説明

リードフレーム及びインターポーザ

【課題】 半導体パッケージで発生する電磁ノイズを当該パッケージ内部で減衰させることができるリードフレーム及びインターポーザを提供すること。
【解決手段】 LSIチップ10と外部の電気回路とを接続するものであり、複数のリード6を備えている。この複数のリード6の1本であるリード6aの一端はLSIチップ10と導線7aにより接続され他端がプリント基板に接続され、リード6aは一端において隣接するリード6bに導線7bにより接続され、リード6bの他端はリード6bに隣接するリード6cの一端に導線7cにより接続され、リード6cの他端はオープンとなっている。これにより、リード6aに接続されたリード6b、6cがオープンのスタブ線路として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体パッケージ等において半導体ベアチップと外部の電気回路とを接続するために用いられるリードフレーム及びインターポーザに関し、特に特定周波数の伝導ノイズを除去する機能を有するリードフレーム及びインターポーザに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の電磁ノイズ対策は、当該機器が外部に放射する電磁ノイズを減らす対策や外部からの電磁ノイズに対する耐性を高める対策、すなわち外部の電子機器との電磁干渉問題を対象としていた。しかしながら、電子機器の高周波化、小型化、多機能化の進展に伴い、機器の内部の電子部品間あるいは電子回路間の電磁干渉対策が必要不可欠となっている。例えば、主要なノイズ発生源である半導体IC(Integrated Circuit:集積回路)を内蔵した半導体パッケージから発生するノイズに対する対策が必要となる。このような問題の対策部品として、磁性金属粉末がポリマー中に分散された構造をもつノイズ抑制シート、インピーダンス素子、あるいは特許文献1に記載の、信号の高次高調波成分を減衰させるためのオープンスタブを備えた積層誘電体フィルターのような電磁ノイズ対策部品が公知となっている。
【0003】
上記のような従来のノイズ対策部品は、主として、ノイズ発生源である半導体パッケージが搭載されるプリント配線板に実装して使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−178302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、部品実装と配線の高密度化等により、機器内部の電磁環境は複雑化し、ノイズ抑制シート、インピーダンス素子や特許文献1の積層誘電体フィルターような既存のノイズ対策部品をプリント基板上に実装するだけでは対策しきれない問題も発生してきている。
【0006】
そこで、本発明の課題は、半導体パッケージで発生する電磁ノイズを当該パッケージ内部で減衰させることができるリードフレーム及びインターポーザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のリードフレームまたはインターポーザは、半導体ベアチップと外部の電気回路とを接続するリードフレームまたはインターポーザにおいて、複数のリードを備え、該複数のリードの少なくとも1本が隣接するリードまたはその他の少なくとも1本のリードと電気的に接続され、該電気的に接続されたリードがオープンまたはショートのスタブ線路として機能することを特徴とする。
【0008】
また、前記オープンまたはショートのスタブ線路として機能するリードの少なくとも1本に軟磁性を有する膜が付着していてもよい。
【0009】
オープンスタブは特定の周波数帯を減衰させるBEF(Band Elimination Filter)として、またショートスタブは、特定の周波数帯のみを透過させるBPF(Band Pass Filter)として機能することが一般的に知られている。オープンスタブは、スタブの長さLが、L<λ/4(ここでλは波長)の範囲ではキャパシタとして、λ/4<L<λ/2の範囲ではインダクタとして機能することが知られている。オープンスタブの長さは減衰させるべき中心周波数(fo)においてλ/4に設定されている。この場合、foにおいてオープンスタブの先端では電圧振幅が最大になり、スタブの付け根では電圧振幅は0になり、foにおいてスタブの付け根があたかもGNDのように振る舞う為、BEFとして働く。ショートスタブは、スタブの長さLが、L<λ/4の範囲ではインダクタとして、λ/4<L<λ/2の範囲ではキャパシタとして機能することが知られている。ショートスタブの長さは透過させるべき中心周波数(fo)においてλ/4に設定されている。本発明においては、スタブとして機能するリードは、先端をオープンにすればBEFとして機能し、先端をショートにすればBPFとして機能する。よって、用途に応じて両者の機能を使い分けることができる。さらに、スタブとして機能するリードの先端を実装基板のランドや配線パターンに接続し、そこに接続される配線パターンの長さや終端方法を任意に調整することによりフィルターとしての周波数特性を調整することもできる。
【0010】
上記のようなオープンスタブまたはショートスタブを用いた従来のBEFまたはBPFは、プリント配線板上に設けるものが一般的であるが、本発明は半導体パッケージ自体に設けるものであり、省スペースでのノイズ対策を可能とするものである。
【0011】
