説明

リード線取付構造及びリード線取付部材

【課題】少ない部品点数、少ないスペース、及び容易な作業にて、リード線の方向付けと移動制限が可能なリード線取付構造及びリード線取付部材を提供する。
【解決手段】フック部18は、孔17側に配置される第一フック部26と、フック端18a側に配置される第二フック部27を有している。また、第一フック部26は、一対の第一溝部31,32と、第一溝部31,32同士の間で延びる第一壁部33と、を備えている。第一フック部26では、第一リード線3と第二リード線4とは第一壁部33によって互いに隔てられるように配置されている。第二フック部27は、第一溝部31,32よりフック端18a側に配置された第二底部38と、第二底部38との間に空間SPを形成する第二壁部37と、を備えている。第二フック部27では、第二接合部6Bが空間SPに配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード線取付構造、及びリード線取付部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリード線取付構造として、温度センサーを支持するための孔を有する金属ケースと、温度センサーに接続される一対のリード線を支持するブッシュと、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このリード線取付構造では、温度センサーが上下方向に延びるように金属ケースに支持され、リード線が温度センサーから上方に延びた状態でブッシュに支持されている。リード線は、ブッシュから上方へ向かって引き出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−146712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のリード線取付構造では、温度センサーから上方へ延びるリード線は、ブッシュからそのまま上方へ延びている。従って、ブッシュから出ているリード線を折り曲げて方向付けをする必要が生じる。更には、方向付けをした状態にてリード線の保持(すなわち、リード線の移動制限)を行う必要が生じる。また、リード線の方向付けと移動制限は、リード線の断線を発生させることなく、行われる必要がある。従来のリード線取付構造においてリード線の方向付けと移動制限を行う場合、温度センサーから上方へ延びたリード線を折り曲げて方向付けするための部品と、当該状態にて保持して移動制限するための部品が必要となるため、部品点数が増加するという問題がある。また、それらの方向付けと移動制限を行うための構成を配置するために、必要スペースが増加するという問題がある。更には、温度センサーの取り付けとは別途、複数の部品を用いて方向付けと移動制限のための作業を行う必要があるため、作業が複雑になってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、少ない部品点数、少ないスペース、及び容易な作業にて、リード線の方向付けと移動制限が可能なリード線取付構造及びリード線取付部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るリード線取付構造は、互いに並行して延びる第一リード線及び第二リード線と、第一リード線及び第二リード線の取り付けを行う取付部と、を備えるリード線取付構造であって、取付部は、第一方向に延びる孔と、第一方向に交差する第二方向に延びるフック部と、を備え、フック部は、孔側に配置される第一フック部と、フック端側に配置される第二フック部と、を備え、第一フック部は、第二方向に延びる一対の溝部と、一対の溝部同士の間で第二方向に延びる第一壁部と、を備え、第二フック部は、溝部よりフック端側に配置された底部と、第一壁部からフック端へ第二方向に延びると共に、底部との間に空間を形成する第二壁部と、を備え、第一フック部において、第一リード線と第二リード線とは、第一壁部によって互いに隔てられ、第二フック部において、第一リード線と第二リード線とは、互いに接触して空間に配置されることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るリード線取付構造によれば、取付部が、第一方向に延びる孔を有し、第一方向と交差する第二方向に延びるフック部を有している。