説明

リチウム二次電池用バインダー、リチウム二次電池用負極、リチウム二次電池、リチウム二次電池用バインダー前駆体溶液及びリチウム二次電池用負極の製造方法

【課題】ケイ素及びケイ素合金のうちの少なくとも一方を負極活物質として含むと共に、バインダーを含む負極活物質層を有する負極を備えるリチウム二次電池であって、優れた充放電サイクル特性を有するリチウム二次電池を実現し得るバインダーを提供する。
【解決手段】リチウム二次電池用バインダーは、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとをイミド化することにより形成され、加水分解性シリル基を有するポリイミド樹脂を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用バインダー、リチウム二次電池用負極、リチウム二次電池、リチウム二次電池用バインダー前駆体溶液及びリチウム二次電池用負極の製造方法に関する。特に、本発明は、負極活物質としてケイ素及びケイ素合金の少なくとも一方を含むリチウム二次電池用のバインダー、そのバインダーを含むリチウム二次電池用負極、その負極を備えるリチウム二次電池、上記バインダーの前駆体溶液及び上記リチウム二次電池用負極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池に対するさらなる高エネルギー密度化の要求が高まってきている。これに伴い、従来負極活物質として一般的に使用されてきた黒鉛材料よりも高エネルギー密度化が可能な負極活物質の研究が盛んに行われている。そのような負極活物質の一例としては、Al,Sn,Siなどの元素を含み、リチウムと合金化する合金材料が挙げられる。
【0003】
Al,Sn,Siなどの元素を含み、リチウムと合金化する合金材料は、リチウムとの合金化反応によってリチウムを吸蔵する負極活物質であり、黒鉛材料よりも大きな体積比容量を有している。このため、Al,Sn,Siなどの元素を含み、リチウムと合金化する合金材料を負極活物質として用いることにより、高いエネルギー密度を有するリチウム二次電池を得ることができる。
【0004】
しかしながら、Al,Sn,Siなどの元素を含み、リチウムと合金化する合金材料を負極活物質として用いた負極では、充放電時、すなわち、リチウムの吸蔵・放出時に負極活物質の体積が大きく変化する。このため、負極活物質の微粉化や、負極活物質層の集電体からの脱離が生じやすい。負極活物質の微粉化や、負極活物質層の負極集電体からの脱離が生じると、負極内の集電性が低下し、リチウム二次電池の充放電サイクル特性が低下するという問題がある。
【0005】
このような問題に関し、例えば、特許文献1では、ケイ素及びケイ素合金のうちの少なくとも一方を含む活物質粒子とポリイミドのバインダーとを含む混合物の層を集電体上に形成し、これを非酸化性雰囲気中において焼結する方法が提案されている。この方法により得られた負極を用いることにより、良好なサイクル特性が得られることが特許文献1に記載されている。
【0006】
また、特許文献2〜4では、負極活物質層に含まれる負極バインダーを適正化することにより、良好なサイクル特性を得ることが提案されている。具体的には、特許文献2では、所定の機械的特性を有するポリイミドを負極バインダーとして用いることが提案されている。特許文献3では、ポリイミドまたはポリアミック酸からなるバインダー前駆体が熱処理により分解したイミド化合物を負極バインダーとして用いることが提案されている。また、特許文献4では、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とm−フェニレンジアミンまたは4,4’−ジアミノジフェニルメタンとからなるポリイミドを負極バインダーとして用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−260637号公報
【特許文献2】WO04/004031 A1号公報
【特許文献3】特開2007−242405号公報
【特許文献4】特開2008−34352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、リチウム二次電池の充放電サイクル特性をさらに高めたいという要望がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケイ素及びケイ素合金のうちの少なくとも一方を負極活物質として含むと共に、バインダーを含む負極活物質層を有する負極を備えるリチウム二次電池であって、優れた充放電サイクル特性を有するリチウム二次電池を実現し得るバインダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るリチウム二次電池用バインダーは、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとをイミド化することにより形成され、加水分解性シリル基を有するポリイミド樹脂を含む。
【0011】
本発明に係るリチウム二次電池用バインダーのある特定の局面において、加水分解性シリル基がアルコキシシリル基である。
【0012】
本発明に係るリチウム二次電池用バインダーの他の特定の局面において、ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸の無水物と、ジアミンと、シランカップリング剤とをイミド化することにより形成されたものである。シランカップリング剤は、アルコキシシリル基と、アミノ基もしくはジカルボン酸基またはジカルボン酸無水物基とを含む。
【0013】
本発明に係るリチウム二次電池用バインダーの別の特定の局面において、テトラカルボン酸の無水物は、下記の式(1)で表されるテトラカルボン酸の無水物を含む。ジアミンは、下記の式(2)で表されるジアミンを含む。シランカップリング剤は、下記の式(3)で表されるシランカップリング剤を含む。ポリイミド樹脂は、下記の式(4)で表される構造を含む。ポリイミド樹脂は、下記の式(5)で表されるアルコキシシリル基を有する。
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
本発明に係るリチウム二次電池用バインダーのさらに他の特定の局面において、ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンと、アミノ基を有するシランカップリング剤とをイミド化することにより形成されたものである。テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(ジアミン))が100:100〜100:95の範囲内にある。テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、シランカップリング剤とのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(シランカップリング剤))が100:2〜100:10の範囲内にある。
【0020】
本発明に係るリチウム二次電池用バインダーのさらに別の特定の局面において、ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンと、ジカルボン酸基またはジカルボン酸無水物基を有するシランカップリング剤とをイミド化することにより形成されたものである。テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(ジアミン))が95:100〜100:100の範囲内にある。ジアミンと、シランカップリング剤とのモル比((ジアミン):(シランカップリング剤))が100:2〜100:10の範囲内にある。
【0021】
本発明に係るリチウム二次電池用負極は、負極活物質層を備えている。負極活物質層は、上記本発明に係るリチウム二次電池用バインダーの加水分解性シリル基が加水分解したものと、ケイ素及びケイ素合金のうちの少なくとも一方を含有する負極活物質粒子とを含む。
【0022】
本発明に係るリチウム二次電池は、電極体と、電極体に含浸されている非水電解質とを備えている。電極体は、上記本発明に係るリチウム二次電池用負極と、正極と、リチウム二次電池用負極と正極との間に配置されているセパレーターとを含む。
【0023】
本発明に係るリチウム二次電池用バインダー前駆体溶液は、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と1価のアルコールとが反応することにより形成されたエステル化物と、ジアミンと、加水分解性シリル基を有すると共に、アミノ基もしくはジカルボン
酸基またはジカルボン酸無水物基を有するシランカップリング剤とを含む。
【0024】
本発明に係るリチウム二次電池用バインダー前駆体溶液のある特定の局面では、エステル化物は、下記の式(1)で表されるテトラカルボン酸の無水物と、1価のアルコールとしてのエタノールとが反応することにより形成されたものを含む。ジアミンは、下記の式(2)で表されるジアミンを含む。シランカップリング剤は、下記の式(3)で表されるシランカップリング剤を含む。
【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

