説明

リニアモータ及びステージ装置

【課題】リニアモータを小型化及び軽量化できるようにする。
【解決手段】リニアモータ1は、X軸方向に沿って極性が交互となるように等間隔に配置された複数の磁極11を有する界磁10と、界磁10の一方側に対向して配置され、X軸方向に沿った推進力を発生するための複数のX軸用巻線22を有するX軸用電機子20と、界磁10の他方側に対向して配置され、Y軸方向に沿った推進力を発生するための複数のY軸用巻線32を有するY軸用電機子30とを備えることにより、X軸方向への駆動に用いられる界磁とY軸方向への駆動に用いられる界磁とを共通化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸方向に直動動作することが可能なリニアモータ及びそれを用いたステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークや工具、製品等を高速かつ高精度で移動させると共に、位置決めやアライメント調整を行うため、多軸方向に直動動作することが可能なステージ装置が使用されている。従来、このような多軸方向に動作可能なステージ装置として、一つのステージ装置の中に二次元直交座標系におけるX軸用とY軸用の2つのモータを搭載するものが提唱されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−316712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のステージ装置は、巻線からなる電気子と磁石からなる界磁を備えたX軸用モータと、同様に巻線からなる電気子と磁石からなる界磁を備えたY軸用モータをそれぞれ搭載しており、それらX軸用モータ及びY軸用モータを連動させることでX軸及びY軸の2軸方向の直動動作を実現している。
【0005】
しかしながら、X軸用モータとY軸用モータを個別に搭載する構成であるため、装置が大型化し、重量が増大するという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、小型化及び軽量化が可能なリニアモータ及びそれを用いたステージ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1発明のリニアモータは、第1の方向に沿って配置された複数の磁極を有する界磁と、前記界磁の一方側に対向して配置され、前記第1の方向に沿った推進力を発生するための複数の第1巻線を有する第1電機子と、前記界磁の他方側に対向して配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿った推進力を発生するための複数の第2巻線を有する第2電機子と、を備え、前記界磁、前記第1電機子、及び前記第2電機子のうちのいずれかを固定子、他を可動子とすることを特徴とする。
【0008】
本願発明のリニアモータは、界磁と、界磁の一方側に対向配置された第1電機子とを備えており、界磁と第1電機子との間に生じる第1の方向に沿った推進力により、界磁と第1電機子とを第1の方向に沿って相対的に進退移動させる。また本願発明のリニアモータは、界磁の他方側に対向配置された第2電機子を備えており、界磁と第2電機子との間に生じる第2の方向に沿った推進力により、界磁と第2電機子とを第2の方向に沿って相対的に進退移動させる。これにより、界磁、第1電機子及び第2電機子のうちのいずれかを固定子、他を可動子とすることで、可動子を第1及び第2の方向の2軸方向に直動動作することが可能である。
【0009】
このような構成により、第1の方向への駆動に用いられる界磁と第2の方向への駆動に用いられる界磁とを共通化することができる。その結果、第1及び第2の各方向への駆動用に界磁と電機子を個別に有する場合に比べ、一方の界磁が不要となるため、配置スペースを縮小でき、モータを小型化することができる。また、部品点数が減ることから、モータ重量を軽量化できると共に、製造工程の単純化も可能となる。
【0010】
第2発明のリニアモータは、上記第1発明において、nを自然数とした場合に、前記界磁は、前記第1方向に沿って配置された複数個の前記磁極からなる磁極列が前記第2方向に沿って2n列配置されて構成されており、前記第1電機子は、前記第1方向に沿って配置された複数個の前記第1巻線からなる第1巻線列が前記第2方向に沿って2n列配置されて構成されており、前記第2電機子は、前記第1方向に沿って配置された複数個の前記第2巻線からなる第2巻線列が前記第2方向に沿ってn列配置されて構成されていることを特徴とする。
