リン回収装置
【課題】回収物中のリン含有率が高く、かつ有害物質の含有率が低く、環境負荷の少ないリン回収装置を提供する。
【解決手段】リン酸を含む排水を供給する排水供給装置2,P1,L1と、排水中の汚濁物質を酸素雰囲気下の生物反応により分解浄化する好気性微生物を有し、かつリン酸を吸着するリン吸着能を備える所定粒径の無機固形物粒子32を有する曝気槽4と、無機固形物粒子32を曝気槽内に供給する無機固形物粒子供給装置3,P2,L2と、リン酸を吸着したリン吸着済み無機固形物粒子と排水中に含まれる固形物とを物性差を利用して分離することにより、固形物とともに好気性微生物をリン吸着済み無機固形物粒子から分離するリン吸着粒子分離装置10,11,11a,11b,10c,12,13,15,10g,10h,20,23と、リン吸着粒子分離装置により分離されたリン吸着済み無機固形物粒子を回収する回収容器9,22,24とを有する。
【解決手段】リン酸を含む排水を供給する排水供給装置2,P1,L1と、排水中の汚濁物質を酸素雰囲気下の生物反応により分解浄化する好気性微生物を有し、かつリン酸を吸着するリン吸着能を備える所定粒径の無機固形物粒子32を有する曝気槽4と、無機固形物粒子32を曝気槽内に供給する無機固形物粒子供給装置3,P2,L2と、リン酸を吸着したリン吸着済み無機固形物粒子と排水中に含まれる固形物とを物性差を利用して分離することにより、固形物とともに好気性微生物をリン吸着済み無機固形物粒子から分離するリン吸着粒子分離装置10,11,11a,11b,10c,12,13,15,10g,10h,20,23と、リン吸着粒子分離装置により分離されたリン吸着済み無機固形物粒子を回収する回収容器9,22,24とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水中に含まれるリン分を回収するリン回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1および非特許文献1に示すように、排水中のリン分を吸着する吸着剤として粘土鉱物の一種であるハイドロタルサイトを用いる方法がある。
【0003】
特許文献1に記載されたハイドロタルサイト粒子の一般化学式を(1)式に、その具体的な化学式を(2)式に示す。また、非特許文献1に記載されたハイドロタルサイト粒子の構造の模式図を図16に示す。
【0004】
図16の(a)に示すように、ハイドロタルサイト粒子101は、マグネシウムイオン102(Mg2+で、M2+の一種)とアルミニウムイオン103(Al3+で、M3+の一種)を含む基体が水酸基イオン104(OH−で、An−の一種)により両側から挟まれた結合構造体である。リン酸イオンが存在しない状態では、結合構造体であるハイドロタルサイト粒子101の相互間隙に塩素イオン105(Cl−で、An−の一種)と水分子106(H2O)が入り込んでいる。
【0005】
<ハイドロタルサイト粒子の一般化学式>
[M2+(1−x) M3+x (OH)2]x+ [(An−)x/n・mH2O]x- …(1)
M2+: Mg2+、Zn2+、Cu2+
M3+: Fe3+、Al3+、
An−: SO42−、Cl−、CO32−、OH−
但し、0.20≦x≦0.33、0≦m<2である。
【0006】
<ハイドロタルサイト粒子の化学式>
x=0.3、m=1とする場合、
[Mg2+(2.3) Al3+(1) (OH)2]+ [(Cl−)(1)・H2O] - …(2)
上記のハイドロタルサイト粒子101に、リン酸107(PO43−)が接触すると、下式(3)の化学反応が起こり、図16の(b)に示すように、塩素イオン105(Cl−)がリン酸イオン107(PO43−)に置換される。置換された元の塩素イオン105(Cl−)は、ハイドロタルサイト粒子101から離れて系外へ排出される。
【0007】
<ハイドロタルサイトとリン酸イオンとの化学反応式>
[Mg2+(2.3) Al3+(1) (OH)2]+ [(Cl−)(1)・H2O] -+PO43−
→[Mg2+(2.3) Al3+(1) (OH)2]+ [(PO43−)(1)・H2O] -+Cl− …(3)
この従来の無機固形物粒子(ハイドロタルサイトの上位概念の物質)を、下水処理プロセスに適用したときの従来プロセスを説明する。このプロセスは上記のようにリン酸を吸着するためのものではなく、(4)式に示すように、硝化菌の硝化反応を促進するためのものである。また、特許文献2ではその粒子径を10μm以下と微小のものを適用することでその反応を促進している。すなわち、硝化菌がこの粉末上に付着して、かかる菌の活性化を図ることを目的としている。
【0008】
なお、本願明細書中において「リンを吸着する」、「リン分を吸着する」あるいは「リン酸を吸着する」とある記載は、いずれもリン酸イオンを吸着することを意味するものとする。
【0009】
硝化反応を下式(4)に示す。
【0010】
<硝化反応>
NH4+(アンモニアイオン)→NO2−(亜硝酸イオン)→NO3−(硝酸イオン) …(4)
脱窒反応を下式(5)に示す。
【0011】
<脱窒反応>
NO3−(硝酸イオン)→N2(窒素ガス) …(5)
これらの反応プロセスを上記ハイドロタルサイト粒子へのリン吸着反応に適用した場合に、そのプロセス操作の概要を説明する。原水は、原水槽から管を介して曝気槽内に供給される。曝気槽内へはブロワからガス管と散気管を順次介して空気が供給される。この曝気槽内では、予め、有機物等を基質として増殖する活性汚泥微生物が投入されており、排水中の有機物等を基質として増殖するとともに、この有機物を分解除去する。その後、その曝気槽内の被処理水は、次の沈殿槽に供給され、ここで、増殖した微生物(汚泥)と、有機物が分解除去されて清澄な上澄み水とが、沈殿分離される。この上澄み水は管を通って河川等に放流排出される。一方、沈殿した汚泥の一部は、ポンプ駆動によって元の曝気槽の入口部分まで返送され、汚泥の他の一部は、別のポンプ駆動によって余剰汚泥として排出される。
【0012】
ここで、ハイドロタルサイト粒子は、ポンプ駆動によって曝気槽内の上部前段部分に供給される。この供給されたハイドロタルサイト粉末は、式(1)〜(3)及び図16の(a)(b)に示す反応により原水中に含まれるリン酸イオンを吸着する。リン酸イオンを吸着したハイドロタルサイト粉末は、上記の通り、沈殿槽底部まで沈殿し、その一部がポンプの駆動によって曝気槽の前段まで返送され、他の一部が他のポンプ駆動によって余剰汚泥として回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−324128号公報
【特許文献2】特開2007−260496号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】亀田和人ら、ハイドロタルサイトの水環境保全・浄化への応用、THE CHEMICAL TIMES 2005 No.1(通巻195号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記の従来技術には、以下の課題(i)(ii)がある。
【0016】
(i) 回収物のリンの純度が低い(低品位の回収物)
曝気槽内において、図17の(a)に示すように、リン吸着済みハイドロタルサイト粒子108と活性汚泥フロック29とが流動しながら混在している。前者の粒子108は長径200μm程度の大きさである。後者のフロック29は活性汚泥微生物が凝集したものからなり、長径10μm以上100μm以下の大きさである。
【0017】
これらの物質29,108を含む原水が曝気槽から次の沈殿槽に供給され、沈殿槽内で粒子108とフロック29が共に沈殿すると、図17の(b)に示すように、吸着剤粒子108とフロック29とが近接し、これらの粒子108とフロック29とが混在する複合体が圧密化してくる。さらに、圧密化した粒子108とフロック29との複合体は、沈殿槽から余剰汚泥として排出される。この排出物は不純物として多量の活性汚泥フロック29を含むので、その分だけ回収物のリンの純度(リン含有率)が低下し、肥料やリン化合物としての価値(品位)が低い。
【0018】
また、活性汚泥フロック(微生物群)が投入されている曝気槽を用いているが、その代わりとして活性汚泥フロックを投入していない曝気槽の場合でも同様である。すなわち、原水中に、半導体製造排水中に含まれるシリコン粉末等無機沈殿物、又は食品や鉄鋼など産業排水中に固形物が含まれる場合がある。この場合、ハイドロタルサイト粒子107の平均粒径が同様の場合、原水中に含まれる固形物が、リン酸吸着ハイドロタルサイト粒子と混合した状態で、排出されて、回収物のリンの純度(リン含有率)が低くなるといった問題もある。
【0019】
(ii) 有害物質の混入がある(環境負荷が大きい)
同様に、当該従来技術だと、原水中に、水銀やクロムなどの重金属、トリハロメタンなど塩素系有機化合物等の有害物質が含まれていた場合、活性汚泥微生物は、その体内にこれらの有害物質を取り込み、有害物質が体内に濃縮する。そうすると、有害物質を高濃度に含む活性汚泥フロック29とリン酸吸着ハイドロタルサイト粒子108との混合物が、リン肥料として回収されるため、土壌環境等を悪化させる。
【0020】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、回収物中のリン含有率が高く、かつ有害物質の含有率が低く、環境負荷の少ないリン回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るリン回収装置は、リン酸を含む排水を供給する排水供給装置と、前記排水供給装置から供給される排水を受け入れ、前記排水中の汚濁物質を酸素雰囲気下の生物反応により分解浄化する好気性微生物を有し、かつ前記排水中に含まれるリン酸を吸着するリン吸着能を備える所定粒径の無機固形物粒子を有する曝気槽と、前記無機固形物粒子を前記曝気槽内に供給する無機固形物粒子供給装置と、前記排水中のリン酸を吸着したリン吸着済み無機固形物粒子と前記排水中に含まれる固形物とを両者の物性差を利用して分離することにより、前記固形物とともに前記好気性微生物を前記リン吸着済み無機固形物粒子から分離するリン吸着粒子分離装置と、前記リン吸着粒子分離装置により分離されたリン吸着済み無機固形物粒子を回収する回収容器と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、回収物中のリン含有率を高くできるので、従来品に比べてリンの純度が高い高品位のリン肥料が提供される。
【0023】
また、本発明によれば、リン肥料への有害物質の混入を低減できるので、環境負荷の少ない安全なリン肥料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るリン吸着装置を示す構成ブロック図。
【図2】(a)〜(c)は本発明装置におけるリン吸着後のハイドロタルサイト粒子および活性汚泥フロックの挙動をそれぞれ示す模式図。
【図3】(a)(b)は本発明装置においてハイドロタルサイト粒子がリン酸イオンを吸着するときの作用を説明するための化学反応模式図。
【図4】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図5】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図6】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図8】図7の装置の回収物沈殿部を拡大して示す内部透視断面模式図。
【図9】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図10】図9の装置のサイクロン沈殿器を拡大して示す内部透視断面模式図。
【図11】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図12】図11の装置の沈降速度差分離装置を拡大して示す内部透視断面模式図。
【図13】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図14】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図15】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図16】(a)(b)は従来技術においてハイドロタルサイト粒子がリン酸イオンを吸着するときの作用を説明するための化学反応模式図。
【図17】(a)(b)は従来技術におけるリン吸着後のハイドロタルサイト粒子および活性汚泥フロックの挙動をそれぞれ示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者らは、上記課題(i)(ii)を解決するために、リンを吸着したハイドロタルサイト粒子を多量の活性汚泥フロック(固形物)を含む水中から分離・回収する方策について鋭意研究努力した結果、両者の物性(粒子径、密度、粒子の沈降速度など)の違いを利用すれば、リン吸着ハイドロタルサイト粒子を低コストで効率よく分離回収できるという知見を得た。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。以下に本発明の種々の好ましい実施の形態を説明する。
【0026】
(1)本発明のリン回収装置は、リン酸を含む排水を供給する排水供給装置と、前記排水供給装置から供給される排水を受け入れ、前記排水中の汚濁物質を酸素雰囲気下の生物反応により分解浄化する好気性微生物を有し、かつ前記排水中に含まれるリン酸を吸着するリン吸着能を備える所定粒径の無機固形物粒子を有する曝気槽と、前記無機固形物粒子を前記曝気槽内に供給する無機固形物粒子供給装置と、前記排水中のリン酸を吸着したリン吸着済み無機固形物粒子と前記排水中に含まれる固形物とを両者の物性差を利用して分離することにより、前記固形物とともに前記好気性微生物を前記リン吸着済み無機固形物粒子から分離するリン吸着粒子分離装置と、前記リン吸着粒子分離装置により分離されたリン吸着済み無機固形物粒子を回収する回収容器と、を具備するものである。
【0027】
本発明においては、無機固形物粒子を曝気槽内に投入し、被処理水中のリン酸イオンを無機固形物粒子に吸着させてリン吸着無機固形物粒子とし、このリン吸着無機固形物粒子と固形物(活性汚泥フロック)とが混合した状態で(図2の(a))被処理水をリン吸着粒子分離装置(メッシュ)に供給し、リン吸着粒子分離装置(メッシュ)の孔径より小さな固形物のみを通過させ、リン吸着粒子分離装置(メッシュ)の孔径よりも大きなリン吸着無機固形物粒子を捕捉し、その後、捕捉したリン吸着無機固形物粒子を水洗などの操作によりリン吸着粒子分離装置(メッシュ)から分離してリン肥料として回収する。一方、リン吸着粒子分離装置(メッシュ)を通過した固形物(活性汚泥フロック)は、後工程の沈殿槽において沈殿させることによって余剰汚泥として回収される。
【0028】
(2)上記(1)の装置において、リン吸着粒子分離装置として、リン吸着済み無機固形物粒子と前記固形物との粒径の差を利用して両者を分離する粒子径差分離装置を用いることができる(図1、図2(b)、図6、図13、図14)。粒子径差分離装置(メッシュ等)は、簡易な構造であるのでメンテナンス時の取り付け取り外しが容易であり、粒径差を利用してリン吸着無機固形物粒子と固形物とを効率よく分離することができる。
【0029】
