説明

リング型ネットワークシステム

【課題】電気的には接続されていながら正常に通信ができないような論理的な断線状態が発生した場合であってもループバックを行なうことを可能にし、通信を継続することができるようにする。
【解決手段】マスタ局1は、送信が連続して失敗したことを検知したときに断線検出フレームを生成して隣接するスレーブ局#1(2)、#4(5)に送信する。スレーブ局#4(5)では、断線検出フレームを受信したときに応答し、自局が末端局でない場合に、送信元局以外の隣接局#3(4)に対して断線検出フレームを送信する。そして、スレーブ局#4(5)では、断線検出フレームを送信してから所定時間経過しても隣接局#3(4)からその応答を受信できない場合に、自局を末端局としてループバックを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノード(局)をディジーチェイン接続し、このディジーチェイン接続された両端の局で回線(信号線)を折り返すことにより、リング状の伝送経路を形成するようにした、リング型ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、リング型ネットワークシステムの一例を示す構成図である。このリング型ネットワークシステムは、マスタ局、および複数のスレーブ局#1、#2、#3、#4が回線にディジーチェイン接続されることにより構成される。そして、末端に位置するスレーブ局#2、#3が片側に局が接続されていないことを検知し内部でループバックすることでリング状の伝送経路を形成する。
【0003】
このようなリング型ネットワークシステムを構成する全ての局は、物理層でネットワークの信号線を監視し、振幅(電位)が検出されないか、あるいは小さい等の理由により、断線やコネクタの脱落等による「断線」であると判定する。この場合、断線箇所近傍の局が通信の異常を検出して回線を折り返すループバックを行い、回線を接続状態に維持することにより、切り離された局を除いた局間でデータ交換を継続するように構成されている。
【0004】
図6に示したリング型ネットワークシステムでは、スレーブ局#4が、スレーブ局#3との間の信号線から振幅が検出されないことから断線を検出し、ループバックを行なうことによりリング状の伝送経路を維持している。
【0005】
例えば、特許文献1には、ループバックが行なわれるネットワークシステムにおいて、各局の状態に影響を与えないビーコンフレームを監視することにより、ネットワークを断線状態から復旧させる技術が開示されている。また、特許文献2には、主伝送路と副伝送路とを持つループバック方式のネットワークシステムにおいて、一度断線検出を行い、異常が検出された側の伝送路にはLow信号を出力して再び断線検出を行うことで、片方の伝送路が断線している場合でも正しい断線検出が可能な技術が開示されている。これら特許文献に記載された発明は、いずれも信号レベルを監視することによって断線検出を行う方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−7830号公報
【特許文献2】特開平3−185951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来技術によれば、信号線を伝搬する信号の振幅(電位)は検出できても、ネットワークケーブルの損傷等により電気的には接続されていても接触不良等の理由により、CRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)異常等が多発して正常な通信ができないような論理的な断線状態が発生した場合にはループバックができず、このため、通信を継続することができなくなる。
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、電気的には接続されていながら正常に通信ができないような論理的な断線状態が発生した場合であってもループバックを行なうことを可能にし、通信を継続することができるようにしたリング型ネットワークシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のリング型ネットワークシステムは、マスタ局およびスレーブ局からなる複数の局がディジーチェイン接続されてリング状の回線を構成したリング型ネットワークシステムであって、前記マスタ局は、 