説明

リニアポンプ装置の制御装置及び方法

リニアポンプ装置の作動装置及び方法であって、リニアモータ装置を作動させ、リニアポンプを往復運動させる。モータ制御モジュールは、リニアモータ装置に指令と制御ロジック入力とを発する。リニアモータ装置が作動して、第1反転位置と第2反転位置との間を出力軸が往復運動する。この出力軸によりリニアポンプが往復運動して材料の流動を生じさせる。ポンプ反転指令は、出力軸の移動方向を反転させる。トルク指令は出力軸の速度を制御する。制御ロジック入力により、材料の流動の一定の出力状態を得る速度で出力軸が往復運動する。モータ制御モジュールは、反転指令が発せられた時点を起点とする一時的な期間にわたり、トルク指令を調整して、一定の出力状態に必要な速度より増大した速度で出力軸を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ねポンプ制御装置に係り、より詳しくは、リニアポンプでの圧力降下を低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアポンプは、ハウジング内で往復運動してハウジング内に流体を通過させるピストンを備えている。従来のリニアポンプは、戻り行程で流体をハウジング内に引き込み、前進行程でハウジングから流体を押し出す。ポンプ内の逆流を防ぐためにバルブが使用される。このバルブは、ポンプからの流体の定常流を得るために、戻り行程及び前進行程のそれぞれにおいて、バルブが流体を引き込み、ピストンの反対側に流体を押し出すようにも構成可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ピストンが作動方向を反転するときに、ポンプ圧に特有の降下が生じ、吐出する流体の量の変動を引き起こす。この変動は、精密に計量調整された流動を必要とする場合に、特に望ましくない。例えば、2成分計量装置の場合、樹脂材料と触媒材料とが供給ガンの混合ヘッド部から同時に吐出される。2種の材料の混合により、十分に硬化すると硬質材料となる凝固プロセスを開始する化学反応が生じる。吐出過程の間中、樹脂材料と触媒材料との均一な流動を得て、混合物が適切に硬化するような樹脂材料と触媒材料との適切な比率を確保することは有益である。従って、1成分計測装置及び2成分計測装置で使用するリニアポンプにつきものの圧力低下を低減する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はリニアポンプ装置の作動方法及び作動装置に関する。
【0005】
リニアポンプ装置の作動方法は、リニアモータ装置を作動する工程と、リニアポンプを往復運動させる工程とを有する。リニアモータ装置が作動すると、第1反転位置と第2反転位置との間で出力軸が往復運動する。リニアポンプはリニアモータ装置の出力軸により往復運動して材料の流動が生じる。リニアモータ装置は、一定の材料流動の出力状態をもたらす速度で駆動される。リニアモータ装置は、出力軸が移動方向を反転する際、一定の出力状態に必要な速度より増大した速度で一時的に駆動される。
【0006】
リニアポンプ装置はリニアモータ装置、材料供給用リニアポンプ、及びモータ制御モジュールを備える。リニアモータ装置は、第1反転位置と第2反転位置との間で出力軸の往復運動を生じる。材料供給用リニアポンプは出力軸に連結され、材料の流動を生成する。モータ制御モジュールは、反転指令、トルク指令、及び制御ロジック入力をリニアモータ装置に発する。反転指令は、出力軸の移動方向を反転するために発せられる。トルク指令は、出力軸の速度を制御するために発せられる。制御ロジック入力は、材料の流動を一定の出力状態にする速度で出力軸を往復運動させるために発せられる。モータ制御モジュールは、反転指令が発せられたときを起点とする一時的な期間にわたり、一定の出力状態を得るのに必要な速度より増大した速度で出力軸を作動させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ポンピングユニット、成分材料容器、及び供給ガンを有する2成分ポンプ装置を示す図である。
【図2】個別に制御される材料供給用リニアポンプを有した図1の2成分ポンプ装置の概略図である。
