説明

リン含有テトラカルボン酸二無水物及び難燃性ポリイミド

【課題】優れた難燃特性を発揮するポリイミド及びその前駆体であるポリアミド酸を提供する。
【解決手段】下記一般式(I):


(式中、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、フェニル基又はフェノキシ基等である。)で表わされるリン含有テトラカルボン酸二無水物、並びにそれらを原料として製造されるポリイミド及びその前駆体であるポリアミド酸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン含有テトラカルボン酸二無水物、それを使用して製造される難燃性のリン含有ポリアミド酸及びリン含有ポリイミド、並びにこれらのリン含有ポリアミド酸又はポリイミドを用いて製造される各種積層体、及びこれらの積層体を用いて製造されるフレキシブルプリント配線板等の電子回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリイミドは、難燃性、耐熱性、機械特性、電気特性等に優れている為、フレキシブルプリント配線板の基板材料、配線や半導体素子の保護膜、耐熱性接着剤、層間絶縁材料等として広く使用されている。
【0003】
近年、電気・電子機器等の軽薄短小化のニーズに応えるべく、電気・電子機器等に使用されるポリイミドの薄膜化が望まれている。しかしながら、ポリイミドの薄膜化に伴ってポリイミドの難燃性は低下する傾向がある。また、近年電子機器内の使用部品及び素子、CPUの高性能化に伴って、その発熱量が著しく増加し、機器内の平均温度も上昇する傾向にあり、より高度な難燃技術が望まれている。一方、環境問題の観点から電気・電子製品に要求される難燃性を付与する際にも、自然環境や人体に対する安全性を考慮した、より安全性の高い手段が求められている。
【0004】
ポリイミドに難燃性を付与する技術としては、シロキサン変性されたポリイミドに水酸化マグネシウムなどの金属水和物を混合する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながらこの方法では、別途水酸化マグネシウムにリン酸系界面活性剤による表面処理を施さなければならず、工程が煩雑になる。加えてこの方法では、ベースポリマーに使用するジアミン成分として、分子内に水酸基を2個以上有するジアミンが推奨されているが、このようなジアミンは容易に入手できるとは言えないものもある。
【0005】
また、シリコンユニットを含有する特定のポリイミド樹脂とリン元素を含有する特定のエポキシ樹脂とを使用することで難燃性を発現させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、リン化合物とエポキシ樹脂とを反応させ、目的とするリン含有エポキシ樹脂が得られるが、エポキシ樹脂としての機能を有するためには、好ましくは2つのエポキシ基が残るように反応を行わなければならず、リン含有率の上限値は5重量%に過ぎない。シリコンユニットを導入したポリイミド樹脂は燃え易い性質を持つために、この方法で得られるポリイミド樹脂組成物に十分な難燃性を付与するためには、耐熱性の低いエポキシ樹脂を多く混合しなければならない。
【0006】
さらには、樹脂組成物に難燃性を付与する方法としては、樹脂組成物にリン化合物を添加する方法が知られている(例えば、非特許文献1)。しかしながら、従来公知の技術で難燃性を発現させるためには、リン化合物を大量に添加する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−63459号公報
【特許文献2】特開2009−29982号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ノンハロゲン系難燃材料による難燃化技術(エヌ・ティー・エス)、p.28(2001年発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、リン含有テトラカルボン酸又はその酸二無水物及びそれらを原料として製造され、優れた難燃特性を発揮するポリイミド及びその前駆体であるポリアミド酸を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、特定の構造を有するリン化合物と特定の構造を有する酸二無水物とが反応すること、並びにその反応より得られる特定の構造を有するリン含有テトラカルボン酸二無水物を用いて製造されるポリイミド及びその前駆体であるポリアミド酸が、従来のポリイミドの性質を損なうことなくさらに優れた難燃性を有することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記一般式(I):
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、フェニル基又はフェノキシ基であり、ここでRとRのベンゼン環上の水素原子の少なくとも一つが、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されていてもよく、及び/又はRとRそれぞれのベンゼン環上の炭素原子の一つが、互いに単結合で結ばれていてもよい)
