説明

リペア装置及びリペア方法

【課題】本発明は回路基板にはんだ付けされた被はんだ付け部材を熱印加することによりはんだを溶融して回路基板から取り外すリペア装置及びリペア方法に関し、基板に配設された他の部品に影響を及ぼすことなく、基板から被はんだ付け部材を容易かつ確実に取り外すことを可能とすることを課題とする。
【解決手段】回路基板1にはんだ付けされたシールド部材5を加熱ヘッド装置40により加熱することによりはんだ7を溶融し、シールド部材5を回路基板1から取り外すリペア装置であって、前記加熱ヘッド装置40に、ヒータブロック41により加熱される加熱ヘッド42と、この加熱ヘッド42の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有すると共にバネ性を有した材料により形成されたクランパ44とを設ける。そして、加熱ヘッド42により加熱されたクランパ44により、シールド部材5を回路基板1に固定するはんだ7を溶融させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリペア装置及びリペア方法に係り、特に回路基板にはんだ付けされた被はんだ付け部材を熱印加することによりはんだを溶融して回路基板から取り外すリペア装置及びリペア方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話等の電子機器では、マイクロプロセサやSAWフィルタなど、周波数の違う高周波の信号を処理する回路群が同一基板内に実装されている。その際、回路群どうしの電波の干渉が問題となる。
【0003】
これを解決すべく、図1に示されるように携帯電話の回路基板1には、電子部品2からなる回路群をシールドする金属のシールド部材5(金属のケース)が実装される。また、このシールド部材5は、生産性を考慮して電子部品2,3の実装工程と同時にはんだペースト印刷された回路基板1上に搭載され、一括リフローによりはんだ接合される。この構成とすることにより電波干渉の問題は解消されるが、一方においてシールド部材5内に配設された電子部品2に不良が発生した場合が問題となる。
【0004】
電子部品2に不良が発生した場合、この不良な電子部品2を回路基板1から取り外し、良品の電子部品2に取り替えるリペア処理が実施される(特許文献1参照)。通常、シールド部材5は、このシールド部材5に内設された電子部品2から1mm程度の微小な間隔をおいて、その周囲を囲むよう回路基板1に実装されている。
【0005】
従って、シールド部材5に内設された電子部品2の交換を行う場合、シールド部材5がその交換作業を妨げる場合が多く、シールド部材5を取り除いてから内部の電子部品2を交換する必要がある。しかし、シールド部材5はその全周囲を回路基板1にはんだ付け接合された構造であるため、シールド部材5を取り外すにははんだを溶融させて取り外す以外に方法がない。
【0006】
シールド部材5を取り外すには、シールド部材5のはんだ接続部を同時に加熱する必要がある。このために、ホットエア等の広域加熱が可能な手段が検討されたが、シールド部材5の内部に配設された電子部品2及びシールド部材5の外部に配設された電子部品3も同時に、はんだ融点(217℃以上)近くまで加熱されるため、出荷後の製品の信頼性を確保することが困難で不採用となっている。
【0007】
そこで、シールド部材5のみ加熱する手法として、(a)加熱ヘッド100をシールド部材5の上面5aに接触させ、シールド部材5の上部からはんだ7の加熱を行う方法(図2(A)参照)、(b)加熱ヘッド100をシールド部材5の側面5bに接触させはんだ7により近い位置からはんだ7を加熱する方法(図2(B)参照)が検討された。
【特許文献1】特開平08−046351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の(a),(b)のいずれの方法も安定してはんだ7を加熱することができず、実用に至っていない。
【0009】
即ち、上記した図2(A)に示す方法では、シールド部材5は通常薄い(0.1mm)ステンレスにニッケル、錫をめっきしたものであり熱伝導が悪く、また加熱位置とはんだ7の位置が離間しているため、加熱ヘッド100の温度を400℃付近に上げないとはんだ7の溶融を行うことができない。また、このような高温の加熱ヘッド100をシールド部材5に接触させると、シールド部材5の酸化による変色が進行し、ごみの発生や表面に絶縁層が形成されシールド性能が著しく低下するという問題点が生じる。
