説明

リヤマスタシリンダを備えた鞍乗り型車両

【課題】後輪懸架用のスイングアームを支持するピボットフレームの後方にリヤマスタシリンダを備えた鞍乗り型車両において、リヤマスタシリンダ用のリザーバタンクへの外乱の影響を効率よく抑える。
【解決手段】リヤマスタシリンダ25に作動油を補給するリザーバタンク61を、ピボットフレーム8とリヤマスタシリンダ25との間に配置する。スイングアーム31における前記リザーバタンク61に隣接する部位を車体内側に凹ませると共に、前記リザーバタンク61を前記リヤマスタシリンダ25よりも車体内側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、後輪懸架用のスイングアームを支持するピボットフレームの後方にリヤマスタシリンダを備えた自動二輪車等の鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記鞍乗り型車両において、リヤマスタシリンダに作動油を補給するリザーバタンクを、リヤマスタシリンダの後方に一体に設けたり、リヤマスタシリンダの後方かつ上方に離間して配置したものがある(例えば、特許文献1〜3参照。)
【特許文献1】特開2002−178906号公報
【特許文献2】特開2002−200996号公報
【特許文献3】特開平11−301566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の構成においては、リヤマスタシリンダの後方にリザーバタンクを配置することで、該リザーバタンクが路面からの巻き上げ等の影響を受け易くなる場合があるため、このような点の改善が要望されている。
そこでこの発明は、後輪懸架用のスイングアームを支持するピボットフレームの後方にリヤマスタシリンダを備えた鞍乗り型車両において、リヤマスタシリンダ用のリザーバタンクへの外乱の影響を効率よく抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、後輪懸架用のスイングアーム(例えば実施例のスイングアーム31)を支持するピボットフレーム(例えば実施例のピボットフレーム8)の後方にリヤマスタシリンダ(例えば実施例のリヤマスタシリンダ25)を備えた鞍乗り型車両(例えば実施例の自動二輪車1)において、前記リヤマスタシリンダに作動油を補給するリザーバタンク(例えば実施例のリザーバタンク61)を、前記ピボットフレームとリヤマスタシリンダとの間に配置したことを特徴とする。
【0005】
請求項2に記載した発明は、前記スイングアームにおける前記リザーバタンクに隣接する部位を車体内側に凹ませると共に、前記リザーバタンクを前記リヤマスタシリンダよりも車体内側に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載した発明によれば、リザーバタンクがピボットフレーム及びリヤマスタシリンダに前後から挟まれることで、リザーバタンクへの外乱の影響を効率よく抑えることができる。また、ピボットフレームとリヤマスタシリンダとの間の空間を有効利用できると共に、リザーバタンクを車体中心に近付けてマスの集中に寄与できる。
【0007】
請求項2に記載した発明によれば、リザーバタンクへの外乱の影響をより一層抑えると共に、リヤマスタシリンダ周辺の車体幅を抑え、ひいてはリヤマスタシリンダ近傍のステップ周辺の車体幅を抑えて車体のスリム感を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施例について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ車両における向きと同一とする。また、図中矢印FRは車両前方を、矢印LHは車両左方を、矢印UPは車両上方をそれぞれ示す。
【0009】
図1に示すように、自動二輪車1(鞍乗り型車両)の前輪2を軸支する左右フロントフォーク3の上部は、ステアリングステム4を介して車体フレーム5前端部のヘッドパイプ6に操舵可能に枢支される。ヘッドパイプ6からは左右メインフレーム7が斜め下後方に延び、これらの後端部が左右ピボットフレーム8の上端部にそれぞれ連なる。左右ピボットフレーム8には、後輪9を懸架するスイングアーム式リヤサスペンション10が支持される。
【0010】