【0011】
第2電機子を構成する第2巻線のうち、界磁と第2電機子との間に生じる第2の方向に沿った推進力に寄与する部分は、推進方向である第2方向と直交する第1方向に沿った部分のみである。したがって、第2電機子の第2巻線列を第2方向に沿ってn列配置すると共に、界磁の磁極列を第2方向に沿ってその2倍である2n列配置することにより、各第2巻線における(第2方向両側に位置する)第1方向に沿った部分に、磁極を効率良く対向させることができる。これにより、界磁と第2電機子との間に第2の方向に沿って高い推進力を得ることができる。特に、nが1である場合、すなわち第1電機子の第1巻線列及び界磁の磁極列を2列、第2電機子の第2巻線列を1列に配置した場合には、最小限の磁極と巻線の構成で高い推進力を得ることが可能となり、最も効率の良い構成とすることができる。
【0012】
また、界磁の磁極列の列数と第1電機子の第1巻線列の列数とを等しくすることで、界磁と第1電機子との間に生じる第1の方向に沿った推進力についても、高い推進力を得ることができる。
【0013】
第3発明のリニアモータは、上記第1又は第2発明において、前記界磁は、前記複数の磁極として、前記第1の方向に沿って極性が交互となるように等間隔に配置された複数の永久磁石を有していることを特徴とする。
【0014】
複数の永久磁石からなる界磁を備えたリニアモータにおいて、第1の方向への駆動に用いられる界磁と第2の方向への駆動に用いられる界磁とを共通化して一方の界磁を不要とすることで、レアメタルからなる永久磁石を削減することができる。これにより、リサイクル性の向上や省資源化、低コスト化が可能となる。
【0015】
第4発明のリニアモータは、上記第3発明において、前記界磁は、前記永久磁石を固定配置する磁石固定板をさらに有し、前記磁石固定板は、非磁性材料で構成されていることを特徴とする。
【0016】
界磁の一方側に第1電機子、他方側に第2電機子を配置し、界磁を共通化する構成においては、磁界を界磁の一方側及び他方側の両側に形成する必要がある。本願発明によれば、界磁が永久磁石と磁石固定板を有し、磁石固定板を非磁性材料で構成するので、永久磁石で発生する磁界を磁石固定板が遮ることがない。これにより、磁界を界磁の一方側及び他方側の両側に確実に形成し、界磁を共通化した構成を実現することができる。
【0017】
第5発明のリニアモータは、上記第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記第1電機子は、樹脂成型により固定された前記第1巻線を有し、前記第2電機子は、樹脂成型により固定された前記第2巻線を有していることを特徴とする。
【0018】
第1巻線及び第2巻線を樹脂成型することによって、巻線を保護すると共に絶縁性を向上することができる。また、巻線の樹脂成型により第1電機子及び第2電機子の剛性及び耐振動性を向上することができるので、リニアモータの信頼性を向上できる。
【0019】
第6発明のリニアモータは、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記界磁と前記第1電機子との間に設けられ、前記界磁と前記第1電機子との前記第1の方向に沿った進退移動を案内するための第1ガイド部材と、前記界磁と前記第2電機子との間に設けられ、前記界磁と前記第2電機子との前記第2の方向に沿った進退移動を案内するための第2ガイド部材と、をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
第1ガイド部材及び第2ガイド部材により、界磁と第1電機子との第1の方向に沿った進退移動と、界磁と第2電機子との第2の方向に沿った進退移動を、円滑且つ安定して行うことができる。
【0021】
上記目的を達成するために、第7発明のステージ装置は、上記第1乃至第6発明のいずれかのリニアモータを直動機構の駆動源として用いたことを特徴とする。
【0022】
界磁の共通化により小型化及び軽量化することができるリニアモータを直動機構の駆動源として用いることで、小型化及び軽量化が可能なステージ装置を実現できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、リニアモータやステージ装置を小型化及び軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態のリニアモータの構成を概念的に表す上面図である。
【図2】本実施形態のリニアモータの構成を概念的に表す図1中II−II断面による側断面図である。
