説明

リモートコントロールシステム

【課題】リモートコントローラにバッテリーや電源を得るための電源回路を一切設けずに、従って簡単な構成のリモートコントローラで、被制御機器を正確に遠隔制御するリモートコントロールシステムを提供する。
【解決手段】入力操作によってリモートコントローラの可変識別マークの形態を変化させ、被制御機器側は、撮像手段で連続して読み取った画像データに、可変識別マークの形態変化を表す特徴パターンを抽出した際に、リモートコントローラの入力操作があったと判定し、入力操作に応じた動作を実行する。電源を用いずにリモートコントローラへの入力操作を被制御機器へ伝達できるので、リモートコントローラに電源を要しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者がリモートコントローラを入力操作して被制御機器の動作を遠隔制御するリモートコントロールシステムに関し、更に詳しくは、リモートコントローラに電源を必要としないリモートコントロールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家電機器の動作を遠隔制御するリモートコントローラは、ケース内に収容するバッテリーを電源として、制御信号を被制御機器である家電機器へ送信し、遠隔制御しているが、バッテリーが消耗する毎に新品に交換しなければならない。そこで、バッテリーを交換することなく、半永久的に使用可能なように、太陽電池で光電変換した電力を各部の電源として利用するリモートコントローラや、被制御機器側からリモートコントローラ側へRF信号を送信し、RF信号の交番磁界により発生する誘導起電力をリモートコントローラの電源とするリモートコントロールシステムが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
図8は、この特許文献1に記載の従来のリモートコントロールシステム100の一例を示すブロック図であり、リモートコントローラ101は、操作者のキー入力操作を受け付けるキー操作部102と、キー入力操作に応じた制御データを生成する送信コード発生部103と、制御データにより変調した遠隔制御信号を被制御機器へ向けて送信する信号送信部104を備え、被制御機器に収納されるリモコン受信部本体105は、この遠隔制御信号を受信する信号受信部106と、遠隔制御信号から制御データを復調する受信コード変換部107を備え、受信コード変換部107から制御用マイコン108へ出力される制御データによって被制御機器が遠隔制御される。
【0004】
リモコン受信部本体105には、更に、被制御機器の制御用マイコン108の制御によりRF波を送信するRF送信部109を備え、その周囲のリモートコントローラ101にRF波を送信する。一方、リモートコントローラ101には、RF波を受信し、RF波から得られた誘導起電力を電源として、上記リモートコントローラ101の上記各部102、103、104へ電源を供給するRF受信部110が備えられ、これにより、リモートコントローラ101は、バッテリーを内蔵することなく、無電源で動作する。
【0005】
また、電源で動作するリモートコントローラを用いずに、被制御機器の制御動作に応じて操作者が指、腕などを振るジェスチャー入力を行い、そのジェスチャーの特徴を被制御機器側で認識して、ジェスチャーに応じて被制御機器の動作を制御するジェスチャー入力方式のリモートコントロールシステムも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−331409号公報(明細書項目0011乃至0013、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、被制御機器側から送信するRF波をリモートコントローラ101の電源に利用する従来のリモートコントロールシステム100では、リモコン受信部本体105とリモートコントローラ101に、RF送信部109やRF受信110を備える必要があり、構造が複雑になる。更に、RF送信部109から広範囲に送信されるRF波の送信電力に対して、リモートコントローラ101のRF受信110で得られる電力は、わずかであるので、伝達効率が極めて低く、人体や他の電子機器への影響のない電力で送信されるRF波では、リモートコントローラ101を動作させるに充分な電力が得られず、リモートコントローラ101が正常に動作しない恐れがあった。
【0008】
