行速度記憶部に記憶された過去の劣化状態の進行速度と、充放電条件変更後の劣化状態の進行速度とを比較し、充放電条件変更後の劣化状態の進行速度が劣化進行速度記憶部に記憶された過去の劣化状態の進行速度に対して、一定値以上大きい場合に、充放電条件と異なる充放電条件を変更する信号を充放電制御回路に送るリチウムイオン二次電池制御システム。
(9)リチウム二次電池を複数個直列に接続して構成した組電池と、複数のリチウム二次電池の各々において、単独で放電電流を流すための抵抗およびバランシングスイッチを有する複数の直列回路と、バランシングスイッチを制御する制御回路と、組電池の充放電を制御する組電池演算処理部を備えた組電池制御システムであって、リチウム二次電池の過去の劣化状態の進行速度を記憶する劣化進行速度記憶部と、リチウム二次電池の現在の劣化の進行速度を算出する劣化進行速度算出部と、現在の劣化の進行速度と過去の劣化状態の進行速度とを比較し、現在の劣化の進行速度が過去の劣化進行速度に対して、一定値以上大きい場合に、組電池またはリチウム二次電池の充放電条件を制限する信号を送る劣化進行速度比較部と、を備えることを特徴とする組電池制御システム。
(10)上記において、現在の劣化状態の進行速度として、一定容量充放電前後での劣化の進行速度を用いることを特徴とする組電池制御システム。
(11)上記において、変更する充放電条件に上限充電電流を下げることを含むことを特徴とする組電池制御システム。
(12)上記において、変更する充放電条件に上限放電電流を下げることを含むことを特徴とする組電池制御システム。
(13)上記において、変更する充放電条件に上限充電電圧を下げることを含むことを特徴とする組電池制御システム。
(14)上記において、変更する充放電条件に下限放電電圧を上げることを含むことを特徴とする組電池制御システム。
(15)上記において、劣化状態進行速度比較部は、現在の劣化状態の進行速度と過去の劣化状態の進行速度とを比較し、現在の劣化の進行速度が過去の劣化進行速度に対して、一定値より小さい場合に、現在の劣化状態の進行速度を過去の劣化状態の進行速度として、劣化進行速度記憶部に上書きさせる機能を有することを特徴とする組電池制御システム。
(16)上記において、劣化状態進行速度比較部は、リチウム二次電池の現在の劣化の進行速度が過去の劣化進行速度に対して一定値以上大きい場合に、リチウム二次電池を単独で一定量放電しておくことを特徴とする組電池制御システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リチウムイオン二次電池のサイクル特性の向上を可能にするリチウムイオン二次電池制御システムを提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るリチウムイオン二次電池制御システムの構成を表す回路図である。
【図2】第一の本発明の実施の形態(第一実施形態)に係るリチウムイオン二次電池制御システムにおける放電制御方法を表すフローチャートである。
【図3】第二の本発明の実施の形態(第二実施形態)に係るリチウムイオン二次電池制御システムにおける放電制御方法を表すフローチャートである。
【図4】第三の本発明の実施の形態(第三実施形態)に係るリチウムイオン二次電池制御システムにおける放電制御方法を表すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係るリチウムイオン二次電池制御システムを適用可能な電池の内部構造の一例を模式的に表す図である。
【図6】本実施の形態のリチウムイオン二次電池制御システムが適用可能な電源装置の一例を示す図であり、ハイブリッド自動車の駆動システムを示すブロック図である。
【図7】サイクル劣化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、適宜「本実施形態」と言う。)を詳細に説明するが、本実施形態は以下の内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0015】
[本実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システムの構成]
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システムは、正極及び負極を有するリチウムイオン二次電池の充放電を制御するものである。図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システムの構成を表す回路図である。図1に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システム201は、劣化進行速度算出部202と、劣化進行速度記憶部203と、劣化進行速度比較部204と、充放電制御回路205と、を少なくとも備えている。
【0016】
また、図1には、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システム201のほかにも、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システム201が適用されるリチウムイオン二次電池(電池)206、並びに、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システム201における各種演算を行わせる演算処理部207、外部負荷208、充電用電源209、電流測定部210、電圧測定部211及びスイッチ212a及び212bも併せて示している。電池206には、スイッチ212aを介して外部負荷208が接続され、スイッチ212bを介して電池206を充電するための充電用電源209が接続される。なお、本実施形態においては、演算処理部207に劣化進行速度算出部202と、劣化進行速度記憶部203と、劣化進行速度比較部204が設けられる構成としている。
【0017】
劣化進行速度算出部202は、現在の電池206の劣化状態(SOH)の進行速度(ΔSOH1)を求めるものである。
【0018】
SOHは、電池206の劣化状態を示す値である。電池206が劣化すると、内部抵抗が上昇、又は満充電時の容量が低下するなど特性に変化が生じる。これら劣化で変化した特性又はこの変化した特性と初期特性との比率から、SOHを求める方法が一般的である。演算したSOHは、他の演算に反映させて劣化情報を考慮に入れた電池206の状態検知を行うこともできるし、更に電池206の寿命を判定する際の指標として用いることもできる。本実施例では、電池206の劣化が進行するにしたがい、SOHの値は上昇するものとして定義する。劣化状態を示す値として、直流抵抗の変化、ある出力がとれる範囲の容量の変化、正負極の電位範囲などが挙げられる。
【0019】
ΔSOH1は、現在の電池206のSOHの進行速度を示す値である。ΔSOH1は式(1)で表される。
ΔSOH1=SOH1−SOH0 (1)
【0020】
ここで、SOH1は現在の電池206の劣化状態であり、SOH0は過去の電池206の劣化状態である(詳細は後述する)。
【0021】
劣化進行速度記憶部203は、過去の電池206の劣化状態の進行速度(ΔSOH0)を記憶するものである。ΔSOH0は過去の電池のΔSOH1であり、式(1)に基づいて算出される。