前記リング状の回線にフレームを周回させるフレーム送信手段と、このフレーム送信手段によって送信された前記フレームが戻らないことを検知する論理断線検出手段と、この論理断線検出手段によって前記フレームが戻らないことが検知されると断線検出フレームを該マスタ局に隣接するスレーブ局に送信する断線検出フレーム送信手段と、前記断線検出フレームを送信した後、前記断線検出フレームに対する応答フレームを前記マスタ局に隣接するスレーブ局から受信すると該スレーブ局との接続を維持し、前記断線検出応答フレームを前記マスタ局に隣接するスレーブ局から未受信のときには該スレーブ局との接続を断ち、前記回線をループバックする第1のループバック制御手段と、を有する第1の通信制御部を備え、前記スレーブ局は、前記断線検出フレームを送信した隣接局から送信された前記断線検出フレームを受信し、前記隣接局に前記応答フレームを送信する応答フレーム送信手段と、自局が中間局の場合に自局の下流に接続されるスレーブ局に前記断線検出フレームを中継する断線検出フレーム中継手段と、この断線検出フレーム中継手段によって前記断線検出フレームが中継された後、前記断線検出フレームに対する応答フレームを前記自局の下流に接続されるスレーブ局から受信すると該スレーブ局との接続を維持し、前記断線検出応答フレームを前記自局の下流に接続されるスレーブ局から未受信のときには前記自局の下流に接続される前記スレーブ局との接続を断ち、前記回線をループバックする第2のループバック制御手段と、を有する第2の通信制御部を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、マスタ局は、連続して通信失敗を検出した場合に隣接するスレーブ局に対して断線検出フレームを送信し、この断線検出フレームを受信したスレーブ局は、断線していないことを示す断線検出応答フレームを返信すると共に、他方の隣接局に断線検出フレームを送信する。そして、断線検出フレームを送信したマスタ局あるいはスレーブ局は、所定期間内にその応答が無い場合に断線と判断して自局を末端局としてループバックを行う。このため、ネットワークケーブルの劣化等により、電気的には接続されても正常に通信ができないような論理的断線状態であっても断線発生個所を特定することができ、ループバックにより正常な通信を継続することができる。
【0011】
また、本発明のリング型ネットワークシステムにおいて、前記断線検出フレーム送信手段は、前記マスタ局が末端局の場合にはその片端に接続された前記スレーブ局のみに前記断線検出フレームを送信し、前記マスタ局が中間局の場合には、隣接する両端の前記スレーブ局それぞれに前記断線検出フレームを送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリング型ネットワークシステムによれば、電気的には接続されていながら正常に通信ができないような論理的な断線状態が発生した場合であってもループバックを可能にし、通信を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るリング型ネットワークシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るリング型ネットワークシステムのマスタ局およびスレーブ局の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るリング型ネットワークシステムの動作を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るリング型ネットワークシステムのマスタ局の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係るリング型ネットワークシステムのスレーブ局の動作を示すフローチャートである。
【図6】従来のリング型ネットワークシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る好適な実施の形態(以下、本実施形態)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係るリング型ネットワークシステムの構成を示す図である。図1において、リング型ネットワークシステム10は、マスタ局1と、複数のスレーブ局#1(2)、#2(3)、#3(4)、#4(5)とが、ディジーチェイン接続されている。そして、末端局である局#2(3)と#3(4)それぞれによっての回線を折り返すことにより回線6をリング状にしている。
【0015】
マスタ局1は、図2に示されるように、ループバック制御部115を含むマスタ通信制御部11A、で構成される。マスタ通信制御部11Aは、送信が連続して失敗したことを検知したときに断線検出フレームを生成して隣接するスレーブ局#1(2)、#4(5)に送信し、この断線検出フレームを送信してから所定時間経過しても断線検出応答フレームを受信できない場合に、自局を末端局としてループバック制御部11Bによりループバックする機能を有する。
