説明

リポソームの製造システムおよび製造方法

本発明は、リポソームの製造装置および製造プロセスを提供する。第一レザバーに緩衝溶液を、第二レザバーに脂質溶液を供給することによって、混合チャンバ内での緩衝溶液による脂質溶液の連続的な希釈によりリポソームを製造する。治療剤、例えば核酸は、緩衝溶液または脂質溶液の一方に含まれる。混合の際、治療用製品を被包するリポソームは実質的に即時に形成される。その後、形成されたリポソーム溶液は均一性の向上および小さい粒子サイズの維持のために緩衝溶液で即時に希釈される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2005年7月27日に出願された米国出願番号第60/703,380号、表題「SYSTEMS AND METHODS FOR MANUFACTURING LIPOSOMES」の恩典を主張する非仮出願である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
活性物質を細胞に投与する多くシステム、例えばリポソーム、ナノ粒子、ポリマー粒子、免疫複合体およびリガンド複合体、ならびにシクロデキストリンが、すでに公知である(Drug Transport in antimicrobial and anticancer chemotherapy, G. Papadakou Ed., CRC Press, 1995を参照のこと)。リポソームは典型的には、超音波処理法、界面活性剤透析法、エタノール注入または希釈法、フレンチプレス押出し法、エーテル注入法、および逆相蒸発法により
研究室内で調製される。複数の二重層を有するリポソームは、多重層脂質小胞(multilamellar lipid vesicle)(MLV)として公知である。その層間に捕捉された流体は各々の膜の分解によってのみ放出されるので、MLVは徐放薬の候補である。単一の二重層を有するリポソームは単層脂質小胞(unilamellar lipid vesicle)(UV)として公知である。UVは、小型(SUV)または大型(LUV)のものが製造され得る。
【0003】
上記のリポソーム製造方法のいくつかは過酷なまたは極端な条件を課すものであり、これによりリン脂質原材料および被包される薬物が変性し得る。さらに、これらの方法は、大量のリポソームの大規模生産に容易に拡大することができない。さらに、従来的なエタノール希釈法による脂質小胞の形成は、水性の緩衝液中に脂質を注入または滴下するものである。得られる小胞は典型的にはサイズが不均一であり、かつ単層小胞と多重層小胞の混合物を含む。
【0004】
従来的なリポソームは、治療剤を水性の内部空間に内包させる(水溶性の薬物)かまたは脂質二重層中に配分して保持する(水不溶性の薬物)よう処方される。血中半減期の短い活性薬剤は、リポソームを通じて送達するのに特に適している。例えば、多くの抗腫瘍薬剤は血中半減期が短くそれらの非経口的使用は実現可能でないことが公知である。しかし、活性薬剤の血流を通じた部位特異的送達のためのリポソームの使用は、細網内皮系(RES)の細胞によるリポソームの血液からの迅速なクリアランスにより大きく制限される。
【0005】
参照により本明細書に組み入れられる、1995年12月26日にWheelerらに対して発行された米国特許第5,478,860号は、疎水性化合物の送達のためのマイクロエマルジョン組成物を開示する。このような組成物は様々な用途を有する。一つの態様において、疎水性化合物は薬物を含む治療剤である。この特許はまた、インビトロおよびインビボでの疎水性化合物の細胞への送達方法を開示する。
【0006】
参照により本明細書に組み入れられる、KnopovらのPCT公報WO O1/05373は、乱流環境(例えばレイノルズ数>2000)を提供するスタティックミキサーによるエタノール注入型プロセスを用いた脂質小胞の調製技術を開示する。治療剤は小胞形成後に充填され得る。
【0007】
参照により本明細書に組み入れられる、米国出願公報2004/0142025は、逐次的・段階的な希釈プロセスを用いた脂質粒子の形成技術を開示する。開示されるプロセスは、非乱流混合環境で200nm未満のサイズを有する脂質粒子を生成する。しかし、開示されるプロセスは、特にsiRNAを被包するリポソームの場合に、最適なサイズの小胞が少なくかつ最適以下の均一性となる傾向がある。またプラスミドの被包の場合は、酸性の緩衝溶液が必要となる。
【0008】
米国特許第5,478,860号、US20040142025、およびWO 05373の開示は進歩的であるが、脂質小胞、特に治療剤、例えば核酸を被包する脂質小胞を処方および製造するプロセスおよび装置に改善の余地がある。本発明はこれらおよびその他の要求を満たすものである。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、任意で治療剤を含有する脂質小胞の製造プロセスおよび製造装置を提供する。治療剤には、例えば、タンパク質、核酸、アンチセンス核酸、薬物等が含まれ得る。本発明は、核酸または低分子薬を被包して含む脂質小胞を形成するのに使用され得る。一つの局面において、脂質小胞は低圧下で迅速に調製され、かつこのアプローチは十分拡大可能である。特定の好ましい態様において、このプロセスはスタティックミキサーまたは専用の押出し機器を使用しない。
【0010】
一つの態様によれば、本発明はリポソームの製造方法を提供する。このプロセスは典型的には、第二レザバーの有機脂質溶液と流路で繋がった第一レザバーに水溶液を供給する工程、および第一混合区画で水溶液と有機脂質溶液を混合しリポソーム溶液を生成する工程を包含する。有機脂質溶液は、治療用製品を被包するリポソームを実質的に即時に生成するよう水溶液と混合される。直後にリポソーム溶液は緩衝溶液と混合されリポソーム希釈溶液が生成される。リポソーム溶液は緩衝溶液レザバーに導入されるか、またはリポソーム溶液は第二混合区画で緩衝液と混合され得る。
【0011】
特定の局面において、水溶液、例えば緩衝液は治療用製品を含み、その治療用製品がリポソームに被包される。他の局面において、有機脂質溶液が治療用製品を含む。適当な治療用製品には、タンパク質、核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、tRNA、snRNA、siRNA(低分子干渉RNA)、shRNA、ncRNA、凝縮型DNA(pre-condensed DNA)、アプタマー、および抗原が含まれるがこれらに限定されない。特定の好ましい局面において、治療用製品は核酸である。
【0012】
別の態様において、本発明は、治療用製品を被包するリポソームの製造システムを提供する。このシステムは典型的には、水溶液を保持する第一レザバーおよび有機脂質溶液を保持する第二レザバーを含み、水溶液および有機脂質溶液の一方が治療用製品を含む。このシステムはまた、典型的には、水溶液および有機脂質溶液を実質的に等しい流速で混合区画にくみ上げるよう設定されたポンプ機構を含み、有機脂質溶液は治療用製品を被包するリポソームの溶液を実質的に即時に形成するよう混合区画で水溶液と混合される。このシステムはさらに、典型的には、混合区画と流路が繋がった緩衝溶液を含む回収レザバーを含み、リポソーム溶液は実質的に形成直後に回収レザバーに導入されリポソーム希釈溶液が形成される。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、治療用製品を被包するリポソームの製造システムを提供する。このシステムは典型的には、水溶液を保持する第一レザバーおよび有機脂質溶液を保持する第二レザバーを含み、水溶液および有機脂質溶液の一方が治療用製品を含む。このシステムはまた、典型的には、水溶液および有機脂質溶液を実質的に等しい流速で第一混合区画にくみ上げるよう設定された第一ポンプ機構を含み、有機脂質溶液は治療用製品を被包するリポソームの溶液を実質的に即時に形成するよう第一混合区画で水溶液と混合される。このシステムはまた、典型的には、緩衝溶液を保持する緩衝レザバー、および緩衝溶液を制御された流速で第二混合区画にくみ上げるよう設定された第二ポンプ機構を含み、リポソーム溶液は実質的に第一混合区画で形成された直後に第二混合区画に導入され第二混合区画でリポソーム希釈溶液が形成される。