【0022】
劣化進行速度比較部204は、現在の電池206のSOHの進行速度ΔSOH1とΔSOH0を比較し、条件を満たした場合に充放電条件を変更する信号を充放電制御回路205もしくは演算処理部207に送る装置である(詳細は後述する)。
【0023】
また、上記とは別に状態検知手段を設けて、電池206の温度を入力して状態検知を行うようにしてもよい。この場合、電池206にはサーミスタや熱電対などの温度計測手段が設置されることとなるが、図1では省略してある。
【0024】
充放電制御回路205は、演算処理部207に指令に基づいて電池206の充放電を制御する。放電された電池206の充放電を行う場合、充放電制御回路205は、充放電開始後の電池206の電池電圧が所定の充電終止電圧となるまで電池206の充放電を行う。充放電終止電圧は予め設定されているが、後述するように、劣化進行速度比較部204によって充放電終止電圧が変更される場合がある。充放電終止電圧が変更されると、充放電制御回路205は、新たな充放電終止電圧に基づいて、充放電を行う。
【0025】
電流測定部210および電圧測定部211で測定された電池206の電流、電池電圧の情報は、演算処理部207に入力される。演算処理部207は、記憶装置やCPUなどで構成されるコントローラ、計算機システム、又はマイクロコンピュータであり、情報を入力して演算を行い演算した結果を出力することが可能な手段であればその他のものでもよい。また、劣化進行速度算出部202、劣化進行速度記憶部203、劣化進行速度比較部204、電圧測定部211、および電流測定部210は、それぞれ独立した基板で実現してもよいし、同一デバイス上に構成してマイクロコンピュータとして実現してもよい。
【0026】
演算処理部207は、電池206の電池電圧、電流、充電時間、休止時間(スタンバイ時間)、不使用時間等をそれぞれ計測して積算し、電池206のSOHの算出を含んだ演算、処理等を行う。演算処理部207は、これらの演算、処理等の結果に基づいて、電池206の充放電制御パラメータ(例えば、放電若しくは充電時間、放電若しくは充電電圧、放電若しくは充電電流等)を決定し、当該充放電制御パラメータを充放電制御回路205に送信することにより、充放電制御回路205による電池206の充電を制御する。
【0027】
放電時には、演算処理部207は、電池206の放電電圧及び放電電流が所望のものとなるような制御パラメータを充放電制御回路205に送信するとともに、スイッチ212aを閉じる信号およびスイッチ212bを開ける信号を各スイッチ212a,212bに送信する。その結果、電池206と外部負荷208とが電気的に導通され、電池206の放電が可能な状態とされる。
【0028】
逆に、充電時には、演算処理部207は、充電電圧及び充電電流が所望のものとなるような制御パラメータを充放電制御回路205に送信するとともに、スイッチ212aを開ける信号およびスイッチ212bを閉じる信号を各スイッチに送信する。その結果、電池206と充電用電源209とが電気的に導通され、電池206による充電が可能な状態とされる。
【0029】
また、例えば、電池206の温度を計測するために、例えば熱電対、サーミスタ等の温度計測手段(図示しない。)を設けてもよい。このような手段を設けることにより、これらの手段により計測した温度を例えば演算処理部207が取得するようにすれば、電池206の放電を温度に応じて制御することができ、より正確な放電制御が可能となる。
【0030】
さらに、例えば、測定された各種情報を記録するための記録部(図示しない。)を設けても良い。このような記録部の具体的な構成に特に制限は無く、例えばフロッピー(登録商標)ディスク(FD)、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記録媒体;ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ(USBメモリ等)等の半導体媒体;コンパクトディスク(CD−R、CD−RW等)、デジタルバーサタイルディスク(DVD−R、DVD+R、DVD+RW、DVD−RW、DVD−RAM等)、HD−DVD、ブルーレイディスク等の光記録媒体;等を用いることができる。
【0031】
電池206は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システム201が適用されるものであって、正極及び負極を有している。電池206の具体的な構成は特に制限されないが、例えば下記[電池の構成]に記載の電池を用いることができる。
【0032】
なお、電池206は、1つの電池からなる単電池であってもよく、2つ以上の電池が直列および並列に任意数組み合わされた組電池であってもよい。
【0033】
組電池の場合は、単電池ごとにセルコントローラをつけることが好ましい。セルコントローラは、単電池の状態を管理するための電子回路装置であり、単電池に対応して設けられたセル管理用集積回路素子、単電池の蓄電状態を変更するための回路素子、単電池の電圧を検出するための回路、フォトカプラなどの絶縁素子、ノイズ除去回路を構成する回路素子、及び保護回路を構成する回路素子などが回路基板に実装される構成が一例として挙げられる。
【0034】
[リチウム二次電池制御システムにおける充放電制御方法]
次に、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システムにおける放電制御方法を、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0035】
図2に示す処理は演算処理部207および演算処理部207内の劣化進行速度算出部202と、劣化進行速度記憶部203と、劣化進行速度比較部204により行われる。
【0036】
ステップS101では、電池206の劣化進行速度チェックを開始するトリガを劣化進行速度算出部202が受け取る。受信したと判定すると、ステップS102へ進む。
【0037】
このトリガを発するタイミングに特に制限は無いが、例えば所定回数充電終止電圧到達時、所定回数放電終止電圧到達時、所定時間経過時、所定容量経過時、所定電力量消費時等の任意のタイミングで発せられるものである。設定の際は、電池の設計寿命、正負極の材料、電池の用途、等を考慮して設定するのが好ましい。トリガの間隔が長い場合、劣化が進んでしまって劣化抑制効果が小さくなってしまうし、短い場合、誤差動が起きてしまう可能性がある。
【0038】
ステップS102において、劣化進行速度算出部202はΔSOH1を演算し、ステップS103に進む。
【0039】
ステップS103において、劣化進行速度比較部204は劣化進行速度算出部202より、ΔSOH1を、劣化進行速度記憶部203よりΔSOH0の情報を、それぞれ受け取り、ΔSOH1とΔSOH0の比較を行う。その結果、測定されたΔSOH1がΔSOH0とあらかじめ設定された管理値αの和未満(即ちΔSOH1<ΔSOH0+α)である場合(ステップS103のNo方向)、劣化進行速度比較部204が劣化進行速度チェックの終止判定を行い(ステップS105)、劣化進行速度のチェックが終了する。
【0040】
αは劣化進行速度チェックの際の誤差動を防ぐための管理値である。αの数値に特に制限は無いが、電池の設計寿命、正負極の材料、電池の用途、等を考慮して設定するのが好ましい。αが大きい場合、劣化が進んでしまって劣化抑制効果が小さくなってしまうし、短い場合、誤差動が起きてしまう可能性がある。