で表わされるリン含有テトラカルボン酸二無水物に関する。
【0013】
さらに本発明は、これらのリン含有テトラカルボン酸二無水物を用いて製造される下記一般式(II):
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、フェニル基又はフェノキシ基であり、ここでRとRそれぞれのベンゼン環上の水素原子の少なくとも一つが、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されていてもよく、及び/又はRとRそれぞれのベンゼン環上の炭素原子の一つが、互いに単結合で結ばれていてもよく、Rは二価の有機基を表す)
で表わされる繰り返し単位を有するリン含有ポリイミドに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のリン含有テトラカルボン酸二無水物は、難燃性を有するリン含有ポリイミドの原料として、又はエポキシ樹脂の硬化剤、改質剤として有用である。またこのリン含有テトラカルボン酸二無水物を用いて製造された難燃性ポリイミドは、難燃性を有する耐熱性接着剤、難燃性を有する電子回路基板の絶縁材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1で得られた化合物(一般式(I)において、R及びRが共にフェニル基であるもの)の1H−NMRチャートを示す。
【図2】実施例1で得られた化合物(一般式(I)において、R及びRが共にフェニル基であるもの)の13C−NMRチャートを示す。
【図3】実施例1で得られた化合物(一般式(I)において、R及びRが共にフェニル基であるもの)のFT−IRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
「リン含有テトラカルボン酸二無水物の製造方法」
本発明の一般式(I)で表わされるリン含有テトラカルボン酸二無水物は、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と下記式(1):
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、フェニル基又はフェノキシ基であり、ここでRとRそれぞれのベンゼン環上の水素原子の少なくとも一つが、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されていてもよく、及び/又はRとRそれぞれのベンゼン環上の炭素原子の一つが、互いに単結合で結ばれていてもよい)
で表わされるリン化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0022】
ここで用いられるベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0023】
式(1)で表わされるリン化合物としては、R及びRが、共にフェニル基である(ここで、ベンゼン環上の水素原子の少なくとも一つが、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシル基で置換されていてもよい)ものが好ましく、具体例としては、下記式(1a):
【0024】
【化4】


で表わされるジフェニルホスフィンオキシド(DPO)が挙げられる。
【0025】
同様に、式(1)で表わされるリン化合物としては、RとRの一方がフェニル基であり、他方がフェノキシ基であって、それぞれのベンゼン環上の炭素原子の一つが、互いに単結合で結ばれている(ここで、ベンゼン環上の水素原子の少なくとも一つが、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシル基で置換されていてもよい)ものが好ましく、具体例としては、下記式(1b):
【0026】
【化5】


で表わされる9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(HCA)が挙げられる。
【0027】
ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と式(1)で表わされるリン化合物との反応により、本発明の一般式(I):
【0028】
【化6】

【0029】
(式中、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、フェニル基又はフェノキシ基であり、ここでRとRのベンゼン環上の水素原子の少なくとも一つが、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されていてもよく、及び/又はRとRそれぞれのベンゼン環上の炭素原子の一つが、互いに単結合で結ばれていてもよい)
で表わされるリン含有テトラカルボン酸二無水物を得ることができる。具体例としては、下記式(Ia):
【0030】
【化7】


又は式(Ib):
【0031】
【化8】


(式中、R′及びR′は、同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシル基である)