【図3】比較例のリニアモータの構成を概念的に表す上面図である。
【図4】比較例のリニアモータの構成を概念的に表す図3中IV−IV断面による側断面図である。
【図5】巻線を樹脂成形した変形例におけるリニアモータの構成を概念的に表す図1中II−II断面相当の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0026】
図1及び図2を用いて、本実施形態のリニアモータ1の概念的な構成について説明する。図1は、本実施形態のリニアモータの構成を概念的に表す上面図、図2は、本実施形態のリニアモータの構成を概念的に表す図1中II−II断面による側断面図である。なお、以下の説明では、図1及び図2中左右方向を二次元直交座標系におけるX軸方向、図1中上下方向及び図2中紙面に垂直な方向をY軸方向とする。
【0027】
図1及び図2に示すように、リニアモータ1は、界磁10と、X軸方向に沿った推進力を発生するためのX軸用電機子20と、Y軸方向に沿った推進力を発生するためのY軸用電機子30とを備えている。
【0028】
界磁10は、X軸方向に沿って極性が交互となるように等間隔に配置された複数の磁極11を有している。具体的には、X軸方向に沿って配置された複数個(この例では3個)の磁極11からなる磁極列12がY軸方向に沿って平面状に2列配置されている。本実施形態では、磁極11は永久磁石で構成されており、磁石固定板13のX軸用電機子20側に固定配置されている。磁石固定板13は、磁極11による磁界を界磁10の両側に形成するように、ステンレスやアルミ等の非磁性材料で構成されている。なお、磁極11を電磁石で構成してもよい。
【0029】
X軸用電機子20は、界磁10の一方側(図1中紙面奥側、図2中下側)に、界磁10に対して所定のクリアランスを有するように対向配置されている。X軸用電機子20は、X軸用巻線固定体21の界磁10側に、X軸方向に沿って等間隔に配置された複数個のX軸用巻線22からなるX軸用巻線列23がY軸方向に沿って平面状に2列配置されて構成されている。X軸用巻線列23は、界磁10の磁極列12に対応する位置にそれぞれ配置されている。
【0030】
Y軸用電機子30は、界磁10の他方側(図1中紙面手前側、図2中上側)に、界磁10に対して所定のクリアランスを有するように対向配置されている。Y軸用電機子30は、Y軸用巻線固定体31の界磁10側に、X軸方向に沿って等間隔に配置された複数個(この例では3つ)のY軸用巻線32からなるY軸用巻線列33がY軸方向に沿って1列配置されて構成されている。Y軸用巻線列33は、各Y軸用巻線32におけるY軸方向に沿った推進力に寄与する部分、すなわち、各Y軸用巻線32のY軸方向両端部に位置する短辺部32aが、界磁10の磁極11のY軸方向略中央部に位置するように、配置されている。これにより、磁極11が生じる磁界と短辺部32aをX軸方向に流れる電流とを効率良く直交させることができ、界磁10とY軸用電機子30との間にY軸方向に沿って高い推進力を得ることができる。
【0031】
界磁10とX軸用電機子20との間には、界磁10とX軸用電機子20とのX軸方向に沿った進退移動を案内するためのX軸用ガイド部材41が、X軸用巻線22のY軸方向両側に設けられている。また、界磁10とY軸用電機子30との間には、界磁10とY軸用電機子30とのY軸方向に沿った進退移動を案内するためのY軸用ガイド部材42が、Y軸用巻線32のX軸方向両側に設けられている。
【0032】
上記構成であるリニアモータ1においては、界磁10とX軸用電機子20との間に生じるX軸方向に沿った推進力により、界磁10とX軸用電機子20とがX軸方向に沿って相対的に進退移動する。また、界磁10とY軸用電機子30との間に生じるY軸方向に沿った推進力により、界磁10とY軸用電機子30とがY軸方向に沿って相対的に進退移動する。これにより、界磁10、X軸用電機子20及びY軸用電機子30のうちのいずれかを固定子、他を可動子とすることで、可動子をX軸及びY軸の2軸方向に直動動作することができる。
【0033】
例えば、X軸用電機子20を固定子とした場合、界磁10をX軸方向に直動動作させ、Y軸用電機子30をX軸及びY軸の2軸方向に直動動作することができる。このとき、界磁10がX軸方向に動作可能な範囲は、X軸用電機子20においてX軸用巻線22が配置されている範囲となり、Y軸用電機子30がY軸方向に動作可能な範囲は、Y軸用巻線32の短辺部32aが対応する界磁10の磁極11と対向する範囲(1つの磁極11と対向する範囲)となる。したがって、例えば、比較的長い距離の移動が可能なX軸方向の移動でワークや工具、製品等の主たる移動を行い、比較的短い距離となるY軸方向の移動でそれらの位置決めやアライメントの調整等を行うことが可能である。
