説明

リリーフ弁装置

【目的】エンジンの低・中回転では効率化を図るために吐出圧と流量を低減させながらも、高回転では潤滑や冷却を確保するためにより多くの吐出圧と流量を確保することができるリリーフ弁装置とすること。
【構成】ハウジングAと、リリーフ弁4と、小径通路部21と大径通路部22とからなる弁通路2と、小径通路部21とハウジング外部Aとを連通する主排出流路33と、小径通路部21に連通する主リリーフ流路31と、大径通路部22に連通する補助リリーフ流路32と、補助リリーフ流路32に装着されるソレノイドバルブ6と、バネ8とからなること。ソレノイドバルブ6は、エンジン回転数の増減に応じて補助リリーフ流路32と大径通路部22との連通又は遮断のいずれか一方となるように切替制御され、遮断時には大径通路部22内のオイル排出が行われること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エンジン等のオイルポンプにおいて、エンジンの低・中回転では効率化を図るために吐出圧と流量を低減させながらも、高回転では潤滑や冷却を確保するためにより多くの吐出圧と流量を確保することができるリリーフ弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジン回転数の大小(高低)により、リリーフ圧を変化させるリリーフ弁は開示されている。従来技術である特許文献1(特開平5−26024号)では、エンジン回転数の大小(高低)により、第1リリーフ圧、第2リリーフ圧を設定している。特許文献1の 図2では、コイルスプリング17の付勢力に、油圧で抗する弁体15とピストン16
とからなる機械式のリリーフ弁と、ソレノイドバルブ19を有した、リリーフ弁が開示されている。
【0003】
弁体15とピストン16との間にコイルスプリング17が圧縮状態で介装され、エンジン回転数でソレノイドバルブ19のオン・オフ(on,off)を制御することにより、連通路18を介してピストン16への油圧がオン・オフされ、ピストン16が左右に動き、コイルスプリング17の取付け長が変化する。それにより機械式リリーフ弁のリリーフ圧の大きさも変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−26024号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、機械式リリーフ弁を2段階で作動させるために、スプリングの取付け長の長さを変えるという構成としている。そのスプリングの長さを変えるために、スプリングの左右両側から油圧を供給する手段をとっているが、その左右への油圧の掛け方の切替は、ソレノイドバルブでの油路の切替で行っている。機械式リリーフ弁の左右両側から油圧を供給するために、油路を左右両側に設ける必要があり、機械式リリーフ弁設置の全長が長くなってしまう。
【0006】
また、機械式リリーフ弁の構成が、弁体15とコイルスプリング17だけでなく、ピストン16も加わって構成部品点数が増えるため、その部品もレイアウト(設計)に組み込む必要があり、そのレイアウト分の機械式リリーフ弁設置の全長が長くなってしまう。
【0007】
さらに、弁体15及びピストン16と、油圧により可動する部品が二つあり、二つの可動する部品があるということは、それぞれの可動する部品の動作保証及び寸法保証をしなくてはならず、構造、機構が複雑になり、加工、組立ても高精度である必要があり、動作保証も難しくこのようなことからコストも上がってしまう。
【0008】
エンジン回転数が高回転のとき、機械式リリーフ弁の背面のピストン16に油圧を掛け、ピストン16を左に移動させ、スプリングの取付け長の長さを短くすることにより、第1リリーフ圧より高い第2リリーフ圧でのリリーフを行うようにしているが、そのピストン16に油圧を掛ける切替のとき、機械式リリーフバルブの前面の弁体15に油圧が掛かっている状態で、背面のピストン16を左に移動させるので、コイルスプリング17に前面、背面の両側から同時に油圧が掛かることになる。
【0009】