【図3】図2の材料供給用リニアポンプを制御する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、ポンピングユニット12、成分材料容器14A、14B、及び供給ガン16を有する2成分ポンプ装置10を示している。ポンピングユニット12は、液圧ユニット18、ディスプレイモジュール20、流体マニホルド22、第1リニアポンプ24A、第2リニアポンプ24B、作動流体リザーバ26、及び配電箱28を備えている。図2に示すように、第1リニアポンプ24A及び第2リニアポンプ24Bのそれぞれに対して、電動モータ、デュアル出力反転バルブ、液圧モータ、ギアポンプ、及びモータ制御モジュール(MCM)が液圧ユニット18内に配置されている。供給ガン16は、混合ヘッド部32を備え、ホース34Aを介して第1リニアポンプ24Aに接続され、ホース34Bを介して第2リニアポンプ24Bに接続されている。ホース36Aはフィードポンプ38Aを第1リニアポンプ24Aに接続し、ホース36Bはフィードポンプ38Bを第2リニアポンプ24に接続する。フィードポンプ38A、38B、及び供給ガン16には、ホース40A、40B、40Cを介して圧縮空気が供給される。
【0009】
成分材料容器14A、14Bは、混合することによって硬質の構造を形成する第1粘性材料のドラム缶及び第2粘性材料のドラム缶からなる。例えば、ポリエステル樹脂またはビニルエステル等の樹脂材料からなる第1粘性材料が成分材料容器14Aに収容され、樹脂材料を硬化させるメチルエチルケトンペルオキシド(MEKP)等の触媒材料からなる第2粘性材料が成分材料容器14Bに収容される。電力が配電箱28に供給されると、配電箱28は、液圧ユニット18内のMCMやディスプレイモジュール20等、2成分ポンプ装置10の様々な部品に電力を送給する。別に設けられた供給源から、圧縮空気がホース40Aを介してフィードポンプ38Aに供給されて、第1成分材料からなる流体がリニアポンプ24Aに供給されると共に、当該圧縮空気がホース40Bを介してフィードポンプ38Bに供給されて、第2成分材料からなる流体がリニアポンプ24Bに供給される。リニアポンプ24A、24Bは、液圧ユニット18内のギアポンプによる液圧で作動する。当該ギアポンプは液圧ユニット18内の電動モータによって作動し、作動流体リザーバ26から作動流体を引き込み、リニアモータを作動させるデュアル出力反転バルブに、加圧された作動流体を供給する。この点について図2を参照してより詳細に後述する。
【0010】
ユーザが供給ガン16を操作すると、第1リニアポンプ24A及び第2リニアポンプ24Bによって流体マニホルド22に供給された加圧された成分材料が、混合ヘッド部32に押し出される。混合ヘッド部32は第1成分材料及び第2成分材料を混合し、混合した成分材料が、例えば型内に噴霧されたときに完了するような凝固プロセスを開始させる。第1成分材料及び第2成分材料は、一般的に供給ガン16から一定の出力状態で吐出される。例えば、ユーザはディスプレイモジュール20から入力を行ってMCMを制御し、一定の圧力または一定の流量で成分材料を供給させることができる。MCMは、様々な部品の中でも電動モータ及びデュアル出力反転バルブと協働し、制御ロジックの入力及び出力を使用して、一定の出力状態を得る。但し、第1リニアポンプ24A及び第2リニアポンプ24Bは移動方向を反転する必要のあるピストンを備えているので、反転位置でポンプ内の圧力が降下する際に、一定の出力状態にわずかな変動が生じる。本発明は、第1リニアポンプ24A及び第2リニアポンプ24Bの反転位置で発生した圧力降下から生じる、吐出成分材料の圧力変動を低減するための制御装置及び方法を提供するものである。
【0011】