【0010】
また上記した図2(B)に示す方法では、回路基板1の高密度化に伴い、シールド部材5が実装される位置から0.2mmと非常に狭い間隙に電子部品3が実装されるケースが多いため、加熱ヘッド100をシールド部材5の側面5aに接触させるのは非常に困難である。
【0011】
また、加熱ヘッド100に代えて、先端が扁平である加熱接触部を用いて直接はんだ7に接触させて溶融を行う場合には、加熱接触部の表面にフラックスが付着してしまい、このフラックスにより加熱接触部の断熱が行われてしまう。このため、はんだ7を確実に溶融することができなくなり、また安定してはんだ7を溶融させるためには作業の毎に加熱接触部を洗浄する必要があり、その作業が面倒であるという問題点があった。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、基板に配設された他の部品に影響を及ぼすことなく、基板から被はんだ付け部材を容易かつ確実に取り外すことを可能としたリペア装置及びリペア方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題は、本発明の第1の観点からは、基板にはんだ付けされた被はんだ付け部材を加熱ヘッド装置により加熱することによりはんだを溶融し、該被はんだ付け部材を前記基板から取り外すリペア装置であって、前記加熱ヘッド装置は、加熱手段により加熱される加熱ヘッドと、該加熱ヘッドにより加熱され、該加熱ヘッドの熱伝導率よりも高い熱伝導率と弾性を有し、前記被はんだ付け部材のはんだ付け面に弾性力を持って接触する接触部材とを有するリペア装置により解決することができる。
【0014】
また上記の課題は、本発明の第2の観点からは、基板にはんだ付けされた被はんだ付け部材を加熱ヘッド装置により加熱することによりはんだを溶融し、該被はんだ付け部材を前記基板から取り外すリペア方法であって、加熱ヘッドに設けられた接触部材を前記被はんだ付け部材のはんだ接続面に接触させて前記被はんだ付け部材を加熱して前記はんだを溶融している間、前記被はんだ付け部材に向けて不活性ガスを供給するリペア方法により解決することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加熱ヘッドからの熱を被はんだ付け部材に均一に印加できるため、はんだ接合部を均一に加熱溶融させ、被はんだ付け部材をより安定して確実に取り外すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0017】
図3は本発明の一実施形態であるリワーク装置10を示しており、また図4はリワーク装置10に設けられる加熱ヘッド装置40を拡大して示している。リワーク装置10は、図1に示したような回路基板1に実装されると共にシールド部材5(請求項に記載の被はんだ付け部材に相当する)に内設された電子部品2に不良が発生した場合、電子部品2をリペア処理するのに用いられるものである。
【0018】
ここで、リペア処理とは、不良品の電子部品2を回路基板1から取り外すと共に良品の電子部品2を新たに回路基板1に実装する処理をいう。また、本実施例ではステンレス製のシールド部材5を用いており、その熱伝導率は15W/m・Kである。
【0019】
リワーク装置10は、大略すると筐体11、昇降装置12、位置決め装置13、テーブル装置14、冷却用N噴出し装置15等により構成されている。筐体11は、後述する各装置12〜15を支持するものである。
【0020】
昇降装置12は、昇降用ベース16、駆動装置17、アーム18、装着部19、断熱部20、及び加熱ヘッド装置40等により構成されている。昇降用ベース16は筐体11に固定されており、この昇降用ベース16には駆動装置17が固定されている。駆動装置17はアーム18を回路基板1に対して上下方向(図中、矢印Z1,Z2方向)に移動される機能を奏するものである。この駆動装置17は、例えばシリンダ,リニアモータ等を用いることができる。
【0021】
アーム18は、その下部に加熱ヘッド装置40を装着するための装着部19が設けられている。また、装着部19の下部には断熱部20が配設されており、よって加熱ヘッド装置40は断熱部20を介して装着部19に装着される。
【0022】
これにより、加熱ヘッド装置40が加熱しても、その熱は断熱部20において遮断され、アーム18及び昇降装置12に熱伝導されるようなことはない。尚、説明の便宜上、加熱ヘッド装置40の詳細説明については後述するものとする。
