リニア駆動装置
【課題】経時または経年変化によるコア部材と永久磁石とのずれを防止でき、磁束を効率良く使用することにより可動子の推力特性を向上させることができるリニア駆動装置を提供すること。
【解決手段】永久磁石151、152が埋設孔11dに挿入されて埋設されているので、経時変化等による可動子コア31と永久磁石とのずれを防止でき、確実にこれらの永久磁石を保持しておくことができる。また、固定子コア11の表面側領域110に、コア領域11fより磁気抵抗の高い溝11eが形成されている。このような構成によれば、コイル13の通電により発生する磁束及び永久磁石15が発生する磁束が、その表面側領域110における溝11eでは、可動子3の移動方向(Z軸方向)に沿って流れにくくなる。これにより、表面側領域110でZ軸方向に沿って流れようとする、推力に寄与しない無駄な磁束を減らすことができ、推力特性が向上する。
【解決手段】永久磁石151、152が埋設孔11dに挿入されて埋設されているので、経時変化等による可動子コア31と永久磁石とのずれを防止でき、確実にこれらの永久磁石を保持しておくことができる。また、固定子コア11の表面側領域110に、コア領域11fより磁気抵抗の高い溝11eが形成されている。このような構成によれば、コイル13の通電により発生する磁束及び永久磁石15が発生する磁束が、その表面側領域110における溝11eでは、可動子3の移動方向(Z軸方向)に沿って流れにくくなる。これにより、表面側領域110でZ軸方向に沿って流れようとする、推力に寄与しない無駄な磁束を減らすことができ、推力特性が向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁気的な作用によりリニア駆動を行うリニア駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リニアな駆動力や動きを得るためのリニア駆動装置として、リニアアクチュエータやリニアモータがある。リニアアクチュエータとしては、比較的短いストロークで動作するものが多く、リニアモータとしては、比較的長いストロークで動作するものが多い。
【0003】
特許文献1に記載のリニアアクチュエータは、コイルが固定されたヨークと、ヨークの内側で往復移動可能に設けられた可動子とを有する。可動子は、円筒状の鉄部材の表面にリング状の永久磁石が設けられることにより構成されている(例えば、特許文献1の段落[0016]、[0020]、図1参照)。このようなリニアアクチュエータでは、固定子から発生する磁束変化と、可動子に設けられた永久磁石が発生する磁束との相互作用により、可動子がリニアに移動する。ここで、鉄部材の表面に永久磁石が設けられているので、予想外の力が加わった場合には鉄部材から永久磁石がずれたりする等の恐れを若干残していた。
【0004】
そこで、特許文献2に記載のリニアモータの固定子は、永久磁石が固定子コアに埋め込まれた構造を有している(例えば、特許文献2の段落[0006]、図2、4参照)。
【0005】
また、特許文献3に記載のリニアアクチュエータは、円周方向に複数に分割され永久磁石がそれぞれ取り付けられたT字状の固定子構成部材と、それらの固定子構成部材が配列されることにより形成される中央部の空間内に配置された円筒状の可動子とを備える(例えば、特許文献3の段落[0019]、図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3873836号公報
【特許文献2】特許第2751684号公報
【特許文献3】特開2001−28871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2や3に記載の、永久磁石が固定子コアに埋め込まれた埋め込み型の装置では、可動子側から発生した磁束であって固定子コアに流れ込む磁束の一部は、その固定子コアの表面を流れる。固定子コアの表面を流れる磁束と、固定子コアに設けられた永久磁石が発生する磁束との相互作用はほとんどなく、可動子を移動させるための推力に寄与しない。したがって、推力特性が悪化する。
【0008】
また、例えばリニアモータやリニアアクチュエータは、可動子の移動位置に応じて可動子に働く吸引力である磁気バネや、可動子の推力バランス等の特性を持っている。設計者にとって、これらの磁気バネ力や推力バランスを容易に設計でき、またそれを変更できることが望ましい。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、経時または経年変化によるコア部材と永久磁石とのずれを防止でき、磁束を効率良く使用することにより可動子の推力特性を向上させることができるリニア駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るリニア駆動装置は、
永久磁石と、
前記永久磁石が埋設される埋設孔を有するコア部材と、
前記コア部材に装着可能なコイルとを有する1次側部材と、
前記1次側部材と対向して配置され、前記1次側部材と直線方向に相対的に移動可能に設けられた2次側部材とを具備し、
前記コア部材は、前記埋設孔より前記2次側部材側に配置された表面側領域を有し、
前記コア部材の前記表面側領域は、第1の領域及び前記第1の領域の磁気抵抗より高い任意の磁気抵抗を有する第2の領域を含み、前記第1の領域及び前記第2の領域が前記1次側部材に対する前記2次側部材の移動方向に沿って配置されている
ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るリニア駆動装置では、永久磁石が埋設孔に挿入されて配置されることにより、その永久磁石により形成される磁極の配列方向に沿って、1次側部材及び2次側部材が相対移動可能となる。このように、コア部材の埋設孔内に永久磁石が挿入されて埋設されているので、経時または経年変化によるコア部材と永久磁石とのずれを防止でき、確実にこれらの永久磁石を保持しておくことができる。
【0012】
また、コア部材の表面側領域のうち、第2の領域が、第1の領域の磁気抵抗より高く形成され、これら第1及び第2の領域が、1次側部材に対する2次側部材の相対的な移動方向(以下、相対移動方向という。)に沿って配置されている。このような構成によれば、コイルの通電により発生する磁束及び永久磁石が発生する磁束が、その表面側領域における第2の領域では、前記相対移動方向に沿って流れにくくなる。これにより、表面側領域で相対移動方向に沿って流れようとする、推力に寄与しない無駄な磁束を減らすことができる。つまり磁束を効率良く使用することができ、可動子の推力特性を向上させることができる。
【0013】
さらに、第1及び第2の領域のそれぞれの体積、または、可動子の移動方向におけるそれぞれの幅、あるいは、それぞれの配置、形状または個数等を適宜変更することにより、磁気バネ力または推力バランスの設計を容易に行うことができ、設計の自由度が高まり、それらの特性の向上につながる。
【0014】
前記第2の領域が、前記1次側部材に対する前記2次側部材の移動方向において前記永久磁石の磁極が切り替わる位置に配置されていてもよい。
【0015】
これにより、これら永久磁石により発生する磁束の、特に磁極境界付近の表面側領域での短絡を抑制することができるので、磁束を効率よく使用することができる。
【0016】
前記第2の領域が、前記1次側部材に対する前記2次側部材の移動方向に沿って間欠的に配置されていてもよい。
【0017】
これにより、第2の領域が間欠的に配置される領域において、磁束が、前記相対移動方向に沿って流れにくくなる。これにより、表面側領域で相対移動方向に沿って流れようとする、推力に寄与しない無駄な磁束を減らすことができる。
【0018】
前記1次側部材における前記2次側部材に対する対向面と前記複数の埋設孔との間隔が、所定の長さよりも短く形成されていてもよい。
【0019】
当該間隔が短く形成されることにより、磁性体を通る磁束の距離が短くなり、コア部材内で発生する磁束の流れを安定させることができる。「所定の長さ」は、そのように磁束の流れを安定させることができる範囲内で適宜設定され得る。
【0020】
前記1次側部材と前記2次側部材の対向面は、所定の曲率を有する曲面であってもよい。
【0021】
これにより、対向面の曲面に沿って永久磁石を所定の姿勢で配置することができるので、上記間隔を短くすることの効果を促進することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上、本発明によれば、経時または経年変化によるコア部材と永久磁石とのずれを防止でき、磁束を効率良く使用することにより可動子の推力特性を向上させることができる。また、磁気バネ力や推力バランスを容易に設計することができる上にその設計を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るリニア駆動装置を示す正面図である。
