ループ型ヒートパイプ
【課題】蒸発器に液相の作動流体を安定的に供給できるループ型ヒートパイプを提供する。
【解決手段】蒸発器16が第1ウィック30と第1ウィック30上に接触するように配置された第2ウィック31と有し、第2ウィック31の一部が、蒸発器16に接続された第1液管19内に突出している。これにより、第1ウィック30へ液相の作動流体が安定して供給され、蒸発器16のドライアウトの発生が回避される。
【解決手段】蒸発器16が第1ウィック30と第1ウィック30上に接触するように配置された第2ウィック31と有し、第2ウィック31の一部が、蒸発器16に接続された第1液管19内に突出している。これにより、第1ウィック30へ液相の作動流体が安定して供給され、蒸発器16のドライアウトの発生が回避される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループ型ヒートパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートパイプは作動流体の相変化を利用して発熱体(例えばCPUやその他の電子部品)で発生した熱を移動させる装置であり、その一例としてループ型ヒートパイプが知られている。
【0003】
ループ型ヒートパイプは、蒸発器と、凝縮器と、蒸発器の出口と凝縮器の入り口とを連結する蒸気管と、凝縮器の出口と蒸発器の入り口とを連結する液管とを備え、内部に水又はフロン等の作動流体が封入されている。
【0004】
作動流体は、蒸発器で発熱体からの熱を吸収して液相から気相に変化する。蒸発器で気相となった作動流体は、蒸気管を通って凝縮器に移動し、凝縮器で放熱して気相から液相に変化する。そして、凝縮器で液相になった作動流体は、液管を通って蒸発器に戻る。
【0005】
このように、作動流体が気相と液相とに変化しながらパイプ内を循環することにより、蒸発部から凝縮部に熱が移動する。このとき、蒸発部における相変化に発熱体の熱が使われるので、蒸発部の近傍に配置された発熱体が冷却される。
【0006】
ところで、蒸発器内には、一端が開口した円筒形状の多孔質体で形成されたウィックが設けられている。液管から蒸発器に送り込まれた液相の作動流体は、まずウィックの開口側から流入してウィックの中心部の空間を満たし、毛細管現象によってウィック内に浸透する。そして、ウィックの外周側で発熱体からの熱により気相が発生する。
【0007】
作動流体が液相から気相に変化するときには体積が膨張するため、ウィックの外側では圧力が高くなる。このとき、ウィック内は液相の作動流体で満たされ、ウィックの内周側から外周側に向かって毛細管力が働くため、気相となった作動流体はウィック内を通ることができず、蒸気管を通って凝縮器に向かう。そして、この蒸気管を通る気体の圧力により凝縮器で液相になった作動流体が押し出されて、液管を通り蒸発器に向かう。このようにして、ヒートパイプ内の作動流体は、前述したように蒸発器、蒸発管、凝縮器、液管の順に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4765396
【特許文献2】特開2000−146471号公報
【特許文献3】特開2009−139083号公報
【特許文献4】特開2002−22379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
蒸発器に液相の作動流体を安定的に供給できるループ型ヒートパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の技術の一観点によれば、蒸発器と、凝縮器と、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入り口を連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に送る液管とを有し、前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置された第2ウィックとを有し、前記第2ウィックの一部が、前記液管内に突出しているループ型ヒートパイプが提供される。
【発明の効果】
【0011】
前記一観点のループ型ヒートパイプは、蒸発器のドライアウトの発生を回避でき、蒸発器に液相の作動流体を安定的に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、ループ型ヒートパイプの蒸発器の一例を表した図である。
【図2】図2は、ループ型ヒートパイプの蒸発器の他の例を表した図である。
【図3】図3は、第1の実施形態のループ型ヒートパイプの模式図である。
【図4】図4(a)は第1の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の断面図、図4(b)は図4(a)のA−A線の位置における断面図である。
【図5】図5は、第2の実施形態のループ型ヒートパイプの模式図である。
【図6】図6(a)は第2の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の一例を示す断面図であり、図6(b)は図6(a)のA−A線の位置における断面図である。
【図7】図7(a)は第3の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の一例を示す断面図であり、図7(b)は図7(a)のA−A線の位置における断面図である。
【図8】図8(a)は第4の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の一例を示す断面図であり、図8(b)は図8(a)のA−A線の位置における断面図である。
【図9】図9は、第4の実施形態のループ型ヒートパイプの蒸発器の上面図である。
【図10】図10は、実施例1の蒸発器の作製方法を説明する図(その1)である。
【図11】図11は、実施例1の蒸発器の作製方法を説明する図(その2)である。
【図12】図12は、実施例1の蒸発器の作製方法を説明する図(その3)である。
【図13】図13は、実施例1の蒸発器の作製方法を説明する図(その4)である。
【図14】図14は、実施例1の蒸発器の作製方法を説明する図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0014】
図1はループ型ヒートパイプの蒸発器の一例を表した図である。図1(a)は蒸発器の軸方向に平行な断面を示しており、図1(b)は図1(a)のA−A線の位置における断面図を示している。
【0015】
蒸発器1は、円筒状の蒸発器容器4と、蒸発器容器4内に配置されたウィック5とを有している。蒸発器容器4の内周面には、中心軸に平行な方向に延びる複数のグルーブ(溝)6が設けられている。また、ウィック5は多孔質体により形成されており、一端側が開口し、他端側が閉塞した円筒状の形状を有している。
【0016】
蒸発器容器4の中心軸方向の一方の端部は液管2に接続されており、この液管2からウィック5の開口端側に液相の作動流体が流入する。また、蒸発器容器4の他端側は蒸気管3に接続されており、蒸発器1内で発生した気相の作動流体は、この蒸気管3を通って凝縮器(図示せず)に移動する。
【0017】
液管2から蒸発器1に流入した液相の作動流体は、ウィック5の中心部の空間7を満たし、次いで毛細管現象によりウィック5の内壁の微細な孔から外周側へと浸透する。
【0018】
一方、発熱体(図示せず)で発生した熱は蒸発器容器4に伝達され、この熱によりウィック5の外周側が熱せられて、作動流体は気相に変化する。そして、この気相の作動流体は、グルーブ6を通って蒸気管3に導かれる。
【0019】
ところで、発熱体の発熱量が大きい場合には、ウィック5の内部にまで熱が伝わってしまい、液相の作動流体がウィック5の外周側に浸透する前に内周側で気相に変化してしまうことがある。このとき、ウィック中心部の空間7内の圧力が上昇し、中心部の空間7内に液相の作動流体が流入しなくなる。その結果、ウィック5の外周部に液相の作動流体が浸透しなくなり、ウィック5の外周部が発熱体からの熱によって乾いてしまう。このような現象はドライアウトと呼ばれている。ドライアウトが発生すると、発熱体を冷却することができなくなる。
【0020】
図2は、ループ型ヒートパイプの蒸発器の他の例を表した図である。図2(a)は蒸発器の軸方向に平行な断面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A線の位置における断面図である。なお、図2中、図1と同一物には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0021】
蒸発器8の円筒状の蒸発器容器4内には、多孔質体により形成された第1ウィック5aと、第1ウィック5aよりも気孔径が大きい多孔質体により形成された第2ウィック5bとが配置されている。第1ウィック5aは、一端側が開口し、他端側が閉塞した円筒状の形状を有する。また、第2ウィック5bは、第1ウィック5aの内側に配置され、第1ウィック5aと同様に、一端側が開口し、他端側が閉塞した円筒状の形状を有する。