【0016】
図2に示されるように、マスタ通信制御部11Aは、主制御部110と、送受信部111と、論理断線検知部112と、断線検出フレーム生成部113と、応答判定部114と、ループバック制御部115とからなる。
【0017】
送受信部111は、隣接するスレーブ局#1(2)、#4(5)との間で回線6を経由したフレームの送受信を行う。論理断線検知部112は、送受信部111を介して回線6に送信されたフレームが、回線6を周回して正常に戻ったかをチェックする。そして、論理断線検知部112は、送信されたフレームが所定の時間連続して戻らないことを検知すると、「論理断線」と判定して断線検出フレーム生成部113に断線検出フレームの生成処理を開始させる。すなわち、論理断線検出部112は、送受信部111によるフレームの送信が所定時間連続して失敗しことで論理断線を検出し、断線検出フレーム生成部113に断線検出フレームの生成を指示する。
【0018】
この指示の下、断線検出フレーム生成部113は、断線検出フレームを生成し、送受信部111経由で、隣接するスレーブ局#1(2)、#4(5)に送信する。応答判定部114は、送受信部111が断線検出フレームを送信してから所定時間経過しても隣接局から断線検出応答フレームを受信できない場合に、隣接局との通信不可を検出する。この隣接局との通信不可の検知を基に、主制御部110は自局を末端局としてループバック制御部11Bにループバック制御を行なわせる。
【0019】
また、主制御部110は、論理断線が論理断線検知部112によって検知されたら、自局が末端局でない場合、すなわち中間局のときに、断線検出フレーム生成部によって生成された断線検出フレームを自局の両端のスレーブ局#1(2)、#4(5)に送信するよう送受信部111に指示する。
【0020】
一方、スレーブ局#4(5)は、図2に示されるように、ループバック制御部154を含むスレーブ通信制御部15Aで構成される。スレーブ通信制御部15Aは、断線検出フレームを受信したとき断線検出応答フレームを生成して断線検出フレームを送信した送信元局に返信し、自局が末端局でない場合、すなわち中間局のときに、送信元局以外の隣接する局に対して断線検出フレームを送信(中継)する機能を有する。また、スレーブ通信制御部15Aは、隣接する局間で通信可を検出するとその隣接局と接続し、隣接局間で通信不可を検出すると回線6をループバックする機能を有する。
【0021】
スレーブ通信制御部15Aは、主制御部150と、送受信部151と、断線検出フレーム周回制御部152と、応答判定部153と、ループバック制御部154とからなる。
送受信部151は、回線6を介し隣接するマスタ局1、スレーブ局#3(4)との間でフレームを送受信する。断線検出フレーム周回制御部152は、自局が末端局の場合には、送受信部151を介して断線検出フレームを受信した際、断線検出応答フレームを、断線検出フレームを送信した隣接する送信元局に対して返信する。また、断線検出フレーム周回制御部152は、自局が末端局でない場合に、すなわち中間局のときは、断線検出フレームを受信した際、断線検出応答フレームを、断線検出フレームを送信した隣接する送信元局に対して返信するとともに、もう片方に接続される隣接局に断線検出フレームを送信(中継)する。応答判定部153は、断線検出フレームが送信(中継)されてから所定時間経過しても断線検出応答フレームを受信できない場合に、自局を末端局としてループバック制御部154にループバックを実行させる。
【0022】
なお、主制御部150は、自局が末端局であるか否かの判定を行っている。自局が末端局でない(中間局)場合に、主制御部150は、前述断線検出フレーム受信の際の、断線検出応答フレームを生成して断線検出フレームを送信した送信元局(隣接局)に返信し、送信元局以外の隣接する局に対して断線検出フレームを送信するという機能と、断線検出フレームを送信してから所定時間経過しても断線検出応答フレームを受信できない場合に、自局を末端局とし、ループバック制御部15Bによりループバックを行なわせるという機能、すなわち「スレーブ通信制御部15A」としての機能を実現するために、上記した送受信部151、断線検出フレーム周回制御部152、応答判定部153、ループバック制御部154の制御を行う(詳細は後述)。
【0023】
