説明

リフトピン機構、加熱処理装置、減圧乾燥装置

【課題】処理対象部材の同一箇所に可動ピンが接触することを簡単な構造で防止することができるリフトピン機構を提供する。
【解決手段】処理対象部材GBは水平移動せず、処理対象部材GBから下方に離間した可動ピン110が水平移動する。このため、可動ピン110の移動範囲を限定する必要がなく、処理対象部材GBの同一箇所に可動ピン110が接触する可能性を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相違するタイミングで上下方向に往復移動する複数組の可動ピンにより平板状の処理対象部材を複数箇所で支持するリフトピン機構、このリフトピン機構を利用した加熱処理装置および減圧処理装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱処理装置などで処理対象部材であるガラス基板などを加熱処理するとき、ガラス基板をリフトピン機構の不動ピンと可動ピンとで支持している。このリフトピン機構では、可動ピンが上下方向と水平方向とに移動する。
【0003】
そこで、上昇した可動ピンで処理対象部材を支持して水平方向に移動させ、可動ピンを下降させて不動ピンで支持させる。この動作を繰り返すことにより、可動ピンと不動ピンとが処理対象部材に接触する位置が常時変化するので、ピン接触に吸引した処理対象部材の温度ムラなどを抑制することができる(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平10−76211号公報
【特許文献2】特開2006−61755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のリフトピン機構では、可動ピンと不動ピンとで交互に処理対象部材を支持するため、処理基板を水平方向に常時移動させる必要がある。しかし、処理基板の移動範囲には限界がある。しかも、従来のリフトピン機構では、可動ピンをソレノイドなどにより水平方向に線形移動させている。
【0005】
このため、可動ピンや不動ピンが同一箇所に接触しないように、処理基板を何度も移動させることは困難である。従って、処理基板を何度か移動させると結果的に可動ピンや不動ピンが同一箇所に接触してピン跡が発生する可能性が高い。
【0006】
さらに、上述のようなリフトピン機構では、可動ピンを上下方向と水平方向とに移動させるため、各々にソレノイドなどの専用機構を必要としている。このため、構造が複雑である。
【0007】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、処理対象部材の同一箇所に可動ピンが接触することを簡単な構造で防止することができるリフトピン機構、このリフトピン機構を利用した加熱処理装置および減圧処理装置、を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリフトピン機構は、相違するタイミングで上下方向に往復移動する複数組の可動ピンにより平板状の処理対象部材を複数箇所で支持するリフトピン機構であって、複数組の可動ピンと、可動ピンを複数組ごとに上下方向に往復移動させる上下往復機構と、可動ピンの少なくとも上端位置を下降したときに水平方向に変位させる水平変位機構と、を有する。
【0009】
従って、本発明のリフトピン機構では、処理対象部材は水平移動せず、処理対象部材から下方に離間した可動ピンが水平移動する。このため、可動ピンの移動範囲を限定する必要がなく、処理対象部材の同一箇所に可動ピンが接触する可能性を低減することができる。
【0010】
また、本発明のリフトピン機構において、可動ピンは、軸心方向が上下方向と平行な本体軸部と、本体軸部の上端から少なくとも水平方向に突出している水平部分と、水平部分の突端から少なくとも上方に突出している上端部分と、を有し、上下往復機構は、可動ピンを本体軸部で上下方向に往復移動させ、水平変位機構は、下降した可動ピンを本体軸部で水平方向に回動させてもよい。
【0011】
また、本発明のリフトピン機構において、上下往復機構と水平変位機構とが一体に形成されていてもよい。
【0012】