図2は、個別に制御される第1リニアポンプ24A、第2リニアポンプ24Bを有する図1の2成分ポンプ装置10の概略図である。2成分ポンプ装置10は、ポンピングユニット12、供給ガン16、第1リニアポンプ24A、第2リニアポンプ24B、作動流体リザーバ26A、第2作動流体リザーバ26B、モータ制御モジュール42A、42B、電動モータ44A、44B、ギアポンプ46A、46B、デュアル出力反転バルブ48A、48B、液圧リニアモータ50A、50B、出力圧センサ52A、52B、及び速度・直線位置センサ54A、54Bを備えている。作動流体リザーバ26Aは、圧力リリーフバルブ56A、フィルタ58A、レベル表示器60A、及び圧力センサ62Aも備え、第2作動流体リザーバ26Bは、圧力リリーフバルブ56B、フィルタ58B、レベル表示器60B、及び圧力センサ62Bも備える。
【0012】
作動流体リザーバ26A、MCM42A、電動モータ44A、ギアポンプ46A、デュアル出力反転バルブ48A、及び液圧リニアモータ50Aは液圧ユニット18内に設置され、第1リニアモータ装置64Aを構成する。同様に、作動流体リザーバ26B、MCM42B、電動モータ44B、ギアポンプ46B、2成分反転バルブ48B、及び液圧リニアモータ50Bは液圧ユニット18内に設置され、第2リニアモータ装置64Bを構成する。本発明の別の実施形態では、リニアモータ装置は、電動モータ、ギアポンプ、及び作動流体リザーバ等の部品を共有する。
【0013】
ポンピングユニットの供給準備がなされ作動が開始されると、加圧された第1成分材料がフィードポンプ38Aによって第1リニアポンプ24Aに供給され、加圧された第2成分材料がフィードポンプ38Bによって第2リニアポンプ24Bに供給される(図1に示す)。フィードポンプ38A、38Bは加圧空気で作動する。第1リニアポンプ24Aは第1リニアモータ装置64Aによって作動され、加圧された第1成分材料を供給ガン16に供給し、第2リニアポンプ24Bは第2リニアモータ装置64Bによって作動され、加圧された第2成分材料を供給ガン16に供給する。加圧空気も供給ガン16に供給され、ポンプまたはバルブ機構を作動させ、加圧された第1成分材料及び第2成分材料を混合ヘッド部32内に供給し、供給ガン16から放出する。
【0014】
第1リニアモータ装置64Aはモータ制御モジュール(MCM)42Aによって、第2リニアモータ装置64Bはモータ制御モジュール(MCM)42Bによってそれぞれ制御される。MCM42A、42Bは、一定の配合比率となる量の成分材料が供給ガン16に供給されるように、同等且つ同様に第1リニアモータ装置64A及び第2リニアモータ装置64Bを作動させる。第1リニアモータ装置64A及び第2リニアモータ装置64Bの作動に関する説明は第1リニアモータ装置64Aについて行うものとし、第2リニアモータ装置64Bの作動は同じ方法で作動するものであり、同様の部品には同じ番号を付している。
【0015】
電動モータ44Aは、配電箱28(図1)から電力を与えられる。一実施形態では、電動モータ44Aは直流(DC)モータからなる。MCM42Aはトルク指令CTを発し、電動モータ44Aはこのトルク指令CTを受けて駆動軸66Aの速度を制御する。駆動軸66Aは、作動流体リザーバ26A内の作動流体中に沈められるギアポンプ46Aに連結される。ギアポンプ46Aは、電動モータ44Aからの回転入力を利用して、作動流体リザーバ26Aから作動流体を引き込み、流路68A内に加圧された作動流体を流動させる。作動流体リザーバ26Aは、作動流体リザーバ26A内の作動流体の量を測定するために使用されるレベル表示器60Aを備えている。圧力センサ62Aは、作動流体リザーバ26A内の充填不足状態を判定するために使用可能である。別の実施形態では、駆動軸66Aは、回転ベーンポンプまたは蠕動ポンプ等、回転入力を加圧作動流体の流動に変換する別のタイプの容積式ポンプの駆動に使用される。
【0016】
ポンプ46Aからの加圧作動流体は、圧力リリーフバルブ56Aと、デュアル出力反転バルブ48Aとを通って流れる。圧力リリーフバルブ56Aは、圧力超過状態となった場合に、過剰に加圧された作動流体を作動流体リザーバ26Aに戻すことができるようにする手段を提供する。後述するように、デュアル出力反転バルブ48Aは、加圧作動流体を使用して液圧リニアモータ50Aを往復運動させるものである。加圧作動流体は、デュアル出力反転バルブ48Aから流路70Aの中を通ってフィルタ58Aを通過した後に、作動流体リザーバ26Aに戻る。フィルタ58Aは作動流体から不純物を取り除く。従って、作動流体の閉鎖回路の流動が、作動流体リザーバ26A、ギアポンプ46A、デュアル出力反転バルブ48A、及び液圧リニアモータ50Aの間で行われる。
