説明

リード端子付きのコイン形電池

【課題】耐振動性や耐衝撃性に優れ、電池本体を安定的に支持することができる信頼性に優れたリード端子付きのコイン形電池を提供する。
【解決手段】本発明は、上下缶2・3で構成される扁平状の電池缶1と、各缶2・3の外面に固定されたリード端子8・9とを有し、各リード端子8・9が、電池装着用の基板10に設けた係合孔11・12に差し込んで固定される係合片14・16を有するリード端子付きのコイン形電池である。基板10側に位置する下缶3の下面に三または四個の係合片16を配置する。これら下缶3に配置された係合片16を、該下缶3の周方向の等角度位置に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイン形の電池本体の外面にリード端子を固定したリード端子付きのコイン形電池に関する。本発明における電池本体の具体例としては、例えばCR電池を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
この種のリード端子付きのコイン形電池(以下、適宜に「端子付き電池」と記す。)の従来例としては、例えば特許文献1〜3を挙げることができる。これら特許文献では、電池本体を構成する封口缶と外装缶との各外面にリード端子がそれぞれ溶接されており、両リード端子の先端側が基板に半田付け固定されることで、電池本体が基板上に固定されている。各リード端子は、各缶の外面から水平外方向に片持ち状に伸びるアーム状を呈している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−203497号公報(図7−8)
【特許文献2】特開平11−354088号公報(図2−3)
【特許文献3】特開2002−170551号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は、車両のタイヤ、或いはホイールに装着されて、タイヤの空気圧を検出する無線式のタイヤ空気圧センサの電源として、上記のような端子付き電池を用いることを予定している。この電池には車両走行時におけるタイヤの振動やタイヤに加わる衝撃等に耐え得るだけの優れた耐振動性、耐衝撃性が求められる。
【0005】
しかし、特許文献1〜3に記載の端子付き電池では、二本のアーム状のリード端子を介して電池本体が支持されているだけであり、耐振動能や耐衝撃能が不十分であると言わざるを得ない。つまり、アーム状のリード端子は、僅かであっても撓み変形するおそれがあり、上述のようなタイヤ空気圧センサの電源に従来形態の端子付き電池を適用した場合には、大きな外力を受けると、リード端子の撓み変形に伴って電池本体が揺れ動くおそれがある。最悪の場合には、永続的な振動や衝撃によりアーム状のリード端子が金属疲労により破断して、電池本体が基板から外れるおそれもある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであり、耐振動性や耐衝撃性に優れ、電池本体を安定的に支持することができる信頼性に優れたリード端子付きのコイン形電池を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、図1および図3に示すように、上下缶2・3で構成される扁平状の電池缶1と、各缶2・3のそれぞれの外面に固定されたリード端子8・9とを有し、各リード端子8・9が、電池装着用の基板10に設けた係合孔11・12に差し込んで固定される係合片14・16を有するリード端子付きのコイン形電池において、基板10側に位置する下缶3の下面に三または四個の係合片16が設けられており、これら下缶3に配置された係合片16が、該下缶3の周方向の等角度位置に配置されていることを特徴とする(図1、図5乃至7参照)。
【0008】
下缶3側の係合片16は平板形状に形成する。これら係合片16は、互いに非平行の姿勢とする(図1、図5乃至7参照)。ここで言う「平板形状」とは、実質的に各係合片16が横断面視で長方形状を呈していることを意味し、また、「互いに非平行の姿勢」とは、各係合片16の上記長方形の長辺の伸び方向が、互いに非平行となっていることを意味する。
【0009】
下缶3側の係合片は、下缶3の外周よりも内側に配置することが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上下缶2・3で構成される扁平状の電池缶1と、各缶2・3のそれぞれの外面に固定されたリード端子8・9とを有し、各リード端子8・9が、電池装着用の基板10に設けた係合孔11・12に差し込んで固定される係合片14・16を有するリード端子付きのコイン形電池である。上缶3側のリード端子8は一対の係合片14・14を備え、両係合片14・14は電池本体1の中心軸Oを挟んで対向する位置に配されている。下缶3側のリード端子9は一対の係合片16・16を備え、両係合片16・16は電池本体1の中心軸Oを挟んで対向する位置に配されている。そして、上缶2の係合片14・14どうしをつなぐ仮想直線L1と下缶3の係合片16・16どうしをつなぐ仮想直線L2とが直交するように構成されている(図8参照)。