【0022】
上述したように、第2ウィック5bは、気孔径が第1ウィック5aよりも大きく設定されているので、液体に対する浸透性が優れている。従って、中心部の空間7を満たした液相の作動流体は、第2ウィック5bに吸収されて半径方向及び周方向に浸透し、第2ウィック5bから第1ウィック5aに供給される。
【0023】
このような二層構造のウィックを有する蒸発器を有するループ型ヒートパイプにおいては、内側の第2ウィック5b内に多くの作動液が保持されるため、一層構造のウィックを有する蒸発器に比べて液相の作動流体を安定して第1ウィック5aに供給できる。
【0024】
しかし、二層構造のウィックを有する蒸発器は、ウィック中心部の空間7が一層構造のウィックを有する蒸発管に比べて小さくなるため、外部から過剰な熱が伝達され、第2ウィック5bの内側で気相が発生した場合に、ウィック中心部の空間7が気相によって閉塞されやすく、中心部の空間7の圧力が上昇して、第1ウィックへの液相の供給が滞り、やがてドライアウトが発生する。
【0025】
(第1の実施形態)
図3は第1の実施形態のループ型ヒートパイプの模式図である。また、図4(a)は第1の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の断面図であり、図4(b)は図4(a)のA−A線の位置における断面図である。
【0026】
図3のように、本実施形態に係るループ型ヒートパイプ15は、蒸発器16、凝縮器18、蒸気管17、及び第1液管19を有し、その内部には水又はフロン等の作動流体が封入されている。
【0027】
作動流体は、蒸発器16において発熱体(図示せず)からの熱を吸収して液相から気相に変化し、熱を伴ったまま蒸気管17を通って凝縮器18に移動し、凝縮器18において放熱して気相から液相に変化し、第1液管19を通って蒸発器16に戻る。
【0028】
蒸発器16は、図4のように、蒸発器容器21と、蒸発器容器21内に配置された平板型の第1ウィック30と、第1ウィック30の上に配置された第2ウィック31とを有する。
【0029】
蒸発器容器21は、上側の蓋部材23と、下側の底部材22とを有する。これらの蓋部材23と底部材22とにより、第1ウィック30及び第2ウィック31が配置される空間と、第1ウィック30の下面側で発生した蒸気(気相の作動流体)が通る空間とが形成される。
【0030】
蓋部材23の上面側には、第1液管19及び蒸気管17が接続されている。蒸発器容器21の内部は、例えば容器上面から深さ方向に延びる仕切り27により、ウィック30,31が配置される部位と、ウィック30の下側で発生した蒸気(気相の作動流体)を蒸気管17に導く蒸気流路28となる部位とに仕切られている。
【0031】
底部材22の内側底面には、蒸気が通るグルーブ24が設けられている。底部材22の材料としては、発熱体からの熱を伝えやすい銅等の熱伝導率が高い金属を用いることが好ましい。
【0032】
蓋部材23には、第2ウィック31が配置された空間と第1液管19とを連絡する第1液管用穴25と、蒸発器容器21内の蒸気流路と蒸気管17とを連絡する蒸気管用穴26とが設けられている。蓋部材23の材料としては、発熱体から液相への伝熱を抑制する観点から、ステンレス鋼等の熱伝導率の低い金属を用いることが好ましい。
【0033】
底部材22と蓋部材23とは、作動流体が漏れないように、はんだ付け、ロー付け又はねじ止め等により接合されている。
【0034】
第1ウィック30は、その下面が底部材22のグルーブ24形成面に接触し、且つ側面が底部材22の側面及び仕切り27に接している。また、第2ウィック31は、第1ウィック30の上面に接触して配置されており、その一部は第1液管19の内部に突出している。第1ウィック30及び第2ウィック31はいずれも多孔質体により形成されている。本実施形態では、第2ウィック31は、第1ウィック30よりも平均気孔径が大きい多孔質体により形成されている。
【0035】
ここで、第1液管19は、蒸発器16に液相の作動流体を供給する管であり、本実施形態では凝縮器18と蒸発器16を連結する液管の一部を第1液管19としている。但し、後述する第2の実施形態で説明するように、液管の途中にリザーバタンクを配置する場合は、リザーバタンクと蒸発器16との間の液管が第1液管19となる。
【0036】
このような蒸発器16を有するループ型ヒートパイプ15は以下のように動作する。ここでは、蒸発器16の下側(底部材22の下面)に図示しない発熱体(CPU又はその他の電子部品等)が熱的に接続されているものとする。
【0037】
液相の作動流体が第1液管19から蒸発器16に流入する際には、まず第2ウィック31の突出部31aに浸入し、次いで毛細管現象により第2ウィック31内を厚さ方向及び横方向に移動する。そして、作動流体は、第2ウィックの31下面から第1ウィック30の上面に移動し、更に第1ウィック30内を厚さ方向(図4では下方向)に移動する。
【0038】
このとき蒸発器16の底面側には、発熱体から熱が伝達されている。この熱は、底部材22から第1ウィック30に伝達される。そして、第1ウィック30内に浸透した液相の作動流体が下側から熱せられて蒸発し、気相の作動流体が発生する。
【0039】
その後、発生した気相の作動流体は、グルーブ24から排出されて蒸気流路28を通り蒸気管17に導かれる。
【0040】
なお、第2ウィック31の突出部31aは、第1液管19の内壁に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。また、突出部31aを濡れやすくする観点からは、表面に凹凸形状を設けて表面積を大きくすることが好ましい。
【0041】
効率的に外部の熱を吸収する観点からは、第1ウィック30の下面の広い範囲で作動流体が相変化することが好ましい。そのために作動流体は、第2ウィック31の面方向にできるだけ広く濡れ広がった上で、第1ウィック30に移動すればよい。よって、このような観点から、それぞれのウィック30,31を形成する多孔質体の平均気孔径、空隙率、熱伝導率及び材料を選択することが好ましい。
【0042】
本実施形態では、前述したように、第2ウィック31を形成する多孔質体の平均気孔径が、第1ウィック30のものよりも大きい。第2ウィック31の平均気孔径が大きいと浸透力が高まり、作動流体(液相)がより面方向に浸透しやすくなる。その結果、作動流体が第1ウィック30の上面全体から浸入できるので、第1ウィック30全体に作動流体を濡れ広げることができる。また、第1ウィック30の平均気孔径を小さくすることにより、毛細管力が大きくなり、より速く作動流体を下側に移動させることができる。
【0043】
また、第2ウィック31の平均気孔径が大きいと、第2ウィック31内で作動流体を多く保持できるので、作動流体が蒸発しにくく、蒸発器上部で圧力が上昇しにくくなる。特に、第2ウィック31の突出部31aで蒸発が起こりにくくなることにより、第1液管19内部の圧力上昇を抑制できる。
【0044】
更に、第2ウィック31での蒸発抑制により蒸発器16の上部で圧力が上がらない一方、蒸発器16の下部では第1ウィック30の下部で起こる蒸発により圧力が上昇する。従って、蒸発器16内の上部と下部との圧力差により、作動流体が上部から下部へと移動しやすくなり、正常な循環が促進される。
【0045】
本実施形態では、第1ウィック30の平均気孔径を数μm(例えば2μm〜3μm)とし、第2ウィック31の平均気孔径を10μm〜数10μm(例えば、10μm〜20μm)としている。
【0046】
また、第2ウィック31の熱伝導率は、第1ウィック30のものよりも小さいことが好ましい。第2ウィック31の熱伝導率が小さいと、第1ウィック30から伝わる熱が第2ウィック31の上部に伝わりにくくなるので、第2ウィック31の上部での蒸気発生を抑制できる。特に、第2ウィック31の突出部31aで蒸気が発生しにくいことにより、第1液管19内部の圧力上昇を抑制することができる。
【0047】
更に、第2ウィック31での蒸気発生の抑制により蒸発器16内の上下で圧力差が生じ、作動流体の正常な循環が促進される。
【0048】
第1ウィック30の材料として、例えばニッケル等の焼結金属やアルミナ等の多孔質セラミックスを用いることができる。また、第2ウィック31の材料として、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリエチレン等の焼結樹脂を用いることができる。
【0049】
また、第1ウィック30及び第2ウィック31の相互に接触する面には、互いに嵌め合わせることができる凹凸形状が形成されていることが好ましい。第1ウィック30の上面及び第2ウィック31の下面に凹凸形状が形成されていることにより、第1ウィック30と第2ウィック31の接触面積が増加し、第2ウィック31内を浸透した液相の作動流体を第1ウィック30の全面に効率的に濡れ広げることができる。この凹凸形状は、切削加工や金型成型により形成することができる。
