説明

リンク装置

【課題】異物がカム溝に付着するのを防いで、長期に亘ってリンク装置を円滑に作動させる。
【解決手段】低圧EGRバルブユニット40に搭載されるリンク装置1には、回転駆動体12の回動に伴い、カム溝11に摺接して移動する掃除ブラシ15が設けられる。この掃除ブラシ15は、トルク伝達のためのカム溝係合部13とは別のものであり、カム溝係合部13の軸部13bにスプリングを介して取り付けられ、カム溝11に押し付けられながらカム溝11に摺接することでカム溝11をクリーニングする。このため、ローラ13aの転がり抵抗が増加せず、長期に亘ってリンク装置1を円滑に作動させることができる。即ち、長期に亘って低圧EGRバルブユニット40の作動不良を防ぐことができ、低圧EGR装置の信頼性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動体に与えられる回転トルクをカム溝における係合部を介して回転従動体に伝達するリンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
〔背景技術〕
背景技術を、低圧EGR装置に用いられるリンク装置を用いて説明する。
近年では、高圧EGR装置(従来より一般的にEGR装置と呼ばれているもの)とは別に、低圧EGR装置を搭載する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
低圧EGR装置は、排気通路における低排気圧範囲(排気圧が低い範囲)の排気ガスの一部を、吸気通路における低吸気負圧発生範囲(吸気負圧の発生が弱い範囲)に戻すことで、少量のEGRガスをエンジン(燃料の燃焼により動力を発生させる内燃機関)の吸気側へ戻す装置である。
これにより、高圧EGR装置では実現困難であった、例えばエンジン負荷の大きい運転領域に、低濃度のEGRガスの供給が可能になる。
【0003】
低圧EGR装置においてEGRガスを吸気側へ戻す低圧EGR流路には、低圧EGR流路の開度調整を行なう低圧EGR調整弁が設けられており、この低圧EGR調整弁は、エンジンの運転状態(エンジン回転数、エンジン負荷など)に応じたEGR量が得られるように、ECU(エンジン・コントロール・ユニットの略)により開度制御される。
【0004】
低圧EGR装置は、排気通路における低排気圧範囲の排気ガスの一部を、吸気通路における低吸気負圧発生範囲に戻すものである。
このため、低圧EGR装置を用いて多量のEGRガスをエンジンに戻すことが要求されるエンジンの運転領域が存在しても、その要求に対応することができなかった。
【0005】
そこで、低圧EGR装置がEGRガスを戻す部位の吸気通路に、吸気負圧を発生可能な吸気絞り弁(吸気負圧発生弁)を設け、低圧EGR装置を用いて多量のEGRガスをエンジンへ戻したい運転領域では、吸気絞り弁を閉じる方向(吸気負圧が発生する方向)に制御することが考えられる。
即ち、低圧EGR装置を用いて大きなEGR量を得たい運転領域では、吸気絞り弁で吸気負圧を発生させて多量のEGRガスをエンジンに戻すことが考えられる。
【0006】
しかるに、低圧EGR調整弁は、上述したように、エンジン回転数やエンジン負荷等に応じて開度制御されるものである。
一方、吸気絞り弁は、ECUにより大きなEGR量を得たい運転領域の時だけ、閉じる方向に制御されるものである。
【0007】
このように、低圧EGR調整弁と吸気絞り弁は、それぞれが別の運転要因に基づいて作動制御されるものであるため、低圧EGR調整弁と吸気絞り弁は、それぞれが独立して操作される。
その結果、低圧EGR調整弁を駆動するための「専用のアクチュエータ」と、吸気絞り弁を駆動するための「専用のアクチュエータ」とが必要となり、コストアップ、体格アップ、重量アップの要因になってしまう。
【0008】
このため、小型化、軽量化、コスト削減などの目的で、低圧EGR調整弁と吸気絞り弁とを1つの電動アクチュエータ(電動モータ+減速機構)で駆動する要求がある。
そこで、1つの電動アクチュエータで低圧EGR調整弁を駆動するように設けるとともに、1つの電動アクチュエータの出力をリンク装置で変換させて吸気絞り弁に伝えることが提案されている(周知技術ではない)。
【0009】
リンク装置の具体例を、図7を参照して説明する(図7に示す技術は、周知の技術ではない)。なお、後述する[発明を実施するための形態]および[実施例]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
