説明

ルビジウムランプの製造方法、ルビジウムランプ及びルビジウム原子発振器

【課題】所定のエージング期間から推定した周波数偏差が目標仕様に収まる製品数を増加
させることが可能となり、製品の歩留まりを向上したルビジウムランプを提供する。
【解決手段】洗浄した複数のランプ連結管10を連結管本体5に取り付ける。その際、ラ
ンプ連結管10には、不純物が付着している虞があるので、クリプトンガス等によりガス
洗浄を行なう。次に、ルビジウム金属を連結管本体5から供給して連結支管3とランプ本
体4に追い込んで付着させる。次に、発光の補助となる所定量のキャリアガス(クリプト
ンガス等)を供給し、連結支管3を連結管本体5から切り離す。そして、切り離した連結
管支管3からルビジウム金属をランプ本体4に追い込んでランプ本体4に付着させる。最
後に、連結管支管3からランプ本体4を切り離す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルビジウムランプの製造方法に関し、さらに詳しくは、周波数偏差の経時変
化を低減したルビジウムランプ構造と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、通信網や放送網等のディジタルネットワーク化が進み、これに伴い、伝送装置の
クロック信号や放送局の基準周波数の生成に使用されるクロック源等として、高精度・高
安定な発振器が必要不可欠なものとなっている。そのような発振器として、発振周波数の
精度・安定度が高いルビジウム原子発振器が多く用いられている。このルビジウム原子発
振器の周波数安定化の精度を上げるには、ルビジウムランプとガスセルで構成される共鳴
器の共鳴線幅(原子などが励起状態から基底状態に戻るときに放出される光のスペクトル
線の幅)を小さくする必要がある。そのため、ルビジウムランプとしては、ガスセルに照
射する光を均一にすることが望まれている。
即ち、光の経時による変化が少ないほど安定した発振周波数を維持することができる。
そこで従来から、ルビジウムランプの特性を安定化させるために、20日間のエージング
期間後のデータから、更に30日後の周波数偏差(エージング特性:長期周波数安定度)
を推定して、規格値を満足するか否かを判断していた。また、規格値を満足しない場合は
、更に20日間エージングをかけることも行なわれていた。そのため、規格値を満足する
か否かを判断するまでに長期間を要し、製品として出荷するまでに多くのエージング期間
を必要とするといった問題がある。
【0003】
図6、図7は、筒状タイプでチップ管(ルビジウム金属を貯留する部分)の内径が1m
mのルビジウムランプのエージング特性を示す図である。縦軸に周波数偏差、横軸にエー
ジング期間を表す。図6、7から明らかなとおり、特に図6では、エージング期間が10
日を過ぎるころから周波数偏差が大きく変動しているため、20日から30日後の周波数
偏差を予測するのは困難であるのが分かる。
特許文献1には、ランプの一部をレンズ状に加工することにより、ランプから出力され
る放射光をレンズにより集光して平行光に変換し、共鳴セルの共鳴線幅を小さくして、発
振周波数の精度を向上して小型化を図ったガスセル型原子発振器の励振発光ランプについ
て開示されている。
【特許文献1】特開平1−9674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のルビジウムランプが20日間のエージングを行なっても周波数偏
差が安定化しない原因が不明であった。そこで、本願発明者等は、ルビジウムランプのチ
ップオフ部(ルビジウム金属を貯留する部分)の内径に着目した。即ち、従来のルビジウ
ムランプのチップオフ部の内径は1mmであり、製造工程においてランプを洗浄した場合
、内径が細いために洗浄しても不純物が除去仕切れないのではないかと推測した。
また、特許文献1の従来技術は、ランプから放射状に出射する出射光をレンズにより平
行光に変換して、発振周波数の精度を向上するものであり、周波数偏差を改善することに
ついては言及していない。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑み、ルビジウムランプの製造工程において、ランプ原管から
ランプ本体を加工するときに、チップオフ部の内径を所定の太さ以上になるように加工す
ることにより、所定のエージング期間から推定した周波数偏差が規格値に収まる製品数を