また、ジェスチャー入力方式で被制御機器を遠隔制御するリモートコントロールシステムは、操作者の年齢などによるジェスチャー入力の個人差が大きく、操作者が同一人であっても、その都度指、腕なので振り幅が異なり、更に、被制御機器から操作者までの距離によっても異なるので、共通するジェスチャー入力の特徴を認識することが極めて困難であり、誤動作が頻発するものであった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、リモートコントローラにバッテリーや電源を得るための電源回路を一切設けずに、従って簡単な構成のリモートコントローラで、被制御機器を正確に遠隔制御するリモートコントロールシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、請求項1のリモートコントロールシステムは、リモートコントローラへの操作者の入力操作に応じて、被制御機器の動作を遠隔制御するリモートコントロールシステムであって、
前記リモートコントローラは、操作者の手動入力操作に応じて、可変識別マークの形態をケースの表面で変化させる手動操作機構を備え、前記被制御機器は、対向するリモートコントローラのケースの表面を含む画像を連続して撮像し、撮像する毎に画像データとする撮像手段と、ケースの表面で変化する可変識別マークの少なくとも変化前の第1特徴パターンと変化後の第2特徴パターンを記憶する特徴パターン記憶部と、撮像手段が生成する画像データ毎に、特徴パターン記憶部に記憶された第1特徴パターン及び/又は第2特徴パターンを比較し、前記第1特徴パターンを含む第1画像データと、前記第2特徴パターンを含む第2画像データとを抽出する比較手段と、比較手段が前記第1画像データを抽出した所定時間後に、前記第2画像データを抽出した際に、前記第1特徴パターン及び前記第2特徴パターンとの組合せに関連づけられた制御データを生成する制御手段とを備え、
操作者が可変識別マークを可変表示させる前記リモートコントローラへの手動入力操作に応じて、被制御機器の動作を制御データにより遠隔制御することを特徴とする。
【0011】
操作者が手動操作機構を手動入力操作すると、ケースの表面で可変識別マークの形態が変化し、リモートコントローラのケースの表面を含む画像を連続して撮像する撮像手段は、可変識別マークの変化前の第1特徴パターンを含む第1画像データを生成した後、所定期間後に、可変識別マークの変化後の第2特徴パターンを含む第2画像データを生成する。比較手段は、撮像手段が連続して生成する画像毎に、特徴パターン記憶部に記憶された第1特徴パターン及び第2特徴パターンを比較するので、第1画像データを抽出した所定時間後に第2画像データを抽出し、制御手段は、第1特徴パターン及び第2特徴パターンとの組合せに関連づけられた制御データにより、被制御機器の動作を制御する。
【0012】
ケースの表面で変化させる可変識別マークの形態は、ケースの表面の形態に対して一定比率で変化するので、操作者が異なっても入力操作による形態の変化は一定で、比較手段は、誤りなく第1画像データと第2画像データを抽出できる。
【0013】
請求項2のリモートコントロールシステムは、リモートコントローラが、可変識別マークの形態が変化するケースの表面に、固定形態の固定識別マークが表示され、手動操作機構は、手動入力操作に応じて、ケースに移動自在に取り付けられる操作ボタンと、操作ボタンに連動して遮蔽カバーを可変識別マークの表面側に進退移動させる連動機構とを有し、特徴パターン記憶部は、固定識別マークと可変識別マークとの形態からなる特徴パターンと、遮蔽カバーで可変識別マークが覆われ、固定識別マークのみの形態からなる特徴パターンのいずれか一方を前記第1特徴パターンと、他方を前記第2特徴パターンとして記憶することを特徴とする。
【0014】
操作者が操作ボタンを手動入力操作すると、遮蔽カバーが可変識別マークの表面側から退避して可変識別マークをケースの表面に表示し、若しくは、ケースの表面に表示される可変識別マークを遮蔽カバーが覆うので、操作者の手動入力操作を、可変識別マークの形態を含むか否かで相違する第1特徴パターンと第2特徴パターンとから判別できる。
【0015】
請求項3のリモートコントロールシステムは、リモートコントローラが、可変識別マークの形態が変化するケースの表面に、固定形態の固定識別マークが表示され、手動操作機構は、手動入力操作に応じて、ケースに移動自在に取り付けられる操作ボタンと、操作ボタンに連動して可変識別マークを第1表示位置と第2表示位置との間で往復移動させる連動機構とを有し、特徴パターン記憶部は、固定識別マークと第1表示位置の可変識別マークとの形態からなる前記第1特徴パターンと、固定識別マークと第2表示位置の可変識別マークの形態からなる前記第2特徴パターンを記憶することを特徴とする。
【0016】