また、本発明のリフトピン機構において、可動ピンは、軸心方向が上下方向と平行な従動円盤が下端近傍に形成されており、上下往復機構と水平変位機構とは、軸心方向が水平方向と平行で回転駆動される駆動シャフトを共有し、上下往復機構は、駆動シャフトに装着されていて可動ピンを下方から支持している偏心カムを有し、水平変位機構は、駆動シャフトに装着されていて下降した可動ピンの従動円盤の外周部に係合する駆動部材を有してもよい。
【0013】
また、本発明のリフトピン機構において、従動円盤と駆動部材との少なくとも一方の当接部分が弾性体で形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明のリフトピン機構において、可動ピンは、軸心方向が上下方向と平行な従動歯車が下端近傍に形成されており、上下往復機構と水平変位機構とは、軸心方向が水平方向と平行で回転駆動される駆動シャフトを共有し、上下往復機構は、駆動シャフトに装着されていて可動ピンを下方から支持している偏心カムを有し、水平変位機構は、駆動シャフトに装着されていて下降した可動ピンの従動歯車に歯合する駆動アームを有してもよい。
【0015】
また、本発明のリフトピン機構において、可動ピンは、軸心方向が上下方向と平行な従動歯車が下端近傍に形成されており、上下往復機構と水平変位機構とは、軸心方向が水平方向と平行で回転駆動される駆動シャフトを共有し、上下往復機構は、駆動シャフトに装着されていて可動ピンを下方から支持している偏心カムを有し、水平変位機構は、駆動シャフトに装着されていて下降した可動ピンの従動歯車に歯合する駆動歯車を有してもよい。
【0016】
また、本発明のリフトピン機構において、水平変位機構は、上下方向に往復移動する可動ピンの本体軸部を所定角度ずつ所定方向に回動させる回動カム機構からなってもよい。
【0017】
また、本発明のリフトピン機構において、水平変位機構は、可動ピンの本体軸部に回動トルクを常時作用させるトルク作用機構と、可動ピンを所定位置まで下降しないと回動不能にロックする回動ロック機構と、を有してもよい。
【0018】
また、本発明のリフトピン機構において、トルク作用機構は、可動ピンの本体軸部に磁力により非接触に回動トルクを作用させてもよい。
【0019】
また、本発明のリフトピン機構において、上下往復機構は、軸心方向が水平方向と平行で回転駆動される駆動シャフトと、駆動シャフトに装着されていて可動ピンを下方から支持している偏心カムと、を有してもよい。
【0020】
本発明の加熱処理装置は、平板状の処理対象部材を加熱する加熱処理装置であって、処理対象部材を支持する本発明のリフトピン機構と、リフトピン機構で支持された処理対象部材を加熱処理する対象加熱部と、を有する。
【0021】
本発明の減圧乾燥装置は、平板状の処理対象部材を減圧乾燥させる減圧乾燥装置であって、処理対象部材を密閉チャンバに密閉する本体ハウジングと、密閉チャンバに密閉された処理対象部材を支持する本発明のリフトピン機構と、密閉チャンバを減圧する減圧機構と、を有する。
【0022】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のリフトピン機構では、処理対象部材は水平移動せず、処理対象部材から下方に離間した可動ピンが水平移動する。このため、可動ピンの移動範囲を限定する必要がなく、処理対象部材の同一箇所に可動ピンが接触する可能性を低減することができる。このため、処理対象部材として処理基板を加熱処理装置で加熱処理したり減圧乾燥装置で減圧乾燥する場合でも、可動ピンのピン跡が処理対象部材に残ることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の第一の形態を図1ないし図6を参照して以下に説明する。なお、本実施の形態では図示するように上下方向以外に前後左右の方向も規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0025】
本実施の形態の減圧乾燥装置1000は、ガラス基板などの平板状の処理対象部材GBを減圧乾燥させる。このため、図1に示すように、減圧乾燥装置1000は、処理対象部材GBを密閉チャンバSCに密閉する本体ハウジング1010と、密閉チャンバSCに密閉された処理対象部材GBを支持するリフトピン機構100と、密閉チャンバSCを減圧する真空ポンプなどの減圧機構1020と、を有する。