すなわち、主制御部150は、断線検出フレームを監視し、断線検出フレームが受信されない場合に、受信した通常のフレームを下流に隣接するスレーブ局#3(4)に送信して通常のフレームを回線6に周回させるようにフレームの周回制御を行う。また、主制御部150は、断線検出フレームの受信が確認されると、断線検出フレームに対する応答を示す断線検出応答フレームを送信元のマスタ局1に対して返信するようにフレームの周回制御を行う。さらに、主制御部150は、自局が末端局であれば回線6の接続状態を維持し、中間局であれば、下流に隣接して位置するスレーブ局#3(4)に対して断線検出フレームを中継するフレームの周回制御を行う。
【0024】
なお、スレーブ局#1(2)、#2(3)、#3(4)ともに、上記したスレーブ局#4(5)と同じ構成を有するため、重複を回避する意味で構成の説明を省略する。
(実施形態の動作)
図3は、本実施形態に係るリング型ネットワークシステム10の動作を示すシーケンス図である。まず、図3のシーケンス図を参照しながら、図1に示すリング型ネットワークシステム10の概略動作を説明する。
【0025】
図3(a)は、正常通信時におけるフレームの周回の様子を示している。マスタ局1にて生成されたフレームは、隣接するスレーブ局#1(2)、#2(3)、#3(4)、#4(5)を順次周回して戻ってくる。このとき、マスタ局1は、周回して戻ってきたフレームのデータ化け等の異常を検知するためにCRCチェックを行っている。図3(b)に示されるように、スレーブ局#3(4)とスレーブ局#4(5)との間で論理断線が発生したとする。マスタ局1は、例えば10[ms]の間連続して通信が失敗した、すなわち10[ms]の間連続して周回フレームを正常に受信しないことによりこの論理断線を検出する。このとき、マスタ局1は、図3(c)に示されるように、隣接する両端のスレーブ局#1(2)、スレーブ局#4(5)それぞれに対して断線検出フレームを送信する。
【0026】
断線検出フレームを受信したスレーブ局#1(2)は、図3(d)に示されるように、断線していないことを、断線検出フレームの送信元局であるマスタ局1に断線検出応答フレームを送信することにより応答する。同時にスレーブ局#1(2)は、隣接して下流に位置するスレーブ局#2(3)に対して断線検出フレームを送信(中継)し、断線検出フレームを周回させる。同じく、断線検出フレームを受信したスレーブ局#4(5)は、断線していないことを、断線検出フレームの送信元局であるマスタ局1に断線検出応答フレームを送信することにより応答する。同時にスレーブ局#4(5)は隣接して下流に位置するスレーブ局#3(4)に対して断線検出フレームを送信(中継)し、断線検出フレームを周回させる。
【0027】
このとき、図3(e)に示されるように、スレーブ局#4(5)は、自局が送信した断線検出フレームに対するスレーブ局#3(4)からの応答が10[ms]経過しても無いことから断線を検出し、自局を末端局とするループバックを実施する。以降、図3(f)に示されるように、スレーブ局#3(4)は、ネットワーク(回線6)から切り離され、縮退された構成にてフレームが周回される。
【0028】
次に、図4、図5に示すフローチャートを参照しながら、図2に示すマスタ局1におけるマスタ通信制御部11Aと、スレーブ局#4(5)におけるスレーブ通信制御部15Aの動作について詳細に説明する。
【0029】
図4に示されるように、マスタ局1は送受信部111を介して自局で生成したフレームを送信する。この送信の後、マスタ局1は送信したフレームがスレーブ局#1(2)、#2(3)、#3(4)、#4(5)を経由して正常に周回されるか常時監視している(ステップS11、S12)。例えば、10msの間連続してフレームが戻らないことを論理断線検知部112が検知すると(ステップS12“NO”)、論理断線検知部112は断線検出フレーム生成部113に対し、断線検出フレームの生成を指示する。
【0030】
このとき、主制御部110は、自局が末端局であるか否かを判定する(ステップS13)。末端局でなければ(ステップS13“NO”)、断線検出フレーム生成部113によって生成された断線検出フレームを、自局の両端に接続されたスレーブ局#1(2)とスレーブ局#4(5)に送信するように送受信部111に指示する(ステップS15)。一方、例えば、マスタ局1の左手のスレーブ局が接続されてないようなとき、マスタ局1は末端局として動作するが、自局が末端局であれば(ステップS13“YES”)その片端に接続されたスレーブ局#1(2)のみに、断線検出フレームを送信するように送受信部111に指示する(ステップS14)。
【0031】
なお、自局が末端局であるか否かを検出する方法としては、自局の受信ポートの受信キャリアを検出することで判定することができる。例えば、両受信ポートの受信キャリアが検出されれば自局は末端局ではなく、片方の受信ポートのキャリアのみが検出されれば自局は末端局であると判定する。なお、両方の受信ポートのキャリアが検出されない場合は、自局はネットワークに接続されてなく、孤立していると判定される。