操作者が操作ボタンを手動入力操作すると、可変識別マークが第1表示位置と第2表示位置との間で往復移動するので、操作者の手動入力操作を、固定識別マークの表示位置に対して可変識別マークの表示位置が第1表示位置と第2表示位置間で相違する第1特徴パターンと第2特徴パターンとから判別できる。
【0017】
請求項4のリモートコントロールシステムは、被制御機器が、被制御機器の動作を制御する複数の制御内容と、複数の制御内容から特定の制御内容を選択する為のカーソルを表示する表示部と、撮像手段が生成する画像データから、画像データ内の固定識別マークを表す画素データの位置を検出する位置検出手段と、表示部に表示されるカーソルの表示位置を制御するカーソル制御手段とを更に備え、位置検出手段は、比較手段が第1画像データ若しくは第2画像データを抽出した後、撮像手段が生成する画像データ毎に、その画像データ内の固定識別マークを表す画素データの位置を検出し、カーソル制御手段は、位置検出手段が検出する画素データの位置に応じてカーソルの表示位置を制御することを特徴とする。
【0018】
操作者がリモートコントローラを移動操作すると、画像データ内の固定識別マークを表す画素データの位置が変化し、位置検出手段は、画像データ毎に変化する固定識別マークを表す画素データの位置を検出する。固定識別マークは、リモートコントローラと一体に移動し、カーソル制御手段は、位置検出手段が検出する固定識別マークを表す画素データの位置に応じてカーソルの表示位置を制御するので、リモートコントローラの移動に連動して、表示部に表示されるカーソルの表示位置が移動する。従って、操作者は、表示部に表示される複数の制御内容から特定の制御内容が表示された位置へカーソルを移動制御し、制御しようとする特定の制御内容を選択することができる。
【0019】
請求項5のリモートコントロールシステムは、被制御機器が、対向するリモートコントローラに向けて赤外光を発光する発光手段を更に備え、撮像手段は、可変識別マークの表面に形成された散乱反射部材により反射される反射光を含む前記赤外光による画像を撮像し、画像データとすることを特徴とする。
【0020】
発光手段から発光される赤外光の一部は、可変識別マークの表面に形成された散乱反射部材で反射し、その反射光を含む画像を撮像手段が撮像するので、夜間でも可変識別マークの変化を認識できる。
【0021】
また、撮像手段は、赤外光による画像を撮像するので、他の波長の散乱光による画像データへの影響がなく、認識率が向上する。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、リモートコントローラにバッテリーや電源を得るための電源回路を必要としないので、バッテリーを交換することなく、簡単な構成でリモートコントローラを構成することができる。
【0023】
また、リモートコントローラから被制御機器へ制御信号を送信することなく、操作者の個人差の影響を受けずに、被制御機器を正確に遠隔制御することができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、第1特徴パターンと第2特徴パターンは、可変識別マークの形態を含むか否かで判別され、ケースの表面に表示される固定識別マークと可変識別マークの相対位置は一定で、ケースの表面の固定位置に対する可変識別マークの表示有無から、入力操作によって変化する可変識別マークを正確に検出できる。
【0025】
請求項3の発明によれば、第1特徴パターンと第2特徴パターンは、固定識別マークの表示位置に対する可変識別マークの表示位置で判別され、ケースの表面の固定位置に表示される固定識別マークに対する可変識別マークの第1表示位置と第2表示位置は一定であるので、入力操作によって変化する可変識別マークの形態を正確に検出できる。
【0026】
請求項4の発明によれば、バッテリーや電源を得るための電源回路を備えないリモートコントローラによって、表示部に表示されるカーソルの表示位置をリモートコントローラの移動操作に連動させて移動制御でき、被制御機器の動作を制御する複数の制御内容から所望の制御内容をカーソルの表示位置を移動させて選択できる。
【0027】
画像データに含まれる固定識別マーク若しくは固定識別マークと可変識別マークとの距離から、被制御機器とリモートコントローラの大凡の距離を検出できるので、リモートコントローラの移動操作量に応じた所定の倍率で、カーソルの表示位置を移動制御できる。
【0028】