【0011】
両係合片14・16は、平板形状に形成されており、上缶2に配置された係合片14・14と下缶3に配置された係合片16・16とが互いに非平行の姿勢で配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るリード端子付きのコイン形電池においては、基板10側に位置する下缶3に、三または四個の係合片16を周方向等角度の位置に配置し、これら係合片16を基板10の係合孔12に差し込むことで電池本体1が固定されるようにした。このように複数個の係合片16を周方向等角度の位置に配置してあると、全周方向から作用する外力を係合片16で受け止めて、電池本体1が不用意に動くことを阻止することができる。また、極めて大きな外力が作用した場合でも基板10の係合孔12に差し込まれた係合片16は、その外力に抗して位置を保持し、電池本体1が不用意に動くことを確実に阻止することができる。以上より本発明によれば、耐振動性および耐衝撃性に優れ、電池本体1を安定的に支持することができる信頼性に優れたリード端子付きのコイン形電池を得ることができる。
【0013】
電池本体1を支持するうえでは、係合片16の個数は多いほうが好ましい。しかし、係合片16の個数を過剰に多くすると、その分だけリード端子9に掛かる材料費およびリード端子9の重量の増加を招く。したがって、本発明における係合片16の個数は、三または四個とする。
【0014】
平板形状の係合片16は、その厚み方向に比べて幅方向に撓み難く、幅方向の外力に対して優れた剛性を発揮する。したがって、上述のように、複数個の係合片16を周方向等角度の位置に配置したうえで、これら係合片16を互いに非平行の状態に配置してあると、電池本体1に作用する外力を係合片16の幅方向で受け止めることができる。このことは、周方向のいずれの方向から外力が作用した場合でも、係合片16が優れた剛性を発揮することを意味し、したがって、基板10上に電池本体1を安定的に固定支持することができる。
【0015】
下缶3側の係合片16は、該下缶3の外周よりも内側に配置することが好ましい。これによれば、下缶3の下面に係合片16を設けることができるので、係合片16と下缶3との距離を最小限化して、電池本体1に作用する外力をダイレクトに係合片16で受け止めて、電池本体1の遊動や位置ズレを確実に阻止することができる。また、リード端子9が下缶3の径方向の外側に飛び出さず、基板10上におけるリード端子付きのコイン形電池の配置スペースを小さくできる。
【0016】
上缶2の係合片14・14どうしをつなぐ仮想直線L1と下缶3の係合片16・16どうしをつなぐ仮想直線L2とが直交するように係合片14・16が配置されていると、全周方向から作用する外力を係合片14・16で受け止めて、電池本体1が不用意に動くことを確実に阻止することができる。また、極めて大きな外力が作用した場合でも基板10の係合孔12に差し込まれた係合片14・16は、その外力に抗して位置を保持し、電池本体1が不用意に動くことを確実に阻止することができる。以上より本発明によれば、耐振動性および耐衝撃性に優れ、電池本体を安定的に支持することができる信頼性に優れたリード端子付きのコイン形電池を得ることができる。
【0017】
平板形状の係合片14・16は、その厚み方向に比べて幅方向に撓み難く、幅方向の外力に対して優れた剛性を発揮する。したがって、上述のように、上缶2の係合片14・14どうしをつなぐ仮想直線L1と下缶3の係合片16・16どうしをつなぐ仮想直線L2とが直交するように係合片14・16が配置したうえで、これら係合片14・16を互いに非平行の状態に配置してあると、電池本体1に作用する外力をいずれかの係合片14・16の幅方向で受け止めることができる。このことは、周方向のいずれの方向から外力が作用した場合でも、係合片14・16が優れた剛性を発揮することを意味し、したがって、基板10上に電池本体1を安定的に固定支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係るリード端子付きのコイン形電池の平面図である。
【図2】第1実施形態のリード端子付きのコイン形電池の分解斜視図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るリード端子付きのコイン形電池の平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るリード端子付きのコイン形電池の平面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るリード端子付きのコイン形電池の平面図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係るリード端子付きのコイン形電池の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態) 図1乃至図4に、本発明に係るリード端子付きのコイン形電池(以下、「端子付電池」と記す。)の第1実施形態を示す。図2および図3に示すように、本実施形態に係る端子付電池の電池本体1は、ガスケットを介して結合された外装缶(上缶)2と封口缶(下缶)3とからなり、この電池本体1内に電池要素および非水電解液が収容されている。電池要素は、二酸化マンガン等からなる正極材と、金属リチウム等からなる負極材との間に不織布製のセパレータを配置して構成される。正極材が外装缶2に電気的に導通することで外装缶2が正極に帯電し、負極材が封口缶3に電気的に導通することで封口缶3が負極に帯電する。