【図2】図2は、図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図3は、図2の固定子の半分(一方の固定子コア側)を示す断面図である。
【図4】図4A及びBは、その磁性板をそれぞれ示す図であり、磁性板をZ軸方向で見た図である。
【図5】図5は、第1の磁性板及び第2の磁性板を重ね合わせてZ軸方向で見た図である。
【図6】リニア駆動装置の動作を説明するための図である。
【図7】溝が設けられることによる作用効果を説明するための図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態に係るリニア駆動装置の固定子を示す断面図である。
【図9】間欠溝が設けられることによる作用効果を説明するための図である。
【図10】図10A及びBは、積層される磁性板の別の実施形態をそれぞれ示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0025】
[第1の実施形態]
【0026】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るリニア駆動装置を示す正面図である。図2は、図1におけるA−A線断面図である。図3は、図2に示した固定子1の半分(固定子コア11側)を示す断面図である。
【0027】
リニア駆動装置100は、固定子1及び可動子3を備える。図1は、可動子3の移動方向(Z軸方向)で見た図である。1次側部材(1次側装置)である固定子1は、固定子コア11及び12(コア部材)と、固定子コア11及び12にそれぞれ装着されたコイル13及び14と、複数の永久磁石15とを備える。固定子コア11及び12は、可動子3を挟んでY軸方向で対向するように設けられ、可動子3に対して対称配置とされている。2次側部材である可動子3は、固定子1に対向して配置され、固定子1に対して移動可能となっている。
【0028】
これら固定子コア11及び12の構造は実質的に同一であるため、これら2つを区別して説明する必要がない限り、以降の説明では、一方の固定子コア11のみについて説明する。
【0029】
可動子3は、概略円柱形状を有する可動子コア31を備えている。図2に示すように、可動子コア31のZ軸方向における長さは、固定子コア11及び12のZ軸方向における長さより短く形成されている。可動子コア31の中央には、Z軸方向に沿って貫通した、シャフト33の挿通穴31cが形成されている。シャフト33は、図示しない軸受やバネ等の支持部材によってシャフト33がZ軸方向に沿って移動可能となるように、図示しないフレームやハウジングに支持される。
【0030】
可動子コア31は、複数の磁性板がZ軸方向に積層されて形成されている。これら磁性板は、典型的には電磁鋼板が用いられ、ケイ素を含んでいてもよい。各磁性板の表面には図示しない電気絶縁被膜がそれぞれ形成されている。これにより、固定子コア11及び可動子コア31の対向方向に沿って発生する磁束の流れによる渦電流の発生を抑制することができる。固定子コア11も同様に、複数の磁性板がZ軸方向に積層されて形成されている。
【0031】
なお、リニア駆動装置100がリニアクチュエータとして用いられる場合、シャフト33を支持する支持部材としてバネ部材が用いられ、例えばスパイラル状の板バネが用いられる。支持部材の他の例として、8の字形状の板バネ、リニアブッシュ、ボールスプライン、エアベアリング、リニアガイド等が挙げられる。
【0032】
固定子コア11は、Z軸方向で見てT字状を有しており、外側部11aとティース部11bとを有する。固定子コア11の外側部11aは、図示しないフレームやハウジングに固定される。ティース部11bには、図示しないコイルボビンを介してコイル13が装着されている。なお、リニア駆動装置100は、上下に配置された固定子コア11及び12を磁気的に接続するヨークまたは継鉄部材を備え、これら固定子及びヨーク等により磁気回路が形成されていてもよい。
【0033】
固定子コア11及び可動子コア31は、それらの間に例えば1mm以下のギャップを設けてそれぞれ配置されている。ティース部11bの、可動子3と対向する対向面11cの形状は、可動子コア31の側面形状に沿うように、円柱の側面形状(所定の曲率を有する曲面であれば、円柱側面形状に限られない。)に形成されている。
【0034】
ティース部11bの先端部付近には、永久磁石15が挿入されて埋設される埋設孔11d(12d)が形成されている。図1に示すように、埋設孔11dは、ティース部11bの対向面11cに沿って、円弧状に複数配置されている。本実施形態では、埋設孔11dの数は4つであるが、この個数は適宜変更可能である。図2に示すように、1つの埋設孔11d内で、Z軸方向に複数の永久磁石15が配列されており、本実施形態ではZ軸方向に2つの永久磁石15(151及び152)が配列されている。したがって、1つの固定子コア11には、8つ(2×4)の永久磁石15が設けられている。これら8つの永久磁石15は、実質的に同じ形状及びサイズを有する。これら永久磁石は異なるサイズや形状を有していてもよい。永久磁石15は、埋設孔11d内で、例えば接着剤により固定されてもよい。
【0035】
なお、本実施形態では図3に示すように、2つの永久磁石15の間(磁極の境界)には若干の隙間gが設けられているが、この隙間gに磁気シールド材が設けられていてもよい。あるいは、隙間gがなく2つの永久磁石151及び152が接触していてもよい。あるいは、永久磁石は一体の多極着磁された磁石であってもよい。
【0036】
Z軸方向で配列される永久磁石15の数は、固定子コア11のZ軸方向の長さや、可動子3のストローク長等によって適宜設定される。
【0037】
永久磁石15は、固定子コア11と可動子コア31とが対向する方向に着磁されている。1つの埋設孔11d内に設けられた2つの永久磁石151及び152は、互いに着磁方向が逆向きになるように配置されている。これによりZ軸方向に沿って異なる一対の磁極(可動子3側に向く方の磁極)が配列される。
【0038】
固定子コア11のZ軸方向で見た一断面では、すべての(4つの)永久磁石15の磁極は同じになっている。また、図2に示すように、Z軸方向で見た一断面で見た固定子コア11の各永久磁石15の磁極と、それと同じ一断面で見た固定子コア12の各永久磁石15の磁極とは、互いに反対になっている。
【0039】
永久磁石15は、概略平板形状を有しているが、これに限られず、ティース部11bの先端部の円弧状に沿った円弧板状に形成されていてもよい。その場合、埋設孔も概略円弧状に形成されていてもよい。
【0040】
図4A及びBは、固定子コア11を形成する磁性板をそれぞれ示す図であり、磁性板をZ軸方向で見た図である。
【0041】
図4A及びBに示すように、固定子コア11は、少なくとも2種類の形状の磁性板として、第1の磁性板111と、第2の磁性板112とを含む。図4Aに示すように、第1の磁性板111は、上記外側部11aを形成する外側形成部111aと、ティース部11bを形成するティース形成部111bとを有している。ティース形成部111bには、上述のように複数の埋設孔11dが形成されている。
【0042】
図4Bに示すように、第2の磁性板112は、上記外側形成部111aと同じ形状の外側形成部112aと、上記ティース形成部111bとは異なる形状のティース形成部112bとを有する。ティース形成部112bには埋設孔11dが形成されず、そのY軸方向の長さが、ティース形成部111bのそれより短く形成されている。
【0043】
これら第1の磁性板111及び第2の磁性板112の厚さは、実質的に同一とされるが、異なっていてもよい。これら磁性板111及び112も、典型的には電磁鋼板が用いられ、ケイ素を含んでいてもよい。各磁性板の表面には図示しない電気絶縁被膜がそれぞれ形成されている。これにより、固定子コア11及び可動子コア31の配列方向(Y軸方向)に沿って発生する磁束の流れによる渦電流の発生を抑制することができる。
【0044】
図5は、これら第1の磁性板111及び第2の磁性板112を重ね合わせてZ軸方向で見た図である。図を分かりやすくするため、第2の磁性板112のサイズを、本来重なり合う第1の磁性板111の外形部分のサイズより若干小さく描いている。第2の磁性板112のティース形成部112bのエッジ部112cが、第1の磁性板111の埋設孔11dの外側形成部111a側のエッジ付近に位置するように、これら第1の磁性板111及び第2の磁性板112のサイズが設計されて積層されている。
【0045】