【0028】
本発明に係るリチウム二次電池用バインダー前駆体溶液の他の特定の局面では、シランカップリング剤として、アミノ基を有するシランカップリング剤を含む。テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(ジアミン))が100:100〜100:95の範囲内にある。テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、シランカップリング剤とのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(シランカップリング剤))が100:2〜100:10の範囲内にある。
【0029】
本発明に係るリチウム二次電池用バインダー前駆体溶液の別の特定の局面では、シランカップリング剤として、ジカルボン酸基またはジカルボン酸無水物基を有するシランカップリング剤を含む。テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(ジアミン))が95:100〜100:100の範囲内にある。ジアミンと、シランカップリング剤とのモル比((ジアミン):(シランカップリング剤))が100:2〜100:10の範囲内にある。
【0030】
本発明に係るリチウム二次電池用負極の製造方法では、上記本発明に係るリチウム二次電池用バインダー前駆体溶液を作製する。リチウム二次電池用バインダー前駆体溶液中に、ケイ素及びケイ素合金のうちの少なくとも一方を含む負極活物質粒子を分散させることにより負極活物質スラリーを作製する。負極活物質スラリーを負極集電体の上に塗布する。負極活物質スラリーが塗布された負極集電体を非酸化性雰囲気中で熱処理することにより、エステル化物とジアミンとシランカップリング剤とをイミド化させることにより、負極集電体の上に、負極活物質層を形成する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ケイ素及びケイ素合金のうちの少なくとも一方を負極活物質として含むと共に、バインダーを含む負極活物質層を有する負極を備えるリチウム二次電池であって、優れた充放電サイクル特性を有するリチウム二次電池を実現し得るバインダーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の略図的断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の略図的平面図である。
【図3】本発明の一実施形態における電極体の略図的斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態における負極の一部分の略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1及び図2に示すリチウム二次電池1を例に挙げて説明する。但し、リチウム二次電池1は、単なる例示である。本発明は、リチウム二次電池1に何ら限定されない。
【0034】
図1に示すように、リチウム二次電池1は、扁平型の電極体5を備えている。電極体5は、巻回された状態で外装体9に収納されている。外装体9は、例えば、金属や合金、樹脂などにより形成することができる。
【0035】
電極体5には、非水電解質が含浸している。非水電解質に用いられる溶媒の具体例としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートやフルオロエチレンカーボネートなどの環状カーボネートや、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒などが挙げられる。
【0036】
非水電解質に用いられる溶質の具体例としては、例えば、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSOなど及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0037】
また、非水電解質として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質や、LiI、LiNなどの無機固体電解質を用いてもよい。
【0038】
図1に示すように、電極体5は、負極集電タブ4(図2及び図3を参照)が電気的に接続されている負極7と、正極集電タブ3(図2及び図3を参照)が電気的に接続されている正極6と、セパレーター8とを有する。セパレーター8は、負極7と正極6との間に配置されている。このセパレーター8によって、負極7と正極6とが電気的に絶縁されている。
【0039】
正極6は、導電性金属箔などにより構成される正極集電体と、正極集電体の上に形成される正極活物質層とを備えている。正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質は、リチウムを電気化学的に挿入・脱離するものである限りにおいて特に限定されない。正極活物質の具体例としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO、LiCo0.5Ni0.5、LiNi0.7Co0.2Mn0.1などのリチウム含有遷移金属酸化物や、MnOなどのリチウムを含有していない金属酸化物等が挙げられる。
【0040】
図4に示すように、負極7は、負極集電体7aと、負極活物質層7bとを備えている。負極集電体7aは、導電性を有するものである限りにおいて特に限定されない。負極集電体7aは、例えば、導電性金属箔により構成することができる。導電性金属箔の具体例としては、例えば、銅、ニッケル、鉄、チタン、コバルト、マンガン、錫、ケイ素、クロム、ジルコニウム等の金属またはこれらの金属の一種以上を含む合金からなる箔が挙げられる。これらの中でも、導電性金属箔は、活物質粒子中に拡散しやすい金属元素を含有するものが好ましいため、銅薄膜または銅を含む合金からなる箔により構成されていることが好ましい。
【0041】
負極活物質層7bは、負極集電体7aの上に形成されている。負極活物質層7bは、負極活物質粒子と、バインダーとを含む。負極活物質層7bは、アセチレンブラックなどの導電剤をさらに含んでいてもよい。
【0042】
本実施形態において、負極活物質粒子は、負極活物質として、ケイ素及びケイ素合金のうちの少なくとも一方を含んでいる。
【0043】
本実施形態において、バインダーは、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとをイミド化することにより形成され、加水分解性シリル基を有するポリイミド樹脂を含んでいる。このため、このバインダーは、加水分解性シリル基が加水分解され、シラノール基となった状態で含まれている。そして、このシラノール基が、負極活物質粒子の表面に存在する水酸基と脱水縮合することにより、バインダーと負極活物質粒子との間に化学結合が形成されている。その結果、バインダーと負極活物質との強い密着性が実現されている。よって、充放電時に負極活物質の体積変化が生じた際にも、バインダーと負極活物質粒子とが乖離しがたい。従って、優れた充放電サイクル特性が実現されている。
【0044】
加水分解性シリル基は、例えば、空気中に含まれる水分と反応することにより加水分解するものであれば特に限定されない。加水分解性シリル基は、例えば、アルコキシシリル基であってもよい。アルコキシシリル基の具体例としては、例えば、下記の化学式(5)で表されるものが挙げられる。
【0045】
【化9】