で表わされるリン含有テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
【0032】
この反応は、40〜250℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは70〜180℃の温度で、1分〜12時間、好ましくは5分〜6時間、より好ましくは10分〜3時間加熱することによって行うことができる。
【0033】
この反応には、溶媒を使用してもよい。使用する溶媒は、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、所望する反応温度に応じて適宜選択される。単独で、又は2種類以上の溶媒を任意の割合で混合して用いてもよい。例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンのような芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジグリム、トリグリムのようなエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような非プロトン性極性溶媒などが使用できる。溶媒の使用量は、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物に対して50〜1000重量%、好ましくは100〜500重量%である。
【0034】
反応終了後、反応液を濃縮することによって粗生成物を得ることができる。粗生成物を極性溶媒、例えば、アセトニトリル、酢酸エチル、メチルイソブチルケトンのような溶媒で洗浄することによって精製することができる。洗浄した結晶を濾別し、減圧下又は常圧下にて40〜250℃、好ましくは80〜200℃の温度で乾燥させ目的物を得る。
【0035】
「リン含有ポリアミド酸の製造方法」
本発明の難燃性のリン含有ポリイミドの製造は、まずその前駆体である下記一般式(III):
【0036】
【化9】

【0037】
(式中、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、フェニル基又はフェノキシ基であり、ここでRとRそれぞれのベンゼン環上の水素原子の少なくとも一つが、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されていてもよく、及び/又はRとRそれぞれのベンゼン環上の炭素原子の一つが、互いに単結合で結ばれていてもよく、Rは二価の有機基を表す)
で表わされる繰り返し単位を有するリン含有ポリアミド酸を製造する。リン含有ポリアミド酸の製造は、上記の方法で得られたリン含有テトラカルボン酸二無水物と、式:HN−R−NHで表わされるジアミン成分とを公知の方法で重合することによって製造できる。通常、重合反応は溶媒中で5〜80重量%、好ましくは10〜50重量%の溶質濃度で行われる。反応終了後、反応溶液は、そのままリン含有ポリアミド酸溶液(ワニス)として、続くイミド化反応で使用することができる。また、反応溶液からリン含有ポリアミド酸を単離し、次いで適切な溶媒に再溶解し、リン含有ポリアミド酸溶液を調製してもよい。
【0038】
式:HN−R−NHで表わされるジアミン成分は、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン又は脂環式ジアミンであってよく、したがってRの例としては、炭素数6〜14の単環式若しくは縮合多環式芳香族化合物の二価の基(例えば、フェニレン、インデニレン、ナフチレン、フルオレニレン)、炭素数2〜12の脂肪族化合物の二価の基(例えば、炭素数2〜12のアルカンジイル、アルケニレン又はアルキニレン)又は炭素数3〜10の脂環式化合物の二価の基(例えば、炭素数3〜10のシクロアルキレン又はシクロアルケニレン)、あるいは同一であっても異なっていてもよい、2つ以上の前記二価の基が、直接もしくは架橋員(ここで架橋員とは、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO−、−S−、−CH−、−C(CH−及び−C(CF−からなる群から選択される)により相互に連結されたもの(例えば、ビフェニル−4,4’−ジイル、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイル、ジフェニルエーテル−3,4’−ジイル、ベンゾフェノン−4,4’−ジイル)を挙げることができる。これらの芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン又は脂環式ジアミンは、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基若しくはアルコキシル基、又はハロゲン原子から選択される1つ以上の置換基を有していてもよい。
【0039】
