説明

レジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法

【課題】エッチング耐性に優れ、反射率が低減されたレジスト下層膜を形成することができるレジスト下層膜形成用組成物、パターン形成方法の提供。
【解決手段】下記一般式で表される繰り返し単位を有する重合体を含むレジスト下層膜形成用組成物。


式中、Rはヒドロキシ基等を示す。nは0〜5の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の放射線を用いるリソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造に好適な多層レジストプロセス用のレジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜、レジスト下層膜の形成方法、及びパターン形成方法に関する。更に詳しくは、エッチング耐性に優れ、反射率が低減されたレジスト下層膜を形成することができるレジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜、レジスト下層膜の形成方法、及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスは、シリコンウエハ上に複数の被加工膜を積層させ、この被加工膜を所望のパターンにパターニングする工程を多く備えている。そして、被加工膜のパターニングは、まず、一般にレジストと呼ばれる感光性物質を被加工膜上に堆積させてレジスト膜を形成し、このレジスト膜の所定の領域を露光する。次いで、レジスト膜の露光部または未露光部を現像処理して除去し、所定のパターンが形成されたレジストパターンを得る。その後、このレジストパターンをエッチングマスクとして用い、被加工膜をドライエッチングすることによって被加工膜をパターニングする。
【0003】
このようなプロセスにおいては、レジスト膜に露光するための露光光源としてArFエキシマレーザー等の紫外光が用いられているが、最近では大規模集積回路(LSI)の微細化に対する要求が益々高まっており、必要とされる解像度が露光光(紫外光)の波長以下になってきている。このように、必要とされる解像度が露光光の波長以下であると、露光量裕度、フォーカス裕度等の露光プロセス裕度が不足することとなる。このような露光プロセス裕度の不足を補うためには、レジスト膜の膜厚を薄くして解像性を向上させることが有効であるが、膜厚を薄くすると、被加工膜のエッチングに必要なレジスト膜厚を確保することが困難になってしまう。
【0004】
このようなことから、被加工膜とレジスト膜の間にレジスト下層膜(以下、単に「下層膜」と記す場合がある)を形成し、レジストパターンを一旦、下層膜に転写して下層膜パターンを形成した後、この下層膜パターンをエッチングマスクとして用いて被加工膜にパターンを転写するプロセスの検討が行われている。
【0005】
このようなプロセスにおいて、下層膜としてはエッチング耐性を有する材料からなるものが好ましく、その材料としては、例えば、エッチング中のエネルギーを吸収し、エッチング耐性があることが知られているベンゼン環を含む樹脂、特に、熱硬化フェノールノボラックを含有する組成物や、アセナフチレン骨格を有する重合体を含有する組成物等が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、スチレン誘導体またはアリルベンゼン誘導体とノルトリシクレン誘導体との共重合体を含有する組成物なども提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−40293号公報
【特許文献2】特開2000−143937号公報
【特許文献3】特開2008−65303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
下層膜のエッチング耐性を向上させるためには、特許文献1〜3に記載されている組成物のように、炭素含有量の多い重合体、例えば、芳香族環を有する重合体を含むものが用いられてきた。
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3に記載されている組成物によって形成した下層膜は、193nmでの屈折率nが低く、かつ、消衰係数kが高いという問題があった。このような問題に起因して、多層レジストプロセスにおいて、以下のような問題があった。即ち、芳香族環を有する重合体を含む組成物によって下層膜を形成し、この下層膜上に、アクリル系を主成分とするレジスト組成物によってレジスト膜を形成した場合、レジスト膜に比べて下層膜の反射率が高くなり、良好なレジストパターンを形成することができないという問題があった。
【0009】
この問題を解決するためには、下層膜の反射率を低減させる必要があるが、反射率を低減させるには、下層膜の屈折率nを上げるとともに消衰係数kを下げる必要がある。ここで、下層膜の反射率を低減させるためには、アクリル系の添加剤を加えることが知られているが、レジスト下層膜形成用組成物に、アクリル系の添加剤を加えると、下層膜のエッチング耐性が大幅に低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、エッチング耐性に優れ、反射率が低減された(即ち、屈折率nが高く、消衰係数kが小さい)レジスト下層膜を形成することができ、レジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜、レジスト下層膜の形成方法、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するものであることを特徴とするレジスト下層膜材料およびそれを用いたパターン形成方法を提供する。
【0012】
【化1】

