説明

リング形成方法

既定の長さに棒体を切断するステップと、ブランク(10)を形成するために、前記棒体の長手方向に沿って前記棒体にスリットを切削するステップと、ツールに前記ブランク(10)を挿入するステップと、前記ブランクの端部に圧縮力を加えると同時に前記スリットの中間を伸ばすステップと、ブランクが円形になるまでスリットの中間を延ばすステップとを備えるリング製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リングを形成する方法に関し、より詳しくは、スリットブランクの端部に圧縮力を加えると同時に、そのブランクの中間を伸ばすことによってリングを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チューブ状のリングは、産業における多くのアプリケーションで用いられている。リングは、多くのアプリケーションに対して、ブローチされ、ホビングされ、マシニングされ、グラウンドされ、又はそのまま用いられる。アプリケーションは、ギア、スタータギア、クラッチハブ、スプロケット、プーリ、クランクシャフトダンパ、及び多くの他の製品を含む。
【0003】
チューブ状リングを製造するため多くの既存の技術が存在する。いくつかの公知の方法は、バーストックからフープ(輪)を作って接合部を溶接し、チューブを作ってそれを切断し、カップを深絞りして、カップのフェースを除去し、シートメタルからブランクをローリング、フォージング、キャスティング、又はスピニングしてブランクを広げることを含む。
【0004】
これら全ての処理は適合するが、リング生産のコスト又は品質が常に問題となる。例えば、ギア、プーリ、スプラインドリングをさらに製造するため、リングが流動成型されるとき、フープは溶接領域に問題を抱える。さらに、溶接領域を焼きならしするための熱処理及び/又は溶接の洗浄、及び溶接は、高価になる。
【0005】
継ぎ目無しチューブの切断は高価であり、圧力によるカップ作成及びフェース除去は、必要以上の廃棄物を生む。
【0006】
この技術を示す文献は、予熱されたバーから始まる処理を開示する米国特許第4,590,780号明細書である。機械における第1の形成ステージで階段形状の被圧縮物体へと形成される部位(41)を始めに切り出す。第2の形成ステージでは、被圧縮物体は、インナリング(J)と、これに対して同軸に設けられるアウタリング(A)と、2つのリング(J、A)を接続するラジアル環状ウェブ(S)とを有するように、さらに形成される。それゆえに、切り出されたアウターリング(44)は、最後のステージに隣接するステージで取り出され、その一方でアウタリング(44)から分離されたインナリング(45)が最後の作業ステージにおいて更なる作業を受ける。この最後の作業ステージは、廃棄物(35)の打ち抜きと、環状ウェブ(38)の切り出しとを有する。残ったインナリング(22a)を反転させるために、この最終作業ステージにおける形成作業を実行することもまた可能である。最後の作業ステージにおいて完成したアウタリング(44)の除去を行うこの処理によって、ラジアル環状ウェブ(38)は、切り出し作業の間、その全切断面に渡って支持されうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
要求されるものは、ブランクの端部に圧縮力を加えると同時に、スリットブランクの中間を伸ばすことによってリングを形成する方法である。本願発明はこの要求に合致する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の第1の特徴は、ブランクの端部に圧縮力を加えると同時に、スリットブランクの中間を伸ばすことによってリングを形成する方法を提供することである。
【0009】
本願発明の他の特徴は、本発明に対する以下の説明及び付随する図面により指摘され、明らかにされる。
【0010】
本願発明は、既定の長さに棒体を切断するステップと、ブランクを形成するために、前記棒体の長手方向に沿って前記棒体にスリットを切削するステップと、ツールに前記ブランクを挿入するステップと、前記ブランクの端部に圧縮力を加えると同時に前記スリットの中間を伸ばすステップと、ブランクが円形になるまでスリットの中間を延ばすステップとを備える、リングを製造する方法を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
この明細書に含まれ、そして一部を形成する付随する図面は、本発明の好ましい実施形態を表し、この明細書と共に本発明の原理を説明するために役立つ。
【図1】ブランクの平面図である。
【図2】ツールに据え付けられたブランクの側面図である。
【図3】ツールに据え付けられたブランクの側面図である。
【図4】中間ステップにおけるブランクの斜視図である。
【図5】ツールに据え付けられたブランクの側面図である。
【図6】最終加工されたリングの斜視図である。
【図7】ツールに据え付けられたブランクの平面斜視図である。
【図8】ツールに据え付けられたブランクの平面斜視図である。
