説明

レジスト保護膜形成用組成物及びこれを用いたレジストパターンの形成方法

【課題】形状安定性が良好であり、高解像度で、かつ、焦点深度にも優れるレジストパターンを形成することが可能なレジスト保護膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】レジスト膜上に設けられ、このレジスト膜を保護するレジスト保護膜を形成するためのレジスト保護膜形成用組成物であって、レジスト膜中の酸の発生を補助する酸発生補助剤を配合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト保護膜形成用組成物に関し、より詳しくは、(a)酸の存在下で酸を発生する酸発生補助剤、及び(b)水及び/又はアルカリ可溶性ポリマーを含有するレジスト保護膜形成用組成物、及びこのレジスト保護膜形成用組成物を用いたレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスにおける微細構造の製造にリソグラフィー法が多用されている。近年、半導体デバイスの高集積化、微小化の進展が著しく、リソグラフィー工程におけるレジストパターン形成においてもより一層の微細化が要求されている。
【0003】
現在、リソグラフィー法により、例えば、最先端の領域では、線幅が90nm程度の微細なレジストパターンの形成が可能となっているが、さらに線幅65nmといったより微細なレジストパターン形成の研究・開発が行われている。
【0004】
このような、より微細化したレジストパターン形成を達成させるためには、一般に、露光装置やレジスト材料による対応策が考えられる。露光装置による対応策としては、Fエキシマレーザー、EUV(極端紫外光)、電子線、X線、軟X線等の光源波長の短波長化や、レンズの開口数(NA)の増大等の方策が挙げられる。
【0005】
しかしながら、光源波長の短波長化は高額な新たな露光装置が必要となる。また、高NA化では、解像度と焦点深度幅がトレード・オフの関係にあるため、解像度を上げても焦点深度幅が低下することがある。
【0006】
最近、このような問題を解決可能とするリソグラフィー技術として、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)プロセスが報告されている(例えば、非特許文献1から3参照)。この方法は、露光時に、露光装置(レンズ)と基板上のレジスト膜との間の露光光路の、少なくとも前記レジスト膜上に所定厚さの液浸媒体を介在させた状態でレジスト膜を露光し、レジストパターンを形成するというものである。この液浸露光プロセスは、従来は空気や窒素等の不活性ガスであった露光光路空間を、これら空間(気体)の屈折率よりも大きく、かつ、レジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率(n)をもつ液浸媒体(例えば、純水やフッ素系不活性液体など)で置換することにより、同じ露光波長の光源を用いても、より短波長の露光光を用いた場合や、高NAレンズを用いた場合と同様に、高解像性が達成されるとともに、焦点深度幅の低下も生じないという利点を有する。
【0007】
このような液浸露光プロセス用のレジスト組成物と既存の露光装置に実装されているレンズを用いて、低コストで、より解像性に優れ、かつ焦点深度にも優れるレジストパターンの形成が実現できるとされ、大変注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、レジスト膜上に特殊溶剤にのみ溶解可能なフッ素含有樹脂を用いたレジスト保護膜を形成し、このレジスト保護膜上に液浸媒体を介在させることによって、液浸媒体によるレジスト膜への変質、レジスト膜からの溶出成分による液浸媒体の変質に伴う屈折率変動を同時に防止することを目的とした技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
さらに最近では、レジストパターン形成工程の簡略化、製造効率向上等の観点から、アルカリに可溶なレジスト保護膜を用いることによって、液浸露光後のアルカリ現像時に、レジスト保護膜の除去と、レジストパターンの形成を同時に行う技術が注目されている(例えば、特許文献3参照)。
【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・アンド・テクノロジー B(Journal of Vacuum Science & Technology B)」、(米国)、1999年、第17巻、6号、3306−3309頁
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・アンド・テクノロジー B(Journal of Vacuum Science & Technology B)」、(米国)、2001年、第19巻、6号、2353−2356頁