【0046】
なお、上記加水分解性シリル基を有するポリイミド樹脂の作製方法は、特に限定されない。上記加水分解性シリル基を有するポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンと、アルコキシシリル基と、アミノ基もしくはジカルボン酸基またはジカルボン酸無水物基とを含むシランカップリング剤とをイミド化することにより形成することができる。
【0047】
テトラカルボン酸の無水物の具体例としては、例えば、下記の式(1)で表されるテトラカルボン酸の無水物が挙げられる。
【0048】
ジアミンの具体例としては、例えば、下記の式(2)で表されるジアミンが挙げられる。
【0049】
シランカップリング剤の具体例としては、下記の式(3)で表されるシランカップリン
グ剤が挙げられる。
【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
式(1)で表されるテトラカルボン酸の無水物と、式(2)で表されるジアミンと、式(3)で表されるシランカップリング剤とをイミド化することによりポリイミド樹脂を形成した場合は、下記の式(4)で表される構造を主骨格中に有し、かつ、上記式(5)で表されるアルコキシシリル基を有するポリイミド樹脂が作製される。このポリイミド樹脂では、主骨格中に芳香環が多く含まれている。このため、このポリイミド樹脂は、高い機械的強度を有している。従って、このポリイミド樹脂を含むバインダーを用いることにより、負極活物質層7bの負極集電体7aからの剥離を効果的に抑制することができる。よって、より優れた充放電サイクル特性を実現することができる。
【0054】
【化13】

