説明

レオロジー調節における使用のための混合物

60℃超の温度(Tcur)において硬化されるべき組成物中の垂れコントロール剤(SCA)として混合物を使用する方法において、該組成物が、バインダー及び混合物を含み、ここで該混合物は(a)意図される硬化温度より少なくとも10℃より低い融解温度(Tm1)を有し、そうすることにより条件Tm1<(Tcur−10℃)を満足するチキソトロピー誘発性粒状ポリウレア生成物、及び(b)第二のチキソトロピー誘発性粒状成分であって、少なくとも上記硬化温度までの温度においてその粒状性を保持する成分を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化可能な組成物、より特に硬化可能なコーティング組成物における垂れコントロール剤としてのチキソトロピー誘発剤の混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
表面を保護し、材料の審美的及び機能性を強化するためのポリマーコーティングの使用は周知である。これらのポリマーコーティングは、典型的にはローリング、刷毛塗り、散布、キャスティング及び空気又は静電噴霧のような技術を使用して液体系として表面に施与される。
【0003】
これらの液体系のレオロジー的プロフィールをコントロールしてコーティングが選択の方法により問題なく基体に施与されることができ、次に基体上で均一に流れ、施与工程により導入された表面の不均一性ならびに下にある基体からの不均一性ができるだけ均一にされることを許す必要性がある。付随的に、施与された液状フィルムは非水平な基体上で垂れ下がる又は裂けを形成することが許されるべきではない。そのような垂れ下りは、厚いフィルムコーティングが施与されるとき、及び基体が特徴、例えば、フィルムの局所的なビルドアップを促進することのできる端、穴、及びハイライト線を有する場合に特に著しい。
【0004】
これらの要求の結果、偽塑性の、チキソトロープ性のレオロジープロフィールを作り、垂れを制限する又は防ぐために、コーティング組成物におけるレオロジー調節剤の使用が広まっている;自動車コーティング市場において特に重要である。より特に、垂れの複雑な状態のない、極度に十分に均一化されたフィルムを得ることが最も重要であるその産業において使用される透明コーティングの場合特に特に重要である。
【0005】
コーティング組成物を基体に施与する工程に続いて、多くのコーティングは硬化及び/又は乾燥工程に付される;これらの後の段階においてコーティングのレオロジー的プロフィールをコントロールすることは同様に重要である。例えば、基体に施与された流動体のトップコート層が、部分的には揮発性化合物の放出のために収縮するとき、下にある基体のプロフィールはコート層に転写され得る。この工程は「遠距離描写(telegraphing)」として公知であり、元々噴霧工程において導入される粗さから独立している。施与に続いて加熱工程及び任意的な低温でのフラッシュオフ期間を使用する施与の場合、噴霧の粗さはかなりの程度まで均一化することが許されたかもしれないが、溶媒の蒸発は、乾燥/硬化のこれらの後の段階に新たな粗さを導入し、従って元々十分均一化されていた表面を乱し得る。トップコートが収縮すればするほど、基体の粗さのこの転写はより著しい可能性がある。乾燥及び/又は硬化工程の間に発現する、この遠距離描写された粗さは、遠距離描写された粗さの(部分的な)発現の後、かつそれが最終的に架橋する前に、コーティングフィルムがまだ十分な可動性(「流動性」)が残されているならば、まだ均一されることができる。
【0006】
完璧ではない基体上の、例えば、層の厚さの変動、及び発現される表面張力の勾配の影響に関連する他の物理的現象もまた、新たな表面の粗さの後の段階の導入に貢献し、また後の段階の流動性が再び均一化されることを要求する。
【0007】
加熱サイクルにおいてずっと十分に続き、他方で、最初に導入される噴霧の粗さの十分な均一化(leveling)を与えるだけでなく、乾燥/硬化サイクルの最後の段階においてのみ発現する基体の粗さの均一化をも与え、コーティング配合物の効果的な垂れ減少の良好なバランスを許す、60℃超の温度において実行される硬化サイクルを有する、コーティング施与のためのレオロジーコントロール剤に対する必要性がある。
【0008】
現在入手可能なレオロジーコントロール剤は、施与、硬化、及び乾燥段階を通して対立するレオロジー的要求を補償し損なうことにより、この理想的なバランスから一方又は他方の側へと逸脱する傾向がある。
【0009】
レオロジーコントロール剤、例えば有機粘土及びヒュームドシリカ、は高温硬化工程が使用されるクリアコート配合物の垂れを制限するために使用されてきた。そのようなレオロジーコントロール剤はC.H.Hare著「ペイントのフローを調節するためのチキソトロープ及び添加剤」J.Prot.Coat Linings,第79号(2001年4月)に記載されている。レオロジーコントロール剤は、施与後に高い構造粘度をビルドアップすることにより垂れを制限する。もしこの構造粘度が硬化サイクルにおいてあまりにも速く失われると、熱いコーティングフィルムの低粘度のために、硬化の遅い段階においてまだ垂れが起きる可能性がある。したがって、これらのレオロジーコントロール剤は硬化サイクルの間に高い粘度を維持するように作用する。しかし、そのそのような高温活性なレオロジーコントロール剤は、乾燥/硬化の遅い段階においてのみ発現する、外観に負の効果を有する遠距離描写された粗さの均一化を許すコーティングの潜在能力を制限する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
先行技術のこれらの欠点は、60℃超の温度(Tcur)において硬化されるべき組成物中の垂れコントロール剤(SCA)としての混合物の使用を開示する本発明により克服され、該組成物はバインダー及び混合物を含み、ここで該混合物は(a)意図される硬化温度より少なくとも10℃低い融解温度(Tm1)を有し、従って条件Tm1<(Tcur−10℃)を満足するチキソトロピー誘発性粒状ポリウレア生成物;および(b)少なくとも該硬化温度までの温度においてその粒状性を保持する第二のチキソトロピー誘発性粒状成分を含む。用語「垂れコントロール」は、本明細書において主目的として顔料の沈澱現象を含むことは意図されていない。チキソトロピー誘発性粒子(a)の融解温度はその粒状性が硬化温度より低い温度において有効に失われるように選択される。
【0011】
垂れコントロール剤(SCA)として作用するとき、混合物は、施与に関連する、高い及び中程度の剪断応力(>5Pa)における低い粘度と、非水平の表面上での湿ったコーティング層中の重力により作られる応力に対応する、低い剪断応力における高い粘度(<lPa)とを併せ持つチキソトロープ性挙動を示す。このチキソトロープ性は、コーティングが均一にされるにつれて表面上でまだ湿っている間に垂れ下がらないことを保障する、施与の後の速い時間依存性粘度の回復をさらに特徴とする。重要なことであるが、該混合物は、それを含むコーティング組成物の乾燥/硬化の間に、遅い段階の遠距離描写される粗さの良好な均一化コントロールを提供する。
【0012】
出願人は、該混合物の高い融解温度成分と低い融解温度成分間で機能的な相互関係があることを見出した。該混合物のチキソトロープ性の挙動は硬化の遅い段階において、例えば、溶媒の損失により収縮が起きた後でさえ、いくらかのフローを示す;これは下にある基体から遠距離描写される表面の不均一性を均一にするのに有利であると考えられる。さらに、これらの特徴は液状コーティング組成物の貯蔵時間で有意に変化しないことが示された。