ここで用いられる芳香族ジアミン成分の例としては、芳香族基を1つ有するもの:p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−アミノベンジルアミン、m−アミノベンジルアミン、ジアミノトルエン類、ジアミノキシレン類、ジアミノナフタレン類、ジアミノアントラセン類など、芳香族基を2つ有するもの:4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、o−トリジン、m−トリジン、o−ジアニシジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェノキシ)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパンなど、芳香族基を3つ有するもの:1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンなど、芳香族基を4つ以上有するもの:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾフェノン、1,4−ビス[4−(2−,3−若しくは4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(2−,3−若しくは4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[3−(2−,3−若しくは4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[3−(2−,3−若しくは4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(2−,3−若しくは4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(2−,3−若しくは4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(2−,3−若しくは4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ビフェニル、4,4’−ビス[3−(2−,3−若しくは4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ビフェニル、4,4’−ビス[4−(2−,3−若しくは4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[3−(2−,3−若しくは4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルスルホンなどが挙げられる。またこれらの芳香族環上の水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基若しくはアルコキシル基、又はハロゲン原子から選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。入手の容易さを考慮に入れると、具体的に4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンの使用が好ましい。
【0040】
ここで用いられる脂肪族又は脂環式ジアミン成分の例としては、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,3−ジアミノペンタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。入手の容易さを考慮に入れると、具体的に1,6−ジアミノヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミンの使用が好ましい。
【0041】
上記のようなジアミン成分を単独又は2種類以上混合して使用してもよい。さらに下記式(IV):
【0042】
【化10】

【0043】
(式中、mは0〜20の整数の混合値であり、Rはメチル、イソプロピル、フェニル、ビニル基を示し、R5は、炭素数1〜7の炭化水素の二価の基、例えばトリメチレン、テトラメチレン、フェニレンなどを示す)で表されるシロキサンジアミンを、ジアミン成分の1〜50モル%の範囲で用いて共重合させてもよい。
【0044】
さらに分子量を調整する目的でモノアミン化合物やジカルボン酸無水物を添加してもよい。使用されるモノアミン化合物として、アニリン、4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノビフェニル、4−フェノキシアニリン、3−アミノフェニルアセチレン、4−アミノフェニルアセチレンなどであり、ジカルボン酸無水物として、マレイン酸無水物、無水フタル酸、4−フェニルエチニル無水フタル酸、4−エチニル無水フタル酸、トリメリト酸などである。モノアミン化合物やジカルボン酸無水物の添加量は、目的とするリン含有ポリイミドの分子量によって異なるが、通常は使用するすべての酸二無水物とジアミン化合物とのモル数の差の1.0〜数倍のモル数であり、好ましくは1.5〜4.0倍である。酸二無水物が多い場合にはモノアミン化合物、ジアミン化合物が多い場合にはジカルボン酸無水物を加える。
【0045】