【0050】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係るループ型ヒートパイプを示す模式図である。また、図6(a)は第2の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の一例を示す断面図であり、図6(b)は図6(a)のA−A線の位置における断面図である。
【0051】
なお、図5及び図6においては、図3及び図4で示した要素と同一の要素については同一の符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0052】
本実施形態のループ型ヒートパイプ35では、蒸発器32の近傍にリザーバタンク33が設けられている。また、凝縮器18とリザーバタンク33とが第2液管36で連結されており、リザーバタンク33と蒸発器32とが第1液管34で連結されている。更に、本実施形態では、第2ウィック41の一部が、第1液管34内に突出している。それ以外の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。
【0053】
リザーバタンク33は、凝縮器18から送られた液相の作動流体を一時的に貯留する構造を有し、ループ型ヒートパイプ35の起動時に、作動流体を蒸発器32に供給するものである。これにより、蒸発器32に液相の作動流体をより確実に供給することができる。
【0054】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、第2ウィック41の一部が第1液管34内に突出している。これにより、リザーバタンク33が設けられていることと相まって、ループ型ヒートパイプ35の起動時にドライアウトをより確実に防止することができる。
【0055】
(第3の実施形態)
図7(a)は第3の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の一例を示す断面図であり、図7(b)は図7(a)のA−A線の位置における断面図である。
【0056】
本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、複数の第1液管44が蒸発器42に接続されており、且つ第2ウィック51の一部が複数の第1液管44のうちの少なくとも1つの第1液管44内に突出している。それ以外の構成は、基本的に第1の実施形態と同様であるので、図7において図4と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0057】
本実施形態の蒸発器42では、複数の第1液管44から液相の作動流体が供給されるので、蒸発器42に侵入した作動流体が、第2ウィック51上面の広い範囲に供給される。よって、作動流体を第2ウィック51の面方向により早く濡れ広げることができる。従って第2ウィック51全体が濡れやすくなり、外部から高温の熱が供給された際に、第2ウィック51上部で蒸気が発生しにくい。
【0058】
また、例えば第2ウィック51内で蒸気が発生して蒸発器42上部の圧力が上昇したとしても、第2ウィック51の一部が第1液管44内に突出しているので、第2ウィック51が作動流体に濡れやすい。これにより、第1の実施形態と同様に蒸発器42内に作動流体を供給することができ、ドライアウトの発生を回避することができる。
【0059】
更に、本実施形態では、複数の第1液管44から第2ウィック51に液相の作動流体が供給されるので、第2ウィック51全体が面方向に広く濡れやすくなり、ドライアウトの発生をより確実に回避することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、蒸発器容器46の蓋部材53は、その上面に複数の第1液管用穴55を備えている。その個数は特に限定されないが、作動流体を第2ウィック51上面に広く濡れ広げる観点からは、できるだけ多いほうが好ましい。
【0061】
第1液管用穴55の配置は特に限定されないが、第1液管44から供給される液相の作動流体が第2ウィック51上面に広く濡れ広がるように配置されていることが好ましい。
【0062】
接続される第1液管44の形態は特に限定されないが、元が1つの管が途中で分岐している形態でもよいし、元から複数の管であってもよい。
【0063】
第2ウィック51の突出部51aは、少なくとも1つの第1液管44内に突出していればよいが、複数の第1液管44内のそれぞれに突出していてもよい。
【0064】
図7に示す蒸発器42では、蒸発器42を上面から蒸気管17が下になるように見た場合に、6本の第1液管44が横2列縦3行の配置に接合されている。なお、この6本の第1液管44は、元が2本の第1液管44がそれぞれ3つに分岐したものである。
【0065】
(第4の実施形態)
図8(a)は第4の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の一例を示す断面図であり、図8(b)は図8(a)のA−A線の位置における断面図である。また、図9は、同じくその蒸発器の上面図である。なお、図8及び図9において、図6及び図7で示した要素と同一の要素については同一の符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0066】
本実施形態が第2の実施形態と異なる点は、複数の第1液管64が蒸発器82に接続されており、且つ第2ウィック61が複数の第1液管64の少なくとも1つに形成されていることであり、それ以外は第1の実施形態と同様である。
【0067】
本実施形態では、リザーバタンク33と連結した複数の第1液管64から蒸発器62に液相の作動流体が供給されるので、第3の実施形態と同様に、作動流体を第2ウィック61の面方向により早く濡れ広げることができる。よって、第2ウィック51全体が濡れやすくなるので、外部から高温の熱が供給された際に第2ウィック51上部で蒸気が発生しにくい。
【0068】
また、第2ウィック61が、複数の第1液管64の少なくとも1つの第1液管64内に突出しているので、第2ウィック61が作動流体に濡れやすく、リザーバタンク33から第2ウィック61に確実に作動流体を供給することができる。これにより、ドライアウトの発生を回避することができる。
【0069】
蒸発器62としては、第3の実施形態で用いたものを使用できる。従って、第1液管用穴55の配置及び個数についても、第3の実施形態と同様である。
【0070】
また、接続される第1液管44の形態についても、第3の実施形態と同様に特に限定されない。
【0071】
図8に示す蒸発器62では、蒸発器62を上面から蒸気管17が下になるように見た場合に、図9に示すように6本の第1液管64が横2列縦3行の配置に接合されている。この6本の第1液管64は、リザーバタンク33の側面に接続されて水平方向に伸びた2本の第1液管64が途中で3本ずつに分岐し、それぞれが下方向に曲げられて蒸発器62上面に接続されている。
【0072】
(実施例1)
実施例1として、以下のように第4の実施形態で説明した蒸発器を作製した。
【0073】
図10〜図14は、実施例1の蒸発器の作製方法を説明するための平面図及び断面図である。なお、図10〜図12において、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A線の位置における断面図である。また、図14(a)は図13の上面図のA−A線の位置における断面図、図14(b)は図13の上面図のB−B線の位置における断面図である。図10〜図14において、図8及び図9で示した要素と同一の要素については同一の符号を付している。
【0074】
まず、図10(a),(b)のように、平面形状がほぼ正方形の開口部を有する箱型で銅製の底部材22を用意した。底部材22は、側面の上端から連続して形成されて開口部を囲む枠状の接合部73を有する。接合部の上面には開口部を取り囲むようにOリング74が埋め込まれており、Oリング74の外側には蓋部材と連結するための複数のねじ穴75が設けられている。また、底部材22の底面の蒸気流路を除く面には、凹部24aの幅が1mm、深さが1mmのグルーブ24が形成されている。
【0075】
その後、図11(a),(b)のように、平板型の第1ウィック30を底部材22のグルーブ24の上に設置した。第1ウィック30は、例えば平均気孔径3μm、空隙率50%のニッケル製焼結金属で形成されている。第1ウィック30は、例えばグルーブ24の延伸方向に平行な辺の長さが35mm、垂直な辺の長さが35mm、厚さが3mmである。
【0076】
その後、図12(a),(b)のように、第2ウィック61を第1ウィック30の上に設置した。第2ウィック61は、例えば平均気孔径10μm、空隙率40%のPTFE多孔質体で形成されている。第2ウィック61は、上面の第1液管64が配置される位置に6個の突出部61aが形成された平板型をしている。第2ウィック61の平板部分は、グルーブ24の延伸方向に平行な辺の長さが30mm、垂直な辺の長さが30mm、厚さが2mmである。また、第2ウィック61の突出部61aは、例えば直径4mm、高さ6mmの円柱型である。
【0077】
続いて、図13及び図14のように、第2ウィック61が嵌合するように開口した箱型の蓋部材53を用意した。