【0017】
デュアル出力反転バルブ48Aは、当該技術分野で公知のように、従来の反転バルブ機構に従って構成される。デュアル出力反転バルブ48Aは、加圧作動流体の連続的な流動を受け、当該流動を液圧リニアモータ50Aに向かわせる。具体的には、デュアル出力反転バルブ48Aは、流路68Aに接続された流入口、流路70Aに接続される流出口、及び流路72A、74Aに接続された2つのポートを備えている。加圧作動流体は、流路72A、74Aに交互に供給され、液圧リニアモータ50Aの作動に使用される。
【0018】
液圧リニアモータ50Aは、ハウジング78A内の2つの流体チャンバの間でスライドするピストン76Aを備えている。一方の流体チャンバは流路72Aから加圧作動流体の流動を受け、他方の流体チャンバは流路74Aから加圧作動流体の流動を受ける。例えば、デュアル出力反転バルブ48Aが第1位置にある場合、流路72Aが加圧作動流体をハウジング78A内の第1チャンバに供給し、ピストン76Aを下方(図2において)に移動させる。同時に、ハウジング78A内の他方のチャンバ内の作動流体は液圧リニアモータ50Aから押し出され、流路74Aを通ってデュアル出力反転バルブ48A内に戻り、流路70Aに流出する。MCM42Aは反転指令CRを発し、デュアル出力反転バルブ48Aはこの反転指令CRを受け、液圧リニアモータ50Aの方向反転時期を制御する。反転指令CRを受信すると、デュアル出力反転バルブ48Aが第2位置に切り替わり、加圧作動流体が流路74Aを介してハウジング78Aに供給され、ハウジング78Aから作動流体が流路72Aを介して排出される。従って、デュアル出力反転バルブ48Aの作動により、ハウジング78A内の2つの反転位置の間でピストン76Aが往復運動し、出力軸80Aも往復運動する。速度・直線位置センサ54Aは、出力軸80Aに連結され、ピストン76Aの移動速度に基づきピストン76Aの位置の指示値と、速度の指示値とをMCM42Aに提供する。具体的には、出力軸80Aが反転位置の一方から離間する方向に移動するときに、速度・直線位置センサ54Aが位置信号SPoをMCM42Aに提供する。
【0019】
液圧リニアモータ50Aの出力軸80Aは、直接第1リニアポンプ24Aのピストン軸82Aに機械的に結合される。ピストン軸82Aは、ハウジング86A内でピストン84Aを駆動する。ピストン84Aは、フィードポンプ38A(図1)によって供給されることで、成分材料容器14Aから成分材料をハウジング86A内に引き込む。第1リニアポンプ24Aは複動ポンプからなり、上昇行程(図2における)で成分材料が流路88A内に押し出され、下降工程(図2における)で流路89A内に押し出される。具体的には、上昇行程で、バルブ90Aが開き、流体マニホルド22(図1に示す)を介しフィードポンプ38Aからハウジング86A内に成分材料を引き込むと共に、バルブ92Aが開き、ピストン84Aが流路88Aを介して成分材料を供給ガン16内に押し出すことが可能となる一方、バルブ94A、96Aは閉じている。下降工程では、バルブ90A、92Aは閉じているが、バルブ94Aが開き、流体マニホルド22A(図1に示す)を介してフィードポンプ38Aからハウジング86A内に成分材料を引き込むと共に、バルブ96Aが開いて、ピストン84Aが流路89Aを介して供給ガン16内に成分材料を押し出すことが可能となる。第1リニアポンプ24Aの2通りの作動により、作業中、成分材料の連続する略一定の供給が維持される。しかしながら上述した通り、ピストン軸82Aの反転位置で僅かな圧力降下が生じる。本発明は反転位置付近でピストン軸82Aを加速することによって、生じた圧力降下の一部を解消するものである。
【0020】
第1リニアポンプ24Aからの圧力によって流路88A、89Aから成分材料が供給ガン16内に押し出され、供給ガン16から噴霧される前に、混合ヘッド部32内で第2リニアポンプ24Bからの成分材料と混合される。圧力センサ52Aは流路88A内の成分材料の圧力を検出し、圧力信号SPrをMCM42Aに送信する。任意のヒータ98Aを流路88Aに取り付けて、混合ヘッド部32から吐出する前に成分材料を加熱することにより、例えば成分材料の粘性を低減したり、または他方の成分材料との反応や硬化を促進したりしてもよい。