【非特許文献3】「プロシーディングス・オブ・エスピーアイイー(Proceedings of SPIE)」、(米国)、2002年、第4691巻、459−465頁
【特許文献1】国際公開第2004/068242号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/074937号パンフレット
【特許文献3】特開2005−264131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示されている液浸露光プロセスを用いた場合、露光時にレジスト膜が直接、液浸媒体に接触するので、レジスト膜は液浸媒体による侵襲を受けて変質したり、レジスト膜に含まれる物質が液浸媒体中へ溶出することにより液浸媒体の屈折率が局所的に変化することにより、リソグラフィー特性に悪影響を与えることが考えられる。
【0011】
さらには、特許文献2及び3に開示されている液浸露光プロセスを用いた場合であっても、レジスト膜とレジスト保護膜の層間において、レジスト膜中の酸発生剤から発生した酸が、レジスト保護膜側へ流出するなどの現象が予想され、得られるレジストパターンがT−トップ形状となったり、レジストパターンの表面荒れや膨潤が生じてしまうことがある。そのため、従来使用されてきたレジスト組成物を使用することができなくなる場合がある。
【0012】
以上の課題に鑑み、本発明では、良好な矩形形状のレジストパターンを形成することが可能なレジスト保護膜形成用組成物、及びこのレジスト保護膜形成用組成物を用いたレジストパターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、レジスト保護膜形成用組成物に、酸発生補助剤を添加することによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には以下の通りである。
【0014】
本発明は、レジスト膜上に設けられるレジスト保護膜形成用組成物であって、(a)酸の存在下で酸を発生する酸発生補助剤、及び(b)水及び/又はアルカリ可溶性ポリマーを含有するレジスト保護膜形成用組成物を提供する。
【0015】
また本発明は、基板にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、このレジスト膜上に、上記のレジスト保護膜形成用組成物を用いてレジスト保護膜を形成する保護膜形成工程と、レジスト保護膜を介してレジスト膜を露光する露光工程と、現像液によりレジスト保護膜を除去して、露光後のレジスト保護膜を現像する現像工程と、を有するレジストパターンの形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レジスト保護膜形成用組成物を上記構成とすることにより、レジスト膜中の酸発生剤から発生した酸が、レジスト保護膜側へ流出することによる、酸の不足を補うことが可能なレジスト保護膜を提供することが可能となる。これによって、高解像性を達成することができると同時に、焦点深度幅の低下も防ぐことができ、より微細なパターン形成に適用することができるとともに、レジストパターンがT−トップ形状となる等のパターン形状劣化、レジストパターンの表面の荒れ、パターンのゆらぎ、糸引き現象等の不良化現象が生じにくく、良好な形状のレジストパターンの形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
〔レジスト保護膜形成用組成物〕
本発明に係るレジスト保護膜形成用組成物は、液浸露光プロセス、ドライ露光プロセスのどちらの露光プロセスの場合でも使用可能である。
【0019】
本発明のレジスト保護膜形成用組成物は、(a)酸の存在下で酸を発生する酸発生補助剤(以下、酸発生補助剤ともいう)、(b)水及び/又はアルカリ可溶性ポリマー(以下、ポリマーともいう)を含有する。以下、各構成成分について説明する。
【0020】
<(a)酸の存在下で酸を発生する酸発生補助剤>
この(a)酸発生補助剤とは、単独で酸を発生する機能はないものの、酸の存在化で酸を発生させるものをいう。これによって、レジスト膜中の酸発生剤から発生した酸が、レジスト保護膜に拡散した場合であっても、この酸によりレジスト保護膜中の酸発生補助剤から発生した酸が、レジスト膜中の酸の不足分を補填することにより、レジスト組成物の解像性の劣化や、焦点深度幅の低下を抑制することが可能となり、より微細なレジストパターン形成が可能となる。
【0021】
このような酸発生補助剤は、分子内にカルボニル基及びスルフォニル基を共に有する脂環式炭化水素化合物であることが好ましい。
【0022】
このような酸発生補助剤は、具体的には、下記の一般式(A−1)及び(A−2)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【化1】