孔にセンサー等を固定した場合、当該センサー等から延びる第一リード線及び第二リード線は、フック部を用いることで、第一方向と交差する第二方向へ方向付けすることができる。ここで、フック部は、孔側に配置される第一フック部と、フック端側に配置される第二フック部を有している。また、第一フック部は、第二方向に延びる一対の溝部と、溝部同士の間で延びる第一壁部と、を備えている。このような第一フック部では、第一リード線と第二リード線とは第一壁部によって互いに隔てられるように配置されている。すなわち、第一リード線及び第二リード線は、それぞれの溝部によってガイドされるように配置することが可能となる。従って、孔に固定されたセンサー等から延びた第一リード線及び第二リード線は、第一フック部のそれぞれの溝部にガイドされることによって、第二方向へ方向付けがなされる。更には、第一リード線及び第二リード線は、溝部で支持されることで、方向付けがなされた状態にて移動の制限も行われる。また、第二フック部は、溝部よりフック端側に配置された底部と、第一壁部からフック端へ第二方向に延びると共に、底部との間に空間を形成する第二壁部と、を備えている。このような第二フック部では、第一リード線と第二リード線とは、互いに接触して空間に配置される。すなわち、第一リード線及び第二リード線は、第二壁部と底部との間の空間で挟まれるような配置となる。ここで、第二壁部は、第一フック部で第一リード線と第二リード線を隔てていた第一壁部から延びるものであるため、少なくとも第一リード線及び第二リード線の接触部分付近を支持することができる。これによって、第一リード線及び第二リード線の移動の制限が行われる。このように、溝部や壁部などの単純な構成によるフック部のみでリード線の方向付けと移動制限が行えるため、部品点数を減らすことができると共に、省スペース化を図ることができる。更には、フック部にリード線を引っ掛けるだけの容易な作業にて、リード線の方向付けと移動制限を行うことができる。以上によって、少ない部品点数、少ないスペース、及び容易な作業にて、リード線の方向付けと移動制限が可能となる。
【0008】
また、本発明に係るリード線取付部材は、互いに並行して延びる第一リード線及び第二リード線の取り付けを行うリード線取付部材であって、第一方向に延びる孔と、第一方向に交差する第二方向に延びるフック部と、を備え、フック部は、孔側に配置される第一フック部と、フック端側に配置される第二フック部と、を備え、第一フック部は、第二方向に延びる一対の溝部と、一対の溝部同士の間で第二方向に延びる第一壁部と、を備え、第二フック部は、溝部よりフック端側に配置された底部と、第一壁部からフック端へ第二方向に延びると共に、底部との間に空間を形成する第二壁部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上述の取付部と同様の構成を有するリード線取付部材を用いることによって、本発明に係るリード線取付部材は、上述のリード線取付構造と同じく、少ない部品点数、少ないスペース、及び容易な作業にて、リード線の方向付けと移動制限が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、少ない部品点数、少ないスペース、及び容易な作業にて、リード線の方向付けと移動制限が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るリード線取付構造及びリード線取付部材を上方から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るリード線取付構造及びリード線取付部材を下方から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るリード線取付構造及びリード線取付部材の平面図である。
【図4】図3に示すIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図3に示すV−V線に沿った断面図である。