【0021】
MCM42Aは位置信号SPoと圧力信号SPrとを受信し、反転指令CRとトルク指令CTとを発する。位置信号SPoと圧力信号SPrとを用いて、MCM42Aは反転指令CRとトルク指令CTとを調整し、リニアモータ装置を一定の出力状態で制御する。例えば、2成分ポンプ装置10のオペレータがディスプレイモジュール20(図1)の入力により、ポンピングユニット12が一定の圧力の第1成分材料及び第2成分材料を流体マニホルド22(図2では省略し、図1に示す)に供給する作動を行ったり、または第1成分材料及び第2成分材料を一定流量で流体マニホルド22に供給する作動を行ったりするように指定することができる。MCM42Aは、反転指令CRとトルク指令CTとを連続して調整して、一定の出力状態を維持するような制御ロジックを実行する。トルク指令CTは、電動モータ44Aが駆動軸66Aを回転する速度を決定し、この駆動軸66Aの回転速度は、電動モータ50Aのハウジング78A内のチャンバが作動流体で満たされる速さに直接関係する。反転指令CRは、デュアル出力反転バルブ48Aが位置を切り換えるタイミングを決定する。反転指令CRの発信は、ハウジング78A内のチャンバが一杯になって、デュアル出力反転バルブ48Aがハウジング78A内の作動流体の流動方向を切り換え可能となる速さに整合したものとされる。制御ロジックは、所望の一定の出力状態の維持に合わせて、電動モータ44Aの速度とデュアル出力反転バルブ48Aの切換間隔とを管理する。図3を参照して後述するように、本発明は、ピストン軸82Aが移動方向を反転するときに、第1リニアモータ装置64Aを操作して圧力降下を最低限にするものである。
【0022】
図3は、図2の第1リニアポンプ24A及び第2リニアポンプ24Bを制御する方法を実行するフローチャートを示している。最初のステップ100では、第1リニアポンプ24Aが一定の出力状態で作動するように、モータ制御モジュール(MCM)42Aは制御ロジック入力、例えばプログラムされた入力値またはディスプレイモジュール20で入力された入力値を用いて第1リニアモータ装置64を作動させる。具体的には、MCM42Aは電動モータ44Aへのトルク指令CTを調整して、駆動軸66Aの速度を制御する。
【0023】
ピストン軸82Aが反転位置で自身の移動終端に達すると、MCM42Aは、ステップ110における制御ロジックの一部として反転指令CRの形式でデュアル出力反転バルブ48Aに制御ロジック出力を発する。次に、ステップ120では、MCM42Aが引き続きトルク指令CTや反転指令CRを更新して一定の出力状態とすることのないように、MCM42Aは制御ロジックを停止する。ステップ130では、MCM42Aが電動モータ44Aにトルク指令CTを発して駆動軸66Aの速度を増大させることにより、デュアル出力反転バルブ48Aへの加圧作動流体の流出量が増加する。それに合わせて、MCM42Aが反転指令CRをデュアル出力反転バルブ48Aに発し、作動流体の流動に対応した出力軸80Aの移動方向を反転する。具体的には、デュアル出力反転バルブ48Aは、ギアポンプ46Aによる供給流量と等しい流量で、液圧リニアモータ50Aのハウジング78A内のチャンバの充填及び排出が行われるように作動する必要がある。このため、ステップS130が実行された後、出力軸80Aの速度は、ステップ100でそれまで発生していた速度より一時的に増速され、一定の出力状態が得られる。従って、ピストン軸82Aがハウジング86A内の反転位置にあるときには、出力軸80Aが第1リニアポンプ24Aのピストン軸82Aを増大した速度で作動させ、第1リニアポンプ24Aでの圧力降下を低減する。それによって、出力軸80Aとピストン軸82Aとは、制御ロジック下で行う反転より迅速に移動方向を反転する。
【0024】