図3に示すように、固定子コア11における、Z軸方向に沿って配列された2つの永久磁石151及び152の間の隙間gである磁極の境界がある位置、すなわち磁極が切り替わる位置に複数の第2の磁性板112が積層され、その他は第1の磁性板111が積層されている。これにより、その磁極の境界の可動子3側に磁気抵抗の高い溝(空隙)11eが形成される。すなわち、固定子コア11の表面側領域(各永久磁石15より可動子3側に近い領域)110は、相対的に磁気抵抗が低いコア領域(第1の領域)11fと、相対的に磁気抵抗が高い領域である上記溝(第2の領域)11eとを含む。固定子コア11の形状に着目すると、表面側領域110のうちこの溝11eの領域は、永久磁石15の間を構成する磁極が切り替わる位置に配置されている。
【0046】
溝11eのZ軸方向の幅は、適宜変更可能であり、ここでは第2の磁性板112の枚数により適宜設定され得る。溝11e及びコア領域11fの、Z軸方向におけるそれぞれの幅、あるいは、それぞれの配置、形状または個数等を適宜変更することにより、磁気バネ力または推力バランスの設計を容易に行うことができ、設計の自由度が高まり、それらの特性の向上につながる。
【0047】
図4Aに示すように、固定子コア11の、可動子コア31に対向する対向面と、埋設孔11dとの間隔fが、所定の長さより短く形成されている。間隔fが短く形成されることにより、固定子コア11を通る磁束の距離が短くなり、固定子コア11内で発生する磁束の流れを安定させることができる。間隔f(所定の長さ)は、そのように磁束の流れを安定させることができる範囲内で適宜設定され得る。
【0048】
特に、本実施形態のように、当該対向面が曲面状に形成されていることにより、その曲面に沿って永久磁石15を所定の姿勢で曲線上で並べて配置することができるので、上記間隔fを短くすることの効果を促進することができる。
【0049】
[リニア駆動装置の動作]
【0050】
次に、以上のように構成されたリニア駆動装置100の動作を説明する。図6A及びBは、その動作を説明するための図である。なお、図6A及びBで表されたZ軸方向の2つの永久磁石151及び152の極性は、可動子3側に向く磁極を示している。
【0051】
図6Aに示すように、固定子コア11のコイル13及び固定子コア12のコイル14に同じ向きの電流が同じタイミングで加えられると、コイル13及び14により発生した磁束が固定子コア11及び12の各ティース部11b及び12bを通るようになる。この場合、一方のティース部(例えばティース部11b)から他方のティース部(ティース部12b)へ磁束が流れるようになる。このように発生した磁束の流れと、永久磁石151及び152のうち磁束の流れが一致する方の永久磁石の方に、可動子コア31は移動する。図6Aに示すコイルの電流の向きでは、可動子コア31は、永久磁石151側に移動する。
【0052】
一方、図6Bに示すように、コイル13及び14に、それまでの電流の向きとは逆向きの電流が同じタイミングで加えられると、上記と同様の作用により、可動子コア31は反対側へ移動する。
【0053】
以上のように、コイル13及び14にそれぞれ交流電流(交流電圧)が印加されることにより、可動子3はZ軸方向で振動する。この場合、リニア駆動装置100をリニアアクチュエータや、振動モータとして利用することができる。
【0054】
コイル13及び14に加えられる交流電圧の波形は、正弦波、矩形波、三角波など、適宜設定可能である。また、その波形にDC成分等のオフセット電圧が加えられてもよい。その場合、そのオフセット電圧値に応じて可動子3のストロークエンド(死点)の位置を適宜調整することができる。そのほか、後述するようにティース部及びコイルがZ軸方向に3つ以上設けられる場合、三相コイルに三相交流を流すといった、交流電圧の波形に応じた種々の駆動方法を実現することができる。
【0055】
以上のように、本実施形態では、永久磁石15が埋設孔11dに挿入されて埋設されているので、経時または経年変化による可動子コア31と永久磁石15とのずれを防止でき、永久磁石15が可動子コア31から剥がれ落ちるおそれがなく、確実にこれらの永久磁石15を保持しておくことができる。
【0056】
また、本実施形態に係る固定子コア11(及び12)の表面側領域110に、コア領域11fより磁気抵抗の高い溝11eが形成されている。このような構成によれば、コイル13の通電により発生する磁束及び永久磁石15が発生する磁束が、その表面側領域110における溝11eでは、可動子3の移動方向(Z軸方向)に沿って流れにくくなる。これにより、表面側領域110でZ軸方向に沿って流れようとする、推力に寄与しない無駄な磁束を減らすことができる。つまり鉄損を低減し、磁束を効率良く使用することができ、可動子の推力特性を向上させることができる。
【0057】
特に本実施形態では、表面側領域110の磁極境界上に溝11eが形成されている。これにより、例えば永久磁石151及び152間で発生する磁束の、その磁極境界(隙間g)上の表面側領域110での短絡を抑制することができる。具体的には、図7に示すように、表面側領域110で、Z軸方向に沿って流れようとする、推力に寄与しない無駄な磁束(破線矢印Lで示す磁束)を減らすことができる。すなわち、磁極境界上の表面側領域110で短絡しない分の磁束が、固定子コア11及び可動子コア31間で発生する磁束に寄与するので、磁束を効率良く使用することができる。実線の矢印Mで示す磁束は、推力に寄与する磁束である。
【0058】
[第2の実施形態]
【0059】
図8は、本発明の第2の実施形態に係るリニア駆動装置の固定子を示す断面図である。この図は、X軸方向で見た図であり、上記第1の実施形態では図3に対応する図である。これ以降の説明では、図1等に示した実施形態に係るリニア駆動装置100が含む部材や機能等について同様のものは説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0060】
このリニア駆動装置の固定子コア51の表面側領域510には、上記第1の実施形態のように磁極境界上の位置である否かに関わらず、Z軸方向に沿って間欠的に溝51eが形成されている。以下、これを間欠溝51eという。このような固定子コア51は、典型的には、図4A及びBで示した第1の磁性板111及び第2の磁性板112が単数ずつ交互に積層されて形成される。すなわちこの固定子コア51の表面側領域510では、磁気抵抗の低い領域(第1の領域)と、磁気抵抗の高い領域(第2の領域)である間欠溝51eとがZ軸方向に沿って交互に配置される。
【0061】
なお、符号51cで示す部分は、可動子コアに対向する曲面(円柱側面)状の対向面である。
【0062】
図9に示すように、例えば、コイル13の通電により発生する磁束及び永久磁石15が発生する磁束が、表面側領域510おける間欠溝51e以外の領域、つまり磁気抵抗の低いコア領域51fを通り、可動子コア31の中心側に向かうようになる。すなわち、磁束が可動子3の移動方向に沿って表面側領域510を流れにくくなり、表面側領域510で可動子3の移動方向に流れようとする、可動子3の推力に寄与しない無駄な磁束を減らすことができる。つまり鉄損を低減し、磁束を効率良く使用することができ、可動子3の推力特性を向上させることができる。
【0063】
本実施形態では、第1の磁性板111及び第2の磁性板112が単数ずつ積層されるのではなく、複数ずつ積層されてもよい。あるいは、第1の磁性板111及び第2の磁性板112のうちいずれか一方が単数で他方が複数ずつ積層されてもよい。
【0064】
[第3の実施形態]
【0065】
図10A及びBは、リニア駆動装置の固定子を構成する各磁性板の別の実施形態を示す図であり、図4A及びBに対応する図である。図10A及びBに示す形態において、図4A及びBに示した形態と異なる点を中心に説明する。
【0066】
第1の磁性板113は、ティース本体部1130と、このティース本体部1130の外周に沿って設けられた外形枠部1139と、ティース本体部1130から外側へ突出し、ティース本体部1130と外形枠部1139とを連結する連結部1131とを有する。また、ティース本体部1130には、上記第1の磁性板111と同様に、Z軸方向で見た場合、4つの永久磁石が埋設される埋設孔113dが形成されている。これら埋設孔113dは、中央で連結部1131によって区画されており、また、連結部1131の長さより短い突出片1132によって、2つの埋設孔領域が区画されている。
【0067】
第2の磁性板123は、ティース本体部1230と、このティース本体部1230の外形を形成する本体エッジ部1230aから外側へ突出して設けられた突出部1231及び突出片1232とを有する。各磁性板113及び123が積層された場合、第2の突出部123の突出部1231の位置は、上記第1の磁性板113の連結部1131の位置と対応する。また、各突出片1232の位置及び長さは、第1の磁性板113の突出片1132の位置及び長さと対応している。
