説明

リニアガイドのサイドシール

【課題】シール本体のゲート口を完全に切断或いは除去する必要がなく、それでいて組立性のよいリニアガイドのサイドシールを提供する。
【解決手段】リニアガイドのスライダのスライド方向両端部に取付けられ且つ案内レールに摺接するサイドシールにあって、弾性材料を型で成形してなり且つ案内レールに摺接するシール本体14と、シール本体14を収納して保持する保持器13とを備え、保持器13のシール本体収納部21に、シール本体14の弾性材料ゲート口24を収納するゲート口収納部25を形成したことにより、シール本体14の弾性材料ゲート口24を完全に切断或いは除去する必要がなくなり、組立作業性も向上する。また、ゲート口収納部25を保持器13のシール本体収納部21奥側又は表側に形成し、シール本体14の弾性材料ゲート口24をゲート口収納部25に応じた部位とすれば、誤組立防止になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアガイドのサイドシールに関し、より具体的には案内レールに沿ってスライドするスライダのスライド方向両端部に取付けられ、案内レールに摺接して塵芥などの異物の侵入を防止するものである。
【背景技術】
【0002】
リニアガイドのスライダに取付けられるサイドシールは、例えば例えば下記特許文献1に記載されるように、エラストマなどの弾性材料からなるシール本体を保持器とカバーで挟んで構成される。このように構成することで、柔らかいシール本体を堅固な保持器とカバーで保持してアッセンブリー化することができ、組立などでのハンドリングが容易になると共に、組立精度が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−211900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エラストマなどの弾性材料を射出成形或いは注入成形などによって型に流し込んで成形する場合、弾性材料の湯口となるゲート口が発生する。しかしながら、このゲート口をシール本体の表面と所謂面一になるまで完全に切断或いは除去するのは大変に手間がかかる。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、シール本体のゲート口を完全に切断或いは除去する必要がなく、それでいて組立性のよいリニアガイドのサイドシールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のリニアガイドのサイドシールは、リニアガイドのスライダのスライド方向両端部に取付けられ且つ案内レールに摺接するサイドシールであって、弾性材料を型で成形してなり且つ前記案内レールに摺接するシール本体と、前記シール本体を収納して保持する保持器とを、少なくとも備え、前記保持器のシール本体収納部に、シール本体の弾性材料ゲート口を収納するゲート口収納部を形成したことを特徴とするものである。
【0006】
また、前記シール本体を保持器に収納する収納方向先方を奥側、収納方向後方を表側とした場合、前記ゲート口収納部を保持器のシール本体収納部表側に形成し、前記シール本体の弾性材料ゲート口を前記ゲート口収納部に応じた部位としたことを特徴とするものである。
また、前記シール本体を保持器に収納する収納方向先方を奥側、収納方向後方を表側とした場合、前記ゲート口収納部を保持器のシール本体収納部奥側に形成し、前記シール本体の弾性材料ゲート口を前記ゲート口収納部に応じた部位としたことを特徴とするものである。
また、前記保持器のシール本体収納部に収納されたシール本体をカバーで覆うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
而して、本発明のリニアガイドのサイドシールによれば、リニアガイドのスライダのスライド方向両端部に取付けられ且つ案内レールに摺接するサイドシールにあって、弾性材料を型で成形してなり且つ案内レールに摺接するシール本体と、シール本体を収納して保持する保持器とを備え、保持器のシール本体収納部に、シール本体の弾性材料ゲート口を収納するゲート口収納部を形成したことにより、シール本体の弾性材料ゲート口を完全に切断或いは除去する必要がなくなり、その分だけ、手間が軽減されると共に、シール本体の弾性材料ゲート口を保持器のシール本体収納部のゲート口収納部に収納すればよいので、作業性も向上する。
【0008】
また、シール本体を保持器に収納する収納方向先方を奥側、収納方向後方を表側とした場合、ゲート口収納部を保持器のシール本体収納部表側に形成し、シール本体の弾性材料ゲート口をゲート口収納部に応じた部位としたことにより、シール本体に表裏などの向きがある場合の識別用として弾性材料ゲート口を用いることができ、組立ミスを防止して組立性が向上する。