【図6】図3に示すVI−VI線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。以下の説明においては、センサー部が延びる方向を下方として「上」、「下」の語を用いる。なお、温度センサー100の使用状態によって向きは変動する。本実施形態においては、リード線取付構造を適用する対象物の一例として、温度センサー100に適用した場合について説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るリード線取付構造1が適用された温度センサー100の斜視図である。図2は、図1に示す温度センサー100を下方から見た斜視図である。図3は、図1に示す温度センサー100を上方から見た平面図である。図4は、図3に示すIV−IV線に沿った断面図である。図5は、図3に示すV−V線に沿った断面図である。図6は、図3に示すVI−VI線に沿った断面図である。温度センサー100は、例えばEV車の電池パックに取り付けられて、温度を検出するものである。図1〜図6に示すように、温度センサー100は、センサー部2と、互いに並行して延びる第一リード線3及び第二リード線4からなるリード線対6と、リード線対6の取り付けを行うリード線取付部材(取付部)7と、を備えている。このうち、本実施形態に係るリード線取付構造1は、リード線対6と、リード線取付部材7と、を備えて構成されている。
【0014】
センサー部2は、温度を検出するための温度検出素子11と、温度検出素子11と電気的に接続されて上方に延びるリード部12と、温度検出素子11及びリード部12を収容するホルダ部13と、を備えている(特に、図4を参照)。ホルダ部13は、下端が封止されると共に、上端が開口する断面矩形状の筒状部材である。ホルダ部13は、リード線取付部材7に支持される支持部13aと、リード線取付部材7から下方に延びる延出部13bと、を有している。支持部13aの外形は、延出部13bの外形よりも大きい。温度検出素子11は、延出部13の下端付近に配置され、リード部12の上端は、支持部13aまで延びている。
【0015】
リード線対6は、第一リード線3の被覆部と、第二リード線4の被覆部とを密着させて構成される、いわゆる2芯平行線である。第一リード線3及び第二リード線4は、先端部分において被覆部が除去されて電線が露出される。露出した電線は、ホルダ部13の支持部13aへ入り込み、対応するリード部12に電気的に接続される。第一リード線3及び第二リード線4は、リード線取付部材7に取り付けられ、方向付けされる。また、第一リード線3及び第二リード線4は、リード線取付部材7によって、方向付けされた状態にて移動制限される(すなわち保持される)。第一リード線3及び第二リード線4は、センサー部2が延びる方向(請求項における第一方向に該当し、図においてD1で示される)と、交差する方向(請求項における第二方向に該当し、図においてD2で示される)に方向付けがなされる。本実施形態においては、第一方向D1は、上下方向に該当する。第二方向D2は、第一方向D1に直交する方向に該当する。具体的な取り付け状態については、後述する。以下の説明では、適宜、「第一方向D1」及び「第二方向D2」を用いて説明する。
【0016】
本実施形態において、リード線対6は、第一リード線3及び第二リード線4が被覆部において互いに接合されている第一接合部6A及び第二接合部6Bと、第一リード線3及び第二リード線4が互いに分かれて離間している離間部6Cと、を有している。リード線対6の先端側から、第一接合部6A、離間部6C、第二接合部6Bの順で配置されている。なお、以下の説明においては、第一接合部6Aと離間部6Cとの間で第一リード線3と第二リード線4とが分かれている部分を、すり割り端6aとし、離間部6Cと第二接合部6Bとの間で第一リード線3と第二リード線4とが分かれている部分を、すり割り端6bとする。
【0017】
リード線取付部材7は、本体部16と、本体部16に形成される孔17と、本体部16に形成されるフック部18と、笠部19と、クリップ部21と、を備えている。リード線取付部材7の材質は、例えば、PA6(6ナイロン)樹脂、POM(ポリアセタール)樹脂、ABS樹脂である。
【0018】
本体部16は、全体として第二方向D2に延びる略直方体の形状をなしている。本体部16は、第一方向D1(すなわち上下方向)に互いに対向する上端部16a及び下端部16bと、第二方向D2(すなわち長手方向)に互いに対向する第一側端部16c及び第二側端部16dと、第一方向D1及び第二方向D2と直交する方向(すなわち短手方向)に互いに対向する第三側端部16e及び第四側端部16fと、を有している。本体部16は、第一側端部16c側においてセンサー部2を支持し、第二側端部16d側からリード線対6を引き出している。
【0019】