【0041】
一方で、ステップS103でΔSOH1≧ΔSOH0+αと判定されると、ステップS104へ進む。ステップS104において、充放電条件を変更して終止判定を行う。
【0042】
変更する充放電条件については、劣化の抑制が期待できる充放電条件であれば特に制限されないが、充電終止電圧を下げる、放電終止電圧を上げる、充放電電流を下げる、等が挙げられる。電池の設計寿命、正負極の材料、電池の用途、等を考慮して設定するのが好ましく、あらかじめ充放電条件変更時の電池寿命を検討して電池の用途への影響が少なく、効果が大きい充放電条件を設定することが望ましい。
【0043】
変更する充放電条件として、上限充電電流を下げる、上限放電電流を下げる、上限充電電圧を下げる、下限放電電圧を上げる、等が挙げられる。電池の系によって劣化進行速度に影響が大きい条件が異なる。上記は劣化進行速度に影響を与える可能性が高く、変更が容易であり、望ましい。
【0044】
上限充電電流を下げる方法は、夜間ずっと充電するPHEV等では適用が容易である。上限放電電流を下げる方法は、民生用等では適用が容易である。上限充電電圧を下げる方法は、HEVのような容量を求められにくい条件では適用が容易である。下限放電電圧を上げる方法は、HEVのような容量を求められにくい条件では適用が容易である。
【0045】
図3は、第二実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システムにおける放電制御方法を表すフローチャートである。図3におけるS201〜S202、S204〜S205は、図2におけるS101〜S102、S104〜S105と同じものを表すため、その説明を省略する。
【0046】
図3に示す実施形態においても、図2に示す第一実施形態と同様に、ステップS203にて劣化進行速度比較部204は劣化進行速度算出部202より、ΔSOH1を、劣化進行速度記憶部203よりΔSOH0の情報を、それぞれ受け取り、ΔSOH1とΔSOH0の比較を行う。ΔSOH1≧ΔSOH0+αと判定されると、ステップS204へ進む。ステップS204において、充放電条件を変更して終止判定を行う。
【0047】
一方で、測定されたΔSOH1がΔSOH0とあらかじめ設定された管理値αの和未満(即ちΔSOH1<ΔSOH0+α)である場合(ステップS203のNo方向)、ΔSOH1をΔSOH0として、劣化進行速度記憶部203に上書き保存し、劣化進行速度チェックの終止判定を行い(ステップS206)、劣化進行速度のチェックが終了する。
【0048】
リチウムイオン二次電池は、劣化が進むにつれ劣化速度が変化する場合がある。適宜ΔSOH0を更新する第二実施形態は、上記のような劣化の進行速度が変化する場合にも対応することが可能である。一方で、劣化進行速度チェックを開始するトリガ間隔が短い場合、劣化の進行速度の増大に対応できない可能性があるため、考慮しておく必要がある。
【0049】
図4は、第三実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システムにおける放電制御方法を表すフローチャートである。図4におけるS301〜S303、S305〜S306は、図3におけるS201〜S203、S205〜S206と同じものを表すため、その説明を省略する。
【0050】
図4に示す実施形態においても、図3に示す第一実施形態と同様に、ステップS303でΔSOH1≧ΔSOH0+αと判定されると、ステップS304へ進む。ステップS304において、充放電条件を変更させてステップS307に進む。
【0051】
ステップS307では、充放電を変更させた条件で通常の使用を行う。
【0052】
ステップS308では、電池206の劣化進行速度チェックを開始するトリガを劣化進行速度算出部202が受け取る。受信したと判定すると、ステップS309へ進む。
【0053】
このトリガを発するタイミングに特に制限は無いが、例えば所定回数充電終止電圧到達時、所定回数放電終止電圧到達時、所定時間経過時、所定容量経過時、所定電力量消費時等の任意のタイミングで発せられるものである。設定の際は、電池の設計寿命、正負極の材料、電池の用途、等を考慮して設定するのが好ましい。トリガの間隔が長い場合、劣化が進んでしまって劣化抑制効果が小さくなってしまうし、短い場合、誤差動が起きてしまう可能性がある。また、S301と同じタイミングでもかまわない。
【0054】
ステップS309において、劣化進行速度算出部202はΔSOH2を演算し、ステップS310に進む。
【0055】
ΔSOH2は、充放電条件変更後の電池206のSOHの進行速度を示す値である。ΔSOH2は式(2)で表わされる。
ΔSOH2=SOH2−SOH1 (2)
【0056】
ここで、SOH1はステップS301で用いた際の電池206の劣化状態であり、SOH2はステップS309での電池206の劣化状態である(詳細は後述する)。
【0057】
ステップS310において、劣化進行速度比較部204は劣化進行速度算出部202より、ΔSOH2を、劣化進行速度記憶部203よりΔSOH0の情報を、それぞれ受け取り、ΔSOH2とΔSOH0の比較を行う。
【0058】
ΔSOH2≧ΔSOH0+αと判定されると、ステップS304へ進む。ステップS304において、充放電条件を上記とは別の充放電条件で変更して再度ステップS307へ進む。
【0059】
一方で、測定されたΔSOH2がΔSOH0とあらかじめ設定された管理値αの和未満(即ちΔSOH2<ΔSOH0+α)である場合(ステップS310のNo方向)、ステップS311へと進む。ステップS311では、ΔSOH2をΔSOH0として、劣化進行速度記憶部203に上書き保存し、劣化進行速度チェックの終止判定を行い(ステップS305)、劣化進行速度のチェックが終了する。
【0060】
第三実施形態では、進行速度が進んだ時に、変更する充放電条件を複数選択できることや、次第に充放電条件を緩和することが可能である。第一実施形態、第二実施形態に比べて、電池の進行速度の緩和の方法が不明確だったり、複数存在したりする場合にも適用が容易である。
【0061】
以上、図2、図3及び図4を参照して説明したように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システム201は上記の構成を有し、各部が上記のように作動することにより、リチウムイオン二次電池の内部抵抗の増加を抑制する、放電容量の減少を抑制する等のサイクル特性の向上を可能にしたリチウムイオン二次電池制御システムを提供することができる。
【0062】
前述したように、電池206は単電池が複数接続された組電池でも構わない。組電池においても、[リチウム二次電池制御システムにおける充放電制御方法]で説明した方法を用いることができる。
【0063】
また、直列につないだ組電池においては、本発明は組電池内での単電池の劣化ばらつきを抑える効果も期待できる。
【0064】
直列につないだ組電池において、充放電可能な容量および充放電電流はΔSOHが最も大きい単電池を基準に制御する必要がある。そのため、従来の制御手法では、単電池の中にほかの電池に比べてΔSOHが大きい単電池が存在した場合、そのΔSOHが組電池のΔSOHとなる。