増加させることが可能となり、製品の歩留まりを向上したルビジウムランプを提供するこ
とを目的とする。
また、他の目的は、エージング期間を従来の期間より短縮して、ルビジウムランプの製
造単価を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はかかる課題を解決するために、ルビジウムガスを充填するランプ本体及び該ラ
ンプ本体内で気化し切れないルビジウム金属を貯留するために前記ランプ本体適所から外
部に突出した金属溜まり部を備えたルビジウムランプの製造方法であって、連結管本体と
、該連結管本体の側面に分岐して連通連結された複数の連結支管と、前記各連結支管の先
端に連通連結された前記ランプ本体と、を備えたランプ連結管を用意する工程と、前記連
結管本体から前記ランプ連結管に対して洗浄用ガスを供給する洗浄ガス供給工程と、前記
連結管本体から負圧を供給することにより各ランプ本体及び各連結支管内を含む前記ラン
プ連結管内に存在する前記洗浄用ガスを抜気する抜気工程と、該抜気工程により内部を真
空化したランプ連結管内に所定量の前記ルビジウム金属を供給するルビジウム金属供給工
程と、該ルビジウム金属供給工程によりルビジウム金属が供給された前記ランプ連結管の
内壁に前記ルビジウム金属を付着させる付着工程と、発光の補助となる所定量のキャリア
ガスを少なくとも前記ランプ連結管内に供給するキャリアガス供給工程と、前記連結支管
を前記連結管本体から切り離す連結支管切り離し工程と、前記ルビジウム金属を前記ラン
プ本体の内壁に付着させ、前記ランプ本体を前記連結支管から切り離すランプ本体切り離
し工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明のルビジウムランプの製造方法は、洗浄した複数のランプ連結管を連結管本体に
取り付ける。その際、ランプ連結管には、不純物が付着している虞があるので、クリプト
ンガスやアルゴンガス等によりガス洗浄を行なう。次に、ルビジウム金属を連結管本体か
ら供給して連結支管とランプ本体に追い込んで付着させる。次に、発光の補助となる所定
量のキャリアガスを供給し、連結支管を連結管本体から切り離す。そして、切り離した連
結管支管からルビジウム金属をランプ本体に追い込んでランプ本体に付着させる。最後に
、連結管支管からランプ本体を切り離す。この製造工程により、ランプ本体内の洗浄を完
璧に行うことができ、エージング特性を改善することができる。
【0008】
また、前記各連結支管は、夫々熱膨張率の異なる複数の管片を繋ぎ合わせて構成されて
いることを特徴とする。
ランプ原管の膨張率と後述する連結管本体の膨張率が異なるため、直接ランプ原管を連
結管本体に繋ぎ合わせると、膨張率の違いにより、ランプ原管が破損する虞がある。そこ
で本発明では、徐々に膨張率がランプ原管の膨張率に近づくように、複数の膨張率が異な
る管片を繋ぎ合わせていくものである。これにより、連結支管と連結管本体を繋ぎ合わせ
るときに、ランプ本体の破損を防止して、歩留まりを上げることができる。
【0009】
また、前記各管片の熱膨張率は、前記ランプ本体に近い側の管片の熱膨張率が該ランプ
本体の熱膨張率に最も近い値となり、該ランプ本体から遠ざかるに連れて熱膨張率が前記
連結管本体の熱膨張率に最も近い値となることを特徴とする。
連結支管の一方の端部は連結管本体と繋ぎ合わされ、他端はランプ本体と繋ぎ合わされ
る。従って、最終工程で連結支管とランプ本体を切り離すときに、ランプ本体を破損しな
いために、ランプ本体に近づくほど、ランプ本体の膨張率に近い値に構成するものである
。これにより、最終工程で連結支管とランプ本体を切り離すときに、ランプ本体を破損す
る危険性を低減し、ランプ本体の歩留まりを高めることができる。
【0010】
また、前記付着工程と前記キャリアガス供給工程との間に、前記洗浄ガス供給工程と抜
気工程とを少なくとも1回行なうことを特徴とする。
ルビジウム金属を連結支管とランプ本体に付着させるとき、連結管本体からルビジウム
金属を供給するときに不純物が混入して、その不純物が連結支管とランプ本体を接続する
細い部分に付着する虞がある。そこで本発明では、それらの不純物を除去するために、ク
リプトンガスやアルゴンガス等によるガス洗浄を行い、その汚れた洗浄用ガスを抜気して
洗浄するものである。これにより、エージング特性を劣化させる要因を事前に除去するこ
とができる。
【0011】