【0055】
もっとも、テトラカルボン酸の無水物、ジアミン、シランカップリング剤は、上記具体例に限定されない。好ましく用いられるテトラカルボン酸の無水物、ジアミン及びシランカップリング剤としては、上記具体例以外に、以下のものが挙げられる。
【0056】
テトラカルボン酸の無水物の具体例としては、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸1,2:4,5−二無水物(別名;ピロメリット酸二無水物)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0057】
ジアミンの具体例としては、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノベンゾフェ
ノン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノフェニルエーテル、4,4’−ジアミノフェニルメタン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0058】
シランカップリング剤としては、上記式(3)で表されるシランカップリング剤のようにアミノ基を有するものと、ジカルボン酸基またはジカルボン酸無水物基を有するものとが挙げられる。アミノ基を有するシランカップリング剤は、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸無水物とイミド結合を形成する。一方、ジカルボン酸基またはジカルボン酸無水物基を有するシランカップリング剤は、ジアミンとイミド結合を形成する。
【0059】
アミノ基を有するシランカップリング剤の具体例としては、N−β(アミノエチル)γアミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γアミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γアミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0060】
ジカルボン酸基またはジカルボン酸無水物基を有するシランカップリング剤の具体例としては、例えば、下記の式(6)〜式(21)で表されるシランカップリング剤などが挙げられる。
【0061】
【化14】