孔17は、センサー部2を挿入させて支持する機能を有している。孔17は、本体部16の第一側端部16c側で第一方向D1(すなわち上下方向)に貫通している。フック部18は、センサー部2から延びるリード線対6を孔17から第二側端部16d側へ方向付けすると共に移動制限する機能を有している。フック部18は、本体部16の上端部16a付近で、第一側端部16c側から第二側端部16d側へ向かって第二方向D2に沿って延びている。
【0020】
笠部19は、本体部16の下端部16b付近から外周へ向かってスカート状に広がるように形成されている。笠部19は、温度センサー100を実装対象物に取り付けた場合に、温度センサー100のがたつきを防止する機能を有している。クリップ部21は、本体部16の下端部16bに形成されている。クリップ部21は、センサー部2の延出部13bが延出される位置である孔17に対して、隣接するように配置されている。温度センサー100を実装箇所に取り付ける場合、実装対象物の実装箇所にはセンサー部2の延出部13bを挿通させるための貫通孔が形成されている。クリップ部21は、センサー部2と共に実装対象物の貫通孔に挿通されて係止される。これによって、温度センサー100を実装対象物に固定することができる。
【0021】
次に、孔17、フック部18の構成について、より詳細に説明する。
【0022】
孔17は、上方から見て、センサー部2の支持部13aの外形と略同形状をなしている。本実施形態においては、孔17は、略矩形状をなしている。孔17は、本体部16の第一側端部16cと対向する第一内面17cと、第二側端部16dと対向する第二内面17dと、第三側端部16eと対向する第三内面17eと、第四側端部16fと対向する第四内面17fと、を有している。孔17は、側端部16c,16e,16fに対して一枚の壁部を隔てる位置に形成される。
【0023】
孔17の下端には、各内面17c,17d,17e,17fから内側へ向かって延びる係止部22が形成されている(特に、図4を参照)。孔17は、係止部22の中央位置に、上方から見てセンサー部2の延出部13b外形と略同形状をなす小径孔17gを有している。
【0024】
センサー部2を孔17で支持する際、センサー部2は、孔17の上端から挿入され、更に延出部13bが小径孔17gに挿入される。一定以上挿入すると、センサー部2の支持部13aの下端部が係止部22に係止される。取付状態においては、延出部13bは、孔17の下端から下方へ延出し、本体部16の下端部16bから露出する。支持部13aは、四方の側面が孔17の内面17c〜17fに支持されると共に、下面が係止部22に支持される。
【0025】
フック部18は、リード線対6を取り付ける際に、リード線対6の離間部6Cを引っ掛けると共に、当該リード線対6を方向付けした状態にてリード線取付部材7に固定することができる。フック部18は、第一フック部26と、第二フック部27と、を備えている。第一フック部26と第二フック部27とは、第二方向D2に互いに隣接して設けられている。第一フック部26は孔17側に配置され、第二フック部27はフック端18a側に配置される。なお、フック端18aとは、リード線対6の離間部6Cを引っ掛けるための構成部分における端部である。本実施形態では、フック端18aは、第二方向D2において、孔17とは反対側に配置されている。また、フック端18aの位置は、本体部16の第二側端部16dの位置と一致している。
【0026】
第一フック部26は、第二方向D2に延びる一対の第一溝部(溝部)31,32と、一対の第一溝部31,32同士の間で第二方向D2に延びる第一壁部33と、第一溝部31,32及び第一壁部33を下方で支持する第一底部34と、を備えている(特に、図5を参照)。
【0027】
第一溝部31,32は、本体部16の上端部16aに形成されており、孔17の第二内面17dの上端部分から、第二方向D2に沿ってフック端18a側へ延びている。第一溝部31,32は、互いに平行となるように真直ぐに延びている。従って、第一溝部31と第一溝部32との間に形成される第一壁部33は、孔17の第二内面17dから第二方向D2に沿ってフック端18a側へ真直ぐに延びる。第一底部34は、第一溝部31,32及び第一壁部33の下端側に配置されている。当該第一底部34の上側に第一溝部31,32及び第一壁部33が形成されるような構成となる。
【0028】