【0023】
位置決め装置13は、上部にテーブル装置14を搭載している。そして、このテーブル装置14を図中矢印X1,X2方向及び矢印Y1,Y2方向に移動させる構成とされている。このため、位置決め装置13には、テーブル装置14をX1,X2方向に移動させるための駆動装置21と、テーブル装置14をY1,Y2方向に移動させるための駆動装置22が設けられている。
【0024】
テーブル装置14は、その上面に回路基板1が搭載される。回路基板1は、図1を用いて説明したように複数の電子部品2,3が実装されると共に、シールドが必要な電子部品2を覆うようにシールド部材5がはんだ付けされている。この際、シールド部材5は、その全周がはんだ付けされる。このシールド部材5は導電性金属よりなり、側面5aと上面5bとを有した下方が開口した箱形状を有している。また、側面5aには、後述するクランパ44と係合するための係合孔6が形成されている。
【0025】
またテーブル装置14は、その内部に熱風発生装置23が設けられている。この熱風発生装置23の上部には熱風噴出ノズル24が設けられており、熱風発生装置23で発生した熱風は、熱風噴出ノズル24を介してシールド部材5に吹き付けられる構成とされている。
【0026】
冷却用N噴出し装置15は、テーブル装置14の上部に配設されている。この冷却用N噴出し装置15は、固定シャフト27に固定されたN噴射ノズル26を有している。このN噴射ノズル26は、図示しないNガス供給装置に接続されており、よってN噴射ノズル26の先端からは、Nガスが噴射される構成とされている。
【0027】
また、N噴射ノズル26は、後述するリペア位置(回路基板1に対してシールド部材5取り外し及び装着する位置)に向けNガスを噴射しうるよう構成されている。このN噴射ノズル26から噴射されるNガスの温度は、常温(20℃±15℃)或いは常温よりも低い温度とされている。尚、操作装置30はリワーク装置10の動作を制御するものであり、操作者により操作されるものである。
【0028】
次に、主に図4を用いて加熱ヘッド装置40の具体的な構成について説明する。
【0029】
加熱ヘッド装置40は、装着部19、断熱部20、ヒータブロック41、加熱ヘッド42、及びクランパ44(請求項に記載の接触部材に相当する)等により構成されている。装着部19は、前記したアーム18に固定される部位である。この装着部19の下部には、断熱部20が配設されている。この断熱部20は、後述するヒータブロック41で発生する熱がアーム18を介して昇降装置12に熱伝導するのを防止するために設けられている。断熱部20としては、例えばグラスウール、ロックウール、セラミック断熱材等を使用することができる。
【0030】
また、断熱部20の下面の外周位置には、ヘッドガイド43が下方(Z1方向)に延出するよう設けられている。このヘッドガイド43は、その図中下端に内側に向け突出した爪部43aを有している。
【0031】
ヒータブロック41及び加熱ヘッド42は、断熱部20とヘッドガイド43の爪部43aとの間に配設されている。この際、ヒータブロック41と加熱ヘッド42は一体的な構成とされており、上部にヒータブロック41が、下部に加熱ヘッド42が配設されている。
【0032】
ヒータブロック41は、内部に加熱手段となるヒータ(図示せず)が配設されている。また、加熱ヘッド42は、熱伝導性の高い金属(例えば、真鍮)により形成されている。よって、ヒータブロック41のヒータが加熱すると、この熱は加熱ヘッド42に熱伝達される。
【0033】
このヒータブロック41及び加熱ヘッド42は、ヘッドガイド43に係合した構成とされている。具体的には、加熱ヘッド42は、その側部所定位置に形成された43Cが爪部43aと係合することにより、ヘッドガイド43に支持された構成とされている。このため、ヒータブロック41及び加熱ヘッド42は、ヘッドガイド43内で若干量だけ移動可能な構成となっている。
【0034】
また、断熱部20の中央位置には装着孔51が形成されており、この装着孔51内にはピボット45が配設されている。このピボット45は、コイルスプリング52により下方(Z1方向)に弾性付勢されている。従って、一体化されたヒータブロック41及び加熱ヘッド42は、ピボット45を中心として図4に矢印A1,A2で示す方向に変位(揺動)可能な構成とされている。この揺動範囲は、後述するクランパ44が回路基板1に配設されたシールド部材5に装着される際、容易かつ確実な装着が行いうる揺動範囲とされている。
【0035】