本発明のリン含有ポリアミド酸の製造に使用される溶媒は、反応に不活性な溶媒なら特に限定されず、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチルウレア、テトラヒドロフランなどを単独又は混合形態で使用することができる。特に好ましいのは、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンである。またこれらの溶媒にトルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジグリム、トリグリム等の溶媒を任意の割合で混合して用いてもよい。これらの溶媒はまた、単離したリン含有ポリアミド酸の再溶解によりリン含有ポリアミド酸溶液を調製する際に使用してもよい。
【0046】
本発明の一般式(III)で表される繰り返し単位を有するリン含有ポリアミド酸、および一般式(II)で表される繰り返し単位を有するリン含有ポリイミドとは、一般式(III)で表される繰り返し単位のみからなるリン含有ポリアミド酸、および一般式(II)で表される繰り返し単位のみからなるリン含有ポリイミドのみを意味するものではなく、それぞれかかる繰り返し単位を主要構成単位として含むものも包含することを意味する。したがって、本発明のリン含有ポリイミドの目的や、その前駆体であるリン含有ポリアミド酸の反応性を損なわない範囲で、リン含有ポリアミド酸の製造の際に、上記一般式(I)で表されるリン含有テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物を、部分的に使用することができる。
【0047】
そのようなテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリト酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’−オキシジフタル酸二無水物、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,2,7,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。本発明の目的である、優れた難燃特性を有するリン含有ポリイミドを提供するためには、用いるテトラカルボン酸二無水物成分中、一般式(I)で表されるリン含有テトラカルボン酸二無水物を30モル%以上使用することが好ましく、50モル%以上使用することがより好ましい。
【0048】
さらに、リン含有ポリアミド酸の製造は、上記のような対応する酸二無水物の単離、精製工程を省略してもかまわない。すなわち、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と式(1)で表わされるリン化合物とを溶媒中で40〜250℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは70〜180℃で1分〜12時間、好ましくは5分〜6時間、より好ましくは10分から3時間加熱することによって得られたリン含有テトラカルボン酸二無水物を含む溶液を冷却したのち、所望するジアミン化合物(ジアミン化合物は前述の通り)と必要に応じてN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような溶媒とを溶質濃度が5〜80重量%、より好ましくは10〜50重量%になるように投入することによって行うことができる。
【0049】
「リン含有ポリイミドの製造方法」
本発明の難燃性のリン含有ポリイミドの製造は、上記のようにして得られたリン含有ポリアミド酸を公知の方法によって脱水することによって製造される。例えば、リン含有ポリアミド酸溶液を、ガラス板、銅、アルミ、又はステンレス等の金属箔、あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド、シリコン樹脂、又はフッ素樹脂等の樹脂フィルムなどの基材上に、乾燥後の厚みが0.1〜250μm、より好ましくは1.0〜100μmになるように塗布し、40〜500℃、より好ましくは70〜350℃で1分〜5時間、より好ましくは3分〜3時間乾燥させることによって、リン含有ポリイミドを得ることができる。得られたポリイミドは、基材から剥がしてフィルム形態として、又はそのまま積層体として使用することができる。
【0050】
また、リン含有ポリアミド酸溶液に、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンのような水と共沸する溶媒を加え、100〜300℃、より好ましくは150〜250℃で加熱を行い、イミド化に伴い発生する水を系外に排出し熱イミド化を行うことにより、リン含有ポリイミドを得ることもできる。この時、ピリジン、ピコリン、イミダゾールのような含窒素複素環化合物やトリエチルアミンのようなトリ低級アルキルアミンなどを用いてもよい。あるいは、無水酢酸、トリフルオロ無水酢酸、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドのような脱水剤とピリジン、ピコリン、イミダゾールのような含窒素複素環化合物やトリエチルアミンのようなトリ低級アルキルアミンなどとを加え、0〜200℃で1〜24時間脱水することによって化学イミド化を行うことにより、リン含有ポリイミドを得てもよい。上記のように熱的あるいは化学的にイミド化が終了した溶液を、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、トルエン、キシレンのような単独溶媒あるいはこれらの混合溶液に注入し、結晶を析出させ濾別し、乾燥、粉砕して粉状の形態として得ることができる。得られたポリイミドは、そのまま射出成型や圧縮成型に用いることができる。また別途、溶媒に溶解させ、ワニスとして使用することもでき、それを前述の基材上に塗布し、乾燥させフィルム形態として得ることもできる。