車体フレーム5の内側には、自動二輪車1の原動機であるエンジン11が搭載される。エンジン11は、例えばクランク軸線を車幅方向(左右方向)に沿わせた並列四気筒エンジンであり、そのクランクケース12上にシリンダ13を立設してなる。エンジン11の出力は、クランクケース12の後部左側から例えばチェーンドライブ式の伝動機構を介して後輪9に伝達される。
【0011】
シリンダ13の後部には各気筒に対応するスロットルボディ14が接続され、シリンダ13の前部には各気筒に対応する排気管15が接続される。各排気管15は適宜屈曲しつつクランクケース12下に取り回され、これらが車体下部に配置されたサイレンサ16の前端部に接続される。サイレンサ16は、クランクケース12下から後方に延びた後に斜め後上方に立ち上がり、後輪9の前部側方において斜め後上方に向けて排気口を開口する。
【0012】
左右フロントフォーク3の上端部(又はステアリングステム4)には操舵用のハンドル17が取り付けられる。左右ピボットフレーム8の斜め後上方には運転者用のシート18が配置される。左右ピボットフレーム8の後方にはそれぞれ運転者用の左右ステップ19が配置される。運転者は、車体に跨ってシート18上に着座し、左右ステップ19にそれぞれ左右の足を載せ、ハンドル17の左右グリップ17aにそれぞれ左右の手をかけた乗車姿勢をとる。
【0013】
ハンドル17の右グリップ17aには、例えば前輪制動装置の油圧発生源であるフロントマスタシリンダ21が取り付けられる。右グリップ17aの前方にはフロントマスタシリンダ21操作用のブレーキレバー22が配置され、このブレーキレバー22を運転者が右グリップ17aにかけた手で握り込むことで、フロントマスタシリンダ21内に油圧が発生し、該油圧が不図示のブレーキホース等を経て左右フロントフォーク3の下端部にそれぞれ支持された左右フロントブレーキキャリパ23に伝達され、該左右フロントブレーキキャリパ23が前輪2両側にそれぞれ支持された左右フロントブレーキロータ24を挟圧してその回転を制動する。
【0014】
一方、右ステップ19の近傍には、例えば後輪制動装置の油圧発生源であるリヤマスタシリンダ25が配置される。右ステップ19の前方にはリヤマスタシリンダ25操作用のブレーキペダル26が配置され、このブレーキペダル26を運転者が右ステップ19に乗せた足で踏み込むことで、リヤマスタシリンダ25内に油圧が発生し、該油圧がブレーキホース27等を経てスイングアーム31の後端部右側に支持されたリヤブレーキキャリパ28に伝達され、該リヤブレーキキャリパ28が後輪9右側に支持されたリヤブレーキロータ29を挟圧してその回転を制動する。
【0015】
スイングアーム式リヤサスペンション10は、先端側(後端側)で後輪9を軸支するスイングアーム31の基端部(前端部)を、上下に延在する左右ピボットフレーム8の上下中間部に、これらを車幅方向(左右方向)に沿って貫通するピボット軸32を介して上下揺動可能に取り付け、このスイングアーム31の下部に設けたアーム下支持部31aと左右ピボットフレーム8の下端部(ピボット軸32よりも下方となる部位)に設けたフレーム下支持部8aとに跨ってリンク機構33を取り付け、これらスイングアーム31及びリンク機構33の作動により、スイングアーム31の基端側に配置したクッションユニット34を伸縮させて路面からの反力を吸収、減衰する。
【0016】
図2,3を併せて参照し、スイングアーム31は、左右に延在し前記ピボット軸32を挿通してこれに相対回転可能に支持されるピボットパイプ35と、前後に延在してピボットパイプ35の左右端部後側にそれぞれ前端を連結する左右アーム36,37と、ピボットパイプ35と後輪9との間に位置して左右アーム36,37の前部間を連結するクロスメンバ38とを有してなる。左右アーム36,37は縦長の長方形状の断面を有して前後に延び、クロスメンバ38は略正方形状の断面を有して左右に延びる。ピボットパイプ35、左右アーム36,37及びクロスメンバ38は、溶接等により一体に接合されている。
【0017】
スイングアーム31の右アーム37は、側面視で上方に凸のへの字状に湾曲した所謂ガル形状とされる。右アーム37の湾曲頂部はピボットフレーム8と後輪9前端との間に位置し、該湾曲頂部の車幅方向内側にクロスメンバ38の右端部が接合される。左右アーム36,37は、これらの後部間に後輪9が配置されることから、ピボットパイプ35側に対して後部間の相互間隔が広がるように設けられる。なお、左右アーム36,37は、エンジン排気系やドライブチェーン等の周辺部品の配置の都合上、左右非対称の構成とされる。
【0018】