【0013】
本発明の好ましい実施態様に従うと、該混合物は90℃、より好ましくは120℃超の温度において硬化されるべき組成物において使用される。最も好ましくは、該混合物は130℃〜150℃の温度において硬化されるべき組成物において使用される。
【0014】
用語「融解する」は、本明細書において熱的に誘発される固体から液体への状態変化及び熱的に誘発される、溶媒含有系における固体の溶解又は分解の両方を含むことが意図される。さらに、該混合物の成分(b)には、組成物の硬化のために使用されるいかなる温度においても融解を示さないものがあることも想定される。実際的な目的のために、これらの成分の溶融温度は無限であるとみなされることができる。
【0015】
該混合物(チキソトロープ性の剤)の成分の融解温度(T)は、樹脂/溶媒混合物中に粒子の形態でチキソトロープ剤を含む試料の示差走査熱量測定(DSC)から得られた。DSC実験は、TAインスツルメンツ社のDSC2920、アルミニウム、及び10±5mgの物質を含む密閉されたルツボを使用して行われた。試料は、最初低温(−40℃〜0℃)に冷却され、3分間、等温で整えられた。次に、ヘリウム雰囲気下、試料は10℃/分の速度で混合物の融解温度より十分上の高温(125℃以上)に上昇された(25ml/分)。加熱運転において記録された熱フローに見られる吸熱ピークが積算され、吸熱熱量の80%が消費されたところの温度がT値として使用された。
【0016】
重要なことであるが、ポリウレア反応生成物(a)は、フラッシュオフ段階でレオロジー的に活性である。さらに、第二成分(b)は、コーティングのゲル化が起きる前に混合物の硬化の間に残っている粒子においてその粒状性を失わない;第二成分(b)が硬化サイクルを通じて構造的な粘度の貢献を維持することができるように選択される。
【0017】
2成分のレオロジー調節剤は、公知の単独成分系を使用して、達成され得ない柔軟性を提供する。混合物の組成、特に個々の成分の相対量及び個々のレオロジー的効率は、施与されるべきコーティングの厚さ;水平に関する基体の配向;表面張力;施与後のコーティング組成物の任意の付随的な硬化に関する熱的状態;施与された溶媒の量及び蒸発性;溶媒の損失及び温度の変化に応答する粘度;溶媒が蒸発すると発現する表面張力の勾配及び硬化速度を補償するように(そしてコーティングを最適化するように)適合されることができる。
【0018】
好ましくは、該混合物中のポリウレア反応生成物:第二成分の(重量)比は5:95超,より好ましくは10:90超、最も好ましくは20:80超である。さらに好ましくは、該混合物中のポリウレア反応生成物:第二成分の(重量)比は、95:5より低く,より好ましくは90:10より低く、最も好ましくは80:20より低い。該混合物中の各成分の重量比の変化は重要な最適化ツールであることは明らかである。
【0019】
特に、高温のフローは成分(a)及び(b)のそれぞれの融解温度及びそれらが使用される比を調節することによりコントロールされることができ、より滑らかでより光沢のあるコーティング表面を作りだすことを許す。
【0020】
本発明の好ましい実施態様に従うと、ポリウレア生成物(a)の融解温度(Tm1)は、組成物の意図された硬化温度より10℃下より上である。ポリウレア生成物の融解温度は60℃より高いが、該混合物が使用される組成物の硬化温度より10℃超下である(すなわち60℃<T<Tcur−10℃)であることが好ましい。該第一ポリウレア成分(a)の融解温度(Tm1)は、(Tcur−60℃)より高く、より好ましくは(Tcur−50℃)より高く、さらにより好ましくは(Tcur−40℃)より高いこともまた好ましい。
【0021】
本発明の好ましい実施態様に従うと、ポリウレア反応生成物(a)はアミンとポリイソシアネートとの反応により誘導される。好ましくは、該ポリイソシアネートは、脂肪族のものであり、好ましくは該アミンは主としてモノアミンを含む。特定の実施態様において、該アミンは非ラセミの混合物において、すなわち対掌体過剰で提供されるキラルなモノアミンである。用語「キラルなモノアミン」は、炭素原子に共有結合で結合されたアミンであって、該炭素原子が3つの異なる置換基を有し、その結果キラルであるアミンを意味することが意図される。幅広いキラルアミンが原則として使用され得る。好ましくは、キラルなアミンは、アミン基に隣接する炭素原子上に1つの水素原子及び2つの異なる他の置換基を有するアミンである。
【0022】
複数のチキソトロピー誘発性粒状化合物が、該混合物の高融解温度安定成分(b)のために当業者により想定され得るが、この第二成分はシリカ、ポリマー状マイクロゲル、粘土、及びポリウレアをベースとする生成物からなる群から選択されることが好ましい。好ましくは、該混合物の該第二成分(b)は、ポリウレア反応生成物であり、より好ましくは該第二成分のポリウレア反応生成物はポリイソシアネートとアミンとの反応により誘導され、該ポリイソシアネートは、HMDI,トランス−1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート,m−キシリレンジイソシアネート,p−キシリレンジイソシアネート,テトラメチルキシリレンジイソシアネート及びトルエンジイソシアネートからなる群から選択される。
【0023】
本発明は、バインダー及び垂れコントロール剤(SCA)として、(a)融解温度Tm1を有するチキソトロピー誘発性粒状ポリウレア生成物及び(b)Tm2>Tm1+10℃である融解温度Tm2を有する第二のチキソトロピー誘発性粒状成分を含む組成物を硬化する方法であって、該方法が該組成物を、60℃より高いが、Tm1<(Tcur−10℃)<Tm2の硬化温度Tcurまで加熱することを含む。
【0024】
コーティング技術の分野において典型的であるように、この硬化方法は組成物が施与された基体上で起きることが好ましい。さらに、該硬化温度Tcurは、120℃〜150℃の範囲であり、最も好ましくは約140℃である。2つの記載された方法の実施態様は架橋剤(特に非イソシアネートタイプを含む)及び溶媒をさらに含む組成物に関してもまた当てはまる。
【0025】
本発明のさらなる局面に従うと、(a)融解温度Tm1を有するチキソトロピー誘発性粒状ポリウレア生成物及び(b)融解温度Tm2(ここでTm2>(Tm1+10℃))を有する第二のチキソトロピー誘発性粒状成分を含む、垂れコントロール剤(SCA)として使用されるための混合物が提供される。好ましくは、混合物の融解性は式Tm1<130℃かつTm2>140℃により定義される。そのような実施態様において、Tm1>50℃,好ましくは>70℃,より好ましくは>80℃最も好ましくは>90℃であることが好ましい。
【0026】
本発明は、コーティング組成物において垂れコントロール剤として該混合物を使用する方法であって、該コーティング組成物が、例えば、さらなる成分としての溶媒及び/又は架橋剤とともにバインダー中で分散されている混合物を含む方法に関する。
【0027】
本発明は、自動車のOEM、自動車の補修(refinish)、及び自動車のプラスチック施与のためのクリアコーティングの製造において使用されるコーティング組成物自身における垂れコントロール剤としての混合物の使用に特に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