【化2】

[式中、R,R,R,Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1から10の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、Xはスルフォニル基を有する求電子基である。]
【0023】
ここで、「炭素数1から10の直鎖状又は分枝状のアルキル基」とは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基等の直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素基が挙げられる。
【0024】
また、Xは、「スルフォニル基を有する求電子基」である。ここで、「スルフォニル基を有する求電子基」は、−O−SO−Yであることが好ましい。ここで、Yは、炭素数1から5のアルキル基又は炭素数1から10のハロゲン化アルキル基である。中でも、Yがフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0025】
上記一般式(A−1)及び(A−2)で示される化合物としては、具体的には、下記の構造式(A−3)から(A−10)が挙げられる。
【化3】

【0026】
(a)酸発生補助剤の含有量は、後述する(b)水及び/又はアルカリ可溶性ポリマー100質量部に対し、0.1質量部から50質量部であり、1質量から20質量部であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、塗布むらを発生することなく、レジスト膜から溶出した酸に対して効果的に酸を発生させパターン形状を改善することが可能となる。
【0027】
<(b)水及び/又はアルカリ可溶性ポリマー>
(b)水及び/又はアルカリ可溶性ポリマーは、アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂の少なくともどちらか一方を用いることが好ましい。
【0028】
このような(b)水及び/又はアルカリ可溶性ポリマーとして、具体的には、少なくとも下記一般式(B−1)で表されるモノマー単位を構成単位として有するポリマーであることが好ましい。
【化4】

[式中、Rは、炭素数1から6のアルキレン基(但し、アルキレン基の水素原子の一部から全部がフッ素原子に置換されていてもよい)であり、Rは水素原子、炭素数1から6の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基(ただし、アルキル基の水素原子の一部から全部がフッ素原子に置換されていてもよい)であり、Zは炭素数1から2のアルキレン基、又は酸素原子であり、nは0から3である。]
【0029】
特に、Rとして具体的には、メチレン基、n−エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基等の直鎖状のアルキレン基、1−メチルエチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基等の分岐鎖状のアルキレン基等が挙げられ、これらアルキレン基の水素原子の一部から全部がフッ素原子に置換されていてもよい。中でもメチレン基であることがより好ましい。
【0030】
また、Rとして具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロプロピル基、ヘプタデカフルオロオクチル基等が挙げられ、これら置換基の水素原子の一部から全部がフッ素原子に置換されていてもよい。中でも、疎水性向上の点から、これら置換基の水素原子全部がフッ素原子に置換されたペルフルオロアルキル基であることが好ましく、トリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
【0031】
さらに上記一般式(B−1)中、Zは好ましくはメチレン基であり、nは好ましくは0である。
【0032】
また、上記一般式(B−1)で表わされる構成単位と、下記一般式(B−2)、(B−3)、及び(B−4)で表されるモノマー単位の中から選ばれる少なくとも1種を構成単位として有するコポリマーであってもよい。
【化5】

【0033】
上記一般式(B−2)、(B−3)、及び(B−4)中、R、R、及びR11は、炭素数0から6のアルキレン基(但し、アルキレン基の水素原子の一部から全部がフッ素原子に置換されていてもよい)であり、R、R10、及びR12は炭素数1から15の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基(但し、アルキル基の一部がエーテル結合を介しても良く、更にはアルキル基の水素原子の一部から全部が水酸基及びフッ素原子により置換されていても良い)であり、R、Z、及びnは上記一般式(B−1)と同義である。
【0034】
上記一般式(B−2)で表されるモノマー単位は、更に、下記一般式(B−5)で表されるモノマー単位であることが好ましい。
【化6】

【0035】
上記一般式(B−5)中、R13は存在していないか、あるいはメチレン鎖であり、R14はメチル基又はペルフルオロメチル基である。更に、Zはメチレン基であり、nは0であることが好ましい。
【0036】
上記一般式(B−3)で表されるモノマー単位は、さらに、下記一般式(B−6)で表されるモノマー単位であることが好ましい。
【化7】