【0014】
発明の詳細な説明
I.定義
「核酸」という用語は、少なくとも二つのヌクレオチドを含むポリマーを意味する。「ヌクレオチド」は、糖デオキシリボース(DNA)またはリボース(RNA)、塩基、およびリン酸基を含む。ヌクレオチドはリン酸基を通じて連結される(ただし合成核酸は、リン酸基以外のヌクレオチドリンカーを用いて調製され得る)。「塩基」にはプリンおよびピリミジンが含まれ、さらにプリンおよびピリミジンには、天然化合物であるアデニン、チミジン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、ならびにプリンおよびピリミジンの天然アナログおよび合成性誘導体が含まれ、プリンおよびピリミジンの合成性誘導体には、例えばアミン、アルコール、チオール、カルボキシレート、およびハロゲン化アルキルであるがこれらに限定されない新しい反応基を加えた修飾体が含まれるがこれらに限定されない。
【0015】
DNAは、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部、凝縮型DNA、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物、ベクター(P1、PAC、BAC、YAC、人工染色体)、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、またはこれらの群の誘導体の形態であり得る。RNAは、オリゴヌクレオチドRNA、tRNA(トランスファーRNA)、snRNA(核内低分子RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、siRNA(低分子干渉RNA)、shRNA(低分子ヘアピン型RNA)、ncRNA(非翻訳RNA)、アプタマー、リボザイム、キメラ配列、またはこれらの群の誘導体の形態であり得る。
【0016】
「アンチセンス」は、DNAおよび/またはRNAの機能と干渉するポリヌクレオチドである。これにより発現が抑制され得る。天然核酸はリン酸骨格を有し、人工核酸は他のタイプの骨格および塩基を含み得る。これらには、PNA(ペプチド核酸)、ホスホチオエート、およびその他の天然核酸のリン酸骨格の変種が含まれる。さらに、DNAおよびRNAは、一本鎖、二本鎖、三本鎖、または四本鎖であり得る。
【0017】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチドまたは前駆体(例えば、単純疱疹ウイルス)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列を意味する。ポリペプチドは、全長コード配列により、または全長もしくはフラグメントの所望の活性もしくは機能的特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達等)が保持される限りコード配列の任意の部分によりコードされ得る。
【0018】
本明細書中で使用する場合、「水溶液」という用語は、全体または一部に水を含む組成物を意味する。
【0019】
本明細書中で使用する場合、「有機脂質溶液」という用語は、全体または一部に脂質を含む有機溶媒を含む組成物を意味する。
【0020】
「脂質」という用語は、脂肪酸のエステルであり、水に溶解しないが多くの有機溶媒に溶解することにより特徴付けられる一群の有機化合物を意味する。これらは通常、少なくとも三つのクラスに分類される:(1)脂肪および油ならびにロウを含む「単純脂質」;(2)リン脂質および糖脂質を含む「複合脂質」;(3)ステロイド等の「誘導脂質」。
【0021】
「両親媒性脂質」という用語は、部分的に、脂質性物質の疎水性部分が疎水相に集まり、親水性部分が水相に集まる任意の適当な物質を意味する。両親媒性脂質は通常、脂質小胞の主要成分である。親水特性は、極性基または荷電基、例えば糖基、リン酸基(phosphato)、カルボキシル基、硫酸基(sulfato)、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトロ基、水酸基、およびその他の同様の基の存在に由来する。疎水性は、長鎖の飽和および不飽和の脂肪族炭化水素基ならびに一つ以上の芳香族基、脂環式基、または複素環式基により置換されたそのような基を含むがこれらに限定されない非極性基を含むことにより付与され得る。両親媒性化合物の例には、リン脂質、アミノ脂質、およびスフィンゴ脂質が含まれるがこれらに限定されない。リン脂質の代表例には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、またはジリノレオイルホスファチジルコリンが含まれるがこれらに限定されない。その他のリンを含まない化合物、例えば、スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、およびβ-アシルオキシ酸もまた、両親媒性脂質という名のグループに含まれる。さらに、上記の両親媒性脂質は、トリグリセリドおよびステロールを含む他の脂質と混合され得る。
【0022】
「中性脂質」という用語は、選択されたpHにおいて非荷電形態または中性の両性イオン性形態のいずれかで存在する任意の多くの脂質種を意味する。生理学的pHにおけるそのような脂質には、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、セレブロシド、およびジアシルグリセロール
が含まれる。
【0023】
「非陽イオン性脂質」という用語は、上記の任意の中性脂質および陰イオン性脂質を意味する。有用な非陽イオン性脂質には、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)およびジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、ならびに1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(transDOPE)が含まれる。
【0024】
「陰イオン性脂質」という用語は、生理学的pHで負に荷電した任意の脂質を意味する。これらの脂質には、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リジルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、および中性脂質に連結されるその他の陰イオン性修飾基が含まれるがこれらに限定されない。
【0025】
「陽イオン性脂質」という用語は、選択されたpH、例えば生理学的pHで正味の正電荷を有する任意の多くの脂質種を意味する。このような脂質には、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」)、N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」)、3-(N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(「DC-Chol」)、およびN-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)が含まれるがこれらに限定されない。さらに、多くの市販の陽イオン性脂質調製物が利用可能であり、本発明において使用され得る。これらには、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(DOTMAおよび1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(「DOPE」)を含むリポソームであり、GIBCO/BRL, Grand Island, New York, USAから販売されている)、LIPOFECTAMINE(登録商標)(N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(「DOSPA」)および(「DOPE」)を含む陽イオン性リポソームであり、GIBCO/BRLから販売されている)、ならびにTRANSFECTAM(登録商標)(エタノール中のジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(「DOGS」)を含む陽イオン性脂質であり、Promega Corp., Madison, Wisconsin, USAから販売されている)が含まれる。以下の脂質は陽イオン性であり、生理学的pH以下で正電荷を有する;DODAP、DODMA、DMDMA、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)等。