【0065】
しかしながら、本発明において、充放電条件を変更することで、ΔSOHを下げることができれば組電池内での単電池の劣化ばらつきを抑制でき、組電池のΔSOHを下げることができる。
【0066】
単電池間のばらつきを抑制するための、組電池での変更する充放電条件については、劣化の抑制が期待できる充放電条件であれば特に制限されないが、ΔSOHが大きい単電池の充電終止電圧を下げる方法が特に望ましい。ΔSOHが大きかった単電池のみあらかじめ放電しておくことで、実現可能である。
【0067】
また、この操作を行ったうえで、組電池の電圧に関しては変更しないことも可能である。この操作を行うことで、電池の性能を落とすことなく、単電池間のばらつきを抑制できる。
【0068】
この場合、ΔSOHが大きかった単電池以外の電池は、充放電条件変更前に比べて、電池電圧が高めになることになり、ΔSOHが増大する可能性があるが、前述したように直列に接続された組電池において、組電池のΔSOHはもっともΔSOHが大きい単電池が基準になるため、劣化の抑制が可能である。
【0069】
[リチウムイオン二次電池の構成]
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システムは、公知の任意のリチウムイオン二次電池に適用可能である。ここでは、図6を参照しながら、リチウムイオン二次電池の一実施の形態について説明する。もちろん、以下に説明する構成はあくまでも一例であって、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システムが適用されるリチウムイオン二次電池は、図6に記載の構造に限定されるものではない。
【0070】
図5は、リチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示した図である。図6に示す本実施形態に係る電池206は、正極10、セパレータ11、負極12、電池容器(即ち電池缶)13、正極集電タブ14、負極集電タブ15、内蓋16、内圧開放弁17、ガスケット18、正温度係数(Positive temperature coefficient;PTC)抵抗素子19、及び電池蓋20、軸心21から構成される。電池蓋20は、内蓋16、内圧開放弁17、ガスケット18、及びPTC抵抗素子19からなる一体化部品である。また、軸心21には、正極10、セパレータ11及び負極12が捲回されている。
【0071】
正極10は、正極活物質、導電剤、バインダ、及び集電体から構成される。正極活物質を例示すると、LiCoO2、LiNiO2、及びLiMn24が代表例である。他に、LiMnO3、LiMn23、LiMnO2、Li4Mn512、LiMn2-XX2(ただし、M=Co,Ni,Fe,Cr,Zn,Tiからなる群から選ばれる少なくとも1種、x=0.01〜0.2)、Li2Mn3MO8(ただし、M=Fe,Co,Ni,Cu,Znからなる群から選ばれる少なくとも1種)、Li1-XXMn24(ただし、A=Mg,B,Al,Fe,Co,Ni,Cr,Zn,Caからなる群から選ばれる少なくとも1種、x=0.01〜0.1)、LiNi1-XX2(ただし、M=Co,Fe,Gaからなる群から選ばれる少なくとも1種、x=0.01〜0.2)、LiFeO2、Fe2(SO43、LiCo1-XX2(ただし、M=Ni,Fe,Mnからなる群から選ばれる少なくとも1種、x=0.01〜0.2)、LiNi1-XX2(ただし、M=Mn,Fe,Co,Al,Ga,Ca,Mgからなる群から選ばれる少なくとも1種、x=0.01〜0.2)、Fe(MoO43、FeF3、LiFePO4、及びLiMnPO4等を列挙することができる。
【0072】
正極活物質の粒径は、正極活物質、導電剤、及びバインダから形成される合剤層の厚さ以下になるように通常は規定される。正極活物質の粉末中に合剤層厚さ以上のサイズを有する粗粒がある場合、予めふるい分級や風流分級等により粗粒を除去し、合剤層厚さ以下の粒子を作製することが好ましい。
【0073】
また、正極活物質は、一般に酸化物系であるために電気抵抗が高いので、電気伝導性を補うための炭素粉末からなる導電剤を利用する。正極活物質及び導電剤はともに通常は粉末であるので、粉末にバインダを混合して、粉末同士を結合させると同時に集電体へ接着させることができる。
【0074】
正極10の集電体には、厚さが10〜100μmのアルミニウム箔、厚さが10〜100μmで孔径が0.1〜10mmのアルミニウム製穿孔箔、エキスパンドメタル、又は発泡金属板等が用いられる。アルミニウムの他に、ステンレスやチタン等の材質も適用可能である。本発明では、材質、形状、製造方法等に制限されることなく、任意の集電体を使用することができる。
【0075】
正極活物質、導電剤、バインダ、及び有機溶媒を混合した正極スラリーを、ドクターブレード法、ディッピング法、又はスプレー法等によって集電体へ付着させた後、有機溶媒を乾燥させ、ロールプレスによって加圧成形することにより、正極10を作製することができる。また、塗布から乾燥までを複数回行うことにより、複数の合剤層を集電体に積層化させることも可能である。
【0076】
負極12は、負極活物質、バインダ、及び集電体からなる。高レート充放電が必要な場合に、導電剤を添加することもある。本発明で使用可能な負極活物質としては、黒鉛と非黒鉛炭素や例えばアルミニウム、シリコン、スズ等の金属及びこれらの合金、リチウム含有の遷移金属窒化物Li(3-X)XN、ケイ素の低級酸化物LiXSiOY(0≦x、0<y<2)、及びスズの低級酸化物LiXSnOYのリチウムと合金を形成する材料又は金属間化合物を形成する材料等を選択することができる。
【0077】
負極活物質の材料には特に制限がなく、上記の材料以外でも利用可能であるが、膨張収縮が大きい材料等の一部材料を選択した場合には、負極の利用する範囲を大きくし過ぎると抵抗上昇が大きくなることがある。この場合、電池電圧を変更する場合の条件に負極電位が一定以下であるかどうかを確認するのが好ましい。
【0078】
ただし、黒鉛を含むことが好ましく、当該黒鉛は黒鉛層間距離(d002)が0.335nm以上0.338nm以下であることが好ましい。このような黒鉛を負極12が含むことにより、黒鉛の電位曲線にはステージ構造を有するため、リチウムイオン二次電池のサイクル特性の向上をより大きなものにすることができる。負極12に用いる黒鉛は、リチウムイオンを化学的に吸蔵・放出可能な天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェ−ズ炭素、膨張黒鉛、炭素繊維、気相成長法炭素繊維、ピッチ系炭素質材料、ニードルコークス、石油コークス、及びポリアクリロニトリル系炭素繊維等を原料として製造される。なお、上記の黒鉛層間距離(d002)は、XRD(X線粉末回折法)(X-Ray Diffraction Method)等を用いて測定することができる。
【0079】
また、負極12に用いる非黒鉛炭素は、上記の黒鉛を除く炭素材料であって、リチウムイオンを吸蔵又は放出することができるものである。これには、黒鉛層の間隔が0.34nm以上であって、2000℃以上の高温熱処理により黒鉛に変化する炭素材料や、5員環又は6員環の環式炭化水素や、環式含酸素有機化合物を熱分解によって合成した非晶質炭素材料等が含まれる。