【0068】
突出部1231の突出方向(Y軸方向)の長さt2は、連結部1131のY軸方向の長さに外形枠部1139のY軸方向の長さを加えた長さt1と実質的に同じである。このような構成によれば、各磁性板113及び123が積層された時に、連結部1131と突出部1231とがZ軸方向で連なり、これがブリッジ部として形成される。このブリッジ部は、第1の磁性板113の各外形枠部1139同士を支え合う機能を有し、言わばリブの機能を果たす。
【0069】
第1の磁性板113が電磁鋼板で形成される場合であって、そのZ軸方向に沿う厚さが例えば0.75mm以下の場合、その外形枠部1139は変形しやすい。特に、可動子コアの製造時において、永久磁石を埋設孔に埋め込む場合に、その変形が起こりやすくなる。上記のようなブリッジ部が形成されることにより、外形枠部1139の変形を防止することができ、外形枠部1139のZ軸方向に沿う強度を高めることができる。
【0070】
もちろん、第1の磁性板113の厚さが0.75mmを超える場合であっても、可動子コアにこのようなブリッジ部を形成してもよい。
【0071】
なお、図10Bにおいて一点鎖線で示すように、第2の磁性板123のティース本体部1230のエッジのX軸方向の両端部に、第1の磁性板113の外形枠部1139の両端部1133に対応する形状部分1233が外側へ突出するように形成されていてもよい。このような部位1133及び1233のZ軸方向の積層によっても、外形枠部1139の変形を抑制するブリッジ部を形成することができる。
【0072】
[その他の実施形態]
【0073】
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態がある。
【0074】
上記第1(または第3)及び第2の実施形態を組み合わせてもよい。すなわち、固定子コアの表面側領域において、磁極境界上に溝が形成され、かつ、磁極境界上以外の表面側領域において間欠溝が形成されていてもよい。
【0075】
上記第1及び第2の実施形態において、溝11e及び間欠溝51eとしての比較的磁気抵抗が高い領域は、空隙によって形成されたが、この磁気抵抗が高い領域には、コア領域11f(51f)の磁気抵抗より高い磁気抵抗を持つ材料が設けられていてもよい。その材料としては、例えばアルミニウム、ステンレス、ガラス、セラミック、ゴム等の非磁性材でもよい。
【0076】
上記第1の実施形態における溝11eの形状は、図3に示したようにX軸方向の断面で見て矩形状に切りかかれて形成されていた。しかし、この溝11eの形状は、V字や曲線形状のものであってもよい。
【0077】
上記各実施形態に係る固定子コアの表面側領域において、溝11e(あるいは間欠溝51e)は、磁性板のティース部11bの対向面11cの全幅(図1で示したX軸方向の幅)、つまりZ軸方向の周囲に沿ってすべての領域で形成されていた。しかし、溝11e(あるいは間欠溝51e)は、そのZ軸方向の周囲に沿った一部の領域で形成されていてもよい。この場合、固定子コアは、後述するようにソリッドに形成されていてもよい。
【0078】
上記各実施形態に係る固定子コアにおいて、積層される磁性板について、第1の磁性板111及び第2の磁性板112の厚さは互いに異なっていてもよい。例えば上記実施形態に係る固定子コア11において、第1の磁性板111の厚さより、第2の磁性板112の厚さを厚くしてもよい。この場合、溝11eを形成する磁性板は、その1つの溝11eに1枚の第2の磁性板112が対応するような厚さを持っていてもよい。
【0079】
上記実施形態では、固定子1側が、コイル13及び永久磁石15が装着された1次側部材として機能し、可動子3が2次側部材として機能した。しかし、可動子側にコイル及び永久磁石が装着されて、これが1次側部材として機能し、固定子が2次側部材として機能してもよい。この場合、その1次側部材である可動子の表面側領域に、第1の領域と、その第1の領域の磁気抵抗より高い任意の磁気抵抗を有する第2の領域とが形成される。また、この場合、固定子が中央に配置され、この固定子の外側あるいは固定子の周囲に、可動子が配置されていてもよい。すなわち、固定子コアに対向して可動子が配置されていればよい。
【0080】
上記実施形態では、固定子コア11(51)及び可動子コア31ともに、磁性板の積層により形成された。しかし、固定子コア及び可動子コアのうち少なくとも一方が、積層でなくソリッドに形成されていてもよい。この場合、ソリッドなコア部材の表面側領域に、上記各実施形態で示したような溝や間欠溝が形成されていればよい。このようなソリッドなコアは、圧粉や焼結体により形成されていてもよい。
【0081】
固定子コア11のZ軸方向の長さの設計によっては、固定子コア11の埋設孔11dにZ軸方向で配置される永久磁石15は1つでもよい。この場合、1つの永久磁石15は、可動子を移動させる方向(Z軸方向)に着磁されることにより、そのZ軸方向に沿って磁極を配列させることができる。
【0082】
上記実施形態に係る固定子コア11(51)のティース部11b(51b)の数は1つ(Z軸方向で1つ)であったが、2つ以上であってもよい。コイル13及び永久磁石15の数は、ティース部11bの数が増えれば、それに応じて増える。また、固定子コアの表面側領域には、磁極間の溝及び間欠溝もそれに応じて増える。また、磁極のピッチ、すなわち、各永久磁石のZ軸方向の長さも適宜変更可能である。このようにZ軸方向が比較的長いリニア駆動装置は、リニアモータとして利用される。固定子コアや可動子コアの形状も適宜変更可能である。
【0083】
あるいは、磁気バネ力や推力バランス等の特性を所望のものにするために、磁極間の溝及び間欠溝のピッチ、幅及び形状のうち少なくとも1つを適宜変更するようにしてもよい。特に本実施形態では、上述のように、積層された磁性板111及び112の枚数や厚さを適宜設定することにより、そのピッチや幅を自由に変更することができ、設計の変更が容易になる。
【0084】
上記実施形態に係る固定子は、2つの固定子コア11及び12を有していたが、可動子に対向する1つのみの固定子コアを有していてもよい。
【0085】
図1に示した固定子コア1は、Y軸方向で2つに分割されて形成される固定子コア11及び12を有していたが、Z軸の周りの円周上に3つ以上分割されて形成される固定子コアを有していてもよい。
【0086】
可動子の形状が円柱状ではなく板形状であってもよい。そして、その板形状の可動子の、図1で見てY軸方向における一方側または両側に対向して配置された固定子が設けられたリニア駆動装置が実現されてもよい。この場合、1次側部材のコア部材の表面側領域は、上記各実施形態のように円柱形状でなく、溝や間欠溝を含む平面形状となる。
【0087】
上記各実施形態に係るリニア駆動装置が発電機として用いられてもよい。この場合、外部から可動子が駆動され、可動子が積層方向に移動することにより、固定子コアに磁束変化が発生し、これによりコイルに起電力が発生する。
【0088】
以上説明した各形態の特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0089】
1…固定子
3…可動子
11、12、51…固定子コア(コア部材に相当)
11d…埋設孔
11e…溝(第2の領域に相当)
11f、51f…コア領域(第1の領域に相当)
13、14…コイル
15、151、152…永久磁石
51e…間欠溝(第2の領域に相当)
100…リニア駆動装置
110、510…表面側領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁気的な作用によりリニア駆動を行うリニア駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リニアな駆動力や動きを得るためのリニア駆動装置として、リニアアクチュエータやリニアモータがある。リニアアクチュエータとしては、比較的短いストロークで動作するものが多く、リニアモータとしては、比較的長いストロークで動作するものが多い。
【0003】
特許文献1に記載のリニアアクチュエータは、コイルが固定されたヨークと、ヨークの内側で往復移動可能に設けられた可動子とを有する。可動子は、円筒状の鉄部材の表面にリング状の永久磁石が設けられることにより構成されている(例えば、特許文献1の段落[0016]、[0020]、図1参照)。このようなリニアアクチュエータでは、固定子から発生する磁束変化と、可動子に設けられた永久磁石が発生する磁束との相互作用により、可動子がリニアに移動する。ここで、鉄部材の表面に永久磁石が設けられているので、予想外の力が加わった場合には鉄部材から永久磁石がずれたりする等の恐れを若干残していた。
【0004】