【0026】
陽イオン性脂質および非陽イオン性脂質に加えて、本発明のSNALPは、二重層安定化成分(BSC)、例えばATTA-脂質またはPGE-脂質、例えば、例えばWO 05/026372に記載されるジアルキルオキシプロピルに結合したPEG(PEG-DAA)、例えば、米国特許公報第20030077829号および同第2005008689号に記載されるジアシルグリセロールに結合したPEG(PEG-DAG)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)に結合したPEG(PEG-PE)、もしくはセラミドに結合したPEG、またはそれらの混合物を含み得る(米国特許第5,885,613号を参照のこと)。一つの好ましい態様において、BSCはSNALPの凝集を阻害する複合型脂質(conjugated lipid)である。
【0027】
特定の局面において、陽イオン性脂質は典型的には、粒子中に存在する総脂質の約2%〜約70%、約5%〜約50%、約10%〜約45%、約20%〜約40%、または約30%〜約40%を占める。非陽イオン性脂質は典型的には、粒子中に存在する総脂質の約5%〜約90%、約10%〜約85%、約20%〜約80%、約30%〜約70%、約40%〜約60%、または約48%を占める。PEG-脂質複合体は典型的には、粒子中に存在する総脂質の約0.5%〜約20%、約1.5%〜約18%、約4%〜約15%、約5%〜約12%、または約2%を占める。本発明の核酸-脂質粒子はさらにコレステロールを含み得る。コレステロールは存在する場合、典型的には、粒子中に存在する総脂質の約0%〜約10%、約2%〜約10%、約10%〜約60%、約12%〜約58%、約20%〜約55%、または約48%を占める。核酸-脂質粒子の成分比が変更され得ることは当業者に容易に明らかとなろう。
【0028】
いくつかの態様において、形成された核酸-脂質粒子における脂質に対する核酸の比率(質量/質量比)は、約0.01〜約0.2、約0.03〜約0.01、または約0.01〜約0.08の範囲であり得る。出発物質の比率もこの範囲内である。別の態様において、核酸-脂質粒子調製物は、10mgの総脂質あたり約400μgの核酸、または約0.01〜約0.08もしくは50μgの核酸あたり1.25mgの総脂質に対応する約0.04の脂質に対する核酸の比率を使用する。
【0029】
「脂質小胞」は、化合物を送達するのに使用され得る任意の脂質性組成物を意味し、水性のボリュームを両親媒性脂質二重層により被包するもしくは脂質が高分子成分、例えばプラスミドを含む内部空間を水性度の低い内部空間で覆うリポソーム、または被包された成分が比較的無秩序な脂質混合物中に含まれる脂質凝集体もしくはミセルを含むがこれらに限定されない。
【0030】
本明細書中で使用する場合、「脂質被包」は、化合物を完全被包状態、部分被包状態、またはその両方で提供する脂質処方を意味する。
【0031】
本明細書中で使用する場合、「SNALP」という用語は、安定な核酸脂質粒子を意味する。SNALPは、核酸、例えばプラスミドを含む内部空間を水性度の低い内部空間で覆う脂質の小胞を表す。
【0032】
II.総論
本発明は、脂質小胞の製造プロセスおよび製造装置を提供する。このプロセスは、陽イオン性脂質、陰イオン性脂質、中性脂質、ポリエチレングリコール(PEG)脂質、親水性ポリマー脂質、膜融合性脂質、およびステロールを含むがこれらに限定されない幅広い脂質成分を含む脂質小胞を製造するのに使用され得る。疎水性の活性物質は、脂質を含む有機溶媒(例えばエタノール)に混入され、核酸および親水性の活性物質は水性成分に加えられ得る。特定の局面において、本発明のプロセスは、脂質単層が油ベースのコアを取り囲むマイクロエマルジョンを調製するのに使用され得る。特定の局面において、このプロセスおよび装置は、脂質小胞またはリポソームの調製に使用され得、治療剤はリポソームの形成と同時にリポソーム内に被包される。
【0033】
III.製造プロセス
図1は、本発明の方法の代表的なフローチャート100の一例である。このフローチャートは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定すべきではない。当業者は、他のバリエーション、改良物、および代用物を認識するであろう。
【0034】
一つの局面において、本発明の方法は、脂質溶液110、例えば適正製造基準(Good Manufacturing Practice)(GMP)の下で合成された医療グレードの脂質を提供し、その後にこれを有機溶液120(例えばエタノール)に可溶化させる。同様に、治療用製品、例えば治療的に活性な薬剤、例えば核酸112またはその他の薬剤も、GMPの下で調製される。その後、緩衝液(例えばクエン酸)を含有する治療剤溶液(例えば核酸)115は、低級アルカノールに可溶化させた脂質溶液120と混合され、リポソーム処方物130(本明細書中では「リポソーム懸濁物」または「リポソーム溶液」とも称する)が形成される。治療剤は、リポソームの形成と実質的に同時にリポソーム内に捕捉される。典型的には、負に荷電した核酸と正に荷電した陽イオン性脂質の間の静電気的相互作用により被包が行われる。例えば、滴定できる陽イオン性脂質が使用される場合、陽イオン性脂質のpKa付近またはそれを超える高いpHにおいては乏しいNA被包効率が達成され得る。しかし、当業者は、本発明のプロセスおよび装置が小胞の形成後のリポソームの能動的な捕捉または充填にも同等に適用できることを理解するであろう。特定の局面において、リポソーム溶液は、リポソーム溶液(例えば、リポソームの懸濁物)を希釈するための緩衝溶液140と実質的に即時に混合される。
【0035】
本発明のプロセスおよびシステムによれば、脂質および緩衝溶液を混合環境、例えば混合チャンバに連続的に導入する動作は、緩衝溶液により脂質溶液を連続的に希釈し、それによって実質的に混合と同時にリポソームを生成する。リポソーム懸濁物の即時の希釈、例えばリポソーム懸濁物と緩衝液の混合は、リポソーム懸濁物を長時間、例えば数分または数時間静置した場合の典型的な症状であるリポソームの粒子サイズの増大を防止する助けとなる。また、即時の希釈はさらに、特にsiRNAが被包される治療剤の場合にリポソームの均一性を向上させる。本明細書中で使用する場合、「脂質溶液を緩衝溶液で連続的に希釈する」という成句(およびその派生句)は、一般的には、脂質溶液が、小胞の生成を達成するのに十分な推進力を以て水和プロセスにおいて十分迅速に希釈されることを意味する。
【0036】
本発明のプロセスにおいて、有機脂質溶液は、典型的には、有機溶媒、例えば低級アルカノールを含む。上記のように、一つの局面において、リポソームは、核酸(例えばプラスミド)の捕捉の増大および粒子サイズの維持のために緩衝液(例えばクエン酸)で即時に希釈140される。このような希釈は、リポソーム溶液を制御された量の緩衝溶液中に即時に導入することにより、または第二混合区画においてリポソーム溶液を制御された流速の緩衝液と混合することにより行われ得る。サンプル濃縮160の前に、遊離の治療剤(例えば核酸)は、例えば陰イオン交換カートリッジを用いることによって除去150される。さらに、アルカノールを除去するための限外濾過工程170を用いることによって、サンプルが濃縮され(例えば、約0.9mg/mLプラスミドDNAに)、アルカノールが除去され、緩衝液が代替緩衝液(例えば生理食塩水緩衝液)と交換180される。その後、サンプルは濾過190され、バイアルに充填195される。このプロセスは、図1に示される工程を用いて本明細書中以降でより詳細に議論されるであろう。
【0037】
1.脂質の可溶化および治療剤の溶解