図7に示すリンク装置1は、
・カム溝11が形成され、低圧EGR調整弁5と一体に回動する回転駆動体12(カムプレート)と、
・カム溝11に嵌まり合うカム溝係合部13(例えば、ローラ13a+軸部13b)を有し、吸気絞り弁6と一体に回動する回転従動体14(従動アーム)とを備える。
【0010】
そして、カム溝11のカム形状により、
(i)電動アクチュエータ7(例えば、電動モータ45+減速機構46)によって低圧EGR調整弁5が全閉開度から中間開度の区間において、低圧EGR調整弁5だけを回動させて、吸気絞り弁6を全開状態に維持し、
(ii)電動アクチュエータ7によって低圧EGR調整弁5が中間開度から全開開度の区間において、低圧EGR調整弁5の開度変化に伴って、吸気絞り弁6の開度を変化させる。
【0011】
〔背景技術の問題点〕
カム溝11には、ダスト等の異物が付着する可能性がある。
特に、図7に示すリンク装置1は、吸気通路とEGR流路の合流部に設けられるものであるため、車両のエンジンルーム内に配置される。エンジンルーム内は、常に外気(道路等において排気ガスを含んだ空気など)が侵入可能な空間である。このため、カム溝11に付着するダストに、排気ガス中の油分が含まれて、カム溝11に付着するダストがデポジット化する可能性がある。
【0012】
カム溝11にデポジット等の異物が付着堆積すると、カム溝11に沿って移動するカム溝係合部13の摺動抵抗や転がり抵抗が増加し、電動アクチュエータ7の回転不良(低圧EGR調整弁5および吸気絞り弁6の作動不良)の要因になる。
また、カム溝係合部13の摺動抵抗や転がり抵抗が増加することで、電動アクチュエータ7の駆動負荷が大きくなってしまう。このため、最悪の場合、電動アクチュエータ7に搭載される電動モータの負荷許容値が越える可能性がある。すると、電動モータが焼損等で故障する可能性があり、低圧EGR調整弁5の開度制御が不能になる可能性がある。
【0013】
なお、上記では、低圧EGR調整弁5に用いられるリンク装置1を用いて従来技術の問題点を説明したが、他のリンク装置であっても、同様の問題点を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−150955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、カム溝に異物が付着するのを防いで、長期に亘って円滑に作動可能なリンク装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
[請求項1の手段]
請求項1の手段を採用するリンク装置は、回転駆動体の回動に伴い、カム溝に摺接して移動する掃除ブラシを備える。
これにより、カム溝にダスト等の異物が付着しても、掃除ブラシによって付着した異物を除去することができる。即ち、掃除ブラシによってカム溝を常にクリーニングすることができ、カム溝に異物が付着するのを長期に亘って防ぐことができる。
このため、カム溝に沿って移動するカム溝係合部の摺動抵抗や転がり抵抗の増加を防ぎ、長期に亘ってリンク装置を円滑に作動させることができる。即ち、長期に亘って異物の付着による回転不良の発生を防ぐことができ、高い信頼性を得ることができる。
【0017】
[請求項2の手段]
請求項2の手段の掃除ブラシは、カム溝の内側に挿入配置されるカム溝係合部の軸部に、スプリングを介して取り付けられ、スプリングの付勢力によりカム溝に押し付けられるものである。
【0018】
[請求項3の手段]
請求項3の手段のスプリングは、軸部と掃除ブラシとの間に介在される捩じりコイルバネである。
【0019】
[請求項4の手段]
請求項4の手段のスプリングは、軸部に対して掃除ブラシを支持する支持アームであり、この支持アームが弾性変形可能な部材で設けられる。
これにより、部品点数を抑えることができ、コストを抑えることができる。
【0020】
[請求項5の手段]
請求項5の手段のカム溝係合部は、常にカム溝の一方の溝壁のみに付勢されて当接移動するものであり、掃除ブラシは、カム溝の一方の溝壁のみに摺接するものである。即ち、掃除ブラシは、カム溝の片側のみに摺接するものである。
これにより、掃除ブラシの構成をシンプルにできるとともに、掃除ブラシとカム溝の摺動抵抗を小さく抑えることができる。
【0021】
[請求項6の手段]