そこで、特許文献2に記載のリニアモータの固定子は、永久磁石が固定子コアに埋め込まれた構造を有している(例えば、特許文献2の段落[0006]、図2、4参照)。
【0005】
また、特許文献3に記載のリニアアクチュエータは、円周方向に複数に分割され永久磁石がそれぞれ取り付けられたT字状の固定子構成部材と、それらの固定子構成部材が配列されることにより形成される中央部の空間内に配置された円筒状の可動子とを備える(例えば、特許文献3の段落[0019]、図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3873836号公報
【特許文献2】特許第2751684号公報
【特許文献3】特開2001−28871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2や3に記載の、永久磁石が固定子コアに埋め込まれた埋め込み型の装置では、可動子側から発生した磁束であって固定子コアに流れ込む磁束の一部は、その固定子コアの表面を流れる。固定子コアの表面を流れる磁束と、固定子コアに設けられた永久磁石が発生する磁束との相互作用はほとんどなく、可動子を移動させるための推力に寄与しない。したがって、推力特性が悪化する。
【0008】
また、例えばリニアモータやリニアアクチュエータは、可動子の移動位置に応じて可動子に働く吸引力である磁気バネや、可動子の推力バランス等の特性を持っている。設計者にとって、これらの磁気バネ力や推力バランスを容易に設計でき、またそれを変更できることが望ましい。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、経時または経年変化によるコア部材と永久磁石とのずれを防止でき、磁束を効率良く使用することにより可動子の推力特性を向上させることができるリニア駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るリニア駆動装置は、
永久磁石と、
前記永久磁石が埋設される埋設孔を有するコア部材と、
前記コア部材に装着可能なコイルとを有する1次側部材と、
前記1次側部材と対向して配置され、前記1次側部材と直線方向に相対的に移動可能に設けられた2次側部材とを具備し、
前記コア部材は、前記埋設孔より前記2次側部材側に配置された表面側領域を有し、
前記コア部材の前記表面側領域は、第1の領域及び前記第1の領域の磁気抵抗より高い任意の磁気抵抗を有する第2の領域を含み、前記第1の領域及び前記第2の領域が前記1次側部材に対する前記2次側部材の移動方向に沿って配置されている
ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るリニア駆動装置では、永久磁石が埋設孔に挿入されて配置されることにより、その永久磁石により形成される磁極の配列方向に沿って、1次側部材及び2次側部材が相対移動可能となる。このように、コア部材の埋設孔内に永久磁石が挿入されて埋設されているので、経時または経年変化によるコア部材と永久磁石とのずれを防止でき、確実にこれらの永久磁石を保持しておくことができる。
【0012】
また、コア部材の表面側領域のうち、第2の領域が、第1の領域の磁気抵抗より高く形成され、これら第1及び第2の領域が、1次側部材に対する2次側部材の相対的な移動方向(以下、相対移動方向という。)に沿って配置されている。このような構成によれば、コイルの通電により発生する磁束及び永久磁石が発生する磁束が、その表面側領域における第2の領域では、前記相対移動方向に沿って流れにくくなる。これにより、表面側領域で相対移動方向に沿って流れようとする、推力に寄与しない無駄な磁束を減らすことができる。つまり磁束を効率良く使用することができ、可動子の推力特性を向上させることができる。
【0013】
さらに、第1及び第2の領域のそれぞれの体積、または、可動子の移動方向におけるそれぞれの幅、あるいは、それぞれの配置、形状または個数等を適宜変更することにより、磁気バネ力または推力バランスの設計を容易に行うことができ、設計の自由度が高まり、それらの特性の向上につながる。
【0014】
前記第2の領域が、前記1次側部材に対する前記2次側部材の移動方向において前記永久磁石の磁極が切り替わる位置に配置されていてもよい。
【0015】
これにより、これら永久磁石により発生する磁束の、特に磁極境界付近の表面側領域での短絡を抑制することができるので、磁束を効率よく使用することができる。
【0016】
前記第2の領域が、前記1次側部材に対する前記2次側部材の移動方向に沿って間欠的に配置されていてもよい。
【0017】
これにより、第2の領域が間欠的に配置される領域において、磁束が、前記相対移動方向に沿って流れにくくなる。これにより、表面側領域で相対移動方向に沿って流れようとする、推力に寄与しない無駄な磁束を減らすことができる。
【0018】
前記1次側部材における前記2次側部材に対する対向面と前記複数の埋設孔との間隔が、所定の長さよりも短く形成されていてもよい。
【0019】
当該間隔が短く形成されることにより、磁性体を通る磁束の距離が短くなり、コア部材内で発生する磁束の流れを安定させることができる。「所定の長さ」は、そのように磁束の流れを安定させることができる範囲内で適宜設定され得る。
【0020】
前記1次側部材と前記2次側部材の対向面は、所定の曲率を有する曲面であってもよい。
【0021】
これにより、対向面の曲面に沿って永久磁石を所定の姿勢で配置することができるので、上記間隔を短くすることの効果を促進することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上、本発明によれば、経時または経年変化によるコア部材と永久磁石とのずれを防止でき、磁束を効率良く使用することにより可動子の推力特性を向上させることができる。また、磁気バネ力や推力バランスを容易に設計することができる上にその設計を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るリニア駆動装置を示す正面図である。
【図2】図2は、図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図3は、図2の固定子の半分(一方の固定子コア側)を示す断面図である。
【図4】図4A及びBは、その磁性板をそれぞれ示す図であり、磁性板をZ軸方向で見た図である。
【図5】図5は、第1の磁性板及び第2の磁性板を重ね合わせてZ軸方向で見た図である。
【図6】リニア駆動装置の動作を説明するための図である。
【図7】溝が設けられることによる作用効果を説明するための図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態に係るリニア駆動装置の固定子を示す断面図である。
【図9】間欠溝が設けられることによる作用効果を説明するための図である。
【図10】図10A及びBは、積層される磁性板の別の実施形態をそれぞれ示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0025】
[第1の実施形態]
【0026】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るリニア駆動装置を示す正面図である。図2は、図1におけるA−A線断面図である。図3は、図2に示した固定子1の半分(固定子コア11側)を示す断面図である。
【0027】
リニア駆動装置100は、固定子1及び可動子3を備える。図1は、可動子3の移動方向(Z軸方向)で見た図である。1次側部材(1次側装置)である固定子1は、固定子コア11及び12(コア部材)と、固定子コア11及び12にそれぞれ装着されたコイル13及び14と、複数の永久磁石15とを備える。固定子コア11及び12は、可動子3を挟んでY軸方向で対向するように設けられ、可動子3に対して対称配置とされている。2次側部材である可動子3は、固定子1に対向して配置され、固定子1に対して移動可能となっている。
【0028】
これら固定子コア11及び12の構造は実質的に同一であるため、これら2つを区別して説明する必要がない限り、以降の説明では、一方の固定子コア11のみについて説明する。
【0029】
可動子3は、概略円柱形状を有する可動子コア31を備えている。図2に示すように、可動子コア31のZ軸方向における長さは、固定子コア11及び12のZ軸方向における長さより短く形成されている。可動子コア31の中央には、Z軸方向に沿って貫通した、シャフト33の挿通穴31cが形成されている。シャフト33は、図示しない軸受やバネ等の支持部材によってシャフト33がZ軸方向に沿って移動可能となるように、図示しないフレームやハウジングに支持される。
【0030】