一つの態様において、本発明のプロセスに従い製造されるリポソーム小胞は、安定な核酸脂質粒子(すなわちSNALP)処方物を含む。当業者は、以下の解説が例示目的にすぎないことを理解するであろう。本発明のプロセスは、幅広い脂質小胞のタイプおよびサイズに適用できる。これらの脂質小胞には、小型(SUV)または大型(LUV)のものが製造され得る単層脂質小胞として公知の単層脂質小胞、および多重層脂質小胞(MLV)が含まれるがこれらに限定されない。さらなる小胞には、ミセル、脂質-核酸粒子、ビロソーム等が含まれる。当業者は、本発明のプロセスおよび装置に適するその他の脂質小胞を認識しているであろう。
【0038】
本発明のプロセスおよび装置に従い作製されるリポソームの好ましいサイズは、約50〜200nm径である。特定の局面において、リポソーム調製物は、その平均サイズ(例えば、直径)が約70nm〜約200nm、より典型的には平均サイズが約100nmまたはそれ未満となるサイズ分布を有する。
【0039】
特定の局面において、本発明のリポソーム処方物(例えばSNALP処方物)は、四つの脂質成分:リン脂質、コレステロール、PEG-脂質、および陽イオン性脂質を含む。一つの局面において、リン脂質はDSPCであり、PEG-脂質はPEG-S-DSGであり、陽イオン性脂質はDODMAである。一つの局面において、モル濃度組成は、約20:45:10:25のDSPC:Chol:PEG-DSG:DODMAである。別の局面において、SNALP処方物は、20:48:2:30のDSPC:コレステロール:PEG-C-DMA:DlinDMAである。特定の態様において、脂質を可溶化させる有機溶媒の濃度は約45% v/v〜約100% v/vである。特定の局面において、有機溶媒は低級アルカノールである。適当な低級アルカノールには、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、これらの異性体、およびこれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。一つの態様において、溶媒は、約50〜90% v/vの量のエタノールである。一つの局面において、脂質は約1mL/g〜約5 mL/gの量を占める。
【0040】
脂質は、例えば、適当な温度でオーバーヘッドスターラーを用いて可溶化120される。一つの局面において、溶液の総脂質濃度は約15.1(例えば、SNALP処方物なら約11.6)mg/mL(20mM)である。特定の局面において、治療剤(例えば核酸)は水溶液(例えば緩衝液)中に含まれ、終濃度まで希釈される。一つの局面において、例えば終濃度は、クエン酸緩衝液中約0.9mg/mL、pH約4〜6である。この例において、プラスミド溶液の量は、アルカノール-脂質溶液と同じである。緩衝溶液は本発明の直接希釈アプローチを用いる場合は酸性である必要はなく、例えば緩衝溶液のpHは7.0またはそれより高いpHであり得ることが理解されるはずである。一つの態様において、治療剤(例えば核酸)溶液の調製は、オーバーヘッドミキサーを用いてジャケット付きステンレス鋼容器内で行われる。サンプルは調製のために加熱する必要はないが、特定の例においては脂質小胞形成前の脂質溶液と同じ温度にされる。
【0041】
一つの態様において、治療剤は脂質溶液中に含まれる。特定の局面において、脂質溶液中の治療剤は親油性である。適当な親油性薬剤には、タキソール、例えばプロタックスIIIおよびパクリタキソールを含むタキソール誘導体、親油性ベンゾポルフィリン、ベルテポルフィン、ホスカネットの脂質性プロドラッグ、1-O-オクタデシル-sn-グリセロール-3-ホスホノホルメート(ODG-PFA)、ジオレオイル[3H]ヨードデオキシウリジン([3H]IDU-O12)、脂質誘導体化HIVプロテアーゼ阻害性ペプチド、例えばiBOC-[L-Phe]-[D-ベータ-Nal]-Pip-[アルファ-(OH)-Leu]-Val(7194)、およびその他の脂質誘導体化薬またはプロドラッグが含まれる。
【0042】
2.リポソームの形成
溶液、例えば脂質溶液120および治療剤(例えば核酸)水溶液115を調製した後、これらは、例えば蠕動ポンプミキサーまたはパルスレスギアポンプを用いて混合130される。一つの局面において、これらの溶液は実質的に等しい流速で混合環境にくみ出されるが、非同一の流速も使用され得る。特定の局面において、混合環境は「T」字型コネクタまたは混合チャンバを含む。この例において、流路、従って流体の流れは、互いとおよそ180°反対方向の流れとして「T」字コネクタの狭い通路(aperture)で出会う。浅い相対導入角、例えば27°〜90°および90°〜180°の相対導入角を有する他の混合チャンバまたはコネクタも使用され得る。溶液の流れが混合環境で出会い混合されると、脂質小胞が実質的に即時に形成される。脂質小胞は、脂質を溶解して含む有機溶液と水溶液(例えば緩衝液)が同時かつ連続的に混合される場合に形成される。水溶液を有機脂質溶液と混合することにより、有機脂質溶液が連続的、逐次的な段階的希釈を受け、実質的に即時にリポソーム溶液(リポソームの懸濁物)を生成するのは有利なことであり、驚くべきことである。ポンプ機構は、高アルカノール環境下で脂質小胞を形成する混合環境に脂質溶液と水溶液が等しい流速または異なる流速で供給されるよう設定され得る。
【0043】
本明細書中で教示される脂質溶液および水溶液の混合プロセスおよび混合装置が、リポソーム形成と実質的に同時に、形成されたリポソームへの治療剤の被包を最大約90%の被包効率で提供することは有利であり驚くべきことである。本明細書中で議論されるようなさらなる処理工程は、必要な場合、被包効率および濃縮のさらなる向上のために使用され得る。
【0044】
一つの態様において、脂質小胞は、有機溶媒(例えばエタノール)に溶解させた脂質が、水溶液(例えば緩衝液)と混合されることによって段階的様式で希釈される場合に形成される。この制御された段階的希釈は、水と脂質の流れを通路、例えばT字コネクタにおいて混合し、その直後に緩衝溶液で希釈することによって達成される。得られる脂質、溶媒、および溶質の濃度は、必要な場合、小胞形成プロセスを通じて一定に維持され得る。一つの局面において、約150nm未満、例えば約100nmまたはそれ未満の平均径を有する脂質小胞が形成され、これらは高エネルギープロセス、例えば膜押出し、超音波処理、顕微溶液化によるさらなるサイズ縮小の必要がない点で有利である。
【0045】
本発明のプロセスの一つの態様が図2に示される。一つの局面において、本発明のプロセスを使用することで、勾配のない二段階の段階的希釈により小胞が形成される。例えば、第一の段階的希釈において、小胞は、高アルカノール(例えばエタノール)環境(例えば約20%〜約55% v/vエタノール)下で形成される。次いでこれらの小胞は、段階的様式で、アルカノール(例えばエタノール)濃度を約25% v/v以下、例えば約17% v/v〜約25% v/vに引き下げることにより安定化され得る。特定の局面において、水溶液または脂質溶液中に治療剤が含まれる場合、治療剤はリポソーム形成と同時に被包される。
【0046】
図2に示されるように、一つの態様において、脂質は最初に、約40% v/v〜約100% v/v、より典型的には約65% v/v〜約90% v/v、最も典型的には約80% v/v〜約90% v/vのアルカノール環境下で溶解される(A)。次に、脂質溶液は、水溶液と混合することによって段階的に希釈され、約20.0〜55%の濃度のアルカノール(例えばエタノール)下で小胞が形成される(B)。水溶液を有機脂質溶液と混合することにより、有機脂質溶液は連続的、逐次的な段階的希釈を受け、リポソームを生成する。さらに、脂質小胞、例えばSNALP(脂質粒子)は、約25%以下、好ましくは約19〜25%のアルカノール濃度への小胞の追加の段階的希釈によりさらに安定化され得る(C)。特定の局面において、追加の逐次的希釈(C)は実質的にリポソームの形成直後に行われる。例えば、リポソーム溶液の形成と希釈(C)の間の経過時間は1分未満であることが有利であり、10秒未満であることがより有利であり、1秒または2秒未満であることがさらに有利である。
【0047】