請求項5の発明によれば、光量が少ない暗い室内でも、可変識別マークの変化を認識し、被制御機器を遠隔制御できる。また、赤外光以外の波長の光による影響を受けないので、形態が変化する可変識別マークの認識率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態に係るリモートコントロールシステム1の入力操作を行っていないリモコン2を示し、(a)は、リモコン2の斜視図、(b)は、その縦断面図である。
【図2】リモコン2の操作ボタン4を押し下げて入力操作を行った状態を示し、(a)は、リモコン2の斜視図、(b)は、操作ボタン4に沿って切断したリモコン2の縦断面図、(c)は、リモコン2と比較回路14に入力される画像データとの関係を説明する模式図である。
【図3】全ての操作ボタン4、4、4を押し下げて入力操作を行ったリモコン2の斜視図である。
【図4】リモートコントロールシステム1のリモコン2と被制御機器3の主要構成を示すブロック図である。
【図5】表示部10にカーソル30と複数の制御メニュー31が表示された被制御機器3の正面図である。
【図6】本発明の第2実施の形態に係るリモコン40の正面図である。
【図7】本発明の第3実施の形態に係るリモコン50と被制御機器60を示す要部説明図である。
【図8】従来のリモートコントロールシステム100の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、リモートコントローラ(以下、リモコンという)2により被制御機器であるテレビジョン受像機(以下、TVという)3の動作を遠隔制御する本発明の一実施の形態に係るリモートコントロールシステム1を、図1乃至図4を用いて説明する。図1(a)は、入力操作を行っていないリモコン2の斜視図、同(b)は、その縦断面図、図2(a)は、右側の操作ボタン4を押し下げて入力操作を行ったリモコン2の斜視図、同(b)は、押し下げた操作ボタン4に沿った縦断面図、同(c)は、同(a)の入力操作で比較回路14に入力される画像データを説明する模式図、図3は、全ての操作ボタン4、4、4を押し下げて入力操作を行ったリモコン2の斜視図である。
【0031】
これらの図に示すように、リモコン2は、合成樹脂製の中空直方体状のケース5の前面5a(図1(b)において左方の側面)の両側に沿って固着された一対の縦長帯状の固定識別マーク6、6と、ケース5の中空内部に立設して取り付けられた3個の可動識別マーク7、7、7と、ケース5の平面に出没自在に取り付けられた3個の操作ボタン4、4、4それぞれ連動する手動操作機構8、8、8とを備えている。
【0032】
ケース5の前面5aには、縦方向の長さがbの一対の固定識別マーク6、6の間に等間隔aで3個の円形窓孔5b、5b、5bが穿設され、各可動識別マーク7は、この円形窓孔5bの内方から前方に臨むように、ケース5に取り付けられている。また、各手動操作機構8は、入力操作を行わない待機状態で復帰バネ9によりケース5の平面からその一部が上方に突出するように付勢された操作ボタン4(4、4、4)と、中間部でケース5に回転自在に支持され、その後端部が操作ボタン4に回転自在に挿通する揺動リンク8aと、揺動リング8aの前端部に取り付けられ、揺動リンク8aの揺動により可動識別マーク7の前面に出没する遮蔽カバー8bとから構成されている。
【0033】
この構成によって、操作ボタン4を押し下げない待機状態では、復帰バネ9により揺動リンク8aは、図1(b)において反時計回りに付勢され、遮蔽カバー8bが可動識別マーク7の前面を覆い、円形窓孔5bに遮蔽カバー8bの前面が臨む。一方、復帰バネ9に抗して特定の操作ボタン4を押し下げると、その操作ボタン4に連結する揺動リンク8aは、時計回りに回転し、遮蔽カバー8bが可動識別マーク7の前面から退避するので、図2(a)に示すように、円形窓孔5bに可動識別マーク7の前面が臨む。同様に、各操作ボタン4、4、4を押し下げると、対応する円形窓孔5bから図3に示すように可動識別マーク7の前面が臨む。
【0034】
本実施の形態では、遮蔽カバー8bの前面を、ケース5の前面5aと同じ明度の高い白色とし、一対の固定識別マーク6、6及び3個の可動識別マーク7の表面(前面)を、明度の低い黒色とし、後述するTV3側で、固定識別マーク6、6と可動識別マーク7の形態からなる特徴パターンを明度のみで判別できるようにしている。リモコン2には、この他にTV3側に送信信号を送信する送信回路や電動機構などの電源を必要とする一切の回路部品を設けないので、極めて簡単な構造でリモコン2が構成される。
【0035】
図4は、上述構成のリモコン2で遠隔制御されるTV3の主要構成を示すブロック図であり、ディスプレーである表示部10が配置されたTV3の正面に、TV3に対向する画像を撮像してデジタル形式の画像データとする撮像素子であるCCD11が取り付けられ、図示するように、TV3にリモコン2を向けると、リモコン2のケース5の前面5aを含む画像データが生成される。