可動子コア31は、複数の磁性板がZ軸方向に積層されて形成されている。これら磁性板は、典型的には電磁鋼板が用いられ、ケイ素を含んでいてもよい。各磁性板の表面には図示しない電気絶縁被膜がそれぞれ形成されている。これにより、固定子コア11及び可動子コア31の対向方向に沿って発生する磁束の流れによる渦電流の発生を抑制することができる。固定子コア11も同様に、複数の磁性板がZ軸方向に積層されて形成されている。
【0031】
なお、リニア駆動装置100がリニアクチュエータとして用いられる場合、シャフト33を支持する支持部材としてバネ部材が用いられ、例えばスパイラル状の板バネが用いられる。支持部材の他の例として、8の字形状の板バネ、リニアブッシュ、ボールスプライン、エアベアリング、リニアガイド等が挙げられる。
【0032】
固定子コア11は、Z軸方向で見てT字状を有しており、外側部11aとティース部11bとを有する。固定子コア11の外側部11aは、図示しないフレームやハウジングに固定される。ティース部11bには、図示しないコイルボビンを介してコイル13が装着されている。なお、リニア駆動装置100は、上下に配置された固定子コア11及び12を磁気的に接続するヨークまたは継鉄部材を備え、これら固定子及びヨーク等により磁気回路が形成されていてもよい。
【0033】
固定子コア11及び可動子コア31は、それらの間に例えば1mm以下のギャップを設けてそれぞれ配置されている。ティース部11bの、可動子3と対向する対向面11cの形状は、可動子コア31の側面形状に沿うように、円柱の側面形状(所定の曲率を有する曲面であれば、円柱側面形状に限られない。)に形成されている。
【0034】
ティース部11bの先端部付近には、永久磁石15が挿入されて埋設される埋設孔11d(12d)が形成されている。図1に示すように、埋設孔11dは、ティース部11bの対向面11cに沿って、円弧状に複数配置されている。本実施形態では、埋設孔11dの数は4つであるが、この個数は適宜変更可能である。図2に示すように、1つの埋設孔11d内で、Z軸方向に複数の永久磁石15が配列されており、本実施形態ではZ軸方向に2つの永久磁石15(151及び152)が配列されている。したがって、1つの固定子コア11には、8つ(2×4)の永久磁石15が設けられている。これら8つの永久磁石15は、実質的に同じ形状及びサイズを有する。これら永久磁石は異なるサイズや形状を有していてもよい。永久磁石15は、埋設孔11d内で、例えば接着剤により固定されてもよい。
【0035】
なお、本実施形態では図3に示すように、2つの永久磁石15の間(磁極の境界)には若干の隙間gが設けられているが、この隙間gに磁気シールド材が設けられていてもよい。あるいは、隙間gがなく2つの永久磁石151及び152が接触していてもよい。あるいは、永久磁石は一体の多極着磁された磁石であってもよい。
【0036】
Z軸方向で配列される永久磁石15の数は、固定子コア11のZ軸方向の長さや、可動子3のストローク長等によって適宜設定される。
【0037】
永久磁石15は、固定子コア11と可動子コア31とが対向する方向に着磁されている。1つの埋設孔11d内に設けられた2つの永久磁石151及び152は、互いに着磁方向が逆向きになるように配置されている。これによりZ軸方向に沿って異なる一対の磁極(可動子3側に向く方の磁極)が配列される。
【0038】
固定子コア11のZ軸方向で見た一断面では、すべての(4つの)永久磁石15の磁極は同じになっている。また、図2に示すように、Z軸方向で見た一断面で見た固定子コア11の各永久磁石15の磁極と、それと同じ一断面で見た固定子コア12の各永久磁石15の磁極とは、互いに反対になっている。
【0039】
永久磁石15は、概略平板形状を有しているが、これに限られず、ティース部11bの先端部の円弧状に沿った円弧板状に形成されていてもよい。その場合、埋設孔も概略円弧状に形成されていてもよい。
【0040】
図4A及びBは、固定子コア11を形成する磁性板をそれぞれ示す図であり、磁性板をZ軸方向で見た図である。
【0041】
図4A及びBに示すように、固定子コア11は、少なくとも2種類の形状の磁性板として、第1の磁性板111と、第2の磁性板112とを含む。図4Aに示すように、第1の磁性板111は、上記外側部11aを形成する外側形成部111aと、ティース部11bを形成するティース形成部111bとを有している。ティース形成部111bには、上述のように複数の埋設孔11dが形成されている。
【0042】
図4Bに示すように、第2の磁性板112は、上記外側形成部111aと同じ形状の外側形成部112aと、上記ティース形成部111bとは異なる形状のティース形成部112bとを有する。ティース形成部112bには埋設孔11dが形成されず、そのY軸方向の長さが、ティース形成部111bのそれより短く形成されている。
【0043】
これら第1の磁性板111及び第2の磁性板112の厚さは、実質的に同一とされるが、異なっていてもよい。これら磁性板111及び112も、典型的には電磁鋼板が用いられ、ケイ素を含んでいてもよい。各磁性板の表面には図示しない電気絶縁被膜がそれぞれ形成されている。これにより、固定子コア11及び可動子コア31の配列方向(Y軸方向)に沿って発生する磁束の流れによる渦電流の発生を抑制することができる。
【0044】
図5は、これら第1の磁性板111及び第2の磁性板112を重ね合わせてZ軸方向で見た図である。図を分かりやすくするため、第2の磁性板112のサイズを、本来重なり合う第1の磁性板111の外形部分のサイズより若干小さく描いている。第2の磁性板112のティース形成部112bのエッジ部112cが、第1の磁性板111の埋設孔11dの外側形成部111a側のエッジ付近に位置するように、これら第1の磁性板111及び第2の磁性板112のサイズが設計されて積層されている。
【0045】
図3に示すように、固定子コア11における、Z軸方向に沿って配列された2つの永久磁石151及び152の間の隙間gである磁極の境界がある位置、すなわち磁極が切り替わる位置に複数の第2の磁性板112が積層され、その他は第1の磁性板111が積層されている。これにより、その磁極の境界の可動子3側に磁気抵抗の高い溝(空隙)11eが形成される。すなわち、固定子コア11の表面側領域(各永久磁石15より可動子3側に近い領域)110は、相対的に磁気抵抗が低いコア領域(第1の領域)11fと、相対的に磁気抵抗が高い領域である上記溝(第2の領域)11eとを含む。固定子コア11の形状に着目すると、表面側領域110のうちこの溝11eの領域は、永久磁石15の間を構成する磁極が切り替わる位置に配置されている。
【0046】
溝11eのZ軸方向の幅は、適宜変更可能であり、ここでは第2の磁性板112の枚数により適宜設定され得る。溝11e及びコア領域11fの、Z軸方向におけるそれぞれの幅、あるいは、それぞれの配置、形状または個数等を適宜変更することにより、磁気バネ力または推力バランスの設計を容易に行うことができ、設計の自由度が高まり、それらの特性の向上につながる。
【0047】
図4Aに示すように、固定子コア11の、可動子コア31に対向する対向面と、埋設孔11dとの間隔fが、所定の長さより短く形成されている。間隔fが短く形成されることにより、固定子コア11を通る磁束の距離が短くなり、固定子コア11内で発生する磁束の流れを安定させることができる。間隔f(所定の長さ)は、そのように磁束の流れを安定させることができる範囲内で適宜設定され得る。
【0048】
特に、本実施形態のように、当該対向面が曲面状に形成されていることにより、その曲面に沿って永久磁石15を所定の姿勢で曲線上で並べて配置することができるので、上記間隔fを短くすることの効果を促進することができる。
【0049】
[リニア駆動装置の動作]
【0050】
次に、以上のように構成されたリニア駆動装置100の動作を説明する。図6A及びBは、その動作を説明するための図である。なお、図6A及びBで表されたZ軸方向の2つの永久磁石151及び152の極性は、可動子3側に向く磁極を示している。
【0051】
図6Aに示すように、固定子コア11のコイル13及び固定子コア12のコイル14に同じ向きの電流が同じタイミングで加えられると、コイル13及び14により発生した磁束が固定子コア11及び12の各ティース部11b及び12bを通るようになる。この場合、一方のティース部(例えばティース部11b)から他方のティース部(ティース部12b)へ磁束が流れるようになる。このように発生した磁束の流れと、永久磁石151及び152のうち磁束の流れが一致する方の永久磁石の方に、可動子コア31は移動する。図6Aに示すコイルの電流の向きでは、可動子コア31は、永久磁石151側に移動する。
【0052】