【0009】
また、シール本体を保持器に収納する収納方向先方を奥側、収納方向後方を表側とした場合、ゲート口収納部を保持器のシール本体収納部奥側に形成し、シール本体の弾性材料ゲート口をゲート口収納部に応じた部位としたことにより、シール本体に表裏などの向きがある場合の識別用として弾性材料ゲート口を用いることができ、組立ミスを防止して組立性が向上すると共に、シール本体が保持器から抜け落ちてしまうのを抑制防止することができる。
また、保持器のシール本体収納部に収納されたシール本体をカバーで覆うことにより、サイドシールをアッセンブリー化することができ、組立などでのハンドリングが容易になると共に、組立精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のリニアガイドのサイドシールの第1実施形態を示すリニアガイドの全体斜視図である。
【図2】図1のリニアガイドのサイドシールの詳細を示す斜視図である。
【図3】図2のサイドシールの縦断面図である。
【図4】本発明のリニアガイドのサイドシールの第2実施形態を示す縦断面図である。
【図5】本発明のリニアガイドのサイドシールの第3実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明のリニアガイドのサイドシールの第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のサイドシールが用いられたリニアガイドの全体構成を示す斜視図である。このリニアガイドは、断面が略方形で長手の案内レール1と、この案内レール1の長手方向にスライド可能に跨設された横断面略コ字状のスライダ2とを備えて構成される。前記案内レール1は、長手方向と直交する両側面に断面略三角形の隣接する二つの斜面からなるボール案内溝3aが長手方向に沿って形成されている。また、この案内レール1には、その上面1fに開口する取付け穴12が長手方向に沿って複数形成されている。各取付け穴12は、案内レール1の上面1fに開口する座ぐり部と、その座ぐり部と同軸に形成されて案内レール1の下面まで貫通する貫通穴とからなり、この取付け穴12に座付きボルトを挿通し、取付対象物にボルトを螺合し締付けて案内レール1を取付対象物に固定する。
【0012】
前述したように、案内レール1の両側面には長手方向に沿ったボール案内溝3aが形成されており、スライダ2の内側側面には、この案内レール1のボール案内溝3aに対向するボール案内溝3bが形成されている。そして、これらのボール案内溝3a、3bの間に、複数の転動体であるボール4が転動自在に介装されている。更に、スライダ2には、ボール案内溝3bと略平行で且つボール4が通行可能な貫通穴5が穿設されており、この貫通穴5とボール案内溝3bとの間でボール4を案内するために、スライダ2のスライド方向両端部には、リターンガイド6及びエンドキャップ7が夫々取付けられている。
【0013】
更に、各エンドキャップ7には、スライド方向両端部にサイドシール8が取付けられている。このサイドシール8は、案内レール1の上面1f並びにボール案内溝3aに摺接して、それらに付着している塵芥などの異物がスライダ2の内部に侵入するのを防止するためのものである。図2には、サイドシール8の具体的な構成を示す。このサイドシール8は、エンドキャップ7にボルト10(図1参照)で取付けられる保持器13と、保持器13に形成されたシール本体収納部21に収納されるシール本体14と、前記シール本体収納部21に収納されたシール本体14を覆い且つ保持器13に図示しない固定具で固定されるカバー15とを備えて構成される。
【0014】
前記保持器13は、比較的厚さの薄い略方形の金属製板材からなり、図示中央下部には、前記案内レール1の上面1f及びボール案内溝3aが所定の隙間をもって通過可能な切欠き部22が形成され、その切欠き部22の周囲を窪ませてシール本体14を収納するシール本体収納部21が形成されている。
前記シール本体14は、前記切欠き部22の周縁に相当する形状をなし、その内側面には、前記案内レール1の上面1f及びボール案内溝3aに緊密に摺接するリップ23が形成されている。このシール本体14は、エラストマなどの弾性材料を射出成形或いは注入成形などによって型に流入して形成されたものであり、図2の中央上部には、弾性材料の湯口となる弾性材料ゲート口24がある。前記保持器13のシール本体収納部14には、この弾性材料ゲート口24を収納するゲート口収納部25が連設されているのであるが、その詳細については後段に詳述する。
【0015】