【0036】
CCD11には、クロック発生回路12から出力されるクロック信号と、クロック信号を分周器13で分周し、少なくとも操作者がリモコン2を手動操作する時間より短い周期となる周波数としたステータス信号が入力され、クロック信号に同期してCCD11の各画素の画素データが読み出され、ステータス信号により区切られるCCD11で撮像した一画面の画像データが、後段の画像処理回路19に出力される。ステータス信号により区切られる1画面毎の画像データは、縦横にマトリックス状に配列される多数の画素データより構成され、各画素データは、それぞれ複数の階調に分割した色合い、彩度、明度について、その画素が属する階調を数値化したデータとなっている。
【0037】
画像処理回路19は、その出力側に接続された比較回路14において、入力された画像データに、固定識別マーク6若しくは可動識別マーク7の形態が含まれているか否かの判別を容易にするため、画像データの各画素データを二値化する画像処理を行う。本実施の形態では、明度により固定識別マーク6、6と可動識別マーク7を他の形態と識別しているので、各画素データの明度を表す階調の数値を、所定の輪郭形状が表れるように調整したしきい値で二値化し、二値化した多数の画素データからなる画像データとする。
【0038】
比較回路14に接続する特徴パターン記憶部15は、リモコン2の前面5aに長さbの一対の縦長帯状の固定識別マーク6が表れている形態(図1(a))を複数の画素データで表した待機時特徴パターンと、間隔4aの一対の固定識別マーク6間の右側の固定識別マーク6から間隔a離れた位置に円形の可動識別マーク7が表れている形態(図2(a))を複数の画素データで表した第1操作特徴パターンと、間隔4aの一対の固定識別マーク6間の中央に可動識別マーク7が表れている形態を複数の画素データで表した第2操作特徴パターンと、左側の固定識別マーク6から間隔a離れた位置に可動識別マーク7が表れている形態を複数の画素データで表した第3操作特徴パターンとが記憶されている。
【0039】
比較回路14は、始めに、上記画像処理回路19から出力された画像データに固定識別マーク6の形態が含まれているかどうかを、特徴パターン記憶部15から読み出した待機時特徴パターンと比較し、待機時特徴パターンが一部に含まれた画像データを抽出した場合には、待機時検出信号を特徴抽出記憶部16へ出力する。同時に、比較回路14では、待機時特徴パターンに一致すると判別した画像データにおいて、一対の固定識別マーク6の形態を表す画素データの位置から、リモコン2とTV3との距離やリモコン2のTV3に対する姿勢を算出しておく。これにより、その後に比較回路14に入力される画像データに対して、固定識別マーク6や可動識別マーク7を表す形態の比率や姿勢を予測でき、後述する第1乃至第3操作特徴パターンや異なる位置に移動する待機時特徴パターンとの比較をより正確に迅速に実行することができる。
【0040】
比較回路14は、待機時特徴パターンが一部に含まれた画像データを抽出しない限り、ステータス信号の周期で画像処理回路19から入力される画像データについて、同様に待機時特徴パターンと比較する。一方、待機時検出信号を出力した後は、その後に画像処理回路19から入力される画像データについて、順次、特徴パターン記憶部15から読み出す第1乃至第3操作特徴パターンを比較する。第1乃至第3操作特徴パターンのいずれか若しくは2以上の第1乃至第3操作特徴パターンが画像データの一部に含まれている場合には、含まれていた第1乃至第3操作特徴パターンから入力操作内容が判別され、入力操作内容を表す操作データを含む操作時検出信号が特徴抽出記憶部16に出力される。
【0041】
例えば、図2(a)に示すように、右側の操作ボタン4が押し下げられると、比較回路14には、図2(c)に示すような画像データが入力され、その一部に、一対の縦長帯状の形態の間隔4xに対して、その一側からxの間隔で円形の形態を表す画素データが含まれていることから、間隔4aの一対の固定識別マーク6間の右側の固定識別マーク6から間隔a離れた位置に円形の可動識別マーク7が表れている形態の特徴を表す第1操作特徴パターンが含まれていると判定され、右側の操作ボタン4の入力操作を表す操作データを含む操作時検出信号が特徴抽出記憶部16に出力される。
【0042】