【0026】
本実施の形態のリフトピン機構100は、図2ないし図5に示すように、相違するタイミングで上下方向に往復移動する複数組の可動ピン110により平板状の処理対象部材GBを複数箇所で支持する。
【0027】
このため、リフトピン機構100は、複数組の可動ピン110と、可動ピン110を複数組ごとに上下方向に往復移動させる上下往復機構120と、可動ピン110の少なくとも上端位置を下降したときに水平方向に変位させる水平変位機構130と、を有する。
【0028】
より詳細には、可動ピン110はクランク形状に形成されており、軸心方向が上下方向と平行な本体軸部111と、本体軸部111の上端から少なくとも水平方向に突出している水平部分112と、水平部分112の突端から少なくとも上方に突出している上端部分113と、を有する。
【0029】
そして、上下往復機構120は、可動ピン110を本体軸部111で上下方向に往復移動させ、水平変位機構130は、下降した可動ピン110を本体軸部111で水平方向に回動させる。この上下往復機構120と水平変位機構130とは一体に形成されている。
【0030】
つまり、可動ピン110は、軸心方向が上下方向と平行な従動円盤115が下端近傍に形成されている。上下往復機構120と水平変位機構130とは、軸心方向が水平方向と平行で回転駆動される駆動シャフト101を共有する。
【0031】
上下往復機構120は、駆動シャフト101に装着されていて可動ピン110を下方から支持している偏心カム121を有する。一方、水平変位機構130は、駆動シャフト101に装着されていて下降した可動ピン110の従動円盤115の外周部に係合する駆動部材131を有する。なお、従動円盤115は、駆動部材131と当接部分に弾性体であるOリング116が装着されている。
【0032】
駆動部材131は、円盤状に形成されている。しかし、この駆動部材131は、従動円盤115の外周部に係合できる形状であればよく、例えば、少なくとも部分的に円盤状の半円形や扇形などに形成されていてもよい。
【0033】
本体ハウジング1010は、平板状の本体底板1011と、本体ボックス1012と、からなり、その接合部はOリング1013で密閉されている。リフトピン機構100の可動ピン110の本体軸部111は本体ハウジング1010の本体底板1011を貫通している。
【0034】
ただし、図6に示すように、その本体底板1011の貫通孔1014と可動ピン110の本体軸部111との間隙はOリング1015で密閉されている。なお、本実施の形態のリフトピン機構100は、例えば、四本ずつ四組の可動ピン110を有し、各組の四本の可動ピン110が本体ハウジング1010の四隅に分散されて配置されている。
【0035】
上述のような構成において、本実施の形態の減圧乾燥装置1000は、上面に薄膜が成膜されたガラス基板などの平板状の処理対象部材GBを減圧乾燥させる。その場合、本体ハウジング1010の本体底板1011から本体ボックス1012を開放させ、処理対象部材GBをリフトピン機構100の可動ピン110に支持させる。
【0036】
このような状態で本体ハウジング1010を閉止して密閉チャンバSCを密閉し、真空ポンプなどの減圧機構1020で減圧することで、処理対象部材GBを減圧乾燥させる。
【0037】
ただし、上述のように処理対象部材GBを支持するリフトピン機構100は、その四本ずつの四組の可動ピン110が一組のみ所定位置まで上昇する。このため、本体ハウジング1010の四隅に位置する一組の四本の可動ピン110で処理対象部材GBが支持される。
【0038】
このとき、本実施の形態のリフトピン機構100では、駆動シャフト101が回転駆動されることで上下往復機構120の偏心カム121により可動ピン110が上下方向に往復移動する。
【0039】
駆動シャフト101には水平変位機構130の駆動部材131も装着されているが、上昇する可動ピン110の従動円盤115は駆動部材131から離間する。このため、処理対象部材GBを支持する可動ピン110は回動することがない。
【0040】