【0051】
本発明の金属積層体は、上記のようにして製造したリン含有ポリアミド酸溶液を、厚みが0.5〜400μm、より好ましくは1.0〜200μmの銅、アルミ、又はステンレス等の金属箔の少なくとも片面上に、乾燥後の厚みが0.1〜250μm、より好ましくは1.0〜100μmになるように塗布し、40〜500℃、より好ましくは70〜350℃で1分〜5時間、より好ましくは3分〜3時間乾燥させることによって製造することができる。
【0052】
あるいは、上記のようにして得られたリン含有ポリイミドフィルムの少なくとも片面に、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリイミド樹脂系などの接着剤を介して、厚みが0.5〜400μm、より好ましくは1.0〜200μmの銅、アルミ、又はステンレス等の金属箔と積層し、常圧あるいはプレス条件下で100〜500℃、好ましくは150〜350℃で処理することによって製造することができる。
【0053】
本発明の芳香族ポリマー積層体は、上記のようにして製造したリン含有ポリアミド酸溶液を、厚みが0.5〜400μm、より好ましくは1.0〜200μmの芳香族ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリイミド、ポリアリールエーテルケトン、芳香族ポリカーボネート、芳香族液晶ポリマー、又はポリベンゾオキサゾール等の芳香族ポリマー上に、乾燥後の厚みが0.1〜250μm、より好ましくは1.0〜100μmになるように塗布し、40〜500℃、より好ましくは70〜350℃で1分〜5時間、より好ましくは3分〜3時間乾燥させることによって製造することができる。
【0054】
また、厚みが0.5〜400μm、より好ましくは1.0〜200μmの芳香族ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリイミド、ポリアリールエーテルケトン、芳香族ポリカーボネート、芳香族液晶ポリマー、又はポリベンゾオキサゾール等の芳香族ポリマー、あるいは厚みが0.5〜400μm、より好ましくは1.0〜200μmの銅、アルミ、又はステンレス等の金属箔のいずれか一方の片面に、上記のようにして製造したリン含有ポリアミド酸溶液を塗布し、他方を塗布面に重ねた後、ラミネート又は熱プレスすることによって、本発明のリン含有ポリイミドを介した芳香族ポリマー金属複合積層体を製造することができる。
【0055】
上記のようにして製造した金属積層体及び芳香族ポリマー金属複合積層体に、公知の方法で回路パターンを作成し、電子回路として使用することができる。本発明のリン含有ポリイミドを用いて作成した電子回路は、優れた難燃性を有し、よって安全な電気・電子機器を提供することができる。
【実施例】
【0056】
以下に本発明の様態を明らかにするために、実施例と比較例とを示すが、本発明はここに示す実施例のみに限定されるわけではない。
【0057】
実施例で得られた化合物の溶液粘度、純度、融点又はガラス転移温度、NMR及び赤外線吸収スペクトルの測定方法は以下の通りである。
【0058】
溶液粘度:B型粘度計(東京計器製)を用いて、25℃の温度で測定した。
【0059】
純度:HPLC(島津製作所製)及びカラム(東ソー社製 TSKgel ODS-80TM)を用いて測定を行った。サンプル溶液は、アセトニトリル/水の混合液に試料を溶解もしくは分散させた後、溶液を60℃で15分間加熱することで調製した。溶離液は、アセトニトリル/水/リン酸系を用い、純度は面積百分率により算出した。
【0060】
融点又はガラス転移温度:示差走査熱量計(島津製作所製 DSC−60)にて、毎分10℃で40〜400℃まで昇温し、測定を行った。解析ソフトによりDSCDSC曲線の外挿点から融点又はガラス転移温度を算出した。
【0061】
NMR:化合物と重DMSO(Cambrige Isotope Laboratories, Inc.製 DMSO-d6 0.05%TMS含有)とを混合した溶液を調製し、NMR(日本電子社製 JNM−AL400)にて、H−NMR測定及び13C−NMR測定を行った。
【0062】
赤外線吸収スペクトル:IR測定装置(パーキンエルマー社製Spectrum 100 FT-IR Spectrometer)を用い、KBr法にて赤外吸収スペクトルを測定した。
【0063】