【0034】
以上において、X軸方向が特許請求の範囲に記載の第1の方向に相当し、Y軸方向が第2の方向に相当する。また、X軸用電機子20が第1電機子に相当し、X軸用巻線22が第1巻線に相当し、X軸用巻線列23が第1巻線列に相当する。また、Y軸用電機子30が第2電機子に相当し、Y軸用巻線32が第2巻線に相当し、Y軸用巻線列33が第2巻線列に相当する。また、X軸用ガイド部材41が第1ガイド部材に相当し、Y軸用ガイド部材42が第2ガイド部材に相当する。
【0035】
ここで、以上説明した本実施形態の効果を説明する前に、図3及び図4を用いて本実施形態の効果を説明するための比較例について説明する。図3は、比較例のリニアモータの構成を概念的に表す上面図、図4は、比較例のリニアモータの構成を概念的に表す図3中IV−IV断面による側断面図である。なお、図3及び図4は、上記図1及び図2に対応する図であり、対比の便宜のため、比較例における同様の部分の符号は本実施形態と同一の符号を用いている。
【0036】
比較例のリニアモータ1′は、可動子をX軸及びY軸の2軸方向に直動動作することができる点で本実施形態のリニアモータ1と同様であるが、X軸用の界磁とY軸用の界磁を個別に備えている点で本実施形態のリニアモータ1と相違する。すなわち、図3及び図4に示すように、比較例におけるリニアモータ1′は、X軸方向に沿った推進力を発生するための界磁50及びX軸用電機子20′と、Y軸方向に沿った推進力を発生するための界磁60及びY軸用電機子30′とを備えている。
【0037】
界磁50は、磁石固定板53のX軸用電機子20′側に、X軸方向に沿って極性が交互となるように等間隔に配置された複数(この例では3個)の磁極51を固定配置している。この磁極51は、前述の磁極11よりY軸方向に幅広に形成されており、Y軸方向に1列のみ配置されている。またX軸用電機子20′は、界磁50の一方側(図3中紙面奥側、図4中下側)に対向配置されており、X軸用巻線固定体21の界磁50側に、複数個のX軸用巻線22′をX軸方向に沿って等間隔に固定配置している。X軸用巻線22′は、前述のX軸用巻線22よりY軸方向に幅広に形成されており、Y軸方向に1列のみ配置されている。このような構成である界磁50とX軸用電機子20′とで、X軸用モータ2を構成している。
【0038】
同様に、界磁60は、磁石固定板63のY軸用電機子30′側に、Y軸方向に沿って極性が交互となるように等間隔に配置された複数(この例では8個)の永久磁石からなる磁極61を固定配置している。この磁極61は、前述の磁極11よりX軸方向に幅広に形成されており、X軸方向に1列のみ配置されている。またY軸用電機子30′は、界磁60の他方側(図3中紙面手前側、図4中上側)に対向配置されており、Y軸用巻線固定体31の界磁60側に、複数個(この例では3個)のY軸用巻線32′をY軸方向に沿って等間隔に固定配置している。Y軸用巻線32′は、前述のY軸用巻線32よりX軸方向に幅広に形成されており、X軸方向に1列のみ配置されている。このような構成である界磁60とY軸用電機子30′とで、Y軸用モータ3を構成している。
【0039】
界磁50の磁石固定板53と界磁60の磁石固定板63は、磁極51と磁極61による磁界が相互に干渉しないように鉄等の磁性材料で構成されており、互いに接合されている。これにより、リニアモータ1′はX軸用モータ2とY軸用モータ3とを一体的に搭載した構造となっており、それらX軸用モータ2及びY軸用モータ3を連動させることでX軸及びY軸の2軸方向の直動動作を実現する。しかしながら、比較例のリニアモータ1′では、X軸用モータ2とY軸用モータ4を個別に搭載する構成であるため、装置が大型化し、重量が増大するという問題点がある。
【0040】
これに対し、本実施形態のリニアモータ1は、上述した構成とすることにより、X軸方向への駆動に用いられる界磁とY軸方向への駆動に用いられる界磁とを上記界磁10として共通化することができる。その結果、上記比較例にようにX軸及びY軸の各方向への駆動用に界磁と電機子を個別に有する場合に比べ、一方の界磁が不要となるため、配置スペースを縮小でき、モータを小型化することができる。また、部品点数が減ることから、モータ重量を軽量化できると共に、製造工程の単純化も可能となる。
【0041】