【0078】
蓋部材53の上面には、底部材22のねじ穴75に対応したねじ穴76が、開口部を囲むように側面を貫通して形成されている。また、蓋部材63には、蒸発器容器21の内部に蒸気流路を確保するための仕切り27が設けられており、仕切り27には第1ウィック30を下方向に押さえつけるための切り欠きが設けられている。また、蓋部材53には、上面に設けられた蒸気管用穴26にステンレス鋼で形成された蒸気管17が溶接されている。
【0079】
更に、蓋部材53の上面には6個の第1液管用穴55が設けられ、それぞれの第1液用穴55にステンレス鋼で形成された第1液管64(内径:5mm)6本が溶接されている。この6本の供給管64は、元は2本の第1液管が3本に分岐したもので、この元の2本の第1液管64にはステンレス鋼で形成されたリザーバタンク33が溶接されている。
【0080】
最後に、図13及び図14のように、第2ウィック61の6個の突出部61aがそれぞれ6本の第1液管64内に挿入され、且つ蓋部材53の開口部に第2ウィック61が嵌合するように蓋部材53を底部材22に被せ、ねじ止めにより蓋部材53と底部材22を接合して、実施例1の蒸発器62を作製した。
【0081】
(実施例2)
実施例2として、アルミナ粉末を用いて平均気孔径2μm、空隙率60%の第1ウィック30を形成し、ポリエチレンを用いて平均気孔径20μm、空隙率50%の第2ウィック61を形成し、且つ第1ウィック30と第2ウィック61の接触する両面に互いに嵌め合わせることのできる凹凸形状を形成した以外は実施例1と同様にして、蒸発器62を作製した。
【0082】
以上の諸実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0083】
(付記1)蒸発器と、凝縮器と、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入り口を連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に送る液管とを有し、前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置された第2ウィックとを有し、前記第2ウィックの一部が、前記液管内に突出していることを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【0084】
(付記2)前記蒸発器に前記液管が複数本接続されており、該複数本の液管のうちの少なくとも1つの液管内に前記第2ウィックの一部が突出していることを特徴とする付記1に記載のループ型ヒートパイプ。
【0085】
(付記3)蒸発器と、凝縮器と、リザーバタンクと、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記リザーバタンクの入り口を連結して前記液相の作動流体を前記リザーバタンクに送る液管と、前記リザーバタンクと前記蒸発器とを連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に供給する供給管とを有し、
前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置された第2ウィックを有し、
前記第2ウィックの一部が、前記供給管内に突出していることを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【0086】
(付記4)前記蒸発器に前記供給管が複数本接続されており、該複数本の供給管のうちの少なくとも1つの供給管内に前記第2ウィックの一部が突出していることを特徴とする付記3に記載のループ型ヒートパイプ。
【0087】
(付記5)前記第1ウィックの前記第2ウィック側の面に第1凹凸を有し、且つ、前記第2ウィックの前記第1ウィック側の面に、前記第1凹凸に嵌合する第2凹凸を有することを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載のループ型ヒートパイプ。
【0088】
(付記6)前記第2ウィックの熱伝導率が、前記第1ウィックの熱伝導率よりも小さいことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【0089】
(付記7)前記第2ウィックの平均気孔径が、前記第1ウィックの平均気孔径よりも大きいことを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【0090】
(付記8)電子部品と、
ループ型ヒートパイプとを有し、
前記ループ型ヒートパイプは、
前記電子部品に熱的に接続された蒸発器と、凝縮器と、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入り口を連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に送る液管とを有し、前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置され、その一部が前記液管内に突出している第2ウィックとを有する
ことを特徴とする電子機器。
【符号の説明】
【0091】
1…蒸発器、2…液管、3…蒸気管、4…蒸発器容器、5…ウィック、5a…第1ウィック、5b…第2ウィック、6…グルーブ、8…蒸発器、15…ループ型ヒートパイプ、16…蒸発器、17…蒸気管、18…凝縮器、19…第1液管、21…蒸発器容器、22…底部材、23…蓋部材、24…グルーブ、27…仕切り、28…蒸気流路、30…第1ウィック、31…第2ウィック、31a…突出部、32…蒸発器、33…リザーバタンク、34…第1液管、35…ループ型ヒートパイプ、36…第2液管、41…第2ウィック、41a…突出部、42…蒸発器、44…第1液管、46…蒸発器容器、51…第2ウィック、51a…突出部、53…蓋部材、55…第1液管用穴、61…第2ウィック、61a…突出部、62…蒸発器、73…接合部、74…Oリング、75…ねじ穴、76…ねじ穴。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループ型ヒートパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートパイプは作動流体の相変化を利用して発熱体(例えばCPUやその他の電子部品)で発生した熱を移動させる装置であり、その一例としてループ型ヒートパイプが知られている。
【0003】
ループ型ヒートパイプは、蒸発器と、凝縮器と、蒸発器の出口と凝縮器の入り口とを連結する蒸気管と、凝縮器の出口と蒸発器の入り口とを連結する液管とを備え、内部に水又はフロン等の作動流体が封入されている。
【0004】
作動流体は、蒸発器で発熱体からの熱を吸収して液相から気相に変化する。蒸発器で気相となった作動流体は、蒸気管を通って凝縮器に移動し、凝縮器で放熱して気相から液相に変化する。そして、凝縮器で液相になった作動流体は、液管を通って蒸発器に戻る。
【0005】
このように、作動流体が気相と液相とに変化しながらパイプ内を循環することにより、蒸発部から凝縮部に熱が移動する。このとき、蒸発部における相変化に発熱体の熱が使われるので、蒸発部の近傍に配置された発熱体が冷却される。
【0006】
ところで、蒸発器内には、一端が開口した円筒形状の多孔質体で形成されたウィックが設けられている。液管から蒸発器に送り込まれた液相の作動流体は、まずウィックの開口側から流入してウィックの中心部の空間を満たし、毛細管現象によってウィック内に浸透する。そして、ウィックの外周側で発熱体からの熱により気相が発生する。
【0007】
作動流体が液相から気相に変化するときには体積が膨張するため、ウィックの外側では圧力が高くなる。このとき、ウィック内は液相の作動流体で満たされ、ウィックの内周側から外周側に向かって毛細管力が働くため、気相となった作動流体はウィック内を通ることができず、蒸気管を通って凝縮器に向かう。そして、この蒸気管を通る気体の圧力により凝縮器で液相になった作動流体が押し出されて、液管を通り蒸発器に向かう。このようにして、ヒートパイプ内の作動流体は、前述したように蒸発器、蒸発管、凝縮器、液管の順に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4765396
【特許文献2】特開2000−146471号公報
【特許文献3】特開2009−139083号公報
【特許文献4】特開2002−22379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
蒸発器に液相の作動流体を安定的に供給できるループ型ヒートパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の技術の一観点によれば、蒸発器と、凝縮器と、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入り口を連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に送る液管とを有し、前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置された第2ウィックとを有し、前記第2ウィックの一部が、前記液管内に突出しているループ型ヒートパイプが提供される。