特定の局面において、両方の逐次的希釈(A → BおよびB → C)について、得られるエタノール、脂質、および溶質の濃度は受取容器において一定レベルに維持される。最初の混合工程後のこれらの高エタノール濃度下では、低エタノール濃度下での希釈により形成される小胞と比較して、より秩序のある様式で脂質モノマーから二重層への再配置が進行する。特定の学説に拘束されることなく言うと、これらの高エタノール濃度は、二重層における核酸と陽イオン性脂質の会合を促進すると考えられる。一つの局面において、核酸の被包は、22%超のアルカノール(例えばエタノール)濃度の範囲で起こる。
【0048】
一つの局面において、脂質小胞は、60〜約400mL/分の速度で形成される。混合工程130の後の脂質濃度は約1〜12mg/mLであり、治療剤(例えば核酸)濃度は約0.05〜0.23mg/mLである。特定の好ましい局面において、脂質濃度は約1.25mM 0.72mg/mLであり、治療剤(例えば核酸)濃度は約0.06mg/mLであり、脂質:核酸の比が約12となる。緩衝液濃度は約1〜3mMであり、アルカノール濃度は約45% v/v〜約90% v/vである。好ましい局面において、緩衝液濃度は約3mMであり、アルカノール濃度は約45% v/v〜約60% v/vである。
【0049】
3.リポソームの希釈
図1に話を戻すが、小胞形成工程130後の治療剤(例えば核酸)の被包の程度は、遊離の核酸を除去する前に脂質小胞懸濁物(リポソーム溶液)を即時に希釈140することにより向上し、粒子サイズは維持され、小型化さえする。例えば、希釈工程140の前の治療剤の捕捉が約50〜60%の場合、希釈工程140後にそれを約80〜90%まで上昇させることができる。工程140において、リポソーム処方物は、水溶液、例えば緩衝液と混合する(例えば、20mMクエン酸緩衝液、300mM NaCl、pH6.0と1:1に)ことにより約10%〜約40%、好ましくは約20%アルカノールまで希釈される。次いで希釈されたサンプルは、必要に応じて室温でインキュベートされる。
【0050】
4.遊離の治療剤の除去
即時希釈140の後、治療剤(例えば核酸)の約70〜80%またはそれ以上が脂質小胞(例えばSNALP)に捕捉され、遊離の治療剤は処方物から除去150され得る。特定の局面において、陰イオン交換クロマトグラフィが使用される。陰イオン交換樹脂の使用は、高い動的な核酸除去効果を示し、単独使用が可能であり、前もって滅菌および検証され得、十分に拡大可能である点が有利である。さらに、この方法は遊離の治療剤(例えば総プラスミドのおよそ25%の核酸)を除去する。クロマトグラフィ後のサンプル量は変化せず、治療剤(例えば核酸)および脂質の濃度は、それぞれ約0.04〜0.05および0.7mg/mLである。この時点で、治療剤の被包についてサンプルをアッセイしてもよい。
【0051】
5.サンプルの濃縮
特定の例において、リポソーム溶液は、必要に応じて、例えば限外濾過160(例えばタンジェンシャルフロー型透析)を用いて約5〜50倍、好ましくは10〜20倍濃縮される。一つの態様において、サンプルは限外濾過システムの供給レザバーに移され、緩衝液が除去される。緩衝液は、様々なプロセスを用いて、例えば、限外濾過によって除去できる。一つの局面において、緩衝液は、例えば約0.5mm〜約1.0mmの内径および30,000の名目分子量カットオフ(NMWC)を有するポリスルホン中空糸を積み込んだカートリッジを用いて除去される。約1,000 MWCO〜約750,000 MWCOを有する中空糸もまた使用され得る。リポソームは中空糸内に保持され再循環されるが、溶媒および低分子は中空糸の孔を通過することによって処方物から除去される。この手順における濾液は透過溶液として公知である。濃縮工程の完遂時、治療剤(例えば核酸)および脂質の濃度は、それぞれ約2および60mg/mLに増加し得る。一つの態様において、アルカノールの濃度は変化しないが、アルカノール:脂質の比が約50倍減少する。
【0052】
6.アルカノールの除去
一つの態様において、濃縮された処方物は、約5〜20倍量、好ましくは10倍量の水溶液(例えば緩衝液)(例えばクエン酸緩衝液、pH4.0(25mMクエン酸、100mM NaCl))に対して透析濾過され、アルカノールが除去170される。中性緩衝液または糖系緩衝液もまた使用され得る。工程170完遂時のアルカノール濃度は約1%未満である。脂質および治療剤(例えば核酸)の濃度は変化せず、治療剤の捕捉レベルも一定に保たれる。
【0053】
7.緩衝液の交換
アルカノールが除去された後、次いで水溶液(例えば緩衝液)が別の緩衝液に対する(例えば10倍量の10mM Hepesまたはリン酸含有を含有する生理食塩水150mM NaCl、pH7.4に対する)透析濾過により置換180される。様々な緩衝液、例えば中性緩衝液、糖系緩衝液等、のいずれかが使用され得る。典型的には、治療剤(例えば核酸)に対する脂質の濃度比は変化せず維持され、核酸の捕捉レベルはほぼ一定である。特定の例において、サンプルの収量は濃縮サンプルの約10%の量の緩衝液を含むカートリッジでリンスすることによって改善され得る。特定の局面において、このリンス液はその後濃縮サンプルに追加される。
【0054】
8.滅菌濾過
特定の好ましい態様において、脂質濃度が約12〜120mg/mLのサンプルの滅菌濾過190が必要に応じて行われ得る。特定の局面において、濾過は、カプセルフィルターおよび加熱ジャケットを備える加圧分注容器を用いて約40psi未満の圧力下で行われる。サンプルの加熱は、濾過の難易度を若干改善し得る。
【0055】
9.滅菌充填
滅菌充填工程195は、従来的なリポソーム処方と同様のプロセスを用いて行われる。本発明のプロセスにより、当初の治療剤(例えば核酸)の約50〜60%が最終産物に含まれることになる。特定の局面において、最終産物の脂質に対する治療剤の比はおよそ0.01〜0.2である。
【0056】
IV.治療剤
本発明の脂質系薬物処方物および組成物は、治療剤または生物活性薬剤の全身送達または局所送達に有用であり、かつ診断アッセイにも有用である。以下の議論は主としてリポソームを参照しているが、当業者はこれと同じ議論が本発明の他の薬物送達系にも十分適用できることを容易に理解するであろう。
【0057】
上記のように、治療剤は、好ましくは小胞形成時に脂質小胞に取り込まれる。一つの態様において、疎水性活性物質は脂質を含む有機溶媒に混入され、核酸および親水性の治療剤は水性成分に加えられ得る。特定の例において、治療剤は、タンパク質、核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、tRNA、snRNA、siRNA、shRNA、ncRNA、凝縮型DNA、アプタマー、抗原、およびそれらの組み合わせのうちの一つを含む。好ましい局面において、治療剤は核酸である。核酸は、タンパク質、例えば単純疱疹ウイルス、チミジンキナーゼ(HSV-TK)、シトシンデアミナーゼ、キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、p53、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、カルボキシルエステラーゼ、デオキシシチジンキナーゼ、ニトロレダクターゼ、チミジンホスホリラーゼ、またはシトクロムP450 2B1をコードし得る。
【0058】
特定の局面において、治療剤は有機脂質成分に混入される。特定の例において、治療剤は親油性である。適当な親油性薬剤には、タキソール、例えばプロタックスIIIおよびパクリタキソールを含むタキソール誘導体、親油性ベンゾポルフィリン、ベルテポルフィン、ホスカネットの脂質性プロドラッグ、1-O-オクタデシル-sn-グリセロール-3-ホスホノホルメート(ODG-PFA)、ジオレオイル[3H]ヨードデオキシウリジン([3H]IDU-O12)、脂質誘導体化HIVプロテアーゼ阻害性ペプチド、例えばiBOC-[L-Phe]-[D-ベータ-Nal]-Pip-[アルファ-(OH)-Leu]-Val(7194)、およびその他の脂質誘導体化薬またはプロドラッグが含まれる。
【0059】