図3を参照し、クロスメンバ38は、その後部形状が平面視(上面視)で後輪9の外形に沿うように前方に凸の円弧状に形成され、後輪9を避けつつ左右アーム36,37との接合部における応力集中を緩和している。また、クロスメンバ38は、その左右端部前側にそれぞれ前方へ延出する左右延出部38a,38bを形成し、そのうちの左延出部38aは右延出部38bよりも大きく前方に延出してピボットパイプ35に突き当たることで、チェーン式伝動機構からの反力に対する剛性を高めている。クロスメンバ38の左右延出部38a,38bの上方には、それぞれ左右マウント部39a,39bが一体形成され、該左右マウント部39a,39bが前記クッションユニット34の上端部を支持するアッパーアマウント39を構成している。
【0019】
図2を参照し、クッションユニット34は、ロッド式のダンパーと該ダンパーの周囲を巻回するコイルスプリングとを主になり、スイングアーム31の基端側において概ね上下に延在するように配置される。クッションユニット34の上端部は前記アッパーアマウント39に対する上連結部41とされ、クッションユニット34の下端部はリンク機構33のクッション支持部33aに対する下連結部42とされる。
【0020】
クッションユニット34の上端部(上連結部41)の後方には、例えばクッションユニット34の伸び側の減衰力を調整する上アジャスタ43aが連設され、該上アジャスタ43aの後方には、前記ダンパー内の作動油や圧縮ガス等を封入するサブタンク43bが連設される。サブタンク43bは円筒状の外観をなし、クッションユニット34の上端部から斜め上後方に突出する。なお、下連結部42の近傍には、例えばクッションユニット34の縮み側の減衰力を調整する下アジャスタ43cが設けられる。
【0021】
リンク機構33は、スイングアーム31のアーム下支持部31aに車幅方向に沿う連結軸を介して揺動可能に軸支される第一リンク44と、ピボットフレーム8の前記フレーム下支持部8aに車幅方向に沿う連結軸を介して揺動可能に軸支される第二リンク45とを有してなる。なお、フレーム下支持部8aは、左右ピボットフレーム8の下端部間に渡るロアクロスメンバ46の中間部に設けられる。
【0022】
第一リンク44は側面視で略三角形状をなし、その各頂部が他部品との連結部とされる。第一リンク44の後部上側に位置する第一連結部44aは、クッションユニット34よりも後方に位置する前記アーム下支持部31aに車幅方向に沿う連結軸を介して連結され、第一リンク44の前端部に位置する前記クッション支持部33aは、クッションユニット34の前記下連結部42に車幅方向に沿う連結軸を介して連結される。
【0023】
第一リンク44の後部下側に位置する第二連結部44bには、前後に延在する棒状の第二リンク45の後端部が車幅方向に沿う連結軸を介して揺動可能に連結され、該第二リンク45の前端部は、ピボットフレーム8下の前記フレーム下支持部8aに車幅方向に沿う連結軸を介して連結される。
【0024】
そして、スイングアーム31が後輪9車軸を上下に移動させるように車体フレーム5に対してピボット軸32回りに揺動すると、第二リンク45を介して車体に連結される第一リンク44が、そのクッション支持部33aを上下に移動させるようにスイングアーム31に対して揺動する。
これにより、クッションユニット34がスイングアーム31の揺動に伴い伸縮し、路面からの衝撃や振動が前記コイルスプリングの伸縮エネルギーに変換されると共に、該エネルギーが前記ダンパーの伸縮により減衰されて穏やかに吸収される。
【0025】
また、上記スイングアーム式リヤサスペンション10においては、クッションユニット34が車体フレーム5のピボット軸32よりも上方の部位に支持されないことで、スイングアーム作動時のクッション荷重が車体フレーム5のピボット軸32よりも上方の部位に入力されず、スイングアーム作動時の車体挙動への影響が抑えられる。
これにより、車体フレーム5におけるピボット軸32よりも上方に位置するアッパクロスメンバ47を、クッション荷重を受ける強固なものとする必要が無く、当該部位の過度な剛性が不要となって、車体フレーム5全体の剛性設計自由度の向上及び重量軽減を図ると共に、前記アッパクロスメンバ47の小型化による他部品のレイアウト自由度の向上を図ることができる。
【0026】