【発明の効果】
【0011】
前記一観点のループ型ヒートパイプは、蒸発器のドライアウトの発生を回避でき、蒸発器に液相の作動流体を安定的に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、ループ型ヒートパイプの蒸発器の一例を表した図である。
【図2】図2は、ループ型ヒートパイプの蒸発器の他の例を表した図である。
【図3】図3は、第1の実施形態のループ型ヒートパイプの模式図である。
【図4】図4(a)は第1の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の断面図、図4(b)は図4(a)のA−A線の位置における断面図である。
【図5】図5は、第2の実施形態のループ型ヒートパイプの模式図である。
【図6】図6(a)は第2の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の一例を示す断面図であり、図6(b)は図6(a)のA−A線の位置における断面図である。
【図7】図7(a)は第3の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の一例を示す断面図であり、図7(b)は図7(a)のA−A線の位置における断面図である。
【図8】図8(a)は第4の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の一例を示す断面図であり、図8(b)は図8(a)のA−A線の位置における断面図である。
【図9】図9は、第4の実施形態のループ型ヒートパイプの蒸発器の上面図である。
【図10】図10は、実施例1の蒸発器の作製方法を説明する図(その1)である。
【図11】図11は、実施例1の蒸発器の作製方法を説明する図(その2)である。
【図12】図12は、実施例1の蒸発器の作製方法を説明する図(その3)である。
【図13】図13は、実施例1の蒸発器の作製方法を説明する図(その4)である。
【図14】図14は、実施例1の蒸発器の作製方法を説明する図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0014】
図1はループ型ヒートパイプの蒸発器の一例を表した図である。図1(a)は蒸発器の軸方向に平行な断面を示しており、図1(b)は図1(a)のA−A線の位置における断面図を示している。
【0015】
蒸発器1は、円筒状の蒸発器容器4と、蒸発器容器4内に配置されたウィック5とを有している。蒸発器容器4の内周面には、中心軸に平行な方向に延びる複数のグルーブ(溝)6が設けられている。また、ウィック5は多孔質体により形成されており、一端側が開口し、他端側が閉塞した円筒状の形状を有している。
【0016】
蒸発器容器4の中心軸方向の一方の端部は液管2に接続されており、この液管2からウィック5の開口端側に液相の作動流体が流入する。また、蒸発器容器4の他端側は蒸気管3に接続されており、蒸発器1内で発生した気相の作動流体は、この蒸気管3を通って凝縮器(図示せず)に移動する。
【0017】
液管2から蒸発器1に流入した液相の作動流体は、ウィック5の中心部の空間7を満たし、次いで毛細管現象によりウィック5の内壁の微細な孔から外周側へと浸透する。
【0018】
一方、発熱体(図示せず)で発生した熱は蒸発器容器4に伝達され、この熱によりウィック5の外周側が熱せられて、作動流体は気相に変化する。そして、この気相の作動流体は、グルーブ6を通って蒸気管3に導かれる。
【0019】
ところで、発熱体の発熱量が大きい場合には、ウィック5の内部にまで熱が伝わってしまい、液相の作動流体がウィック5の外周側に浸透する前に内周側で気相に変化してしまうことがある。このとき、ウィック中心部の空間7内の圧力が上昇し、中心部の空間7内に液相の作動流体が流入しなくなる。その結果、ウィック5の外周部に液相の作動流体が浸透しなくなり、ウィック5の外周部が発熱体からの熱によって乾いてしまう。このような現象はドライアウトと呼ばれている。ドライアウトが発生すると、発熱体を冷却することができなくなる。
【0020】
図2は、ループ型ヒートパイプの蒸発器の他の例を表した図である。図2(a)は蒸発器の軸方向に平行な断面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A線の位置における断面図である。なお、図2中、図1と同一物には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0021】
蒸発器8の円筒状の蒸発器容器4内には、多孔質体により形成された第1ウィック5aと、第1ウィック5aよりも気孔径が大きい多孔質体により形成された第2ウィック5bとが配置されている。第1ウィック5aは、一端側が開口し、他端側が閉塞した円筒状の形状を有する。また、第2ウィック5bは、第1ウィック5aの内側に配置され、第1ウィック5aと同様に、一端側が開口し、他端側が閉塞した円筒状の形状を有する。
【0022】
上述したように、第2ウィック5bは、気孔径が第1ウィック5aよりも大きく設定されているので、液体に対する浸透性が優れている。従って、中心部の空間7を満たした液相の作動流体は、第2ウィック5bに吸収されて半径方向及び周方向に浸透し、第2ウィック5bから第1ウィック5aに供給される。
【0023】
このような二層構造のウィックを有する蒸発器を有するループ型ヒートパイプにおいては、内側の第2ウィック5b内に多くの作動液が保持されるため、一層構造のウィックを有する蒸発器に比べて液相の作動流体を安定して第1ウィック5aに供給できる。
【0024】
しかし、二層構造のウィックを有する蒸発器は、ウィック中心部の空間7が一層構造のウィックを有する蒸発管に比べて小さくなるため、外部から過剰な熱が伝達され、第2ウィック5bの内側で気相が発生した場合に、ウィック中心部の空間7が気相によって閉塞されやすく、中心部の空間7の圧力が上昇して、第1ウィックへの液相の供給が滞り、やがてドライアウトが発生する。
【0025】
(第1の実施形態)
図3は第1の実施形態のループ型ヒートパイプの模式図である。また、図4(a)は第1の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の断面図であり、図4(b)は図4(a)のA−A線の位置における断面図である。
【0026】
図3のように、本実施形態に係るループ型ヒートパイプ15は、蒸発器16、凝縮器18、蒸気管17、及び第1液管19を有し、その内部には水又はフロン等の作動流体が封入されている。
【0027】
作動流体は、蒸発器16において発熱体(図示せず)からの熱を吸収して液相から気相に変化し、熱を伴ったまま蒸気管17を通って凝縮器18に移動し、凝縮器18において放熱して気相から液相に変化し、第1液管19を通って蒸発器16に戻る。
【0028】
蒸発器16は、図4のように、蒸発器容器21と、蒸発器容器21内に配置された平板型の第1ウィック30と、第1ウィック30の上に配置された第2ウィック31とを有する。
【0029】
蒸発器容器21は、上側の蓋部材23と、下側の底部材22とを有する。これらの蓋部材23と底部材22とにより、第1ウィック30及び第2ウィック31が配置される空間と、第1ウィック30の下面側で発生した蒸気(気相の作動流体)が通る空間とが形成される。
【0030】
蓋部材23の上面側には、第1液管19及び蒸気管17が接続されている。蒸発器容器21の内部は、例えば容器上面から深さ方向に延びる仕切り27により、ウィック30,31が配置される部位と、ウィック30の下側で発生した蒸気(気相の作動流体)を蒸気管17に導く蒸気流路28となる部位とに仕切られている。
【0031】
底部材22の内側底面には、蒸気が通るグルーブ24が設けられている。底部材22の材料としては、発熱体からの熱を伝えやすい銅等の熱伝導率が高い金属を用いることが好ましい。
【0032】
蓋部材23には、第2ウィック31が配置された空間と第1液管19とを連絡する第1液管用穴25と、蒸発器容器21内の蒸気流路と蒸気管17とを連絡する蒸気管用穴26とが設けられている。蓋部材23の材料としては、発熱体から液相への伝熱を抑制する観点から、ステンレス鋼等の熱伝導率の低い金属を用いることが好ましい。
【0033】
底部材22と蓋部材23とは、作動流体が漏れないように、はんだ付け、ロー付け又はねじ止め等により接合されている。
【0034】
第1ウィック30は、その下面が底部材22のグルーブ24形成面に接触し、且つ側面が底部材22の側面及び仕切り27に接している。また、第2ウィック31は、第1ウィック30の上面に接触して配置されており、その一部は第1液管19の内部に突出している。第1ウィック30及び第2ウィック31はいずれも多孔質体により形成されている。本実施形態では、第2ウィック31は、第1ウィック30よりも平均気孔径が大きい多孔質体により形成されている。