請求項6の手段のリンク装置は、電動アクチュエータの出力特性を変化させて吸気絞り弁を駆動するものであり、1つの電動アクチュエータにより、低圧EGR調整弁と吸気絞り弁の両方を駆動するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】低圧EGRバルブユニットの説明図である(実施例1)。
【図2】ブラシの構造を示す説明図である(実施例1)。
【図3】エンジンの吸排気システムの概略説明図である(実施例1)。
【図4】低圧EGR調整弁の回転角度に応じたEGR流量と吸気流量との関係を示すグラフである(実施例1)。
【図5】高圧/低圧EGR量制御プログラムにおけるEGR制御の説明図である(実施例1)。
【図6】ブラシの構造を示す説明図である(実施例2)。
【図7】低圧EGRバルブユニットの説明図である(提案技術)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照して[発明を実施するための形態]を説明する。
実施形態に示すリンク装置1は、低圧EGR装置2に適用されるものである。
低圧EGR装置2は、
・低吸気負圧発生範囲の吸気通路3にEGRガスを導く低圧EGR流路4の開度調整を行なう低圧EGR調整弁5と、
・吸気通路3を絞ることで、吸気通路3と低圧EGR流路4の合流部に吸気負圧を発生させる吸気絞り弁6と、
・低圧EGR調整弁5を駆動する1つの電動アクチュエータ7とを備える。
【0024】
リンク装置1は、電動アクチュエータ7の出力特性を変化させて吸気絞り弁6を駆動するものであり、
・カム溝11を有し、低圧EGR調整弁5と一体に回動する回転駆動体(カムプレート)12と、
・カム溝11に係合するカム溝係合部13を有し、吸気絞り弁6と一体に回動する回転従動体(従動アーム)14とを備える。
そして、回転駆動体12に与えられる回転トルク(低圧EGR調整弁5に与えられる回転トルク)がカム溝11に係合するカム溝係合部13を介して回転従動体14に伝達されることで、吸気絞り弁6が駆動される。
【0025】
さらに、リンク装置1は、回転駆動体12の回動に伴い、カム溝11に摺接して移動する掃除ブラシ15を備える。
この掃除ブラシ15は、回転トルクの伝達を行なうカム溝係合部13とは別のものであり、スプリング16の付勢力によりカム溝11に押し付けられて、カム溝11に摺接する。
これにより、カム溝11にダスト等の異物が付着しても、掃除ブラシ15によって付着した異物を除去することができ、長期に亘ってリンク装置1を円滑に作動させることができる。
【実施例】
【0026】
本発明のリンク装置1を低圧EGR装置2に適用した具体的な一例(実施例)を、図面を参照して説明する。以下の実施例は具体的な一例を開示するものであって、本発明が実施例に限定されないことは言うまでもない。なお、以下の実施例において上記[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
【0027】
[実施例1]
実施例1を図1〜図5を参照して説明する。
先ず、図3〜図5を参照してエンジン吸排気システムを説明する。
エンジン吸排気システムには、高圧EGR装置21と低圧EGR装置2が設けられている。
高圧EGR装置21は、高排気圧範囲(DPF22の排気上流側で、高い排気圧が発生する範囲)の排気通路23の内部と、高吸気負圧発生範囲(スロットルバルブ24の吸気下流側で、高い吸気負圧が発生する範囲)の吸気通路3の内部とを接続して、多量のEGRガスをエンジンへ戻すことを得意とする排気ガス再循環装置であり、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路3の吸気下流側へ戻す高圧EGR流路25を備えている。
具体的な一例として、図3の高圧EGR流路25は、排気通路23側がエキゾーストマニホールドに接続され、吸気通路3側がインテークマニホールドのサージタンク26に接続されている。
【0028】
図3に示す高圧EGR装置21には、高圧EGR流路25の途中に、高圧EGR流路25の開度を調整することでEGRガスの流量調整を行なう高圧EGR調整弁27と、吸気側に戻されるEGRガスの冷却を行なう高圧EGRクーラ28と、吸気側に戻されるEGRガスを高圧EGRクーラ28から迂回させる高圧クーラバイパス29と、高圧EGRクーラ28と高圧クーラバイパス29の切り替えを行なう高圧EGRクーラ切替弁30とが設けられている。
なお、図3は具体例であり、高圧EGRクーラ28、高圧クーラバイパス29および高圧EGRクーラ切替弁30を搭載しないものであっても良い。