加熱ヘッド42は、その下面に空間部42bが形成されている。この空間部42bは、加熱ヘッド装置40がシールド部材5に装着された状態(図4に示す状態)で、シールド部材5の上面5bと対向するよう構成されている。
【0036】
また、空間部42bの上面5bと対向する面には、複数のN噴出孔48が形成されている。このN噴出孔48は、N供給通路47及びN供給口46を介しN供給装置(図示せず)に接続されている。
【0037】
後述するように、シールド部材5に対して加熱ヘッド装置40により加熱処理が行われる際、N供噴出孔48からシールド部材5の上面5bに向けNガスが噴出される。これにより、加熱ヘッド装置40によりシールド部材5が加熱されても、上面5bに変色(酸化による)が発生することを防止することができる。
【0038】
加熱ヘッド42は、その下面に空間部42bが形成されることにより、空間部42bの形成位置の外周に相対的に下方(Z1方向)に向け延出した延出部42aが形成される。クランパ44は、この延出部42aの外側に固定ネジ45を用いて固定されている。
【0039】
クランパ44は、図4に加え図5に示すように、加熱ヘッド42の熱伝導率(例えば、106W/m・K)よりも高い熱伝導率(例えば、403W/m・K)を有すると共に、バネ性を有した金属材料(例えば、無酸素銅)により形成されている。また、無酸素銅よりなるクランパ44の表面には、クロムめっきが施され、これにより酸化が防止されている。更に、クランパ44の厚さは、例えば0.3mm〜0.5mmとされている。
【0040】
上記構成のクランパ44は、加熱ヘッド42を介してヒータブロック41により加熱される。この際、上記のようにクランパ44は加熱ヘッド42よりも熱伝導率が高いため、加熱ヘッド42の熱(ヒータブロック41から熱伝導した熱)は、効率よくクランパ44に熱伝達される。よってクランパ44は、はんだ7を溶融しうる温度(約217℃)以上の温度まで確実に昇温される。
【0041】
また、クランパ44は板状の部材であり、シールド部材5のはんだ付け面となる側面5aに弾性力を持って接触する構成とされている。また本実施例では、クランパ44は加熱ヘッド42の両側部に一対配設されており、その離間距離はシールド部材5の外形状に対応するよう設定されている。従って、シールド部材5は、加熱ヘッド42に配設された一対のクランパ44により把持される構成とされている。
【0042】
更に前記したように、シールド部材5の側面5aには係合孔6(図1及び図6参照)が形成されている。また、クランパ44の内側(シールド部材5と対向する側)には、係合孔6と係合する突起44aが形成されている。
【0043】
後述するように、加熱ヘッド装置40をシールド部材5に装着する際、図6(A)に示すようにクランパ44(突起44a)は側面5a上を摺動しつつ下方向(Z1方向)に移動する。そして、突起44aが係合孔6と対向する位置まで移動した時点で、図6(B)に示すように、突起44aは係合孔6と係合する。
【0044】
よって、クランパ44によりシールド部材5を把持する際、クランパ44の弾性力による保持に加え、シールド部材5は突起44aが係合孔6に係合することによっても保持される。このため、シールド部材5を加熱ヘッド装置40に確実に保持させることができる。尚、シールド部材5に突起を形成し、クランパ44にこれと係合する凹部を形成する構成としても、シールド部材5を加熱ヘッド装置40に確実に保持させることができる。
【0045】
また、クランパ44は、その下端部(Z1方向の端部)に傾斜面44bが形成されている。この傾斜面44bは、クランパ44の内側(シールド部材5と対向する側)に形成されている。クランパ44に傾斜面44bを形成することにより、回路基板1とシールド部材5と接続するはんだ7にクランパ44を近接させることが可能となる。
【0046】
即ち、回路基板1とシールド部材5とをはんだ付けした場合、はんだ7にははんだフィレットが形成される。また、クランパ44を直接はんだ7に接触させると、クランパ44にはんだ7やペーストが付着しクランパ44が汚染してしまう。このため、クランパ44とはんだ7は、離間させる必要がある。
【0047】
この際、クランパ44の下端部が平らな形状であると、クランパ44をはんだ7の上端部までした移動(下降)させることができず、クランパ44とはんだ7が離間した状態となってしまう。しかしながら、クランパ44の形状を上記のような傾斜面44bを有した形状とすることにより、傾斜面44bははんだ7の逃げ部として機能する。このため、図5及び図6(B)に示すように、はんだ7と傾斜面44bを近接させることができ、よってはんだ7を効率よく加熱することができる。