【0062】
【化15】

【0063】
【化16】

【0064】
【化17】

【0065】
【化18】

【0066】
【化19】

【0067】
【化20】

【0068】
【化21】

【0069】
【化22】

【0070】
【化23】

【0071】
【化24】

【0072】
【化25】

【0073】
【化26】

【0074】
【化27】

【0075】
【化28】

【0076】
【化29】

【0077】
アミノ基をひとつ有するシランカップリング剤を用いる場合は、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(ジアミン))が100:100〜100:95の範囲内にあることが好ましい。テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、シランカップリング剤とのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(シランカップリング剤))が100:2〜100:10の範囲内にあることが好ましい。この場合には、バインダーの機械的強度を大きく損なうことなく、バインダーと負極活物質粒子との密着性を効果的に向上することができる。
【0078】
テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとのモル比が上記範囲外となると、重合度が低くなりすぎ、バインダーの機械的強度が低くなりすぎる場合がある。
【0079】
テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物に対するシランカップリング剤のモル比が小さすぎると、バインダーと負極活物質粒子との密着性の向上効果が十分に得られない場合がある。一方、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物に対するシランカップリング剤のモル比が大きすぎると、バインダーの重合度が低くなりすぎ、バインダーの機械的強度が低くなりすぎる場合がある。
【0080】
ジカルボン酸基またはジカルボン酸無水物基をひとつ有するシランカップリング剤を用いる場合は、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(ジアミン))が95:100〜100:100の範囲内にあることが好ましい。また、ジアミンと、シランカップリング剤とのモル比((ジアミン):(シランカップリング剤))が100:2〜100:10の範囲内にあることが好ましい。この場合には、バインダーの機械的強度を大きく損なうことなく、バインダーと負極活物質粒子との密着性を効果的に向上することができる。
【0081】
テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとのモル比が上記範囲外となると、重合度が低くなりすぎ、バインダーの機械的強度が低くなりすぎる場合がある。
【0082】
ジアミンに対するシランカップリング剤のモル比が小さすぎると、バインダーと負極活物質粒子との密着性の向上効果が十分に得られない場合がある。一方、ジアミンに対するシランカップリング剤のモル比が大きすぎると、バインダーの重合度が低くなりすぎ、バインダーの機械的強度が低くなりすぎる場合がある。
【0083】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池1の製造方法の一例について説明する。
【0084】
まず、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と1価のアルコールとが反応することにより形成されたエステル化物と、ジアミンと、加水分解性シリル基を有するシランカップリング剤とを含むバインダー前駆体溶液を作製する。
【0085】
ここで、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物、ジアミン、シランカップリング剤としては、上述のものを使用することができる。
【0086】
1価のアルコールの具体例としては、メタノ−ル、エタノール、イソプロパノ−ル、ブタノ−ル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコ−ルエチルエ−テル、エチルカルビト−ルなどの脂肪族アルコ−ルや、ベンジルアルコ−ル、シクロヘキサノ−ルなどの環状アルコ−ルなどが挙げられる。
【0087】
アミノ基を有するシランカップリング剤を用いる場合は、バインダー前駆体溶液におけるテトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(ジアミン))を100:100〜100:95の範囲内とすることが好ましい。テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、シランカップリング剤とのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(シランカップリング剤))を100:2〜100:10の範囲内とすることが好ましい。
【0088】
一方、ジカルボン酸基またはジカルボン酸無水物基を有するシランカップリング剤を用いる場合は、バインダー前駆体溶液におけるテトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(ジアミン))を95:100〜100:100の範囲内とすることが好ましい。ジアミンと、シランカップリング剤とのモル比((ジアミン):(シランカップリング剤))を100:2〜100:10の範囲内とすることが好ましい。
【0089】
次に、バインダー前駆体溶液中に、ケイ素及びケイ素合金のうちの少なくとも一方を含む負極活物質粒子を分散させることにより負極活物質スラリーを作製する。その負極活物質スラリーを負極集電体7aの上に塗布する。その後、負極活物質スラリーが塗布された負極集電体7aを非酸化性雰囲気中で熱処理することにより、エステル化物とジアミンとシランカップリング剤とをイミド化させることにより、負極集電体7aの上に、負極活物質層7bを形成する。
【0090】
以上の工程により作製した負極7と、正極6とを、セパレーター8を介して巻き取ることにより、電極体5を作製する。次に、電極体5に非水電解質を含浸させ、外装体9に収納する。その後、外装体9の開口部をシールすることにより、リチウム二次電池1を完成させることができる。
【0091】
上記製造方法において、負極活物質層の形成に用いた、ポリイミド樹脂のモノマー成分を含むバインダー前駆体溶液は、ポリイミド樹脂の前駆体として一般的に用いられるポリアミド酸のようなポリマー状態のバインダー前駆体よりも粘度が低い。従って、ポリイミド樹脂のモノマー成分を含むバインダー前駆体溶液を用いることにより、負極活物質スラリー作製時において、負極活物質粒子表面の凹凸内にバインダー前駆体溶液が入り込みやすくなる。また、負極集電体上への負極活物質スラリーの塗布時において、負極集電体表面の凹凸内にバインダー前駆体溶液が入り込みやすくなる。よって、負極活物質粒子間、負極活物質粒子と負極集電体との間のアンカー効果が大きく発現する。従って、負極活物質層と負極集電体との間の密着性をより高くすることができる。
【0092】
なお、上記非酸化性雰囲気中における熱処理の温度は、ポリイミド樹脂のガラス転移温度を超え、且つ5%重量減少開始温度を下回る範囲であることが好ましい。ガラス転移温度を超える温度で熱処理を行った場合、生成したポリイミド樹脂が可塑性となる。このため、負極活物質粒子や負極集電体7aの表面に存在する凹凸部分へのバインダーの入り込みが更に大きくなり、アンカー効果がより大きく発現する。従って、バインダーと負極活物質粒子との密着性及びバインダーと負極集電体7aとの密着性をより高めることができる。
【0093】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0094】
(実施例1)
実施例1では、上記実施形態に係るリチウム二次電池1と実質的に同様の構成を有する電池A1を下記の要領で作製した。
【0095】
〔負極の作製〕
(1)負極活物質の作製
先ず、内温が800℃である流動層内に多結晶ケイ素微粒子を導入すると共に、モノシラン(SiH)を送入することにより粒状の多結晶ケイ素を作製した。次に、この粒状の多結晶ケイ素を、ジェットミルを用いて粉砕した後、分級機にて分級し、多結晶ケイ素
粉末(負極活物質)を作製した。多結晶ケイ素粉末のメディアン径は10μmであった。多結晶ケイ素粉末の結晶子サイズは、44nmであった。
【0096】
なお、メディアン径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における累積体積50%径である。多結晶ケイ素粉末の結晶子サイズは、粉末X線解析のケイ素の(111)ピークの反値幅を用いてScherrerの式により算出した。
【0097】
(2)バインダー前駆体溶液の作製
式(1)で表される3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物に2当量のエタノールを反応させることによりエステル化したものと、式(2)で表されるm−フェニレンジアミンと、式(3)で表される3−アミノプロピルトリエトキシシランとを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ、バインダー前駆体溶液a1を得た。なお、(3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物):(m−フェニレンジアミン):(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)のモル比は、100:95:10とした。
【0098】
(3)負極活物質スラリーの作製
上記作製の負極活物質粉末と、負極導電剤としての平均粒径3μmの黒鉛粉末と、バインダー前駆体溶液a1とを混合し、負極活物質スラリーを作製した。なお、負極活物質粉末と黒鉛粉末と負極バインダー(負極バインダー前駆体溶液a1の乾燥によるNMP除去、重合反応、イミド化反応後のもの)の質量比が97:3:8.6となるようにした。
【0099】
(4)負極の作製
厚さ18μmの銅合金箔の両面を、表面粗さRa(JIS B 0601−2001)が0.25μm、平均山間隔S(JIS B 0601−2001)が0.85μmとなるように電解銅粗化し、これを負極集電体として用いた。
【0100】
その負極集電体の両面に、上記作製の負極活物質スラリーを25℃の空気雰囲気中で塗布し、120℃の空気雰囲気中で乾燥した後、25℃の空気雰囲気中で圧延した。その後、400℃のアルゴン雰囲気中で10時間熱処理した。これにより、負極集電体の両面に負極活物質層が形成された負極を作製した。
【0101】
そして、最後に、負極の端部に、負極集電タブとして、ニッケル板を接続した。
【0102】
熱処理によって、バインダー前駆体溶液a1からポリイミド樹脂が生成したことを確認するために以下の実験を行った。まず、バインダー前駆体溶液a1を、120℃の空気雰囲気中で乾燥させてNMPを除去した後、熱処理と同様に、400℃のアルゴン雰囲気中で10時間熱処理したものの赤外線(IR)吸収スペクトルを測定した。その結果、1720cm−1付近にイミド結合由来のピークが検出された。これにより、バインダー前駆体溶液a1の熱処理により重合反応とイミド化反応とが進行してポリイミド化合物が生成することが確認された。
【0103】
〔正極の作製〕
(1)リチウム遷移金属複合酸化物の作製
正極活物質として、LiCOとCoCOとを、LiとCoとのモル比が1:1になるようにして乳鉢にて混合した後、800℃の空気雰囲気中にて24時間熱処理した後に、粉砕した。これにより、平均粒子径11μmのLiCoOで表されるリチウムコバルト複合酸化物の粉末を得た。本実施例では、このリチウムコバルト複合酸化物粉末を正極活物質粉末として用いた。
【0104】
なお、得られた正極活物質粉末のBET比表面積は0.37m/gであった。
【0105】
(2)正極の作製
分散媒としてのN−メチル−2−ピロリドンに、上記作製の正極活物質粉末と、正極導電剤としての炭素材料粉末と、正極バインダーとしてのポリフッ化ビニリデンとを加えた後、混練し、正極活物質スラリーを作製した。なお、正極活物質粉末と正極導電剤と正極バインダーとの質量比が95:2.5:2.5となるようにした。
【0106】
この正極活物質スラリーを、正極集電体としての厚み15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥させた後に、圧延した。
【0107】
最後に、正極集電体の正極活物質層の未塗布部分に、正極集電タブとしてアルミニウム板を接続した。
【0108】
〔非水電解液の作製〕
アルゴン雰囲気中で、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比3:7で混合した溶媒に対し、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1モル/リットル溶解させ、非水電解液とした。
【0109】
〔電極体の作製〕
上記正極を1枚と、上記負極を1枚と、ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレーター2枚とを用意した。そして、正極と負極とをセパレーターを介して対向させ、正極集電タブ、負極集電タブが共に最外周となるようにして、円柱状の巻き芯に渦巻き状に巻回した。その後、巻き芯を引き抜いて、渦巻状の電極体を作製した。次に、その電極体を押し潰すことにより電極体を得た。
【0110】
〔電池の作製〕
上記作製の扁平型電極体及び上記作製の電解液を、25℃、1気圧のアルゴン雰囲気中でアルミニウムラミネート製の外装体内に挿入し、実施例1に係る扁平型電池A1を作製した。
【0111】
(実施例2)
バインダー前駆体溶液の作製において、(3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物):(m−フェニレンジアミン):(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)のモル比を100:100:5としたこと以外は、上記実施例1と同様にして電池A2を作製した。
【0112】
(比較例1)
3−アミノプロピルトリエトキシシランに替えて下記式(22)で表されるN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして電池B1を作製した。
【0113】
【化30】