(3)上記(1)の装置において、リン吸着粒子分離装置として、リン吸着済み無機固形物粒子と固形物との沈降速度の差による沈降速度差分離装置を用いることができる(図8、図10、図12)。沈降速度差分離装置は、ポンプやモーター等の動力源を要することなく、リン吸着無機固形物粒子と固形物とを分離することができるので、エネルギ消費量の少ないエコ方式といえるものである。
【0030】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかの装置において、固形物に外力を加えて粉砕し、物理的に固形物の粒径を小さくする粒子径変化装置をさらに有することが好ましい。このような粒子径変化装置として、機械攪拌を行うスクリュウや回転羽根を有する機械攪拌機、または水中攪拌を行う水中ポンプのいずれかを用いることができる。
【0031】
機械攪拌機を用いる場合は、回転羽根スクリュウを曝気槽内の水中に浸漬させ、スクリュウを回転させて被処理水を強攪拌することにより、回転羽根スクリュウの攪拌力、とくに強い剪断力により、繊維状等の強固な結合力をもつ活性汚泥フロックを砕いて、肥大化したフロックを小サイズの細粒にすることができる。
【0032】
水中ポンプを用いる場合は、曝気槽内の底部に配置し、水中ポンプで曝気槽内の被処理水に速い水流を生じさせることにより、活性汚泥フロックを粉砕する。なお、水中ポンプの駆動により発生させる水流の向きは、垂直方向、水平方向、斜め方向のいずれの向きとしてもよいが、垂直方向とすることが好ましい。原水中の活性汚泥フロックが曝気槽の上部を素通りするのを防止できるからである。
【0033】
さらに、リン吸着粒子分離装置(メッシュ)内の前段部分に、上記のエリア別曝気方式、機械攪拌方式、水中攪拌方式のいずれかの手段を設置する。これらのうちのいずれかの手段を用いてメッシュの内側において活性汚泥フロックを砕き、肥大化したフロックを小サイズの細粒にすることができる。また、リン吸着粒子分離装置(メッシュ)内での粒子分離直前に、活性汚泥フロックを砕くことにより、前段のリン吸着反応を、曝気槽全部を使って行うことができるので、リン吸着反応を低下させずに、沈殿分離も可能となる。
【0034】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかの装置において、リン吸着粒子分離装置は、曝気槽内、または曝気槽から回収装置までの間の流路に着脱可能に取り付けられていることが好ましい(図1、図6、図13、図14)。メンテナンス時に撤去作業や取り付け作業が容易になるからである。
【0035】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかの装置において、リン吸着粒子分離装置を前記曝気槽から前記回収装置までの間で移動させる無限軌道装置をさらに有することが好ましい。リン吸着粒子分離装置(メッシュ)を曝気槽から回収装置までの間で移動させる無限軌道装置をさらに有することが好ましい(図15)。無限軌道装置によりリン吸着粒子を連続的に分離・回収することができる。この場合に、無限軌道装置を水洗ノズル等の洗浄手段と組み合わせて用いると、さらに長期間にわたり連続的に処理することができる。
【0036】
(7)上記(1)〜(6)のいずれかの装置において、無機固形物粒子がマグネシウムと鉄を含むハイドロタルサイト粒子であることが好ましい。とくに、無機固形物粒子に3価の鉄イオンを含むハイドロタルサイト粒子を用いることが好ましい(図3)。3価の鉄イオンはリン酸イオンの吸着能に優れているからである。
【0037】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかの装置において、無機固形物粒子が平均粒径0.3〜3mmのハイドロタルサイト粒子であり、固形物が平均粒径100μm以下の活性汚泥フロックであり、リン吸着粒子分離装置が平均孔径120〜180μmのメッシュであることが好ましい。
【0038】
無機固形物粒子の平均粒径が0.3mmを下回ると、固形物(活性汚泥フロック)の径との差が小さくなり、リン吸着粒子分離装置(メッシュ)を用いて両者を分離することが困難になるからである。一方、無機固形物粒子の平均粒径が3mmを上回ると、粒子が粗くなりすぎて、粉粒体としてライン配管内を通流させて搬送することが困難になるからである。なお、本発明では無機固形物粒子の平均粒径を0.5mm(500μm)とすることが最も好ましい。粉粒体として取り扱いやすくなるばかりでなく、固形物(活性汚泥フロック)との分離もしやすくなるからである。
【0039】
排水中に含まれる固形物は、平均粒径100μm以下の活性汚泥フロックが主流であり、これ以上に固形物のサイズが大きくなると上記の粒子径変化装置を用いて粉砕して細粒化する必要がある。とくに繊維状等の強固な結合力をもつ500μm以上に肥大化した活性汚泥フロックは、機械粉砕機などを用いて平均粒径100μm以下の小サイズにすることが望ましい。
【0040】
リン吸着粒子分離装置としてメッシュを用いる場合に、その平均孔径が120μmを下回ると、固形物(活性汚泥フロック)が通過しにくくなり、固形物と粒子を分離できなくなり、回収物のリンの純度(リン含有率)が低下するからである。一方、メッシュの平均孔径が180μmを上回ると、無機固形物粒子までがメッシュを通過するようになり、リンの回収率が低下するからである。メッシュの平均孔径は、150μm程度とすることが最も好ましい。回収物のリンの純度が向上するとともに、リン回収率も増加するからである。
【0041】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための種々の形態を説明する。
【0042】
(第1の実施形態)
図1を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
【0043】
本実施形態のリン吸着装置1は、原水に含まれるリン酸を吸着・分離・回収するために、原水槽2、無機固形物粒子供給装置3、曝気槽4、沈殿槽6、余剰汚泥回収槽8、リン吸着済み無機固形物粒子回収槽9、およびこれらの機器を互いにつなぐ配管ラインL1〜L9および原水等の流体を送給するための各種ポンプP1〜P5を備えている。リン吸着装置1は、独立した単一のシステムとして稼動されるものであってもよいし、あるいは他の水処理設備と組み合せた複合システムとして稼動されるものであってもよい。リン吸着装置1のポンプやバルブ等の駆動手段は、各々の動作が図示しない制御器により統括的に制御されるようになっている。
【0044】
原水槽2は、回収対象物であるリン酸イオンを含む有機系排水が流入し、流入水を原水として一時的に貯留するものである。原水は、例えば下水では、リン酸イオン濃度は3〜5mg/リットル程度である。
【0045】
原水槽2の上部出口はポンプP1を有するラインL1を介して曝気槽4の上部入口に接続されている。
【0046】
無機固形物粒子供給装置3は、無機固形物粒子としてハイドロタルサイト粒子を貯留している。供給装置3に貯留されたハイドロタルサイト粒子は、図3に示すように2価のマグネシウムイオン(Mg2+)と3価の鉄イオン(Fe3+)を含み、リン酸イオンを吸着する性質を有している。供給装置3は、ポンプP2を有するラインL2を介して曝気槽4内の上部に接続されている。ポンプP2の駆動により供給装置3からハイドロタルサイト粒子32が曝気槽4内の原水に添加されるようになっている。
【0047】
曝気槽4内の底部近傍には散気管5が装入されている。散気管5にはラインL5を介してブロワ55が接続され、ブロワ55から所定圧力と所定流量の空気が供給され、散気管5の多数の細孔から空気の気泡が原水中に吹き込まれるようになっている。
【0048】
曝気槽4の出口側はラインL3を介して沈殿槽6の入口側に接続され、さらに沈殿槽6の出口側はラインL4を介して処理水貯留槽7に接続されている。一方、沈殿槽6の底部は、汚泥排出ラインL6→切替弁V1→汚泥返送ラインL7→ポンプP3を順次介して曝気槽4の入口側に接続されている。さらに、汚泥排出ラインL6は、切替弁V1→他方の分岐ラインL8→ポンプP4を順次介して汚泥貯留槽8にも接続されている。
【0049】
沈殿槽6内の前段部には粒径差分離装置としてメッシュ10が取り付けられている。メッシュ10は、被処理水が流入する入口側が開口し、流入口の近傍領域を四方(正面、両側面、下面)から取り囲むように四面体状に形成され、図示しない支持部材により沈殿槽6に支持されている。メッシュ10の平均孔径は150μm(0.15mm)である。メッシュ10の材料には、耐食性材料、例えばステンレス鋼などの金属材料またはフッ素系樹脂などの樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
メッシュ10の底部からはポンプP5を有する回収ラインL9が延び出している。この回収ラインL9を介してメッシュ10の内部領域はリン吸着ハイドロタルサイト粒子回収容器9に連通している。メッシュ10で分離されたリン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、ポンプP5の駆動によりラインL9を介して沈殿槽6から回収物容器9へ送られて回収されるようになっている。さらに、回収容器9ではリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を沈殿させ、その後、沈殿物を図示しない脱水装置に送り、脱水して肥料とする。
【0051】
次に本実施形態装置の作用を説明する。
【0052】
原水中の汚濁物質は分解除去されて、清澄な処理水として河川等に排出され、この分解除去の過程で増殖した余剰汚泥がポンプP4の駆動により排出ラインL6,L8を介して排出され、その汚泥の一部がポンプP3の駆動により返送ラインL7を介して曝気槽4の入口側に戻される。このように余剰汚泥を沈殿槽6から排出したり、あるいは一旦排出した汚泥を沈殿槽6に返送したりするのは、曝気槽4内における活性汚泥微生物の濃度を一定レベルに維持するためである。
【0053】
具体的には、原水はラインL1を介して曝気槽4内に供給される。
【0054】
下式(6)に示すように、この原水中の有機汚濁物質は、ブロワ55を駆動することによりガスラインL5、散気管5を順次介して曝気槽4内に供給される空気中の酸素を使って、予め曝気槽4内に投入された活性汚泥微生物によりCO2や水に分解される。
【0055】
有機汚濁物質 + 酸素 → 二酸化炭素 + 水
(CxHyOz)+(x+y/4-z/2) O2 → xCO2 + y/2 H2O …(6)
一方、ハイドロタルサイト粒子32は、上式(3)のハイドロタルサイト粒子101と類似しているが、下式(7)に示すように(M3+)の部分が鉄イオン(Fe3+)35と置換されている構造であり、その平均粒径は500μm(0.5mm)である。このハイドロタルサイト粒子32は、ポンプP2の駆動により供給装置3からラインL2を通って曝気槽4内の前段部に供給される。曝気槽4内では、原水中に含まれるリン酸イオン(PO43−)とハイドロタルサイト粒子32とが下式(7)および図3に示すように反応して、ハイドロタルサイト粒子32にリン酸イオン31が吸着される。
【0056】
<ハイドロタルサイト粒子とリン酸イオンとの化学反応式>
[Mg2+(2.3) Fe3+(1) (OH)2]+ [(Cl−)(1)・H2O] - + PO43−
→ [Mg2+(2.3) Al3+(1) (OH)2]+ [(PO43−)(1)・H2O] - + Cl− …(7)
上記のように、曝気槽4内で、(1)有機汚濁物質が分解除去された水((6)式)、その分解プロセスで増殖した(2)活性汚泥フロック、(3)リン酸が吸着されたハイドロタルサイト粒子((7)式)は、いずれも混合した状態でラインL3を介して沈殿槽6内のメッシュ10の内面側に供給される。メッシュ10の平均孔径が150μm(0.15mm)であるので、それより大きい平均粒径500μm(0.5mm)のリン吸着ハイドロタルサイト粒子33はメッシュ10に捕捉される。
【0057】
一方、平均粒径100μm(0.1mm)の活性汚泥フロック29および有機汚濁物質が分解除去された水は、メッシュ10の孔部を通過して、沈殿槽6の下流側(下部)に排出される。活性汚泥フロック29は沈殿槽6の下部に沈殿する。また、その上澄み水はラインL4を介して処理水として処理水貯留槽7を経た後に河川等に排出される。
【0058】
また、メッシュ10の内面側に捕捉されたリン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、メッシュ内面を水洗浄することにより又はポンプP5の駆動によりメッシュ内面を水洗浄することによりラインL9を介してリン吸着ハイドロタルサイト回収容器9に回収される。この回収物は、その後に脱水されてリン肥料として用いられる。
【0059】
一方、メッシュ10の孔部を通過した活性汚泥フロック29は、沈殿槽6の底部に沈殿し、その一部を返送汚泥として、ポンプP3の駆動によりラインL6→切替弁V1→ラインL7を順次通って曝気槽4の入口側に戻される。また、活性汚泥フロック29の他の一部は、ポンプP5の駆動によりラインL9を通って余剰汚泥として排出される。
【0060】
図2を参照してリン吸着ハイドロタルサイトリン粒子と活性汚泥フロックとの分離作用について説明する。
【0061】
曝気槽4内では、リン酸イオン31がハイドロタルサイト粒子32に吸着した長径500μmのリン酸吸着ハイドロタルサイト粒子33と、長径50μmと同径100μmの活性汚泥フロック29とが混在している(図2の(a))。これらをポアサイズ(孔径)150μm(0.15mm)のメッシュ10に供給した場合、その孔径より小さな粒子径を有する活性汚泥フロックのみがそのメッシュの孔部を通過して、その孔径よりも大きな粒子径を有するリン吸着ハイドロタルサイト粒子33のみが、そのメッシュ10の孔部を通過することができず、そのメッシュ10の内面側に捕捉される。このようにしてリン吸着ハイドロタルサイト粒子33と活性汚泥フロック29とに分離される(図2の(b))。
【0062】
本実施形態の装置の効果を以下に列記する。
【0063】
(1)メッシュを用いたシンプルな構造の分離方式の採用
リン吸着粒子分離装置にメッシュ10を用いたので、沈殿槽6の壁面部に容易に設置することができ、シンプルで安価な構造とすることが可能である。
【0064】
また、このメッシュ10の孔径は150μm(0.15mm)のものを適用したので、平均粒径約100μm(0.1mm)の活性汚泥フロックと水を通過させ、平均粒径500μm(0.5mm)のハイドロタルサイト粒子のみを捕獲でき、分離効率が向上するという効果が得られた。
【0065】
(2)沈殿槽での分離により分離効率の向上と回収物の純度向上
沈殿槽6内にメッシュ10を設置したので、メッシュによるハイドロタルサイト粒子の分離効果以外に、沈殿槽内での活性汚泥フロック等の自然沈殿の効果も追加され、これらの分離効率がさらに向上する。すなわち、沈殿槽6内の水は、曝気槽4のようにブロワでの曝気による流動状態(乱流)よりも小さい流動状態(層流)にあるため、比重(約1.5〜3)の大きなハイドロタルサイト粒子は、メッシュ10内の底部に沈殿し、当該底部に高濃度に蓄積する。それより比重(約1.0〜1.2)の小さな活性汚泥フロックは、同底部に沈殿することなく、メッシュ10の側面部の孔部から流出する。従って、メッシュ10の側面部にはハイドロタルサイト粒子が捕捉されず、同側面部の孔部にハイドロタルサイト粒子が目詰まりすることがないので、活性汚泥フロックや水のみが高速に、メッシュ10側面部を通過できる。よって、メッシュ10の分離効率が向上するといったメリットがある。
【0066】