また、本実施形態では特に、Y軸用電機子30を構成するY軸用巻線32のうち、界磁10とY軸用電機子30との間に生じるY軸方向に沿った推進力に寄与する部分は、推進方向であるY軸方向と直交するX軸方向に沿った部分である短辺部32aのみである。したがって、Y軸用電機子30のY軸用巻線列33をY軸方向に沿って1列配置すると共に、界磁10の磁極列12をY軸方向に沿ってその2倍である2列配置することにより、各Y軸用巻線32におけるY軸方向両側に位置する短辺部32aに、磁極11を効率良く対向させることができる。これにより、界磁10とY軸用電機子30との間にY軸方向に沿って高い推進力を得ることができる。特に、上記実施形態のように、X軸用電機子20のX軸用巻線列23及び界磁10の磁極列12を2列、Y軸用電機子30のY軸用巻線列33を1列に配置した場合には、最小限の磁極と巻線の構成で高い推進力を得ることが可能となり、最も効率の良い構成とすることができる。また、界磁10の磁極列12の列数とX軸用電機子20のX軸用巻線列23の列数とを等しくすることで、界磁10とX軸用電機子20との間に生じるX軸方向に沿った推進力についても、高い推進力を得ることができる。
【0042】
また、本実施形態では特に、界磁10が永久磁石からなる磁極11を有している。このように複数の永久磁石を有する界磁10を備えたリニアモータ1において、X軸方向への駆動に用いられる界磁とY軸方向への駆動に用いられる界磁とを共通化して一方の界磁を不要とすることで、レアメタルからなる永久磁石を削減することができる。これにより、リサイクル性の向上や省資源化、低コスト化が可能となる。
【0043】
また、本実施形態では特に、界磁10の磁石固定板13を非磁性材料で構成している。これにより、磁極11で発生する磁界を磁石固定板13が遮ることがなく、磁界を界磁10の一方側及び他方側の両側に確実に形成することができる。その結果、界磁10の一方側にX軸用電機子20、他方側にY軸用電機子30を配置し、界磁10を共通化した構成を実現することができる。
【0044】
また、本実施形態では特に、界磁10とX軸用電機子20との間にX軸用ガイド部材41を設け、界磁10とY軸用電機子30との間にY軸用ガイド部材42を設ける。これらX軸用ガイド部材41及びY軸用ガイド部材42により、界磁10とX軸用電機子20とのX軸方向に沿った進退移動と、界磁10とY軸用電機子30とのY軸方向に沿った進退移動を、円滑且つ安定して行うことができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0046】
(1)巻線を樹脂成型した場合
図5は、本変形例のリニアモータの構成を概念的に表す図1中II−II断面相当の側断面図である。図5に示すように、本変形例リニアモータ1Aにおいては、X軸用電機子20のX軸用巻線22は、樹脂成型により固定されており(固定樹脂を符号43で示す)、またY軸用電機子30のY軸用巻線32も同様に、樹脂成型により固定されている(固定樹脂を符号44で示す)。
【0047】
本変形例によれば、X軸用巻線22及びY軸用巻線32を樹脂成型することによって、巻線を保護すると共に絶縁性を向上することができる。また、巻線の樹脂成型によりX軸用電機子20及びY軸用電機子30の剛性及び耐振動性を向上することができるので、リニアモータ1Aの信頼性を向上できる。
【0048】
(2)リニアモータをステージ装置に適用する場合
すなわち、上記実施形態のリニアモータ1や上記(1)の変形例のリニアモータ1Aをステージ装置における直動機構の駆動源として用いてもよい。以下、そのようなステージ装置の一例を説明する。ステージ装置は、固定台上を移動可能なリニアモータ、このリニアモータの上部に配設されたステージ、上記固定台側及びリニアモータ側にそれぞれ設けられたスライダ及びガイドレールからなるリニアガイド等から構成されている。このステージ装置のリニアモータは、上記実施形態のリニアモータ1、又は、上記(1)の変形例のリニアモータ1Aから構成されている。このように構成されたステージ装置においては、リニアモータの駆動によってステージをX軸方向及びY軸方向に駆動することができる。すなわち、リニアモータは、ステージ装置における直動機構の駆動源として用いられている。前述したような界磁の共通化により小型化及び軽量化することができるリニアモータ1,1Aを直動機構の駆動源として用いることで、小型化及び軽量化が可能なステージ装置を実現できる。
【0049】
(3)その他