図1,2を参照し、左右ピボットフレーム8は、それぞれ左右メインフレーム7の後端部から下方に湾曲するように連続的に設けられる。また、左右ピボットフレーム8は、左右メインフレーム7の後端部から下方に向けて概ね上下方向に沿うように(詳細には下側がやや前側となるように若干傾斜して)延出する。左右ピボットフレーム8の上下中間部の前側には、ピボット軸32の左右端部をそれぞれ支持するピボット支持部48が設けられ、左右ピボットフレーム8の上端部の前側(メインフレーム7との間の湾曲部の内周側)には、エンジン11のクランクケース12の後端部上側を支持する上マウント部49aが設けられ、左右ピボットフレーム8の下端部の前側には、エンジン11のクランクケース12の後端部下側を支持する下マウント部49bが設けられる。
【0027】
左右ピボットフレーム8の上下中間部の後側(ピボット支持部48の後方)には、左右ステップブラケット51の前端部の上下をそれぞれ支持する上下ステップ支持部48aが設けられる。上下ステップ支持部48aは、左右ピボットフレーム8の後縁から後方へ張り出し、該後縁上に側面視円形の座面を形成する。
【0028】
左右ステップブラケット51は、左右ピボットフレーム8の後縁に沿う前端縁から後方へ側面視三角形状に突出してなり、その後端部(突出頂部)には斜め下後方へ突出するステップ本体支持部52が設けられる。一方、左右ステップブラケット51の前端部の上下には、それぞれ前記前端縁から前方へ張り出す側面視円形の上下ブラケット固定部51aが設けられる。
【0029】
図2,3を参照し、左右ステップブラケット51は、上下ブラケット固定部51aの車幅方向内側(以下、車体内側という)の面が上下ステップ支持部48aの車幅方向外側(以下、車体外側という)の面に当接し、これらに車幅方向に沿うボルト53が車体外側から挿通され、該ボルト53の先端部が上下ステップ支持部48aのネジ孔に螺着し締め込まれることで、左右ピボットフレーム8にそれぞれ固定される。上下ステップ支持部48aは、前記座面を車体内側に変位させ、上下ブラケット固定部51aの車体外側の面とピボットフレーム8の車体外側の面とを略面一とする。
【0030】
図3,4を参照し、左右ステップブラケット51のステップ本体支持部52の車体外側には、それぞれ後下がりに傾斜する連結軸52aを介して左右ステップ19の基端部を支持する互いに平行な一対の支持壁52bが立設される。左右ステップ19は、左右ステップ本体支持部52からそれぞれ車体外側に略水平に突出する棒状とされ、その先端側を上方に移動させる側にのみ揺動可能に左右ステップ本体支持部52に支持される。なお、右ステップブラケット51におけるステップ本体支持部52の斜め後上方には、前記サイレンサ16の上部を支持するサイレンサ支持部52cが設けられる。
【0031】
右ステップブラケット51の上方には、前記リヤマスタシリンダ25等を支持するシリンダ支持部54が上方に向けて突設される。シリンダ支持部54は、側面視で前後に狭い三角形状をなし、その上部後側の部位には、その後縁が斜め上後方に変位することで所定の前後幅が確保され、当該部位の上下にそれぞれ上下ボルト挿通孔が形成される。
【0032】
図5を併せて参照し、リヤマスタシリンダ25は、概ね上下方向に沿って(詳細には下側がやや前側となるように若干傾斜して)配置される筒状のもので、右ステップ19の上方かつ車体内側に配置される。リヤマスタシリンダ25におけるシリンダ本体55の上下には、それぞれ上下シリンダ固定部55aが前方に向けて突設される。これら上下シリンダ固定部55aの車体外側の面がシリンダ支持部54の上部後側の車体内側の面に当接し、これらに車幅方向に沿うボルト56が車体外側から挿通され、該ボルト56の先端部に車体内側からナット56aが螺着し締め込まれることで、シリンダ支持部54にリヤマスタシリンダ25のシリンダ本体55が固定される。なお、シリンダ支持部54の上下ボルト挿通孔の車体外側には座刳りが形成されている。
【0033】
シリンダ支持部54の上部の後方には、リヤマスタシリンダ25のシリンダ本体55を車体外側から覆う板状のガードプレート57が設けられる。ガードプレート57は、シリンダ支持部54の上部後縁から斜め上後方に延びる側面視略平行四辺形状のもので、その車体外側の面をシリンダ支持部54の車体外側の面よりもやや車体外側に位置させる。このガードプレート57の車体外側の面は、前記リヤマスタシリンダ25をシリンダ支持部54に固定するボルト56の頭部の車体外側の端面と略面一とされる。
【0034】
ガードプレート57の前方には、その前縁から車体内側に変位した後に前方に延びるフランジ部57aが設けられる。フランジ部57aは、シリンダ支持部54の上部後側とリヤマスタシリンダ25の上下シリンダ固定部55aとの間に挟持され、この状態で前記ボルト56及びナット56aが締め込まれることで、ガードプレート57がリヤマスタシリンダ25と共にシリンダ支持部54に固定される。