また、メッシュ10内の底部にハイドロタルサイト粒子のみが沈殿するので、この底部に高濃度に同粒子が蓄積し、純度が高まるといったメリットも有する。さらに、メッシュ内の底部に同粒子が蓄積しているので、同粒子を迅速にラインL9を介して、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33として回収することも可能となる。
【0067】
(3)曝気槽内でリン吸着を行うことによりリン吸着反応効率向上
曝気槽4内にハイドロタルサイト粒子(粉体またはスラリー)を投入して、ブロワ55から曝気槽4内の被処理水にエアを吹き込み攪拌するので、投入粒子を水中に分散させるための攪拌動力(スクリュウなど)が不要になり、動力コストを削減できる。
【0068】
また、曝気槽4内前段部にハイドロタルサイト粒子を投入したので、曝気槽4内の活性汚泥微生物そのもののリン取り込み反応よりも先にリンを吸着させることができるので、ハイドロタルサイト粒子のほうにリンを多量に吸着させることが可能になり、リン吸着反応効率が向上する。
【0069】
(4)回収物を肥料として使用した場合に、その環境負荷が小さい
本発明装置により回収した回収物は鉄イオン35を含むハイドロタルサイト粒子32であるため、これを肥料として使用した場合に、従来のアルミニウムイオン103を含むハイドロタルサイト粒子101よりも土壌に及ぼす影響が少ない。
【0070】
(第2の実施形態)
次に図4を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0071】
本実施形態のリン吸着装置1Aでは、曝気槽4と沈殿槽6との間にストレーナ11を挿入している。ストレーナ11は、平均孔径150μm(0.15mm)の多孔エレメント(メッシュ状プレート)を内蔵し、被処理水からリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を分離する粒径差分離装置として機能するものである。ストレーナ11の多孔エレメントより上流側の部分は、ラインL3を介して曝気槽4に連通するとともに、ラインL9を介して回収容器9に連通している。すなわち、回収ラインL9は、ポンプP5を有し、ストレーナ11の底部に接続されている。さらに、ストレーナ11の多孔エレメントより下流側は、ライン32を介して沈殿槽6に連通している。
【0072】
なお、本実施形態では、ストレーナ11を曝気槽4から沈殿槽6までのラインL3,L32に設置しているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、ストレーナを曝気槽内または沈殿槽内に設置することもできる。
【0073】
本実施形態によれば、ストレーナ11を曝気槽4と沈殿槽6との間に挿入するだけであるので、簡単な増設工事のみでよく、低コストである。
【0074】
(第3の実施形態)
次に図5を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0075】
本実施形態のリン吸着装置1Bでは、曝気槽4と沈殿槽6との間に2つのストレーナ11a,11bを並列に挿入している。各ストレーナ11a,11bは、平均孔径150μm(0.15mm)の多孔エレメントを内蔵し、被処理水からリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を分離する粒径差分離装置として機能するものである。第1ストレーナ11aの多孔エレメントより上流側の部分は、バルブV2を有するラインL32を介して曝気槽4に連通するとともに、ラインL91を介して回収容器9に連通している。また、第2ストレーナ11bの多孔エレメントより上流側の部分は、バルブV3を有するラインL33を介して曝気槽4に連通するとともに、ラインL92を介して回収容器9に連通している。さらに、第1ストレーナ11aの多孔エレメントより下流側はライン34を介して沈殿槽6に連通し、第2ストレーナ11bの多孔エレメントより下流側はライン35を介して沈殿槽6に連通している。
【0076】
2つのバルブV2,V3は図示しない制御器により開閉動作が制御されるようになっている。定常運転時にはバルブV2,V3を交互に開閉して2つのストレーナ11a,11bのうちのいずれか一方に通水し、他方から捕捉粒子33を回収するローテーション稼動を採用している。例えば、第1ストレーナ11aに連続的に通水していると、その多孔エレメントにリン吸着ハイドロタルサイト粒子33が堆積してきて、多孔エレメントの孔部に目詰まりを生じ、その水流量が低下してくる。その水流量の低下を検知したとき、または定期的に、バルブV2を閉じて第1ストレーナ11aへの通水を停止し、バルブV3を開けて第2ストレーナ11bへの通水を開始する。その後、ポンプP5を駆動することによって、目詰まりを生じている第1ストレーナ11aの多孔エレメントからリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を排出する。このようにラインL32→L33の流路切り替えとラインL92→L91の流路切り替えを順次行うことによって、ストレーナの目詰まりを効率よく解消することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、2つのストレーナを曝気槽と沈殿槽との間に並列に挿入しているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、3つ以上のストレーナを並列的に多段に配置することも可能である(メリーゴーランド方式)。
【0078】
本実施形態によれば、一方のストレーナが目詰まりを起こしても、実質的に通水を停止することなく、他方のストレーナによりリン吸着ハイドロタルサイト粒子の分離回収を継続して行うことができる。
【0079】
(第4の実施形態)
次に図6を参照して本発明の第4の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0080】
本実施形態のリン吸着装置1Cでは、曝気槽4内の後段部分(出口側)にメッシュ10cを設置している。メッシュ10cは、上記第1の実施形態のメッシュ10と実質的に同じ構成のものである。
【0081】
本実施形態によれば、曝気槽4内の流動状態は前段部から中央部分が激しく乱流状態であるが、後段部分は乱流と層流の中間状態(少し気泡で流動している)であることが多い。この状態だと、メッシュ10c内は、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33を捕獲するとともに、このメッシュ10c内の孔部にこれらの粒子が目詰まりすることなく流動している。従って、メッシュ10cを目詰まりさせることなく、当該粒子を捕獲させることが可能となる。また、ポンプP5を駆動してリン吸着ハイドロタルサイト回収物33を排出する場合にも、これらの粒子がメッシュ10c内で流動しているので、瞬時に排出することが可能となり、回収の効率が向上するとのメリットを有する。
【0082】
ちなみに、原水中には有機汚濁物質(生物のえさ)が多く含まれている(例:BOD(Biochemical Oxygen Demand、生化学的酸素要求量)が、100〜300mg/Lの下水、BODが1000〜100000mg/Lの食品排水)に適用することが可能である。しかし、原水中に有機汚濁物質の含有量が少ない下水処理場処理水(BOD 1〜20mg/L)や、半導体排水(BOD 10〜40mg/L)の場合に、生物が混入していないので、曝気槽4内の吸着反応が固形物にじゃまされず吸着速度が向上したり、原水中に生物なしのためメッシュ10cのろ過速度が向上したり、メッシュ10cの目詰まりの発生頻度が低くなるなどのメリットがある。
【0083】
(第5の実施形態)
次に図7と図8を参照して本発明の第5の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0084】
本実施形態のリン吸着装置1Dでは、回収物沈殿部12を曝気槽4から沈殿槽6までの間に設けている。回収物沈殿部12は、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33と活性汚泥フロック29との沈降速度差を利用して両者を分離するリン吸着粒子分離装置として機能するものである。回収物沈殿部12の形状は、円筒状、角筒状、円錐状、角錐状、多段ステップ状のいずれでもよいが、本実施形態では円筒状とした。回収物沈殿部12の底部はポンプP5を有する回収ラインL9を介して回収容器9に連通している。
【0085】
図8を参照して本実施形態の作用を説明する。
【0086】
活性汚泥フロック29は、比重が小さいため水流とともに流路L3に沿って流れ、回収物沈殿部の凹所12aに沈殿することなく、回収物沈殿部12の上方を通過し、流路L32を通って次の沈殿槽6に流入する。
【0087】
一方、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、比重が大きいため沈降速度が大きく、回収物沈殿部12を通過する間に凹所12aに沈殿する。すなわち、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33の比重(約1.5〜3.0)は活性汚泥フロック29の比重(約1.0〜1.2)よりも大きいので、回収物沈殿部12にはリン吸着ハイドロタルサイト粒子33のみが沈殿し、活性汚泥フロック29はこれを通過して下流側ラインL32のほうに行き過ぎてしまう。これにより、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33と活性汚泥フロック29とが分離されるようになっている。
【0088】
なお、本実施形態では、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33が流路L3から回収物沈殿部の凹所12aまで沈降する時間をかせぐために、流路L3,L32を通流する水の流速を緩やかにし、水流を乱流のない層流にすることが好ましい。
【0089】
回収物沈殿部凹所12aの底部に蓄積した、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、ポンプP5の駆動によりラインL9を通って回収容器9に回収される。
【0090】
本実施形態によれば、上記実施形態のメッシュやストレーナなどのように孔部が存在しないため、孔部内への粒子の目詰まりが生じ無いというメリットがある。このため、洗浄や運転停止などをすることなく(メンテナンスフリー)、リン吸着ハイドロタルサイト粒子を被処理水から安定して分離・回収することが可能となる。
【0091】
(第6の実施形態)
次に図9と図10を参照して本発明の第6の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0092】
本実施形態のリン吸着装置1Eでは、リン吸着粒子分離装置としてサイクロン沈殿器13を曝気槽4から沈殿槽6までの間に設けている。サイクロン沈殿器13は、曝気槽4からの混合流体(フロック29と粒子33を含む被処理水)を旋回させて、比重の大きいものと比重の小さいものとを分離するサイクロン型の遠心分離機である。サイクロン沈殿器13の入口はラインL3を介して曝気槽4に連通している。また、サイクロン沈殿器13の第1の出口は上部ラインL32を介して沈殿槽6に連通し、第2の出口は下部ラインL9を介して回収容器9に連通している。下部ラインL9にはポンプP5が設けられている。
【0093】
サイクロン沈殿器13の最上部は円筒状をなし、中央主要部13aは逆三角錐状をなしている。サイクロン沈殿器13の最上部は、曝気槽4につながるラインL3の配管に接続されている。ラインL3の配管は、円筒状の最上部の内周壁に対して接線方向に被処理水が流れ込み旋回流が形成されるように、サイクロン沈殿器13の最上部に取り付けられている。
【0094】
中央主要部13aの縮径した最下部は、回収容器9につながるラインL9の配管に接続されている。前記中央主要部13aのなかには円筒状の内筒13bが同軸に配置されている。この内筒13bは、沈殿槽6につながるラインL32の配管に接続されている。
【0095】
図10を参照して本実施形態の作用を説明する。
【0096】
曝気槽4からラインL3を介してサイクロン沈殿器13の最上部に被処理水を導入すると、旋回流が形成される。この旋回流の水流に伴われて粒子群29,33は、らせん状に下降する間に、比重の小さい活性汚泥フロック29は中心軸近傍に集まり、比重の大きいリン吸着ハイドロタルサイト粒子33は内周壁近傍に集まる。さらに、活性汚泥フロック29は、図中の矢印14aに沿って内筒14bの下端開口のところで逆転し、下端開口から内筒14b内に流入し、ラインL32を通って沈殿槽6に排出される。一方、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、図中の矢印14cに沿って中央主要部13aの縮径した最下部に沈殿し、沈殿物が所定量に達したところでポンプP5の駆動によりラインL9を通って回収容器9に回収される。
【0097】
本実施形態によれば、分離対象である粒子間の比重差が小さい場合や、被処理水の流入量が大きい場合であっても、リン吸着粒子を効率的に分離することが可能となる。
【0098】
(第7の実施形態)
次に図11と図12を参照して本発明の第7の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0099】
本実施形態のリン吸着装置1Fでは、沈降速度差分離装置15を曝気槽4から沈殿槽6までの間に設けている。沈降速度差分離装置15は、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33とそれより比重の大きい固形物(金属粒子、金属酸化物粒子、砂粒など)とを分離するためのリン吸着粒子分離装置として機能するものである。すなわち、本実施形態の装置1Fでは、回収対象であるリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を上方に浮上させ、排除対象である原水中固形物29を下方に沈殿させるようにしている。なお、本実施形態では、沈降速度差分離装置15を曝気槽4とは別の装置として設置しているが、加圧ポンプのラインを曝気槽の底部に直接つないでもよい。この場合は、曝気槽が沈降速度差分離装置を兼ねることになる。
【0100】
沈降速度差分離装置15は、円筒状または角筒状の本体容器15aと、この本体容器15aの底部にラインL10を介して接続された加圧ポンプP6とを備えている。分離装置の本体容器15aの側方下部には曝気槽4からのラインL3が接続され、本体容器15aの側方上部には回収容器9へのラインL9が接続され、本体容器15aの側方中央部には沈殿槽6へのラインL32が接続されている。加圧ポンプP6は、0.5〜2.0MPaの範囲の圧力を本体容器15a内の被処理水に加える性能を有するものである。
【0101】
図12を参照して本実施形態の作用を説明する。
【0102】
被処理水は、曝気槽4からラインL3を介して分離装置15内に導入され、加圧ポンプP6の駆動により加圧され、ハイドロタルサイト粒子33が上方に浮上し、それより比重の大きい金属粒子などの原水中固形物29が底部に沈殿する。処理水は、排出ラインL32を介して沈殿槽6に排出される。リン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、回収ラインL9を介して回収容器9に回収される。