特徴抽出記憶部16は、入力された待機時検出信号を記憶し、所定時間内に操作時検出信号が入力された場合には、リモコン2の操作ボタン4、4、4が入力操作され、可動識別マーク7がケース5の前面5aに表れたとものと判別し、その操作時検出信号をデコーダ17へ出力する。画像データに含まれていた第1乃至第3操作特徴パターンを表す操作時検出信号の操作データは、6通りのデータであり、それぞれリモコン2の3個の操作ボタン4、4、4のいずれか若しくは2以上の操作ボタン4、4、4を押し下げ操作することによる6種類の入力操作の組合せに対応する。従って、デコーダ17は、入力された操作時検出信号に含まれる操作データから、操作データの内容に対応させた制御データを生成し、その出力側に接続された制御部18へ出力する。
【0043】
制御部18は、デコーダ17から入力された制御データに従ってTV3の各動作、例えば、電源のON、OFF、音量の増減、受信チャンネルの増減の制御を実行する。
【0044】
また、本実施の形態に係るTV3は、リモコン2自体の移動操作により、表示部10に表示される複数の制御メニューへカーソルを移動制御可能とし、図5に示すように、選択したいずれかの制御メニュー上にカーソルを移動させた後に、操作ボタン4を押し下げ操作し、選択した制御メニューの制御内容でTV3の動作を遠隔制御する機能を備えている。
【0045】
ここでは、例えば、図2(a)に示す右側の操作ボタン4が押し下げられた際に、デコーダ17からカーソル30を表示部10へ表示させる制御データがデコーダ17に接続する表示制御部20に出力され、表示制御部20による制御によって表示部10の所定位置にカーソル30と、複数の制御メニュー31が表示される。
【0046】
図4に示すように、クロック発生回路12の出力側には、クロック信号をカウントし、分周器13から出力されるステータス信号の入力によりカウント値がリセットされるカウンタ21が接続され、カウンタ21から出力されるカウント値は、比較回路14へ出力される。ステータス信号は、画像処理回路19から比較回路14に出力される1画面毎の画像データを区切るものであり、比較回路14に入力される画像データの各画素データは、クロック信号に同期するものであることから、カウンタ21から出力されるカウント値は、各画素データが一画面を構成する画像データのうち何番目の画素データであるかを表す。
【0047】
比較回路14が、入力される画像データの一部に第1操作特徴パターンが含まれていることを判別した場合には、上述した図2(a)に示す右側の操作ボタン4が入力操作された場合であるので、リモコン2の移動に連動させてカーソル30を移動させるために、その後に入力される画像データ毎に、待機時特徴パターンを表す画素データの位置をカウント値で座標検出回路22へ順次出力する。すなわち、待機時特徴パターンを形成する画素データの一画面の画像データ内の位置を、カウンタ21から入力されるカウント値で表し、座標検出回路22へ出力する。
【0048】
座標検出回路22は、入力したカウント値を、一画面内の位置を直交座標系のxy座標に変換し、表示制御部20とデコーダ17へ出力する。待機時特徴パターンは、入力操作により変化しないリモコン2と一体の形態であるので、座標検出回路22から出力されるxy座標は、CCD11で撮像する一画面中のリモコン2の位置を示している。
【0049】
表示制御部20は、入力されるxy座標に相当する表示部10の所定位置にカーソル30を表示する。従って、リモコン2自体をTV3、すなわちCCD11に対して相対移動させると、待機時特徴パターンを形成する画素データの画像データ中の位置も同様に移動し、座標検出回路22から出力されるxy座標が表す位置も、リモコン2の相対移動に相似して移動し、表示部10に表示されるカーソル30は、リモコン2の相対移動操作に応じて移動制御される。
【0050】
操作者が、リモコン2を相対移動し、表示部10に表示される複数の制御メニュー31から、操作者が制御しようとする制御メニュー31(図5の表示では4chに受信チャンネルを設定する制御メニュー)上へカーソル30を移動制御した後、再び、図2(a)に示す右側の操作ボタン4を入力操作すると、比較回路14は、新たに入力される画像データの一部に第1操作特徴パターンが含まれていることを判別するので、右側の操作ボタン4の入力操作を表す操作データを含む操作時検出信号がデコーダ17に出力される。
【0051】
デコーダ17は、この操作時検出信号の入力により、座標検出回路22からxy座標が入力されている場合には、そのxy座標でカーソル30の表示位置に示される制御メニュー31の制御データ、ここでは4chに受信チャンネルを設定する制御データを生成し、その出力側に接続された制御部18へ出力する。制御部18は、デコーダ17から入力された制御データに従って、TV3の制御を実行する。
【0052】