【0048】
続いて、上記構成とされたリワーク装置10を用いた、回路基板1に配設された電子部品2をリペアするリペア処理方法について説明する。但し、図1に示すように、電子部品2は回路基板1にはんだ付けされたシールド部材5により封止されているものとする。
【0049】
電子部品2をリペアするには、先ず対象となる電子部品2が実装された回路基板1をリワーク装置10に装着する。図3は、回路基板1がリワーク装置10に装着さたれ状態を示している。この際、リワーク装置10の装着部19には、予め回路基板1にはんだ付けされたシールド部材5と対応する加熱ヘッド42を有する加熱ヘッド装置40が装着されている。
【0050】
回路基板1がリワーク装置10に装着されると、操作装置30により熱風発生装置23が駆動される。これにより、回路基板1の下面に対して熱風が吹き付けられ、回路基板1は予備加熱される。
【0051】
また、加熱ヘッド装置40を構成するヒータブロック41のヒータも起動され、ヒータブロック41は加熱される。また、ヒータブロック41が昇温するに従い、ヒータブロック41と熱的に接続されている加熱ヘッド42も昇温する。ヒータブロック41の加熱温度は、加熱ヘッド42の延出部42aが例えば315℃となるよう制御されている。
【0052】
次に、操作装置30は位置決め装置13を駆動し、加熱ヘッド装置40と対向する位置にシールド部材5が位置するよう、回路基板1を位置決めする。そして、加熱ヘッド装置40に対する回路基板1の位置決めが終了すると、操作装置30は昇降装置12の駆動装置17を駆動し、加熱ヘッド装置40を下降させる(Z1方向に移動させる)。また、操作装置30は図示しないN供給装置を起動し、N供給口46、N供給通路47介してN供噴出孔48からNガスを噴射させる。
【0053】
加熱ヘッド装置40の下降に伴い、やがてクランパ44はシールド部材5の側面5a(具体的には、側面5aの外周面)と係合する。この際、前記のように一体化されたヒータブロック41と加熱ヘッド42は、ピボット45を中心としてヘッドガイド43内で図4に矢印A1,A2で示す方向に移動可能(揺動可能)な構成となっている。このため、クランパ44とシールド部材5との間に若干に位置ずれがあったとしても、ヒータブロック41及び加熱ヘッド42が揺動することによりこの位置ずれは吸収され、よって確実にクランパ44をシールド部材5に係合させることができる。
【0054】
また、前記したようにクランパ44はバネ性を有しており、また固定ネジ45により加熱ヘッド42に固定されることにより片持ち梁状となっている。また、クランパ44の内側には、突起44aが形成されている。このため、クランパ44はシールド部材5に係合した後、図6(A)に示すように、外側に弾性変形しつつ下降する。この時、突起44aは側面5aの外周面を摺動する。また、クランパ44がシールド部材5と係合した時点で、クランパ44によりシールド部材5に対する加熱が開始される。
【0055】
更に加熱ヘッド装置40が下降すると、突起44aが係合孔6に係合する。これによりシールド部材5はクランパ44により把持され、よって加熱ヘッド装置40により保持された状態となる(以下、この状態を装着状態という)。この装着状態では、シールド部材5はクランパ44がシールド部材5を押圧する弾性力と、突起44aと係合孔6との係合力により加熱ヘッド装置40に保持される。
【0056】
また装着状態では、クランパ44はシールド部材5の側面5aに密着した状態となる。このため、クランパ44の熱は、シールド部材5に損失なく熱伝導される。また本実施例では、クランパ44の下端部に傾斜面44bが形成されているため、装着状態において傾斜面44bをはんだ7に近接させることができる。よって、クランパ44ではんだ7を直接加熱することが可能となる。更に、シールド部材5の上面5bには加熱ヘッド42の延出部42aの下面が接触し、この加熱ヘッド42の延出部42aの下面によりシールド部材5は加熱される。
【0057】
シールド部材5は、上記のように加熱ヘッド装置40により加熱処理が行われることにより、フィレット形状のはんだ7の上部(側面5a側)と下部(回路基板1側)で熱勾配が殆どない状態で加熱することができる。本実施例の場合、フィレット形状のはんだ7の上部の温度は268℃であり、下部の温度は230℃であった。
【0058】