また、本発明において、オープンまたはショートのスタブ線路として機能するリードの少なくとも1本に軟磁性を有する膜を付着させることにより、スタブの長さを変えずにfoを変えることができる。これは、軟磁性膜がそのスタブが有するインダクタンスまたはキャパシタンスを変化させるため、または軟磁性膜を付着したスタブ線路の伝搬特性が変化し波長λが変化するためである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、半導体パッケージで発生する電磁ノイズを当該パッケージ内部で減衰させることができるリードフレーム及びインターポーザが得られる。これにより、半導体パッケージ自体でのノイズ対策が可能となり、さらに、リードフレームあるいはインターポーザを構成するリードのうち、信号伝送や電力供給等に使用しないリードを用いることができるので、新たな配線の追加や部品の追加を少なくすることができ、省スペースでのノイズ対策が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるリードフレームまたはインターポーザの一実施の形態を示す図であり、半導体パッケージ内部の一部を示す平面図。
【図2】本発明の効果を評価するためのリードフレームまたはインターポーザのリード部分の模擬的な第一の実験素子を示す斜視図。
【図3】本発明の効果を評価するためのリードフレームまたはインターポーザのリード部分の模擬的な第二の実験素子を示す斜視図。
【図4】リード部分の模擬的な実験素子の透過パラメータS21の測定結果を示す図であり、図4(a)は測定結果g及び測定結果hを示す図、図4(b)は測定結果i及び測定結果jを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明によるリードフレームまたはインターポーザの実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明によるリードフレームまたはインターポーザの一実施の形態を示す図であり、半導体パッケージ内部の一部を示す平面図である。図1において、本実施の形態のリードフレーム及びインターポーザ5は半導体ベアチップであるLSIチップ10と外部のプリント基板上に設置された電気回路とを接続するものであり、複数のリード6を備えている。この複数のリード6の1本であるリード6aの一端はLSIチップ10と導線7aにより接続され他端がプリント基板に接続される。ここで、本実施の形態においては、リード6aのLSIチップ10と接続された一端において隣接するリード6bに導線7bにより接続され、リード6bの他端はリード6bに隣接するリード6cの一端に導線7cにより接続され、リード6cの他端はオープンとなっている。これにより、リード6aに接続されたリード6b、6cがオープンのスタブ線路として機能することとなる。
【0016】
すなわち、図1のリードフレームまたはインターポーザ5では、リード6aのLSIチップ10との接続点において、導線7b、リード6b、導線7c、リード6cからなる経路8を有するオープンスタブが接続されていることにより、そのオープンスタブの長さが波長の1/4に相当する周波数のノイズが減衰し、このノイズはプリント基板には伝わらない。
【0017】
本実施の形態では、LSIチップで発生するノイズの周波数に合わせてスタブとして使用するリードの数およびその長さを選択することができる。また、スタブとして使用するリードの先端を接地することによりショートスタブとして機能させることもできる。
【0018】
また、ここではスタブを構成するために隣接するリードとはワイヤーボンディング等により電気的に接続するものとしたが、あらかじめ隣接のリードと接続したリードを備える構造であってもよく、また、外部のプリント基板などの実装基板側のランドを介して他のリードに接続することも可能である。
【0019】
上記の実施の形態においては、軟磁性を有する膜を付着させていないが、オープンまたはショートのスタブ線路として機能するリードの少なくとも1本に軟磁性膜を付着させることにより、スタブの長さを変えずに減衰させるべき周波数を変えることができる。軟磁性膜としてはフェライト膜、Fe−Si−Al系合金膜、軟磁性粉末を含んだ複合材料膜など様々な膜を用いることができ、付着方法としては、塗布、めっき、蒸着、スパッタなど様々な方法を用いることができる。
【0020】
次に、本発明の効果を確認するために、リードフレームまたはインターポーザのリード部分の模擬的な素子を作製し、測定評価を行った結果を説明する。図2はリードフレームまたはインターポーザのリード部分の模擬的な第一の実験素子を示す斜視図である。
【0021】
リードフレームまたはインターポーザの模擬的なリードとして、図2に示すように、断面が一辺の長さdが0.2mmの正方形で、長さeが2.8mmの銅合金製の7本のリード線1を0.5mmの間隔fで互いに平行に配置し、1本を半導体ベアチップと外部の電気回路を接続するためのシグナル用のSリード線、1本をグランド用のGリード線、他の5本をSリード線に接続されるスタブ用のリード線とした。すなわち、図2のように、ワイヤーボンディングにより、Sリード線に隣接する5本のリード線を接続用ワイヤー2により順次電気的に接続し、5本のリード線とワイヤーの長さが合わせて16mmになるように設置した。これにより、長さ16mmのオープンスタブ線路がSリード線に接続されることとなる。測定では、Sリード線とGリード線にマイクロプローブのシグナル線とグラウンド線をそれぞれ接続し、同軸ケーブルを介してネットワークアナライザーのポート1およびポート2に接続し、Sリードの透過減衰量を表す透過パラメータS21を測定した。
【0022】
図3はリードフレームまたはインターポーザのリード部分の模擬的な第二の実験素子を示す斜視図である。
【0023】