【0037】
上記一般式(B−6)中、R15は炭素数2から10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基(但し、アルキル基の水素原子の一部から全部が水酸基及びフッ素原子により置換されていても良い)であり、R、Z、及びnは上記一般式(B−1)と同義である。特にR15は、−CHあるいは−C(CH)CHC(CFOHの中から選ばれる置換基であることが好ましい。
【0038】
上記一般式(B−6)で表されるモノマー単位は、更に、下記一般式(B−7)で表されるモノマー単位であることが好ましい。
【化8】

【0039】
上記一般式(B−7)中、R16は、炭素数5から10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基(但し、アルキル基の水素原子の一部から全部が、水酸基及びフッ素原子により置換されていても良い)であり、R、Z、及びnは、上記一般式(B−1)と同義である。特にR16は、−C15、−CFCF(CF)CFCFCFCF(CF、あるいは−CFCF(CF)CFC(CFの中から選ばれる置換基であることが好ましい。
【0040】
上記一般式(B−1)で表されるスルホンアミド基を側鎖に有するモノマー単位を組み入れることにより、特に液浸露光プロセスに適用した場合、保護膜に要求される基本特性を備えた保護膜を形成することが可能となる。保護膜に要求される基本特性とは、液浸媒体への耐性が高く、かつ、下層に設けられるレジスト膜との相溶性が低く、液浸媒体からレジスト膜への成分の溶出の防止できること、また、レジスト膜から液浸露光用液体への成分の溶出の防止でき、保護膜のガス透過を抑止できること、等が挙げられる。更に、上記一般式(B−2)、(B−3)、及び(B−4)で表されるモノマー単位の中から選ばれる少なくとも1種の構成単位を組み入れることにより、撥水性の特性を更に向上させた保護膜とすることができる。
【0041】
また、これらをコポリマーとして用いる場合、前記一般式(B−1)で表されるモノマー単位と、前記一般式(B−2)、(B−3)、及び(B−4)で表されるモノマー単位から選ばれる少なくとも1種との構成比(モル比)が60:40から99:1であることが好ましい。
【0042】
さらに、(b)水及び/又はアルカリ可溶性ポリマーの別の態様としては、(B´−1)フッ素原子若しくはフッ素化アルキル基、及び(B´−2)アルコール性水酸基若しくはオキシアルキル基を共に有する脂肪族環式基を含む非水溶性、かつ、アルカリ可溶性の構成単位を含んでいる重合体の概念の中に含まれる構成単位を有するポリマーを用いることができる。
【0043】
すなわち、構成単位において、(B´−1)フッ素原子又はフッ素化アルキル基、及び(B´−2)アルコール性水酸基又はアルキルオキシ基は脂肪族環式上にそれぞれ結合し、環式基が主鎖を構成しているものである。この(B´−1)フッ素原子又はフッ素化アルキル基としては、フッ素原子又は低級アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基などが挙げられるが、工業的には、フッ素原子やトリフルオロメチル基が好ましい。また、(B´−2)アルコール性水酸基又はアルキルオキシ基としては、単にヒドロキシル基であり、アルキルオキシ基とは鎖状、分岐状、又は環状の炭素数1から15のアルキルオキシアルキル基、又はアルキルオキシ基である。
【0044】
このような構成単位を有するポリマーは、水酸基とフッ素原子を有するジエン化合物の環化重合により形成される。ジエン化合物としては、透明性、耐ドライエッチング性に優れる5員環や6員環を有する重合体を形成しやすいヘプタジエンであることが好ましく、さらには、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン(CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH)の環化重合により形成される重合体であることが工業上最も好ましい。
【0045】
以下に、前記ポリマーを表す一般式(B´−3)を示す。
【化9】