そのため弁体15、ピストン16の挙動が不安定になる可能性がある。本発明の目的(解決すべき技術的課題)は、車両用エンジン等のオイルポンプにおいて、エンジンの低・中回転では効率化を図るために吐出圧と流量を低減させながらも、高回転では潤滑や冷却を確保するためにより多くの吐出圧と流量を確保することができるリリーフ弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、ハウジングと、主受圧面を有する小径部と段差箇所を補助受圧面とした大径部とからなるリリーフ弁と、小径通路部と大径通路部とからなる弁通路と、前記小径通路部とハウジング外部とを連通する主排出流路と、前記小径通路部に連通する主リリーフ流路と、前記大径通路部に連通する補助リリーフ流路と、該補助リリーフ流路に装着されるソレノイドバルブと、前記リリーフ弁をリリーフ圧方向と反対方向に弾性付勢するバネとからなり、前記ソレノイドバルブは、エンジン回転数の増減に応じて補助リリーフ流路と前記大径通路部との連通又は遮断のいずれか一方となるように切替制御されると共に遮断時には前記大径通路部内のオイル排出が行われる構成としてなるリリーフ弁装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項2の発明を、請求項1において、前記補助リリーフ流路は、前記主リリーフ流路から分岐されてなるリリーフ弁装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記リリーフ弁の小径部の軸方向寸法は、前記小径通路部の通路全長よりも長く形成されてなるリリーフ弁装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項4の発明を、請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記リリーフ弁の内部には、前記主受圧面から前記大径部の外周側面に亘って連通する弁内流路が形成されてなるリリーフ弁装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項4において、前記大径通路部には予備排出流路が形成され、前記弁内流路の前記大径部側の流路開口は、前記予備排出流路に連通可能としてなるリリーフ弁装置としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、まず第1に動作保証する部品数は最少とし、構造、機構が簡易になり、加工、組立ても簡単になり、コストを低く抑えることができる。第2にエンジン回転数において、低回転域,中回転及び高回転域のそれぞれの回転領域において、最も適正な圧力のオイルを供給することができる。すなわち、低回転から中回転では効率化を図るために油圧オイルの吐出圧、流量を下げ、高回転域では潤滑や冷却用に必要な高い吐出圧、流量を確保でき、エンジンの信頼性を向上させることができる。
【0014】
請求項2の発明では、前記補助リリーフ流路は、前記主リリーフ流路から分岐される構成としたことにより、流路の構造を簡単にすることができ、より一層小型化を実現できる。請求項3の発明では、リリーフ弁の小径部の軸方向寸法は、前記小径通路部の通路全長よりも長く形成される構成としたので、小径通路部を大径通路部の小径通路部の境界付近に連通するのみで、補助受圧面はリリーフオイルを受圧し易い構造にすることができる。
【0015】
請求項4の発明では、前記リリーフ弁の内部には、前記小径部の受圧面から前記大径部の外周側面に亘って連通する弁内流路が形成されたことにより、リリーフオイルの一部が主受圧面から前記弁内通路を介して大径部の外周側面より弁通路(大径通路部)内に供給される。このオイルは、リリーフ弁と弁通路との間の隙間に満たされることにより、リリーフ弁が弁通路を移動する際の潤滑油としての役目を果たすことができる。
【0016】
請求項5の発明では、大径通路部には予備排出流路が形成され、前記弁内流路の前記大径部側の流路開口は、前記予備排出流路に連通可能としているので、万が一、ソレノイドバルブが故障したとしても、リリーフ弁によって2段回のリリーフが行え、装置の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態の構成及びエンジンのオイル供給回路を示す断面図、(B)は(A)の(ア)部拡大図、(C)は(A)のソレノイドバルブにおける(イ)部拡大図で接続流路と補助リリーフ流路とを開状態とした略示断面図、(D)は(A)のソレノイドバルブにおける(イ)部拡大図で接続流路と補助排出流路とを開状態とした略示断面図である。
【図2】(A)は本発明の第1実施形態の低回転域におけるリリーフオイルの作用を示す略示断面図、(B)はソレノイドバルブの作用を示す拡大略示断面図である。