第一溝部31は、底面31aと、本体部16の第三側端部16eと対向する側面31bと、第一溝部32と隣り合う側面31cと、を有している。第一溝部32は、底面32aと、本体部16の第四側端部16fと対向する側面32bと、第一溝部31の側面31cと対向する側面32cと、を有している。第一溝部31の側面31cと第一溝部32の側面32cとは、第一壁部33の両側面によってそれぞれ構成されている。第一溝部31の底面31aと第一溝部32の底面32aとは、第一底部34の上面によって構成されている。
【0029】
第一溝部31には離間部6Cにおける第一リード線3が配置され、第一溝部32には離間部6Cにおける第二リード線4が配置される。第一壁部33の孔17側の端部33aに対応する位置には、リード線対6のすり割り端6aが配置される。また、第一フック部26と第二フック部27との境界部分付近の位置(第一壁部33と第二壁部37との境界部分付近の位置)には、リード線対6のすり割り端6bが配置される。
【0030】
このような構成により、第一フック部26において、第一リード線3と第二リード線4とは、第一壁部33によって互いに隔てられる。具体的には、離間部6Cにおいて、第一リード線3は第一溝部31に沿って第二方向D2へ延びると共に、第一溝部31で支持されて移動制限が行われる。また、第二リード線4は第一溝部32に沿って第二方向D2へ延びると共に、第一溝部32で支持されて移動制限が行われる。第一フック部26において、第一リード線3と第二リード線4とは、第一壁部33によって互いに隔てられる。また、リード線対6のすり割り端6aは第一壁部33の端部33aで支持され、リード線対6のすり割り端6bは第一壁部33の第二壁部37との境界部付近で支持されるため、リード線対6の第二方向D2における移動も制限される。
【0031】
なお、第一溝部31の溝幅は第一リード線3の外径と略同一とされ、第一溝部32の溝幅は第二リード線4の外径と略同一とされていることが好ましい。また、第一溝部31の溝深さは第一リード線3の外径以上とされ、第一溝部31の溝深さは第二リード線4の外径以上とされていることが好ましい。また、第一溝部31の底面31aは第一リード線3の形状に合わせて湾曲しており、第一溝部32の底面32aは第二リード線4の形状に合わせて湾曲していることが好ましい。このような構成によって、第一溝部31及び第一溝部32で第一リード線3及び第二リード線4を十分に支持することが可能となり、リード線対6の移動制限が一層確実になる。
【0032】
第二フック部27は、第二方向D2に延びる第二溝部36と、第二溝部36内において第一壁部33からフック端18aへ第二方向D2に延びる第二壁部37と、第二溝部36を下方で支持する第二底部(底部)38と、を備えている(特に、図6を参照)。
【0033】
第二溝部36は、本体部16の上端部16aに形成されており、第一溝部31,32のフック端18a側の端部から、フック端18aへ第二方向D2に延びている。第二溝部36はフック端18aまで延びているため、第二溝部36は、本体部16の第二側端部16dにおいて開口する。第二溝部36の溝幅は、第一フック部26の第一溝部31の幅と、第一壁部33の幅と、第一溝部32の幅と、を合計した大きさに等しい。第二溝部36の溝深さは、第一溝部31,32の溝深さよりも大きい。
【0034】
第二溝部36は、底面36aと、本体部16の第三側端部16eと対向する側面36bと、本体部16の第四側端部16fと対向する側面36cと、底面36aと側面36bとの間の角部に形成される傾斜面36dと、底面36aと側面36cとの間の角部に形成される傾斜面36eと、を有している。第二溝部36の側面36bは、第一溝部31の側面31bから連続するように広がっており、当該側面31bと同一平面を構成する。第二溝部36の側面36cは、第一溝部32の側面32bから連続するように広がっており、当該側面32bと同一平面を構成する。第二溝部36の底面36aは、第二底部38の上面によって構成されている。第二溝部36の底面36aは、第一溝部31,32の底面31a,32aよりも低い位置に形成される。
【0035】
第二底部38は、第二溝部36の下端側に配置されている。当該第二底部38の上側に第二溝部36が形成されるような構成となる。第二底部38は、第一底部34のフック端18a側の端部から、フック端18aへ第二方向D2に延びている。従って、第二底部38は、第一溝部31,32よりもフック端18a側に配置される構成となる。また、第二溝部36の溝深さは、第一溝部31,32の溝深さよりも大きいため、第二底部38と第一底部34との間には、第二底部38の上面の位置が低くなるように、段差部39が形成される。なお、第二底部38はフック端18aまで延びているため、第二底部38の端部は、本体部16の第二側端部16dを構成する。