式中、Rはヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数6〜14のアリール基を示す。nは0〜5の整数である。ただし、nが2〜5のときには複数のRは同一でも異なっていてもよい。Xは、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数1〜20のアルカンジイルオキシ基を示す。mは1〜7の整数である。mが2〜7のときは複数のXは同一でも異なっていてもよい。また、n+mは1〜7の整数である。Rは単結合または炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルカンジイル基である。Rは、炭素数4〜20の環状のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基であり、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、ヒドロキシアルキル基のいずれか1以上の基を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、エッチング耐性に優れ、反射率が低減されたレジスト下層膜を形成することができるという効果を奏するものである。
【0014】
本発明のレジスト下層膜は、エッチング耐性に優れ、反射率が低減されているという効果を奏するものである。
【0015】
本発明のレジスト下層膜の形成方法は、エッチング耐性に優れ、反射率が低減されたレジスト下層膜を形成することができるという効果を奏するものである。
【0016】
本発明のパターン形成方法は、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0018】
1.レジスト下層膜形成用組成物
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、上記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体(以下、「重合体(A)」ともいう)および溶剤(B)を含有するものである。
【0019】
重合体(A):
重合体(A)は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(イ)」ともいう)を有する重合体である。
【0020】
繰り返し単位(イ):
上記一般式(1)中、Rはヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数6〜14のアリール基を示し、特に水酸基が好ましい。なお、nは0〜5の整数である。ただし、nが2〜5のときには複数のRは同一でも異なっていてもよい。
【0021】
前記アルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0022】
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0023】
前記アシル基としては、炭素数2〜10の脂肪族又は芳香族アシル基が好ましく、例えばアセチル基等が挙げられる。
【0024】
前記アリール基としては、炭素数6〜14であることが好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0025】
また、Rが炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、または炭素数6〜14のアリール基のときには、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、メルカプト基、ヒドロキシメチル基、エステル基、及びエポキシ基等が挙げられる。
【0026】
構造単位(イ)中のXが示す2価の炭化水素基としては、アルカンジイル基、アリーレン基、及びアルカンジイルオキシ基等を挙げることができる。また、これらの基は置換基を有していてもよい。このような置換基としては、上記のRが有していてもよい置換基の説明を適用することができる。
【0027】
前記アルカンジイル基としては、炭素数1〜20であることが好ましく、例えばメチレン基、エチレン基等が挙げられる。また、アルカンジイルオキシ基としては、例えばメチレンオキシ基、エチレンオキシ基等が挙げられる。
【0028】
前記アリーレン基としては、炭素数6〜14であることが好ましく、例えばフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。なお、mは1〜7の整数である。mが2〜7のときは複数のXは同一でも異なっていてもよい。以上のn+mは1〜7の整数である。
【0029】
構造単位(イ)中のRは炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルカンジイル基である。Rは、炭素数4〜20の環状のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基であり、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、ヒドロキシアルキル基のいずれか1以上の基を含んでいてもよい。
【0030】
これらの置換基−R−Rとしては、下記式で表されるものが好ましい。
【0031】
【化2】

【0032】
繰り返し単位(イ)としては、下記一般式(1−1)で表されるものが好ましい。
【0033】
【化3】

上記式(1−1)中、R、R、X、mおよびnは式(1)における説明と同義である。Rは、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示し、複数存在する場合は相互に独立である。lは0〜3の整数を示す。
【0034】
上記式(1−1)中、Rとしては、好ましくはヒドロキシ基またはヒドロキシメチル基である。lとしては好ましくは0〜2の整数である。
【0035】