【0032】
さらにマスタ局1は、送信した断線検出フレームに対して応答フレームが受信されるか応答判定部114により監視している(ステップS16)。例えば、断線検出フレームを送信してから時間監視し、2ms経過しても断線検出応答フレームが受信されない場合(タイムアウト発生:ステップS17“YES”)、応答判定部114は隣接局との通信が不可であることを検出し、主制御部110に通知する。この通知に伴い、主制御部110は、ループバック制御部115にループバックを指示し、自局を末端局としてループバックする(ステップS18)。なお、タイムアウトを検出することなく断線検出応答フレームを受信できた場合、(ステップS17“NO”)、応答判定部114は、断線検出応答フレームの受信を主制御部110に通知する。この通知の下、主制御部110は、ループバック制御部115への指示をそのまま維持し、回線の接続状態を維持する。
【0033】
次に、スレーブ局#4(5)の動作について説明する。図5において、スレーブ局#4(5)は、主制御部150にて、マスタ局1により送信され送受信部151で受信される断線検出フレームを監視している(ステップS21)。断線検出フレームが受信されない場合(ステップS21“NO”)、主制御部150は、受信した通常のフレームを、下流に隣接するスレーブ局#3(4)に送信するよう送受信部151に指示し、通常のフレームを回線6に周回させる。
【0034】
主制御部150は、断線検出フレームの受信が確認されると(ステップS21“YES”)、断線検出フレームに対する応答を示す断線検出応答フレームを送信元のマスタ局1に対して返信する(ステップS22)。この後、主制御部150は、自局が末端局であるか否か判定し(ステップS23)、自局が末端局であれば(ステップS23“YES”)、ループバック制御部への指示を維持して回線の接続状態を維持する。自局が末端局でない、すなわち中間局のとき、(ステップS23“NO”)、主制御部150は、下流に隣接して位置するスレーブ局#3(4)に対して断線検出フレームを送信(中継)するように断線検出フレーム周回制御部152に指示する(ステップS24)。そして、スレーブ局#4(5)は、送信した断線検出フレームに対するスレーブ局#3(4)からの応答の監視を応答判定部153で行なう(ステップS25)。
【0035】
なお、自局が末端局であるか否かを検出する方法としては、前述したマスタ局と同様である。
ここで、応答判定部153は、断線検出フレームがスレーブ局#3(4)に送信されてから、例えば、2msの間に断線検出応答フレームを受信しない場合(ステップS26“YES”)タイムアウトとし、主制御部150にタイムアウトの検知を通知する。この通知の下、主制御部150はループバック制御部154にループバックを指示し自局を末端局としてループバックする(ステップS27)。その結果、回線6はスレーブ局#4(5)より下流の局が切り離され、スレーブ局#3(4)よりも上流の局のみでリング状の伝送経路が再構築される。以降、局が縮退された状態でフレームが周回される。
【0036】
なお、ステップS26においてタイムアウトを検出することなくスレーブ局#2(3)から断線検出応答フレームを受信できた場合(ステップS26“NO”)、応答判定部153は、断線検出応答フレームの受信を主制御部150に通知する。この通知の基、主制御部150はループバック制御部154への指示をそのまま維持し、回線の接続状態を維持する。
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係るリング型ネットワークシステム10によれば、マスタ局1は、送信が連続して失敗したことを検知したときに断線検出フレームを生成して隣接するスレーブ局#1(2)、#4(5)に送信する。スレーブ局#4(5)では、断線検出フレームを受信したときに応答し、自局が末端局でない場合、すなわち中間局のときに、送信元局以外の隣接局#3(4)に対して断線検出フレームを送信する。そして、スレーブ局#4(5)では、断線検出フレームを送信してから所定時間経過しても隣接局#3(4)からその応答を受信できない場合に、自局を末端局としてループバックする。このとき、スレーブ局#3(4)をネットワークから切り離し、縮退構成で通信を継続させる。したがって、例えば、ネットワークケーブルの劣化等により、電気的には接続されても正常に通信ができないような論理的断線状態であっても断線発生個所を特定することができ、ループバックにより正常な通信を継続することができる。