【0114】
(比較例2)
バインダー前駆体溶液の作製において、(3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラ
カルボン酸二無水物):(m−フェニレンジアミン):(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)のモル比を100:100:0としたこと以外は、上記実施例1と同様にして電池B2を作製した。すなわち、比較例2では、バインダーとしてのポリイミド樹脂にアルコキシシリル基を導入しなかった。
【0115】
〔充放電サイクル特性の評価〕
電池A1,A2及び電池B1,B2について、下記の充放電サイクル条件にて充放電サイクル特性を評価した。
【0116】
(充放電サイクル条件)
・1サイクル目の充電条件
50mAの電流で4時間定電流充電を行った後、200mAの電流で電池電圧が4.2Vとなるまで定電流充電を行い、更に4.2Vの電圧で電流値が50mAとなるまで定電圧充電を行った。
・1サイクル目の放電条件
200mAの電流で電池電圧が2.75Vとなるまで定電流放電を行った。
・2サイクル目以降の充電条件
1000mAの電流で電池電圧が4.2Vとなるまで定電流充電を行い、更に4.2Vの電圧で電流値が50mAとなるまで定電圧充電を行った。
・2サイクル目以降の放電条件
1000mAの電流で電池電圧が2.75Vとなるまで定電流放電を行った。
【0117】
次に、以下の計算方法で、初期充放電効率及びサイクル寿命を求めた。結果を表1に示す。
・初期充放電効率=(1サイクル目の放電容量/1サイクル目の充電容量)×100
・サイクル寿命:容量維持率が70%になった時のサイクル数
但し、容量維持率とは、nサイクル目の放電容量を、1サイクル目の放電容量で除した値である。
【0118】
【表1】