一方、図6Bに示すように、コイル13及び14に、それまでの電流の向きとは逆向きの電流が同じタイミングで加えられると、上記と同様の作用により、可動子コア31は反対側へ移動する。
【0053】
以上のように、コイル13及び14にそれぞれ交流電流(交流電圧)が印加されることにより、可動子3はZ軸方向で振動する。この場合、リニア駆動装置100をリニアアクチュエータや、振動モータとして利用することができる。
【0054】
コイル13及び14に加えられる交流電圧の波形は、正弦波、矩形波、三角波など、適宜設定可能である。また、その波形にDC成分等のオフセット電圧が加えられてもよい。その場合、そのオフセット電圧値に応じて可動子3のストロークエンド(死点)の位置を適宜調整することができる。そのほか、後述するようにティース部及びコイルがZ軸方向に3つ以上設けられる場合、三相コイルに三相交流を流すといった、交流電圧の波形に応じた種々の駆動方法を実現することができる。
【0055】
以上のように、本実施形態では、永久磁石15が埋設孔11dに挿入されて埋設されているので、経時または経年変化による可動子コア31と永久磁石15とのずれを防止でき、永久磁石15が可動子コア31から剥がれ落ちるおそれがなく、確実にこれらの永久磁石15を保持しておくことができる。
【0056】
また、本実施形態に係る固定子コア11(及び12)の表面側領域110に、コア領域11fより磁気抵抗の高い溝11eが形成されている。このような構成によれば、コイル13の通電により発生する磁束及び永久磁石15が発生する磁束が、その表面側領域110における溝11eでは、可動子3の移動方向(Z軸方向)に沿って流れにくくなる。これにより、表面側領域110でZ軸方向に沿って流れようとする、推力に寄与しない無駄な磁束を減らすことができる。つまり鉄損を低減し、磁束を効率良く使用することができ、可動子の推力特性を向上させることができる。
【0057】
特に本実施形態では、表面側領域110の磁極境界上に溝11eが形成されている。これにより、例えば永久磁石151及び152間で発生する磁束の、その磁極境界(隙間g)上の表面側領域110での短絡を抑制することができる。具体的には、図7に示すように、表面側領域110で、Z軸方向に沿って流れようとする、推力に寄与しない無駄な磁束(破線矢印Lで示す磁束)を減らすことができる。すなわち、磁極境界上の表面側領域110で短絡しない分の磁束が、固定子コア11及び可動子コア31間で発生する磁束に寄与するので、磁束を効率良く使用することができる。実線の矢印Mで示す磁束は、推力に寄与する磁束である。
【0058】
[第2の実施形態]
【0059】
図8は、本発明の第2の実施形態に係るリニア駆動装置の固定子を示す断面図である。この図は、X軸方向で見た図であり、上記第1の実施形態では図3に対応する図である。これ以降の説明では、図1等に示した実施形態に係るリニア駆動装置100が含む部材や機能等について同様のものは説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0060】
このリニア駆動装置の固定子コア51の表面側領域510には、上記第1の実施形態のように磁極境界上の位置である否かに関わらず、Z軸方向に沿って間欠的に溝51eが形成されている。以下、これを間欠溝51eという。このような固定子コア51は、典型的には、図4A及びBで示した第1の磁性板111及び第2の磁性板112が単数ずつ交互に積層されて形成される。すなわちこの固定子コア51の表面側領域510では、磁気抵抗の低い領域(第1の領域)と、磁気抵抗の高い領域(第2の領域)である間欠溝51eとがZ軸方向に沿って交互に配置される。
【0061】
なお、符号51cで示す部分は、可動子コアに対向する曲面(円柱側面)状の対向面である。
【0062】
図9に示すように、例えば、コイル13の通電により発生する磁束及び永久磁石15が発生する磁束が、表面側領域510おける間欠溝51e以外の領域、つまり磁気抵抗の低いコア領域51fを通り、可動子コア31の中心側に向かうようになる。すなわち、磁束が可動子3の移動方向に沿って表面側領域510を流れにくくなり、表面側領域510で可動子3の移動方向に流れようとする、可動子3の推力に寄与しない無駄な磁束を減らすことができる。つまり鉄損を低減し、磁束を効率良く使用することができ、可動子3の推力特性を向上させることができる。
【0063】
本実施形態では、第1の磁性板111及び第2の磁性板112が単数ずつ積層されるのではなく、複数ずつ積層されてもよい。あるいは、第1の磁性板111及び第2の磁性板112のうちいずれか一方が単数で他方が複数ずつ積層されてもよい。
【0064】
[第3の実施形態]
【0065】
図10A及びBは、リニア駆動装置の固定子を構成する各磁性板の別の実施形態を示す図であり、図4A及びBに対応する図である。図10A及びBに示す形態において、図4A及びBに示した形態と異なる点を中心に説明する。
【0066】
第1の磁性板113は、ティース本体部1130と、このティース本体部1130の外周に沿って設けられた外形枠部1139と、ティース本体部1130から外側へ突出し、ティース本体部1130と外形枠部1139とを連結する連結部1131とを有する。また、ティース本体部1130には、上記第1の磁性板111と同様に、Z軸方向で見た場合、4つの永久磁石が埋設される埋設孔113dが形成されている。これら埋設孔113dは、中央で連結部1131によって区画されており、また、連結部1131の長さより短い突出片1132によって、2つの埋設孔領域が区画されている。
【0067】
第2の磁性板123は、ティース本体部1230と、このティース本体部1230の外形を形成する本体エッジ部1230aから外側へ突出して設けられた突出部1231及び突出片1232とを有する。各磁性板113及び123が積層された場合、第2の突出部123の突出部1231の位置は、上記第1の磁性板113の連結部1131の位置と対応する。また、各突出片1232の位置及び長さは、第1の磁性板113の突出片1132の位置及び長さと対応している。
【0068】
突出部1231の突出方向(Y軸方向)の長さt2は、連結部1131のY軸方向の長さに外形枠部1139のY軸方向の長さを加えた長さt1と実質的に同じである。このような構成によれば、各磁性板113及び123が積層された時に、連結部1131と突出部1231とがZ軸方向で連なり、これがブリッジ部として形成される。このブリッジ部は、第1の磁性板113の各外形枠部1139同士を支え合う機能を有し、言わばリブの機能を果たす。
【0069】
第1の磁性板113が電磁鋼板で形成される場合であって、そのZ軸方向に沿う厚さが例えば0.75mm以下の場合、その外形枠部1139は変形しやすい。特に、可動子コアの製造時において、永久磁石を埋設孔に埋め込む場合に、その変形が起こりやすくなる。上記のようなブリッジ部が形成されることにより、外形枠部1139の変形を防止することができ、外形枠部1139のZ軸方向に沿う強度を高めることができる。
【0070】
もちろん、第1の磁性板113の厚さが0.75mmを超える場合であっても、可動子コアにこのようなブリッジ部を形成してもよい。
【0071】
なお、図10Bにおいて一点鎖線で示すように、第2の磁性板123のティース本体部1230のエッジのX軸方向の両端部に、第1の磁性板113の外形枠部1139の両端部1133に対応する形状部分1233が外側へ突出するように形成されていてもよい。このような部位1133及び1233のZ軸方向の積層によっても、外形枠部1139の変形を抑制するブリッジ部を形成することができる。
【0072】
[その他の実施形態]
【0073】
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態がある。
【0074】
上記第1(または第3)及び第2の実施形態を組み合わせてもよい。すなわち、固定子コアの表面側領域において、磁極境界上に溝が形成され、かつ、磁極境界上以外の表面側領域において間欠溝が形成されていてもよい。
【0075】
上記第1及び第2の実施形態において、溝11e及び間欠溝51eとしての比較的磁気抵抗が高い領域は、空隙によって形成されたが、この磁気抵抗が高い領域には、コア領域11f(51f)の磁気抵抗より高い磁気抵抗を持つ材料が設けられていてもよい。その材料としては、例えばアルミニウム、ステンレス、ガラス、セラミック、ゴム等の非磁性材でもよい。
【0076】
上記第1の実施形態における溝11eの形状は、図3に示したようにX軸方向の断面で見て矩形状に切りかかれて形成されていた。しかし、この溝11eの形状は、V字や曲線形状のものであってもよい。
【0077】