【0035】
ここで、第1液管19は、蒸発器16に液相の作動流体を供給する管であり、本実施形態では凝縮器18と蒸発器16を連結する液管の一部を第1液管19としている。但し、後述する第2の実施形態で説明するように、液管の途中にリザーバタンクを配置する場合は、リザーバタンクと蒸発器16との間の液管が第1液管19となる。
【0036】
このような蒸発器16を有するループ型ヒートパイプ15は以下のように動作する。ここでは、蒸発器16の下側(底部材22の下面)に図示しない発熱体(CPU又はその他の電子部品等)が熱的に接続されているものとする。
【0037】
液相の作動流体が第1液管19から蒸発器16に流入する際には、まず第2ウィック31の突出部31aに浸入し、次いで毛細管現象により第2ウィック31内を厚さ方向及び横方向に移動する。そして、作動流体は、第2ウィックの31下面から第1ウィック30の上面に移動し、更に第1ウィック30内を厚さ方向(図4では下方向)に移動する。
【0038】
このとき蒸発器16の底面側には、発熱体から熱が伝達されている。この熱は、底部材22から第1ウィック30に伝達される。そして、第1ウィック30内に浸透した液相の作動流体が下側から熱せられて蒸発し、気相の作動流体が発生する。
【0039】
その後、発生した気相の作動流体は、グルーブ24から排出されて蒸気流路28を通り蒸気管17に導かれる。
【0040】
なお、第2ウィック31の突出部31aは、第1液管19の内壁に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。また、突出部31aを濡れやすくする観点からは、表面に凹凸形状を設けて表面積を大きくすることが好ましい。
【0041】
効率的に外部の熱を吸収する観点からは、第1ウィック30の下面の広い範囲で作動流体が相変化することが好ましい。そのために作動流体は、第2ウィック31の面方向にできるだけ広く濡れ広がった上で、第1ウィック30に移動すればよい。よって、このような観点から、それぞれのウィック30,31を形成する多孔質体の平均気孔径、空隙率、熱伝導率及び材料を選択することが好ましい。
【0042】
本実施形態では、前述したように、第2ウィック31を形成する多孔質体の平均気孔径が、第1ウィック30のものよりも大きい。第2ウィック31の平均気孔径が大きいと浸透力が高まり、作動流体(液相)がより面方向に浸透しやすくなる。その結果、作動流体が第1ウィック30の上面全体から浸入できるので、第1ウィック30全体に作動流体を濡れ広げることができる。また、第1ウィック30の平均気孔径を小さくすることにより、毛細管力が大きくなり、より速く作動流体を下側に移動させることができる。
【0043】
また、第2ウィック31の平均気孔径が大きいと、第2ウィック31内で作動流体を多く保持できるので、作動流体が蒸発しにくく、蒸発器上部で圧力が上昇しにくくなる。特に、第2ウィック31の突出部31aで蒸発が起こりにくくなることにより、第1液管19内部の圧力上昇を抑制できる。
【0044】
更に、第2ウィック31での蒸発抑制により蒸発器16の上部で圧力が上がらない一方、蒸発器16の下部では第1ウィック30の下部で起こる蒸発により圧力が上昇する。従って、蒸発器16内の上部と下部との圧力差により、作動流体が上部から下部へと移動しやすくなり、正常な循環が促進される。
【0045】
本実施形態では、第1ウィック30の平均気孔径を数μm(例えば2μm〜3μm)とし、第2ウィック31の平均気孔径を10μm〜数10μm(例えば、10μm〜20μm)としている。
【0046】
また、第2ウィック31の熱伝導率は、第1ウィック30のものよりも小さいことが好ましい。第2ウィック31の熱伝導率が小さいと、第1ウィック30から伝わる熱が第2ウィック31の上部に伝わりにくくなるので、第2ウィック31の上部での蒸気発生を抑制できる。特に、第2ウィック31の突出部31aで蒸気が発生しにくいことにより、第1液管19内部の圧力上昇を抑制することができる。
【0047】
更に、第2ウィック31での蒸気発生の抑制により蒸発器16内の上下で圧力差が生じ、作動流体の正常な循環が促進される。
【0048】
第1ウィック30の材料として、例えばニッケル等の焼結金属やアルミナ等の多孔質セラミックスを用いることができる。また、第2ウィック31の材料として、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリエチレン等の焼結樹脂を用いることができる。
【0049】
また、第1ウィック30及び第2ウィック31の相互に接触する面には、互いに嵌め合わせることができる凹凸形状が形成されていることが好ましい。第1ウィック30の上面及び第2ウィック31の下面に凹凸形状が形成されていることにより、第1ウィック30と第2ウィック31の接触面積が増加し、第2ウィック31内を浸透した液相の作動流体を第1ウィック30の全面に効率的に濡れ広げることができる。この凹凸形状は、切削加工や金型成型により形成することができる。
【0050】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係るループ型ヒートパイプを示す模式図である。また、図6(a)は第2の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の一例を示す断面図であり、図6(b)は図6(a)のA−A線の位置における断面図である。
【0051】
なお、図5及び図6においては、図3及び図4で示した要素と同一の要素については同一の符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0052】
本実施形態のループ型ヒートパイプ35では、蒸発器32の近傍にリザーバタンク33が設けられている。また、凝縮器18とリザーバタンク33とが第2液管36で連結されており、リザーバタンク33と蒸発器32とが第1液管34で連結されている。更に、本実施形態では、第2ウィック41の一部が、第1液管34内に突出している。それ以外の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。
【0053】
リザーバタンク33は、凝縮器18から送られた液相の作動流体を一時的に貯留する構造を有し、ループ型ヒートパイプ35の起動時に、作動流体を蒸発器32に供給するものである。これにより、蒸発器32に液相の作動流体をより確実に供給することができる。
【0054】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、第2ウィック41の一部が第1液管34内に突出している。これにより、リザーバタンク33が設けられていることと相まって、ループ型ヒートパイプ35の起動時にドライアウトをより確実に防止することができる。
【0055】
(第3の実施形態)
図7(a)は第3の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の一例を示す断面図であり、図7(b)は図7(a)のA−A線の位置における断面図である。
【0056】
本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、複数の第1液管44が蒸発器42に接続されており、且つ第2ウィック51の一部が複数の第1液管44のうちの少なくとも1つの第1液管44内に突出している。それ以外の構成は、基本的に第1の実施形態と同様であるので、図7において図4と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0057】
本実施形態の蒸発器42では、複数の第1液管44から液相の作動流体が供給されるので、蒸発器42に侵入した作動流体が、第2ウィック51上面の広い範囲に供給される。よって、作動流体を第2ウィック51の面方向により早く濡れ広げることができる。従って第2ウィック51全体が濡れやすくなり、外部から高温の熱が供給された際に、第2ウィック51上部で蒸気が発生しにくい。
【0058】
また、例えば第2ウィック51内で蒸気が発生して蒸発器42上部の圧力が上昇したとしても、第2ウィック51の一部が第1液管44内に突出しているので、第2ウィック51が作動流体に濡れやすい。これにより、第1の実施形態と同様に蒸発器42内に作動流体を供給することができ、ドライアウトの発生を回避することができる。
【0059】
更に、本実施形態では、複数の第1液管44から第2ウィック51に液相の作動流体が供給されるので、第2ウィック51全体が面方向に広く濡れやすくなり、ドライアウトの発生をより確実に回避することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、蒸発器容器46の蓋部材53は、その上面に複数の第1液管用穴55を備えている。その個数は特に限定されないが、作動流体を第2ウィック51上面に広く濡れ広げる観点からは、できるだけ多いほうが好ましい。
【0061】