別の態様において、本発明の脂質小胞は、小胞形成後に一つ以上の治療剤で充填され得る。特定の局面において、本発明を用いて投与される治療剤は、処置対象の疾患に対する適当な処置となるよう選択された様々な薬物のいずれかであり得る。多くの場合、薬物は抗腫瘍薬剤、例えば、ビンクリスチン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、カンプトテシン、シスプラチン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、ストレプトゾトシン等である。特に好ましい抗腫瘍薬剤には、例えば、アクチノマイシンD、ビンクリスチン、ビンブラスチン、シスチンアラビノシド、アントラサイクリン、アルキル化薬剤(alkylative agents)、白金化合物、代謝拮抗物質、ならびにヌクレオシドアナログ、例えばメトトレキサートならびにプリンおよびピリミジンアナログが含まれる。本発明のプロセスによって抗感染症薬剤を特定組織に送達することも望ましい。本発明の組成物はまた、局所麻酔薬、例えばジブカインおよびクロルプロマジン;ベータアドレナリン遮断薬、例えばプロプラノロール、チモロール、およびラベトロール(labetolol);降圧薬、例えばクロニジンおよびヒドララジン;抗うつ薬、例えばイミプラミン、アミトリプチリン、およびドキセピン;抗痙攣薬(anti-conversant)、例えばフェニトイン;抗ヒスタミン薬、例えばジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン(chlorphenirimine)、およびプロメタジン;抗生物質/抗菌薬、例えばゲンタマイシン、シプロフロキサシン、およびセフォキシチン;抗真菌薬、例えばミコナゾール、テルコナゾール、エコナゾール、イソコナゾール、ブタコナゾール、クロトリマゾール、イトラコナゾール、ナイスタチン、ナフチフィン、およびアンホテリシンB;駆虫剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、免疫調節薬、神経伝達物質アンタゴニスト、抗緑内障薬、ビタミン、麻薬、ならびに造影剤を含むがこれらに限定されない他の薬物の選択的送達にも使用され得る。
【0060】
V.装置
一つの態様において、本発明は、本発明のプロセスを実行するためのシステムおよび装置を提供する。図3aおよび3bは、本発明の二つの態様に従う、それぞれ装置300および装置302の例を示す。これらの概略図は例示にすぎず、特許請求の範囲を限定すべきではない。当業者は、他のバリエーション、改良物、代用物を認識するであろう。
【0061】
示されるように、装置300および装置302は各々、水溶液および有機溶液を保持するための二つのレザバー、それぞれ、水溶液レザバー305および有機溶液レザバー310を含む。特定の局面において、脂質小胞処方物は低圧(例えば<10psi)で迅速に調製され、本発明の装置およびプロセスは十分に拡大可能である(例えば0.5mL〜5000L)。1Lスケールにおいて、脂質小胞は約0.4〜0.8L/分で形成される。特定の好ましい局面において、この装置は、スタティックミキサーも専用押出し機器も使用しない。
【0062】
混合チャンバ320は、一つの態様において、ホース取付口(hose barb)を任意で有するT字コネクタを含み、流路324および326は互いと約180°で衝突する。混合時の角度は変更もでき、約100nm未満の脂質小胞は、約90°〜約180°の角度または27°〜約90°の角度でさえも形成できる。特定の局面において、十分規定された再現性のある平均径を有する脂質小胞は、実質的に等しい流路における流速を用いて調製される。他の局面において、十分規定された再現性のある平均径を有する脂質小胞は、例えばいくつかの状況において十分な混合を確保するために流路における流速を変化させることによって調製される。特定の局面において、流速の分散は50%未満、より典型的には約25%未満、さらに典型的には約5%未満である。
【0063】
図5は、一つの態様に従うT字コネクタおよび関連する流体力学を示す。流速の例は、実施例の節(下記)においてより詳細に示され議論されている。先行技術のシステムとの比較で、本発明は、非乱流および極めて低い(かつ実質的に等しい)流速での高いずり速度を提供する。例えば、本発明は、約0.075〜約0.4L/分の流速(両方の流路)における約500/s〜約3300/sのずり速度と共に、混合環境下における非乱流(Nre<2000)を提供する点で有利である。これらの値は、混合チャンバ下流のチューブについて算出しており;T字コネクタ内の混合点で起きていることを予測するのは困難である。乱流が発生する場合があるが、それは混合チャンバの混合点においてのみである。
【0064】
二つの流体成分の混合は、例えば、蠕動ポンプ315、容積移送式ポンプ、パルスレスギアポンプを用いて脂質-エタノールおよび緩衝液の容器305、310の両方を加圧することによってか、またはこれらおよび/もしくは他のポンプ機構の二つ以上の組み合わせによって行われ得る。一つの局面において、505Lポンプヘッドと適合するワトソン・マーロー505Di/Lポンプが使用され;シリコンチューブ(例えば、3.2mm ID、2.4mm壁厚になるよう硬化させた白金;ワトソン・マーロー社製、カタログ番号913A032024)が、ポリプロピレンまたはステンレス鋼のT字コネクタ(例えば1/8'' ID)への流路のために使用され得る。脂質小胞は典型的には室温で形成されるが、脂質小胞は本発明に従い高温で形成される場合がある。他の既存のアプローチと異なり、緩衝液の組成に一般的な要件はない。事実、本発明のプロセスおよび装置は、アルカノール中の脂質を水と混合することによって脂質小胞を処方することができる。特定の局面において、本発明のプロセスおよび装置は、直径約100nm未満の脂質小胞を形成する。
【0065】
核酸を含む脂質小胞(例えばSNALP)が調製される場合、陽イオン性脂質および対イオンに対する核酸の比は最適化され得る。精製された処方物について、混合およびエタノール除去工程後に70〜95%の核酸(「NA」)が被包されるのが好ましい。NAの被包レベルはこの初期SNALP処方物の即時希釈によって上昇する点が有利である。驚くべきことに、本発明のプロセスおよび装置は、混合環境における溶液の混合(一方の溶液成分に治療剤が含まれる)によって、最大約90%の被包効率を提供する。二つの代替の希釈態様、例えば直接希釈が図3aおよび3bに示される。
【0066】
図3aに示される態様において、混合区画320で形成されるリポソーム溶液は、制御された量の希釈緩衝液を含む回収容器360に即時かつ直接的に導入される。好ましい局面において、容器360は、希釈を容易にするため容器360の内容物を撹拌するよう設定された一つ以上の要素を含む。一つの局面において、容器360内に含まれる希釈緩衝液の量はその容器に導入されるリポソーム溶液の量と実質的に等しい。一例として、45%エタノール中のリポソーム溶液は、等量のエタノールを含む容器360に導入される場合、22.5%エタノール中でより小さい粒子を生じる点が有利である。
【0067】
図3bに示される態様において、希釈緩衝液を含む第三レザバー345は、第二混合区画340に流路が接続されている。この態様において、混合区画320で形成されるリポソーム溶液は、第二混合区画340で即時かつ直接的に希釈緩衝液と混合される。特定の局面において、混合区画340は、リポソーム溶液と希釈緩衝液の流れが180°反対方向の流れとして出会うよう配置されたT字コネクタを含むが、より浅い角度、例えば27°〜約180°を提供するコネクタも使用され得る。ポンプ機構330は、混合区画340に制御可能な緩衝液の流れを送達する。一つの局面において、混合区画340に供給される希釈緩衝液の流速は、混合区画320からそこに導入されるリポソーム溶液の流速と実質的に等しくなるよう制御される。この態様は、第二混合区画340でリポソーム溶液と混合する希釈緩衝液の流れのさらなる制御を可能にし、従って第二混合プロセスを通じたリポソーム溶液の緩衝液中濃度のさらなる制御も可能にする点で有利である。このような希釈緩衝液の流速の制御は、低濃度でサイズの小さい粒子を形成させることができる点で有利である。例えば、以下の実施例の節を参照のこと。
【0068】