【0103】
本実施形態によれば、メッシュやストレーナ等のろ過装置を用いないで分離することができるので、目詰まりによるメンテナンスや運転停止をする必要がないというメリットがある。
【0104】
(第8の実施形態)
次に図13を参照して本発明の第8の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0105】
本実施形態のリン吸着装置1Gでは、複数の散気管51,52を曝気槽4内に設置し、分離対象となる平均粒径100μmの活性汚泥フロック29の粒径をさらに小さくして、平均粒径500μmのリン吸着ハイドロタルサイト粒子33との分離をさらに効率化するようにしている。複数の散気管51,52は、生物粒子径変化装置として機能するものであり、曝気槽4の内部をいくつかの領域に分けて、領域ごとに曝気量を異なるものとしている(エリア別曝気方式)。ブロワ55は、弁V4を有するラインL51を介して第1の散気管51に接続されるとともに、弁V5を有するラインL52を介して第2の散気管52に接続されている。さらに、本実施形態の装置1Gでは、沈殿槽6の入口側の前段部にメッシュ10gを設置している。
【0106】
本実施形態の作用を説明する。
【0107】
一方の弁V4の開度を小さくし、他方の弁V5の開度を大きくすることによって、第1の散気管51からの空気吹き込み量よりも、第2の散気管52からの空気吹き込み量を大きくする。そうすることで、前者の小さい空気量で活性汚泥フロック29が原水中の汚濁物質を分解除去しながら大きく増殖し、後者の大きい空気量で大きくなった活性汚泥フロック29を、曝気の揃断力によって砕いてその粒子径を小さくする。小さくなった活性汚泥フロック29は、後段のメッシュ10gでリン吸着ハイドロタルサイト粒子33と効率的に分離される。
【0108】
本実施形態によれば、活性汚泥フロック29が、原水11の汚濁物質濃度が高くなり負荷が増大したことによって、メッシュの孔径500μm以上と肥大化した場合、例えば1000μm(1mm)でも、上記生物粒子径変化装置によって、平均粒径100μm程度まで小さく砕くことができ、運転状態に依存することなく、安定した粒子の沈殿分離が可能となる。
【0109】
また、本実施形態によれば、粒径500μm付近の活性汚泥フロック29がメッシュ10gの孔部に目詰まりすることもなくなる。
【0110】
(第9の実施形態)
次に本発明の第9の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。本実施形態の装置は図示していない。
【0111】
上記実施形態の装置1Gでは生物粒子径変化装置として図13に示す曝気量の調整手段51,52,55,L51,L52,V4,V5を用いたが、本実施形態のリン回収装置(図示せず)では生物粒子径変化装置として以下の手段(A)〜(C)を用いることも可能である。
【0112】
(A)機械攪拌方式
機械攪拌機を曝気槽の上方に配置し、機械攪拌機の回転羽根スクリュウを曝気槽内の水中に浸漬させ、スクリュウを回転させて被処理水を強攪拌することにより、活性汚泥フロックを粉砕する。
【0113】
本実施形態によれば、回転羽根スクリュウの攪拌力、とくに強い剪断力により、繊維状等の強固な結合力をもつ活性汚泥フロックを砕いて、500μm以上に肥大化したフロックを平均粒径100μm以下の小サイズにすることができる。
【0114】
また、本実施形態によれば、既存の散気管などの曝気装置を改良することなく、機械攪拌機を増設することは容易である。また、機械攪拌機は、比較的低コストであるため付属設備として新規に導入しやすい。
【0115】
(B)水中攪拌方式(水流攪拌方式)
水中ポンプを曝気槽内の底部に配置し、水中ポンプで曝気槽内の被処理水に速い水流を生じさせることにより、活性汚泥フロックを粉砕する。水中ポンプの駆動により発生させる水流の向きは、垂直方向、水平方向、斜め方向のいずれの向きとしてもよいが、垂直方向とすることが好ましい。原水中の活性汚泥フロックが曝気槽の上部を素通りするのを防止できるからである。
【0116】
本実施形態によれば、弱い結合力を有する活性汚泥フロックをポンプ水流の低エネルギーの攪拌力で砕くことが可能となる。
【0117】
また、本実施形態によれば、既存の散気管などの曝気装置を改良することなく、水中ポンプを増設することは容易である。また、水中ポンプは、低コストであるため付属設備として新規に導入しやすい。
【0118】
(C)メッシュ内攪拌方式
本実施形態では、上記実施形態の装置1,1C,1Gの各メッシュ10,10c,10g内の前段部分に、上記のエリア別曝気方式、機械攪拌方式、水中攪拌方式のいずれかの手段を設置する。これらのうちのいずれかの手段を用いてメッシュ10,10c,10gの内側において活性汚泥フロックを砕き、500μm以上に肥大化したフロックを平均粒径100μm以下の小サイズにする。
【0119】
本実施形態によれば、メッシュ10,10c,10g内での粒子分離直前に、活性汚泥フロックを砕くことにより、前段のリン吸着反応を、曝気槽4全部を使って行うことができるので、リン吸着反応を低下させずに、沈殿分離も可能となる。
【0120】
また、本実施形態によれば、メッシュ10,10c,10gの内側で水を攪拌するので、メッシュの孔部に詰まったリン吸着ハイドロタルサイト粒子33や活性汚泥フロック29を洗浄除去することができるので、メッシュ10,10c,10gの目詰まりを防止できるというメリットもある。
【0121】
(第10の実施形態)
次に図14を参照して本発明の第10の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0122】
本実施形態のリン吸着装置1Hは、内部を堰43で曝気槽41とオーバーフロー槽42とに仕切られた処理槽4Hを有している。オーバーフロー槽42の上部にはメッシュ10hを着脱可能に取り付けている。メッシュ10hは、一端が支持部材44により支持され、他端近傍の部分がオーバーフロー槽42の上部開口周壁にもたせ掛けられ、人が手に持って搬送できる程度の重量とサイズのハンディタイプである。このためメンテナンス時において作業者が人力で容易にメッシュ10hを撤去することができ、洗浄した後にメッシュ10hをオーバーフロー槽42に再び装着することができる。メッシュ10hは、例えば平均孔径150μmのステンレス鋼網からなる。メッシュ10hを軽量化するために矩形状の外枠を樹脂材料でつくることもできる。
【0123】
本実施形態の作用を説明する。
【0124】
ポンプP1を駆動させ、曝気槽4H内に被処理水を導入する。ブロワ55を駆動させ、曝気槽4H内の原水に空気を吹き込む。ポンプP2を駆動させ、供給装置3から曝気槽4H内の原水にハイドロタルサイト粒子32を添加する。上記(7)式の反応に従って原水中のリン酸イオン31がハイドロタルサイト粒子32に吸着し、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33となる。ポンプP1の駆動を継続しているので、曝気槽4Hから堰43を越えてオーバーフロー槽42のほうへ被処理水が溢れ出す。この溢れ出す水をメッシュ10hで受け、メッシュ10hによりリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を捕捉する。メッシュ10h上に所定量を超えるリン吸着ハイドロタルサイト粒子33が堆積したところで、メッシュ10hを取り外し、これを水洗することによりリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を回収する。回収したリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を脱水して所望のリン肥料を得る。
【0125】
一方、被処理水中の活性汚泥フロック29は、メッシュ10hを透過してオーバーフロー槽42内に流入し、ラインL3を介してオーバーフロー槽42から沈殿槽6に送られ、沈殿槽6内で沈殿した後にラインL8を介して回収容器8に回収される。
【0126】
本実施形態によれば、作業者が人力で容易にメッシュを撤去して搬送できるので、被処理水中のリン成分を容易に回収することができる。このようにリン回収作業が簡単であるため、リン回収の頻度を上げることが容易であり、リン回収効率が向上する。
【0127】
(第11の実施形態)
次に図15を参照して本発明の第11の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0128】
本実施形態のリン吸着装置1Iでは、被処理水からリン成分を回収するために2つの回収容器22,24、水洗装置23および無限軌道装置20を曝気槽4Iに取り付けている。無限軌道装置20は、曝気槽4Iから第1の回収容器22までの間に配置されている。装置20の無限軌道は、1対のローラ21a,21b間に張設され、この上に透水性シートが貼り付けられている。装置20の無限軌道の半分は曝気槽4I内の原水中に浸漬され、無限軌道の残りの半分は2つの回収容器22,24の直上にて大気中にさらされている。
【0129】
第1の回収容器22は、装置20の無限軌道シートから自然落下するリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を回収するための容器である。なお、付着粒子33がシートから脱離(剥離)しやすくするために、温風装置(図示せず)から無限軌道シートに温風を吹き付けるか、またはヒータ(図示せず)により無限軌道シートを加熱することにより、乾燥させることもできる。
【0130】
第2の回収容器24は、第1の回収容器22で回収されなかった残留粒子33をさらに回収するための補助的な容器である。水洗装置23が装置20の無限軌道シートを間に挟んで第2の回収容器24の上方に配置されている。水洗装置23のノズルが透水性シートの裏面側に配置され、透水性シートの裏面側に洗浄水が吹き付けられると、残留粒子33が透水性シートから脱離して第2の回収容器24内に落下するようになっている。
【0131】
さらに、第2の回収容器24の下部はポンプP3を有する返送ラインL7に接続され、回収した粒子33が洗浄水とともに返送ラインL7を通って曝気槽4I内に返送されるようになっている。
【0132】
本実施形態の作用を説明する。
【0133】
ポンプP1を駆動させ、曝気槽41内に被処理水を導入する。ブロワ55を駆動させ、曝気槽41内の原水に空気を吹き込む。ポンプP2を駆動させ、供給装置3から曝気槽41内の原水にハイドロタルサイト粒子32を添加する。上記(7)式の反応に従って原水中のリン酸イオン31がハイドロタルサイト粒子32に吸着し、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33となる。このリン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、散気管5のエアバブリングにより装置20の無限軌道シートの表面に付着(または載置)する。
【0134】
無限軌道装置20を起動して無限軌道シートを図中の矢印方向に駆動させると、シートは水中を脱して大気にさらされることで脱水(若干の乾燥)され、無限軌道の折り返し点のところでシートから粒子33が脱離し、第1の回収容器22のなかへ落下する。第1の回収容器22内の粒子33の堆積量が所望量を超えたところで、粒子33の堆積物を回収する。
【0135】
さらに、折り返し点を過ぎた通過地点で水洗装置23から洗浄水をシートの裏面側に吹き付けると、シート上に残留した粒子33が洗浄水とともにシートから脱離し、第2の回収容器24のなかへ落下する。ポンプP3を駆動させ、回収した粒子33が洗浄水とともに返送ラインL7を通って曝気槽4I内に返送され、再度のリン吸着・回収処理に供される。
【0136】
本実施形態によれば、リン回収効率が飛躍的に向上する。とくに無限軌道装置と回収容器を組み合わせたことにより、多量の原水を高効率で処理することが可能になる。
【0137】
以上に種々の実施形態を説明したが、これらの実施形態のみに本発明は限定されるものではなく、上記実施形態のうちの2つ又は3つ以上を組み合わせたものを本発明に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0138】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1I…リン吸着装置、
2…原水槽、3…無機固形物粒子供給装置(ハイドロタルサイト粒子供給源)、
4…曝気槽、5,51,52…散気管、55…ブロワ、
6…沈殿槽、7…処理水貯留槽、8…余剰汚泥回収槽、
9…リン吸着済み粒子回収容器、
10,10c,10f,10g…メッシュ(リン吸着粒子分離装置)、
11,11a,11b…ストレーナ(リン吸着粒子分離装置)、
12…回収物沈殿部(リン吸着粒子分離装置)、
13…サイクロン沈殿器(リン吸着粒子分離装置)、
15…沈降速度差分離装置(リン吸着粒子分離装置)、
20…無限軌道装置、
21a,21b…駆動ローラ、
22…リン吸着済み粒子回収容器、
23…水洗装置、24…水洗粒子回収容器、
29…固形物(活性汚泥フロック、金属粒子、金属酸化物粒子、砂粒など)、
31,107…リン酸イオン、
32,101…ハイドロタルサイト粒子(無機固形物粒子)、
33,108…リン酸吸着ハイドロタルサイト粒子(リン吸着済み無機固形物粒子、リン吸着粒子)、
4H…処理槽、41…曝気槽、42…オーバーフロー槽、43…堰、44…支持部材、
4I…曝気沈殿槽、
L1〜L10…ライン、V1〜V5…弁、
P1〜P5…ポンプ、P6…加圧ポンプ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水中に含まれるリン分を回収するリン回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1および非特許文献1に示すように、排水中のリン分を吸着する吸着剤として粘土鉱物の一種であるハイドロタルサイトを用いる方法がある。
【0003】
特許文献1に記載されたハイドロタルサイト粒子の一般化学式を(1)式に、その具体的な化学式を(2)式に示す。また、非特許文献1に記載されたハイドロタルサイト粒子の構造の模式図を図16に示す。
【0004】
図16の(a)に示すように、ハイドロタルサイト粒子101は、マグネシウムイオン102(Mg2+で、M2+の一種)とアルミニウムイオン103(Al3+で、M3+の一種)を含む基体が水酸基イオン104(OH−で、An−の一種)により両側から挟まれた結合構造体である。リン酸イオンが存在しない状態では、結合構造体であるハイドロタルサイト粒子101の相互間隙に塩素イオン105(Cl−で、An−の一種)と水分子106(H2O)が入り込んでいる。
【0005】
<ハイドロタルサイト粒子の一般化学式>
[M2+(1−x) M3+x (OH)2]x+ [(An−)x/n・mH2O]x- …(1)
M2+: Mg2+、Zn2+、Cu2+
M3+: Fe3+、Al3+、
An−: SO42−、Cl−、CO32−、OH−
但し、0.20≦x≦0.33、0≦m<2である。
【0006】
<ハイドロタルサイト粒子の化学式>
x=0.3、m=1とする場合、
[Mg2+(2.3) Al3+(1) (OH)2]+ [(Cl−)(1)・H2O] - …(2)
上記のハイドロタルサイト粒子101に、リン酸107(PO43−)が接触すると、下式(3)の化学反応が起こり、図16の(b)に示すように、塩素イオン105(Cl−)がリン酸イオン107(PO43−)に置換される。置換された元の塩素イオン105(Cl−)は、ハイドロタルサイト粒子101から離れて系外へ排出される。