低い融解温度(Tm1)のポリウレア生成物(a)は典型的にポリイソシアネートと主にモノアミンとの反応により、又は逆転された官能性、又は効果的にモノイソシアネート(選択的に1のサイドにおいて反応されたジイソシアネートを含む)とポリアミンとの反応により製造される。ポリイソシアネートの接頭語「ポリ」は、少なくとも2つの挙げられた官能基が、それぞれ「ポリ」化合物に存在することを示す。ポリウレア生成物がアミンとポリイソシアネートとの反応生成物により製造されるとき、ジウレア化合物又はトリウレア生成物を製造することが好ましい。
【0029】
ポリイソシアネートは、脂肪族、脂環式、アラルキレン,及びアリーレンポリイソシアネートから、より好ましくは置換又は無置換の直鎖脂肪族ポリイソシアネート(及びそれらのイソシアヌレート、ビューレット、ウレトジオン)及び置換又は無置換のアラルキレン及びシクロヘキシレンポリイソシアネートからなる群から好ましく選択される。ポリイソシアネートは通常2〜40、好ましくは4〜12の炭素原子をNCO基の間に含む。ポリイソシアネートは好ましくは4以下のイソシアネート基を含み、より好ましくは3以下のイソシアネート基を含み、最も好ましくは2つのイソシアネート基を含む。対称の脂肪族又はシクロヘキシレンジイソシアネートを使用することがさらにより好ましい。ジイソシアネートの適切な例はテトラメチレン−l,4−ジイソシアネート,ヘキサメチレン−l,6−ジイソシアネート(HMDI),トランス−シクロヘキシル−l,4−ジイソシアネート,ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート,1,5−ジメチル−(2,4−ω−ジイソシアナートメチル)ベンゼン,l,5−ジメチル(2,4−ω−ジイソシアナートエチル)ベンゼン,l,3,5−トリメチル(2,4−ω−ジイソシアナート−メチル)ベンゼン,l,3,5−トリエチル(2,4−ω−ジイソシアナートメチル)ベンゼン,メタ−キシリレンジイソシアネート,パラ−キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシル−ジメチルメタン−4,4´−ジイソシアネート,2,4−トルエンジイソシアネート,2,6−トルエンジイソシアネート,及びジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)からなる群から好ましく選択される。さらなる適切なポリイソシアネートは、好ましくはHMDIに基づくポリイソシアネート(HMDIの縮合された誘導体、例えば,ウレトジオン、ビューレット、イソシアヌレート(三量体)を含む)、及び非対称の三量体等からなる群から好ましく選択される。それらの多くはDesmodur(商標)N及びTolonate(商標)HDB及びTolonate(商標)HDTとして市販されている。特に好ましいポリイソシアネートは、HMDI,そのイソシアヌレートトリマー,そのビューレット,トランス−シクロヘキシル−1,4−ジイソシアネート,パラ−及びメタ−キシリレンジイソシアネート,及びトルエンジイソシアネートからなる群から選択される。最も好ましくはHMDIが選択される。
【0030】
当業者により理解されるように、インシチューで2以上のイソシアネートを生成する、慣用的にブロックされたポリイソシアネートを使用することもまた可能である。ただし、ブロック化剤が分裂した後、本発明に従うレオロジー調節剤の形成を阻止しない限りにおいてである。この書類を通して、用語「ポリイソシアネート」は、すべてのポリイソシアネート及びポリイソシアネート生成化合物を意味するために使用される。
【0031】
当業者に理解されるように、同じウレア生成物は、アミンがイソシアネートに、そしてイソシアネートがアミンに転化されることができれば、逆の方法で製造されることができる。そのような「逆」合成方法の生成物もまた、原料の入手容易性の観点で不利であり得るが、本発明の範囲の考えられる一部である。
【0032】
本発明の好ましい実施態様に従うと、レオロジー調節剤の第一成分(a)を製造するために使用されるアミンはモノアミンを含む。規定された低い融解温度(Tm1)の性質を有するポリウレア反応生成物を作るために、多くのモノアミンがポリイソシアネートと組み合わせて使用されることができる。脂肪族並びに芳香族アミンが使用されることができ、一級並びに二級アミンが使用されることができる。好ましくは、脂肪族一級アミンが使用される。これらの中で、n−アルキルアミン及びエーテルで置換されたn−アルキルアミンが本発明に従う低い融解温度のポリウレア化合物を生成するのに特に有用である。
【0033】
特に好ましい実施態様において、これらのアミンがキラルであることが好ましい。より好ましくは、モノアミンは20%超、よりこの50%超、最も好ましくは80%超のキラルなアミンを含む。
【0034】
キラルなアミンの任意な対掌体混合物が本発明のレオロジー調節剤の第一成分(a)を作るために使用されることができることが理解されるべきである。もしキラルなアミンが対掌体のラセミ混合物であるならば、良好な結果が得られることができる。しかし、第一の低い融解温度(Tm1)のウレアに基づく成分の誘導において、キラルなアミンは有意な対掌体過剰で与えられることが好ましい。用語「対掌体過剰」は、キラルアミンの両方の対掌体を含む試料中にラセミ物質に対して一の対掌体の過剰を意味するために使用される。対掌体過剰は好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%である。
【0035】
第一成分(a)のポリウレア生成物を誘導するために使用される好ましいキラルなアミンは以下の一般式(I)により与えられる。
【0036】

【0037】
ここで、各R及びRは、直鎖、環状、又は分岐状の、置換又は無置換の,飽和又は不飽和の炭化水素又はヘテロ原子含有基からなる群から独立して選択され、各キラルアミンのR及びRは異なり、その結果アミンの炭素原子はキラル中心である。より好ましくは、置換基R及びRは、(任意的にヘテロ原子を含有していてもよい)C〜C25のアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、及びエステル基からなる群から独立して選択される。最も好ましくはRはメチル基である。
【0038】
置換基R及びRは、それらが結合されているキラルな炭素原子Cと一緒に取り上げられることができ、4〜8の炭素原子を含む置換又は無置換の環を形成することができる。ただし、該環は、対掌性が炭素原子Cにおいて維持されるようなものである。
【0039】
ポリウレア生成物(a)(又はのちに記載されるように(b))の生成において、
アミン化合物のアミノ基の数:(生成された)イソシアネート基の数の比は、0.7〜1.5の範囲であり得る。好ましくは該比は約0.9〜1.1である。
【0040】