図6は、第2実施の形態に係るリモコン40の正面図であり、中空直方体状のケース41の前面41aの長手方向両隅に一対の円形固定識別マーク42、42と、ケース41の中空内部に立設して取り付けられた3個の可動識別マーク43、43、43と、ケース41の平面に出没自在に取り付けられた3個の操作ボタンにそれぞれ連動する手動操作機構(図示せず)とを備えている。操作ボタン、操作ボタンの入力操作により可動識別マーク43の形態を可変させる手動操作機構、被制御機器の各構成は、第1実施の形態に係る構成と同一であるので、同一番号を用いてその説明を省略する。
【0053】
図示するように、各可動識別マーク43は、ケース41の前面41aに長手方向に沿って間隔cで穿設された3個の円形窓孔41b、41b、41bの内方から前方に臨むように、ケース41に取り付けられ、一対の固定識別マーク42、42は、それぞれ円形の中心が、両側の円形窓孔41b、41bから長手方向にc、短手方向に0.7c離れた位置に固着表示されている。
【0054】
従って、このリモコン40によれば、正常な姿勢で、操作ボタン4の入力操作により表れる可動識別マーク43の短手方向の位置は、一対の固定識別マーク42、42を結ぶ直線上から0.7c下方に変位しているので、被制御機器3のデコーダ17に入力される画像データに含まれるこれらの形態の相対位置から、リモコン40の鉛直方向の姿勢を検出でき、リモコン40が表裏いずれの向きで操作されても、デコーダ17において、画像データに含まれる待機時特徴パターンや操作特徴パターンを抽出できる。
【0055】
また、リモコン40の一対の固定識別マーク42、42の形状や、可動識別マーク43との間隔が、リモコン2と異なるので、各形態に応じた特徴パターンを特徴パターン記憶部15へ記憶し、比較回路14で画像データと比較することにより、複数の操作者がそれぞれのリモコン2、40を用いてゲーム機などの同一の被制御機器3を遠隔制御する場合にも、各リモコン2、40毎の入力操作を判別して検出することができる。
【0056】
図7は、本発明の第3実施の形態に係るリモコン50と被制御機器60を示す要部説明図であり、被制御機器60は、表示部10の上方に、リモコン50に対向する後方に向けて赤外光を発光する赤外発光素子61が取り付けられ、CCD11の受光面側に赤外光のみを通過させる赤外透過フィルタ62が取り付けられている。また、リモコン50には、固定識別マーク51と可動識別マーク(図示せず)の表面に、散乱反射板52が固着されている他は、第1実施の形態と同一であるので、同一番号を付してその説明を省略する。
【0057】
このように構成されたリモコン50と被制御機器60によれば、リモコン50の操作ボタン4を入力操作したり、リモコン50を移動操作した際に、赤外発光素子61から発光される赤外光が固定識別マーク51と可動識別マークの表面の散乱反射板52で反射し、被制御機器60の赤外透過フィルタ62を通過して、CCD11に受光されるので、他の波長の光と区別して、固定識別マーク51や可動識別マークの形態を表す赤外光のみによって、画像データが生成される。従って、デコーダ17における認識率が向上し、夜間でもリモコン50の入力操作を検出できる。
【0058】
上述の実施の形態では、固定識別マーク6、42を、リモコンのケース5、41、51の前面に固着しているが、ケース5、41、51に対して変化しない形態であれば、ケース5、41、51自体の輪郭や凹凸形状を固定識別マークとしてもよい。
【0059】
また、可変識別マーク7、43の形態を可変させる手段は、電力を用いずにその形態を可変できるものであれば、上述の手動操作機構8に限らない。例えば、可変識別マーク7、43をケース5、41に対して相対移動させる手動操作機構を用い、入力操作によって固定識別マーク6、42に対する可変識別マーク7、43の相対位置を可変させるものであってもよい。
【0060】
更に、固定識別マーク6、42や可変識別マーク7、43を緑色等の特定色で着色し、画像処理回路19で画像データから緑色の画素のみを抽出し、その形態を待機時特徴パターンや操作特徴パターンと比較してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、電源を要しないリモートコントローラによって被制御機器を遠隔制御するリモートコントロールシステムに適している。
【符号の説明】
【0062】
1 リモートコントロールシステム
2 リモートコントローラ(リモコン)
3 被制御機器(TV)
4 操作ボタン
5 ケース
6 固定識別マーク
7 可変識別マーク
8 手動操作機構
8b 遮蔽カバー
10 表示部
11 撮像手段(CCD)
14 比較手段(比較回路)
15 特徴パターン記憶部