難燃性の評価:フィルムを200mm×50mmの大きさに切り、試験片とした。試験片を円筒状に巻き、クランプに垂直に固定し、サンプル下部にバーナーで3秒間接炎を2回行い、燃焼時間が10秒以内のものを○、10秒以上のものを×とした。
【0064】
実施例1
一般式(I)(R及びRが共にフェニル基である)で表わされるリン含有テトラカルボン酸二無水物の合成
攪拌機、温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、ジフェニルホスフィンオキシド(アルドリッチ)2.8g(0.014mol)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(ダイセル化学社製)3.5g(0.011mol)及びトルエン25gを仕込み、窒素気流下、110℃で4時間攪拌した。反応終了後トルエンを全量留去し、80℃まで冷却した後、アセトニトリル10gを添加した。室温まで冷却後、析出した固体を濾別し、トルエンおよびアセトニトリルで洗浄した。得られた固体を60℃で一晩乾燥することで、粗精製物2.8gを純度94.2%で得た。この粗精製物をアセトニトリルで加熱洗浄することで、精製物を純度97.5%、融点151℃で得た。精製物のH-NMRを図1に、13C-NMRを図2に、FT-IRチャートを図3に示す。
【0065】
実施例2
一般式(II)(R及びRが共にフェニル基であり、Rがジフェニルエーテル−4,4’−ジイルである)で表わされるリン含有ポリイミドの合成
温度計、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(和歌山精化社製)10.0118g(0.05mol)、実施例1で合成したリン含有テトラカルボン酸二無水物26.2207g(0.05mol)、NMP205gを仕込み、窒素気流下、室温で12時間撹拌を行い、リン含有ポリアミド酸を合成した。反応溶液(溶質濃度15%、粘度(B型粘度計:東京計器製)5,500mPa・s)をそのまま、リン含有ポリアミド酸溶液として使用した。得られたリン含有ポリアミド酸溶液をガラス板上に、乾燥後の厚みが25μmになるように塗布を行い、90℃、130℃、180℃各温度30分間乾燥を行ったのち、ガラス板から剥がし金属枠に固定して200℃、250℃各温度1時間熱処理を行った。厚み25μmのフィルム形態のリン含有ポリイミドを得た。
【0066】
実施例3
一般式(II)(R及びRが共にフェニル基であり、Rが1,4−フェニレンオキシ−ビフェニル−4,4’−ジイルオキシ−1,4−フェニレンである)で表わされるリン含有ポリイミドの合成
温度計、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物8.5602g(0.027mol)、ジフェニルホスフィンオキシド(DPO)5.3713g(0.027mol)、ジグリム47.4gを仕込み、160℃で3時間加熱を行い、リン含有テトラカルボン酸二無水物を合成した。この酸二無水物を含む溶液を室温まで冷却し、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)9.7876g(0.027mol)、NMP47.4gを仕込み、窒素気流下、室温で12時間撹拌を行い、リン含有ポリアミド酸を合成した。反応溶液(溶質濃度20%、粘度(B型粘度計:東京計器製)8,000mPa・s)をそのまま、リン含有ポリアミド酸溶液として使用した。実施例2と同様にガラス板への塗布、乾燥及び熱処理を行い、厚み20μmのフィルム形態のリン含有ポリイミドを得た。
【0067】
比較例1
温度計、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物16.1113g(0.05mol)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.0118g(0.05mol)、NMP148gを仕込み、窒素気流下、室温で12時間撹拌を行い、リン含有ポリアミド酸を合成した。反応溶液(溶質濃度15%、粘度(B型粘度計:東京計器製)12,000mPa・s)をそのまま、ポリアミド酸溶液として使用した。実施例2と同様にガラス板への塗布、乾燥及び熱処理を行い、厚み20μmのフィルム形態のリンを含有しないポリイミドを得た。
【0068】
比較例2
ジアミン化合物を4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)18.4214g(0.05mol)に変更する以外は比較例1と同様の操作を行い、厚み20μmのフィルム形態のリンを含有しないポリイミドを得た。
【0069】
難燃性評価
実施例2及び3、並びに比較例1及び2で得られたポリイミドの評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例4
金属積層体の製造
実施例2で製造したリン含有ポリアミド酸溶液を、厚み18μmの銅箔(三井金属(株)製、3EC−VLP)上に、乾燥後の樹脂の厚みが25μmになるように塗布を行い、90℃、130℃、180℃各温度30分間乾燥を行ったのち、真空乾燥機中で250℃、1時間の熱処理を行い、リン含有ポリイミド/金属積層体を得た。