【0046】
一般式(B´−3)中、R17は水素原子又は鎖状、分岐状、或いは環状の炭素数1から15のアルキルオキシ基、又はアルキルオキシアルキル基であり、l、mはそれぞれ10モル%から90モル%である。
【0047】
本発明において、上述した(b)ポリマーは、さらに他の任意のモノマー単位と共重合して得た2元系以上のポリマーとして用いてもよい。
【0048】
このような(b)ポリマーは、公知の方法によって、合成することができる。また、このポリマーのGPCによるポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)は、特に限定するものではないが、2000から80000であり、3000から50000であることがより好ましい。
【0049】
さらに、(b)ポリマーの配合量は、保護膜形成用組成物の全体量に対して0.1質量%から20質量%程度とすることが好ましく、0.3質量%から10質量%とすることがより好ましい。
【0050】
<(c)有機溶剤>
この(c)有機溶剤は、上記の(a)酸発生剤及び(b)ポリマーを溶解することが可能であれば、特に限定されるものではない。
【0051】
このような有機溶剤としては、炭素数1から10のアルコール系溶剤、炭素数1から10の部分あるいは全部分フッ素化アルコール溶剤、炭素数が4から15の部分あるいは全部分フッ素化アルキルエーテル溶剤、及び炭素数が4から15の部分あるいは全部分フッ素化アルキルエステル溶剤を用いることができる。
【0052】
炭素数1から10のアルコール系溶剤としては、具体的には、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、及び2−オクタノール等のアルコール系溶剤であることが好ましい。
【0053】
炭素数1から10の部分あるいは全部分フッ素化アルコール溶剤としては、具体的には、CCHCHOH及び/又はCCHOHを用いることが好ましい。
【0054】
炭素数が4から15の部分あるいは全部分フッ素化アルキルエーテル溶剤としては、R18OR18’(R18、R18’はそれぞれアルキル基を示し、両アルキル基の合計炭素数が3から15であり、その水素原子の一部もしくは全部がフッ素原子により置換されている)である。このようなフルオロアルキルエーテルの好適例として、下記一般式(C−1)に示す化合物が挙げられる。
【化10】

【0055】
また、炭素数が4から15の部分あるいは全部分フッ素化アルキルエステル溶剤は、R18COOR18’(R18、R18’は、上記一般式(C−1)における定義と同義)である。このようなフルオロアルキルエステルの好適例として、下記構造式(C−2)、(C−3)に示す化合物等が挙げられる。
【化11】