【0036】
第二壁部37は、第二底部38の上方を通過するように、第一壁部33がフック端18a側へ向かってそのまま延びることによって形成されている。この第二壁部37の先端部37aの端面は、本体部16の第二側端部16dと一致しており、当該先端部37aの端面がフック端18aを構成している。第二壁部37は、第二底部38(すなわち第二溝部36の底面36a)から離間している。従って、第二壁部37は、第二底部38との間に空間SPを形成する。第二壁部37の下端部37bは、リード線対6の第二接合部6Bにおける第一リード線3と第二リード線4の間の接合部分6cに入り込んで押えることができるように、下方へ向かって尖る断面三角形状に構成されている。
【0037】
第二溝部36における、第二底部38と第二壁部37との間の空間SPには、第二接合部6Bにおける第一リード線3及び第二リード線4が配置される。第二溝部36における、第二壁部37よりも側面36b側の位置には、第一リード線3が配置され、第二壁部37よりも側面36c側の位置には、第二リード線4が配置される。また、第二壁部37の下端部37bは、第一リード線3と第二リード線4の間の接合部分6cに入り込んで、リード線対6を保持することができる。
【0038】
このような構成により、第二フック部27において、第一リード線3と第二リード線4とは、互いに接触して空間SPに配置される。具体的には、第二接合部6Bにおいて、第一リード線3及び第二リード線4は、接合部分6c付近を第二壁部37と第二底部38とに挟まれた状態にて、第二壁部37に沿って延びると共に、移動制限が行われる。リード線対6は、第二壁部37と第二底部38との間に挟まれているため、上下方向の移動が制限される。更に、接合部分6cに第二壁部37の下端部37bが入り込んでいるため、リード線対6の幅方向の移動も制限される。
【0039】
なお、第二溝部36と第二壁部37と第二底部38との位置関係は、リード線対6を配置したときに、第一リード線3に対して下端部37bと、底面36aと、傾斜面36dとが接触して支持し、第二リード線4に対して下端部37bと、底面36aと、傾斜面36eとが接触して支持する位置関係が好ましい。このような構成によって、第二フック部27で第一リード線3及び第二リード線4を十分に支持することが可能となり、リード線対6の移動制限が一層確実になる。
【0040】
なお、本体部16は、以上のような構成を有する孔17と、フック部18を有すると共に、第一底部34及び第二底部38の下側で延びる穴部51を有することによって、概略的な構成として、複数の壁部を組み合わせたような構成となる。このように、複数の壁部を組み合わせて、一部にフック部18を形成しただけの単純な構造にて、リード線対6の方向付けと、移動制限を行うことができる。具体的に、本体部16は、断面コ字状を形成するような側壁部52,53,54と、下壁部56と、フック部18が構成された上壁部57と、側壁部52,53,54との間で孔17を形成するように配置された壁部58と、を備えて構成される。側壁部52は、外面が第一側端部16cを構成し、内面が孔17の第一内面17cを構成する。側壁部53は、外面が第三側端部16eを構成し、内面が孔17の第三内面17eと、第一溝部31の側面31bと、第二溝部36の側面36bと、を構成する。側壁部54は、外面が第四側端部16fを構成し、内面が孔17の第四内面17fと、第一溝部32の側面32bと、第二溝部36の側面36cと、を構成する。壁部58は、孔17の第二内面17dを構成する。なお、本体部16の上端部16aは、側壁部52,53,54の上面、及びフック部18の第一壁部33及び第二壁部37の上面で構成される。本体部16の下端部16bは、下壁部56の下面、及び側壁部52,53,54の下面で構成される。本体部16の第二側端部16dは、側壁部53,54、下壁部56、上壁部57の端面によって構成されている。
【0041】
次に、リード線取付部材7にセンサー部2及びリード線対6を取り付ける際の手順について、図4を参照して説明する。まず、センサー部2にリード線対6を接続したものを準備する。このとき、リード線対6の所定の位置に、第一リード線3と第二リード線4とを離間させることによって、離間部6Cと、すり割り部6aと、すり割り部6bと、を形成しておく。