【0080】
このように正極10と異なる電圧変化率を有する負極12に、リチウムと合金を形成する材料又は金属間化合物を形成する材料を、第3の負極活物質として添加してもよい。第3の負極活物質としては、例えばアルミニウム、シリコン、スズ等の金属及びこれらの合金、リチウム含有の遷移金属窒化物Li(3-X)XN、ケイ素の低級酸化物LiXSiOY(0≦x,0<y<2)、及びスズの低級酸化物LiXSnOYが挙げられる。第3の負極活物質の材料には特に制限がなく、上記の材料以外でも利用可能である。
【0081】
一般に使用される負極活物質は粉末であるため、それにバインダを混合して、粉末同士を結合させると同時に集電体へ接着させている。本実施形態に係る電池206が有する負極12では、負極活物質の粒径を、負極活物質及びバインダから形成される合剤層の厚さ以下にすることが望ましい。負極活物質の粉末中に合剤層厚さ以上のサイズを有する粗粒がある場合、予めふるい分級や風流分級等により粗粒を除去し、合剤層厚さ以下の粒子を使用することが好ましい。
【0082】
負極12の集電体には、厚さが10〜100μmの銅箔、厚さが10〜100μmで孔径0.1〜10mmの銅製穿孔箔、エキスパンドメタル、又は発泡金属板等が用いられる。銅の他に、ステンレス、チタン、又はニッケル等の材質も適用可能である。本発明では、材質、形状、製造方法等に制限されることなく、任意の集電体を使用することができる。
【0083】
負極活物質、バインダ、及び有機溶媒を混合した負極スラリーを、ドクターブレード法、ディッピング法、又はスプレー法等によって集電体へ付着させた後、有機溶媒を乾燥させ、ロールプレスによって加圧成形することにより、負極12を作製することができる。また、塗布から乾燥までを複数回行うことにより、多層合剤層を集電体に形成させることも可能である。
【0084】
また、正極10および負極12の活物質塗布量を充電終止電圧V0時に負極電位α付近でかつ正極電位γよりやや少なめになるように設計しておくのが好ましい。具体的には、正極電位γに対し、正極利用率が70%以上98%以下であるのが好ましく,特に正極利用率が75%以上95%以下であるのが好ましく、さらに正極利用率が80%以上90%以下であるのが好ましい。
【0085】
正極10の正極活物質は、電位を測定しやすくする観点から次式(3)で表されるリチウム複合酸化物を含んでいることが好ましく、特に、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2を含むことが好ましい。
【0086】
LiNiaMnbCocd2 (3)
(上記式(3)中、Mは、Fe,V,Ti,Cu,Al,Sn,Zn,Mg,B,Wからなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、a,b,c及びdは、それぞれ、0.2≦a≦0.8,0.1≦b≦0.4,0≦c≦0.4,0≦d≦0.1を満たす値であって、かつ、a+b+c+d=1を満たす関係にある。)なお、上記の各例示物において、例えば「M」「x」等の各例示物で重複する文字が記載されているが、それらの文字はそれぞれの例示物において独立しているものとする。以下の記載においても、特に指定しない限り同様とする。
【0087】
以上の方法で作製した正極10及び負極12の間にセパレータ11を挿入し、正極10及び負極12の短絡を防止する。セパレータ11には、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなるポリオレフィン系高分子シート、又はポリオレフィン系高分子と4フッ化ポリエチレンを代表とするフッ素系高分子シートを溶着させた2層構造等を使用することが可能である。電池温度が高くなったときにセパレータ11が収縮しないように、セパレータ11の表面にセラミックス及びバインダの混合物を薄層状に形成してもよい。これらのセパレータ11は、電池の充放電時にリチウムイオンを透過させる必要があるため、一般に細孔径が0.01〜10μm、気孔率が20〜90%であれば、リチウムイオン二次電池に使用可能である。
【0088】
このようなセパレータ11を正極10及び負極12の間に挿入し、軸心21に捲回した電極群を作製する。軸心21は、正極10、セパレータ11及び負極12を担持できるものであれば、公知の任意のものを用いることができる。電極群は、図5に示した円筒形状の他に、短冊状電極を積層したもの、又は正極10と負極12を扁平状等の任意の形状に捲回したもの等、種々の形状にすることができる。電池容器13の形状は、電極群の形状に合わせ、円筒形、偏平長円形状、扁平楕円形状、角形等の形状を選択してもよい。
【0089】
電池容器13の材質は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼製等、非水電解質に対し耐食性のある材料から選択される。また、電池容器13を正極10又は負極12に電気的に接続する場合は、非水電解質と接触している部分において、電池容器13の腐食やリチウムイオンとの合金化による材料の変質が起こらないように、電池容器13の材料の選定を行う。
【0090】
電池容器13に電極群を収納し、電池容器13の内壁に負極集電タブ15を接続し、電池蓋20の底面に正極集電タブ14を接続する。電解液は、電池の密閉の前に電池容器内部13に注入する。電解液の注入方法は、電池蓋20を解放した状態にて電極群に直接添加する方法、又は電池蓋20に設置した注入口から添加する方法がある。
【0091】
その後、電池蓋20を電池容器13に密着させ、電池全体を密閉する。電解液の注入口がある場合は、それも密封する。電池を密閉する方法には、溶接、かしめ等公知の技術がある。
【0092】
本発明で使用可能な電解液の代表例として、エチレンカーボネートにジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、又はエチルメチルカーボネート等を混合した溶媒に、電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、又はホウフッ化リチウム(LiBF4)を溶解させた溶液がある。本発明は、溶媒や電解質の種類、溶媒の混合比に制限されることなく、他の電解液も利用可能である。
【0093】
なお、電解液に使用可能な非水溶媒の例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1、2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1、3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、テトラヒドロフラン、1、2−ジエトキシエタン、クロルエチレンカーボネート、又はクロルプロピレンカーボネート等の非水溶媒がある。本発明の電池に内蔵される正極10又は負極12上で分解しなければ、これ以外の溶媒を用いてもよい。
【0094】
また、電解質の例としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、又はリチウムトリフルオロメタンスルホンイミドで代表されるリチウムのイミド塩等、多種類のリチウム塩がある。これらの塩を、上記の溶媒に溶解してできた非水電解液を電池用電解液として使用することができる。本実施形態に係る電池が有する正極10及び負極12上で分解しなければ、これ以外の電解質を用いてもよい。