18 制御手段(制御部)
20 カーソル制御手段(表示制御部)
22 位置検出手段(座標検出回路)
52 散乱反射部材(散乱反射板)
61 発光手段(赤外発光素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモートコントローラへの操作者の入力操作に応じて、被制御機器の動作を遠隔制御するリモートコントロールシステムであって、
前記リモートコントローラは、
操作者の手動入力操作に応じて、可変識別マークの形態をケースの表面で変化させる手動操作機構を備え、
前記被制御機器は、
対向するリモートコントローラのケースの表面を含む画像を連続して撮像し、撮像する毎に画像データとする撮像手段と、
ケースの表面で変化する可変識別マークの少なくとも変化前の第1特徴パターンと変化後の第2特徴パターンを記憶する特徴パターン記憶部と、
撮像手段が生成する画像データ毎に、特徴パターン記憶部に記憶された第1特徴パターン及び/又は第2特徴パターンを比較し、前記第1特徴パターンを含む第1画像データと、前記第2特徴パターンを含む第2画像データとを抽出する比較手段と、
比較手段が前記第1画像データを抽出した所定時間後に、前記第2画像データを抽出した際に、前記第1特徴パターン及び前記第2特徴パターンとの組合せに関連づけられた制御データを生成する制御手段とを備え、
操作者が可変識別マークを可変表示させる前記リモートコントローラへの手動入力操作に応じて、被制御機器の動作を制御データにより遠隔制御することを特徴とするリモートコントロールシステム。
【請求項2】
リモートコントローラは、可変識別マークの形態が変化するケースの表面に、固定形態の固定識別マークが表示され、
前記手動操作機構は、手動入力操作に応じて、ケースに移動自在に取り付けられる操作ボタンと、操作ボタンに連動して遮蔽カバーを可変識別マークの表面側に進退移動させる連動機構とを有し、
特徴パターン記憶部は、固定識別マークと可変識別マークとの形態からなる特徴パターンと、遮蔽カバーで可変識別マークが覆われ、固定識別マークのみの形態からなる特徴パターンのいずれか一方を前記第1特徴パターンと、他方を前記第2特徴パターンとして記憶することを特徴とする請求項1に記載のリモートコントロールシステム。
【請求項3】
リモートコントローラは、可変識別マークの形態が変化するケースの表面に、固定形態の固定識別マークが表示され、
手動操作機構は、手動入力操作に応じて、ケースに移動自在に取り付けられる操作ボタンと、操作ボタンに連動して可変識別マークを第1表示位置と第2表示位置との間で往復移動させる連動機構とを有し、
特徴パターン記憶部は、固定識別マークと第1表示位置の可変識別マークとの形態からなる前記第1特徴パターンと、固定識別マークと第2表示位置の可変識別マークの形態からなる前記第2特徴パターンを記憶することを特徴とする請求項1に記載のリモートコントロールシステム。
【請求項4】
被制御機器は、
被制御機器の動作を制御する複数の制御内容と、複数の制御内容から特定の制御内容を選択する為のカーソルを表示する表示部と、
撮像手段が生成する画像データから、画像データ内の固定識別マークを表す画素データの位置を検出する位置検出手段と、
表示部に表示されるカーソルの表示位置を制御するカーソル制御手段とを更に備え、
位置検出手段は、比較手段が第1画像データ若しくは第2画像データを抽出した後、撮像手段が生成する画像データ毎に、その画像データ内の固定識別マークを表す画素データの位置を検出し、 カーソル制御手段は、位置検出手段が検出する画素データの位置に応じてカーソルの表示位置を制御することを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載のリモートコントロールシステム。
【請求項5】
被制御機器は、対向するリモートコントローラに向けて赤外光を発光する発光手段を更に備え、
撮像手段は、可変識別マークの表面に形成された散乱反射部材により反射される反射光を含む前記赤外光による画像を撮像し、画像データとすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリモートコントロールシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−165086(P2010−165086A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5375(P2009−5375)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】