重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」と略称する)は、500〜8,000であることが好ましく、更に好ましくは1,000〜3,000であり、特に好ましくは1,500〜2,500である。Mwが過小であると、膜焼成時に成分が揮発して所望の膜厚が得られないという問題が生じる場合がある。一方、Mwが過剰であると、溶剤への溶解性が低下するという問題が生じる場合がある。
【0036】
重合体(A)の合成方法:
重合体(A)は、ナフタレン誘導体とアルデヒド類、および以下の式(2)であらわされるアルコール類とを酸触媒の存在下、無溶剤あるいは溶剤中で加熱する方法や、重合後のポリマーに下記一般式(2)で示されるアルコールを酸触媒存在下に導入する方法が挙げられる。また、重合前のモノマー、例えばナフトールに下記一般式(2)で示されるアルコールを反応させて得た−R−Rで示される基がペンダントされたナフトール化合物を用いて重合を行うこともできる。下記式(2)で表されるアルコールとしては、特に好ましくは、アダマンタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、1,3,5−アダマンタントリメタノール、1,3−アダマンタンジオール、1,3,5−アダマンタントリオールである。

HO−R−R (2)
【0037】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド等の飽和脂肪族アルデヒド類;アクロレイン、メタクロレイン等の不飽和脂肪族アルデヒド類;フルフラール等のヘテロ環式アルデヒド類;ベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒド、アントラアルデヒド等の芳香族アルデヒド類等が挙げられる。特に好ましくは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド及びフルフラールである。これらは1種単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0038】
上記反応におけるアルデヒド類、アルコール類の使用量は、ナフタレン誘導体100質量部に対し、アルデヒド類10〜100質量部、アルコール類が10〜100質量部以下、であることが好ましい。
【0039】
上記反応で用いられる酸触媒としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸等の鉱酸類;p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸類;蟻酸、シュウ酸等のカルボン酸類等が挙げられる。酸触媒の使用量は、使用する酸類の種類によって種々選択される。例えば、アセナフチレン類100質量部に対して、0.001〜10,000質量部であることが好ましく、特に好ましくは、0.01〜1,000質量部である。
【0040】
上記反応時の反応温度は、40℃〜200℃であることがよい。反応時間は、反応温度によって種々選択されるが、30分〜72時間であることがよい。
【0041】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、重合体(A)を含むものであるが、この組成物は、重合体(A)を溶解する溶剤(B)を含む液状であることが好ましい。本発明のレジスト下層膜形成用組成物において、重合体(A)の含有率は、重合体(A)と溶剤(B)との合計を100質量%としたときに、8〜30質量%であることが好ましく、10〜15質量%であることが更に好ましい。
【0042】
溶剤(B):
本発明のレジスト下層膜形成用組成物に使用される溶剤としては、重合体(A)を溶解しうるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、WO2007/105776号公報[0069]〜[0072]段落に記載のものを挙げることができる。
【0043】
これらの溶剤のうち、好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、酢酸n−ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等である。前記溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0044】
溶剤の使用量は、得られる組成物の固形分濃度が、5〜80質量%であることが好ましく、更に好ましくは5〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%となる範囲である。なお、「固形分」とは、本発明のレジスト下層膜形成用組成物の溶剤以外の成分のことである。
【0045】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物には、本発明における所期の効果を損なわない限り、必要に応じて、酸発生剤(C)、架橋剤(D)を配合することができる。
【0046】
酸発生剤(C):
酸発生剤(C)は、露光あるいは加熱により酸を発生する成分である。
露光により酸を発生する酸発生剤(以下、「光酸発生剤」という。)としては、WO2007/105776号公報[0076]〜[0081]段落に記載のものを挙げることができる。
【0047】
これらの光酸発生剤のうち、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネート等が好ましい。前記光酸発生剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
また、加熱により酸を発生する酸発生剤(以下、「熱酸発生剤」という。)としては、例えば、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、アルキルスルホネート類等を挙げることができる。これらの熱酸発生剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、酸発生剤として、光酸発生剤と熱酸発生剤とを併用することもできる。