【0042】
リード線取付部材7の孔17にセンサー部2を途中まで挿入する。例えば、図4において仮想線で示すように、センサー部2の支持部13aの下端部が、係止部22に接触しない程度の位置に、センサー部2をセットする。このとき、リード線対6のすり割り部6bをフック部18に引っ掛けておく。具体的には、図4において仮想線で示すように、リード線対6のすり割り部6bが、空間SPのうち、第二壁部37の先端部37aと第二底部38との間の領域に配置される。このとき、第二壁部37は、第一リード線3と第二リード線4との間に入り込む状態となる。
【0043】
次に、センサー部2を孔17へ押し込んでリード線取付部材7に固定する。本実施形態では、支持部13aの下端部が係止部22と接触する位置まで押し込む。このとき、リード線対6もセンサー部2の移動に伴って孔17側へ移動する。リード線対6のすり割り部6bは、第二壁部37の下端部37bに沿って孔17側へ移動し、図4において実線に示す位置まで移動する。当該移動によって、リード線対6のすり割り部6aは第一壁部33の端部33aの位置に配置される。離間部6Cにおける第一リード線3は第一溝部31で支持され、第二リード線4は第一溝部32で支持される。第二接合部6Bにおける第一リード線3及び第二リード線4は、第二壁部37と第二底部38との間の空間SPに配置されると共に、接合部分6cが第二壁部37の下端部37bで押えられる。以上により、リード線対6もリード線取付部材7に固定される。
【0044】
次に、本実施形態に係るリード線取付構造1及びリード線取付部材7の作用・効果について説明する。
【0045】
本実施形態に係るリード線取付構造1及びリード線取付部材7によれば、リード線取付部材7が、第一方向D1に延びる孔17を有し、第一方向D1と交差する第二方向D2に延びるフック部18を有している。孔17にセンサー部2を固定した場合、当該センサー部2から延びる第一リード線3及び第二リード線4は、フック部18を用いることで、第一方向D1と交差する第二方向D2へ方向付けすることができる。
【0046】
ここで、フック部18は、孔17側に配置される第一フック部26と、フック端18a側に配置される第二フック部27を有している。また、第一フック部26は、第二方向D2に延びる一対の第一溝部31,32と、第一溝部31,32同士の間で延びる第一壁部33と、を備えている。このような第一フック部26では、第一リード線3と第二リード線4とは第一壁部33によって互いに隔てられるように配置されている。すなわち、第一リード線3及び第二リード線4は、それぞれの第一溝部31,32によってガイドされるように配置することが可能となる。従って、孔17に固定されたセンサー部2から上方へ延びた第一リード線3及び第二リード線4は、第一フック部26のそれぞれの第一溝部31,32にガイドされることによって、第二方向D2へ方向付けがなされる。更には、第一リード線3及び第二リード線4は、第一溝部31,32で支持されることで、方向付けがなされた状態にて移動の制限も行われる。
【0047】
また、第二フック部27は、第一溝部31,32よりフック端18a側に配置された第二底部38と、第一壁部33からフック端18aへ第二方向D2に延びると共に、第二底部38との間に空間SPを形成する第二壁部37と、を備えている。このような第二フック部27では、第一リード線3と第二リード線4とは、互いに接触した第二接合部6Bが空間SPに配置される。すなわち、第一リード線3及び第二リード線4は、第二壁部37と第二底部38との間の空間SPで挟まれるような配置となる。ここで、第二壁部37は、第一フック部26で第一リード線3と第二リード線4を隔てていた第一壁部33から延びるものであるため、少なくとも第一リード線3及び第二リード線4の接触部分である接合部分6c付近を支持することができる。これによって、第一リード線3及び第二リード線4の移動の制限が行われる。
【0048】
このように、溝部や壁部などの単純な構成によるフック部18のみでリード線対6の方向付けと移動制限が行えるため、部品点数を減らすことができると共に、省スペース化を図ることができる。更には、フック部18にリード線対6を引っ掛けるだけの容易な作業にて、リード線対6の方向付けと移動制限を行うことができる。以上によって、少ない部品点数、少ないスペース、及び容易な作業にて、リード線の方向付けと移動制限が可能となる。