【0095】
固体高分子電解質(ポリマー電解質)を用いる場合には、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド等のイオン伝導性ポリマーを電解質に用いることができる。これらの固体高分子電解質を用いた場合、セパレータ11を省略することができる利点がある。
【0096】
さらに、イオン性液体を用いることができる。例えば、1−ethyl−3−methylimidazolium tetrafluoroborate(EMI−BF4)、リチウム塩LiN(SO2CF32(LiTFSI)とトリグライムとテトラグライムとの混合錯体、環状四級アンモニウム系陽イオン(N−methyl−N−propylpyrrolidiniumが例示される。)、及びイミド系陰イオン(bis(fluorosulfonyl)imideが例示される。)より、正極10及び負極12にて分解しない組み合わせを選択して、本実施形態に係る電池206に用いることができる。
【0097】
以上の構成を有するリチウムイオン二次電池を電池206として用い、このような電池に対して、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池制御システムを適用することが可能である。
【0098】
以下では、図5に示す構成の電池206を上述した本実施の形態のリチウムイオン二次電池制御システムにより充電を行った場合(実施例1)と、比較例1〜3について説明する。
【0099】
〔実施例1〕
はじめに、図5に示す構造を有するリチウムイオン二次電池(電池)を作製した。この際、正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/32を、負極活物質として天然黒鉛(X線構造解析による黒鉛層間距離(d002)=0.336nm)を用いた。また、正極としてアルミニウム箔を、負極として銅箔を用いた。
【0100】
作製した電池を電池206として、図1に示すリチウムイオン二次電池制御システムにより充電を行い、下記に示す方法により電池特性を評価した。以下の方法では、現在の劣化状態の進行速度および過去の劣化状態の進行速度として、一定容量充放電前後での劣化状態の進行速度が用いられている。
【0101】
作製した電池を常温(25℃)前後で0.3CA相当の電流で4.20Vまで充電し、その後4.20Vで電流が0.03CAになるまで定電圧充電を行った。30分休止後に0.3CA相当の定電流で3.0Vまで定電流放電を行った。これを4サイクル行って初期化し、4サイクル目の電池容量を測定し、測定された電池容量を初期電池容量とした。初期電池容量は1.15Ahであった。
【0102】
次に、25℃で、0.3CA相当の電流で4.20Vまで充電し、その後4.20Vで電流が0.03CAになるまで定電圧充電を行った後に、放電した分の容量は、0.3CAで充電を行いつつ、電流4CA、8CA、12CA、16CAの順で10秒間放電した。そのときの放電電流と10秒目の電圧との関係をプロットし、得られた直線の傾きより初期直流抵抗を求めた。充放電の合間には休止を30分設けた。測定された初期直流抵抗は54.5mΩであった。
【0103】
次に、25℃で、1000回の充放電サイクルを行った。各サイクルにおいては、0.3CA相当の電流で4.20Vまで充電し、その後4.20Vで電流が0.03CAになるまで定電圧充電を行った。放電は、8Wの定電力で1サイクルの放電電力量が1.5Whとなるようにして行った。充放電の間には休止を1時間行った。また、5サイクルに1回ごとに次の段落の動作を行って、直流抵抗を求めた。
【0104】
劣化進行速度チェックは、5サイクルごとに図3に示すフローチャートに従って行った。ΔSOHは、初期直流抵抗と劣化後の直流抵抗との差分値を用い、αは、初期抵抗の1%程度として0.05mΩとした。変更した充放電条件は、上限充電電圧を0.05V下げる方法で行った。上限充電電圧を下げる値として、0.01V以上0.1V以下であってもよい。また、ΔSOHは5サイクルごとに劣化進行速度比較部204より、劣化進行速度記憶部203に記憶させて更新を行った。
【0105】
その結果、劣化進行速度比較部204は、90、250、420、600、850サイクル目でそれぞれ補正を行った。また、その際の直流抵抗はそれぞれ55.7、58.3、61.2、64.0、68.3mΩであった。
【0106】
その後、25℃で12時間放置した後、相当の電流で4.20Vまで充電し、その後4.20Vで電流が0.03CAになるまで定電圧充電を行った。30分休止後に0.3CA相当の定電流で3.0Vまで定電流放電を行い、1000サイクル後の電池の電池容量を測定したところ、0.904Ahであった。また、初期直流抵抗の測定と同様にして500サイクル後の直流抵抗を求めたところ、70.5mΩであった。
【0107】
以上の得られた結果を用いて、下記式に従って、電池容量維持率、並びに直流抵抗上昇率を算出した。その結果を表1に示す。
電池容量維持率(%)=(500サイクル後の電池容量)/(初期電池容量)
直流抵抗上昇率(%)=(500サイクル後の直流抵抗)/(初期直流抵抗)
【0108】
〔実施例2〕
次に、1000回のサイクル時の定電力の値を8Wから4Wに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、サイクルを行った。
【0109】
その結果、劣化進行速度比較部は、170、450、620、880サイクル目でそれぞれ補正を行った。また、その際の直流抵抗はそれぞれ56.0、58.4、59.9、62.2mΩであった。
【0110】
次に、1000サイクル後の電池容量維持率及び直流抵抗上昇率を算出した。その結果を表1に示す。初期電池容量は1.150Ah、初期直流抵抗は54.5mΩ、1000サイクル後の電池容量は0.987Ah、1000サイクル後の直流抵抗は63.2mΩであった。
【0111】
〔比較例1〕
1000回の充放電サイクルにおいて、劣化進行速度チェックを行わずにサイクルを行ったこと以外は実施例1と同様にして、サイクルを行い、1000サイクル後の電池容量維持率及び直流抵抗上昇率を算出した。その結果を表1に示す。初期電池容量は1.150Ah、初期直流抵抗は54.5mΩ、1000サイクル後の電池容量は0.745Ah、1000サイクル後の直流抵抗は96.5mΩであった。
【0112】
〔比較例2〕
1000回の充放電サイクルにおいて、劣化進行速度チェックを行わずにサイクルを行ったこと以外は実施例2と同様にして、サイクルを行い、1000サイクル後の電池容量維持率及び直流抵抗上昇率を算出した。その結果を表1に示す。初期電池容量は1.150Ah、初期直流抵抗は54.5mΩ、1000サイクル後の電池容量は0.855Ah、1000サイクル後の直流抵抗は84.5mΩであった。
【0113】
〔比較例3〕
1000回の充放電サイクルにおいて、実施例2における充放電条件変更を行った56.0、58.4、59.9、62.2mΩを超えた劣化を示した所で、充放電条件を変更したこと以外は実施例1と同様にして、サイクルを行い、1000サイクル後の電池容量維持率及び直流抵抗上昇率を算出した。その結果を表1に示す。初期電池容量は1.150Ah、初期直流抵抗は54.5mΩ、1000サイクル後の電池容量は0.785Ah、1000サイクル後の直流抵抗は79.0mΩであった。