このように、本実施例に係るリワーク装置10では、はんだ7の全体を少ない熱勾配で効率よく加熱することができるため、よってはんだ7を短時間で溶融することができる。尚、前記したように回路基板1は熱風発生装置23によりその下面を加熱されている。よって、これによってもはんだ7を溶融するのに要する時間の短縮を図ることができる。
【0059】
また本実施例に係るリワーク装置10では、クランパ44がシールド部材5と密着すると共にはんだ7に近接配置できるため、ヒータブロック41に設けるヒータの加熱容量を、クランパをはんだから離間させた従来構成に比べて小さくすることができる。このため、ヒータブロック41に設けられるヒータの小型化及び消費電極の低減を図ることができる。
【0060】
一方、本実施例で用いているクランパ44は板状部材であり、その厚さは、約0.3mm〜0.5mm程度とされている。このため、回路基板1が電子部品2及び電子部品3を高密度に実装した構成であっても、図5に示すように装着状態のクランパ44と電子部品3との間に0.1mm以上の隙間を設けることができる。よって、回路基板1上で、シールド部材5の近傍に配設された電子部品3がリペア処理時にクランパ44と干渉して損傷することを防止することができる。
【0061】
更に、加熱ヘッド装置40がシールド部材5を加熱しはんだ7を溶融する処理を行っている間、加熱ヘッド42に形成されたN供噴出孔48からはシールド部材5に向け不活性ガスであるNガスが噴射されている。これにより、シールド部材5が加熱されても、シールド部材5が酸化して変色することを防止できる。また、シールド部材5の表面に絶縁層が形成されることも防止でき、よってシールド部材5を加熱しても、そのシールド性能が低下することを防止できる。
【0062】
尚、N供噴出孔48から噴射されるN2ガスは、図4に示されるように、ヒータブロック41及び加熱ヘッド42を通過した後にN供噴出孔48からシールド部材5に噴射される。よって、N供噴出孔48から噴射されるNガスは加熱されており、よってNガスを噴射することにより、シールド部材5の加熱効率が低下するようなことはない。
【0063】
上記のようにしてはんだ7が溶融すると、昇降装置12により加熱ヘッド装置40は上昇される(Z2方向に移動される)。前記のように、突起44aが係合孔6に係合すること等により、シールド部材5は加熱ヘッド装置40に確実に保持されている。よって、加熱ヘッド装置40が上昇することにより、シールド部材5は回路基板1から取り外される。これにより、シールド部材5に覆われていた電子部品2が外部に露出した状態となる。
【0064】
このシールド部材5が取り外された状態で、不良品である電子部品2の取り外し処理と、良品の電子部品2の実装処理(両処理を合わせて部品リペア処理という)が実施される。尚、この電子部品2の取り外し及び実装処理は、従来と代わるところがないためその説明は省略する。また、この部品リペア処理中、加熱ヘッド装置40によるシールド部材5の加熱処理は継続して実施されている。
【0065】
部品リペア処理が終了すると、回路基板1のシールド部材5の配設位置には、クリームはんだが塗布される。そして、このクリームはんだを塗布する処理が終了すると、シールド部材5を回路基板1に装着する処理(以下、この処理を再装着処理という)が開始される。
【0066】
再装着処理が開始すると、操作装置30は昇降装置12を駆動し、再び加熱ヘッド装置40を下降させる。そして、シールド部材5が回路基板1に接触すると、側面5aの下端部はクリームはんだと接触し、またクランパ44の下端部の傾斜面44bはクリームはんだと近接した状態となる。
【0067】
前記したように、本実施例に係るリワーク装置10は、シールド部材5を効率よく加熱することができるため、クリームハンダ内のはんだを短時間で確実に溶融することができる。このように、クリームハンダ内のはんだが溶融することにより、このはんだは回路基板1とシールド部材5とを接合する。
【0068】
このように、回路基板1とシールド部材5とが再びはんだ7により接合されると、操作装置30は図示しないNガス供給装置を起動し、回路基板1とシールド部材5との接合位置、即ちはんだ7の配設位置に向けNガスを噴射させる。これにより、溶融していたはんだ7は短時間で凝固し、シールド部材5は再び回路基板1に装着(固定)される。
【0069】