【0049】
酸発生剤の配合量は、レジスト下層膜形成用組成物の固形分100質量部当たり、10質量部以下であることが好ましく、好ましくは0.1〜5質量部である。本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、光酸発生剤及び/又は熱酸発生剤を含有することにより、常温を含む比較的低温で各重合体の分子鎖間に有効に架橋反応を生起させることができる。
【0050】
架橋剤(D):
架橋剤(D)は、下層膜形成用組成物を硬化させて得られるレジスト下層膜と、このレジスト下層膜の上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを防止し、さらにはレジスト下層膜のクラックを防止する作用を有する成分である。このような架橋剤としては、多核フェノール類や、種々の市販の硬化剤を使用することができる。
【0051】
前記多核フェノール類としては、例えば、4,4’−ビフェニルジオール、4,4’−メチレンビスフェノール、4,4’−エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA等の2核フェノール類;4,4’,4’’−メチリデントリスフェノール、4,4’−〔1−{4−(1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル)フェニル}エチリデン〕ビスフェノール等の3核フェノール類;ノボラック等のポリフェノール類等を挙げることができる。これらの多核フェノール類のうち、4,4’−〔1−{4−(1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル)フェニル}エチリデン〕ビスフェノール、ノボラック等を挙げることができる。前記多核フェノール類は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0052】
また、前記硬化剤としては、例えば、2,3−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、3,4−トリレンジイソシアナート、3,5−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイソシアナート等のジイソシアナート類や、以下商品名で、エピコート812、同815、同826、同828、同834、同836、同871、同1001、同1004、同1007、同1009、同1031(以上、油化シェルエポキシ(株)製)、アラルダイト6600、同6700、同6800、同502、同6071、同6084、同6097、同6099(以上、チバガイギー社製)、DER31、同332、同333、同661、同644、同667(以上、ダウケミカル社製)等のエポキシ化合物;サイメル300、同301、同303、同350、同370、同771、同325、同327、同703、同712、同701、同272、同202、マイコート506、同508(以上、三井サイアナミッド(株)製)等のメラミン系硬化剤;サイメル1123、同1123−10、同1128、マイコート102、同105、同106、同130(以上、三井サイアナミッド(株)製)等のベンゾグアナミン系硬化剤;サイメル1170、同1172(以上、三井サイアナミッド(株)製)、ニカラックN―2702(三和ケミカル(株)製)等のグリコールウリル系硬化剤等を挙げることができる。これらの硬化剤のうち、メラミン系硬化剤、グリコールウリル系硬化剤等が好ましい。前記硬化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、架橋剤として、多核フェノール類と硬化剤とを併用することもできる。
【0053】
架橋剤の配合量は、レジスト下層膜形成用組成物の固形分100質量部当たり、50質量部以下であることが好ましい。
【0054】
その他の添加剤:
本発明の下層膜形成用組成物は、上記酸発生剤(C)及び架橋剤(D)以外の添加剤を含むことができる。この添加剤は、レジスト下層膜とレジスト被膜との間のインターミキシングを防止したり、下層膜形成用組成物の塗布性を向上させたりといった作用を有する成分である。このような成分としては、例えば、バインダー樹脂、放射線吸収剤、及び界面活性剤等を挙げることができる。
【0055】
バインダー樹脂としては、種々の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使用することができる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ペンテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−ヘプテン、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセン、ポリ−1−ドデセン、ポリ−1−テトラデセン、ポリ−1−ヘキサデセン、ポリ−1−オクダデセン、ポリビニルシクロアルカン等のα−オレフイン系重合体類;ポリ−1,4−ペンタジエン、ポリ−1,4−ヘキサジエン、ポリ−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン系重合体類;
α,β−不飽和アルデヒド系重合体類;ポリ(メチルビニルケトン)、ポリ(芳香族ビニルケトン)、ポリ(環状ビニルケトン)等のα,β−不飽和ケトン系重合体類;(メタ)アクリル酸、α−クロルアクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物等のα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の重合体類;ポリ(メタ)アクリル酸無水物、無水マレイン酸の共重合体等のα,β−不飽和カルボン酸無水物の重合体類;メチレンマロン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル等の不飽和多塩基性カルボン酸エステルの重合体類;