【図9】ツールに据え付けられたブランクの側面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、バーストックから環状リングを製造する処理を備える。長方形のバーストックが好ましいが、任意の他の形状(円形、六角形など)もまた用いられてもよい。
【0013】
製造されたリングは、ギア、プーリ、スプロケット、ベアリングレース、ワンウェイクラッチレース、クランクシャフトダンパイナーシャリング、及び類似の製品に用いられ得る。
【0014】
図1は、ブランクの平面図である。本処理は、望ましい長さ(L)及び幅(W)を有するブランク10から切り出された単純なバーストックのような母材を用いて開始される。母材は、バーストック以外のものであっても良く、平板、円形、あるいは金属材料の入手可能な任意の他の形態を含む。この例示の目的のため、長方形のバーストックが用いられる。切り出された長方形のブランクの端部における4つの角11が、本処理を促進するため、そしてブランクを均一な厚さにするため、公知の処理を用いて丸められる。
【0015】
ブランクは、その長手方向に対して(その長さに沿って)伸びる中間においてスリット12を形成するために切削される。スリットは、レーザ、あるいは高圧ウォータージェット、レーザ、プラズマ、研磨カッター、ミリング、又は他の手段を含むがそれらに限定されない他の切削手段を用いて切削される。スリットの各端部において、円孔(radius)13は、伸ばすステップにおいてクラックの生成を防止し、厚さの均一性を維持する。スリットの幅は、廃棄物を減らすため最小限にとどめられる。
【0016】
図2は、ツールに据え付けられたブランクの側面図である。ブランク10は、その後プレスに持ち込まれる。曲線状に厚くなり、かつ円形のポスト20は、開口するスリットにおいてブランクへ圧入され、スリットを伸ばす。ポストは、スリットに中間で始めに接触する。
【0017】
ポスト20の端部22は、スリット12と係合する刃を備える。ポスト20は、公知の液圧ラム200を用いて、ブランク10を介して受けメスダイ21に圧入される。
【0018】
リングの内径(ID)の最終寸法と同じくらいの大きさである下部サポートダイ21を使用することにより、ブランクは特定の範囲、約50%まで伸ばされるが、それは曲がる傾向があり、単一平面上で伸びつづけない。それゆえ、ブランクが曲げられているときにブランクを適切に支持するため、そして形成する間にそれが曲がってしまうことを防ぐため、次第に大きくなる下部ツーリング開口及び厚くかつ円形になるポストと共に、マルチステーションツーリング又は伸展可能(スライドする)下部ツーリング支持ツーリングのうちいずれかが、ここに説明されるように用いられ得る。
【0019】
ポスト20の最大外直径は、必要とされる任意の機械加工を引いた、最終仕上げされたリングの好ましい内直径、図6参照、と実質的に一致する。
【0020】
図3は、ツールに据え付けられたブランクの側面図である。金属成形において張力は好ましくなく、圧縮力が好ましいため、端部が引き離されて失敗することを防止するために、本処理は押す、つまり、ポスト20によりそれがまた伸ばされるときに、ブランクの端部に同時に圧縮力を加える。
【0021】
スリットにポスト20を推進する間に、ブランク10の端部101、102に圧縮力を加えると、ブランクが円形リングへと次第に形成される。圧縮力は、シュー23、24を介してブランクの端部101、102に加えられる。シュー23、24は、公知の手段で公知の液圧ラム201及び202によって加圧される。
【0022】
図4は、中間ステップにおけるブランクの斜視図である。スリット12は、ある程度開口して図示される。ポスト20の全外径は、ブランク10と未だ係合しておらず、そのため、それは未だ完全に円形にされていない。シュー23、24は、ブランクの端部101、102と係合する。
【0023】
図5は、ツールに据え付けられたブランクの側面図である。ポスト20の全外直径は、ブランク10と完全に係合して図示される。ブランク10は、それゆえに、完全に円形となる。形成を制御し、かつブランクが”四角くなる”ことを防ぐため、ブランク10に対してシュー23、24が押圧される。
【0024】
図6は、最終加工されたリングの斜視図である。リング10の内径(ID)は、ポスト20の外径(OD)と実質的に合致する。
【0025】
一度ポストにリングが形成されると、それは取り外されて、すぐに使える状態になる。望まれ、かつ要求される場合、例えば、マシニング、ローリング、スピニング、フォージング、サイジング、グライディングなどの最終工程に対し、それがすぐに使える状態になる。形成されたリングは、その後、非常に正確な寸法、及び/又は非常に微細な表面仕上げを得るためにプレスのアイロニングダイ内で寸法を整えられる。
【0026】
本方法の他の種類は、幾分四角形状に伸ばされ、その後、単純な回転フォージング作業において円形にされるブランクを明らかにする。他の実施形態は、四角形のブランクを取得し、円形のリングにそれをスピニング、あるいは円形のリングを得るためにリングローリング処理を用いる。
【0027】