【化12】

【0056】
<(d)架橋剤>
本発明に係るレジスト保護膜形成用組成物は、(d)架橋剤を配合していてもよい。この架橋剤としては、少なくとも2個の水素原子がヒドロキシアルキル基及び/又はアルコキシアルキル基で置換された、アミノ基及び/又はイミノ基を有する含窒素化合物を用いることができる。これら含窒素化合物としては、例えばアミノ基の水素原子がメチロール基又はアルコシキメチル基或いはその両方で置換された、メラミン系誘導体、尿素系誘導体、グアナミン系誘導体、アセトグアナミン系誘導体、ベンゾグアナミン系誘導体、スクシニルアミド系誘導体や、イミノ基の水素原子が置換されたグリコールウリル系誘導体、エチレン尿素系誘導体等が挙げられる。
【0057】
これらの含窒素化合物は、例えば、メラミン系誘導体、尿素系誘導体、グアナミン系誘導体、アセトグアナミン系誘導体、ベンゾグアナミン系誘導体、スクシニルアミド系誘導体、グリコールウリル系誘導体、エチレン尿素系誘導体等を、沸騰水中においてホルマリンと反応させてメチロール化することにより、あるいはこれにさらに低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等と反応させてアルコキシル化することにより得られる。中でも、好適な架橋剤としては、テトラブトキシメチル化グリコールウリル等が挙げられる。
【0058】
さらに架橋剤として、少なくとも1種の水酸基及び/又はアルキルオキシ基で置換された炭化水素化合物とモノヒドロキシモノカルボン酸化合物との縮合反応物も好適に用いることができる。上記モノヒドロキシモノカルボン酸としては、水酸基とカルボキシル基が、同一の炭素原子、又は隣接する二つの炭素原子のそれぞれに結合しているものが好ましい。
【0059】
このような架橋剤を配合する場合、その配合量は、(b)ポリマーの配合量に対して0.5質量%から10質量%程度とすることが好ましい。
【0060】
本発明に係る保護膜形成用組成物は、更に、所望により任意の界面活性剤を配合してもよい。この界面活性剤としては「XR−104」(商品名:大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられるが、これに限定されるものでない。このような界面活性剤を配合することにより、塗膜性や溶出物の抑制能をより一層向上させることができる。
【0061】
このような界面活性剤を配合する場合、その配合量は、(b)ポリマーの配合量に対して0.001質量%から10質量%程度とすることが好ましい。
【0062】
レジスト組成物は、特に限定されるものでなく、ネガ型及びポジ型レジストを含めてアルカリ水溶液で現像可能なレジストを任意に使用できる。このようなレジストとしては、(i)ナフトキノンジアジド化合物とノボラック樹脂を含有するポジ型レジスト、(ii)露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する化合物、及びアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト、(iii)露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト、及び(iv)光により酸を発生する化合物、架橋剤及びアルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型レジスト等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
<レジストパターンの形成方法>
次に、本発明に係るレジスト保護膜形成用組成物を用いて、レジスト保護膜を形成し、このレジスト保護膜を介してレジスト膜を露光して、パターンを形成する方法を説明する。
【0064】
本発明に係るレジストパターンの露光方法は、基板にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、このレジスト膜上に、レジスト保護膜形成用組成物を用いてレジスト保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記レジスト保護膜を介して前記レジスト膜を露光する露光工程と、現像液により前記レジスト保護膜を除去して、露光後の前記レジスト保護膜を現像する現像工程と、を有する。このレジストパターンの露光方法は、ドライ露光プロセスを採用しても液浸露光プロセスを採用してもよい。
【0065】
[ドライ露光プロセスの場合]
「レジスト膜形成工程」とは、基板にレジスト膜を形成する工程をいう。具体的には、シリコンウェハ等の基板に、公知のレジスト組成物を、スピンナー等の公知の方法を用いて塗布した後、プレベーク(PAB処理)を行ってレジスト膜を形成する。なお、基板上に有機系又は無機系の反射防止膜(下層反射防止膜)を1層設けてから、レジスト膜を形成してもよい。
【0066】
レジスト組成物は、特に限定されるものでなく、ネガ型及びポジ型レジストを含めてアルカリ水溶液で現像可能なレジスト組成物を任意に使用できる。このようなレジスト組成物としては、(i)ナフトキノンジアジド化合物とノボラック樹脂を含有するポジ型レジスト組成物、(ii)露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する化合物、及びアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト組成物、(iii)露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト組成物、及び(iv)光により酸を発生する化合物、架橋剤及びアルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型レジスト組成物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