【0020】
電池本体1の外装缶2の上面5には、帯板状のステンレス鋼で形成された一個の正極リード端子8が溶接固定されており、封口缶3の下面6には、帯板状のステンレス鋼で形成された三個の負極リード端子9がそれぞれ溶接固定されている。これらリード端子8・9に設けた後述の係合片14・16は、基板10の長方形状の係合孔11・12にそれぞれ差し込まれた後、半田付けされることにより基板10に装着固定される。かかる装着固定状態においては、封口缶3が基板10側に位置している。
【0021】
正極リード端子8は、図2および図3に示すように、外装缶2の上面5に溶接固定される所定幅の基端部13と、前記基板10の係合孔11に差し込まれる一対の平板形状(図4参照)の係合片14・14とからなる。詳しくは正極リード端子8の基端部13の先端側(図3では右側)は下方に直角に折れ曲げられ、その下端に係合片14・14が形成されている。
【0022】
各負極リード端子9は、封口缶3の下面6に溶接固定される所定幅の基端部15と、該基端部15の先端部から下方へ直角に延出して基板10の係合孔17に差し込まれる平板形状(図4参照)の係合片16とからなる。各負極リード端子9は、図1および図3に示すように、平面視で電池本体1の封口缶3の外周よりも内側に配置されている。
【0023】
三枚の負極リード端子9の基端部15は、図1に示すように、電池本体1の中心軸O側から外向きに放射状に伸びており、各負極リード端子9の係合片16は、封口缶3の周方向に120°の等角度位置にそれぞれ配置されている。また、各負極リード端子9の係合片16は互いに非平行の姿勢となるように配置されている。つまり、各係合片16は、横断面視で長方形の平板形状を呈しており、各係合片16の長方形の長辺の伸び方向は、互いに非平行とされている。
【0024】
以上のような構成からなる第1実施形態に係る端子付電池によれば、封口缶3の下面の周方向等角度位置に3つの係合片16を配置し、これら係合片16を基板10の係合孔12に差し込むことで電池本体1が固定されるようにしたので、全周方向から作用する外力をこれら3つの係合片16で受け止めて、電池本体1が不用意に動くことを阻止することができる。また、極めて大きな外力が作用した場合でも基板10の係合孔12に差し込まれた係合片16は、その外力に抗して位置を保持し、電池本体1が不用意に動くことを確実に阻止することができる。以上より本実施形態によれば、耐振動性および耐衝撃性に優れ、電池本体1を安定的に支持することができる信頼性に優れたリード端子付きのコイン形電池を得ることができる。
【0025】
平板形状の係合片16は、その厚み方向に比べて幅方向に撓み難く、幅方向の外力に対して優れた剛性を発揮する。したがって、上述のように、三個の係合片16を周方向等角度の位置(120°の等角度位置)に配置したうえで、これら係合片16を互いに非平行の状態に配置してあると、電池本体1に作用する外力を係合片16の幅方向で受け止めることができる。これにより、周方向のいずれの方向から外力が作用した場合でも、係合片16が優れた剛性を発揮し、基板10上に電池本体1を安定的に固定支持することができる。
【0026】
封口缶3側の係合片16は、該封口缶3の外周よりも内側に配置することが好ましい。これによれば、封口缶3の下面範囲内に係合片16を設けることができるので、係合片16と封口缶3との距離を最小限化して、電池本体1に作用する外力をダイレクトに係合片16で受け止めて、電池本体1の遊動や位置ズレを確実に阻止することができる。また、リード端子9が封口缶3の径方向の外側に飛び出さず、基板10上におけるリード端子付きのコイン形電池の配置スペースを小さくできる。
【0027】
(第2実施形態) 図5に、本発明に係る端子付電池の第2実施形態を示す。この第2実施形態では、正極リード端子8の基端部13の幅寸法を小さくして、負極リード端子9の幅寸法と等しくしてある。正極リード端子8には、係合片14を一つだけ設けてある。その他の点は、第1実施形態と同じであるので、同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。作用効果も第1実施形態と同様である。
【0028】