【0029】
低圧EGR装置2は、低排気圧範囲(DPF22の排気下流側で、低い排気圧が発生する範囲)の排気通路23の内部と、低吸気負圧発生範囲(スロットルバルブ24の吸気上流側で、低い吸気負圧が発生する範囲)の吸気通路3の内部とを接続して、少量のEGRガスをエンジンに戻すことを得意とする排気ガス再循環装置であり、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路3の吸気上流側に戻す低圧EGR流路4を備えている。
具体的な一例として、図3の低圧EGR流路4は、排気通路23側がDPF22より排気下流側の排気管に接続され、吸気通路3側がターボチャージャのコンプレッサ31より吸気上流側の吸気管に接続されている。
【0030】
低圧EGR装置2には、低圧EGR流路4の途中に、低圧EGR流路4の開度を調整することでEGRガスの流量調整を行なう低圧EGR調整弁5と、吸気側に戻されるEGRガスの冷却を行なう低圧EGRクーラ32とが設けられている。
また、低圧EGR装置2は、吸気通路3と低圧EGR流路4の合流部に吸気負圧を発生させるための吸気絞り弁6を設けている。
【0031】
この吸気絞り弁6は、吸気通路3を最大に絞った状態であっても、吸気通路3の一部を開放するように設けられるものである。具体的には、吸気絞り弁6が吸気通路3を最大に絞った状態であっても、吸気通路3の例えば10%ほどを開放するように設けられるものである(図4の実線Yの最小流量参照)。
【0032】
次に、高圧EGR装置21および低圧EGR装置2の制御を行なうECUを説明する。ECUは、高圧EGR装置21および低圧EGR装置2の運転制御を行なうEGR制御プログラムが搭載されている。
このEGR制御プログラムは、
(i)エンジンの暖気状態(例えば、エンジン冷却水の温度)に基づいて高圧EGRクーラ切替弁30の切り替えを行なう高圧EGRクーラ切替プログラムと、
(ii)エンジン回転数とエンジン負荷(エンジン負荷トルク)に応じて高圧EGR調整弁27、低圧EGR調整弁5および吸気絞り弁6の開度制御を行なう高圧/低圧EGR量制御プログラムとを備えている。
【0033】
高圧/低圧EGR量制御プログラムの概略を、図5を参照して説明する。
高圧/低圧EGR量制御プログラムは、
(i)図5に示す実線α以下における運転領域(エンジン回転数とエンジン負荷トルクの関係によるエンジン運転領域)の時に、低圧EGR装置2を停止させ、高圧EGR装置21の高圧EGR調整弁27の開度制御のみによってEGR制御を行ない(具体的には、低圧EGR流路4を低圧EGR調整弁5によって閉塞させ、高圧EGR調整弁27をエンジン回転数とエンジン負荷トルクの関係に応じた開度に制御する)、
(ii)図5に示す実線αと実線βの間の運転領域の時に、高圧EGR装置21の高圧EGR調整弁27の開度制御と、低圧EGR装置2の低圧EGR調整弁5および吸気絞り弁6の開度制御の両方によってEGR制御を行ない(具体的には、高圧EGR調整弁27をエンジン回転数とエンジン負荷トルクの関係に応じた開度に制御するとともに、低圧EGR調整弁5および吸気絞り弁6をエンジン回転数とエンジン負荷トルクの関係に応じた開度に制御する)、
(iii)図5に示す実線β以上における運転領域の時に、高圧EGR装置21を停止させ、低圧EGR装置2の低圧EGR調整弁5および吸気絞り弁6の開度制御のみによってEGR制御を行なう(具体的には、高圧EGR流路25を高圧EGR調整弁27によって閉塞させ、低圧EGR調整弁5および吸気絞り弁6をエンジン回転数とエンジン負荷トルクの関係に応じた開度に制御する)制御プログラムである。
【0034】
低圧EGR装置2は、低排気圧範囲のEGRガスを、低吸気負圧発生範囲に戻すものであるため、少量のEGRガスをエンジンに戻すことを得意とする。しかるに、低圧EGR装置2を用いて多量のEGRガスをエンジンへ戻したい運転領域が存在しても、低吸気負圧発生範囲にEGRガスを戻す構造の低圧EGR装置2では多量のEGRガスをエンジンへ戻すことが困難である。
そこで、低圧EGR装置2は、EGRガスを戻す吸気通路3内に積極的に吸気負圧を発生させるための吸気絞り弁6を設け、低圧EGR装置2において大きなEGR量を得たい運転領域では、吸気絞り弁6を閉じる方向(吸気負圧が発生する方向)に開度制御し、低圧EGR装置2において多量のEGRガスをコントロールすることを可能にしている。
【0035】