【0072】
実施例5
芳香族ポリマー積層体の製造
実施例2で製造したリン含有ポリアミド酸溶液を、厚み25μmの芳香族ポリイミドフィルム(デュポン(株)製、カプトン(登録商標)H)上に、乾燥後の樹脂の厚みが25μmになるように塗布を行い、90℃、130℃、180℃各温度30分間乾燥を行ったのち、乾燥機中で250℃、1時間の熱処理を行い、リン含有ポリイミド/芳香族ポリマー積層体を得た。
【0073】
実施例6
芳香族ポリマー金属複合積層体の製造
実施例2で製造したリン含有ポリアミド酸溶液を、厚み18μmの銅箔(三井金属(株)製、3EC−VLP)上に、乾燥後の樹脂の厚みが5μmになるように塗布を行い、160℃の温度で3分間乾燥を行った。次いで、塗布面に厚み40μmの芳香族ポリイミドフィルム(デュポン(株)製、カプトン(登録商標)EN)を重ね、200℃の温度でラミネートを行った。得られた積層体を350℃の温度で熱処理を行い、金属/リン含有ポリイミド/芳香族ポリマー複合積層体を得た。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のリン含有テトラカルボン酸二無水物を用いて製造したリン含有ポリイミドは、従来のポリイミドと同等の物性と共に、優れた難燃特性を示し、薄膜になっても良好な耐熱性を示すので、電気・電子機器等の軽薄短小化のニーズに応えることが可能である。また、本発明の難燃性のリン含有ポリイミドの使用は、更なる難燃剤の添加を回避又は減量することができるため、自然環境や人体により安全性の高い難燃化技術である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化11】


(式中、
及びRは、同一であっても異なっていてもよく、フェニル基又はフェノキシ基であり、
ここで、RとRそれぞれのベンゼン環上の水素原子の少なくとも一つが、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されていてもよく、及び/又はRとRそれぞれのベンゼン環上の炭素原子の一つが、互いに単結合で結ばれていてもよい)
で表されるリン含有テトラカルボン酸二無水物。
【請求項2】
一般式(I)において、R及びRが、共にフェニル基であるか、又はRとRの一方がフェニル基であり、他方がフェノキシ基であって、それぞれのベンゼン環上の炭素原子の一つが、互いに単結合で結ばれている(ここで、ベンゼン環上の水素原子の少なくとも一つが、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されていてもよい)、請求項1に記載のリン含有テトラカルボン酸二無水物。
【請求項3】
下記式(Ia):
【化12】


、及び下記式(Ib)
【化13】


(式中、R′及びR′は、同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシル基で置換されていてもよい)
からなる群より選ばれる、請求項1又は2記載のリン含有テトラカルボン酸二無水物。
【請求項4】
下記一般式(II)
【化14】


(式中、
及びRは、同一であっても異なっていてもよく、フェニル基又はフェノキシ基であり、
ここでRとRそれぞれのベンゼン環上の水素原子の少なくとも一つが、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されていてもよく、及び/又はRとRそれぞれのベンゼン環上の炭素原子の一つが、互いに単結合で結ばれていてもよく、
は、2価の有機基である)
で表される繰り返し単位を有する、リン含有ポリイミド。
【請求項5】
一般式(II)において、R及びRが、共にフェニル基であるか、又はRとRの一方がフェニル基であり、他方がフェノキシ基であって、それぞれのベンゼン環上の炭素原子の一つが、互いに単結合で結ばれている(ここで、ベンゼン環上の水素原子の少なくとも一つが、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されていてもよい)、請求項4記載のリン含有ポリイミド。
【請求項6】
請求項4又は5記載のリン含有ポリイミドの少なくとも片面に金属箔を積層させてなる金属積層体。
【請求項7】
請求項4又は5記載のリン含有ポリイミドの少なくとも片面に芳香族ポリマーを積層させてなる芳香族ポリマー積層体。
【請求項8】
請求項4又は5記載のリン含有ポリイミドを介して、金属箔と芳香族ポリマーとを積層させてなる芳香族ポリマー金属複合積層体。
【請求項9】
請求項6記載の金属積層体からなる電子回路。
【請求項10】
請求項8記載の金属複合積層体からなる電子回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−116706(P2011−116706A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276066(P2009−276066)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000113780)マナック株式会社 (40)
【Fターム(参考)】