【0007】
<ハイドロタルサイトとリン酸イオンとの化学反応式>
[Mg2+(2.3) Al3+(1) (OH)2]+ [(Cl−)(1)・H2O] -+PO43−
→[Mg2+(2.3) Al3+(1) (OH)2]+ [(PO43−)(1)・H2O] -+Cl− …(3)
この従来の無機固形物粒子(ハイドロタルサイトの上位概念の物質)を、下水処理プロセスに適用したときの従来プロセスを説明する。このプロセスは上記のようにリン酸を吸着するためのものではなく、(4)式に示すように、硝化菌の硝化反応を促進するためのものである。また、特許文献2ではその粒子径を10μm以下と微小のものを適用することでその反応を促進している。すなわち、硝化菌がこの粉末上に付着して、かかる菌の活性化を図ることを目的としている。
【0008】
なお、本願明細書中において「リンを吸着する」、「リン分を吸着する」あるいは「リン酸を吸着する」とある記載は、いずれもリン酸イオンを吸着することを意味するものとする。
【0009】
硝化反応を下式(4)に示す。
【0010】
<硝化反応>
NH4+(アンモニアイオン)→NO2−(亜硝酸イオン)→NO3−(硝酸イオン) …(4)
脱窒反応を下式(5)に示す。
【0011】
<脱窒反応>
NO3−(硝酸イオン)→N2(窒素ガス) …(5)
これらの反応プロセスを上記ハイドロタルサイト粒子へのリン吸着反応に適用した場合に、そのプロセス操作の概要を説明する。原水は、原水槽から管を介して曝気槽内に供給される。曝気槽内へはブロワからガス管と散気管を順次介して空気が供給される。この曝気槽内では、予め、有機物等を基質として増殖する活性汚泥微生物が投入されており、排水中の有機物等を基質として増殖するとともに、この有機物を分解除去する。その後、その曝気槽内の被処理水は、次の沈殿槽に供給され、ここで、増殖した微生物(汚泥)と、有機物が分解除去されて清澄な上澄み水とが、沈殿分離される。この上澄み水は管を通って河川等に放流排出される。一方、沈殿した汚泥の一部は、ポンプ駆動によって元の曝気槽の入口部分まで返送され、汚泥の他の一部は、別のポンプ駆動によって余剰汚泥として排出される。
【0012】
ここで、ハイドロタルサイト粒子は、ポンプ駆動によって曝気槽内の上部前段部分に供給される。この供給されたハイドロタルサイト粉末は、式(1)〜(3)及び図16の(a)(b)に示す反応により原水中に含まれるリン酸イオンを吸着する。リン酸イオンを吸着したハイドロタルサイト粉末は、上記の通り、沈殿槽底部まで沈殿し、その一部がポンプの駆動によって曝気槽の前段まで返送され、他の一部が他のポンプ駆動によって余剰汚泥として回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−324128号公報
【特許文献2】特開2007−260496号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】亀田和人ら、ハイドロタルサイトの水環境保全・浄化への応用、THE CHEMICAL TIMES 2005 No.1(通巻195号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記の従来技術には、以下の課題(i)(ii)がある。
【0016】
(i) 回収物のリンの純度が低い(低品位の回収物)
曝気槽内において、図17の(a)に示すように、リン吸着済みハイドロタルサイト粒子108と活性汚泥フロック29とが流動しながら混在している。前者の粒子108は長径200μm程度の大きさである。後者のフロック29は活性汚泥微生物が凝集したものからなり、長径10μm以上100μm以下の大きさである。
【0017】
これらの物質29,108を含む原水が曝気槽から次の沈殿槽に供給され、沈殿槽内で粒子108とフロック29が共に沈殿すると、図17の(b)に示すように、吸着剤粒子108とフロック29とが近接し、これらの粒子108とフロック29とが混在する複合体が圧密化してくる。さらに、圧密化した粒子108とフロック29との複合体は、沈殿槽から余剰汚泥として排出される。この排出物は不純物として多量の活性汚泥フロック29を含むので、その分だけ回収物のリンの純度(リン含有率)が低下し、肥料やリン化合物としての価値(品位)が低い。
【0018】
また、活性汚泥フロック(微生物群)が投入されている曝気槽を用いているが、その代わりとして活性汚泥フロックを投入していない曝気槽の場合でも同様である。すなわち、原水中に、半導体製造排水中に含まれるシリコン粉末等無機沈殿物、又は食品や鉄鋼など産業排水中に固形物が含まれる場合がある。この場合、ハイドロタルサイト粒子107の平均粒径が同様の場合、原水中に含まれる固形物が、リン酸吸着ハイドロタルサイト粒子と混合した状態で、排出されて、回収物のリンの純度(リン含有率)が低くなるといった問題もある。
【0019】
(ii) 有害物質の混入がある(環境負荷が大きい)
同様に、当該従来技術だと、原水中に、水銀やクロムなどの重金属、トリハロメタンなど塩素系有機化合物等の有害物質が含まれていた場合、活性汚泥微生物は、その体内にこれらの有害物質を取り込み、有害物質が体内に濃縮する。そうすると、有害物質を高濃度に含む活性汚泥フロック29とリン酸吸着ハイドロタルサイト粒子108との混合物が、リン肥料として回収されるため、土壌環境等を悪化させる。
【0020】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、回収物中のリン含有率が高く、かつ有害物質の含有率が低く、環境負荷の少ないリン回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るリン回収装置は、リン酸を含む排水を供給する排水供給装置と、前記排水供給装置から供給される排水を受け入れ、前記排水中の汚濁物質を酸素雰囲気下の生物反応により分解浄化する好気性微生物を有し、かつ前記排水中に含まれるリン酸を吸着するリン吸着能を備える所定粒径の無機固形物粒子を有する曝気槽と、前記無機固形物粒子を前記曝気槽内に供給する無機固形物粒子供給装置と、前記排水中のリン酸を吸着したリン吸着済み無機固形物粒子と前記排水中に含まれる固形物とを両者の物性差を利用して分離することにより、前記固形物とともに前記好気性微生物を前記リン吸着済み無機固形物粒子から分離するリン吸着粒子分離装置と、前記リン吸着粒子分離装置により分離されたリン吸着済み無機固形物粒子を回収する回収容器と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、回収物中のリン含有率を高くできるので、従来品に比べてリンの純度が高い高品位のリン肥料が提供される。
【0023】
また、本発明によれば、リン肥料への有害物質の混入を低減できるので、環境負荷の少ない安全なリン肥料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るリン吸着装置を示す構成ブロック図。
【図2】(a)〜(c)は本発明装置におけるリン吸着後のハイドロタルサイト粒子および活性汚泥フロックの挙動をそれぞれ示す模式図。
【図3】(a)(b)は本発明装置においてハイドロタルサイト粒子がリン酸イオンを吸着するときの作用を説明するための化学反応模式図。
【図4】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図5】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図6】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図8】図7の装置の回収物沈殿部を拡大して示す内部透視断面模式図。
【図9】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図10】図9の装置のサイクロン沈殿器を拡大して示す内部透視断面模式図。
【図11】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図12】図11の装置の沈降速度差分離装置を拡大して示す内部透視断面模式図。
【図13】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図14】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図15】本発明の他の実施形態に係るリン回収装置を示す構成ブロック図。
【図16】(a)(b)は従来技術においてハイドロタルサイト粒子がリン酸イオンを吸着するときの作用を説明するための化学反応模式図。
【図17】(a)(b)は従来技術におけるリン吸着後のハイドロタルサイト粒子および活性汚泥フロックの挙動をそれぞれ示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者らは、上記課題(i)(ii)を解決するために、リンを吸着したハイドロタルサイト粒子を多量の活性汚泥フロック(固形物)を含む水中から分離・回収する方策について鋭意研究努力した結果、両者の物性(粒子径、密度、粒子の沈降速度など)の違いを利用すれば、リン吸着ハイドロタルサイト粒子を低コストで効率よく分離回収できるという知見を得た。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。以下に本発明の種々の好ましい実施の形態を説明する。
【0026】
(1)本発明のリン回収装置は、リン酸を含む排水を供給する排水供給装置と、前記排水供給装置から供給される排水を受け入れ、前記排水中の汚濁物質を酸素雰囲気下の生物反応により分解浄化する好気性微生物を有し、かつ前記排水中に含まれるリン酸を吸着するリン吸着能を備える所定粒径の無機固形物粒子を有する曝気槽と、前記無機固形物粒子を前記曝気槽内に供給する無機固形物粒子供給装置と、前記排水中のリン酸を吸着したリン吸着済み無機固形物粒子と前記排水中に含まれる固形物とを両者の物性差を利用して分離することにより、前記固形物とともに前記好気性微生物を前記リン吸着済み無機固形物粒子から分離するリン吸着粒子分離装置と、前記リン吸着粒子分離装置により分離されたリン吸着済み無機固形物粒子を回収する回収容器と、を具備するものである。
【0027】
本発明においては、無機固形物粒子を曝気槽内に投入し、被処理水中のリン酸イオンを無機固形物粒子に吸着させてリン吸着無機固形物粒子とし、このリン吸着無機固形物粒子と固形物(活性汚泥フロック)とが混合した状態で(図2の(a))被処理水をリン吸着粒子分離装置(メッシュ)に供給し、リン吸着粒子分離装置(メッシュ)の孔径より小さな固形物のみを通過させ、リン吸着粒子分離装置(メッシュ)の孔径よりも大きなリン吸着無機固形物粒子を捕捉し、その後、捕捉したリン吸着無機固形物粒子を水洗などの操作によりリン吸着粒子分離装置(メッシュ)から分離してリン肥料として回収する。一方、リン吸着粒子分離装置(メッシュ)を通過した固形物(活性汚泥フロック)は、後工程の沈殿槽において沈殿させることによって余剰汚泥として回収される。
【0028】
(2)上記(1)の装置において、リン吸着粒子分離装置として、リン吸着済み無機固形物粒子と前記固形物との粒径の差を利用して両者を分離する粒子径差分離装置を用いることができる(図1、図2(b)、図6、図13、図14)。粒子径差分離装置(メッシュ等)は、簡易な構造であるのでメンテナンス時の取り付け取り外しが容易であり、粒径差を利用してリン吸着無機固形物粒子と固形物とを効率よく分離することができる。
【0029】
(3)上記(1)の装置において、リン吸着粒子分離装置として、リン吸着済み無機固形物粒子と固形物との沈降速度の差による沈降速度差分離装置を用いることができる(図8、図10、図12)。沈降速度差分離装置は、ポンプやモーター等の動力源を要することなく、リン吸着無機固形物粒子と固形物とを分離することができるので、エネルギ消費量の少ないエコ方式といえるものである。
【0030】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかの装置において、固形物に外力を加えて粉砕し、物理的に固形物の粒径を小さくする粒子径変化装置をさらに有することが好ましい。このような粒子径変化装置として、機械攪拌を行うスクリュウや回転羽根を有する機械攪拌機、または水中攪拌を行う水中ポンプのいずれかを用いることができる。
【0031】
機械攪拌機を用いる場合は、回転羽根スクリュウを曝気槽内の水中に浸漬させ、スクリュウを回転させて被処理水を強攪拌することにより、回転羽根スクリュウの攪拌力、とくに強い剪断力により、繊維状等の強固な結合力をもつ活性汚泥フロックを砕いて、肥大化したフロックを小サイズの細粒にすることができる。
【0032】
水中ポンプを用いる場合は、曝気槽内の底部に配置し、水中ポンプで曝気槽内の被処理水に速い水流を生じさせることにより、活性汚泥フロックを粉砕する。なお、水中ポンプの駆動により発生させる水流の向きは、垂直方向、水平方向、斜め方向のいずれの向きとしてもよいが、垂直方向とすることが好ましい。原水中の活性汚泥フロックが曝気槽の上部を素通りするのを防止できるからである。
【0033】
さらに、リン吸着粒子分離装置(メッシュ)内の前段部分に、上記のエリア別曝気方式、機械攪拌方式、水中攪拌方式のいずれかの手段を設置する。これらのうちのいずれかの手段を用いてメッシュの内側において活性汚泥フロックを砕き、肥大化したフロックを小サイズの細粒にすることができる。また、リン吸着粒子分離装置(メッシュ)内での粒子分離直前に、活性汚泥フロックを砕くことにより、前段のリン吸着反応を、曝気槽全部を使って行うことができるので、リン吸着反応を低下させずに、沈殿分離も可能となる。
【0034】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかの装置において、リン吸着粒子分離装置は、曝気槽内、または曝気槽から回収装置までの間の流路に着脱可能に取り付けられていることが好ましい(図1、図6、図13、図14)。メンテナンス時に撤去作業や取り付け作業が容易になるからである。
【0035】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかの装置において、リン吸着粒子分離装置を前記曝気槽から前記回収装置までの間で移動させる無限軌道装置をさらに有することが好ましい。リン吸着粒子分離装置(メッシュ)を曝気槽から回収装置までの間で移動させる無限軌道装置をさらに有することが好ましい(図15)。無限軌道装置によりリン吸着粒子を連続的に分離・回収することができる。この場合に、無限軌道装置を水洗ノズル等の洗浄手段と組み合わせて用いると、さらに長期間にわたり連続的に処理することができる。
【0036】
(7)上記(1)〜(6)のいずれかの装置において、無機固形物粒子がマグネシウムと鉄を含むハイドロタルサイト粒子であることが好ましい。とくに、無機固形物粒子に3価の鉄イオンを含むハイドロタルサイト粒子を用いることが好ましい(図3)。3価の鉄イオンはリン酸イオンの吸着能に優れているからである。
【0037】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかの装置において、無機固形物粒子が平均粒径0.3〜3mmのハイドロタルサイト粒子であり、固形物が平均粒径100μm以下の活性汚泥フロックであり、リン吸着粒子分離装置が平均孔径120〜180μmのメッシュであることが好ましい。