一方、可動ピン110が略最下点まで降下すると従動円盤115が駆動部材131に当接する。このため、可動ピン110は下降して処理対象部材GBを支持していない状態で水平方向に回動する。可動ピン110は本体軸部111から水平部分112を経由して上端部分113が形成されているので、回動することで処理対象部材GBと接触する位置が変位する。
【0041】
本実施の形態のリフトピン機構100では、上述のように処理対象部材GBは水平移動せず、処理対象部材GBから下方に離間した可動ピン110が水平移動する。このため、可動ピン110の移動範囲を限定する必要がなく、処理対象部材GBの同一箇所に可動ピン110が接触する可能性を低減することができる。
【0042】
従って、処理対象部材GBとして処理基板を加熱処理装置で加熱処理したり減圧乾燥装置1000で減圧乾燥する場合でも、可動ピン110のピン跡が処理対象部材GBに残ることを防止できる。
【0043】
しかも、可動ピン110は、軸心方向が上下方向と平行な本体軸部111と、本体軸部111の上端から少なくとも水平方向に突出している水平部分112と、水平部分112の突端から少なくとも上方に突出している上端部分113と、を有し、上下往復機構120は、可動ピン110を本体軸部111で上下方向に往復移動させ、水平変位機構130は、下降した可動ピン110を本体軸部111で水平方向に回動させる。
【0044】
このため、可動ピン110を水平移動させるソレノイドなどが必要なく、簡単な構造で可動ピン110による処理対象部材GBの支持位置を良好に移動させることができる。しかも、可動ピン110の本体軸部111は水平方向に移動する必要がない。
【0045】
このため、図6に示すように、本体軸部111を簡単に密閉することができ、減圧乾燥装置1000の気密性を良好に維持しながら可動ピン110の上端部分113を水平移動させることができる。
【0046】
さらに、本実施の形態のリフトピン機構100では、上下往復機構120と水平変位機構130とは、軸心方向が水平方向と平行で回転駆動される駆動シャフト101を共有し、上下往復機構120と水平変位機構130とが一体に形成されている。
【0047】
このため、一個の駆動源(図示せず)で上下往復機構120と水平変位機構130とを同時に駆動することができ、上下往復機構120と水平変位機構130とを別個に動作制御するような必要もない。
【0048】
しかも、可動ピン110は、軸心方向が上下方向と平行な従動円盤115が下端近傍に形成されており、上下往復機構120は、駆動シャフト101に装着されていて可動ピン110を下方から支持している偏心カム121を有し、水平変位機構130は、駆動シャフト101に装着されていて下降した可動ピン110の従動円盤115の外周部に係合する駆動部材131を有する。このため、簡単な構造で確実に上下往復機構120と水平変位機構130とを連動させることができる。
【0049】
さらに、従動円盤115の駆動部材131との当接部分がOリング116で形成されている。このため、金属製の従動円盤115の駆動部材131とが接離することがなく、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0050】
しかも、Oリング116を介して従動円盤115が駆動部材131に回転駆動されるので、その回動角度を不定とすることができる。このため、可動ピン110による処理対象部材GBの支持位置のランダム性を向上させることができる。
【0051】
つぎに、本発明の実施の第二の形態のリフトピン機構200を図7ないし図9を参照して以下に説明する。なお、これ以後の実施の形態に関し、それ以前の実施の形態と同一の部分は、同一の名称および符号を使用して説明は省略する。
【0052】
本実施の形態のリフトピン機構200では、可動ピン110の下端近傍に軸心方向が上下方向と平行な従動歯車201が形成されている。一方、水平変位機構210は、駆動シャフト101に装着されていて下降した可動ピン110の従動歯車201に歯合する駆動アーム211を有する。なお、従動歯車201は、いわゆるスパーギヤとして形成されており、駆動アーム211は、従動歯車201の外周面に係合する。
【0053】
上述のような構成において、本実施の形態のリフトピン機構200では、駆動シャフト101が回転駆動されることで上下往復機構120の偏心カム121により可動ピン110が上下方向に往復移動する。