各イソシアネート及び各モノアミン成分間の反応は、当業者に公知であるように任意的に高められた温度において、反応成分を混合することにより随意的に選択された任意の方法で実行されることができる。反応は0℃〜150℃の範囲で、より特に20℃〜80℃の範囲で実行されることが好ましい。一般的に、反応成分は随意的に選択された任意の方法で混合されるが、好ましくは各イソシアネートが各モノアミン成分に添加され、これはもし所望されるならばいくつかの工程で行われ得る。任意的に、反応は不活性溶媒、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン、N−メチルピロリドン、ベンゼン,トルエン,キシレン,又は脂肪族炭化水素、例えば石油エーテル,アルコール,及び水又はそれらの混合物の存在下で、又は最終生成物又は任意の他のコーティング配合物成分のためのバインダーの存在下で行われ得る。ここで用語「不活性な」は、溶媒がポリウレア形成の工程において有意には妨害しないことを示し、溶媒が存在するときに形成されるポリウレアの量が、溶媒が存在しないときに形成される量の少なくとも80%であることを意味する。少量の共反応性成分がこの反応において意図的に使用されて、結晶化調節剤として作用すること、より特に沈澱のときの結晶サイズ又は得られる結晶のコロイド安定性を調節することもまた可能である。同様に、分散剤及び他の助剤がこれらの任意の導入工程において存在し得る。
【0041】
各ポリウレア化合物の製造は、バインダーの存在下で行われてもよく、ポリウレア反応生成物化合物はホストの樹脂環境においてコロイドとして製造されることが確かに好ましい。これはバインダーとイソシアネートとの混合物をアミン成分と混合することにより、又はイソシアネートをバインダーとアミン成分との混合物を混合することにより、又はバインダーとそれぞれアミン成分及びNCO−成分との2つの混合物を混合することにより行われることができる。もしバインダーがアミン又はイソシアネートのいずれかと非常に反応性であるならば、バインダー及びその特に敏感な化合物はプレ混合されることができないことは明白である。用語「非常に反応性」は、レオロジー調節剤を製造するためにアミノ酸誘導体及びイソシアネートが混合される前に、敏感なアミン又はイソシアネートの30%超がバインダーと反応することが意味される。混合操作は、任意の簡便な方法で行われ得、バッチ又は連続方法において反応物は激しく攪拌される。アミン成分はイソシアネートに添加され得るか又はイソシアネートがアミン成分に添加され得、いずれか最も簡便な方法でよい。もしバインダーが使用され、アミン成分又はイソシアネートのいずれかがバインダーと非常に反応性であるならば、バインダーと最も反応性である化合物は好ましくは、バインダー及び、該バインダーと最も反応性の低い化合物の混合物に添加される。
【0042】
又はポリウレア生成物は別の反応において形成され、適切な溶媒中の溶液からバインダーへと、適切な攪拌下、導入されて、粒状コロイドを形成することができる。
【0043】
該混合物の第二成分(b)は、その粒状性並びにレオロジー的な活性をコーティングのゲル化段階まで有効に維持していることを特徴とする。適切なレオロジーコントロール剤はシリカ、粘土、ポリマー状マイクロゲル、及びポリウレアをベースとする剤であり得る。好ましくは、それらは今回は高い融解温度を有するのみで、低いTm1のSCAについて上記されたのと同じ線に沿って作られることができるポリウレア剤である。
【0044】
高いTポリウレアを製造するための好ましいポリイソシアネートは、HMDI,トランス−1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート,m−キシリレンジイソシアネート,p−キシリレンジイソシアネート,テトラメチルキシリレンジイソシアネート及びトルエンジイソシアネートである;好ましいモノアミンはn−脂肪族アミン,シクロヘキシルアミン,ベンジルアミン及び2−フェネチルアミンである。特に好ましい高いTポリウレアは、HMDI及びベンジルアミンの付加物である。モノアミンに次ぐ成分としてジアミン(例えばエチレンジアミン)の使用もまた、高い融解点のポリウレアを作る選択肢であり得る。
【0045】
逆合成戦略のために、m−又はp−キシリレンジアミンをモノイソシアネートと組合せて使用することが好ましい。特に好ましいのはm−又はp−キシレンとシクロヘキシルイソシアネートとの付加物である。
【0046】
本発明に従うと、該混合物は組成物の環境において低い融解温度のポリウレア生成物(a)を第二成分(b)と混合することにより製造される。この混合工程の重要な局面は、2つの成分が十分に混合されることを保障することであり、当業者はこれを達成するための複数の連続及び不連続の方法を知っているだろう。例えば、前の段落において述べられたように、低い融解温度のポリウレア生成物(a)がバインダーの存在下で製造され得る;次に該混合物の第二成分(b)がホストの樹脂環境へと混合される。
【0047】
より高い融解温度又は融解しない第二成分(b)がそれ自身ポリウレア生成物である場合、第一(Tm1)及び第二(Tm2)ポリウレア生成物の両方がお互いの存在下、及びバインダー(任意的に他の成分、例えば溶媒、架橋剤等を、これらがポリウレアの形成を妨害しない程度まで含んでいてもよい)の存在下で製造され、そして沈澱されることが可能である。ポリウレア生成物は、ホスト樹脂環境においてコロイドとしてそれぞれ好ましく生成される。ポリウレア生成物を生成するために使用される反応物を混合する操作は、バッチを通してそれぞれの生成物の混合を保障し、各反応生成物の局在化された凝集を回避する任意の方法で行われ得る。
【0048】
又は粒状ポリウレア成分は、相補的な成分をすでに含む環境において形成されることができる。あまり望ましくはないが、レオロジー調節剤として該混合物を含むバインダー又は硬化組成物は、該レオロジー調節剤の存在下で、又はバインダー又は硬化化合物並びにレオロジー調節剤を同時に製造することにより製造又は調節され得る。当業者は、レオロジー調節剤、又はレオロジー調節剤のための出発物質をバインダー又は硬化化合物のための出発物質と混合し、次の反応でレオロジー調節剤含有バインダー又は硬化組成物を形成することに何ら問題を有しない。
【0049】
本発明に従ってチキソトロピー化されることのできるバインダーは、一般的に随意的に選択された任意のバインダーであり得る。しかし、適する例は、スチレン及び/又は1以上のモノマー状化合物、例えば(メタ)アクリレートモノマー又はアリル化合物と任意的に混合されていてもよいポリエステル、ポリウレタン、アルキド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、不飽和のポリエステル樹脂を含む。バインダー上の官能基は、ヒドロキシル基、酸基、カーバメート基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、反応性エーテル基、(ブロックされた)イソシアネート基、ケト基、アセトアセトキシ基、アミン基、ヒドラジド基、アリル基、及び他の不飽和基を含み得る。上記のバインダーはこれらの溶媒中の溶液又は分散物としての溶剤系又は水性系であり得、あるいは何らの溶媒なしで供給され得る。
【0050】
該混合物の最も重要な用途は、抗垂れ性及び光学的外観のよりよい組合せを有するコーティングを生成するために使用されるコーティング組成物における垂れコントロール剤としてである。これらのコーティング組成物はバインダー及び垂れコントロール剤として定義された混合物又は垂れコントロール剤を含む。コーティング組成物は特定の溶媒及び架橋剤中で、混合物、バインダー、及び任意的な他のコーティング組成物成分を混合することにより製造され得る。好ましくは、コーティング組成物はバインダー、溶媒、及びバインダー中に分散された0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜7重量%、最も好ましくは0.3〜5重量%(組成物の合計個体重量に対して)の該混合物を含む。コーティング組成物は他の助剤、例えば分散剤を含み得る。
【0051】