また、前記付着工程は、前記連結管本体を加熱することにより、前記ルビジウム金属を
前記連結支管とランプ本体に追い込む工程であることを特徴とする。
ルビジウム金属の融点は38℃位である。また、ルビジウム金属は、温度の低い方に移
動する特性がある。また、連結管本体に供給したルビジウム金属は、連結管本体を含む場
所に拡散している。しかし、実際にルビジウム金属を必要とする場所はランプ本体であり
、連結管本体には必要としない。そこで本発明では、ルビジウム金属の特性を利用して、
連結管本体を加熱してルビジウム金属を温度の低い連結支管側に追い込むものである。こ
れにより、不要な位置にあるルビジウム金属を効率よく連結支管側に集めることができる

【0012】
また、上記したルビジウムランプの製造方法により製造し、前記各連結支管と連通連結
された前記ランプ本体との接続部を切り離したときのチップオフ部の内径が2mm以上に
なるように構成されていることを特徴とする。
ルビジウムランプのチップオフ部は、金属溜まり部といわれ、ランプ本体内で気化し切
れないルビジウム金属を貯留する部分である。このチップオフ部の内径は実験的に略2m
mあるとエージング特性が改善されることが分かっている。その理由として考えられるの
が、ランプの製造工程の過程で行なわれる洗浄工程において、内径(1mm)が細い従来
のランプでは、洗浄により不純物が洗浄し切れないためと考えられている。そこで本発明
では、従来の内径の約倍に太くすることにより、洗浄が確実に行われるようにしてエージ
ング特性を改善するものである。これにより、簡単な方法によりルビジウムランプのエー
ジング特性を改善することができる。従って、チップオフ部の内径を少なくとも2mm以
上にすれば、エージング特性の更なる改善が期待できる。
【0013】
また、前記チップオフ部は、内径が2±0.5mmになるように構成されていることを
特徴とする。
チップオフ部の内径を2mm以上に更に太くするとエージング特性は改善されるが、連
結支管からランプ本体を切り離すときに切り離しが困難となる。そこで本発明では、チッ
プオフ部の内径を2±0.5mmとするものである。これにより、製造の歩留まりを向上
すると共に、エージング特性を改善することができる。
【0014】
また、本発明は上記したルビジウムランプを備えたことを特徴とするルビジウム原子発
振器である。
本発明のルビジウムランプはエージング特性が改善されるので、このランプを使用する
ことにより、長期周波数特性を規格値内に維持することができるルビジウム原子発振器を
提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記
載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限
り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明のルビジウムランプの製造方法を説明するための工程図である。この製造
工程は、ルビジウムガスを充填するランプ本体及びランプ本体内で気化し切れないルビジ
ウム金属を貯留するためにランプ本体適所から外部に突出した金属溜まり部を備えたルビ
ジウムランプの製造方法である。以下に、各工程を説明する。
【0016】
工程1:ランプ本体4の原管となるランプ原管1を薬品又は純水で洗浄する。
工程2:そのランプ原管1を乾燥する。
工程3:ランプ原管1にチップ部1aを加工すると共に、膨張率が異なる複数の管2a〜
2dをランプ原管1に繋ぎ合わせる。この理由は、ランプ原管1の膨張率と後述する連結
管本体5の膨張率が異なるため、直接ランプ原管1を連結管本体5に繋ぎ合わせると、膨
張率の違いにより、ランプ原管1が破損する虞がある。そこで、徐々に膨張率がランプ原
管1の膨張率に近づくように、4〜5種類の膨張率が異なる管を繋ぎ合わせていくもので
ある。尚、繋ぎ合わせた状態では、ランプ原管1の部分をランプ本体4、複数の管2a〜
2dを繋ぎ合わせた部分を連結支管3と呼び、全体をランプ連結管10と呼ぶ。
工程4:加工したランプ連結管10の内部を水で洗浄する。
【0017】
工程5:洗浄したランプ連結管10を連結管本体5に取り付ける。これにより、連結管本
体5と、連結管本体5の側面に分岐して連通連結された複数の連結支管3と、各連結支管
3の先端に連通連結されたランプ本体4と、を備えたランプ連結体10を用意することが
できる。このとき、連結管本体5には、真空ポンプ7と、ルビジウム金属を供給するガス