【0054】
駆動シャフト101とともに回転駆動される駆動アーム211は、可動ピン110が下降したときに従動歯車201に係合する。このため、可動ピン110は下降して処理対象部材GBを支持していない状態で水平方向に回動し、可動ピン110で処理対象部材GBが支持される位置が変位することになる。
【0055】
つぎに、本発明の実施の第三の形態のリフトピン機構300を図10ないし図12を参照して以下に説明する。本実施の形態のリフトピン機構300では、可動ピン110は、軸心方向が上下方向と平行な従動歯車301が下端近傍に形成されている。
【0056】
水平変位機構310は、駆動シャフト101に装着されていて下降した可動ピン110の従動歯車301に歯合する駆動歯車311を有する。なお、従動歯車301は、いわゆるクラウンギヤとして形成されている。
【0057】
また、駆動歯車311は、従動歯車301と歯合する部分のみ歯形状が形成されており、例えば、歯形状は一つでもよい。また、本実施の形態のリフトピン機構300では、上下往復機構120の偏心カム121と水平変位機構310の駆動歯車311とが一体に形成されている。
【0058】
上述のような構成において、本実施の形態のリフトピン機構300では、駆動シャフト101が回転駆動されることで上下往復機構120の偏心カム121により可動ピン110が上下方向に往復移動する。
【0059】
駆動シャフト101とともに回転駆動される駆動歯車311は、可動ピン110が下降したときに従動歯車301に歯合する。このため、可動ピン110は下降して処理対象部材GBを支持していない状態で水平方向に回動し、可動ピン110で処理対象部材GBが支持される位置が変位することになる。
【0060】
つぎに、本発明の実施の第四の形態のリフトピン機構400を図13ないし図16を参照して以下に説明する。本実施の形態のリフトピン機構400では、上下往復機構120と水平変位機構410とが別体に形成されている。
【0061】
この水平変位機構410は、図15に示すように、回転子411と円筒カム412と昇降子413とを有し、図16に示すように、上下方向に往復移動する可動ピン110の本体軸部111を所定角度ずつ所定方向に回動させる回動カム機構からなる。
【0062】
なお、この回動カム機構は、上下方向の往復移動を所定角度ずつの所定方向への回動に変換する機構であり、いわゆるボールペンのノック機構などに一般的に多用されている既存のものと同一である。従って、その構造および機能の詳細な説明は省略する。
【0063】
上述のような構成において、本実施の形態のリフトピン機構400では、駆動シャフト101が回転駆動されることで上下往復機構120の偏心カム121により可動ピン110が上下方向に往復移動する。
【0064】
水平変位機構410は、上昇する可動ピン110は回動させず、下降して処理対象部材GBから離間した可動ピン110を回動させる。このため、可動ピン110で処理対象部材GBが支持される位置が変位することになる。
【0065】
つぎに、本発明の実施の第五の形態のリフトピン機構500を図17ないし図20を参照して以下に説明する。本実施の形態のリフトピン機構500も、上下往復機構120と水平変位機構510とが別体に形成されている。
【0066】
この水平変位機構510は、可動ピン110の本体軸部111に回動トルクを常時作用させるトルク作用機構511と、可動ピン110を所定位置まで下降しないと回動不能にロックする回動ロック機構512と、を有する。
【0067】
トルク作用機構511は、可動ピン110の本体軸部111に磁力により非接触に回動トルクを作用させる。このようなトルク作用機構511は、例えば、マグトラン(登録商標)として公知である。
【0068】
上述のような構成において、本実施の形態のリフトピン機構500では、上下往復機構120により上下方向にオプションとされる可動ピン110に、トルク作用機構511から回動トルクが常時作用している。
【0069】
しかし、可動ピン110が上昇して処理対象部材GBを支持しているときは、回動ロック機構512により可動ピン110の回動はロックされている。そして、可動ピン110が下降して処理対象部材GBから離間すると、回動ロック機構512のロックが解消されてトルク作用機構511により回動される。