さらに、リングは円形の最終形状まで形成され、あるいは、最終寸法及び丸め処理のために再度ツーリングするプレスにそれが導かれる。これらの追加の処理に対するニーズは、硬い材料、例えば合金鋼、又はハイカーボンスチールが用いられるときに増加する。硬い鋼は、説明された圧縮ツーリングで形成されうるが、それらは、亀裂を防止するためインナスリットの端部において大きな直径を必要とする。それらはまた、熱間成形(常に摂氏600から1100度)、あるいは温間成形(摂氏600度まで)を必要としても良い。
【0028】
もとのバーストックの幾何学的な側面、すなわち長さ、外周端回りの円孔、スリット端部において丸められた円孔の直径、及びスリットの厚さは、最小限の廃棄物で精度を最適化するために容易に選択されうる、全ての適切な変形である。
【0029】
ツーリングの設計は、複雑さを減少するために適切になされる。ツーリングは、次第に大きくなる下部ツーリング及び次第に厚くかつ円形になる上部ツーリングを有する小数のプレスステーション又は伸展可能な下部ツーリングと共に、1つの長いポストを備える。さらに、スリット端部における非常に大きな円形状がスリット領域の端部における成形処理を容易にするような、”犬の骨”形に予成形されたブランクが、非常に硬い材料においてスリットの端部での不良を防ぐため、作られても良い。
【0030】
図7は、ツールに据え付けられたブランクの平面斜視図である。ブランク10は、カラー25に設けられて図示される。カラー25は、成形処理に先立ち、かつその間、ブランクの一を制御する。シュー23、24は、その間にブランク10が挿入されるように、回収されて図示される。部材26、27は、シュー23、24の間にブランクを支持する。
【0031】
図7、8、9のシュー23、24は、図2、3、5に示されるそれらと同じである。
【0032】
図8は、ツールに据え付けられたブランクの平面斜視図である。ブランク10は、部材26、27をより良く示すために省略される。部材26、27は、シュー23、24の圧縮力ベクトルに対して直角なベクトル方向への力を加え、そして、ブランク10のスリットにポスト20が圧入されるとき、同時に回収、つまり、ポスト20に合わせて互いに離れるように移動する。これは、ブランク10が形成されるときにブランク10に対する必須の支持を提供する。言い換えると、部材26、27は、スリットの伸展方向に対して直角な軸方向変形を防止するため、ブランクを支持する。これは、ポスト20の移動方向に対してブランクが変形することを防止する。ポスト20は、軸方向に対する移動を特徴とする。
【0033】
図9は、ツールに据え付けられたブランクの側面斜視図である。スリット12への挿入開始時におけるポスト20が図示される。刃22がスリット12と係合して図示される。ポスト20はスリット12に圧入されて、それによりスリットの中間を伸ばし続けると同時に、シュー23、24がブランクの端部を圧縮する。ポスト20は、ブランク10に圧入され、それによりブランクが円形になるまでスリットの中間を伸ばし続ける。ポスト20は、その後回収され、そして形成されたリングが取り出される。
【0034】
ここに本発明の複数の実施形態が説明されたが、記載された発明の範囲と精神から逸脱することなく、変形が各部の関係と構造に施されることは、当業者にとって自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既定の長さに棒体を切断するステップと、ブランクを形成するために、前記棒体の長手方向に沿って前記棒体にスリットを切削するステップと、ツールに前記ブランクを挿入するステップと、前記ブランクの端部に圧縮力を加えると同時に前記スリットの中間を伸ばすステップと、ブランクが円形になるまでスリットの中間を延ばすステップとを備えるリング製造方法。
【請求項2】
同時に加えられた圧縮力に対して直角方向に前記ブランクを支持するステップをさらに備える請求項1に記載のリング製造方法。
【請求項3】
前記スリットの各端部に円孔を切削形成するステップをさらに備える請求項1に記載のリング製造方法。
【請求項4】
形成されたブランクを前記ツールから取り出すステップと、最終寸法及び形状に前記形成されたブランクを最終加工するステップをさらに備える請求項1に記載のリング製造方法。
【請求項5】
前記スリットを伸ばす方向に対して直角である軸方向変形を防止するため、前記ブランクを支持するステップをさらに備える請求項1に記載のリング製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−521791(P2011−521791A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512448(P2011−512448)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/003059
【国際公開番号】WO2009/148496
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】