【0056】
ソルビン酸エステル、ムコン酸エステル等のジオレフィンカルボン酸エステルの重合体類;(メタ)アクリル酸チオエステル、α−クロルアクリル酸チオエステル等のα,β−不飽和カルボン酸チオエステルの重合体類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル又はその誘導体の重合体類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体の重合体類;スチリル金属化合物の重合体類;ビニルオキシ金属化合物の重合体類;
ポリイミン類;ポリフェニレンオキシド、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリオキシラン、ポリテトラヒドロフラン、ポリテトラヒドロピラン等のポリエーテル類;ポリスルフィド類;ポリスルホンアミド類;ポリペプチド類;ナイロン66、ナイロン1〜ナイロン12等のポリアミド類;脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、脂環族ポリエステル、ポリ炭酸エステル等のポリエステル類;ポリ尿素類;ポリスルホン類;ポリアジン類;ポリアミン類;ポリ芳香族ケトン類;ポリイミド類;ポリベンゾイミダゾール類;ポリベンゾオキサゾール類;ポリベンゾチアゾール類;ポリアミノトリアゾール類;ポリオキサジアゾール類;ポリピラゾール類;ポリテトラゾール類;ポリキノキサリン類;ポリトリアジン類;ポリベンゾオキサジノン類;ポリキノリン類;ポリアントラゾリン類
等を挙げることができる。
【0057】
また、前記熱硬化性樹脂は、加熱により硬化して溶剤に不溶となり、得られるレジスト下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを防止する作用を有する成分であり、バインダー樹脂として好ましく使用することができる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性アクリル系樹脂類、フェノール樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、アミノ系樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類、エポキシ樹脂類、アルキド樹脂類等を挙げることができる。これらの熱硬化性樹脂のうち、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類等が好ましい。
【0058】
前記バインダー樹脂は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。バインダー樹脂の配合量は、各下層膜形成用組成物の重合体100質量部当たり、20質量部以下であることが好ましく、更に好ましくは10質量部以下である。
【0059】
また、前記放射線吸収剤としては、例えば、油溶性染料、分散染料、塩基性染料、メチン系染料、ピラゾール系染料、イミダゾール系染料、ヒドロキシアゾ系染料等の染料類;ビクシン誘導体、ノルビクシン、スチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体等の蛍光増白剤類;ヒドロキシアゾ系染料、チヌビン234(商品名、チバガイギー社製)、チヌビン1130(商品名、チバガイギー社製)等の紫外線吸収剤類;アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体等の芳香族化合物等を挙げることができる。これらの放射線吸収剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。放射線吸収剤の配合量は、レジスト下層膜形成用組成物の固形分100質量部当たり、100質量部以下であることが好ましく、更に好ましくは50質量部以下である。
【0060】
また、前記界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、ぬれ性、現像性等を改良する作用を有する成分である。このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン−n−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−n−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤や、以下商品名で、KP341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社油脂化学工業(株)製)、エフトップEF101、同EF204、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、同F172、同F173(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC135、同FC93(以上、住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(以上、旭硝子(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。界面活性剤の配合量は、レジスト下層膜形成用組成物の固形分100質量部当たり、15質量部以下であることが好ましく、更に好ましくは10質量部以下である。
【0061】
更に、前記以外の添加剤としては、例えば、保存安定剤、消泡剤、接着助剤等を挙げることができる。
【0062】
レジスト下層膜を用いたレジストパターンの形成方法:
本発明のレジスト下層膜形成用組成物(以下、「下層膜組成物」ともいう。)を用いたレジストパターンの形成方法は、例えば、1)基板上に下層膜組成物を塗布し、得られた塗膜を硬化させてレジスト下層膜を形成する工程(以下、「レジスト下層膜形成工程」ともいう。)、2)該レジスト下層膜上にレジスト組成物溶液を用いてレジストパターンを形成する工程(以下、「レジストパターン形成工程」ともいう。)、及び3)レジスト下層膜をエッチングする工程(以下、「エッチング工程」ともいう。)を有することができる。
以下、各工程について説明する。
【0063】
1)レジスト下層膜形成工程:
基板としては、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆したウエハー等を使用することができる。下層膜組成物の塗布は、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の方法で実施することができる。その後、露光及び/又は加熱することにより塗膜を硬化させる。露光される放射線は、使用される光酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択される。下層膜組成物が光酸発生剤を含有し、かつ露光する場合には、常温でも塗膜を有効に硬化させることが可能である。また加熱温度は、90〜350℃程度であることが好ましく、更に好ましくは200〜300℃程度である。下層膜組成物が熱酸発生剤を含有する場合は、例えば、90〜150℃程度でも塗膜を有効に硬化させることが可能である。本工程で形成されるレジスト下層膜の膜厚は、0.1〜5μmであることが好ましい。
【0064】
2)レジストパターン形成工程
レジストパターン形成工程では、上記レジスト下層膜形成工程にて形成されたレジスト下層膜上にレジスト組成物溶液を用いてパターン形成を行う。このようなパターン形成工程としては、例えば、2−1)レジスト組成物を塗布し、得られた塗膜をプレベークしてレジスト被膜を形成するレジスト被膜形成工程、2−2)該レジスト被膜を、フォトマスクを介して選択的に露光する露光工程、2−3)露光したレジスト被膜を現像する現像レジスト被膜形成工程を有するものを挙げることができる。
2−1)レジスト被膜形成工程:
レジスト下層膜上に、レジスト被膜が所定の膜厚となるようにレジスト組成物溶液を塗布する。その後、プレベークして、塗膜中の溶剤を揮発させて、レジスト被膜を形成する。この際のプレベークの温度は、レジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、30〜200℃程度であることが好ましく、更に好ましくは50〜150℃である。
【0065】
前記レジスト組成物としては、例えば、光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等を挙げることができる。
【0066】
レジスト被膜をレジスト下層膜上に形成させる際に使用されるレジスト組成物溶液は、固形分濃度が、5〜50質量%程度であることが好ましく、レジスト被膜の形成前には、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過される。なお、本工程では、市販のレジスト組成物溶液をそのまま使用することもできる。
【0067】
2−2)露光工程:
露光に用いられる放射線としては、レジスト組成物に使用される光酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択されるが、好ましくは遠紫外線であり、特に、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(波長157nm)、Krエキシマレーザー(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)等が好ましい。
【0068】
2−3)現像工程:
露光後のレジスト被膜を現像し、洗浄し、乾燥することにより、所定のレジストパターンを形成させる。本工程では、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、露光したのち現像前に、ポストベークを行うこともできる。
【0069】
本工程で用いられる現像液は、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択されるが、ポジ型化学増幅型レジスト組成物やアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト組成物の場合の現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチル・エタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液を挙げることができる。また、これらのアルカリ性水溶液には、水溶性有機溶剤、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加することもできる。
【0070】
また。パターン形成工程としては、上記2−2)露光工程を多数経た後に上記2−3)現像工程において複数の現像液を用いて微細パターンを形成する方法(例えば、特開2008‐292975号公報参照)や、上記2−1)〜2−3)の工程を複数回経て微細パターンを形成する方法(例えば、公報参照)を用いることもできる。また、ナノインプリントリソグラフィ法等の上記2−3)現像工程を経ないパターン形成方法(例えば、公報参照)を用いることもできる。
【0071】
3)エッチング工程:
得られたレジストパターンをマスクとし、例えば酸素プラズマ等のガスプラズマを用いて、レジスト下層膜のエッチングを行う。すると、所定の基板加工用のレジストパターンが得られる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、実施例の記載における「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0073】