【図3】(A)は本発明の第1実施形態の低回転域から中回転域に移行する過程におけるリリーフオイルの作用を示す略示断面図、(B)はソレノイドバルブの作用を示す拡大略示断面図である。
【図4】(A)は本発明の第1実施形態の中回転域におけるリリーフオイルの作用を示す略示断面図、(B)はソレノイドバルブの作用を示す拡大略示断面図である。
【図5】(A)は本発明の第1実施形態の高回転域におけるリリーフが行われないときの作用を示す略示断面図、(B)はソレノイドバルブの作用を示す拡大略示断面図である。
【図6】(A)は本発明の第1実施形態の高回転域におけるリリーフが行われたときの作用を示す略示断面図、(B)はソレノイドバルブの作用を示す拡大略示断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態の低回転域から高回転域に移行する過程を示すエンジン回転数と油圧の関係を示すグラフである。
【図8】(A)は本発明の第2実施形態の構成及びエンジンのオイル供給回路を示す断面図、(B)はリリーフオイルをリリーフ弁の潤滑油として使用したときの状態を閉めす要部拡大断面図、(C)及び(D)は第2実施形態のリリーフ作用を示すリリーフ弁の拡大略示図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明には、複数の実施形態が存在し、まず第1実施形態について説明する。本発明の構成は、主に、ハウジングA、ソレノイドバルブ6、リリーフ弁4、バネ8とからなる。ハウジングAの筐体1には、ソレノイドバルブ6が装着され、リリーフ弁4が収納される〔図1(A)参照〕。
【0019】
筐体1には、弁通路2,主リリーフ流路31,補助リリーフ流路32等が形成されている。前記弁通路2は、リリーフ弁4が収納される部位である。弁通路2は、内径の異なる円筒形状の小径通路部21及び大径通路部22とが同一軸線状に形成されている。具体的には、前記筐体1の表面対して開口側に直径寸法が大きい大径通路部22が形成され、その奥側に直径寸法が小さい小径通路部21が形成されている。
【0020】
そして、前記小径通路部21と前記大径通路部22との境目は、平坦な円周状の段差面部23が存在する。ここで、本発明において、上下方向は、特に限定されるものではないが、説明を理解し易いものとするために、弁通路2の通路方向を上下方向とし、該弁通路2の大径通路部22が小径通路部21よりも上方となるように設定した場合に、大径通路部22側を上方とする〔図1(A)参照〕。
【0021】
前記主リリーフ流路31は、筐体1の外部から前記弁通路2の小径通路部21下方側の先端面に向かって連通形成された流路である〔図1(A)参照〕。主リリーフ流路31は、前記弁通路2に対して直角方向に形成されているが、その形成状態については限定されない。主リリーフ流路31の先端箇所は、前記弁通路2の小径通路部21の先端面(奥側面)と連通するように形成されている。つまり、後述するリリーフ弁4の主受圧面41aがリリーフされるオイルの圧力を受け易いように構成されている。
【0022】
弁通路2の小径通路部21には、筐体1の外部に連通する主排出流路33が形成されている。該主排出流路33は、主リリーフ流路31から小径通路部21に流れ込んだリリーフオイルをオイルポンプに戻すための流路である。
【0023】
補助リリーフ流路32は、筐体1内部にて、前記主リリーフ流路31から分岐形成されたものである。補助リリーフ流路32には、前記主リリーフ流路31を流れるオイルの一部が流入するようになっている〔図1(C)参照〕。また、補助リリーフ流路32は、前記主リリーフ流路31から分岐されず、ハウジングA内に主リリーフ流路31とは、別の独立した流路で構成されることもある。ただし、この場合には、オイルポンプ91とエンジン92との間の循環流路において、補助リリーフ流路32は、主リリーフ流路31よりも下流側に位置している。
【0024】
補助リリーフ流路32の上方側先端(分岐する部位の反対側)には、ソレノイドバルブ室323が形成されている。該ソレノイドバルブ室323には、後述するソレノイドバルブ6の方向制御部61が収納される。ここで、ソレノイドバルブ6は、筐体1の外部から装着されるものであり、ソレノイドバルブ6の組付けのために、補助リリーフ流路32の上方側端部は筐体1の表面に貫通する。
【0025】
前記補助リリーフ流路32は、前記ド弁通路2の大径通路部22にソレノイドバルブ6を介して連通している。また、補助リリーフ流路32において、ソレノイドバルブ6と大径通路部22との間の流路を接続流路321と称する。該接続流路321は、補助リリーフ流路32に属するものであり、補助リリーフ流路32を構成する一部である。