【0114】
【表1】

【0115】
表1に示すように、劣化進行速度のチェックおよび、充放電条件の変更を行った実施例1および実施例2においては、劣化進行速度のチェックおよび、充放電条件の変更を行わない比較例1、2および劣化の絶対量で充放電条件の変更を行った比較例3に対して、容量維持率および抵抗上昇率のいずれも良い特性を示した。実施例1における定電力量より実施例2の定電力量は小さく、劣化は小さくなる。
【0116】
以上のように、本発明によれば、1000サイクルの充放電後であってもリチウムイオン二次電池内部の抵抗増加の抑制及び電池容量減少の抑制を可能にし、サイクル特性の向上を可能にしたリチウムイオン二次電池制御システムを提供することができる。
【0117】
図6は、本実施の形態のリチウムイオン二次電池制御システムが適用可能な電源装置の一例を示す図であり、ハイブリッド自動車の駆動システムを示すブロック図である。図6に示す駆動システムは、電池モジュール9、電池モジュール9を監視する電池監視装置100、電池モジュール9からの直流電力を3相交流電力に変換するインバータ装置220、車両駆動用のモータ230を備えている。モータ230は、インバータ装置220からの3相交流電力により駆動される。インバータ装置220と電池監視装置100とはCAN通信で結ばれており、インバータ装置220は電池監視装置100に対して上位コントローラとして機能する。また、インバータ装置220は、さらに上位のコントローラ(不図示)からの指令情報に基づいて動作する。
【0118】
インバータ装置220は、パワーモジュール226と、MCU222と、パワーモジュール226を駆動するためのドライバ回路224とを有している。パワーモジュール226は、電池モジュール9から供給される直流電力を、モータ230を駆動するための3相交流電力に変換する。なお、図示していないが、パワーモジュール226に接続される強電ラインHV+,HV−間には、約700μF〜約2000μF程度の大容量の平滑キャパシタが設けられている。この平滑キャパシタは、電池監視装置100に設けられた集積回路に加わる電圧ノイズの低減する働きをする。
【0119】
インバータ装置220の動作開始状態では平滑キャパシタの電荷は略ゼロであり、リレーRLを閉じると大きな初期電流が平滑キャパシタへ流れ込む。そして、この大電流のためにリレーRLが融着して破損するおそれがある。この問題を解決するために、MCU222は、さらに上位のコントローラからの命令に従い、モータ230の駆動開始時に、プリチャージリレーRLPを開状態から閉状態にして平滑キャパシタを充電し、その後にリレーRLを開状態から閉状態として、電池モジュール9からインバータ装置220への電力の供給を開始する。平滑キャパシタを充電する際には、抵抗RPREを介して最大電流を制限しながら充電を行う。このような動作を行うことで、リレー回路を保護すると共に、電池セルやインバータ装置220を流れる最大電流を所定値以下に低減でき、高い安全性を維持できる。
【0120】
なお、インバータ装置220は、モータ230の回転子に対するパワーモジュール226により発生する交流電力の位相を制御して、車両制動時にはモータ230をジェネレータとして動作させる。すなわち回生制動制御を行い、ジェネレータ運転により発電された電力を電池モジュール9に回生して電池モジュール9を充電する。電池モジュール9の充電状態が基準状態より低下した場合には、インバータ装置220はモータ230を発電機として運転する。モータ230で発電された3相交流電力は、パワーモジュール226により直流電力に変換されて電池モジュール9に供給される。その結果、電池モジュール9は充電される。
【0121】
一方、モータ230を力行運転する場合、MCU222は上位コントローラの命令に従い、モータ230の回転子の回転に対して進み方向の回転磁界を発生するようにドライバ回路224を制御し、パワーモジュール226のスイッチング動作を制御する。この場合は、電池モジュール9から直流電力がパワーモジュール226に供給される。また、回生制動制御により電池モジュール9を充電する場合には、MCU222は、モータ230の回転子の回転に対して遅れ方向の回転磁界を発生するようにドライバ回路224を制御し、パワーモジュール226のスイッチング動作を制御する。この場合はモータ230から電力がパワーモジュール226に供給され、パワーモジュール226の直流電力が電池モジュール9へ供給される。結果的にモータ230は発電機として作用することとなる。
【0122】
インバータ装置220のパワーモジュール226は、導通および遮断動作を高速で行い直流電力と交流電力間の電力変換を行う。このとき、大電流を高速で遮断するので、直流回路の有するインダクタンスにより大きな電圧変動が発生する。この電圧変動を抑制するため、上述した大容量の平滑キャパシタが設けられている。
【0123】
電池モジュール9は、直列接続された2つの電池ブロック9A,9Bで構成されている。各電池ブロック9A,9Bは、直列接続された16セルの電池セルを備えている。電池ブロック9Aと電池ブロック9Bとは、スイッチとヒューズとが直列接続された保守・点検用のサービスディスコネクトSDを介して直列接続される。このサービスディスコネクトSDが開くことで電気回路の直接回路が遮断され、仮に電池ブロック9A,9Bのどこかで車両との間に1箇所接続回路ができたとしても電流が流れることはない。このような構成により高い安全性を維持できる。又、点検時に人間がHV+とHV−の間を触っても、高電圧は人体に印加されないので安全である。
【0124】
電池モジュール9とインバータ装置220との間の強電ラインHV+には、リレーRL、抵抗RPおよびプリチャージリレーRLPを備えた電池ディスコネクトユニットBDUが設けられている。抵抗RPおよびプリチャージリレーRLPの直列回路は、リレーRLと並列に接続されている。
【0125】
電池監視装置100は、主に各セル電圧の測定、総電圧の測定、電流の測定、セル温度およびセルの容量調整等を行う。そのために、セルコントローラとしてのIC(集積回路)1〜IC6が設けられている。各電池ブロック9A,9B内に設けられた16セルの電池セルは、それぞれ3つのセルグループに分けられ、各セルグループ毎に一つの集積回路が設けられている。セルコントローラは各セルの管理を行う機能を有するものであり、例えば、セル電圧のモニタ、過充電/過放電検知、セル間の電圧の均等化等を行う。図1の充放電制御回路205、電圧測定部211はこのセルコントローラに設けられている。
【0126】
IC1〜IC6は、通信系602と1ビット通信系604とを備えている。セル電圧値読み取りや各種コマンド送信のための通信系602においては、絶縁素子(例えば、フォトカプラ)PHを介してデイジーチェーン方式でマイコン30とシリアル通信を行う。1ビット通信系604は、セル過充電が検知されたときの異常信号を送信する。図6に示す例では、通信系602は、電池ブロック9AのIC1〜IC3に対する上位の通信経路と、電池ブロック9BのIC4〜IC6に対する下位の通信経路とに分けられている。
【0127】