「保護膜形成工程」とは、レジスト保護膜を形成する工程をいう。具体的には、上記のレジスト膜形成工程により、形成されたレジスト膜の表面に、所定の濃度で酸発生補助剤及びマトリックスポリマーを溶解させたレジスト保護膜形成用組成物を、レジスト膜形成工程と同様の方法で均一に塗布して、ベークして硬化させることによりレジスト保護膜を形成する工程をいう。
【0068】
「露光工程」とは、保護膜形成工程により形成されたレジスト保護膜の上から、マスクパターンを介して所定の波長で露光を行う工程をいう。このとき、露光光は、レジスト保護膜を通過してレジスト膜に到達することになる。また、外気を遮断してk値を安定化させるために、窒素雰囲気下のもとで露光することが好ましい。
【0069】
この場合の露光に用いる波長は、特に限定されるものではなく、レジスト膜の特性によって適宜選択される。例えば、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、極紫外線(EUV)、真空紫外線(VUV)、電子線、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。本実施形態の場合、露光波長は193nmであることが特に好ましい。
【0070】
なお、露光波長に対するレジスト保護膜の屈折率は、その露光波長における水の屈折率よりも高いことが好ましい。
【0071】
また、露光後のレジスト膜は、加熱処理(PEB)を行うことが好ましい。
【0072】
「現像工程」とは、露光後のレジスト膜を、アルカリ性水溶液からなるアルカリ現像液を用いて現像処理を行う工程をいう。この現像液はアルカリ性であるため、レジスト保護膜がレジスト膜の表面に形成されている場合には、まずレジスト保護膜が溶解され、続いてレジスト膜の可溶部分が溶解される。なお、現像後にポストベークを行ってもよい。
【0073】
[液浸露光プロセスの場合]
液浸露光プロセスの場合、「保護膜形成工程」まではドライ露光プロセスの場合と同様の手順で行う。そして、「露光工程」において、レジスト保護膜が形成された基板上に液浸媒体を配置し、この状態の基板のレジスト膜に対して、マスクパターンを介して選択的に露光を行う。したがって、このとき露光光は液浸媒体と保護膜とを通過してレジスト膜に到達することになる。
【0074】
このとき、レジスト膜は保護膜によって、液浸媒体から遮断されており、液浸媒体の侵襲を受けて膨潤等の変質を被ることや、逆に液浸媒体中に成分を溶出させて液浸媒体自体の屈折率等の光学的特性を変質させることが防止される。
【0075】
露光光は、ドライ露光プロセスと同様に、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、VUV(真空紫外線)等の放射線を用いて行うことができる。
【0076】
ここで、液浸媒体は、空気の屈折率よりも大きく、かつ、使用されるレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する液体であれば、特に限定されるものでない。このような液浸媒体としては、水(純水、脱イオン水)、フッ素系不活性液体等が挙げられるが、近い将来に開発が見込まれる高屈折率特性を有する液浸露光用液体も使用可能である。フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl、COCH、COC、C等のフッ素系化合物を主成分とする液体が挙げられる。これらのうち、コスト、安全性、環境問題及び汎用性の観点からは、水(純水、脱イオン水)を用いることが好ましいが、157nmの波長の露光光(例えばFエキシマレーザーなど)を用いた場合は、露光光の吸収が少ないという観点から、フッ素系溶剤を用いることが好ましい。
【0077】
液浸状態での露光工程が完了したら、基板を液浸露光用液体から取り出し、基板から液体を除去する。なお、露光したレジスト膜上に保護膜を積層したまま、レジスト膜に対してPEB(露光後加熱)を行うことが好ましい。
【0078】
次いで、露光後のレジスト膜及びレジスト保護膜を、ドライ露光プロセスの場合と同様に、加熱し、アルカリ現像液を用いて現像処理を行う。アルカリ現像液は慣用のものを任意に用いることができる。このアルカリ現像処理により、保護膜はホトレジスト膜の可溶部分と同時に溶解除去される。なお、現像処理に続いてポストベークを行ってもよい。
【0079】
続いて、純水等を用いてリンスを行う。この水リンスは、例えば、基板を回転させながら基板表面に水を滴下又は噴霧して、基板上の現像液、及びこの現像液によって溶解した保護膜成分とレジスト組成物を洗い流す。そして、乾燥を行うことにより、レジスト膜がマスクパターンに応じた形状にパターニングされた、レジストパターンが得られる。このように本発明では、現像工程により保護膜の除去とレジスト膜の現像とが同時に実現される。なお、本発明の保護膜形成用組成物により形成された保護膜は、撥水性が高められているので、前記露光完了後の液浸媒体の離れがよく、液浸媒体の付着量が少なく、いわゆる液浸媒体漏れも少なくなる。
【0080】
このようにしてレジストパターンを形成することにより、微細な線幅のレジストパターン、特にピッチが小さいライン・アンド・スペースパターンを良好な解像度により製造することができる。なお、ここで、ライン・アンド・スペースパターンにおけるピッチとは、パターンの線幅方向における、レジストパターン幅とスペース幅の合計の距離をいう。
【0081】
本発明により、現在市販されているレジスト組成物(特にはArF用ホトレジスト)に対し広く適用可能で汎用性に優れ、また、アルコール溶剤等への溶解性に優れるとともに、保護膜として要求される基本特性である、液浸媒体への耐性が高く、下層に設けられるレジスト膜との相溶性が低く、液浸媒体からレジスト膜への成分の溶出の防止でき、レジスト膜から液浸媒体への成分の溶出の防止でき、保護膜のガス透過を抑止でき、さらには撥水性の特性を向上させた保護膜形成用組成物が得られた。
【実施例】
【0082】
まず、下記の構造式(B−8)で示される構造を有するポリマー100質量部と、構造式(A−7)で示される酸発生補助剤を前記ポリマーに対して10質量部を、イソブタノールに溶解させ、固形分濃度4質量%のレジスト保護膜形成用組成物1を調整した。
【化13】