【0037】
また、(ステップS12“YES”)、(ステップS17“NO”)、(ステップS21“NO”)、(ステップS23“YES”)、(ステップS26“NO”)、を通るルートは、回線の接続状態を維持することになる。このため、一旦ループバックが作動され、回線が縮退された状態になると、その状態が維持される。すなわち、本発明は、ネットワークケーブルの損傷や接触不良等が生じても、回線を縮退方向のみに維持するように作用するので、局の脱落と加入が繰り返されるような通信が不安定な状態を回避することができ、高信頼なリング型ネットワークシステムを提供することができる。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0039】
なお、図4のステップS11がフレーム送信手段に対応し、図4のステップS12が論理断線検出手段に対応し、図4のステップS14やステップS15が断線検出フレーム送信手段に対応し、図4のステップS16〜S18が第1のループバック制御手段に対応している。
【0040】
また、図5のステップS21およびステップS21に係るステップS22が応答フレーム送信手段に対応し、図5のステップS24が断線検出フレーム中継手段に対応し、図5のステップS26およびステップS26に係るステップS27が第2のループバック制御手段に対応している。
【符号の説明】
【0041】
1 マスタ局
2、3、4、5 スレーブ局#1〜#4
6 回線
10 リング型ネットワークシステム
11A マスタ通信制御部
12A スレーブ通信制御部
110、150 主制御部
111、151 送受信部
112 論理断線検知部
113 断線検出フレーム生成部
114、153 応答判定部
115、154 ループバック制御部
152 断線検出フレーム周回制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ局およびスレーブ局からなる複数の局がディジーチェイン接続されてリング状の回線を構成したリング型ネットワークシステムであって、
前記マスタ局は、
前記リング状の回線にフレームを周回させるフレーム送信手段と、
このフレーム送信手段によって送信された前記フレームが戻らないことを検知する論理断線検出手段と、
この論理断線検出手段によって前記フレームが戻らないことが検知されると断線検出フレームを該マスタ局に隣接するスレーブ局に送信する断線検出フレーム送信手段と、
前記断線検出フレームを送信した後、前記断線検出フレームに対する応答フレームを前記マスタ局に隣接するスレーブ局から受信すると該スレーブ局との接続を維持し、前記断線検出応答フレームを前記マスタ局に隣接するスレーブ局から未受信のときには該スレーブ局との接続を断ち、前記回線をループバックする第1のループバック制御手段と、を有する第1の通信制御部を備え、
前記スレーブ局は、
前記断線検出フレームを送信した隣接局から送信された前記断線検出フレームを受信し、前記隣接局に前記応答フレームを送信する応答フレーム送信手段と、
自局が中間局の場合に自局の下流に接続されるスレーブ局に前記断線検出フレームを中継する断線検出フレーム中継手段と、
この断線検出フレーム中継手段によって前記断線検出フレームが中継された後、前記断線検出フレームに対する応答フレームを前記自局の下流に接続されるスレーブ局から受信すると該スレーブ局との接続を維持し、前記断線検出応答フレームを前記自局の下流に接続されるスレーブ局から未受信のときには前記自局の下流に接続される前記スレーブ局との接続を断ち、前記回線をループバックする第2のループバック制御手段と、を有する第2の通信制御部を備えることを特徴とするリング型ネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のリング型ネットワークシステムにおいて、
前記断線検出フレーム送信手段は、
前記マスタ局が末端局の場合にはその片端に接続された前記スレーブ局のみに前記断線検出フレームを送信し、前記マスタ局が中間局の場合には、隣接する両端の前記スレーブ局それぞれに前記断線検出フレームを送信することを特徴とするリング型ネットワークシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−182512(P2012−182512A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42001(P2011−42001)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】