【0038】
無機固形物粒子の平均粒径が0.3mmを下回ると、固形物(活性汚泥フロック)の径との差が小さくなり、リン吸着粒子分離装置(メッシュ)を用いて両者を分離することが困難になるからである。一方、無機固形物粒子の平均粒径が3mmを上回ると、粒子が粗くなりすぎて、粉粒体としてライン配管内を通流させて搬送することが困難になるからである。なお、本発明では無機固形物粒子の平均粒径を0.5mm(500μm)とすることが最も好ましい。粉粒体として取り扱いやすくなるばかりでなく、固形物(活性汚泥フロック)との分離もしやすくなるからである。
【0039】
排水中に含まれる固形物は、平均粒径100μm以下の活性汚泥フロックが主流であり、これ以上に固形物のサイズが大きくなると上記の粒子径変化装置を用いて粉砕して細粒化する必要がある。とくに繊維状等の強固な結合力をもつ500μm以上に肥大化した活性汚泥フロックは、機械粉砕機などを用いて平均粒径100μm以下の小サイズにすることが望ましい。
【0040】
リン吸着粒子分離装置としてメッシュを用いる場合に、その平均孔径が120μmを下回ると、固形物(活性汚泥フロック)が通過しにくくなり、固形物と粒子を分離できなくなり、回収物のリンの純度(リン含有率)が低下するからである。一方、メッシュの平均孔径が180μmを上回ると、無機固形物粒子までがメッシュを通過するようになり、リンの回収率が低下するからである。メッシュの平均孔径は、150μm程度とすることが最も好ましい。回収物のリンの純度が向上するとともに、リン回収率も増加するからである。
【0041】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための種々の形態を説明する。
【0042】
(第1の実施形態)
図1を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
【0043】
本実施形態のリン吸着装置1は、原水に含まれるリン酸を吸着・分離・回収するために、原水槽2、無機固形物粒子供給装置3、曝気槽4、沈殿槽6、余剰汚泥回収槽8、リン吸着済み無機固形物粒子回収槽9、およびこれらの機器を互いにつなぐ配管ラインL1〜L9および原水等の流体を送給するための各種ポンプP1〜P5を備えている。リン吸着装置1は、独立した単一のシステムとして稼動されるものであってもよいし、あるいは他の水処理設備と組み合せた複合システムとして稼動されるものであってもよい。リン吸着装置1のポンプやバルブ等の駆動手段は、各々の動作が図示しない制御器により統括的に制御されるようになっている。
【0044】
原水槽2は、回収対象物であるリン酸イオンを含む有機系排水が流入し、流入水を原水として一時的に貯留するものである。原水は、例えば下水では、リン酸イオン濃度は3〜5mg/リットル程度である。
【0045】
原水槽2の上部出口はポンプP1を有するラインL1を介して曝気槽4の上部入口に接続されている。
【0046】
無機固形物粒子供給装置3は、無機固形物粒子としてハイドロタルサイト粒子を貯留している。供給装置3に貯留されたハイドロタルサイト粒子は、図3に示すように2価のマグネシウムイオン(Mg2+)と3価の鉄イオン(Fe3+)を含み、リン酸イオンを吸着する性質を有している。供給装置3は、ポンプP2を有するラインL2を介して曝気槽4内の上部に接続されている。ポンプP2の駆動により供給装置3からハイドロタルサイト粒子32が曝気槽4内の原水に添加されるようになっている。
【0047】
曝気槽4内の底部近傍には散気管5が装入されている。散気管5にはラインL5を介してブロワ55が接続され、ブロワ55から所定圧力と所定流量の空気が供給され、散気管5の多数の細孔から空気の気泡が原水中に吹き込まれるようになっている。
【0048】
曝気槽4の出口側はラインL3を介して沈殿槽6の入口側に接続され、さらに沈殿槽6の出口側はラインL4を介して処理水貯留槽7に接続されている。一方、沈殿槽6の底部は、汚泥排出ラインL6→切替弁V1→汚泥返送ラインL7→ポンプP3を順次介して曝気槽4の入口側に接続されている。さらに、汚泥排出ラインL6は、切替弁V1→他方の分岐ラインL8→ポンプP4を順次介して汚泥貯留槽8にも接続されている。
【0049】
沈殿槽6内の前段部には粒径差分離装置としてメッシュ10が取り付けられている。メッシュ10は、被処理水が流入する入口側が開口し、流入口の近傍領域を四方(正面、両側面、下面)から取り囲むように四面体状に形成され、図示しない支持部材により沈殿槽6に支持されている。メッシュ10の平均孔径は150μm(0.15mm)である。メッシュ10の材料には、耐食性材料、例えばステンレス鋼などの金属材料またはフッ素系樹脂などの樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
メッシュ10の底部からはポンプP5を有する回収ラインL9が延び出している。この回収ラインL9を介してメッシュ10の内部領域はリン吸着ハイドロタルサイト粒子回収容器9に連通している。メッシュ10で分離されたリン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、ポンプP5の駆動によりラインL9を介して沈殿槽6から回収物容器9へ送られて回収されるようになっている。さらに、回収容器9ではリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を沈殿させ、その後、沈殿物を図示しない脱水装置に送り、脱水して肥料とする。
【0051】
次に本実施形態装置の作用を説明する。
【0052】
原水中の汚濁物質は分解除去されて、清澄な処理水として河川等に排出され、この分解除去の過程で増殖した余剰汚泥がポンプP4の駆動により排出ラインL6,L8を介して排出され、その汚泥の一部がポンプP3の駆動により返送ラインL7を介して曝気槽4の入口側に戻される。このように余剰汚泥を沈殿槽6から排出したり、あるいは一旦排出した汚泥を沈殿槽6に返送したりするのは、曝気槽4内における活性汚泥微生物の濃度を一定レベルに維持するためである。
【0053】
具体的には、原水はラインL1を介して曝気槽4内に供給される。
【0054】
下式(6)に示すように、この原水中の有機汚濁物質は、ブロワ55を駆動することによりガスラインL5、散気管5を順次介して曝気槽4内に供給される空気中の酸素を使って、予め曝気槽4内に投入された活性汚泥微生物によりCO2や水に分解される。
【0055】
有機汚濁物質 + 酸素 → 二酸化炭素 + 水
(CxHyOz)+(x+y/4-z/2) O2 → xCO2 + y/2 H2O …(6)
一方、ハイドロタルサイト粒子32は、上式(3)のハイドロタルサイト粒子101と類似しているが、下式(7)に示すように(M3+)の部分が鉄イオン(Fe3+)35と置換されている構造であり、その平均粒径は500μm(0.5mm)である。このハイドロタルサイト粒子32は、ポンプP2の駆動により供給装置3からラインL2を通って曝気槽4内の前段部に供給される。曝気槽4内では、原水中に含まれるリン酸イオン(PO43−)とハイドロタルサイト粒子32とが下式(7)および図3に示すように反応して、ハイドロタルサイト粒子32にリン酸イオン31が吸着される。
【0056】
<ハイドロタルサイト粒子とリン酸イオンとの化学反応式>
[Mg2+(2.3) Fe3+(1) (OH)2]+ [(Cl−)(1)・H2O] - + PO43−
→ [Mg2+(2.3) Al3+(1) (OH)2]+ [(PO43−)(1)・H2O] - + Cl− …(7)
上記のように、曝気槽4内で、(1)有機汚濁物質が分解除去された水((6)式)、その分解プロセスで増殖した(2)活性汚泥フロック、(3)リン酸が吸着されたハイドロタルサイト粒子((7)式)は、いずれも混合した状態でラインL3を介して沈殿槽6内のメッシュ10の内面側に供給される。メッシュ10の平均孔径が150μm(0.15mm)であるので、それより大きい平均粒径500μm(0.5mm)のリン吸着ハイドロタルサイト粒子33はメッシュ10に捕捉される。
【0057】
一方、平均粒径100μm(0.1mm)の活性汚泥フロック29および有機汚濁物質が分解除去された水は、メッシュ10の孔部を通過して、沈殿槽6の下流側(下部)に排出される。活性汚泥フロック29は沈殿槽6の下部に沈殿する。また、その上澄み水はラインL4を介して処理水として処理水貯留槽7を経た後に河川等に排出される。
【0058】
また、メッシュ10の内面側に捕捉されたリン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、メッシュ内面を水洗浄することにより又はポンプP5の駆動によりメッシュ内面を水洗浄することによりラインL9を介してリン吸着ハイドロタルサイト回収容器9に回収される。この回収物は、その後に脱水されてリン肥料として用いられる。
【0059】
一方、メッシュ10の孔部を通過した活性汚泥フロック29は、沈殿槽6の底部に沈殿し、その一部を返送汚泥として、ポンプP3の駆動によりラインL6→切替弁V1→ラインL7を順次通って曝気槽4の入口側に戻される。また、活性汚泥フロック29の他の一部は、ポンプP5の駆動によりラインL9を通って余剰汚泥として排出される。
【0060】
図2を参照してリン吸着ハイドロタルサイトリン粒子と活性汚泥フロックとの分離作用について説明する。
【0061】
曝気槽4内では、リン酸イオン31がハイドロタルサイト粒子32に吸着した長径500μmのリン酸吸着ハイドロタルサイト粒子33と、長径50μmと同径100μmの活性汚泥フロック29とが混在している(図2の(a))。これらをポアサイズ(孔径)150μm(0.15mm)のメッシュ10に供給した場合、その孔径より小さな粒子径を有する活性汚泥フロックのみがそのメッシュの孔部を通過して、その孔径よりも大きな粒子径を有するリン吸着ハイドロタルサイト粒子33のみが、そのメッシュ10の孔部を通過することができず、そのメッシュ10の内面側に捕捉される。このようにしてリン吸着ハイドロタルサイト粒子33と活性汚泥フロック29とに分離される(図2の(b))。
【0062】
本実施形態の装置の効果を以下に列記する。
【0063】
(1)メッシュを用いたシンプルな構造の分離方式の採用
リン吸着粒子分離装置にメッシュ10を用いたので、沈殿槽6の壁面部に容易に設置することができ、シンプルで安価な構造とすることが可能である。
【0064】
また、このメッシュ10の孔径は150μm(0.15mm)のものを適用したので、平均粒径約100μm(0.1mm)の活性汚泥フロックと水を通過させ、平均粒径500μm(0.5mm)のハイドロタルサイト粒子のみを捕獲でき、分離効率が向上するという効果が得られた。
【0065】
(2)沈殿槽での分離により分離効率の向上と回収物の純度向上
沈殿槽6内にメッシュ10を設置したので、メッシュによるハイドロタルサイト粒子の分離効果以外に、沈殿槽内での活性汚泥フロック等の自然沈殿の効果も追加され、これらの分離効率がさらに向上する。すなわち、沈殿槽6内の水は、曝気槽4のようにブロワでの曝気による流動状態(乱流)よりも小さい流動状態(層流)にあるため、比重(約1.5〜3)の大きなハイドロタルサイト粒子は、メッシュ10内の底部に沈殿し、当該底部に高濃度に蓄積する。それより比重(約1.0〜1.2)の小さな活性汚泥フロックは、同底部に沈殿することなく、メッシュ10の側面部の孔部から流出する。従って、メッシュ10の側面部にはハイドロタルサイト粒子が捕捉されず、同側面部の孔部にハイドロタルサイト粒子が目詰まりすることがないので、活性汚泥フロックや水のみが高速に、メッシュ10側面部を通過できる。よって、メッシュ10の分離効率が向上するといったメリットがある。
【0066】
また、メッシュ10内の底部にハイドロタルサイト粒子のみが沈殿するので、この底部に高濃度に同粒子が蓄積し、純度が高まるといったメリットも有する。さらに、メッシュ内の底部に同粒子が蓄積しているので、同粒子を迅速にラインL9を介して、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33として回収することも可能となる。
【0067】
(3)曝気槽内でリン吸着を行うことによりリン吸着反応効率向上
曝気槽4内にハイドロタルサイト粒子(粉体またはスラリー)を投入して、ブロワ55から曝気槽4内の被処理水にエアを吹き込み攪拌するので、投入粒子を水中に分散させるための攪拌動力(スクリュウなど)が不要になり、動力コストを削減できる。
【0068】
また、曝気槽4内前段部にハイドロタルサイト粒子を投入したので、曝気槽4内の活性汚泥微生物そのもののリン取り込み反応よりも先にリンを吸着させることができるので、ハイドロタルサイト粒子のほうにリンを多量に吸着させることが可能になり、リン吸着反応効率が向上する。
【0069】
(4)回収物を肥料として使用した場合に、その環境負荷が小さい
本発明装置により回収した回収物は鉄イオン35を含むハイドロタルサイト粒子32であるため、これを肥料として使用した場合に、従来のアルミニウムイオン103を含むハイドロタルサイト粒子101よりも土壌に及ぼす影響が少ない。
【0070】
(第2の実施形態)
次に図4を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0071】
本実施形態のリン吸着装置1Aでは、曝気槽4と沈殿槽6との間にストレーナ11を挿入している。ストレーナ11は、平均孔径150μm(0.15mm)の多孔エレメント(メッシュ状プレート)を内蔵し、被処理水からリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を分離する粒径差分離装置として機能するものである。ストレーナ11の多孔エレメントより上流側の部分は、ラインL3を介して曝気槽4に連通するとともに、ラインL9を介して回収容器9に連通している。すなわち、回収ラインL9は、ポンプP5を有し、ストレーナ11の底部に接続されている。さらに、ストレーナ11の多孔エレメントより下流側は、ライン32を介して沈殿槽6に連通している。
【0072】
なお、本実施形態では、ストレーナ11を曝気槽4から沈殿槽6までのラインL3,L32に設置しているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、ストレーナを曝気槽内または沈殿槽内に設置することもできる。
【0073】
本実施形態によれば、ストレーナ11を曝気槽4と沈殿槽6との間に挿入するだけであるので、簡単な増設工事のみでよく、低コストである。
【0074】
(第3の実施形態)
次に図5を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0075】
本実施形態のリン吸着装置1Bでは、曝気槽4と沈殿槽6との間に2つのストレーナ11a,11bを並列に挿入している。各ストレーナ11a,11bは、平均孔径150μm(0.15mm)の多孔エレメントを内蔵し、被処理水からリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を分離する粒径差分離装置として機能するものである。第1ストレーナ11aの多孔エレメントより上流側の部分は、バルブV2を有するラインL32を介して曝気槽4に連通するとともに、ラインL91を介して回収容器9に連通している。また、第2ストレーナ11bの多孔エレメントより上流側の部分は、バルブV3を有するラインL33を介して曝気槽4に連通するとともに、ラインL92を介して回収容器9に連通している。さらに、第1ストレーナ11aの多孔エレメントより下流側はライン34を介して沈殿槽6に連通し、第2ストレーナ11bの多孔エレメントより下流側はライン35を介して沈殿槽6に連通している。