【0119】
表1に示す結果から、負極バインダーが加水分解性シリル基を有するポリイミド樹脂である電池A1,A2は、負極バインダーが加水分解性シリル基を有さないポリイミド樹脂である電池B1,B2よりも優れた充放電サイクル特性を有することが分かる。
【0120】
また、電池A1とA2との比較より、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の方がm−フェニレンジアミンよりも多い電池A1の方が、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とm−フェニレンジアミンとが等モル量である電池A2よりも優れた充放電サイクル特性を有することが分かる。これは、シラ
ンカップリング剤である3−アミノプロピルトリエトキシシランの反応対象である3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を過剰に添加することにより、より多くのアルコキシシリル基を導入できたためであると考えられる。
【符号の説明】
【0121】
1…リチウム二次電池
3…正極集電タブ
4…負極集電タブ
5…電極体
6…正極
7…負極
7a…負極集電体
7b…負極活物質層
8…セパレーター
9…外装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンとをイミド化することにより形成され、加水分解性シリル基を有するポリイミド樹脂を含む、リチウム二次電池用バインダー。
【請求項2】
前記加水分解性シリル基がアルコキシシリル基である、請求項1に記載のリチウム二次電池用バインダー。
【請求項3】
前記ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸の無水物と、ジアミンと、シランカップリング剤とをイミド化することにより形成されたものであり、
前記シランカップリング剤は、アルコキシシリル基と、アミノ基もしくはジカルボン酸基またはジカルボン酸無水物基とを含む、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用バインダー。
【請求項4】
前記テトラカルボン酸の無水物は、下記の式(1)で表されるテトラカルボン酸の無水物を含み、
前記ジアミンは、下記の式(2)で表されるジアミンを含み、
前記シランカップリング剤は、下記の式(3)で表されるシランカップリング剤を含み、
前記ポリイミド樹脂は、下記の式(4)で表される構造を含み、かつ、下記の式(5)で表されるアルコキシシリル基を有する、請求項3に記載のリチウム二次電池用バインダー。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【請求項5】
前記ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンと、アミノ基を有するシランカップリング剤とをイミド化することにより形成されたものであり、
前記テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、前記ジアミンとのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(ジアミン))が100:100〜100:95の範囲内にあり、かつ、前記テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、前記シランカップリング剤とのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(シランカップリング剤))が100:2〜100:10の範囲内にある、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用バインダー。
【請求項6】
前記ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、ジアミンと、ジカルボン酸基またはジカルボン酸無水物基を有するシランカップリング剤とをイミド化することにより形成されたものであり、
前記テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、前記ジアミンとのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(ジアミン))が95:100〜100:100の範囲内にあり、かつ、前記ジアミンと、前記シランカップリング剤とのモル比((ジアミン):(シランカップリング剤))が100:2〜100:10の範囲内にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用バインダー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用バインダーの加水分解性シリル基が加水分解したものと、ケイ素及びケイ素合金のうちの少なくとも一方を含有する負極活物質粒子とを含む負極活物質層を備える、リチウム二次電池用負極。
【請求項8】
請求項7に記載のリチウム二次電池用負極と、正極と、前記リチウム二次電池用負極と前記正極との間に配置されているセパレーターとを含む電極体と、
前記電極体に含浸されている非水電解質とを備える、リチウム二次電池。
【請求項9】
テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と1価のアルコールとが反応することにより形成されたエステル化物と、ジアミンと、加水分解性シリル基を有すると共に、アミノ基もしくはジカルボン酸基またはジカルボン酸無水物基を有するシランカップリング剤とを含む、リチウム二次電池用バインダー前駆体溶液。
【請求項10】
前記エステル化物は、下記の式(1)で表されるテトラカルボン酸の無水物と、前記1価のアルコールとしてのエタノールとが反応することにより形成されたものを含み、
前記ジアミンは、下記の式(2)で表されるジアミンを含み、
前記シランカップリング剤は、下記の式(3)で表されるシランカップリング剤を含む、請求項9に記載のリチウム二次電池用バインダー前駆体溶液。
【化6】