【0049】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0050】
上述の実施形態では、孔17が延びる第一方向D1とフック部18が延びる第二方向D2は直交しており、これによって、リード線対6は、センサー部2から延びる方向に対して直交する方向に方向付けがなされていた。しかし、第二方向D2の方向は、第一方向と交差する方向であれば特に限定されない。
【0051】
また、フック部18の構成も上述の実施形態に限定されず、少なくとも第一フック部26が溝部と第一壁部を有し、第二フック部27が底部と第二壁部を有するものであれば、どのような構成でもよい。例えば、第二フック部27では、第二溝部36が形成されておらず、上面が平らな第二底部38のみの構成でもよい(すなわち、側面36b,36cを構成する側壁部53,54が、第二フック部27では省略されたような構成)。また、第一溝部31,32が深く形成され、段差部39が設けられていない構成であってもよい。すなわち、第一リード線3及び第二リード線4が第一フック部26及び第二フック部27において真直ぐに延びるようにしてもよい。この場合、第一壁部の上下方向の大きさは第二壁部よりも大きくなり、第一壁部の上側の部分から第二壁部が延びて、下側の部分にリード線対6のすり割り部6bが挟まれるような構成となる。
【0052】
また、上述の実施形態では、リード線取付構造1を温度センサー100に適用した場合を例に説明したが、リード線を備えるものであればどのようなものに対しても適用することができる。例えば、リード線付の他のセンサーや電子部品に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…リード線取付構造、3…第一リード線、4…第二リード線、7…リード線取付部材(取付部)、17…孔、18…フック部、18a…フック端、26…第一フック部、27…第二フック部、31,32…第一溝部(溝部)、33…第一壁部、37…第二壁部、38…第二底部(底部)、D1…第一方向、D2…第二方向、SP…空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並行して延びる第一リード線及び第二リード線と、前記第一リード線及び前記第二リード線の取り付けを行う取付部と、を備えるリード線取付構造であって、
前記取付部は、
第一方向に延びる孔と、
前記第一方向に交差する第二方向に延びるフック部と、を備え、
前記フック部は、
前記孔側に配置される第一フック部と、
フック端側に配置される第二フック部と、を備え、
前記第一フック部は、
前記第二方向に延びる一対の溝部と、
一対の前記溝部同士の間で前記第二方向に延びる第一壁部と、を備え、
前記第二フック部は、
前記溝部より前記フック端側に配置された底部と、
前記第一壁部から前記フック端へ前記第二方向に延びると共に、前記底部との間に空間を形成する第二壁部と、を備え、
前記第一フック部において、前記第一リード線と前記第二リード線とは、前記第一壁部によって互いに隔てられ、
前記第二フック部において、前記第一リード線と前記第二リード線とは、互いに接触して前記空間に配置されることを特徴とするリード線取付構造。
【請求項2】
互いに並行して延びる第一リード線及び第二リード線の取り付けを行うリード線取付部材であって、
第一方向に延びる孔と、
前記第一方向に交差する第二方向に延びるフック部と、を備え、
前記フック部は、
前記孔側に配置される第一フック部と、
フック端側に配置される第二フック部と、を備え、
前記第一フック部は、
前記第二方向に延びる一対の溝部と、
一対の前記溝部同士の間で前記第二方向に延びる第一壁部と、を備え、
前記第二フック部は、
前記溝部より前記フック端側に配置された底部と、
前記第一壁部から前記フック端へ前記第二方向に延びると共に、前記底部との間に空間を形成する第二壁部と、を備えることを特徴とするリード線取付部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−105473(P2012−105473A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252774(P2010−252774)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】