レオロジー調節剤としての該混合物は、すべての種類の熱可塑性及び架橋コーティング配合物において使用されることができる;該調節剤は、ポリオール−イソシアネート硬化に基づくコーティング組成物(すべてのブロックされたイソシアネート及びOH基がカルバメート基において交換されることができるCylink2000((商標)Cytec)としての化合物を含む)、ホルムアルデヒドに基づく架橋剤(例えば一般的に使用されるメラミンホルムアルデヒドタイプ)によるポリオール硬化に基づくコーティング組成物、ホルムアルデヒドをベースとする架橋剤によるポリカルバメートに基づくコーティング組成物、イソシアネートによる立体的に歪んだアミン(例えばDesmophen(商標)NH1220,Desmophen(商標)NH1420,及びDesmophen(商標)NH1521)に基づくコーティング組成物,イソシアネートによるチオールに基づくコーティング組成物、(メタ)アクリロイルに基づくコーティング組成物、エポキシ硬化可能なコーティング組成物(酸、酸無水物、又はアミンを架橋剤として使用する)、シラン硬化コーティング、及びこれらの化学種の1以上を組み合わせる任意の系(後者はハイブリッド硬化可能なコーティング組成物ともまた呼ばれる(例えばOH−NCO硬化系に統合されたアクリロイルをベースとする系))に基づくコーティング組成物において好ましく使用される。本発明のレオロジーコントロール剤と組み合わせて使用され得る他の架橋化学は、ケト官能性バインダー、アセトアセトキシ官能性バインダー、又は酸化メカニズム(例えば不飽和ポリエステルを使用する)、又は熱ラジカル開始剤、光開始系、又は高エネルギー照射により引き起こされるラジカルメカニズムにより硬化することのできるバインダーに基づく。
【0052】
任意的に、慣用の添加剤、例えば他の共バインダー、架橋剤、溶媒及び/又は分散添加剤、顔料分散剤、染料、顔料、ナノ粒子、UV硬化剤、フロー添加剤、他のレオロジーコントロール添加剤、溶媒、及び硬化反応促進剤、例えば酸性化合物、例えばp−トルエンスルホン酸又はそのブロックされた生成物が、本発明のコーティング組成物のどれにも存在し得る。
【0053】
コーティング組成物は、溶媒をベースとする又は溶媒のない他の慣用のレオロジー調節剤を含み得る。他の実施態様において、他の慣用のレオロジー調節剤は水をベースとする液体である。それにも関わらず、コーティング配合物は透明であり、したがって透明で顔料を付与されていないフィルムを製造するために使用されることができることが好ましい。
【0054】
チキソトロピー性コーティング組成物は任意の所望される方法、例えばローリング、空気噴霧、又は静電気噴霧、刷毛塗り、散布、キャスティング、及び浸漬により基体に施与され得る。本発明の組成物は特に噴霧施与に適する。
【0055】
コーティング組成物のレオロジーが変化される程度は、中でも混合された成分及び組成物のさらなる成分の割合及び性質に依存する。一般的に、チキソトロピー性の所望される程度は、組成物の合計重量に対して少なくとも0.01%,より好ましくは少なくとも0.05%,さらにより好ましくは少なくとも0.10%,最も好ましくは少なくとも0.15%であり、かつ好ましくは30%以下,より好ましくは10%以下,さらにより好ましくは3%以下,最も好ましくは1.5%以下の量で、該混合物をレオロジー調節剤として使用することにより得られ得る。
【0056】
施与されたコーティング組成物は、好ましくは60℃〜250℃、より好ましくは90〜165℃の範囲で、最も好ましくは120〜150℃の範囲で2〜120分間焼成することにより硬化可能である。
【0057】
本発明は、本発明に従うコーティング組成物から製造されたコーティングにもまた関する。レオロジー調節剤として該混合物のために特に好ましい用途は、自動車の補修又は自動車のプラスチック施与のためのクリアコート内にある。
【実施例】
【0058】
本発明の生成物の実施例及び比較例は今、例を挙げて説明されるが、本発明を制限するものではない。実施例は添付の図を参照して説明される。
【0059】
実施例及び比較例において言及された化合物は、ポリウレア化合物の製造において一般的に使用される工業的に入手可能な化合物であると認識される。
【0060】
Setalux(商標),Setal(商標)及びSetamine(商標)配合物は、すべてNuplex Resinsから入手可能である。
Solvesso(商標)配合物はExxon Mobil Chemicalsから入手可能な芳香族炭化水素である。
Tolonate(商標)は、Rhodia PPMCから入手可能なイソシアネート架橋剤である。
さらに、本明細書において以下の共通の省略形が使用される。
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
AMBA:アルファ(α)メチルベンジルアミン
BA:ベンジルアミン
L−alabu:L−アラニンブチルエステル
接頭語R−,S−(本明細書においてはアミンに対して使用されている)及びL−(本明細書においてはアミノ酸に対して使用されている)は、立体中心(stereogenic cntre)の命名法におけるそれらの通常の意味に従って使用される。
【0061】
個々の垂れコントロール剤の製造
当業者は、混合物の各成分自身が「垂れコントロール剤」(SCA)と呼ばれることができることを知っているだろう。実施例及び比較例において、そのような個々の垂れコントロール剤は本発明に従って製造されたSCAの混合物(SCA混合物として)と比較される。使用された、単独成分SCAで調節された樹脂が以下に説明される。
【0062】
SCA Aは、ホスト樹脂Setalux(商標)1756中のHDI及びベンジルアミンに基づく市販のウレアSCAであり、Nuplex ResinsからSetalux(商標)91756として入手可能である。
【0063】
SCA B
152.1グラムのSetal(商標)166SS80が反応容器に添加され,1500rpmにおいて2分間回転ディスクディゾルバーを使用して、2.54gのL−アラニンブチルエステルと混合された。攪拌速度は4000rpmに上昇され,1.43gの1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが、シリンジを使用して添加された。混合物は4000rpmにおいてさらに30秒間攪拌された。
【0064】
SCA Cは、ホスト樹脂Setalux(商標)1795中のHDI及びベンジルアミンに基づく市販のウレアSCAであり、Nuplex ResinsからSetalux(商標)91795として入手可能である。
【0065】
SCA D
100.0gのSetalux(商標)1795VX−74が、反応容器に添加され,1500rpmにおいて2分間回転ディスクディゾルバーを使用して、2.98gのS−(−)−α−メチルベンジルアミン及び0.32gのR−(+)−α−メチルベンジルアミンの混合物の1.71gと混合された。攪拌速度は4000rpmに上昇され,1.21gの1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが、シリンジを使用して添加された。混合物は4000rpmにおいてさらに30秒間攪拌された。
【0066】
SCA E
99.99gのSetalux(商標)1795VX−74が、反応容器に添加され,1500rpmにおいて2分間回転ディスクディゾルバーを使用して、1.84gのL−アラニンブチルエステルと混合された。攪拌速度は4000rpmに上昇され,1.09gの1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが、シリンジを使用して添加された。混合物は4000rpmにおいてさらに30秒間攪拌された。