前記カバー15は、厚さの薄い略方形の合成樹脂板からなり、図示中央下部には、前記保持器13と同様に、前記案内レール1の上面1f及びボール案内溝3aが所定の隙間をもって通過可能な切欠き部22が形成されている。なお、このカバー15の図示中央上部もU字状に切欠かれているが、これは、前記保持器13を通じてエンドキャップ7に図示しないグリース供給口を取付けるためである。
【0016】
前述したように、本実施形態の保持器13のシール本体収納部21には、シール本体14の弾性材料ゲート口24を収納するためのゲート口収納部25が連設されている。図3に、その詳細を示す。図3aは、シール本体14をシール本体収納部21に収納する前の状態を示し、図3bは、シール本体14をシール本体収納部21に収納した状態を示す。本実施形態のシール本体14のように薄い部品、或いは小さい部品に形成された弾性材料ゲート口24を、所謂面一に完全に切断或いは除去するのは手間がかかる。そこで、本実施形態では、図3aに示すように、シール本体14の弾性材料ゲート口24を収納するゲート口収納部25を保持器13のシール本体収納部21に連接し、図3bに示すように、保持器13のシール本体収納部21にシール本体14を収納すると、当該シール本体14の弾性材料ゲート口24がゲート口収納部25に自動的に収納されるようにし、これにより弾性材料ゲート口24を完全に切断或いは除去する手間を省き、合わせて組立作業性を向上する。
【0017】
このように本実施形態のリニアガイドのサイドシールでは、リニアガイドのスライダ2のスライド方向両端部に取付けられ且つ案内レール1に摺接するサイドシール8にあって、弾性材料を型で成形してなり且つ案内レール1に摺接するシール本体14と、シール本体14を収納して保持する保持器13とを備え、保持器13のシール本体収納部21に、シール本体14の弾性材料ゲート口24を収納するゲート口収納部25を形成したことにより、シール本体14の弾性材料ゲート口24を完全に切断或いは除去する必要がなくなり、その分だけ、手間が軽減されると共に、シール本体14の弾性材料ゲート口24を保持器13のシール本体収納部21のゲート口収納部25に収納すればよいので、作業性も向上する。
【0018】
また、保持器13のシール本体収納部21に収納されたシール本体14をカバー15で覆うことにより、サイドシール8をアッセンブリー化することができ、組立などでのハンドリングが容易になると共に、組立精度が向上する。
図4には、本発明のリニアガイドのサイドシールの第2実施形態の詳細を示す。図4は、前記第1実施形態の図3bと同様に、シール本体14をシール本体収納部21に収納した状態を示す。本実施形態のリニアガイドの概略構成は、前記第1実施形態の図1と同様であるので、その詳細な説明を省略する。また、本実施形態のサイドガイドの概略構成は、前記第2実施形態の図2と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0019】
本実施形態でも、シール本体14を保持器13のシール本体収納部21に収納するが、その際、シール本体14を保持器13に収納する収納方向先方を奥側、収納方向後方を表側とした場合、ゲート口収納部25を保持器13のシール本体収納部21の表側に形成し、シール本体14の弾性材料ゲート口24も、そのゲート口収納部25に応じた部位、即ちシール本体14の収納方向表側に形成した。
【0020】
例えば本実施形態のシール本体14のように、図2の左右方向が対称形で、且つ例えばリップ23の向きなどのようにシール本体14に表裏の区別がある場合、表裏を間違えて組立てる、所謂誤組立してしまうと、シール本体14の機能が十分に発揮されない恐れがある。本実施形態のように、例えばゲート口収納部25を保持器13のシール本体収納部21の表側に形成し、シール本体14の弾性材料ゲート口24も、そのゲート口収納部25に応じた部位、即ちシール本体14の収納方向表側に形成すれば、シール本体14の裏表を間違えて組立てる、誤組立の恐れがなく、組立性が向上する。
【0021】
このように本実施形態のリニアガイドのサイドシールでは、シール本体14を保持器13に収納する収納方向先方を奥側、収納方向後方を表側とした場合、ゲート口収納部25を保持器13のシール本体収納部21表側に形成し、シール本体14の弾性材料ゲート口24をゲート口収納部25に応じた部位とすることにより、シール本体14に表裏などの向きがある場合の識別用として弾性材料ゲート口24を用いることができ、組立ミスを防止して組立性が向上する。
【0022】