【0035】
リヤマスタシリンダ25の下側には、シリンダ本体55内のマスタピストンを押圧可能なプッシュロッド58aが下方に向けて突出する。プッシュロッド58aの先端部には、ブレーキペダル26の作用端部26dを連結可能なプッシュブラケット58が設けられる。プッシュブラケット58は、右ステップブラケット51の車体内側において右ステップ19の直ぐ後方に位置し、該プッシュブラケット58には、ブレーキペダル26後端側の作用端部26dが車幅方向に沿う連結軸を介して揺動可能に連結される。
【0036】
ブレーキペダル26は、その後側に位置する基端部26aが、右ステップブラケット51のステップ本体支持部52の車体内側において、車幅方向に沿う支持軸52dを介して揺動可能に支持される。ブレーキペダル26の支持軸52dは、例えば右ステップ19と略同軸に設けられているが、これらが互いに別軸に設けられてもよい。
【0037】
ブレーキペダル26の基端部26aからは、前方に向けてペダルアーム26bが延出すると共に、後方に向けて前記作用端部26dが突設される。ペダルアーム26bは、右ステップブラケット51の下方を車体外側に変位しながら前方に延び、その先端部には車体外側に向けてペダル部26cが突設される。ペダルアーム26bの延出長さは作用端部26dの突出量に対して十分に大きく、運転者が右ステップ19に乗せた足でペダル部26cを踏み込むと、その力が所定のレバー比で増大されて作用端部26dに伝わり、該作用端部26dがプッシュブラケット58及びプッシュロッド58aを押し上げてリヤマスタシリンダ25内に油圧を発生させる。
【0038】
リヤマスタシリンダ25の上端部には、ブレーキホース27の前端側のバンジョーアダプタ27aがバンジョーボルト27bを用いて固定される。図2を参照し、ブレーキホース27はスイングアーム31の右アーム37上を取り回され、その後端側のバンジョーアダプタ27cが右アーム37の後端部にキャリパブラケット28aを介して支持されたリヤブレーキキャリパ28の上端部にバンジョーボルト27dを用いて固定される。このブレーキホース27を介して、リヤマスタシリンダ25内に発生した油圧がリヤブレーキキャリパ28に伝達される。
【0039】
図4,5を参照し、リヤマスタシリンダ25の上部と右ピボットフレーム8の上部との間には、後輪制動装置の作動油(ブレーキフルード)を貯留するリザーバタンク61が配置される。リザーバタンク61はリヤマスタシリンダ25と別体式のもので、例えば半透明樹脂製の有底円筒状のタンク本体62の上部開口に黒色樹脂製のキャップ63を着脱可能に螺着してなる。なお、リザーバタンク61の後部には、タンク本体62の上部開口を閉塞したキャップ63の取り外しを規制するロック部材64が取り付けられる。
【0040】
リザーバタンク61(タンク本体62)の底部前側にはホースジョイント65aが前方に向けて突設され、該ホースジョイント65aに連通ホース65の一端側が取り付けられると共に、該連通ホース65の他端側がリヤマスタシリンダ25(シリンダ本体55)の上下中間部前側に突設されたホースジョイント65bに取り付けられ、もってリザーバタンク61内の作動油がリヤマスタシリンダ25内に供給可能となる。リザーバタンク61のホースジョイント65aはリヤマスタシリンダ25のホースジョイント65bよりも上方かつ前方に位置し、これら両ホースジョイント65a,65bを接続する連通ホース65は、前方に凸のU字状(J字状)に湾曲して配置される。
【0041】
図3を併せて参照し、リザーバタンク61は、その車幅方向の中心位置がリヤマスタシリンダ25の車幅方向の中心位置よりも車体内側にあり、かつリザーバタンク61の車体外側端は、リヤマスタシリンダ25の車体外側端よりも車体内側に位置している。また、リザーバタンク61の下部はリヤマスタシリンダ25の上端部と同一高さにあり、これらリザーバタンク61及びリヤマスタシリンダ25は、互いに前後に近接して配置されている。
【0042】
リザーバタンク61のタンク本体62の下方には、シリンダ支持部54の車体内側に固定された支持ブラケット66に対するタンク固定部62aが突設される。