元6aと、クリプトンガスやアルゴンガス等の洗浄用ガスを供給するガス元6bがコック
8、9a、9bを介して接続されている。
工程6:ガス元6bから連結管本体5にクリプトンガスやアルゴンガス等の洗浄用ガスを
供給する。これにより、連結管本体5及びランプ連結体10をガス洗浄することができる

工程7:洗浄により汚れた洗浄用ガスを真空ポンプ7により外部に抜気する。この工程6
と工程7を2回行なう。
工程8:次に、ガス元6aからルビジウム金属を連結管本体5に供給し、連結管本体5を
バーナ等で加熱しながらルビジウム金属を連結支管3とランプ本体4に追い込み付着させ
る。
工程9:ガス元6bから連結管本体5に洗浄用ガスを供給し、連結支管3とランプ本体4
をガス洗浄する。
【0018】
工程10:洗浄により汚れた洗浄用ガスを真空ポンプ7により外部に抜気する。
工程11:発光の補助となる所定量のキャリアガス(クリプトンガスやアルゴンガス等)
をランプ本体4及び連結支管3内に供給する。なお、本実施例においてはキャリアガスの
ガス元を洗浄用ガスのガス元9bで兼用しているが、それぞれのガス元を分けても構わな
い。
工程12:連結支管3を連結管本体5から切り離す。そのときランプ連結管10の端部は
ガラスが溶解して12のように端部が密封された状態となる。
工程13:切り離したランプ連結管10の連結支管3側を加熱して内部のルビジウム金属
をランプ本体4側に追い込み、ランプ本体4を連結支管3から切り離す。この状態で、チ
ップオフ部14が形成されたランプ本体が完成する。その後、ランプ本体4を加熱してル
ビジウム金属13をチップオフ部14に追い込む。
【0019】
以上の通り、本発明のルビジウムランプの製造方法を要約すると、洗浄した複数のラン
プ連結管10を連結管本体5に取り付ける。その際、ランプ連結管10には、不純物が付
着している虞があるので、クリプトンガスやアルゴンガス等の洗浄用ガスによりガス洗浄
を行なう。次に、ルビジウム金属を連結管本体5から供給して連結支管3とランプ本体4
に追い込んで付着させる。次に、発光の補助となる所定量のキャリアガス(クリプトンガ
スやアルゴンガス等)を供給し、連結支管3を連結管本体5から切り離す。そして、切り
離した連結管支管3からルビジウム金属をランプ本体4に追い込んでランプ本体4に付着
させる。最後に、連結管支管3からランプ本体4を切り離す。この製造工程により、ラン
プ本体4内の洗浄を完璧に行うことができ、エージング特性を改善することができる。
【0020】
また、工程8(付着工程)と工程11(キャリアガス供給工程)との間に、工程9(洗
浄ガス供給工程)と工程10(抜気工程)とを少なくとも1回行なうものである。即ち、
ルビジウム金属を連結支管3とランプ本体4に付着させるとき、連結管本体5からルビジ
ウム金属を供給するときに不純物が混入して、その不純物が連結支管3とランプ本体4を
接続する細い部分(チップ管25)に付着する虞がある。そこで本実施形態では、それら
の不純物を除去するために、クリプトンガスやアルゴンガス等の洗浄用ガスによるガス洗
浄を行い、その汚れた洗浄用ガスを抜気して洗浄するものである。これにより、エージン
グ特性を劣化させる要因を事前に除去することができる。
また、工程8(付着工程)は、連結管本体5を加熱することにより、ルビジウム金属を
連結支管3とランプ本体4に追い込む工程であるが、ルビジウム金属の融点は38℃位で
ある。また、ルビジウム金属は、温度の低い方に移動する特性がある。また、連結管本体
5に供給したルビジウム金属は、連結管本体5を含む場所に拡散している。しかし、実際
にルビジウム金属を必要とする場所はランプ本体4であり、連結管本体5には必要としな
い。そこで本工程では、ルビジウム金属の特性を利用して、連結管本体5を加熱してルビ
ジウム金属を温度の低い連結支管3側に追い込むものである。これにより、不要な位置に
あるルビジウム金属を効率よく連結支管3側に集めることができる。
【0021】
図2は図1の製造方法により製造されたルビジウムランプの外形図の一例を示す図であ
る。図2(a)は側面図、図2(b)は上面図、図2(c)はチップオフ部の拡大図であ
る。このルビジウムランプは、バルブ21と、バルブ21内に封入された封入ガス22と
、バルブ21のチップオフ部24に貯留されたルビジウム金属23と、を備えて構成され
ている。本発明のルビジウムランプの特徴は、図2(c)に示すように、チップオフ部2