しかし、(i)低圧EGR装置2を用いて少量のEGRガスをエンジンへ戻す「低濃度制御状態」の時は、吸気絞り弁6が負圧を発生させないように最大開度(全開開度)で固定されて、低圧EGR調整弁5のみを開度制御する必要があり、
(ii)低圧EGR装置2を用いて多量のEGRガスをエンジンへ戻す「高濃度制御状態」の時は、低圧EGR調整弁5の開度を増加するとともに、負圧を増加させるべく吸気絞り弁6の開度を小さくする必要がある。
【0036】
このように、「低濃度制御状態」では吸気絞り弁6が全開に固定されて低圧EGR調整弁5のみが開度制御され、「高濃度制御状態」では低圧EGR調整弁5の開度に対応して吸気絞り弁6の開度も変化するものである。
このため、低圧EGR調整弁5を駆動するための専用のアクチュエータと、吸気絞り弁6を駆動するための専用のアクチュエータとが要求されるが、それぞれに専用のアクチュエータを搭載すると、コストアップ、体格アップ、重量アップの要因になってしまう。
【0037】
そこで、低圧EGR装置2は、図1に示すように、低圧EGR調整弁5を駆動する1つの電動アクチュエータ7と、この電動アクチュエータ7の出力特性を変化させて吸気絞り弁6を駆動するリンク装置1とを備え、リンク装置1を介して伝達された電動アクチュエータ7の出力によって吸気絞り弁6を駆動するように設けられている。
【0038】
リンク装置1には、電動アクチュエータ7の出力特性を変化させて吸気絞り弁6へ伝達する特性変換部が設けられており、低圧EGR調整弁5が所定開度より大きくなってから低圧EGR調整弁5の開度アップに連動させて吸気絞り弁6の開度を小さくするように設けられている(図4参照)。
なお、図4の実線Xは低圧EGR調整弁5の回転角度に対するEGR流量の変化を示し、図4の実線Yは低圧EGR調整弁5の回転角度に対する吸気絞り弁6による吸気流量の変化を示すものである。
【0039】
〔低圧EGRバルブユニット40の説明〕
低圧EGR調整弁5と吸気絞り弁6は、上述したように、リンク装置1を介して連結し、共通の電動アクチュエータ7によって駆動されるものである。
このため、低圧EGR調整弁5と吸気絞り弁6は、図1に示すように、1つの低圧EGRバルブユニット40として設けられている。
【0040】
この低圧EGRバルブユニット40は、低圧EGR流路4と吸気通路3の合流部を備えるバルブハウジング41に、上述した低圧EGR調整弁5、吸気絞り弁6、電動アクチュエータ7およびリンク装置1を搭載するものである。
以下において、低圧EGRバルブユニット40に搭載される低圧EGR調整弁5、吸気絞り弁6、電動アクチュエータ7およびリンク装置1を順次説明する。
【0041】
低圧EGR調整弁5は、低圧EGR流路4内に配置されるバタフライバルブであり、バルブハウジング41に対して回動自在に支持される低圧EGRシャフト42と一体に回動する。
吸気絞り弁6は、吸気通路3内に配置されるバタフライバルブであり、バルブハウジング41に対して回動自在に支持される吸気絞シャフト43と一体に回動する。
そして、低圧EGRシャフト42と吸気絞シャフト43は、平行に配置されるものである。
【0042】
ここで、低圧EGRバルブユニット40には、吸気絞り弁6を最大開度で停止させるストッパ部材(図示しない)と、吸気絞り弁6をストッパ部材に当接させる方向(全開方向)に付勢するリターンスプリング44とが設けられている。
これにより、電動アクチュエータ7からリンク装置1を介して吸気絞り弁6に駆動負荷が与えられていない状態では、リターンスプリング44の付勢力により吸気絞り弁6が最大開度に戻される。
なお、ストッパ部材は、回転従動体14に当接するものであっても良いし、吸気通路3内において吸気絞り弁6に当接するものであっても良い。
【0043】
電動アクチュエータ7は、通電により回転出力を発生する電動モータ45(例えば、DCモータ)と、この電動モータ45の回転出力を減速して出力トルクを増大させる減速機構46(例えば歯車減速装置)とを組み合わせたものである。そして、減速機構46の出力により、低圧EGR調整弁5を駆動するとともに、リンク装置1を介して吸気絞り弁6を駆動するものである。
【0044】
リンク装置1は、バルブハウジング41の外部に配置されて、電動アクチュエータ7の出力特性(回動特性)を変換して吸気絞り弁6を駆動するものであり、低圧EGR調整弁5と一体に回転する回転駆動体12と、吸気絞り弁6と一体に回転する回転従動体14とを備える。
【0045】