図5,6に示すように、支持ブラケット66は、車幅方向と略直交する板状鋼板を適宜屈曲させてなり、シリンダ支持部54の車体内側において上下に延在する本体部67と、該本体部67の後方に延出する上下脚部68a,68bとを一体に有する。本体部67は、その上側が下側に対して車体内側に変位してなり、該本体部67の上側がリザーバタンク61を支持するタンク支持部67aを構成する。
【0043】
タンク支持部67aの車体外側の面にはタンク固定部62aの車体内側の面が当接し、これらに車幅方向に沿うボルト69(図4参照)が車体外側から挿通され、該ボルト69の先端部に車体内側からナット69aが螺着し締め込まれることで、リザーバタンク61が支持ブラケット66に固定される。タンク固定部62aの下方には回り止めピン62bが立設され、該回り止めピン62bが本体部67の上下間に形成された略水平な棚部67bに差し込まれる。
【0044】
上下脚部68a,68bは、本体部67の前縁から車体外側に変位した後に後方へ延びるもので、該上下脚部68a,68bがリヤマスタシリンダ25の上下シリンダ固定部55aに車体内側から当接し、これらが前記ボルト56及びナット56aにより締結されることで、支持ブラケット66がシリンダ支持部54に固定される。
なお、支持ブラケット66の上脚部68aは、車体内側に変位したタンク支持部67aから延出することから、本体部67下側から延出する下脚部68bよりも車体外側への変位量が大きくされる(図6参照)。また、支持ブラケット66のタンク支持部67aの前方には、連通ホース65とブレーキスイッチ73のハーネスとの干渉防止用の突出片68cが前方に向けて突設される。
【0045】
図4,5を参照し、右ステップブラケット51の車体内側には、前記サイレンサ16からの熱気を抑える鋼板製のヒートガード71が設けられる。ヒートガード71は、側面視で右ステップブラケット51の上方から下方に渡って設けられ、該ヒートガード71前側の上下中間部がステップブラケット51の下部の車体内側に、ヒートガード71上側の前後中間部が支持ブラケット66の本体部67下端のガード支持部67cに、それぞれゴムブッシュ72a,72bを介して弾性支持される。
【0046】
ステップブラケット51の車体内側には、棒状のブレーキスイッチ73が上下方向に沿うように(詳細には上側がやや前側に位置するように若干傾斜して)配置される。ブレーキスイッチ73のスイッチ本体73aの下端部からはプルロッド73bが突出し、該プルロッド73bがスイッチ本体73aに対して下方に引かれることで、ブレーキスイッチ73が通電状態となって車体後部のブレーキランプを点灯させる。
【0047】
プルロッド73bは、コイルスプリング73cを介してブレーキペダル26のペダルアーム26bに係合し、ブレーキペダル26が踏み込まれた際には、ブレーキスイッチ73が通電状態となって前記ブレーキランプを点灯させる。右ステップブラケット51の車体内側には、ブレーキスイッチ73のスイッチ本体73aを挿通し支持するリング状のスイッチ支持部74が設けられる(図3参照)。なお、符号75はブレーキペダル26を踏み込み前の状態に戻すべく付勢力を付与するリターンコイルスプリングを示す。
【0048】
リヤマスタシリンダ25及びリザーバタンク61は、支持ブラケット66を介して右ステップブラケット51(ステップ19及びブレーキペダル26含む)と一体的に取り扱うことが可能であり、これらを車体に対して一体的に着脱することが可能であり、さらにはこれらとガードプレート57及びヒートガード71とを車体に対して一体的に着脱することが可能である。
【0049】
図3に示すように、スイングアーム31の前部右側には、その車体外側に位置するリヤマスタシリンダ25及びリザーバタンク61を避けるべく、右アーム37の前部を車体内側に湾曲させてなる湾曲凹部76が形成される。この湾曲凹部76内にリヤマスタシリンダ25及びリザーバタンク61が車体外側から入り込むように配置されることで、当該部位周辺(換言すれば左右ステップ19周辺)の車体幅が抑えられる。なお、スイングアーム13の前部右側に湾曲凹部76を形成する都合上、前記クッションユニット34及びアッパーアマウント39の左右中心位置は、車体左右中心CLよりもやや左方に変位している。
【0050】
以上説明したように、上記実施例における自動二輪車1は、後輪懸架用のスイングアーム31を支持するピボットフレーム8の後方にブレーキ用リヤマスタシリンダ25を備えたものにおいて、前記リヤマスタシリンダ25に作動油を補給するリザーバタンク61を、前記ピボットフレーム8とリヤマスタシリンダ25との間に配置したものである。
【0051】