4のチップ管25の内径を2±0.5mmとした点である。即ち、チップオフ部24のチ
ップ管25の内径を略2mmより更に太くするとエージング特性は改善されるが、連結支
管3からランプ本体4を切り離すときに切り離しが困難となる。そこで本実施形態では、
チップオフ部24のチップ管25の内径を2±0.5mmとするものである。これにより
、製造の歩留まりを向上すると共に、エージング特性を改善することができる。
【0022】
図3は図2で説明したルビジウムランプのチップ管の内径が1mmの場合のエージング
特性を示す図である。縦軸に周波数偏差、横軸にエージング期間(日)を表す。以下、同
様とする。
この図から明らかな通り、エージング期間が20日〜50日(30日間)のグラフの勾
配Aは10E−11であり、目標仕様の5E−11の倍であるのが分かる。また、エージ
ング期間が60日〜90日(30日間)のグラフの勾配Bは6E−11であり、まだ目標
仕様に達していないことが分かる。
【0023】
図4は図2で説明したルビジウムランプのチップ管の内径が2mmの場合のエージング
特性を示す図である。図4(a)〜(c)は同じロットで製造したルビジウムランプのエ
ージング特性である。図4(a)から明らかな通り、エージング期間が20日〜50日(
30日間)のグラフの勾配Cは4E−11であり、目標仕様の5E−11を満足している
。また、図4(b)から明らかな通り、エージング期間が20日〜50日(30日間)の
グラフの勾配Dは6E−11であり、目標仕様の5E−11には若干届かないが近い値を
示している。また、図4(c)から明らかな通り、エージング期間が20日〜50日(3
0日間)のグラフの勾配Eは同じく6E−11であり、目標仕様の5E−11には若干届
かないが近い値を示している。このように、図3のチップ内径1mmのルビジウムランプ
のエージング特性に対して、図4(b)、(c)では目標仕様に達しないまでも、非常に
近い値を示し、3つのランプ間の誤差は少ないといえる。また、図3のチップ内径1mm
のルビジウムランプは、周波数偏差が6E−11に達するまでのエージング期間は90日
を要するのに対して、本発明のチップ内径2mmのルビジウムランプは、50日で略達し
ているのが分かる。
【0024】
図5は本発明のルビジウムランプを備えたルビジウム原子発振器の概略構成を示すブロ
ック図である。このルビジウム原子発振器100は、本発明のルビジウムランプ(以下、
Rbランプと記す)35を点灯するランプ励振部31と、ルビジウムガスセル(以下、R
bガスセルと記す)36中のルビジウムガスを励起するRbランプ35と、ルビジウムガ
スを充填したRbガスセル36と、Rbガスセル36中のルビジウム原子の共鳴周波数に
より励振するマイクロ波共振器(以下、キャビティと記す)33と、キャビティ33にマ
イクロ波を放射する放射用アンテナ34と、Rbガスセル36を透過した光の強度を検出
するフォトセンサ37と、Amp39に現れる低周波振幅変調信号の位相を弁別する位相
弁別器40と、マイクロ波の位相を低周波により変調する低周波位相信号発生器41と、
電圧制御水晶発振器43の発振信号をマイクロ波に逓倍する周波数逓倍合成変調部42と
、位相弁別器40の電圧に基づいて所定の周波数を発振する電圧制御水晶発振器43と、
を備えて構成されている。尚、Rbランプ35、キャビティ33及びフォトセンサ37に
より構成されるユニットを光マイクロ波ユニット38と呼ぶ。また、周波数逓倍合成変調
部42の出力は放射用アンテナ44に接続されている。本発明のルビジウムランプはエー
ジング特性が改善されるので、このランプを使用することにより、長期周波数特性を規格
値内に維持することができるルビジウム原子発振器を提供することができる。尚、ルビジ
ウム原子発振器の動作については公知であるので、ここでは説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のルビジウムランプの製造方法を説明するための工程図である。
【図2】図1の製造方法により製造されたルビジウムランプの外形図の一例を示す図である。
【図3】図2で説明したルビジウムランプのチップ管の内径が1mmの場合のエージング特性を示す図である。
【図4】図2で説明したルビジウムランプのチップ管の内径が2mmの場合のエージング特性を示す図である。
【図5】本発明のルビジウムランプを備えたルビジウム原子発振器の概略構成を示すブロック図である。