【0026】
そして、補助リリーフ流路32は、前記ソレノイドバルブ6によって、大径通路部22と連通及び遮断のいずれか一方に切り替えられる構成となっている。さらに、補助リリーフ流路32から前記ソレノイドバルブ6を介して補助排出流路322が形成されている。該補助排出流路322は、オイルをポンプの吸入側に戻す役目をなす。前記接続流路321及び補助排出流路322の補助リリーフ流路32内側の開口は共にソレノイドバルブ室323の範囲内にまとめて形成されている。
【0027】
リリーフ弁4は、小径部41と大径部42とから構成され、共に円筒形状に形成されており、軸方向に沿って小径部41と大径部42とが一体形成されたものである。リリーフ弁4は、前記小径部41を下方とし、前記大径部42を上方として軸方向が垂直となる状態で使用される。小径部41の下端は、主受圧面41aであり、小径部41と大径部42との境目に形成される段差部が補助受圧面42aとなる。
【0028】
前記リリーフ弁4の軸方向寸法は、前記弁通路2の小径通路部21の通路全長よりも長く形成されている。具体的には、小径部41の軸方向全長が小径通路部21の全長よりも僅かに大きい寸法であればよい。これによって、弁通路2に収納されたリリーフ弁4は、補助受圧面42aと、弁通路2の段差面との間に常時空隙が生じることになり、補助受圧面42aは、リリーフオイルの圧力を受け易い構造にできる。
【0029】
ソレノイドバルブ6は、方向制御部61と電磁制御部62とから構成されている。方向制御部61は、補助リリーフ流路32のソレノイドバルブ室323内に収納され、電磁制御部62は、その一部が筐体1に形成された窪み状の設置部11に装着される。ソレノイドバルブ6の方向制御部61と、前記ソレノイドバルブ室323との間には、油路を密閉状に仕切るためのOリングが装着され、オイル漏れを防止する。ソレノイドバルブ6は、ハウジングAにねじ止め等の固定手段により固定される。
【0030】
前記ソレノイドバルブ6は、方向を制御する役目のバルブであり、方向制御部61を有し、該方向制御部61によって、前記補助リリーフ流路32,接続流路321及び補助排出流路322の間における流れ方向を制御する。方向制御部61は、接続流路321を常時オイルが流通可能となる基幹流路とし、該接続流路321と補助リリーフ流路32との連通、又は接続流路321と補助排出流路322との連通のいずれか一方を選択切り替えするものである。
【0031】
ソレノイドバルブ6の制御動作は、前記電磁制御部62によって行われる。また、接続流路321と補助リリーフ流路32との連通、又は接続流路321と補助排出流路322との連通いずれか一方が選択されているときは、他方の連通は遮断された状態であり、オイルの流通は不可能となっている。
【0032】
ソレノイドバルブ6の方向制御部61は、円筒形状をなしており、略同等直径の円筒空隙部であるソレノイドバルブ室323内に収納されている〔図1(A)参照〕。方向制御部61は、軸方向制御流路61aと、第1直径方向制御流路61bと、第2直径方向制御流路61cとを有している。軸方向制御流路61aは、方向制御部61の軸方向下端の端面にオイルが流入する開口を有しており、前記主リリーフ流路31を流れるオイルの一部が補助リリーフ流路32に流入するようになっている〔図1(C)参照〕。
【0033】
また、第1直径方向制御流路61b及び第2直径方向制御流路61cは、軸方向に沿って上下異なる2箇所に形成され、第1直径方向制御流路61bは下方に位置し第2直径方向制御流路61cは上方に位置する。第1直径方向制御流路61bと第2直径方向制御流路61cは、前記軸方向制御流路61aによって連通される。軸方向制御流路61aと下方側の第1直径方向制御流路61bとが交わる箇所は、弁室61dとして構成され、該弁室61dには球体状の弁部材64が収納されている〔図1(C),(D)参照〕。
【0034】
下方側の第1直径方向制御流路61bは、前記接続流路321と連通するようになっている。また、上方側の第2直径方向制御流路61cは前記補助排出流路322と連通している。さらに、第1直径方向制御流路61bの両端部を直径として、方向制御部61の外周には、一周ぐるりと回るように外周溝61eが形成され、第2直径方向制御流路61cの両端部を直径として、方向制御部61の外周には一周ぐるりと回るように外周溝61fが形成されている。
【0035】