【0067】
SCA F
100.06gのSetalux(商標)1795VX−74が、反応容器に添加され,1500rpmにおいて2分間回転ディスクディゾルバーを使用して、1.48gの3−メトキシプロピルアミンと混合された。攪拌速度は4000rpmに上昇され,1.44gの1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが、シリンジを使用して添加された。混合物は4000rpmにおいてさらに30秒間攪拌された。
【0068】
SCAの融解挙動
使用されたSCAの融解点の値は、SCAが製造された樹脂/溶媒混合物中におけるSCAマスターバッチ上での示差走査熱量測定(DSC)から得られた。
【0069】
DSC実験は、TAインスツルメンツ社のDSC2920、アルミニウム、及び10±5mgの物質を含む密閉されたルツボを使用して行われた。試料は、最初低温(−40℃〜0℃)に冷却され、3分間、等温で整えられた。これに続いて、温度は10℃/分の速度でSCAの融解温度より上の高温(典型的には125℃以上)に上昇された。温度プログラムはヘリウム雰囲気下で実行された(25ml/分)。
【0070】
加熱運転において記録された熱フローに見られる吸熱ピークが積算され、吸熱熱量(endothermic heat)の80%が消費されたところの温度がTm値として使用された。
【0071】
DSCを使用して得られたこれらの単独成分SCAの融解点が表1に列挙される。
【0072】
【表1】

【0073】
落下波測定
落下波試験のために、基体上に新しく噴霧されたペイントの最初の粘度と適合するように選択された固体含有量を有する透明なコート配合物が、自動フィルムアプリケーターにより駆動される特別な施与バーを使用してガラス基体上に施与された。施与バーは、4mmの波長及び約4μmの振幅を有する正弦曲線形状の表面を有する。すべての実験において湿ったペイントの層の厚さは、約40μmの最終的な乾燥フィルム厚さが得られるように調節された。
【0074】
ペイントの施与の直後に、コーティングされたガラス板は、落下波装置の温度制御された支持板に転写され、実験が開始された。ペイントの表面が、波の施与方向に関して45度の角度に設置された線形の光源で照明された。ペイント表面からのこの線形の光の反射がカメラを使用して記録され、イメージ分析ソフトウェアを使用してPC上に保存された。測定された反射から波の位置及び形状の両方が専用のソフトウェアプログラムを使用して定量的な方法で計算された。
【0075】
コーティングされた基体を有する温度制御された支持板の傾きの角度は、0度(=水平)に設定され、水平方向の均一化挙動を測定し、又は60度においてより鉛直な板の配向下での均一化及び垂れ挙動を測定した。湿ったペイントは環境条件(21〜22℃,50〜55%相対湿度)下、300秒又は600秒間、乾燥することを許され、その後支持板の温度は0.5〜l℃/秒の初期速度で140℃に上昇され、ペイントの高温焼成を模倣した。
【0076】
波の形状の測定された変化(例えば振幅の減少)は均一化の程度の尺度である。非水平な板上で、垂れの量は、板の底の方への波の移動(波シフト)から測定される。観察された垂れの量は施与された表面プロフィールのミリメートルで表した変位量で表される。
【0077】
ある実験においては、遠距離描写の効果は、1.1mmの波長及び10μmの振幅を有する正弦曲線形の溝を有する模様付スチールの基体に湿ったペイントを施与することにより調べられた。図1は、基体の凹凸及び施与直後のペイントの表面プロフィールの図式的な表示である。乾燥/硬化ペイントの測定された表面の粗さの曲線当てはめは、施与された表面プロフィールから遠距離描写されたプロフィールの分離を可能にする。これらの実験のためには、板の水平方向が使用された。
【0078】
実施例1
1K架橋クリアコート配合物が製造されて、樹脂固体に基づいて1:1の重量比におけるSetal(商標)166及びSetalux(商標)1795に基づく全体としてポリオールのバインダー組成物を得た。SCA配合物A(Setalux(商標)1795中のHDI−BA)並びにSCA配合物B(Setalux(商標)1795中のHDI−L−alabu)の使用を通じてSCAが導入された。Setamine(商標)US−138が架橋剤として固体に基づいて70/30のポリオール/架橋剤の比で添加された。Baysilone OL−17(固体に基づいて0.06%)が湿潤化添加剤として添加された。SCA濃度は固体に基づいて0.5重量%HDI−BA,及び0.7重量%HDI−L−alabuであるように選択された。配合物はSolvesso(商標)100で固体に基づいて60.6%に希釈された。
【0079】
比較例1
1K架橋クリアコート配合物が製造されて、樹脂固体に基づいて1:1の重量比におけるSetal(商標)166及びSetalux(商標)1795に基づく全体としてポリオールのバインダー組成物を得た。SCA配合物A(Setalux(商標)1795中のHDI−BA)の使用を通じてSCAが導入された。Setamine(商標)US−138が架橋剤として固体に基づいて70/30のポリオール/架橋剤の比で添加された。Baysilone OL−17(固体に基づいて0.06%)が湿潤化添加剤として添加された。SCA濃度は固体に基づいて1.4重量%であるように選択された。配合物はSolvesso(商標)100で固体に基づいて60.6%に希釈された。
【0080】
比較例1及び実施例1の配合物は、両方の配合物が、図2に示されるように落下波実験から測定されて同じ程度の垂れを有するように選択された。
【0081】
比較例1は、フラッシュオフ期間(300秒)の間の垂れの合計量の主な部分を示す;垂れの量は硬化段階の間非常に低い。実施例1は、垂れの合計量の約80%超を最初のフラッシュオフ乾燥の間に示し、硬化段階において残りを示す。これらの2つの配合物の対応するペイント流動性は図3に示される。
【0082】
これらの2つのSCA調節された配合物もまた模様付の遠距離描写基体上に施与されて、これらのペイントの最終的な外観への遠距離描写の影響を調べた。これらの試験の結果のまとめが図4に示される。
【0083】
遠距離描写された表面の粗さの振幅(amplitude of the telegraphed roughness)は、ペイントの施与直後にはゼロである。乾燥期間の間に遠距離描写された表面の粗さは増加する。比較例1の配合物の場合、遠距離描写された粗さの振幅は約650秒後に最大に達する。図3に示されるように、その時間から先は、この振幅は多かれ少なかれ一定である、なぜなら表面の粗さの均一化は、かなりの程度、ペイントの非常に低い流動性により阻害されるからである。
【0084】
実施例1の配合物の場合、オーブン中でのペイントの流動性は十分に高く、ペイントの施与後500秒〜700秒の間に遠距離描写された粗さのほとんど完全な均一化を許す。約800秒後、ペイントを硬化させるゲルポイント後の収縮の発生が、遠距離描写された粗さの振幅を再び少し増加させる。
【0085】