【図6】筒状タイプでチップ管内径が1mmのルビジウムランプのエージング特性を示す図である。
【図7】筒状タイプでチップ管内径が1mmのルビジウムランプのエージング特性を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ランプ原管、2 膨張率の異なる管、3 連結支管、4 ランプ本体、5 連結管
本体、6 ガス元、7 真空ポンプ、8、9 コック、10 ランプ連結管、11 ルビ
ジウムガス、12 端部、13 ルビジウム金属、14 チップオフ部、31 ランプ励
振部、33 マイクロ波共振器、34 放射用アンテナ、35 Rbランプ、36 Rb
ガスセル、37 フォトセンサ、38 光マイクロ波ユニット、39 Amp、40 位
相弁別器、41 低周波位相変調信号発生器、42 周波数逓倍合成変調部、43 電圧
制御水晶発振器、100 ルビジウム原子発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルビジウムガスを充填するランプ本体及び該ランプ本体内で気化し切れないルビジウム
金属を貯留するために前記ランプ本体適所から外部に突出した金属溜まり部を備えたルビ
ジウムランプの製造方法であって、
連結管本体と、該連結管本体の側面に分岐して連通連結された複数の連結支管と、前記
各連結支管の先端に連通連結された前記ランプ本体と、を備えたランプ連結管を用意する
工程と、
前記連結管本体から前記ランプ連結管に対して洗浄用ガスを供給する洗浄ガス供給工程
と、
前記連結管本体から負圧を供給することにより各ランプ本体及び各連結支管内を含む前
記ランプ連結管内に存在する前記洗浄用ガスを抜気する抜気工程と、
該抜気工程により内部を真空化したランプ連結管内に所定量の前記ルビジウム金属を供
給するルビジウム金属供給工程と、
該ルビジウム金属供給工程によりルビジウム金属が供給された前記ランプ連結管の内壁
に前記ルビジウム金属を付着させる付着工程と、
発光の補助となる所定量のキャリアガスを少なくとも前記ランプ連結管内に供給するキ
ャリアガス供給工程と、
前記連結支管を前記連結管本体から切り離す連結支管切り離し工程と、
前記ルビジウム金属を前記ランプ本体の内壁に付着させ、前記ランプ本体を前記連結支
管から切り離すランプ本体切り離し工程と、
を備えたことを特徴とするルビジウムランプの製造方法。
【請求項2】
前記各連結支管は、夫々熱膨張率の異なる複数の管片を繋ぎ合わせて構成されているこ
とを特徴とする請求項1に記載のルビジウムランプの製造方法。
【請求項3】
前記各管片の熱膨張率は、前記ランプ本体に近い側の管片の熱膨張率が該ランプ本体の
熱膨張率に最も近い値となり、該ランプ本体から遠ざかるに連れて熱膨張率が前記連結管
本体の熱膨張率に最も近い値となることを特徴とする請求項2に記載のルビジウムランプ
の製造方法。
【請求項4】
前記付着工程と前記キャリアガス供給工程との間に、前記洗浄ガス供給工程と抜気工程
とを少なくとも1回行なうことを特徴とする請求項1に記載のルビジウムランプの製造方
法。
【請求項5】
前記付着工程は、前記連結管本体を加熱することにより、前記ルビジウム金属を前記連
結支管とランプ本体に追い込む工程であることを特徴とする請求項1に記載のルビジウム
ランプの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のルビジウムランプの製造方法により製造し、前記
各連結支管と連通連結された前記ランプ本体との接続部を切り離したときのチップオフ部
の内径が2mm以上になるように構成されていることを特徴とするルビジウムランプ。
【請求項7】
前記チップオフ部は、内径が2±0.5mmになるように構成されていることを特徴と
する請求項6に記載のルビジウムランプ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のルビジウムランプを備えたことを特徴とするルビジウム原子発
振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−258342(P2008−258342A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97999(P2007−97999)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】