第1液管用穴55の配置は特に限定されないが、第1液管44から供給される液相の作動流体が第2ウィック51上面に広く濡れ広がるように配置されていることが好ましい。
【0062】
接続される第1液管44の形態は特に限定されないが、元が1つの管が途中で分岐している形態でもよいし、元から複数の管であってもよい。
【0063】
第2ウィック51の突出部51aは、少なくとも1つの第1液管44内に突出していればよいが、複数の第1液管44内のそれぞれに突出していてもよい。
【0064】
図7に示す蒸発器42では、蒸発器42を上面から蒸気管17が下になるように見た場合に、6本の第1液管44が横2列縦3行の配置に接合されている。なお、この6本の第1液管44は、元が2本の第1液管44がそれぞれ3つに分岐したものである。
【0065】
(第4の実施形態)
図8(a)は第4の実施形態のループ型ヒートパイプに用いられる蒸発器の一例を示す断面図であり、図8(b)は図8(a)のA−A線の位置における断面図である。また、図9は、同じくその蒸発器の上面図である。なお、図8及び図9において、図6及び図7で示した要素と同一の要素については同一の符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0066】
本実施形態が第2の実施形態と異なる点は、複数の第1液管64が蒸発器82に接続されており、且つ第2ウィック61が複数の第1液管64の少なくとも1つに形成されていることであり、それ以外は第1の実施形態と同様である。
【0067】
本実施形態では、リザーバタンク33と連結した複数の第1液管64から蒸発器62に液相の作動流体が供給されるので、第3の実施形態と同様に、作動流体を第2ウィック61の面方向により早く濡れ広げることができる。よって、第2ウィック51全体が濡れやすくなるので、外部から高温の熱が供給された際に第2ウィック51上部で蒸気が発生しにくい。
【0068】
また、第2ウィック61が、複数の第1液管64の少なくとも1つの第1液管64内に突出しているので、第2ウィック61が作動流体に濡れやすく、リザーバタンク33から第2ウィック61に確実に作動流体を供給することができる。これにより、ドライアウトの発生を回避することができる。
【0069】
蒸発器62としては、第3の実施形態で用いたものを使用できる。従って、第1液管用穴55の配置及び個数についても、第3の実施形態と同様である。
【0070】
また、接続される第1液管44の形態についても、第3の実施形態と同様に特に限定されない。
【0071】
図8に示す蒸発器62では、蒸発器62を上面から蒸気管17が下になるように見た場合に、図9に示すように6本の第1液管64が横2列縦3行の配置に接合されている。この6本の第1液管64は、リザーバタンク33の側面に接続されて水平方向に伸びた2本の第1液管64が途中で3本ずつに分岐し、それぞれが下方向に曲げられて蒸発器62上面に接続されている。
【0072】
(実施例1)
実施例1として、以下のように第4の実施形態で説明した蒸発器を作製した。
【0073】
図10〜図14は、実施例1の蒸発器の作製方法を説明するための平面図及び断面図である。なお、図10〜図12において、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A線の位置における断面図である。また、図14(a)は図13の上面図のA−A線の位置における断面図、図14(b)は図13の上面図のB−B線の位置における断面図である。図10〜図14において、図8及び図9で示した要素と同一の要素については同一の符号を付している。
【0074】
まず、図10(a),(b)のように、平面形状がほぼ正方形の開口部を有する箱型で銅製の底部材22を用意した。底部材22は、側面の上端から連続して形成されて開口部を囲む枠状の接合部73を有する。接合部の上面には開口部を取り囲むようにOリング74が埋め込まれており、Oリング74の外側には蓋部材と連結するための複数のねじ穴75が設けられている。また、底部材22の底面の蒸気流路を除く面には、凹部24aの幅が1mm、深さが1mmのグルーブ24が形成されている。
【0075】
その後、図11(a),(b)のように、平板型の第1ウィック30を底部材22のグルーブ24の上に設置した。第1ウィック30は、例えば平均気孔径3μm、空隙率50%のニッケル製焼結金属で形成されている。第1ウィック30は、例えばグルーブ24の延伸方向に平行な辺の長さが35mm、垂直な辺の長さが35mm、厚さが3mmである。
【0076】
その後、図12(a),(b)のように、第2ウィック61を第1ウィック30の上に設置した。第2ウィック61は、例えば平均気孔径10μm、空隙率40%のPTFE多孔質体で形成されている。第2ウィック61は、上面の第1液管64が配置される位置に6個の突出部61aが形成された平板型をしている。第2ウィック61の平板部分は、グルーブ24の延伸方向に平行な辺の長さが30mm、垂直な辺の長さが30mm、厚さが2mmである。また、第2ウィック61の突出部61aは、例えば直径4mm、高さ6mmの円柱型である。
【0077】
続いて、図13及び図14のように、第2ウィック61が嵌合するように開口した箱型の蓋部材53を用意した。
【0078】
蓋部材53の上面には、底部材22のねじ穴75に対応したねじ穴76が、開口部を囲むように側面を貫通して形成されている。また、蓋部材63には、蒸発器容器21の内部に蒸気流路を確保するための仕切り27が設けられており、仕切り27には第1ウィック30を下方向に押さえつけるための切り欠きが設けられている。また、蓋部材53には、上面に設けられた蒸気管用穴26にステンレス鋼で形成された蒸気管17が溶接されている。
【0079】
更に、蓋部材53の上面には6個の第1液管用穴55が設けられ、それぞれの第1液用穴55にステンレス鋼で形成された第1液管64(内径:5mm)6本が溶接されている。この6本の供給管64は、元は2本の第1液管が3本に分岐したもので、この元の2本の第1液管64にはステンレス鋼で形成されたリザーバタンク33が溶接されている。
【0080】
最後に、図13及び図14のように、第2ウィック61の6個の突出部61aがそれぞれ6本の第1液管64内に挿入され、且つ蓋部材53の開口部に第2ウィック61が嵌合するように蓋部材53を底部材22に被せ、ねじ止めにより蓋部材53と底部材22を接合して、実施例1の蒸発器62を作製した。
【0081】
(実施例2)
実施例2として、アルミナ粉末を用いて平均気孔径2μm、空隙率60%の第1ウィック30を形成し、ポリエチレンを用いて平均気孔径20μm、空隙率50%の第2ウィック61を形成し、且つ第1ウィック30と第2ウィック61の接触する両面に互いに嵌め合わせることのできる凹凸形状を形成した以外は実施例1と同様にして、蒸発器62を作製した。
【0082】
以上の諸実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0083】
(付記1)蒸発器と、凝縮器と、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入り口を連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に送る液管とを有し、前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置された第2ウィックとを有し、前記第2ウィックの一部が、前記液管内に突出していることを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【0084】
(付記2)前記蒸発器に前記液管が複数本接続されており、該複数本の液管のうちの少なくとも1つの液管内に前記第2ウィックの一部が突出していることを特徴とする付記1に記載のループ型ヒートパイプ。
【0085】
(付記3)蒸発器と、凝縮器と、リザーバタンクと、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記リザーバタンクの入り口を連結して前記液相の作動流体を前記リザーバタンクに送る液管と、前記リザーバタンクと前記蒸発器とを連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に供給する供給管とを有し、
前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置された第2ウィックを有し、
前記第2ウィックの一部が、前記供給管内に突出していることを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【0086】
(付記4)前記蒸発器に前記供給管が複数本接続されており、該複数本の供給管のうちの少なくとも1つの供給管内に前記第2ウィックの一部が突出していることを特徴とする付記3に記載のループ型ヒートパイプ。
【0087】
(付記5)前記第1ウィックの前記第2ウィック側の面に第1凹凸を有し、且つ、前記第2ウィックの前記第1ウィック側の面に、前記第1凹凸に嵌合する第2凹凸を有することを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載のループ型ヒートパイプ。