図4に示された結果は、遠距離描写された粗さの均一化に対して、遅い段階のペイントの流動性を有することの有益な効果を明らかに示す。これらの2つの配合物が同じ程度の垂れ(同じ波シフト、図1を参照のこと)及び施与方法によりもたらされる表面の粗さの同じ程度の均一化(図5を参照のこと)を有するとしても、オーブン中でいくらかのペイントの流動性を有する本発明に従う配合物の最終的な外観は、遠距離描写による表面の粗さの欠点がかなり少ない。
【0086】
比較例2
ポリオールSetalux(商標)1795及びSetalux(商標)1760(固体重量比9/5)に基づいて1Kクリアコート配合物が製造され使用された。SCA C(Setalux(商標)1795中のHDI−BA)が使用されてSCAを導入し、部分的にSetalux(商標)1795を置換した。架橋剤として、Setamine(商標)US138及びCylink(商標)2000(比5/1)の混合物が70/30の固体重量比ポリオール/架橋剤において使用され、噴霧粘度において所望される固体含有量(50.8%)にSolvesso(商標)100で希釈された。SCAの濃度は固体上で1.8重量%であった。使用された参照配合物の詳細な説明は表2に与えられる。落下波実験において使用された基体粘度における対応する配合物について、配合物は蒸発することを許され、60.8%の固体含有量を得、噴霧の間の溶媒の損失を模倣する。このようにして得られた配合物は0.7Pasの高い剪断粘度を有する。
【0087】
下の表2は、噴霧粘度においてこの研究において使用された1K参照配合物の組成を示す。
【0088】
【表2】

【0089】
実施例2
ポリオールSetalux(商標)1795及びSetalux(商標)1760(固体重量比9/5)に基づいて1Kクリアコート配合物が製造され使用された。SCA C及びSCA Dが使用されてSCAを導入し、部分的にSetalux(商標)1795を置換した。架橋剤として、Setamine(商標)US138及びCylink(商標)2000(比5/1)の混合物が70/30の固体重量比ポリオール/架橋剤において使用され、比較例2におけるように噴霧粘度において所望される固体含有量にSolvesso(商標)100で希釈された。合計SCA濃度(固体に基づく重量%)は1.35%であり、両方のSCAの重量比は1:1であった。次に比較例2におけるように、固体含有量は蒸発により60.8%に上昇された。
【0090】
実施例3
ポリオールSetalux(商標)1795及びSetalux(商標)1760(固体重量比9/5)に基づいて1Kクリアコート配合物が製造され使用された。SCA C及びSCA Eが使用されてSCAを導入し、部分的にSetalux(商標)1795を置換した。架橋剤として、Setamine(商標)US138及びCylink(商標)2000(比5/1)の混合物が70/30の固体重量比ポリオール/架橋剤において使用され、比較例2におけるように噴霧粘度において所望される固体含有量にSolvesso(商標)100で希釈された。合計SCA濃度(固体に基づく重量%)は1.35%であり、両方のSCAの重量比は1:1であった。次に比較例2におけるように、固体含有量は蒸発により60.8%に上昇された。
【0091】
実施例4
ポリオールSetalux(商標)1795及びSetalux(商標)1760(固体重量比9/5)に基づいて1Kクリアコート配合物が製造され使用された。SCA C及びSCA Fが使用されてSCAを導入し、部分的にSetalux(商標)1795を置換した。架橋剤として、Setamine(商標)US138及びCylink(商標)2000(比5/1)の混合物が70/30の固体重量比ポリオール/架橋剤において使用され、比較例2におけるように噴霧粘度において所望される固体含有量にSolvesso(商標)100で希釈された。合計SCA濃度(固体に基づく重量%)は1.45%であり、両方のSCAの重量比は1:1であった。次に比較例2におけるように、固体含有量は蒸発により60.8%に上昇された。
【0092】
図6において、これらの配合物について落下波試験の間に測定された対応する流動性が示される。600秒のフラッシュオフ時間が使用された;乾燥層の厚さは約39μmであった。
【0093】
落下波試験は同じ配合物について模様付の基体上でもまた行われ、遠距離描写された粗さについての情報を得た。図7において遠距離描写された粗さの振幅の発現(及び均一化)が水平的に乾燥され、硬化されたペイントについて示される。期待されるように、遠距離描写された表面の粗さの振幅はペイントの施与直後にはゼロである。次に、溶媒が蒸発してフィルムの収縮をもたらし始めるときに、遠距離描写された振幅は増大し始める。フィルム収縮の程度及び速度はすべての試験において比較可能であるが、乾燥期間の遠距離描写された振幅はすべてのペイントについて明らかに同じではない。これは、この遠距離描写された表面の粗さの均一化の速度及び程度の相違に起因する。実際、もし本発明に従う組成物におけるように、遅い段階におけるペイントの流動性がより高ければ、最終的な遠距離描写された振幅がより低いことが見られることができる。
【0094】
以降の実施例のすべてについて、得られたコーティング配合物並びに得られたコーティングは光学的に透明であり、ヘイズがなく、この特徴は本発明に従って製造された物質の重要な利点を示す。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】模様のある基体及び該基体へのペイントの直接施与後のペイントの表面のプロフィールの図である。
【図2】実施例1及び比較例1(のちに記載される)の配合物の、落下波実験で測定された垂れの程度を示す。
【図3】実施例1及び比較例1(のちに記載される)の配合物の、落下波実験で測定されたペイント(コーティング)の流動性を示す。
【図4】本発明(実施例1)に従って、及び先行技術(比較例1)に従って製造され、基体施与されたペイント(コーティング)の遠距離描写された粗さの振幅を示す。
【図5】本発明(実施例1)に従って、及び先行技術(比較例1)に従って製造され、基体施与されたペイント(コーティング)の均一化の程度を示す。
【図6】実施例2,3、及び4及び比較例2(のちに記載される)の配合物のペイント(コーティング)の落下波実験で測定された流動性を示す。
【図7】本発明(実施例2、3及び4)に従って、及び先行技術(比較例2)に従って製造され、基体施与されたペイント(コーティング)の遠距離描写された粗さの振幅を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
60℃超の温度(Tcur)において硬化されるべき組成物において垂れコントロール剤(SCA)として混合物を使用する方法において、該組成物が、バインダー及び上記混合物を含み、ここで該混合物は
(a)意図される硬化温度より少なくとも10℃低い融解温度(Tm1)を有し、従って条件Tm1<(Tcur−10℃)を満足するチキソトロピー誘発性粒状ポリウレア生成物;及び
(b)少なくとも上記硬化温度までの温度においてその粒状性を保持する第二のチキソトロピー誘発性粒状成分
を含む、上記方法。
【請求項2】
上記組成物が90℃超、より好ましくは120℃超の温度(Tcur)において硬化される、請求項1に記載の混合物を使用する方法。
【請求項3】
上記組成物が120℃〜150℃の温度(Tcur)において硬化される、請求項1〜2のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項4】
該混合物の上記ポリウレア生成物(a)が60℃超の融解温度を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項5】