【化7】

【化8】

【請求項11】
前記シランカップリング剤として、アミノ基を有するシランカップリング剤を含み、
前記テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、前記ジアミンとのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(ジアミン))が100:100〜100:95の範囲内にあり、かつ、前記テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、前記シランカップリング剤とのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(シランカップリング剤))が100:2〜100:10の範囲内にある、請求項9または10に記載のリチウム二次電池用バインダー前駆体溶液。
【請求項12】
前記シランカップリング剤として、ジカルボン酸基またはジカルボン酸無水物基を有するシランカップリング剤を含み、
前記テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物と、前記ジアミンとのモル比((テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸の無水物):(ジアミン))が95:100〜100:100の範囲内にあり、かつ、前記ジアミンと、前記シランカップリング剤とのモル比((ジアミン):(シランカップリング剤))が100:2〜100:10の範囲内にある、請求項9に記載のリチウム二次電池用バインダー前駆体溶液。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用バインダー前駆体溶液を作製する工程と、
前記リチウム二次電池用バインダー前駆体溶液中に、ケイ素及びケイ素合金のうちの少なくとも一方を含む負極活物質粒子を分散させることにより負極活物質スラリーを作製する工程と、
前記負極活物質スラリーを負極集電体の上に塗布する工程と、
前記負極活物質スラリーが塗布された負極集電体を非酸化性雰囲気中で熱処理することにより、前記エステル化物と前記ジアミンと前記シランカップリング剤とをイミド化させることにより、前記負極集電体の上に、負極活物質層を形成する工程と、
を備える、リチウム二次電池用負極の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−109142(P2012−109142A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257699(P2010−257699)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】