【0076】
2つのバルブV2,V3は図示しない制御器により開閉動作が制御されるようになっている。定常運転時にはバルブV2,V3を交互に開閉して2つのストレーナ11a,11bのうちのいずれか一方に通水し、他方から捕捉粒子33を回収するローテーション稼動を採用している。例えば、第1ストレーナ11aに連続的に通水していると、その多孔エレメントにリン吸着ハイドロタルサイト粒子33が堆積してきて、多孔エレメントの孔部に目詰まりを生じ、その水流量が低下してくる。その水流量の低下を検知したとき、または定期的に、バルブV2を閉じて第1ストレーナ11aへの通水を停止し、バルブV3を開けて第2ストレーナ11bへの通水を開始する。その後、ポンプP5を駆動することによって、目詰まりを生じている第1ストレーナ11aの多孔エレメントからリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を排出する。このようにラインL32→L33の流路切り替えとラインL92→L91の流路切り替えを順次行うことによって、ストレーナの目詰まりを効率よく解消することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、2つのストレーナを曝気槽と沈殿槽との間に並列に挿入しているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、3つ以上のストレーナを並列的に多段に配置することも可能である(メリーゴーランド方式)。
【0078】
本実施形態によれば、一方のストレーナが目詰まりを起こしても、実質的に通水を停止することなく、他方のストレーナによりリン吸着ハイドロタルサイト粒子の分離回収を継続して行うことができる。
【0079】
(第4の実施形態)
次に図6を参照して本発明の第4の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0080】
本実施形態のリン吸着装置1Cでは、曝気槽4内の後段部分(出口側)にメッシュ10cを設置している。メッシュ10cは、上記第1の実施形態のメッシュ10と実質的に同じ構成のものである。
【0081】
本実施形態によれば、曝気槽4内の流動状態は前段部から中央部分が激しく乱流状態であるが、後段部分は乱流と層流の中間状態(少し気泡で流動している)であることが多い。この状態だと、メッシュ10c内は、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33を捕獲するとともに、このメッシュ10c内の孔部にこれらの粒子が目詰まりすることなく流動している。従って、メッシュ10cを目詰まりさせることなく、当該粒子を捕獲させることが可能となる。また、ポンプP5を駆動してリン吸着ハイドロタルサイト回収物33を排出する場合にも、これらの粒子がメッシュ10c内で流動しているので、瞬時に排出することが可能となり、回収の効率が向上するとのメリットを有する。
【0082】
ちなみに、原水中には有機汚濁物質(生物のえさ)が多く含まれている(例:BOD(Biochemical Oxygen Demand、生化学的酸素要求量)が、100〜300mg/Lの下水、BODが1000〜100000mg/Lの食品排水)に適用することが可能である。しかし、原水中に有機汚濁物質の含有量が少ない下水処理場処理水(BOD 1〜20mg/L)や、半導体排水(BOD 10〜40mg/L)の場合に、生物が混入していないので、曝気槽4内の吸着反応が固形物にじゃまされず吸着速度が向上したり、原水中に生物なしのためメッシュ10cのろ過速度が向上したり、メッシュ10cの目詰まりの発生頻度が低くなるなどのメリットがある。
【0083】
(第5の実施形態)
次に図7と図8を参照して本発明の第5の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0084】
本実施形態のリン吸着装置1Dでは、回収物沈殿部12を曝気槽4から沈殿槽6までの間に設けている。回収物沈殿部12は、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33と活性汚泥フロック29との沈降速度差を利用して両者を分離するリン吸着粒子分離装置として機能するものである。回収物沈殿部12の形状は、円筒状、角筒状、円錐状、角錐状、多段ステップ状のいずれでもよいが、本実施形態では円筒状とした。回収物沈殿部12の底部はポンプP5を有する回収ラインL9を介して回収容器9に連通している。
【0085】
図8を参照して本実施形態の作用を説明する。
【0086】
活性汚泥フロック29は、比重が小さいため水流とともに流路L3に沿って流れ、回収物沈殿部の凹所12aに沈殿することなく、回収物沈殿部12の上方を通過し、流路L32を通って次の沈殿槽6に流入する。
【0087】
一方、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、比重が大きいため沈降速度が大きく、回収物沈殿部12を通過する間に凹所12aに沈殿する。すなわち、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33の比重(約1.5〜3.0)は活性汚泥フロック29の比重(約1.0〜1.2)よりも大きいので、回収物沈殿部12にはリン吸着ハイドロタルサイト粒子33のみが沈殿し、活性汚泥フロック29はこれを通過して下流側ラインL32のほうに行き過ぎてしまう。これにより、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33と活性汚泥フロック29とが分離されるようになっている。
【0088】
なお、本実施形態では、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33が流路L3から回収物沈殿部の凹所12aまで沈降する時間をかせぐために、流路L3,L32を通流する水の流速を緩やかにし、水流を乱流のない層流にすることが好ましい。
【0089】
回収物沈殿部凹所12aの底部に蓄積した、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、ポンプP5の駆動によりラインL9を通って回収容器9に回収される。
【0090】
本実施形態によれば、上記実施形態のメッシュやストレーナなどのように孔部が存在しないため、孔部内への粒子の目詰まりが生じ無いというメリットがある。このため、洗浄や運転停止などをすることなく(メンテナンスフリー)、リン吸着ハイドロタルサイト粒子を被処理水から安定して分離・回収することが可能となる。
【0091】
(第6の実施形態)
次に図9と図10を参照して本発明の第6の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0092】
本実施形態のリン吸着装置1Eでは、リン吸着粒子分離装置としてサイクロン沈殿器13を曝気槽4から沈殿槽6までの間に設けている。サイクロン沈殿器13は、曝気槽4からの混合流体(フロック29と粒子33を含む被処理水)を旋回させて、比重の大きいものと比重の小さいものとを分離するサイクロン型の遠心分離機である。サイクロン沈殿器13の入口はラインL3を介して曝気槽4に連通している。また、サイクロン沈殿器13の第1の出口は上部ラインL32を介して沈殿槽6に連通し、第2の出口は下部ラインL9を介して回収容器9に連通している。下部ラインL9にはポンプP5が設けられている。
【0093】
サイクロン沈殿器13の最上部は円筒状をなし、中央主要部13aは逆三角錐状をなしている。サイクロン沈殿器13の最上部は、曝気槽4につながるラインL3の配管に接続されている。ラインL3の配管は、円筒状の最上部の内周壁に対して接線方向に被処理水が流れ込み旋回流が形成されるように、サイクロン沈殿器13の最上部に取り付けられている。
【0094】
中央主要部13aの縮径した最下部は、回収容器9につながるラインL9の配管に接続されている。前記中央主要部13aのなかには円筒状の内筒13bが同軸に配置されている。この内筒13bは、沈殿槽6につながるラインL32の配管に接続されている。
【0095】
図10を参照して本実施形態の作用を説明する。
【0096】
曝気槽4からラインL3を介してサイクロン沈殿器13の最上部に被処理水を導入すると、旋回流が形成される。この旋回流の水流に伴われて粒子群29,33は、らせん状に下降する間に、比重の小さい活性汚泥フロック29は中心軸近傍に集まり、比重の大きいリン吸着ハイドロタルサイト粒子33は内周壁近傍に集まる。さらに、活性汚泥フロック29は、図中の矢印14aに沿って内筒14bの下端開口のところで逆転し、下端開口から内筒14b内に流入し、ラインL32を通って沈殿槽6に排出される。一方、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、図中の矢印14cに沿って中央主要部13aの縮径した最下部に沈殿し、沈殿物が所定量に達したところでポンプP5の駆動によりラインL9を通って回収容器9に回収される。
【0097】
本実施形態によれば、分離対象である粒子間の比重差が小さい場合や、被処理水の流入量が大きい場合であっても、リン吸着粒子を効率的に分離することが可能となる。
【0098】
(第7の実施形態)
次に図11と図12を参照して本発明の第7の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0099】
本実施形態のリン吸着装置1Fでは、沈降速度差分離装置15を曝気槽4から沈殿槽6までの間に設けている。沈降速度差分離装置15は、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33とそれより比重の大きい固形物(金属粒子、金属酸化物粒子、砂粒など)とを分離するためのリン吸着粒子分離装置として機能するものである。すなわち、本実施形態の装置1Fでは、回収対象であるリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を上方に浮上させ、排除対象である原水中固形物29を下方に沈殿させるようにしている。なお、本実施形態では、沈降速度差分離装置15を曝気槽4とは別の装置として設置しているが、加圧ポンプのラインを曝気槽の底部に直接つないでもよい。この場合は、曝気槽が沈降速度差分離装置を兼ねることになる。
【0100】
沈降速度差分離装置15は、円筒状または角筒状の本体容器15aと、この本体容器15aの底部にラインL10を介して接続された加圧ポンプP6とを備えている。分離装置の本体容器15aの側方下部には曝気槽4からのラインL3が接続され、本体容器15aの側方上部には回収容器9へのラインL9が接続され、本体容器15aの側方中央部には沈殿槽6へのラインL32が接続されている。加圧ポンプP6は、0.5〜2.0MPaの範囲の圧力を本体容器15a内の被処理水に加える性能を有するものである。
【0101】
図12を参照して本実施形態の作用を説明する。
【0102】
被処理水は、曝気槽4からラインL3を介して分離装置15内に導入され、加圧ポンプP6の駆動により加圧され、ハイドロタルサイト粒子33が上方に浮上し、それより比重の大きい金属粒子などの原水中固形物29が底部に沈殿する。処理水は、排出ラインL32を介して沈殿槽6に排出される。リン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、回収ラインL9を介して回収容器9に回収される。
【0103】
本実施形態によれば、メッシュやストレーナ等のろ過装置を用いないで分離することができるので、目詰まりによるメンテナンスや運転停止をする必要がないというメリットがある。
【0104】
(第8の実施形態)
次に図13を参照して本発明の第8の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0105】
本実施形態のリン吸着装置1Gでは、複数の散気管51,52を曝気槽4内に設置し、分離対象となる平均粒径100μmの活性汚泥フロック29の粒径をさらに小さくして、平均粒径500μmのリン吸着ハイドロタルサイト粒子33との分離をさらに効率化するようにしている。複数の散気管51,52は、生物粒子径変化装置として機能するものであり、曝気槽4の内部をいくつかの領域に分けて、領域ごとに曝気量を異なるものとしている(エリア別曝気方式)。ブロワ55は、弁V4を有するラインL51を介して第1の散気管51に接続されるとともに、弁V5を有するラインL52を介して第2の散気管52に接続されている。さらに、本実施形態の装置1Gでは、沈殿槽6の入口側の前段部にメッシュ10gを設置している。
【0106】
本実施形態の作用を説明する。
【0107】
一方の弁V4の開度を小さくし、他方の弁V5の開度を大きくすることによって、第1の散気管51からの空気吹き込み量よりも、第2の散気管52からの空気吹き込み量を大きくする。そうすることで、前者の小さい空気量で活性汚泥フロック29が原水中の汚濁物質を分解除去しながら大きく増殖し、後者の大きい空気量で大きくなった活性汚泥フロック29を、曝気の揃断力によって砕いてその粒子径を小さくする。小さくなった活性汚泥フロック29は、後段のメッシュ10gでリン吸着ハイドロタルサイト粒子33と効率的に分離される。
【0108】
本実施形態によれば、活性汚泥フロック29が、原水11の汚濁物質濃度が高くなり負荷が増大したことによって、メッシュの孔径500μm以上と肥大化した場合、例えば1000μm(1mm)でも、上記生物粒子径変化装置によって、平均粒径100μm程度まで小さく砕くことができ、運転状態に依存することなく、安定した粒子の沈殿分離が可能となる。
【0109】
また、本実施形態によれば、粒径500μm付近の活性汚泥フロック29がメッシュ10gの孔部に目詰まりすることもなくなる。
【0110】
(第9の実施形態)
次に本発明の第9の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。本実施形態の装置は図示していない。
【0111】
上記実施形態の装置1Gでは生物粒子径変化装置として図13に示す曝気量の調整手段51,52,55,L51,L52,V4,V5を用いたが、本実施形態のリン回収装置(図示せず)では生物粒子径変化装置として以下の手段(A)〜(C)を用いることも可能である。
【0112】
(A)機械攪拌方式
機械攪拌機を曝気槽の上方に配置し、機械攪拌機の回転羽根スクリュウを曝気槽内の水中に浸漬させ、スクリュウを回転させて被処理水を強攪拌することにより、活性汚泥フロックを粉砕する。
【0113】
本実施形態によれば、回転羽根スクリュウの攪拌力、とくに強い剪断力により、繊維状等の強固な結合力をもつ活性汚泥フロックを砕いて、500μm以上に肥大化したフロックを平均粒径100μm以下の小サイズにすることができる。
【0114】
また、本実施形態によれば、既存の散気管などの曝気装置を改良することなく、機械攪拌機を増設することは容易である。また、機械攪拌機は、比較的低コストであるため付属設備として新規に導入しやすい。
【0115】
(B)水中攪拌方式(水流攪拌方式)