回転駆動体12は、板形状を呈し、耐摩耗性に優れた材料(例えば、ナイロン系樹脂等の樹脂や金属など)により設けられたものであり、低圧EGRシャフト42に対して直角に固定配置されている。
回転従動体14も、板形状を呈し、耐摩耗性に優れた材料(例えば、ナイロン系樹脂等の樹脂や金属など)により設けられたものであり、回転従動体14の回動端側が回転駆動体12に対して所定の隙間を隔てて重なるように、吸気絞シャフト43に対して直角に固定配置されている。
【0046】
リンク装置1において電動アクチュエータ7の出力特性を変換する特性変換部は、回転駆動体12の回転中心から離れた位置に設けられたカム溝11と、回転従動体14の回転中心から離れた位置に設けられてカム溝11に嵌まり合うカム溝係合部13とによって構成される。
カム溝係合部13は、カム溝11内に嵌まり合う円筒状のローラ13a(回転差吸収体)と、回転従動体14の回動端側に固定されてローラ13aを回転自在に支持する軸部13bとからなる。
【0047】
なお、ローラ13aの一例として、図1に示すように、ローラ13a自身が転がりベアリング(ボールベアリング等)によって構成される例を示すが、限定されるものではなく、ローラ13aの内周に転がりベアリングが設けられたものや、ボールベアリングに代えて滑りベアリングを用いるものであっても良い。
また、ローラ13aを支持する軸部13bの一例として、図1に示すように、別体に形成した軸部13bを回転従動体14に固定する例を示すが、限定されるものではなく、軸部13bを回転従動体14と一体に形成されるものであっても良い。
【0048】
カム溝係合部13を駆動するカム溝11のカムプロフィールは、「開度キープ用カム溝11a」と「吸気絞用カム溝11b」を繋ぎ合わせて設けられている。
カム溝11における「開度キープ用カム溝11a」は、「回転駆動体12の回転中心と同一中心の円弧溝」であり、低圧EGR調整弁5が低圧EGR流路4を最大に絞る全閉開度θ0(図4のEGRバルブ開度=0°)から所定中間開度θ1に至る回動範囲(開度θ0〜開度θ1)において、吸気絞り弁6の開度を最大開度に保つように設けられている。
【0049】
カム溝11における「吸気絞用カム溝11b」は、上述した「開度キープ用カム溝11a」の一方の端部に連続するように連なって形成されており、「回転駆動体12の回転中心と同一中心の円弧溝」に対して「所定の角度で変化する角度形状」を呈し、低圧EGR調整弁5が所定中間開度(θ1)から最大開度(θ2:図4のEGRバルブ開度=90°)に至る回動範囲(開度θ1〜開度θ2)において回転従動体14を回動させて、吸気絞り弁6の開度を最大開度から吸気通路3を閉じる方向に回動させるように設けられている。
【0050】
さらに、リンク装置1には、図1に示すように、回転駆動体12の回動に伴い、カム溝11に摺接して移動する掃除ブラシ15が設けられている。この掃除ブラシ15は、回転トルクの伝達を行なうカム溝係合部13とは別のものであり、掃除ブラシ15を図2を参照して具体的に説明する。
掃除ブラシ15は、カム溝係合部13における軸部13bにスプリング16(弾性変形可能なバネ部材)を介して取り付けられることで、カム溝11(具体的にはローラ13aが当接して転がる溝壁)に押し付けられながらカム溝11に摺接して移動する。
【0051】
ここで、回転従動体14は、吸気絞り弁6を全開方向へ付勢するリターンスプリング44の付勢力を受けるため、カム溝係合部13は常にカム溝11における一方の溝壁(図1においてカム溝11の下側の溝壁:カム溝11に沿う片側のカム壁)のみと当接する。
そこで、この実施例の掃除ブラシ15は、カム溝11の一方の溝壁のみに摺接するように設けられる。即ち、掃除ブラシ15は、スプリング16の付勢力により、カム溝11の一方の溝壁に向けて付勢されるものである。
【0052】
この実施例1に示すスプリング16は、図2に示すように、軸部13bと掃除ブラシ15との間に介在される捩じりコイルバネである。
掃除ブラシ15がカム溝11の一方の溝壁に向けて付勢される構造を説明する。
掃除ブラシ15は、カム溝11に摺接することで、カム溝11に付着した異物の除去を行なう異物除去部であり、この実施例ではカム溝11に摺接する部位が先端の尖った三角形状に設けられている。
【0053】
掃除ブラシ15は、軸部13bの周囲に回転自在に支持される支持アーム51の先端においてカム溝11の内部に挿入配置されるように設けられている。