以上では、X軸用電機子20のX軸用巻線列23及び界磁10の磁極列12を2列、Y軸用電機子30のY軸用巻線列33を1列に配置した場合を説明したが、これに限らず、X軸用巻線列23及び磁極列12を偶数列(2n列:nは自然数)、Y軸用電機子30のY軸用巻線列33を上記偶数の半分の列数(n列:nは自然数)となるように配置してもよい。この場合でも、各Y軸用巻線32の短辺部32aに磁極11を効率良く対向させることができ、界磁10とY軸用電機子30との間にY軸方向に沿って高い推進力を得ることができる。
【0050】
なお、X軸用巻線列23及び磁極列12は必ずしも偶数列でなくともよく、奇数列としてもよい。この場合、Y軸方向の推進力に寄与しない磁極列12が少なくとも1列存在することになるため、上記偶数列である場合に比べて効率は低下するが、界磁の共通化による小型化、軽量化効果については得ることができる。
【0051】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0052】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 リニアモータ
1A リニアモータ
10 界磁
11 磁極
12 磁極列
13 磁石固定板
20 X軸用電機子(第1電機子)
22 X軸用巻線(第1巻線)
23 X軸用巻線列(第1巻線列)
30 Y軸用電機子(第2電機子)
32 Y軸用巻線(第2巻線)
33 Y軸用巻線列(第2巻線列)
41 X軸用ガイド部材(第1ガイド部材)
42 Y軸用ガイド部材(第2ガイド部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って配置された複数の磁極を有する界磁と、
前記界磁の一方側に対向して配置され、前記第1の方向に沿った推進力を発生するための複数の第1巻線を有する第1電機子と、
前記界磁の他方側に対向して配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿った推進力を発生するための複数の第2巻線を有する第2電機子と、を備え、
前記界磁、前記第1電機子、及び前記第2電機子のうちのいずれかを固定子、他を可動子とする
ことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
nを自然数とした場合に、前記界磁は、
前記第1方向に沿って配置された複数個の前記磁極からなる磁極列が前記第2方向に沿って2n列配置されて構成されており、
前記第1電機子は、
前記第1方向に沿って配置された複数個の前記第1巻線からなる第1巻線列が前記第2方向に沿って2n列配置されて構成されており、
前記第2電機子は、
前記第1方向に沿って配置された複数個の前記第2巻線からなる第2巻線列が前記第2方向に沿ってn列配置されて構成されている
ことを特徴とする請求項1記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記界磁は、
前記複数の磁極として、前記第1の方向に沿って極性が交互となるように等間隔に配置された複数の永久磁石を有している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記界磁は、
前記永久磁石を固定配置する磁石固定板をさらに有し、
前記磁石固定板は、
非磁性材料で構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記第1電機子は、
樹脂成型により固定された前記第1巻線を有し、
前記第2電機子は、
樹脂成型により固定された前記第2巻線を有している
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項6】
前記界磁と前記第1電機子との間に設けられ、前記界磁と前記第1電機子との前記第1の方向に沿った進退移動を案内するための第1ガイド部材と、
前記界磁と前記第2電機子との間に設けられ、前記界磁と前記第2電機子との前記第2の方向に沿った進退移動を案内するための第2ガイド部材と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のリニアモータを直動機構の駆動源として用いた
ことを特徴とするステージ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−105445(P2012−105445A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251653(P2010−251653)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】