リードフレームまたはインターポーザの模擬的なリードとして、図3に示すように、図2と同様な材質および形状の9本のリード線1を0.5mmの間隔fで互いに平行に配置し、1本をシグナル用のSリード線、1本をグランド用のGリード線、他の7本をSリード線に接続されるスタブ用のリード線とした。すなわち、図3のようにSリード線に接続用ワイヤー2を用いて隣接する7本のリード線を順次電気的に接続し、7本のリード線とワイヤーの長さが合わせて23mmになるように配置した。これにより、長さ23mmのオープンスタブ線路がSリード線に接続されることとなる。Sリード線とGリード線にマイクロプローブのシグナル線とグラウンド線をそれぞれ接続し、同軸ケーブルを介してネットワークアナライザーのポート1およびポート2に接続し、透過パラメータS21を測定した。
【0024】
図2、図3と同様に、リードフレームまたはインターポーザの模擬的な第三の実験素子として、上記と同様な18本のリード線を0.5mmの間隔fで互いに平行に配置し、1本をシグナル用のSリード線、1本をグランド用のGリード線、他の16本をSリード線に接続されるスタブ用のリード線とした。すなわち、Sリード線にワイヤーを用いて隣接する16本のリード線を順次電気的に接続し、16本のリード線とワイヤーの長さが合わせて52mmになるように配置した。これにより、長さ52mmのオープンスタブ線路がSリード線に接続されることとなる。Sリード線とGリード線にマイクロプローブのシグナル線とグラウンド線をそれぞれ接続し、同軸ケーブルを介してネットワークアナライザーのポート1およびポート2に接続し、透過パラメータS21を測定した。
【0025】
図4に各実験素子、およびSリード線とGリード線のみでスタブのリード線を用いない場合の透過パラメータS21の測定結果を示す。図4(a)及び図4(b)に記載の、測定結果gは、スタブのリード線を用いない場合の透過パラメータS21の測定結果を示し、測定結果hは、Sリード線に接続したスタブ線路の長さが16mmの場合の透過パラメータS21の測定結果を示し、測定結果iは、Sリード線に接続したスタブ線路の長さが23mmの場合の透過パラメータS21の測定結果を示し、測定結果jは、Sリード線に接続したスタブ線路の長さが52mmの場合の透過パラメータS21の測定結果を示しており、Sリード線に接続したスタブ線路の長さが16mm、23mm、52mmの場合に、ほぼλ/4に対応するそれぞれの周波数4.7GHz、3.2GHz、1.2GHzの近傍で透過減衰量が大きくなっている。これにより、スタブとして用いたリードの長さに対応する周波数のノイズをリードフレームまたはインターポーザの部分で減衰させることができることがわかる。なお、52mmの場合に4.4GHz近傍で透過減衰量が大きくなっているのは、3λ/4に対応する周波数での減衰が現れているためと考えられる。
【0026】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではないことはいうまでもなく、目的とする半導体ベアチップ、半導体パッケージ、プリント基板等の外部回路などの形態に応じて設計変更可能である。インターポーザでもリードフレームでも同様の効果が得られ、スタブとして使用するリードの数、リードの形状、それらの配置など目的に合わせて選択可能である。また、半導体パッケージの内部のみでスタブとしての機能をもたせる場合だけでなく、スタブとして機能するリードの先端を実装基板のランドや配線パターンに接続してそこをスタブの一部とし、その配線パターンの長さや終端方法を任意に調整することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 リード線
2 接続用ワイヤー
5 リードフレームまたはインターポーザ
6、6a、6b、6c リード
7a、7b、7c 導線
8 経路
10 LSIチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ベアチップと外部の電気回路とを接続するリードフレームにおいて、複数のリードを備え、該複数のリードの少なくとも1本が隣接するリードまたはその他の少なくとも1本のリードと電気的に接続され、該電気的に接続されたリードがオープンまたはショートのスタブ線路として機能することを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
前記オープンまたはショートのスタブ線路として機能するリードの少なくとも1本に軟磁性を有する膜が付着していることを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項3】
半導体ベアチップと外部の電気回路とを接続するインターポーザにおいて、複数のリードを備え、該複数のリードの少なくとも1本が隣接するリードまたはその他の少なくとも1本のリードと電気的に接続され、該電気的に接続されたリードがオープンまたはショートのスタブ線路として機能することを特徴とするインターポーザ。
【請求項4】
前記オープンまたはショートのスタブ線路として機能するリードの少なくとも1本に軟磁性を有する膜が付着していることを特徴とする請求項3に記載のインターポーザ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−49198(P2011−49198A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193913(P2009−193913)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】