このようにしてシールド部材5が回路基板1に装着されると、操作装置30は加熱ヘッド装置40を上昇させる。この際、クランパ44がシールド部材5を挟持する力(突起44aと係合孔6との係合力も含む)は、はんだ7が回路基板1とシールド部材5とを接合する力に比べて小さくなるよう設定されている。このため、加熱ヘッド装置40が上昇することにより、突起44aは係合孔6から離脱し、クランパ44はシールド部材5から離間する。以上の一連の処理により、回路基板1に対するリペア処理は終了する。
【0070】
図7は、本実施例に係るリワーク装置10を用いてシールド部材5のリペア処理を行ったときのシールド部材5の温度上昇の様子を従来と比較して示す図である。図7(A),(B)において、横軸は加熱開始からの時間を示し、縦軸はシールド部材5の回路基板1とはんだ付けした部位の温度上昇を示している。また、図7(A)は従来のホットエアを用いたリワーク装置におけるシールド部材の温度上昇の様子を示しており、図7(B)は上記した実施例に係るリワーク装置10を用いた場合のシールド部材5の温度上昇の様子を示している。
【0071】
図7(A)に示すホットエアをシールド部材5に噴射する構成のリワーク装置では、シールド部材の温度上昇と回路基板1に実装された電子部品(IC)の温度上昇は略同一であり、かつその温度上昇速度は遅い。このため、シールド部材のみを効率よく加熱することができず、リペア処理の効率が低下すると共に、電子部品が長時間にわたり高い温度に晒されるため、ダメージを受けるおそれがある。
【0072】
これに対して図7(B)に示す本実施例に係るリワーク装置10を用いた場合には、シールド部材5の温度上昇速度は従来に比べて速く、また電子部品2の温度上昇速度は従来に比べて遅いことが分る。よって、本実施例に係るリワーク装置10によれば、短時間でシールド部材5を回路基板1から取り外せるためリペア処理の効率を高めることができる。また、電子部品2の温度上昇速度が遅いことにより、リペア処理を実施しても電子部品2に熱損傷が発生することを防止することができる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【0074】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
基板にはんだ付けされた被はんだ付け部材を加熱ヘッド装置により加熱することによりはんだを溶融し、該被はんだ付け部材を前記基板から取り外すリペア装置であって、
前記加熱ヘッド装置は、
加熱手段により加熱される加熱ヘッドと、
該加熱ヘッドにより加熱され、該加熱ヘッドの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有すると共にバネ性を有した材料により形成され、前記被はんだ付け部材のはんだ付け面に弾性力を持って接触する接触部材と、
を有するリペア装置。
(付記2)
前記加熱ヘッド装置は、更に前記加熱ヘッドが取り付けられる装着部を更に有し、
前記加熱ヘッドは前記装着部に対し変位可能な構成された付記1記載のリペア装置。
(付記3)
前記加熱ヘッドは、前記被はんだ付け部材に向けて不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を有してなる付記2記載のリペア装置。
(付記4)
前記接触部材の先端部に、前記はんだとの接触を防止する逃げ部を形成してなる付記3記載のリペア装置。
(付記5)
前記被はんだ付け部材に対し冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段を設けた付記4記載のリペア装置。
(付記6)
前接触部材により前記被はんだ付け部材を把持しうる構成とした付記5記載のリペア装置。
(付記7)
前記接触部材は無酸素銅により形成されてなる付記6記載のリペア装置。
(付記8)
前記接触部材の表面にクロムめっきを施してなる付記7記載のリペア装置。
(付記9)
前記基板を保持するステージ装置に、該基板に向け加熱ガスを供給する加熱ガス供給ノズルを設けた付記8記載のリペア装置。
(付記10)
前記加熱ヘッド装置を昇降させる昇降装置を設けた付記1乃至9のいずれか一項に記載のリペア装置。
(付記11)
前記ステージ装置を移動させる位置決め装置を設けた付記9記載のリペア装置。
(付記12)
基板にはんだ付けされた被はんだ付け部材を加熱ヘッド装置により加熱することによりはんだを溶融し、該被はんだ付け部材を前記基板から取り外すリペア方法であって、
加熱ヘッドに設けられた接触部材を前記被はんだ付け部材のはんだ接続面に接触させて前記被はんだ付け部材を加熱して前記はんだを溶融している間、前記被はんだ付け部材に向けて不活性ガスを供給するリペア方法。