ステップ140では、制御ロジックは速度・直線位置センサ54Aから出力軸80Aの移動方向の反転を検出する。その後、ステップ150では、電動モータ44Aへのトルク指令CTが、トルク指令CTの変更によって、ステップ130で指令された値より低い値に低減される。この場合も、速度は制御ロジックのもとで指令された速度よりもある程度速く維持される。しかしながら、必要であれば、一定の出力状態を極力乱さないようにするために、ステップ100での速度より低速に減速してもよい。ステップ160では、ステップ170で制御ロジックを開始することができるよう、リセット条件の検出が行われる。例えば、流路88A内の圧力が上昇しつつあることが検出され、ピストン軸82Aと出力軸80Aとが反転過程を完了したことを示すと、リセット条件が成立したと判定することができる。一定の出力状態からの逸脱を最小限に抑えるために、一般的には数十ミリ秒という所定の時間の後にステップ170をすぐに実行してもよい。従って、MCM42Aが出力圧センサ52Aから圧力信号SPrを受け取ると、電動モータ44Aとデュアル出力反転バルブ48Aとが、ステップ100で実行されるような一定の出力状態で再度作動するように制御ロジックが再開する。別の実施形態として、ステップ130、150のポンプ速度に基づき、液圧リニアモータ50Aが反転過程を完了するのに要すると予測される時間等の所定の時間に基づいて、リセット条件を設定してもよい。
【0025】
本発明は、リニアポンプ装置の作動中の圧力の変動を低減する装置及び方法を提供する。上述したように、ピストンが移動方向を反転すると、リニアポンプは本質的に出力圧の低下を生じる。開示した実施形態に関し、ポンプの出力圧は、ピストンの移動速度に直接比例し、リニアポンプを作動させる液圧リニアモータを電動モータが駆動する速度によって決まる。従って、ピストンが方向反転のために停止すると、ポンプ圧が降下する。ポンプ圧の降下は、一定の出力状態が必要とされている場合に、特に不都合となる。さらに、一定の出力状態の下で、一定の圧力を出力する状態であっても、リニアポンプの出力圧が微小な脈動を示すようにして、リニアモータを駆動する電動モータに入力する速度が略一定に維持される。本発明の一実施形態では、液圧リニアモータの反転位置付近で、電動モータの速度が一定の出力状態を得るために必要な速度を上回る速度に一時的に加速される。このようにして、出力圧の微小な脈動が低減される。
【0026】
電動モータの速度制御またはトルク制御に基づくリニアポンプ装置の制御に関して本発明を説明したが、本発明は別のタイプのリニアポンプ装置に適用可能であり、上述した装置を別の方法で制御するのに使用可能である。電動モータの速度を制御するのではなく、デュアル出力反転バルブ48Aの代わりに、液圧リニアモータの速度を制御するプログラム可能な作動流体の圧力調整器を使用して、作動流体の圧力を制御してもよい。具体的には、圧力調整器は電動モータとギアポンプとの結合体から加圧作動流体を供給されるようにしてもよく、液圧リニアモータに作動流体を供給するか、或いは作動流体リザーバに戻したりしてもよい。この場合、圧力調整器は、液圧リニアモータに流入する作動流体と作動流体リザーバに戻る作動流体との比率を変更するようにプログラムを設定または制御してもよい。通常、圧力調整器と共に、一定の出力状態の制御に制御ロジックを使用する。但し、液圧リニアモータが反転位置またはその付近にある場合に、制御ロジックは一時的に停止可能であり、液圧リニアモータへの圧力調整器の出力は増大する。代わりに、上述した実施形態の液圧装置と液圧調整器とは、空気圧システムと空気圧調整器とに置き換え可能である。
【0027】
代表的な実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更をしたり、各要素の等価物で代用したりすることが可能であることは当業者が容易に理解し得るものである。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱せずに、特定の状況や素材を本発明の教示に適合させるべく、様々な変更を行うことが可能である。従って、本発明は開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付された特許請求の範囲内に属する全ての形態を含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反転位置と第2反転位置との間で出力軸の往復運動を生じるリニアモータ装置と、