上記各実施形態に係る固定子コアの表面側領域において、溝11e(あるいは間欠溝51e)は、磁性板のティース部11bの対向面11cの全幅(図1で示したX軸方向の幅)、つまりZ軸方向の周囲に沿ってすべての領域で形成されていた。しかし、溝11e(あるいは間欠溝51e)は、そのZ軸方向の周囲に沿った一部の領域で形成されていてもよい。この場合、固定子コアは、後述するようにソリッドに形成されていてもよい。
【0078】
上記各実施形態に係る固定子コアにおいて、積層される磁性板について、第1の磁性板111及び第2の磁性板112の厚さは互いに異なっていてもよい。例えば上記実施形態に係る固定子コア11において、第1の磁性板111の厚さより、第2の磁性板112の厚さを厚くしてもよい。この場合、溝11eを形成する磁性板は、その1つの溝11eに1枚の第2の磁性板112が対応するような厚さを持っていてもよい。
【0079】
上記実施形態では、固定子1側が、コイル13及び永久磁石15が装着された1次側部材として機能し、可動子3が2次側部材として機能した。しかし、可動子側にコイル及び永久磁石が装着されて、これが1次側部材として機能し、固定子が2次側部材として機能してもよい。この場合、その1次側部材である可動子の表面側領域に、第1の領域と、その第1の領域の磁気抵抗より高い任意の磁気抵抗を有する第2の領域とが形成される。また、この場合、固定子が中央に配置され、この固定子の外側あるいは固定子の周囲に、可動子が配置されていてもよい。すなわち、固定子コアに対向して可動子が配置されていればよい。
【0080】
上記実施形態では、固定子コア11(51)及び可動子コア31ともに、磁性板の積層により形成された。しかし、固定子コア及び可動子コアのうち少なくとも一方が、積層でなくソリッドに形成されていてもよい。この場合、ソリッドなコア部材の表面側領域に、上記各実施形態で示したような溝や間欠溝が形成されていればよい。このようなソリッドなコアは、圧粉や焼結体により形成されていてもよい。
【0081】
固定子コア11のZ軸方向の長さの設計によっては、固定子コア11の埋設孔11dにZ軸方向で配置される永久磁石15は1つでもよい。この場合、1つの永久磁石15は、可動子を移動させる方向(Z軸方向)に着磁されることにより、そのZ軸方向に沿って磁極を配列させることができる。
【0082】
上記実施形態に係る固定子コア11(51)のティース部11b(51b)の数は1つ(Z軸方向で1つ)であったが、2つ以上であってもよい。コイル13及び永久磁石15の数は、ティース部11bの数が増えれば、それに応じて増える。また、固定子コアの表面側領域には、磁極間の溝及び間欠溝もそれに応じて増える。また、磁極のピッチ、すなわち、各永久磁石のZ軸方向の長さも適宜変更可能である。このようにZ軸方向が比較的長いリニア駆動装置は、リニアモータとして利用される。固定子コアや可動子コアの形状も適宜変更可能である。
【0083】
あるいは、磁気バネ力や推力バランス等の特性を所望のものにするために、磁極間の溝及び間欠溝のピッチ、幅及び形状のうち少なくとも1つを適宜変更するようにしてもよい。特に本実施形態では、上述のように、積層された磁性板111及び112の枚数や厚さを適宜設定することにより、そのピッチや幅を自由に変更することができ、設計の変更が容易になる。
【0084】
上記実施形態に係る固定子は、2つの固定子コア11及び12を有していたが、可動子に対向する1つのみの固定子コアを有していてもよい。
【0085】
図1に示した固定子コア1は、Y軸方向で2つに分割されて形成される固定子コア11及び12を有していたが、Z軸の周りの円周上に3つ以上分割されて形成される固定子コアを有していてもよい。
【0086】
可動子の形状が円柱状ではなく板形状であってもよい。そして、その板形状の可動子の、図1で見てY軸方向における一方側または両側に対向して配置された固定子が設けられたリニア駆動装置が実現されてもよい。この場合、1次側部材のコア部材の表面側領域は、上記各実施形態のように円柱形状でなく、溝や間欠溝を含む平面形状となる。
【0087】
上記各実施形態に係るリニア駆動装置が発電機として用いられてもよい。この場合、外部から可動子が駆動され、可動子が積層方向に移動することにより、固定子コアに磁束変化が発生し、これによりコイルに起電力が発生する。
【0088】
以上説明した各形態の特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0089】
1…固定子
3…可動子
11、12、51…固定子コア(コア部材に相当)
11d…埋設孔
11e…溝(第2の領域に相当)
11f、51f…コア領域(第1の領域に相当)
13、14…コイル
15、151、152…永久磁石
51e…間欠溝(第2の領域に相当)
100…リニア駆動装置
110、510…表面側領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石と、
前記永久磁石が埋設される埋設孔を有するコア部材と、
前記コア部材に装着可能なコイルとを有する1次側部材と、
前記1次側部材と対向して配置され、前記1次側部材と直線方向に相対的に移動可能に設けられた2次側部材とを具備し、
前記コア部材は、前記埋設孔より前記2次側部材側に配置された表面側領域を有し、
前記コア部材の前記表面側領域は、第1の領域及び前記第1の領域の磁気抵抗より高い任意の磁気抵抗を有する第2の領域を含み、前記第1の領域及び前記第2の領域が前記1次側部材に対する前記2次側部材の移動方向に沿って配置されている
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリニア駆動装置であって、
前記第2の領域が、前記1次側部材に対する前記2次側部材の移動方向において前記永久磁石の磁極が切り替わる位置に配置されている
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリニア駆動装置であって、
前記第2の領域が、前記1次側部材に対する前記2次側部材の移動方向に沿って間欠的に配置されている
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載のリニア駆動装置であって、
前記1次側部材における前記2次側部材に対する対向面と前記複数の埋設孔との間隔が、所定の長さよりも短く形成されている
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載のリニア駆動装置であって、
前記1次側部材と前記2次側部材の対向面は、所定の曲率を有する曲面である
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項1】
永久磁石と、
前記永久磁石が埋設される埋設孔を有するコア部材と、
前記コア部材に装着可能なコイルとを有する1次側部材と、
前記1次側部材と対向して配置され、前記1次側部材と直線方向に相対的に移動可能に設けられた2次側部材とを具備し、
前記コア部材は、前記埋設孔より前記2次側部材側に配置された表面側領域を有し、
前記コア部材の前記表面側領域は、第1の領域及び前記第1の領域の磁気抵抗より高い任意の磁気抵抗を有する第2の領域を含み、前記第1の領域及び前記第2の領域が前記1次側部材に対する前記2次側部材の移動方向に沿って配置されている
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリニア駆動装置であって、
前記第2の領域が、前記1次側部材に対する前記2次側部材の移動方向において前記永久磁石の磁極が切り替わる位置に配置されている
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリニア駆動装置であって、
前記第2の領域が、前記1次側部材に対する前記2次側部材の移動方向に沿って間欠的に配置されている
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載のリニア駆動装置であって、
前記1次側部材における前記2次側部材に対する対向面と前記複数の埋設孔との間隔が、所定の長さよりも短く形成されている
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載のリニア駆動装置であって、
前記1次側部材と前記2次側部材の対向面は、所定の曲率を有する曲面である
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−85313(P2013−85313A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221447(P2011−221447)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]