水中ポンプを曝気槽内の底部に配置し、水中ポンプで曝気槽内の被処理水に速い水流を生じさせることにより、活性汚泥フロックを粉砕する。水中ポンプの駆動により発生させる水流の向きは、垂直方向、水平方向、斜め方向のいずれの向きとしてもよいが、垂直方向とすることが好ましい。原水中の活性汚泥フロックが曝気槽の上部を素通りするのを防止できるからである。
【0116】
本実施形態によれば、弱い結合力を有する活性汚泥フロックをポンプ水流の低エネルギーの攪拌力で砕くことが可能となる。
【0117】
また、本実施形態によれば、既存の散気管などの曝気装置を改良することなく、水中ポンプを増設することは容易である。また、水中ポンプは、低コストであるため付属設備として新規に導入しやすい。
【0118】
(C)メッシュ内攪拌方式
本実施形態では、上記実施形態の装置1,1C,1Gの各メッシュ10,10c,10g内の前段部分に、上記のエリア別曝気方式、機械攪拌方式、水中攪拌方式のいずれかの手段を設置する。これらのうちのいずれかの手段を用いてメッシュ10,10c,10gの内側において活性汚泥フロックを砕き、500μm以上に肥大化したフロックを平均粒径100μm以下の小サイズにする。
【0119】
本実施形態によれば、メッシュ10,10c,10g内での粒子分離直前に、活性汚泥フロックを砕くことにより、前段のリン吸着反応を、曝気槽4全部を使って行うことができるので、リン吸着反応を低下させずに、沈殿分離も可能となる。
【0120】
また、本実施形態によれば、メッシュ10,10c,10gの内側で水を攪拌するので、メッシュの孔部に詰まったリン吸着ハイドロタルサイト粒子33や活性汚泥フロック29を洗浄除去することができるので、メッシュ10,10c,10gの目詰まりを防止できるというメリットもある。
【0121】
(第10の実施形態)
次に図14を参照して本発明の第10の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0122】
本実施形態のリン吸着装置1Hは、内部を堰43で曝気槽41とオーバーフロー槽42とに仕切られた処理槽4Hを有している。オーバーフロー槽42の上部にはメッシュ10hを着脱可能に取り付けている。メッシュ10hは、一端が支持部材44により支持され、他端近傍の部分がオーバーフロー槽42の上部開口周壁にもたせ掛けられ、人が手に持って搬送できる程度の重量とサイズのハンディタイプである。このためメンテナンス時において作業者が人力で容易にメッシュ10hを撤去することができ、洗浄した後にメッシュ10hをオーバーフロー槽42に再び装着することができる。メッシュ10hは、例えば平均孔径150μmのステンレス鋼網からなる。メッシュ10hを軽量化するために矩形状の外枠を樹脂材料でつくることもできる。
【0123】
本実施形態の作用を説明する。
【0124】
ポンプP1を駆動させ、曝気槽4H内に被処理水を導入する。ブロワ55を駆動させ、曝気槽4H内の原水に空気を吹き込む。ポンプP2を駆動させ、供給装置3から曝気槽4H内の原水にハイドロタルサイト粒子32を添加する。上記(7)式の反応に従って原水中のリン酸イオン31がハイドロタルサイト粒子32に吸着し、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33となる。ポンプP1の駆動を継続しているので、曝気槽4Hから堰43を越えてオーバーフロー槽42のほうへ被処理水が溢れ出す。この溢れ出す水をメッシュ10hで受け、メッシュ10hによりリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を捕捉する。メッシュ10h上に所定量を超えるリン吸着ハイドロタルサイト粒子33が堆積したところで、メッシュ10hを取り外し、これを水洗することによりリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を回収する。回収したリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を脱水して所望のリン肥料を得る。
【0125】
一方、被処理水中の活性汚泥フロック29は、メッシュ10hを透過してオーバーフロー槽42内に流入し、ラインL3を介してオーバーフロー槽42から沈殿槽6に送られ、沈殿槽6内で沈殿した後にラインL8を介して回収容器8に回収される。
【0126】
本実施形態によれば、作業者が人力で容易にメッシュを撤去して搬送できるので、被処理水中のリン成分を容易に回収することができる。このようにリン回収作業が簡単であるため、リン回収の頻度を上げることが容易であり、リン回収効率が向上する。
【0127】
(第11の実施形態)
次に図15を参照して本発明の第11の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0128】
本実施形態のリン吸着装置1Iでは、被処理水からリン成分を回収するために2つの回収容器22,24、水洗装置23および無限軌道装置20を曝気槽4Iに取り付けている。無限軌道装置20は、曝気槽4Iから第1の回収容器22までの間に配置されている。装置20の無限軌道は、1対のローラ21a,21b間に張設され、この上に透水性シートが貼り付けられている。装置20の無限軌道の半分は曝気槽4I内の原水中に浸漬され、無限軌道の残りの半分は2つの回収容器22,24の直上にて大気中にさらされている。
【0129】
第1の回収容器22は、装置20の無限軌道シートから自然落下するリン吸着ハイドロタルサイト粒子33を回収するための容器である。なお、付着粒子33がシートから脱離(剥離)しやすくするために、温風装置(図示せず)から無限軌道シートに温風を吹き付けるか、またはヒータ(図示せず)により無限軌道シートを加熱することにより、乾燥させることもできる。
【0130】
第2の回収容器24は、第1の回収容器22で回収されなかった残留粒子33をさらに回収するための補助的な容器である。水洗装置23が装置20の無限軌道シートを間に挟んで第2の回収容器24の上方に配置されている。水洗装置23のノズルが透水性シートの裏面側に配置され、透水性シートの裏面側に洗浄水が吹き付けられると、残留粒子33が透水性シートから脱離して第2の回収容器24内に落下するようになっている。
【0131】
さらに、第2の回収容器24の下部はポンプP3を有する返送ラインL7に接続され、回収した粒子33が洗浄水とともに返送ラインL7を通って曝気槽4I内に返送されるようになっている。
【0132】
本実施形態の作用を説明する。
【0133】
ポンプP1を駆動させ、曝気槽41内に被処理水を導入する。ブロワ55を駆動させ、曝気槽41内の原水に空気を吹き込む。ポンプP2を駆動させ、供給装置3から曝気槽41内の原水にハイドロタルサイト粒子32を添加する。上記(7)式の反応に従って原水中のリン酸イオン31がハイドロタルサイト粒子32に吸着し、リン吸着ハイドロタルサイト粒子33となる。このリン吸着ハイドロタルサイト粒子33は、散気管5のエアバブリングにより装置20の無限軌道シートの表面に付着(または載置)する。
【0134】
無限軌道装置20を起動して無限軌道シートを図中の矢印方向に駆動させると、シートは水中を脱して大気にさらされることで脱水(若干の乾燥)され、無限軌道の折り返し点のところでシートから粒子33が脱離し、第1の回収容器22のなかへ落下する。第1の回収容器22内の粒子33の堆積量が所望量を超えたところで、粒子33の堆積物を回収する。
【0135】
さらに、折り返し点を過ぎた通過地点で水洗装置23から洗浄水をシートの裏面側に吹き付けると、シート上に残留した粒子33が洗浄水とともにシートから脱離し、第2の回収容器24のなかへ落下する。ポンプP3を駆動させ、回収した粒子33が洗浄水とともに返送ラインL7を通って曝気槽4I内に返送され、再度のリン吸着・回収処理に供される。
【0136】
本実施形態によれば、リン回収効率が飛躍的に向上する。とくに無限軌道装置と回収容器を組み合わせたことにより、多量の原水を高効率で処理することが可能になる。
【0137】
以上に種々の実施形態を説明したが、これらの実施形態のみに本発明は限定されるものではなく、上記実施形態のうちの2つ又は3つ以上を組み合わせたものを本発明に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0138】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1I…リン吸着装置、
2…原水槽、3…無機固形物粒子供給装置(ハイドロタルサイト粒子供給源)、
4…曝気槽、5,51,52…散気管、55…ブロワ、
6…沈殿槽、7…処理水貯留槽、8…余剰汚泥回収槽、
9…リン吸着済み粒子回収容器、
10,10c,10f,10g…メッシュ(リン吸着粒子分離装置)、
11,11a,11b…ストレーナ(リン吸着粒子分離装置)、
12…回収物沈殿部(リン吸着粒子分離装置)、
13…サイクロン沈殿器(リン吸着粒子分離装置)、
15…沈降速度差分離装置(リン吸着粒子分離装置)、
20…無限軌道装置、
21a,21b…駆動ローラ、
22…リン吸着済み粒子回収容器、
23…水洗装置、24…水洗粒子回収容器、
29…固形物(活性汚泥フロック、金属粒子、金属酸化物粒子、砂粒など)、
31,107…リン酸イオン、
32,101…ハイドロタルサイト粒子(無機固形物粒子)、
33,108…リン酸吸着ハイドロタルサイト粒子(リン吸着済み無機固形物粒子、リン吸着粒子)、
4H…処理槽、41…曝気槽、42…オーバーフロー槽、43…堰、44…支持部材、
4I…曝気沈殿槽、
L1〜L10…ライン、V1〜V5…弁、
P1〜P5…ポンプ、P6…加圧ポンプ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸を含む排水を供給する排水供給装置と、
前記排水供給装置から供給される排水を受け入れ、前記排水中の汚濁物質を酸素雰囲気下の生物反応により分解浄化する好気性微生物を有し、かつ前記排水中に含まれるリン酸を吸着するリン吸着能を備える所定粒径の無機固形物粒子を有する曝気槽と、
前記無機固形物粒子を前記曝気槽内に供給する無機固形物粒子供給装置と、
前記排水中のリン酸を吸着したリン吸着済み無機固形物粒子と前記排水中に含まれる固形物とを両者の物性差を利用して分離することにより、前記固形物とともに前記好気性微生物を前記リン吸着済み無機固形物粒子から分離するリン吸着粒子分離装置と、
前記リン吸着粒子分離装置により分離されたリン吸着済み無機固形物粒子を回収する回収容器と、
を具備することを特徴とするリン回収装置。
【請求項2】
前記リン吸着粒子分離装置として、前記リン吸着済み無機固形物粒子と前記固形物との粒径の差を利用して両者を分離する粒子径差分離装置を用いることを特徴とする請求項1記載のリン回収装置。
【請求項3】
前記リン吸着粒子分離装置として、前記リン吸着済み無機固形物粒子と前記固形物との沈降速度の差による沈降速度差分離装置を用いることを特徴とする請求項1記載のリン回収装置。
【請求項4】
前記固形物に外力を加えて粉砕し、物理的に固形物の粒径を小さくする粒子径変化装置をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のリン回収装置。
【請求項5】
前記リン吸着粒子分離装置は、前記曝気槽内、または前記曝気槽から前記回収装置までの間の流路に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のリン回収装置。
【請求項6】
前記リン吸着粒子分離装置を前記曝気槽から前記回収装置までの間で移動させる無限軌道装置をさらに有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のリン回収装置。
【請求項7】
前記無機固形物粒子がマグネシウムと鉄を含むハイドロタルサイト粒子であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のリン回収装置。
【請求項8】
前記無機固形物粒子が平均粒径0.3〜3mmのハイドロタルサイト粒子であり、
前記固形物が平均粒径100μm以下の活性汚泥フロックであり、
前記リン吸着粒子分離装置が平均孔径120〜180μmのメッシュであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のリン回収装置。
【請求項1】
リン酸を含む排水を供給する排水供給装置と、
前記排水供給装置から供給される排水を受け入れ、前記排水中の汚濁物質を酸素雰囲気下の生物反応により分解浄化する好気性微生物を有し、かつ前記排水中に含まれるリン酸を吸着するリン吸着能を備える所定粒径の無機固形物粒子を有する曝気槽と、
前記無機固形物粒子を前記曝気槽内に供給する無機固形物粒子供給装置と、
前記排水中のリン酸を吸着したリン吸着済み無機固形物粒子と前記排水中に含まれる固形物とを両者の物性差を利用して分離することにより、前記固形物とともに前記好気性微生物を前記リン吸着済み無機固形物粒子から分離するリン吸着粒子分離装置と、
前記リン吸着粒子分離装置により分離されたリン吸着済み無機固形物粒子を回収する回収容器と、
を具備することを特徴とするリン回収装置。
【請求項2】
前記リン吸着粒子分離装置として、前記リン吸着済み無機固形物粒子と前記固形物との粒径の差を利用して両者を分離する粒子径差分離装置を用いることを特徴とする請求項1記載のリン回収装置。
【請求項3】
前記リン吸着粒子分離装置として、前記リン吸着済み無機固形物粒子と前記固形物との沈降速度の差による沈降速度差分離装置を用いることを特徴とする請求項1記載のリン回収装置。
【請求項4】
前記固形物に外力を加えて粉砕し、物理的に固形物の粒径を小さくする粒子径変化装置をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のリン回収装置。
【請求項5】
前記リン吸着粒子分離装置は、前記曝気槽内、または前記曝気槽から前記回収装置までの間の流路に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のリン回収装置。
【請求項6】
前記リン吸着粒子分離装置を前記曝気槽から前記回収装置までの間で移動させる無限軌道装置をさらに有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のリン回収装置。
【請求項7】
前記無機固形物粒子がマグネシウムと鉄を含むハイドロタルサイト粒子であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のリン回収装置。
【請求項8】
前記無機固形物粒子が平均粒径0.3〜3mmのハイドロタルサイト粒子であり、
前記固形物が平均粒径100μm以下の活性汚泥フロックであり、
前記リン吸着粒子分離装置が平均孔径120〜180μmのメッシュであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のリン回収装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−189288(P2011−189288A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58127(P2010−58127)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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