前記出力軸に連結されて材料の流動を生じる材料供給用リニアポンプと、
モータ制御モジュールとを備え、
前記モータ制御モジュールは、
前記リニアモータ装置に、前記出力軸の移動方向を反転させる反転指令を発し、
前記リニアモータ装置に、前記出力軸の速度を制御するトルク指令を発し、
前記リニアモータ装置に、前記材料の流動の一定の出力状態を生じる速度で前記出力軸を往復運動させる制御ロジック入力を発し、
前記モータ制御モジュールは、前記反転指令が発せられた時点を起点とする一時的期間にわたり前記トルク指令を調整し、一定の出力状態に必要な速度より増大した速度で前記出力軸を作動させることを特徴とするリニアポンプ装置。
【請求項2】
前記リニアモータ装置は、
前記出力軸を備えるリニア液圧モータと、
前記モータ制御モジュールから前記トルク指令を受信する電動モータと、
前記電動モータによって駆動され、前記電動モータの速度に応じた加圧作動流体の流動を発生させて前記出力軸の速度を制御する回転式液圧ポンプと、
前記リニア液圧モータに連結され、前記回転式液圧ポンプから加圧作動流体の流動を受け、前記モータ制御モジュールから受信する前記反転指令に応じて、前記出力軸の移動方向を液圧により反転させる液圧式のデュアル出力反転バルブと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のリニアポンプ装置。
【請求項3】
前記モータ制御モジュールは、前記トルク指令の調整に対応して前記制御ロジック入力の発信を停止すると共に、前記一定の出力状態に必要な速度より増大した速度で前記出力軸を作動させることを特徴とする請求項1に記載のリニアポンプ装置。
【請求項4】
前記リニアモータ装置は、前記第1反転位置及び前記第2反転位置のいずれか一方から離間する方向に移動する前記出力軸に応じて位置信号を発する、前記液圧リニアモータに接続された位置センサをさらに備え、
前記モータ制御モジュールは、受信した位置信号に応じ、前記調整されたトルク指令を変更して、前記出力軸の増大した速度を減小させることを特徴とする請求項3に記載のリニアポンプ装置。
【請求項5】
前記モータ制御モジュールは、前記一時的期間の経過後に前記制御ロジック入力の発信を開始することを特徴とする請求項3に記載のリニアポンプ装置。
【請求項6】
前記一時的期間は、リセット条件が検出されたときに終了することを特徴とする請求項5に記載のリニアポンプ装置。
【請求項7】
前記リニアモータ装置は、前記材料の流動における圧力を検出する圧力センサをさらに備え、
前記リセット条件は、検出された圧力の上昇を含むことを特徴とする請求項5に記載のリニアポンプ装置。
【請求項8】
前記一定の出力状態は、一定の圧力の出力または一定の流量の出力のいずれか一方を含むことを特徴とする請求項1に記載のリニアポンプ装置。
【請求項9】
リニアモータ装置を作動させ、第1反転位置と第2反転位置との間で出力軸を往復運動させる工程と、
前記リニアモータ装置の出力軸によりリニアポンプを往復運動させて材料の流動を生成する工程と、
前記材料の流動の一定の出力状態を得る速度で前記リニアモータ装置を駆動する工程と、
前記出力軸の移動方向の反転を開始する工程と、
前記出力軸の移動方向の反転が開始される時点を起点とする一時的期間にわたり、前記一定の出力状態に必要な速度より増大した速度で前記リニアモータ装置を駆動する工程と、
を有することを特徴とするリニアポンプ装置の作動方法。
【請求項10】
前記出力軸を有するリニア液圧モータを作動させる工程と、
電動モータを作動させる工程と、
前記電動モータにより回転式液圧ポンプを作動させ、前記リニア液圧モータに加圧作動流体の流動を供給して前記出力軸の速度を制御する工程と、
前記リニア液圧モータに接続され、加圧作動流体の流動を受ける液圧デュアル出力反転バルブを作動させて、前記出力軸の移動方向を反転させる工程と、
をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載のリニアポンプ装置の作動方法。
【請求項11】