図5には、本発明のリニアガイドのサイドシールの第3実施形態の詳細を示す。図5は、前記第1実施形態の図3bと同様に、シール本体14をシール本体収納部21に収納した状態を示す。本実施形態のリニアガイドの概略構成は、前記第1実施形態の図1と同様であるので、その詳細な説明を省略する。また、本実施形態のサイドガイドの概略構成は、前記第2実施形態の図2と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0023】
本実施形態でも、シール本体14を保持器13のシール本体収納部21に収納するが、その際、シール本体14を保持器13に収納する収納方向先方を奥側、収納方向後方を表側とした場合、ゲート口収納部25を保持器13のシール本体収納部21の奥側に形成し、シール本体14の弾性材料ゲート口24も、そのゲート口収納部25に応じた部位、即ちシール本体14の収納方向奥側に形成した。
【0024】
保実施形態でも、前記第2実施形態と同様に、例えばリップ23の向きなどのようにシール本体14に表裏の区別がある場合、表裏を間違えて組立てる、所謂誤組立してしまうと、シール本体14の機能が十分に発揮されない恐れがある。本実施形態のように、例えばゲート口収納部25を保持器13のシール本体収納部21の奥側に形成し、シール本体14の弾性材料ゲート口24も、そのゲート口収納部25に応じた部位、即ちシール本体14の収納方向奥側に形成すれば、シール本体14の裏表を間違えて組立てる、誤組立の恐れがなく、組立性が向上する。
更に、本実施形態では、シール本体収納部21の奥側に形成されたゲート口収納部25内にシール本体14の弾性材料ゲート口24を押し込むようにして収納するため、この弾性材料ゲート口24がゲート口収納部25の収納方向表側の段差に係止して抜け止めとなるため、シール本体14が保持器13から抜け落ちてしまうのを防止することができる。
【0025】
このように本実施形態のリニアガイドのサイドシールでは、シール本体14を保持器13に収納する収納方向先方を奥側、収納方向後方を表側とした場合、ゲート口収納部25を保持器13のシール本体収納部21奥側に形成し、シール本体14の弾性材料ゲート口24をゲート口収納部25に応じた部位としたことにより、シール本体14に表裏などの向きがある場合の識別用として弾性材料ゲート口24を用いることができ、組立ミスを防止して組立性が向上すると共に、シール本体14が保持器13から抜け落ちてしまうのを抑制防止することができる。
なお、シール本体や保持器、カバーの形態は前記実施形態に限定されるものではなく、あらゆる形態のリニアガイドのサイドシールに本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1は案内レール、2はスライダ、3a、3bはボール案内溝、4はボール、5は貫通穴、6はリターンガイド、7はエンドキャップ、8はサイドシール、10はボルト、12は取付け穴、13は保持器、14はシール本体、15はカバー、21はシール本体収納部、22は切欠き部、23はリップ、24は弾性材料ゲート口、25はゲート口収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアガイドのスライダのスライド方向両端部に取付けられ且つ案内レールに摺接するサイドシールであって、弾性材料を型で成形してなり且つ前記案内レールに摺接するシール本体と、前記シール本体を収納して保持する保持器とを、少なくとも備え、前記保持器のシール本体収納部に、シール本体の弾性材料ゲート口を収納するゲート口収納部を形成したことを特徴とするリニアガイドのサイドシール。
【請求項2】
前記シール本体を保持器に収納する収納方向先方を奥側、収納方向後方を表側とした場合、前記ゲート口収納部を保持器のシール本体収納部表側に形成し、前記シール本体の弾性材料ゲート口を前記ゲート口収納部に応じた部位としたことを特徴とする請求項1に記載のリニアガイドのサイドシール。
【請求項3】
前記シール本体を保持器に収納する収納方向先方を奥側、収納方向後方を表側とした場合、前記ゲート口収納部を保持器のシール本体収納部奥側に形成し、前記シール本体の弾性材料ゲート口を前記ゲート口収納部に応じた部位としたことを特徴とする請求項1に記載のリニアガイドのサイドシール。
【請求項4】
前記保持器のシール本体収納部に収納されたシール本体をカバーで覆うことを特徴とする請求項2又は3に記載のリニアガイドのサイドシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−41987(P2012−41987A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183969(P2010−183969)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】