(第3実施形態) 図6に、本発明に係る端子付電池の第3実施形態を示す。この第3実施形態では、正極リード端子8の各係合片14が、電池本体1の中心軸Oを挟んで対向する位置に配置されている。各係合片14は、一つの負極リード端子9の係合片16(図6では左端の係合片16)と平行とされている。その他の点は、第1実施形態と同じであるので、同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。作用効果も第1実施形態と同様である。
【0029】
(第4実施形態) 図7に、本発明に係る端子付電池の第4実施形態を示す。この第4実施形態では、四枚の負極リード端子9の基端部15が電池本体1の中心軸O側から外向きに放射状に伸びており、四個の各係合片16が、封口缶3の周方向に90°の等角度の位置にそれぞれ配置されている。また、第2実施形態と同形状の正極リード端子8が外装缶2に配置されている。その他の点は、第1実施形態と同じであるので、同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。作用効果も第1実施形態と同様である。
【0030】
(第5実施形態) 図8に、本発明に係る端子付電池の第5実施形態を示す。この第5実施形態では、一対の正極リード端子8・8が、電池本体1の中心軸Oから左右方向に伸びている。また、負極リード端子9・9が、電池本体1の中心軸Oから前後方向に伸びている。
【0031】
つまり、外装缶2の係合片14・14と封口缶3の係合片16・16とは、それぞれの係合片14・16どうしが電池本体1の中心軸Oを挟んで対向するように配置され、且つ、外装缶2の係合片14・14どうしをつなぐ仮想直線L1と封口缶3の係合片16・16どうしをつなぐ仮想直線L2とが直交するように配置されている。また、各係合片14・16は、平板形状に形成されており、外装缶2に配置された係合片14・14と封口缶3に配置された係合片16・16とが互いに非平行の姿勢とされている。その他の点は、第1実施形態と同じであるので、同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。作用効果も第1実施形態と同様である。
【0032】
第1〜5実施形態においては、複数個の係合片16が一つの基端部15に支持される形態を採ることができ、例えば円盤状の基端部15の外周縁に、複数個(三又は四個)の係合片16を備えるものであってもよい。また、第3および第5実施形態において、2本の正極リード端子8の基端部13は一体化されていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 電池本体
2 上缶(外装缶)
3 下缶(封口缶)
8 正極リード端子
9 負極リード端子
10 基板
11 係合孔
12 係合孔
14 係合片
16 係合片
O 中心軸
L1・L2 仮想直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下缶で構成される扁平状の電池缶と、前記上下缶のそれぞれの外面に固定されたリード端子とを有し、前記リード端子が、電池装着用の基板に設けた係合孔に差し込んで固定される係合片を有するリード端子付きのコイン形電池において、
基板側に位置する前記下缶の下面に三または四個の係合片が設けられており、これら下缶に配置された係合片が、該下缶の周方向の等角度位置に配置されていることを特徴とするリード端子付きのコイン形電池。
【請求項2】
前記下缶側の各係合片は平板形状に形成されており、これら係合片は互いに非平行の姿勢で配置されている請求項1記載のリード端子付きのコイン形電池。
【請求項3】
前記下缶側の係合片が、下缶の外周よりも内側に配置されている請求項1又は2記載のリード端子付きのコイン形電池。
【請求項4】
上下缶で構成される扁平状の電池缶と、前記上下缶のそれぞれの外面に固定されたリード端子とを有し、前記各リード端子が、電池装着用の基板に設けた係合孔に差し込んで固定される係合片を有するリード端子付きのコイン形電池において、
前記上缶側のリード端子は一対の係合片を備え、両係合片は電池本体の中心軸を挟んで対向する位置に配されており、
前記下缶側のリード端子は一対の係合片を備え、両係合片は電池本体の中心軸を挟んで対向する位置に配されており、
前記上缶の係合片どうしをつなぐ仮想直線と前記下缶の係合片どうしをつなぐ仮想直線とが直交するように構成されていることを特徴とするリード端子付きのコイン形電池。
【請求項5】
前記両係合片が、平板形状に形成されており、前記上缶に配置された係合片と前記下缶に配置された係合片とが互いに非平行の姿勢で配置されている請求項4記載のリード端子付きのコイン形電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−218998(P2010−218998A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67334(P2009−67334)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】