上記第一ポリウレア成分(a)の融解温度が(Tcur−60℃)より高い、より好ましくは(Tcur−50℃)より高い、さらにより好ましくは(Tcur−40℃)より高い、請求項1〜4のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項6】
上記第二の粒状成分(b)が融解温度(Tm2)を有し、ポリウレア生成物及び上記第二の粒状成分の融解温度が条件Tm2≧(Tm1+10℃)を満足する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項7】
混合物のポリウレア反応生成物(a)が、アミンと置換又は無置換の直鎖脂肪族ポリイソシアネート又はそのイソシアヌレートとの反応により誘導される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項8】
混合物の上記ポリウレア反応生成物(a)が、アミンとヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート(HMDI)との反応により誘導される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項9】
混合物の上記ポリウレア反応生成物(a)が、アミンとヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート(HMDI)のイソシアヌレート誘導体との反応により誘導される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項10】
混合物の上記ポリウレア反応生成物(a)が、対掌体過剰で用意されたキラルなモノアミンから誘導される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項11】
混合物の第二成分(b)がシリカ、ポリマー状マイクロゲル、粘土、及びポリウレアに基づく生成物からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項12】
混合物の上記第二成分(b)がポリウレア反応生成物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項13】
上記第二成分(b)のポリウレア反応生成物がポリイソシアネートとアミンとの反応により誘導され、上記ポリイソシアネートが、HMDI,トランス−1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート,m−キシリレンジイソシアネート,p−キシリレンジイソシアネート,テトラメチルキシリレンジイソシアネート及びトルエンジイソシアネートからなる群から選択される、請求項12に記載の混合物を使用する方法。
【請求項14】
上記第二成分(b)を誘導するために使用される上記アミンが、n−脂肪族アミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、及び2−フェネチルアミンからなる群から選択される、請求項13に記載の混合物を使用する方法。
【請求項15】
上記混合物が5〜95重量%の上記第一ポリウレア反応生成物(a)、及び95〜5重量%の上記第二粒状生成物(b)を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項16】
上記組成物が溶媒をさらに含むコーティング組成物である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項17】
上記組成物が架橋剤をさらに含むコーティング組成物である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項18】
コーティング組成物の上記架橋剤がブロックされたイソシアネートを含む、請求項17に記載の混合物を使用する方法。
【請求項19】
コーティング組成物の上記架橋剤が非イソシアネートタイプである、請求項17に記載の混合物を使用する方法。
【請求項20】
コーティング組成物の上記架橋剤がメラミンホルムアルデヒドタイプである、請求項19に記載の混合物を使用する方法。
【請求項21】
上記組成物又はコーティング組成物が(組成物の合計重量に対して)0.05〜10重量%の上記混合物を含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の混合物を使用する方法。
【請求項22】
バインダーの存在下で、かつ任意的に溶媒及び/又は架橋剤の存在下で、第一ポリウレア生成物及び第二粒状生成物を混合することを含む、チキソトロープ性の組成物を製造する方法。
【請求項23】
上記第二粒状生成物がポリウレア生成物を含み、上記混合の工程が上記第一ポリウレア生成物(a)及び第二ポリウレア生成物(b)を反応生成物として互いの存在下で及び上記バインダーの存在下で共沈殿させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項22〜23のいずれか1項に記載の方法に従って製造された組成物。
【請求項25】
バインダー及び垂れコントロール剤(SCA)として(a)融解温度Tm1を有するチキソトロピー誘発性粒状ポリウレア生成物及び(b)Tm2>(Tm1+10℃)である融解温度Tm2を有する第二のチキソトロピー誘発性粒状成分の混合物を含む組成物を硬化する方法において、上記組成物を、60℃より高いがTm1<(Tcur−10℃)<Tm2である硬化温度Tcurに加熱することを含む方法。
【請求項26】
該組成物が施与された基体上で上記硬化工程が起きる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
上記硬化温度Tcurが120℃〜150℃の範囲、最も好ましくは約140℃である、請求項25〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
上記組成物が、非イソシアネートタイプ、好ましくはメラミンホルムアルデヒドタイプの架橋剤をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
(a)融解温度Tm1を有するチキソトロピー誘発性粒状ポリウレア生成物及び(b)Tm2>(Tm1+10℃)である融解温度Tm2を有する第二チキソトロピー誘発性粒状成分を含む、垂れコントロール剤(SCA)として使用するための混合物。
【請求項30】
Tm1<130℃及びTm2>140℃である、請求項29に記載の混合物。
【請求項31】
Tm1>50℃、好ましくは>70℃、より好ましくは>80℃、最も好ましくは>90℃である、請求項30に記載の混合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−527126(P2008−527126A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550741(P2007−550741)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000138
【国際公開番号】WO2006/074895
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(505396349)ヌプレクス レジンズ ビー.ブイ. (13)
【Fターム(参考)】