特定の局面において、本発明のリポソーム製造装置300および302はさらに、レザバー305および310の温度を制御するための温度制御機構(図示せず)を含む。典型的には、第一レザバー305および第二レザバー310からの流体は、別個の通路から同時に混合チャンバ320に流入する。装置302はさらに、リポソームの回収のために、第二混合チャンバ340の下流に回収レザバー350を含む。さらに、特定の局面において、装置300および302はさらに、レザバー305および310のいずれかまたは両方の上流に貯蔵容器を含む。さらに、レザバー305および310のいずれかまたは両方は、オーバーヘッドミキサーを備えたジャケット付きのステンレス鋼容器を含み得る。
【0069】
別の態様において、本発明は、本発明のプロセスを実行するための、限外濾過システムを有する装置を提供する。図4は、本発明の一つの態様に従う装置400の代表的な概略図の一例である。この概略図は例示にすぎず、特許請求の範囲を限定すべきではない。当業者は、他のバリエーション、改良物、代用物を認識するであろう。
【0070】
特定の局面において、装置400は複数のレザバーを含み、限外濾過システムが備え付けられている。水溶液レザバー440および有機溶液レザバー430は各々、それぞれ、上流調製用ベシクル(upstream preparation vesicle)(図示せず)を有する。
【0071】
図4に示されるように、回収容器450はフロー限外濾過システムと流路が繋がっている。特定の局面において、限外濾過は、SNALPサンプルを濃縮し、次いで緩衝液の交換により処方物からエタノールを除去するのに使用される。回収容器450は、図3aに従うプロセスに沿う場合、所望の量の希釈緩衝液を含み得ることが理解されるはずである。同様に、容器450は、図3bに従うプロセスに沿う場合、図3bの回収容器350として機能し得る(図4において第二ポンプは図示せず)。
【0072】
一つの操作態様において、希釈されたSNALPは、限外濾過システムの供給レザバーに移される。濃縮は、例えば約0.5mm〜約1.0mmの内径および約1,000〜約750,000の分子量カットオフ(MWCO)を有するポリスルホン中空糸を積み込んだクロスフローカートリッジ465を用いて緩衝液およびエタノールを除去することによって行われる。SNALPは中空糸内に保持され再循環されるのに対して、エタノールおよび緩衝液成分はこれらの中空糸の孔を通過することによって処方物から除去される。濾液は透過溶液として公知であり、廃棄される。SNALPが所望のプラスミド濃度まで濃縮された後、SNALPが懸濁されている緩衝液は、限外濾過によって除去され、等量の最終緩衝液と交換される。限外濾過は、他の方法、例えば従来的な透析で置き換えることができる。
【0073】
VI.実施例
実施例1 - 先行技術の方法と直接希釈プロセスの比較
SNALPは、2mol% PEG-C-DMA、30% DlinDMA、20mol% DSPC、および48mol% Chol''で構成される。
【0074】
ワトソン・マーローポンプ - MODEL 505 Di/L:
→ 核酸:非修飾siRNA(0.9% NaClで再構成)(0.225mg/ml siRNA)
→ 混合量:10mLの核酸 + 10mLの脂質-エタノール溶液(5mM脂質)
→ 1.6mm T字コネクタ、3.2mmチューブ、チャンネル毎に40cmチューブ長
→ 流速:200mL/分
【0075】
条件:
1.核酸と脂質を混合し、次いでインキュベーション猶予後にポンプを用いてSNALPを希釈する(先行技術の方法)。
2. 核酸と脂質を混合し、次いでピペットを用いて緩衝液を追加することでSNALPを希釈する。
3.希釈緩衝液を含むボトルで直接的に核酸と脂質を混合する(撹拌を除いた図3a)。
4.撹拌された希釈緩衝液中で直接的に核酸と脂質を混合する(図3a)。
【0076】
結果:

【0077】
直接希釈アプローチ(図3a)は、先行技術のプロセス、例えば米国出願公報2004/0142025に開示されるプロセスを用いて調製したSNALPと比較して、同等の被包効率を有しつつ有意に小さいSNALP粒子を生成した。
【0078】
実施例2 - 様々なプロセスパラメータを用いた本発明のプロセスの比較
4x濃縮SNALPの形成
SNALP2 プロセスは図3aに示される
SNALP3 プロセスは図3bに示される

【0079】
4x濃縮SNALPの形成
直接希釈(図3a)対インライン希釈(図3b)

*流速の値は希釈前の初期小胞形成時の速度の値であり、希釈緩衝液はインライン希釈法については得られるSNALPサンプルにおいて20% EtOHを達成するよう600mL/分で送達される。
【0080】
まとめ:
1.SNALPは、ポンプ流速を上げ、siRNA溶液、脂質溶液、および希釈緩衝液に対して修正を加えた場合に高い脂質およびsiRNAの初期濃度(4倍)で調製できる。これらのSNALPは良い被包効率および粒子サイズを有する。
2.インライン希釈アプローチ(SNALP3 - 図3b)を用いることで、これらのSNALP粒子の粒子サイズはさらに制御でき、脂質およびsiRNAの初期濃度の4分の1で調製されたSNALP2(図3a)と同様のサイズの粒子を生成する。
【0081】
VII.結論
本発明のシステムおよび方法を用いて製造され得る脂質粒子のさらなる特徴、利点、および例は、本願と同時の2005年7月27日に出願した米国仮特許出願番号[60/](代理人管理番号020801-002810US)、表題「siRNA Silencing of Apoliprotein B」において見出すことができ、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。本明細書中で議論した全ての特許、特許出願、およびその他の参考文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【0082】
本発明は例証によって具体的な態様について解説されたが、本発明は開示された態様に限定されないことが理解されるはずである。それとは対照的に、当業者に明らかな様々な改良および類似の配置を網羅することが意図される。従って、添付の特許請求の範囲は、全てのこのような改良および類似の配置を包含するよう、その最も広い解釈を許容されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図面および特許請求の範囲を含む明細書の他の箇所を参照すれば、本発明の他の特徴および利点が理解できるであろう。本発明の更なる特徴および利点、ならびに本発明の様々な態様の構造および操作は、添付図面に関連して以下に詳細に記載されている。図面においては、同様の参照番号は、同一または機能的に類似する要素を示す。
【0084】
【図1】図1は、SNALPの調製に使用するプロセスの概略図を示す。
【図2】図2は、本発明の一つの態様に従うリポソーム製造プロセスの概略図を示す。
【図3】図3aおよび3bは、本発明の二つの態様に従うそれぞれ装置300および装置302の例を示す。
【図4】図4は、本発明の一つの態様に従う装置400の代表図の一例である。
【図5】図5は、一つの態様に従うT字コネクタおよび関連する流体力学を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を包含する、治療用製品を被包するリポソームの製造方法:
第一レザバーに水溶液を供給する工程;
第二レザバーに有機脂質溶液を供給する工程であって、水溶液および有機脂質溶液の一方が治療用製品を含む、工程;
第一混合区画で水溶液と有機脂質溶液を混合してリポソーム溶液を生成する工程であって、有機脂質溶液が、治療用製品を被包するリポソームを実質的に即時に生成するよう水溶液と混合される、工程;ならびにその直後に
リポソーム溶液を緩衝溶液と混合してリポソーム希釈溶液を生成する工程。
【請求項2】
リポソーム溶液と緩衝溶液を混合する工程が、緩衝溶液を含む第三レザバーにリポソーム溶液を導入する工程を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第三レザバーが、第三レザバーに導入されるリポソーム溶液の量と実質的に等しいまたはそれよりも多い量の緩衝溶液を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