該外周溝61e,61fによって、方向制御部61の設置は回転方向自由にできる。前記弁部材64は、通常は、ソレノイドバルブ6がオフ(off)の状態で操作軸63により弁室61dの下方に押え付けられ、軸方向制御流路61aと下方側の第1直径方向制御流路61bとの連通を遮断し、リリーフオイルの流入を不可能にしている〔図1(D)参照〕。
【0036】
また、前記電磁制御部62は操作軸63を有しており、該操作軸63は軸方向に沿って昇降するように往復移動する。この動作は、電磁制御部62の電磁制御により行われる。操作軸63は、下降することにより前記弁部材64を下方に向かって押圧してリリーフオイルの流入を遮断する〔図1(D)参照〕。また、操作軸63が上昇することにより弁部材64を解放し、リリーフオイルの流入が可能となるようにする〔図1(C)参照〕。
【0037】
次に、ソレノイドバルブ6の方向制御作用について説明する。本発明のリリーフ弁装置は、オイルポンプ91とエンジン92とのオイル循環流路S内に組み込まれる。オイル循環流路Sからオイルの一部がハウジングAの主リリーフ流路31に流入する。主リリーフ流路31の流入するオイルは、弁通路2の小径通路部21と連通しており、オイルはそのままリリーフ弁4の主受圧面41aを押圧する。
【0038】
また、主リリーフ流路31を流入したオイルの一部は補助リリーフ流路32にも流入する。該補助リリーフ流路32に流入したオイルは、ソレノイドバルブ6によって方向が制御され、補助リリーフ流路32と接続流路321とが連通(開)又は遮断(閉)の状態とされ、補助リリーフ流路32と弁通路2の大径通路部22とが連通又は遮断される。
【0039】
ソレノイドバルブ6がオフ(off)のとき、電磁制御部62の操作軸63は、方向制御部61内の弁部材64を下方に押え付ける状態となり、弁室61dにて軸方向制御流路61aと補助リリーフ流路32との流入口を遮断する。これによって、補助リリーフ流路32からのリリーフオイルの流入を停止する。また、大径通路部22と接続流路321と補助排出流路322とは連通している。これによって、大径通路部22は大気と繋がっており、大径通路部22内は空間が密閉されることは無く、リリーフ弁4の移動が阻害されることは無い。
【0040】
ソレノイドバルブ6がオン(on)のとき、電磁制御部62の操作軸63は、上昇し、方向制御部61内の弁部材64を押付けから開放し、自由な状態にする。これによって、弁室61dにて軸方向制御流路61aと補助リリーフ流路32との流入口が開き可能となり、補助リリーフ流路32からのリリーフオイルの流入の勢いが弁部材64を上方に押し上げて、方向制御部61内にリリーフオイルが流入する。
【0041】
そして、弁部材64は弁室61dにおいて、下方側の第1直径方向制御流路61bと、上方側の第2直径方向制御流路61cとを連通する開口を遮断する。これによって、補助リリーフ流路32と接続流路321と大径通路部22とが連通され、リリーフオイルは、大径通路部22内に送り込まれ、リリーフオイルがリリーフ弁4の補助受圧面42aを押圧することができる。
【0042】
次に、エンジン92の各回転数領域における本発明のリリーフ動作を説明する。本発明のリリーフ弁装置では、エンジン92の回転数Neに応じたリリーフ動作が行われるものであり、回転数Neは、低回転域,中回転域,高回転域でリリーフ動作が変化する。
【0043】
まず、エンジン回転数Neが低回転域のリリーフ動作について述べる(図2参照)。ここで、低回転域とは、0(ゼロ)から回転数Neが約1000rpmの範囲である。ソレノイドバルブ6は、操作命令によりオフ(off)状態になっている。電磁制御部62では、操作軸63は、弁部材64を押え付け、補助リリーフ流路32と軸方向制御流路61aとの連通を遮断する。このとき大径部42が収納されている大径通路部22と、接続流路321と、補助排出流路322とは連通している。
【0044】
これによって、大径通路部22は、大気と連通するように開放されている〔図2(B)参照〕。リリーフオイルの油圧は、主リリーフ流路31を流れるリリーフオイルのみがリリーフ弁4の主受圧面41aに掛かる状態となる〔図2(A)参照〕。しかし、低回転域では、リリーフオイルの圧力は低く、リリーフ弁4は略不動のままで、リリーフすることはない。
【0045】
次に、エンジン92の中回転域のリリーフ動作について述べる(図3、図4参照)。中回転域とは、回転数Neが約1000rpmから約3500rpmの範囲である。この中回転域では、ソレノイドバルブ6がオン(on)になり、電磁制御部62では、操作軸63は、弁部材64の押え付けを解除し、補助リリーフ流路32と軸方向制御流路61aとの連通可能とする。