【0088】
(付記6)前記第2ウィックの熱伝導率が、前記第1ウィックの熱伝導率よりも小さいことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【0089】
(付記7)前記第2ウィックの平均気孔径が、前記第1ウィックの平均気孔径よりも大きいことを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【0090】
(付記8)電子部品と、
ループ型ヒートパイプとを有し、
前記ループ型ヒートパイプは、
前記電子部品に熱的に接続された蒸発器と、凝縮器と、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入り口を連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に送る液管とを有し、前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置され、その一部が前記液管内に突出している第2ウィックとを有する
ことを特徴とする電子機器。
【符号の説明】
【0091】
1…蒸発器、2…液管、3…蒸気管、4…蒸発器容器、5…ウィック、5a…第1ウィック、5b…第2ウィック、6…グルーブ、8…蒸発器、15…ループ型ヒートパイプ、16…蒸発器、17…蒸気管、18…凝縮器、19…第1液管、21…蒸発器容器、22…底部材、23…蓋部材、24…グルーブ、27…仕切り、28…蒸気流路、30…第1ウィック、31…第2ウィック、31a…突出部、32…蒸発器、33…リザーバタンク、34…第1液管、35…ループ型ヒートパイプ、36…第2液管、41…第2ウィック、41a…突出部、42…蒸発器、44…第1液管、46…蒸発器容器、51…第2ウィック、51a…突出部、53…蓋部材、55…第1液管用穴、61…第2ウィック、61a…突出部、62…蒸発器、73…接合部、74…Oリング、75…ねじ穴、76…ねじ穴。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器と、凝縮器と、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入り口を連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に送る液管とを有し、
前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置された第2ウィックとを有し、
前記第2ウィックの一部が、前記液管内に突出していることを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記蒸発器に前記液管が複数本接続されており、該複数本の液管のうちの少なくとも1つの液管内に前記第2ウィックの一部が突出していることを特徴とする請求項1に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項3】
蒸発器と、凝縮器と、リザーバタンクと、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記リザーバタンクの入り口を連結して前記液相の作動流体を前記リザーバタンクに送る液管と、前記リザーバタンクと前記蒸発器とを連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に供給する供給管とを有し、
前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置された第2ウィックとを有し、
前記第2ウィックの一部が、前記供給管内に突出していることを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記蒸発器に前記供給管が複数本接続されており、該複数本の供給管のうちの少なくとも1つの供給管内に前記第2ウィックの一部が突出していることを特徴とする請求項3に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項5】
前記第2ウィックの熱伝導率が、前記第1ウィックの熱伝導率よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項6】
前記第2ウィックの平均気孔径が、前記第1ウィックの平均気孔径よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項7】
電子部品と、
ループ型ヒートパイプとを有し、
前記ループ型ヒートパイプは、
前記電子部品に熱的に接続された蒸発器と、凝縮器と、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入り口を連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に送る液管とを有し、前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置され、その一部が前記液管内に突出している第2ウィックとを有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
蒸発器と、凝縮器と、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入り口を連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に送る液管とを有し、
前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置された第2ウィックとを有し、
前記第2ウィックの一部が、前記液管内に突出していることを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記蒸発器に前記液管が複数本接続されており、該複数本の液管のうちの少なくとも1つの液管内に前記第2ウィックの一部が突出していることを特徴とする請求項1に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項3】
蒸発器と、凝縮器と、リザーバタンクと、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記リザーバタンクの入り口を連結して前記液相の作動流体を前記リザーバタンクに送る液管と、前記リザーバタンクと前記蒸発器とを連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に供給する供給管とを有し、
前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置された第2ウィックとを有し、
前記第2ウィックの一部が、前記供給管内に突出していることを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記蒸発器に前記供給管が複数本接続されており、該複数本の供給管のうちの少なくとも1つの供給管内に前記第2ウィックの一部が突出していることを特徴とする請求項3に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項5】
前記第2ウィックの熱伝導率が、前記第1ウィックの熱伝導率よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項6】
前記第2ウィックの平均気孔径が、前記第1ウィックの平均気孔径よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項7】
電子部品と、
ループ型ヒートパイプとを有し、
前記ループ型ヒートパイプは、
前記電子部品に熱的に接続された蒸発器と、凝縮器と、作動流体と、前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入り口を連結して気相の前記作動流体を前記凝縮器に送る蒸気管と、前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入り口を連結して液相の前記作動流体を前記蒸発器に送る液管とを有し、前記蒸発器は、平板型の第1ウィックと、前記第1ウィック上に配置され、その一部が前記液管内に突出している第2ウィックとを有する
ことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−193912(P2012−193912A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58804(P2011−58804)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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