この構成によれば、リザーバタンク61がピボットフレーム8及びリヤマスタシリンダ25に前後から挟まれることで、リザーバタンク61への外乱の影響を効率よく抑えることができる。また、ピボットフレーム8とリヤマスタシリンダ25との間の空間を有効利用できると共に、リザーバタンク61を車体中心に近付けてマスの集中に寄与できる。
さらに、リザーバタンク61を一体に設けた専用のリヤマスタシリンダ25を使用する場合と比べて、既存の別体式のリザーバタンク61を使用でき、かつリザーバタンク61をリヤマスタシリンダ25に近接させて連通ホース65の長さを抑えることができ、もって自動二輪車1のコストダウンに寄与できる。しかも、リザーバタンク61をリヤマスタシリンダ25とピボットフレーム8との間に収めることで、その車体内側に位置するクッションユニット34等の他部品のメンテナンス性を向上させることができる。
【0052】
また、上記自動二輪車1においては、前記スイングアーム31における前記リザーバタンク61に隣接する部位を車体内側に凹ませると共に、前記リザーバタンク61を前記リヤマスタシリンダ25よりも車体内側に配置したことで、リザーバタンク61への外乱の影響をより一層抑えると共に、リヤマスタシリンダ25周辺の車体幅を抑え、ひいてはリヤマスタシリンダ25近傍のステップ19周辺の車体幅を抑えて車体のスリム感を向上できる。
【0053】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、例えば、リヤマスタシリンダ25は、後輪ブレーキ専用のものに限らず、前後連動ブレーキにおける一油圧発生源のものであってもよい。また、支持ブラケット66は、ガードプレート57と別体ではなく一体化されたものであってもよい。
さらに、エンジン11のクランクケース12の後端部にピボット支持部やリンク取り付け部を設け、これにスイングアーム31やリンク機構33を取り付けた構成であってもよい。また、ピボットフレーム8及びエンジン11の少なくとも一方にスイングアーム31やリンク機構33を取り付けた構成であってもよい。さらに、ピボットフレーム8とメインフレーム7とを別体とした構成であってもよい。
さらにまた、スイングアーム31は、左右一対のアーム36,37で後輪9を支持する両持ち式に限らず、左右一方のアームで後輪9を支持する片持ち式のものであってもよい。
そして、上記実施例における構成はこの発明の一例であり、自動二輪車の他に三輪又は四輪の車両にも適用できることはもちろん、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の実施例における自動二輪車の右側面図である。
【図2】上記自動二輪車のスイングアーム式リヤサスペンションの右側面図である。
【図3】上記スイングアーム式リヤサスペンションの上面図である。
【図4】上記自動二輪車の右ステップ周辺の右側面図である。
【図5】上記右ステップ周辺の左側面図である。
【図6】上記右ステップ近傍にリヤマスタシリンダ用のリザーバタンクを支持する支持ブラケットの斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
8 ピボットフレーム
25 リヤマスタシリンダ
31 スイングアーム
61 リザーバタンク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪懸架用のスイングアームを支持するピボットフレームの後方にリヤマスタシリンダを備えた鞍乗り型車両において、
前記リヤマスタシリンダに作動油を補給するリザーバタンクを、前記ピボットフレームとリヤマスタシリンダとの間に配置したことを特徴とするリヤマスタシリンダを備えた鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記スイングアームにおける前記リザーバタンクに隣接する部位を車体内側に凹ませると共に、前記リザーバタンクを前記リヤマスタシリンダよりも車体内側に配置したことを特徴とする請求項1に記載のリヤマスタシリンダを備えた鞍乗り型車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−56895(P2009−56895A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224697(P2007−224697)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】