【0046】
解放状態の弁部材64は、リリーフオイルの圧力で押し上げられ、補助リリーフ流路32と軸方向制御流路61aと第1直径方向制御流路61bとが連通し、同時にリリーフオイルの圧力で押し上げられた弁部材64は、軸方向制御流路61aと第2直径方向制御流路61cとの連通を遮断する〔図3(B)参照〕。これによって、補助リリーフ流路32と接続流路321とが方向制御部61を介して連通する。
【0047】
リリーフオイルは、補助リリーフ流路32,方向制御部61,接続流路321との連通により大径通路部22に流れ込む。そして、大径通路部22に流入したリリーフオイルが、リリーフ弁4の補助受圧面42aを押圧し、主リリーフ流路31から小径通路部21に流入したリリーフオイルが小径通路部21の主受圧面41aを押圧する動作と共にリリーフ弁4を移動させる〔図3(A)参照〕。
【0048】
これによって、リリーフ弁4は主受圧面41a及び補助受圧面42aのそれぞれを押圧するリリーフオイルによって、リリーフ弁4の受圧面積が増えることにより、バネ8に抗する力が増える。そのためにリリーフ弁4はバネ8を圧縮する方向に一気に移動を行う。
【0049】
エンジン92の中回転域で回転数Neが増加するに伴い、リリーフ弁4は前述したように移動を続行するものである。これにより、小径部41の主受圧面41aが主排出流路33の位置に到達し、リリーフオイルが主排出流路33から排出可能となり、第1回目のリリーフが開始される〔図4(A)参照〕。これによって、エンジン92の回転数Neの中回転域で最適なリリーフが行われ、オイル圧力を適正に維持することができる。
【0050】
次に、エンジン92の回転数Neが高回転域のリリーフ動作について述べる(図5、図6参照)。高回転域の回転数Neは約3500rpm以上である。ソレノイドバルブ6は再びオフに切り替えられる〔図5(B)参照〕。すなわち、補助リリーフ流路32と、接続流路321との連通は遮断され、補助リリーフ流路32から大径通路部22にはリリーフオイルは流入しなくなり、主リリーフ流路31から主受圧面41aのみへのリリーフオイルの押圧となる〔図5(A)参照〕。
【0051】
したがって、リリーフ弁4は主受圧面41aのみが受圧することとなり、受圧面積が減ることにより、バネ8に抗する力が減り、リリーフ弁4はバネ8の弾性力によって、小径通路部21側に押し戻されることとなり、再び主排出流路33がリリーフ弁4によって塞がれ、リリーフオイルのリリーフが停止する〔図5(A)参照〕。リリーフ弁4が押し戻されるときには、接続流路321と第2直径方向制御流路61cと補助排出流路322とが連通しているので、大径通路部22内のオイルは、前記通路を介して排出され、リリーフ弁4の戻りは円滑に行われる〔図5(B)参照〕。
【0052】
エンジン92の回転数Neは高い(約3500rpm)状態であり、さらに回転数Neが増加すると、即座にリリーフオイルの圧力は増加し、リリーフ弁4の主受圧面41aのみに掛かっているリリーフオイルの圧力が増加する。これによって、リリーフ弁4は、再びバネ8の弾性力を超えてを圧縮する方向にリリーフ弁4を一気に動かし、小径部41が再び主排出流路33を開放し、第2回目のリリーフが開始される〔図6(A)参照〕。この第2回目のリリーフ圧力は、第1回目より高圧となる。
【0053】
そして、エンジン92のNeが高回転域でさらに増加しても、ソレノイドバルブ6はオフ状態となっており、リリーフオイルは主受圧面41aにのみに掛かっており、回転数上昇と共にリリーフ弁4は、常に第2回目のリリーフがなされている状態とし、適正圧力を維持する〔図6(A)参照〕。
【0054】
図7は、エンジン92の回転数Neが低回転域,中回転域及び高回転域における油圧Pの状態を示すグラフである。本発明によれば、この図7のグラフからも明らかなように、中回転域では、その始まりから終わりまで、油圧Pの変化は緩やかであるが、高回転域では油圧Pは急激に上昇し、オイルを高圧にすることができる。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態を図8に基づいて説明する。前記リリーフ弁4の内部には、弁内流路43が形成されたものである。該弁内流路43は、具体的には、前記小径部41の主受圧面41aから前記大径部42の外周側面42bとの間に亘って形成される流路である〔図8(A),(C)等参照〕。