第三レザバーが撹拌される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
リポソーム溶液と緩衝溶液を混合する工程が、第二混合区画で混合する工程を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
第一混合区画が第一T字コネクタを含み、水溶液および有機脂質溶液が実質的に互いと180°反対方向の流れとして第一T字コネクタに導入され、第二混合区画が第二T字コネクタを含み、リポソーム溶液および緩衝溶液が実質的に互いと180°反対方向の流れとして第二T字コネクタに導入される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
第一混合区画が第一T字コネクタを含み、水溶液および有機脂質溶液が実質的に互いと180°反対方向の流れとしてT字コネクタに導入される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
リポソーム溶液が約20% v/v〜約55% v/vの有機溶媒中濃度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
リポソーム希釈溶液が約25% v/v未満の有機溶媒中濃度を有する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
リポソームの直径が約100nm未満である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
治療用製品が、タンパク質、プラスミド、アプタマー、核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、tRNA、snRNA、siRNA、shRNA、ncRNA、凝縮型DNA、および抗原からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
治療用製品が核酸である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
核酸が、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、シトシンデアミナーゼ、キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、p53、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、カルボキシルエステラーゼ、デオキシシチジンキナーゼ、ニトロレダクターゼ、チミジンホスホリラーゼ、およびシトクロムP450 2B1からなる群より選択されるタンパク質をコードする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
治療用製品が親油性である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
親油性製品がプロタックスIII、パクリタキソール、タキソール、タキソール誘導体、および脂質誘導体化プロドラッグからなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
以下を含む治療用製品を被包するリポソームの製造システム:
水溶液を保持する第一レザバー;
有機脂質溶液を保持し、水溶液および有機脂質溶液の一方が治療用製品を含む、第二レザバー;ならびに
水溶液と有機脂質溶液を実質的に等しい流速で混合区画にくみ上げるよう設定されており、有機脂質溶液が混合区画において治療用製品を被包するリポソームの溶液を実質的に即時に生成するよう水溶液と混合される、ポンプ機構;ならびに
緩衝溶液を含み、混合区画と流路で繋がっており、リポソーム希釈溶液の形成のためにリポソーム溶液が実質的に形成直後に導入される、回収レザバー。
【請求項17】
混合区画がT字コネクタを含み、水溶液および有機脂質溶液が、実質的に互いと180°反対方向の流れとしてT字コネクタに導入される、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
回収レザバーが、回収レザバーに導入されるリポソーム溶液の量と実質的に等しいまたはそれよりも多い量の緩衝溶液を含む、請求項16記載のシステム。
【請求項19】
第三レザバーが撹拌される、請求項16記載のシステム。
【請求項20】
以下を含む治療用製品を被包するリポソームの製造システム:
水溶液を保持する第一レザバー;
有機脂質溶液を保持し、水溶液および有機脂質溶液の一方が治療用製品を含む、第二レザバー;ならびに
水溶液と有機脂質溶液を実質的に等しい流速で第一混合区画にくみ上げるよう設定されており、有機脂質溶液が第一混合区画において治療用製品を被包するリポソームの溶液を実質的に即時に生成するよう水溶液と混合される、第一ポンプ機構;
緩衝溶液を保持する緩衝レザバー;ならびに
緩衝溶液を制御された流速で第二混合区画にくみ上げるよう設定されており、リポソーム溶液が実質的に第一混合区画において形成された直後に第二混合区画に導入されて第二混合区画においてリポソーム希釈溶液が形成される、第二ポンプ機構。
【請求項21】
第一混合区画が第一T字コネクタを含み、水溶液および有機脂質溶液が、実質的に互いと180°反対方向の流れとして第一T字コネクタに導入され、第二混合区画が第二T字コネクタを含み、リポソーム溶液および緩衝溶液が、実質的に互いと180°反対方向の流れとして第二T字コネクタに導入される、請求項20記載の装置。
【請求項22】
緩衝溶液の流速が、第二T字コネクタに流入するリポソーム溶液の流速と実質的に等しいまたはそれよりも速くなるように制御される、請求項20記載のシステム。
【請求項23】
リポソーム溶液が約20% v/v〜約55% v/vの有機溶媒中濃度を有する、請求項16または20記載のシステム。
【請求項24】
リポソーム希釈溶液が約25% v/v未満の有機溶媒中濃度を有する、請求項23記載のシステム。
【請求項25】
リポソームの直径が約100nm未満である、請求項16または20記載のシステム。
【請求項26】
治療用製品が、タンパク質、プラスミド、アプタマー、核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、tRNA、snRNA、siRNA、shRNA、ncRNA、凝縮型DNA、および抗原からなる群より選択される、請求項16または20記載のシステム。
【請求項27】
治療用製品が核酸である、請求項16または20記載のシステム。
【請求項28】
核酸が、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、シトシンデアミナーゼ、キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、p53、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、カルボキシルエステラーゼ、デオキシシチジンキナーゼ、ニトロレダクターゼ、チミジンホスホリラーゼ、およびシトクロムP450 2B1からなる群より選択されるタンパク質をコードする、請求項27記載のシステム。
【請求項29】
治療用製品が親油性である、請求項16または20記載のシステム。
【請求項30】
親油性製品がプロタックスIII、パクリタキソール、タキソール、タキソール誘導体、および脂質誘導体化プロドラッグからなる群より選択される、請求項29記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−505957(P2009−505957A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523088(P2008−523088)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001239
【国際公開番号】WO2007/012191
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(506016303)プロチバ バイオセラピューティクス インコーポレイティッド (8)
【Fターム(参考)】