【0070】
このため、可動ピン110で処理対象部材GBが支持される位置が変位することになる。しかも、トルク作用機構511は、可動ピン110の本体軸部111に磁力により非接触に回動トルクを作用させるので、パーティクルの発生を防止することができる。
【0071】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態ではリフトピン機構500を減圧乾燥装置1000に利用することを例示したが、平板状の処理対象部材GBを加熱する加熱処理装置に利用してもよい(図示せず)。
【0072】
また、上記形態ではリフトピン機構100等が四本ずつ四組の可動ピン110を有することを例示したが、当然ながら、このような本数や組数は各種に設定することができる。
【0073】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態の減圧乾燥装置の内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図2】リフトピン機構の内部構造を示す縦断正面図である。
【図3】リフトピン機構の内部構造を示す縦断側面図である。
【図4】減圧乾燥装置の全体を示す模式的な斜視図である。
【図5】リフトピン機構の要部を示す模式的な斜視図である。
【図6】図1のa部を拡大した縦断正面図である。
【図7】本発明の実施の第二の形態のリフトピン機構の内部構造を示す縦断正面図である。
【図8】第二の形態のリフトピン機構の内部構造を示す縦断側面図である。
【図9】図8のAA矢視を示す底面図である。
【図10】本発明の実施の第三の形態のリフトピン機構の内部構造を示す縦断正面図である。
【図11】第三の形態のリフトピン機構の内部構造を示す縦断側面図である。
【図12】図11のBB矢視を示す底面図である。
【図13】本発明の実施の第四の形態のリフトピン機構の内部構造を示す縦断正面図である。
【図14】第四の形態のリフトピン機構の内部構造を示す縦断側面図である。
【図15】回動カム機構の組立構造を示す分解図である。
【図16】回動カム機構の動作を示す工程図である。
【図17】本発明の実施の第五の形態のリフトピン機構の内部構造を示す縦断正面図である。
【図18】第五の形態のリフトピン機構の内部構造を示す縦断正面図である。
【図19】第五の形態のリフトピン機構の内部構造を示す縦断正面図である。
【図20】第五の形態のリフトピン機構の内部構造を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0075】
100 リフトピン機構
101 駆動シャフト
110 可動ピン
111 本体軸部
112 水平部分
113 上端部分
115 従動円盤
116 Oリング
120 上下往復機構
121 偏心カム
130 水平変位機構
131 駆動部材
200 リフトピン機構
201 従動歯車
210 水平変位機構
211 駆動アーム
300 リフトピン機構
301 従動歯車
310 水平変位機構
311 駆動歯車
400 リフトピン機構
410 水平変位機構
411 回転子
412 円筒カム
413 昇降子
500 リフトピン機構
510 水平変位機構
511 トルク作用機構
512 回動ロック機構
1000 減圧乾燥装置
1010 本体ハウジング
1011 本体底板
1012 本体ボックス
1013 Oリング
1014 貫通孔
1015 Oリング
1020 減圧機構
GB 処理対象部材
SC 密閉チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相違するタイミングで上下方向に往復移動する複数組の可動ピンにより平板状の処理対象部材を複数箇所で支持するリフトピン機構であって、
複数組の前記可動ピンと、
前記可動ピンを前記複数組ごとに上下方向に往復移動させる上下往復機構と、
前記可動ピンの少なくとも上端位置を下降したときに水平方向に変位させる水平変位機構と、
を有するリフトピン機構。
【請求項2】
前記可動ピンは、軸心方向が上下方向と平行な本体軸部と、前記本体軸部の上端から少なくとも水平方向に突出している水平部分と、前記水平部分の突端から少なくとも上方に突出している上端部分と、を有し、