【0056】
弁内流路43は、軸方向流路43aと直径方向流路43bとから構成され、軸方向流路43aと直径方向流路43bとは連通している。軸方向流路43aは、小径部41の主受圧面41aに流路の開口が位置しており、直径方向流路43bは、大径部42の外周側面42bに流路の開口が位置している。
【0057】
弁内流路43の役目(作用)は、主リリーフ流路31から弁通路2の小径通路部21に送り込まれるリリーフオイルの一部が前記軸方向流路43aの流路開口から流入し、軸方向流路43aから直径方向流路43bを流れて、大径部42の外周側面42bに位置する流路開口からリリーフオイルが吐出される。
【0058】
吐出されたリリーフオイルは、大径部42の外周側面42bと大径通路部22との間の隙間に満たされ、さらに、リリーフオイルが前記隙間に供給されることによって、リリーフ弁4が弁通路2を移動する際の、潤滑油として作用する〔図8(B)参照〕。これによって、リリーフ弁4と弁通路2との摺動性を円滑且つ良好にすることができる。
【0059】
次に、本発明の第3実施形態では、前記弁通路2の大径通路部22には、予備排出流路34が形成され、リリーフ弁4には、第2実施形態と同様に弁内流路43が形成されている。リリーフ弁4がリリーフオイルの圧力によって、移動するときに、弁内流路43の直径方向流路43bの流路開口が前記予備排出流路34に到達すると、リリーフオイルが予備排出流路34に流れてオイルポンプ91に戻される。
【0060】
また、リリーフ弁4によるリリーフ動作が行われる場合には、まず、予備排出流路34からのリリーフが行われ、次に、主排出流路33からのリリーフが行われる〔図8(C),(D)参照〕。予備排出流路34は、万が一、ソレノイドバルブ6が故障したときに、リリーフ弁4によって2段回でオイルリリーフができるようにしたものである。
【符号の説明】
【0061】
A…ハウジング、2…弁通路、21…小径通路部、22…大径通路部、
31…主リリーフ流路、32…補助リリーフ流路、321…接続流路、
322…補助排出流路、33…主排出流路、34…予備排出流路、
4…リリーフ弁、41…小径部、41a…主受圧面、42a…補助受圧面、
42…大径部、6…ソレノイドバルブ、8…バネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、主受圧面を有する小径部と段差箇所を補助受圧面とした大径部とからなるリリーフ弁と、小径通路部と大径通路部とからなる弁通路と、前記小径通路部とハウジング外部とを連通する主排出流路と、前記小径通路部に連通する主リリーフ流路と、前記大径通路部に連通する補助リリーフ流路と、該補助リリーフ流路に装着されるソレノイドバルブと、前記リリーフ弁をリリーフ圧方向と反対方向に弾性付勢するバネとからなり、前記ソレノイドバルブは、エンジン回転数の増減に応じて補助リリーフ流路と前記大径通路部との連通又は遮断のいずれか一方となるように切替制御されると共に遮断時には前記大径通路部内のオイル排出が行われる構成としてなることを特徴とするリリーフ弁装置。
【請求項2】
請求項1において、前記補助リリーフ流路は、前記主リリーフ流路から分岐されてなることを特徴とするリリーフ弁装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記リリーフ弁の小径部の軸方向寸法は、前記小径通路部の通路全長よりも長く形成されてなることを特徴とするリリーフ弁装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記リリーフ弁の内部には、前記主受圧面から前記大径部の外周側面に亘って連通する弁内流路が形成されてなることを特徴とするリリーフ弁装置。
【請求項5】
請求項4において、前記大径通路部には予備排出流路が形成され、前記弁内流路の前記大径部側の流路開口は、前記予備排出流路に連通可能としてなることを特徴とするリリーフ弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202345(P2012−202345A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69045(P2011−69045)
【出願日】平成23年3月27日(2011.3.27)
【出願人】(000144810)株式会社山田製作所 (183)
【Fターム(参考)】