なお、軸部13bの周囲に支持アーム51を回転自在に支持する一例として、この実施例では支持アーム51の根元にリング部52を設け、このリング部52の内周に転がりベアリング(ボールベアリング等)53を配置する例を示すが、限定されるものではなく、転がりベアリング53に代えて滑りベアリングを用いても良いし、リング部52を軸部13bの周囲に直接配置して軸部13bに対してリング部52を回転自在に支持させても良い。
【0054】
掃除ブラシ15は、カム溝11に対する摺動抵抗が小さく、且つカム溝11に対して長期に亘って繰り返し摺動しても、摩耗が抑えられる材料(例えば、ナイロン系樹脂、金属など)で設けられる。具体的に、この実施例の掃除ブラシ15は、樹脂または金属によって支持アーム51およびリング部52と一体成形されるものである。
【0055】
この実施例に示すスプリング16は、上述したように、捩じりコイルバネであり、軸部13bの周囲に嵌め合わされるコイル部と、軸部13bの端部に設けられたバネ支持部13cに挿入固定される一方のバネ端と、リング部52に挿入固定される他方のバネ端とで構成され、常に掃除ブラシ15がカム溝11の一方の溝壁に押し付けられるように、コイル部が予め捩じられた状態で組み付けられる。
なお、スプリング16のバネ力は、掃除ブラシ15の先端部(三角突起部)を常にカム溝11に押し付ける付勢力を発生するものであり{図2(a)の矢印参照}、且つ掃除ブラシ15とカム溝11の摺動抵抗の増加が抑えられる付勢力に設定されるものである。
【0056】
ここで、カム溝11の先端部(低圧EGR調整弁5を最大開度に設定した際にカム溝係合部13が移動する側の先端部:図1の左側の溝端部分)には、掃除ブラシ15の逃げ溝11cが設けられており、掃除ブラシ15がカム溝11の先端にぶつかることで低圧EGR調整弁5および回転駆動体12の回動範囲が規制される不具合を回避している。
【0057】
〔実施例の効果〕
この実施例の低圧EGR装置2は、ECUのEGR制御プログラムにより電動アクチュエータ7が作動すると、低圧EGR調整弁5とともに回転駆動体12が回動する。回転駆動体12が回動することで、カム溝係合部13がカム溝11の一方の溝壁に押し付けられながらカム溝11に沿って移動するとともに、掃除ブラシ15もカム溝11の一方の溝壁に押し付けられながらカム溝11に沿って摺接する。
【0058】
これにより、ローラ13aが押し付けられて転がるカム溝11の側壁(カム溝11の一方の溝壁)にダスト等の異物が付着しても、掃除ブラシ15によって付着した異物を除去することができる。
即ち、回転駆動体12が回動する毎に、カム溝11の一方の溝壁を掃除ブラシ15がクリーニングする。
このため、ローラ13aの転がり抵抗が異物によって増加せず、長期に亘ってリンク装置1を円滑に作動させることができる。即ち、長期に亘って異物の付着による低圧EGRバルブユニット40の作動不良を防ぐことができ、低圧EGR装置2の信頼性を高めることができる。
【0059】
また、この実施例の掃除ブラシ15は、カム溝11の一方の溝壁のみに摺接する。
これにより、カム溝11の両側の溝壁に掃除ブラシ15を押し付ける場合に比較して、掃除ブラシ15の構成をシンプルにできるとともに、掃除ブラシ15とカム溝11の摺動抵抗を小さく抑えることができる。
【0060】
[実施例2]
実施例2を図6を参照して説明する。
上記の実施例1では、掃除ブラシ15をカム溝11に押し付けるスプリング16の一例として、捩じりコイルバネを用いる例を示した。
これに対し、この実施例2において掃除ブラシ15をカム溝11に押し付けるスプリング16は、軸部13bに対して掃除ブラシ15を支持する支持アーム51であり、この支持アーム51の根元部分を軸部13bに固定するとともに、支持アーム51を弾性変形可能な部材で設けたものである。
【0061】
具体的な支持アーム51の一例として、板バネを用いるものである。
なお、支持アーム51を板バネで設ける場合、「掃除ブラシ15」および「軸部13bに対する固定部位」も板バネによって一体に設けることが望ましいが、限定されるものではない。
また、支持アーム51を弾性変形可能な樹脂(例えばナイロン系樹脂等)を用いても良い。支持アーム51を弾性変形可能な樹脂で設ける場合も、「掃除ブラシ15」および「軸部13bに対する固定部位」も樹脂によって一体に設けることが望ましいが、限定されるものではない。
【0062】