マイコン30は、セルコントローラ(IC1〜IC6)の上位のコントローラとしての機能を有するものであり、電池モジュール9のモニタ(総電圧のモニタ、電流モニタ、温度モニタ、セルコントローラからの情報取得など)、外部回路の制御(リレー制御など)、電池状態の検知(SOC演算、SOH演算、許容充放電電流演算など)、各種診断(過充電保護、過放電保護、漏電検知、故障検知など)等を行う。図1の演算処理部207はこのマイコン30に設けられている。
【0128】
電池ディスコネクトユニットBDU内にはホール素子等の電流センサSiが設置されており、電流センサSiの出力はマイコン30に入力される。電池モジュール9の総電圧および温度に関する信号もマイコン30に入力され、それぞれマイコン30のAD変換器(ADC)によって測定される。温度センサは電池ブロック9A,9B内の複数箇所に設けられている。
【0129】
なお、上述した実施の形態では、車両搭載用のリチウムイオン二次電池を例に説明したが、本発明は、車両搭載用に限らず、太陽光発電又は風力発電等で発電した電力を蓄え、電力系統に供給する用途等に用いられるリチウムイオン二次電池のリチウムイオン二次電池制御システムにも適用することができる。
【0130】
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0131】
10 正極
12 負極
201 リチウムイオン二次電池制御システム
202 劣化進行速度算出部
203 劣化進行速度記憶部
204 劣化進行速度比較部
205 充放電制御回路
206 リチウムイオン二次電池
207 演算処理部
208 外部負荷
209 充電用電源
210 電流測定部
211 電圧測定部
212a,212b スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池の充放電を制御する充放電制御回路と、
前記リチウムイオン二次電池の過去の劣化状態の進行速度を記憶する劣化進行速度記憶部と、
前記リチウムイオン二次電池の現在の劣化状態の進行速度を算出する劣化進行速度算出部と、
前記現在の劣化状態の進行速度と前記過去の劣化状態の進行速度とを比較し、前記現在の劣化状態の進行速度が前記過去の劣化状態の進行速度に対して、一定値以上大きい場合に、前記リチウムイオン二次電池の充放電条件を変更する信号を前記充放電制御回路に送る劣化進行速度比較部と、
を備えるリチウムイオン二次電池制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記現在の劣化状態の進行速度および前記過去の劣化状態の進行速度として、一定容量充放電前後での劣化状態の進行速度を用いるリチウムイオン二次電池制御システム。
【請求項3】
請求項1において、
変更する前記充放電条件に上限充電電流を下げることを含むリチウムイオン二次電池制御システム。
【請求項4】
請求項1において、
変更する前記充放電条件に上限放電電流を下げることを含むリチウムイオン二次電池制御システム。
【請求項5】
請求項1において、
変更する前記充放電条件に上限充電電圧を下げることを含むリチウムイオン二次電池制御システム。
【請求項6】
請求項1において、
変更する前記充放電条件に下限放電電圧を上げることを含むリチウムイオン二次電池制御システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記劣化進行速度比較部は、前記現在の劣化状態の進行速度と前記過去の劣化状態の進行速度とを比較し、前記現在の劣化の進行速度が前記過去の劣化進行速度に対して、前記一定値より小さい場合に、前記現在の劣化状態の進行速度を過去の劣化状態の進行速度として、前記劣化進行速度記憶部に上書きさせるリチウムイオン二次電池制御システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記劣化進行速度算出部は、前記充放電条件変更後の劣化状態の進行速度を算出し、
前記劣化進行速度比較部は、前記劣化進行速度記憶部に記憶された過去の劣化状態の進行速度と、前記充放電条件変更後の劣化状態の進行速度とを比較し、前記充放電条件変更後の劣化状態の進行速度が前記劣化進行速度記憶部に記憶された過去の劣化状態の進行速度に対して、一定値以上大きい場合に、前記充放電条件と異なる充放電条件を変更する信号を前記充放電制御回路に送るリチウムイオン二次電池制御システム。
【請求項9】
リチウム二次電池を複数個直列に接続して構成した組電池と、
前記複数のリチウム二次電池の各々において、単独で放電電流を流すための抵抗およびバランシングスイッチを有する複数の直列回路と、
前記バランシングスイッチを制御する制御回路と、
前記組電池の充放電を制御する組電池演算処理部を備えた組電池制御システムであって、
前記リチウム二次電池の過去の劣化状態の進行速度を記憶する劣化進行速度記憶部と、
前記リチウム二次電池の現在の劣化の進行速度を算出する劣化進行速度算出部と、
前記現在の劣化の進行速度と前記過去の劣化状態の進行速度とを比較し、前記現在の劣化の進行速度が前記過去の劣化進行速度に対して、一定値以上大きい場合に、前記組電池または前記リチウム二次電池の充放電条件を制限する信号を送る劣化進行速度比較部と、
を備えることを特徴とする組電池制御システム。
【請求項10】
請求項9に記載の組電池制御システムにおいて、
前記現在の劣化状態の進行速度として、一定容量充放電前後での劣化の進行速度を用いることを特徴とする組電池制御システム。
【請求項11】
請求項9に記載の組電池制御システムにおいて、
変更する前記充放電条件に上限充電電流を下げることを含むことを特徴とする組電池制御システム。
【請求項12】
請求項9に記載の組電池制御システムにおいて、
変更する前記充放電条件に上限放電電流を下げることを含むことを特徴とする組電池制御システム。
【請求項13】
請求項9に記載の組電池制御システムにおいて、
変更する前記充放電条件に上限充電電圧を下げることを含むことを特徴とする組電池制御システム。
【請求項14】
請求項9に記載の組電池制御システムにおいて、
変更する前記充放電条件に下限放電電圧を上げることを含むことを特徴とする組電池制御システム。
【請求項15】
請求項9〜14に記載の組電池制御システムにおいて、
前記劣化状態進行速度比較部は、前記現在の劣化状態の進行速度と前記過去の劣化状態の進行速度とを比較し、前記現在の劣化の進行速度が前記過去の劣化進行速度に対して、前記一定値より小さい場合に、前記現在の劣化状態の進行速度を過去の劣化状態の進行速度として、前記劣化進行速度記憶部に上書きさせる機能を有することを特徴とする組電池制御システム。
【請求項16】
請求項9〜15に記載の組電池制御システムにおいて、
前記劣化状態進行速度比較部は、前記リチウム二次電池の現在の劣化の進行速度が過去の劣化進行速度に対して一定値以上大きい場合に、前記リチウム二次電池を単独で一定量放電しておくことを特徴とする組電池制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−65481(P2013−65481A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204034(P2011−204034)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】