【化14】

【0083】
また、酸発生補助剤を添加せず、単に構造式(B−8)で表わされるポリマーの4質量%イソブタノール溶液からなるレジスト保護膜形成用組成物2を調製した。
【0084】
基板に化学増幅型ポジ型レジスト組成物であるTARF−P6111(東京応化工業株式会社製)を塗布して、115℃にて60秒間加熱し、膜厚150nmのレジスト膜を形成し、さらにその上層に前記レジスト保護膜形成用組成物1,2をそれぞれ塗布して、90℃にて60秒間加熱し、膜厚140nmのレジスト保護膜を形成した。
【0085】
これらの基板に対して、露光機NSR−S302A(ニコン社製)を用いて露光し、115℃にて60秒間露光後加熱を行い、続いて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により30秒間現像処理し、リンス処理を行うことにより、それぞれレジストパターンを形成した。そのレジストパターンをSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察した結果、酸発生補助剤を添加していない保護膜を用いて形成したレジストパターンの形状は、所謂T−トップ形状であったのに対し、酸発生補助剤を添加した保護膜を用いて形成したレジストパターンの形状は、T−トップ形状とならずに良好な矩形形状であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト膜上に設けられるレジスト保護膜形成用組成物であって、
(a)酸の存在下で酸を発生する酸発生補助剤、及び(b)水及び/又はアルカリ可溶性ポリマーを含有するレジスト保護膜形成用組成物。
【請求項2】
前記(a)酸発生補助剤は、分子内にカルボニル基及びスルフォニル基を共に有する脂環式炭化水素化合物である請求項1に記載のレジスト保護膜形成用組成物。
【請求項3】
前記(a)酸発生補助剤は、下記の一般式(A−1)及び(A−2)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のレジスト保護膜形成用組成物。
【化1】

【化2】

[式中、R,R,R,Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1から10の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、Xはスルフォニル基を有する求電子基である。]
【請求項4】
前記Xは、炭素数1から9のフルオロアルキル基を有するオキシスルフォニル基である請求項3に記載のレジスト保護膜形成用組成物。
【請求項5】
さらに(c)有機溶剤を含有する請求項1から4のいずれか1項に記載のレジスト保護膜形成用組成物。
【請求項6】
前記(a)酸発生補助剤の含有量が、前記(b)水及び/又はアルカリ可溶性ポリマー100質量部に対し、0.1質量部から50質量部である請求項1から5のいずれか1項に記載のレジスト保護膜形成用組成物。
【請求項7】
液浸露光プロセスにおいてレジスト膜上に設けられるレジスト保護膜形成用組成物である請求項1から6のいずれか1項に記載のレジスト保護膜形成用組成物。
【請求項8】
基板にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
このレジスト膜上に、請求項1から7のいずれか1項に記載のレジスト保護膜形成用組成物を用いてレジスト保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記レジスト保護膜を介して前記レジスト膜を露光する露光工程と、
現像液により前記レジスト保護膜を除去して、露光後の前記レジスト保護膜を現像する現像工程と、を有するレジストパターンの形成方法。
【請求項9】
前記露光工程は、前記レジスト保護膜上に液浸媒体を配置し、この液浸媒体を介して選択的に前記レジスト膜を露光する工程である請求項8に記載のレジストパターンの形成方法。

【公開番号】特開2007−240898(P2007−240898A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63541(P2006−63541)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】