(付記13)
前記接触部材が前記被はんだ付け部材に接触する前に、前記基板を加熱する付記12記載のリペア方法。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、シールド板の回路基板への取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図2】図2は、従来のシールド板の取り外し方法の第1例を説明するための図である。
【図3】図3は、従来のシールド板の取り外し方法の第2例を説明するための図である。
【図4】図4は発明の一実施例であるリワーク装置を示しており、図4(A)はリワーク装置の正面図、図4(B)はリワーク装置の側面図である。
【図5】図5は、加熱ヘッド装置のクランパ近傍を拡大して示す図である。
【図6】図6は、本発明の一実施例であるシールド板の取り外し方法を説明するための図である。
【図7】図7は本発明の効果を示す図であり、図7(A)は参考のために加熱時における電子部品とシールド板の従来の温度変化を示しており、図7(B)は本実施例の加熱時における電子部品とシールド板の温度変化を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 回路基板
2,3 電子部品
5 シールド部材
6 係合孔
7 はんだ
10 リワーク装置
11 筐体
12 昇降装置
13 位置決め装置
14 テーブル装置
15 冷却用N噴出し装置
16 昇降用ベース
19 固定部
20 断熱部
23 熱風発生装置
24 熱風噴出ノズル
26 N噴射ノズル
30 操作装置
40 加熱ヘッド装置
41 ヒータブロック
42 加熱ヘッド
43 ヘッドガイド
44 クランパ
44a 突起
45 固定ネジ
50 ピボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にはんだ付けされた被はんだ付け部材を加熱ヘッド装置により加熱することによりはんだを溶融し、該被はんだ付け部材を前記基板から取り外すリペア装置であって、
前記加熱ヘッド装置は、
加熱手段により加熱される加熱ヘッドと、
該加熱ヘッドにより加熱され、該加熱ヘッドの熱伝導率よりも高い熱伝導率と弾性を有し、前記被はんだ付け部材のはんだ付け面に弾性力を持って接触する接触部材と、
を有するリペア装置。
【請求項2】
前記加熱ヘッド装置は、更に前記加熱ヘッドが取り付けられる装着部を更に有し、
前記加熱ヘッドは前記装着部に対し変位可能な構成された請求項1記載のリペア装置。
【請求項3】
前記加熱ヘッドは、前記被はんだ付け部材に向けて不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を有してなる請求項2記載のリペア装置。
【請求項4】
前記接触部材の先端部に、前記はんだとの接触を防止する逃げ部を形成してなる請求項3記載のリペア装置。
【請求項5】
前記被はんだ付け部材に対し冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段を設けた請求項4記載のリペア装置。
【請求項6】
前記接触部材により前記被はんだ付け部材を把持しうる構成とした請求項5記載のリペア装置。
【請求項7】
前記接触部材は無酸素銅により形成されてなる請求項6記載のリペア装置。
【請求項8】
前記接触部材の表面にクロムめっきを施してなる請求項7記載のリペア装置。
【請求項9】
前記基板を保持するステージ装置に、該基板に向け加熱ガスを供給する加熱ガス供給ノズルを設けた請求項8記載のリペア装置。
【請求項10】
基板にはんだ付けされた被はんだ付け部材を加熱ヘッド装置により加熱することによりはんだを溶融し、該被はんだ付け部材を前記基板から取り外すリペア方法であって、
加熱ヘッドに設けられた接触部材を前記被はんだ付け部材のはんだ接続面に接触させて前記被はんだ付け部材を加熱して前記はんだを溶融している間、前記被はんだ付け部材に向けて不活性ガスを供給するリペア方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−10359(P2010−10359A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167394(P2008−167394)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】