[重量平均分子量(Mw)]:
下記各合成例にて重量平均分子量(Mw)は、東ソー社製のGPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本)を用い、流量:1.0ml/分、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(検出器:示差屈折計)により測定した。
【0074】
(合成例1)
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、2,7−ジヒドロキシナフタレン100部、ホルマリン30部、p−トルエンスルホン酸1部、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテル150部を仕込み、攪拌しつつ80℃で6時間重合させて反応溶液を得た。反応溶液に1,3−アダマンタンジメタノール43部を加え、80℃で24時間撹拌させた。その後、反応溶液を酢酸n−ブチル100部で希釈し、多量の水/メタノール(質量比:1/2)混合溶媒で有機層を洗浄した。その後、溶媒を留去して重合体(A)を得た。得られた重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1800であった。
【0075】
調製例1(ArF用レジスト組成物溶液の調製):
還流管を装着したセパラブルフラスコに、窒素気流下で、8−メチル−8−t−ブトキシカルボニルメトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(単量体(a)という)29部、8−メチル−8−ヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(単量体(b)という)10部、無水マレイン酸(単量体(c)という)18部、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジアクリレート4部、t−ドデシルメルカプタン1部、アゾビスイソブチロニトリル4部、及び1,2−ジエトキシエタン60部を仕込み、攪拌しつつ70℃で6時間重合した。その後、反応溶液を大量のn−ヘキサン/i−プロピルアルコール(質量比=1/1)混合溶媒中に注いで樹脂を凝固させた。凝固した樹脂を該混合溶媒で数回洗浄したのち、真空乾燥して、上記単量体(a)、(b)及び(c)のそれぞれに由来する、下記(a)〜(c)で示される各繰り返し単位のモル比が64:18:18であり、Mwが27,000の樹脂(収率60%)を得た。なお、この樹脂の分子量は、上記の重合体(A)と同様にして測定した。
【0076】
(実施例1)
合成例1で得られた重合体(A)10部をプロピレングリコールモノメチルエーテル100部に溶解して混合溶液を得た。その後、この混合溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することによりレジスト下層膜形成用組成物を得た。このレジスト下層膜形成用組成物を塗工液として用いて以下の各種評価を行った。
【0077】
(1)ArF用ポジ型レジストパターンの形成:
まず、直径8インチのシリコンウエハ上に、レジスト下層膜形成用組成物をスピンコート法により塗布した。次に、ホットプレート上に置き、180℃で60秒間加熱した。引き続き、350℃で60秒間加熱して、膜厚0.3μmの下層膜を形成した。次に、この下層膜上に3層レジストプロセス用中間層組成物溶液(商品名「NFC SOG080」、JSR社製)をスピンコートした後、ホットプレート上に置き、200℃で60秒間加熱した。引き続き、300℃で60秒間加熱して、膜厚0.05μmの中間層被膜を形成した。次に、この中間層被膜上に、上記調製例1で得たレジスト組成物をスピンコートし、130℃のホットプレート上で90秒間プレベークして、膜厚0.2μmのレジスト被膜を形成した。
【0078】
次に、NIKON社製のArFエキシマレーザー露光装置(レンズ開口数0.78、露光波長193nm)を用い、マスクパターンを介して、最適露光時間露光した。次に、130℃のホットプレート上で90秒間ポストベークした後、2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、レジスト被膜を、25℃で1分間現像した。その後、水洗し、乾燥して、ポジ型レジストパターンが形成されたレジスト被膜を得た。
【0079】
そして、ポジ型レジストパターンが形成されたレジスト被膜を、走査型電子顕微鏡により観察して以下の基準で評価した(表2中、「パターン形状」と記す)。観察されるパターン形状が矩形の場合を良好(表2中、「○」と記す)とし、矩形以外の形状(例えばT−top、スカム等)を不良(表2中、「×」と記す)とした。
【0080】
(2)定在波防止効果:
ポジ型レジストパターンが形成されたレジスト被膜への定在波の影響の有無を、走査型電子顕微鏡により観察して以下の基準で評価した。パターン側面に、下層膜からの反射による定在波が見られなかった場合を良好(表2中、「○」と記す)とし、定在波が見られた場合を不良(表2中、「×」と記す)とした。
【0081】
(3)光学特性:
直径8インチのシリコンウエハ上に、レジスト下層膜形成用組成物をスピンコートした。その後、ホットプレート上にて、300℃で120秒間加熱して、膜厚0.3μmの下層膜を形成した。この下層膜について、J.A.WOOLLAM社製の「分光エリプソメータVUV−VASE」を用いて、波長193nmにおける屈折率(表2中、「屈折率(n)」と示す)と吸光度(表2中、「消衰係数(k)」と示す)を測定した。
【0082】
(4)エッチング耐性:
まず、スピンコート法により、直径8インチのシリコンウエハ上に、レジスト下層膜形成用組成物をスピンコートして、膜厚300nmの下層膜を形成した。その後、この下層膜を、エッチング処理(圧力:0.03Torr、高周波電力:3000W、Ar/CF=40/100sccm、基板温度:20℃)し、エッチング処理後の下層膜の膜厚を測定した。そして、膜厚の減少量と処理時間との関係からエッチングレート(nm/分)を算出し、その値をエッチング耐性の評価とした。
【0083】
なお、なお、屈折率が1.40〜1.60の範囲内であると、ArF露光レジスト工程において、反射防止膜として十分な機能を有するものと判断することができる。また、消衰係数(k)が0.25〜0.40の範囲内であると、ArF露光レジスト工程において、反射防止膜として十分な機能を有するものと判断することができる。
【0084】
本実施例のレジスト下層膜形成用組成物は、ArF用ポジ型レジストパターンの形成の評価が「○」であり、定在波防止効果の評価が「○」であり、屈折率(n)が1.50であり、消衰係数(k)が0.44であり、エッチングレート(nm/分)が0.90であった。
【0085】
(実施例2−6、比較例)
表1に示す化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法にて、実施例2−6及び比較例のレジスト下層膜形成用組成物を得た。得られたレジスト下層膜形成用組成物を塗工液として用い上述した各種評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
表2から明らかなように、実施例1−6のレジスト下層膜形成用組成物は、比較例のレジスト下層膜形成用組成物に比べて、エッチング耐性に優れ、反射率が低減された(即ち、屈折率nが高く、消衰係数kが小さい)レジスト下層膜を形成することができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、リソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造に好適な多層レジストプロセスに用いられる下層膜を形成するための材料として好適である。
【0090】
本発明のレジスト下層膜は、リソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造に好適な多層レジストプロセスに用いられる下層膜として用いることができる。
【0091】
本発明のレジスト下層膜の形成方法は、リソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造に好適な多層レジストプロセスに用いられる下層膜を形成するための方法として採用することができる。
【0092】
本発明のパターン形成方法は、リソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造に好適な多層レジストプロセスにおけるパターン形成方法として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む重合体(A)および溶剤(B)を含むレジスト下層膜形成用組成物。
【化1】

(式中、Rはヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数6〜14のアリール基を示す。nは0〜5の整数である。ただし、nが2〜5のときには複数のRは同一でも異なっていてもよい。Xは、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数1〜20のアルカンジイルオキシ基を示す。mは1〜7の整数である。mが2〜7のときは複数のXは同一でも異なっていてもよい。また、n+mは1〜7の整数である。Rは単結合または炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルカンジイル基である。Rは、炭素数4〜20の環状のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基であり、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、アシル基およびヒドロキシアルキル基のいずれか1以上の基を有していてもよい。)
【請求項2】
前記重合体(A)として下記一般式(1−1)で表される繰り返し単位を含む請求項1に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【化2】

(上記式(1−1)中、R、R、X、mおよびnは式(1)における説明と同義である。Rは、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示し、複数存在する場合は相互に独立である。lは0〜3の整数を示す。)
【請求項3】
前記重合体(A)の重量平均分子量が500〜8,000である請求項1または2に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項4】
さらに酸発生剤(C)を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項5】
さらに架橋剤(D)を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項6】
被加工基板上に請求項1〜5いずれか一項に記載のレジスト下層膜形成用組成物を塗布し、得られた塗膜を硬化させてレジスト下層膜を形成する工程、レジスト下層膜が形成された被加工基板にレジスト組成物溶液を用いてレジストパターンを形成する工程、及びレジスト下層膜と被加工基板をエッチングする工程、を有するパターン形成方法。

【公開番号】特開2011−180425(P2011−180425A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45395(P2010−45395)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】