この実施例2に示すように、支持アーム51をスプリング16として用いることにより、部品点数を抑えることができる。このため、本発明のリンク装置1のコストを抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
上記実施例では、掃除ブラシ15の一例として突起(具体的には三角形の突起)を用いる例を示したが、カム溝11に摺接する部位の形状、材質、摺接数等は限定されるものではなく、種々設定可能なものである。
上記実施例では、低圧EGR装置2に用いられるリンク装置1に本発明を適用する例を示したが、回転駆動体12に与えられる回転トルクをカム溝11とカム溝係合部13の係合を介して回転従動体14に伝達する種々のリンク装置1に適用可能なものである。
【符号の説明】
【0064】
1 リンク装置
2 低圧EGR装置
3 吸気通路
4 低圧EGR流路
5 低圧EGR調整弁
6 吸気絞り弁
7 電動アクチュエータ
11 カム溝
12 回転駆動体(カムプレート)
13 カム溝係合部
13a ローラ
13b 軸部
14 回転従動体(従動アーム)
15 掃除ブラシ
16 スプリング
44 リターンスプリング
51 支持アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カム溝(11)を有する回転駆動体(12)と、
前記カム溝(11)に係合するカム溝係合部(13)を有する回転従動体(14)とを有し、
前記回転駆動体(12)に与えられる回転トルクが前記カム溝(11)に係合する前記カム溝係合部(13)を介して前記回転従動体(14)に伝達されるリンク装置(1)において、
このリンク装置(1)は、前記カム溝係合部(13)とは別に設けられ、前記回転駆動体(12)の回動に伴い前記カム溝(11)に摺接して移動する掃除ブラシ(15)を備えることを特徴とするリンク装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリンク装置(1)において、
前記掃除ブラシ(15)は、前記カム溝(11)の内側に挿入配置される前記カム溝係合部(13)の軸部(13b)に、スプリング(16)を介して取り付けられ、前記スプリング(16)の付勢力により前記カム溝(11)に押し付けられることを特徴とするリンク装置。
【請求項3】
請求項2に記載のリンク装置(1)において、
前記スプリング(16)は、前記軸部(13b)と前記掃除ブラシ(15)との間に介在される捩じりコイルバネであることを特徴とするリンク装置。
【請求項4】
請求項2に記載のリンク装置(1)において、
前記スプリング(16)は、前記軸部(13b)に対して前記掃除ブラシ(15)を支持する支持アーム(51)であり、この支持アーム(51)が弾性変形可能な部材で設けられることを特徴とするリンク装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のリンク装置(1)において、
前記カム溝係合部(13)は、前記回転従動体(14)に直接または間接的に付与されるリターンスプリング(44)の付勢力により、常に前記カム溝(11)の一方の溝壁のみに付勢されて当接移動するものであり、
前記掃除ブラシ(15)は、前記カム溝(11)の一方の溝壁のみに摺接することを特徴とするリンク装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載のリンク装置(1)において、
前記回転駆動体(12)は、吸気が通過する吸気通路(3)にEGRガスを導く低圧EGR流路(4)の開度調整を行なう低圧EGR調整弁(5)と一体に回動するカムプレートであり、
前記回転従動体(14)は、前記吸気通路(3)と前記低圧EGR流路(4)の合流部に吸気負圧を発生させる吸気絞り弁(6)と一体に回動する従動アームであり、
前記低圧EGR調整弁(5)と前記回転駆動体(12)が1つの電動アクチュエータ(7)で駆動され、
前記リンク装置(1)は、前記電動アクチュエータ(7)の出力特性を変化させて前記吸気絞り弁(6)を駆動することを特徴とするリンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−159116(P2012−159116A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17860(P2011−17860)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】