前記上下往復機構は、前記可動ピンを前記本体軸部で上下方向に往復移動させ、
前記水平変位機構は、下降した前記可動ピンを前記本体軸部で水平方向に回動させる請求項1に記載のリフトピン機構。
【請求項3】
前記上下往復機構と前記水平変位機構とが一体に形成されている請求項1または2に記載のリフトピン機構。
【請求項4】
前記可動ピンは、軸心方向が上下方向と平行な従動円盤が下端近傍に形成されており、
前記上下往復機構と前記水平変位機構とは、軸心方向が水平方向と平行で回転駆動される駆動シャフトを共有し、
前記上下往復機構は、前記駆動シャフトに装着されていて前記可動ピンを下方から支持している偏心カムを有し、
前記水平変位機構は、前記駆動シャフトに装着されていて下降した前記可動ピンの前記従動円盤の外周部に係合する少なくとも部分的に円盤状の駆動部材を有する請求項3に記載のリフトピン機構。
【請求項5】
前記従動円盤と前記駆動部材との少なくとも一方の当接部分が弾性体で形成されている請求項4に記載のリフトピン機構。
【請求項6】
前記可動ピンは、軸心方向が上下方向と平行な従動歯車が下端近傍に形成されており、
前記上下往復機構と前記水平変位機構とは、軸心方向が水平方向と平行で回転駆動される駆動シャフトを共有し、
前記上下往復機構は、前記駆動シャフトに装着されていて前記可動ピンを下方から支持している偏心カムを有し、
前記水平変位機構は、前記駆動シャフトに装着されていて下降した前記可動ピンの前記従動歯車に歯合する駆動アームを有する請求項3に記載のリフトピン機構。
【請求項7】
前記可動ピンは、軸心方向が上下方向と平行な従動歯車が下端近傍に形成されており、
前記上下往復機構と前記水平変位機構とは、軸心方向が水平方向と平行で回転駆動される駆動シャフトを共有し、
前記上下往復機構は、前記駆動シャフトに装着されていて前記可動ピンを下方から支持している偏心カムを有し、
前記水平変位機構は、前記駆動シャフトに装着されていて下降した前記可動ピンの前記従動歯車に歯合する駆動歯車を有する請求項3に記載のリフトピン機構。
【請求項8】
前記水平変位機構は、上下方向に往復移動する前記可動ピンの前記本体軸部を所定角度ずつ所定方向に回動させる回動カム機構からなる請求項2に記載のリフトピン機構。
【請求項9】
前記水平変位機構は、前記可動ピンの前記本体軸部に回動トルクを常時作用させるトルク作用機構と、前記可動ピンを所定位置まで下降しないと回動不能にロックする回動ロック機構と、を有する請求項2に記載のリフトピン機構。
【請求項10】
前記トルク作用機構は、前記可動ピンの前記本体軸部に磁力により非接触に前記回動トルクを作用させる請求項9に記載のリフトピン機構。
【請求項11】
前記上下往復機構は、軸心方向が水平方向と平行で回転駆動される駆動シャフトと、前記駆動シャフトに装着されていて前記可動ピンを下方から支持している偏心カムと、を有する請求項8ないし10の何れか一項に記載のリフトピン機構。
【請求項12】
平板状の処理対象部材を加熱する加熱処理装置であって、
前記処理対象部材を支持する請求項1ないし11の何れか一項に記載のリフトピン機構と、
前記リフトピン機構で支持された前記処理対象部材を加熱処理する対象加熱部と、
を有する加熱処理装置。
【請求項13】
平板状の処理対象部材を減圧乾燥させる減圧乾燥装置であって、
前記処理対象部材を密閉チャンバに密閉する本体ハウジングと、
前記密閉チャンバに密閉された前記処理対象部材を支持する請求項1ないし11の何れか一項に記載のリフトピン機構と、
前記密閉チャンバを減圧する減圧機構と、
を有する減圧乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−94182(P2009−94182A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261604(P2007−261604)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【出願人】(503137621)株式会社 エスアンドデイ (4)
【出願人】(507331715)スワン精機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】