前記電動モータと前記液圧デュアル出力反転バルブとの作動を協働させるモータ制御モジュールをさらに備え、
前記リニアモータ装置は、前記モータ制御モジュールから制御ロジック入力を受信すると、前記一定の出力状態を得る速度で駆動され、
前記出力軸の移動方向の反転は、前記液圧デュアル出力反転バルブによる前記モータ制御モジュールからの反転指令の受信に応じて開始され、
前記リニアモータ装置は、前記電動モータによる前記モータ制御モジュールからのトルク指令の受信に応じ、前記増大した速度で駆動されることを特徴とする請求項10に記載のリニアポンプ装置の作動方法。
【請求項12】
前記トルク指令が発せられると、前記制御ロジックの発信を停止すると共に、前記増大した速度での作動を行う工程をさらに有することを特徴とする請求項11に記載のリニアポンプ装置の作動方法。
【請求項13】
前記出力軸が前記反転位置にあることを検出する工程と、
前記反転位置の検出に応じ、前記トルク指令を変更して前記増大した速度を減小させる工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項12に記載のリニアポンプ装置の作動方法。
【請求項14】
前記一時的期間が終了した後に、前記制御ロジック入力の発信を開始する工程をさらに有することを特徴とする請求項12に記載のリニアポンプ装置の作動方法。
【請求項15】
前記材料の出力流動における圧力を検出する工程と、
圧力の上昇が検出される場合に、前記一時的期間を終了する工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項14に記載のリニアポンプ装置の作動方法。
【請求項16】
前記一定の出力状態は、一定の圧力の出力、または一定の流量の出力のいずれか一方を含むことを特徴とする請求項9に記載のリニアポンプ装置の作動方法。
【請求項17】
リニアモータ装置を作動させ、第1反転位置と第2反転位置との間で出力軸を往復運動させる工程と、
前記リニアモータ装置の出力軸によりリニアポンプを往復運動させて材料の流動を生成する工程と、
材料の流動の一定の出力状態を得る速度で前記リニアモータ装置を駆動する工程と、
前記出力軸が移動方向を反転すると、一定の出力状態に必要な速度より増大した速度で前記リニアモータ装置を一時的に駆動する工程と、
を有することを特徴とするリニアポンプ装置の作動方法。
【請求項18】
前記リニアモータ装置を駆動する工程は、
前記出力軸の移動方向を反転する工程と、
前記出力軸の速度を制御する工程と、をさらに有し、
前記出力軸の移動方向及び速度は、一定の出力状態を得る制御ロジックで制御され、前記リニアポンプ装置が前記増大した速度で一時的に駆動されるときに、前記制御ロジックを停止することを特徴とする請求項17に記載のリニアポンプ装置の作動方法。
【請求項19】
前記出力軸の位置を検出する工程と、
前記出力軸が反転位置から離間する方向への移動が検出されたときに、前記増大した速度を減小させる工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項18に記載のリニアポンプ装置の作動方法。
【請求項20】
前記材料の流動における圧力を検出する工程と、
圧力の上昇が検出されると、前記制御ロジックを開始する工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項19に記載のリニアポンプ装置の作動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−513069(P2013−513069A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543083(P2012−543083)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/003120
【国際公開番号】WO2011/071528
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(308025451)グラコ ミネソタ インコーポレーテッド (32)
【Fターム(参考)】