説明

レジスト用樹脂組成物

【課題】
ハロゲンフリーで、それ自体が自己消火性を有する永久保護皮膜用のレジスト用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
エポキシアクリレートとシアン酸エステル化合物との反応生成物に、多塩基酸無水物を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(a)、エポキシ樹脂(b)、エチレン性不飽和モノマー(c)、光重合開始剤(d)を必須成分とする樹脂組成物の樹脂成分 100重量部に対し、水酸化アルミニウム(e) 100〜200重量部、モリブデン化合物(f) 0.1〜20重量部、ホウ酸亜鉛(g) 0.1〜30重量部を配合するレジスト用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の永久保護皮膜に使用するレジスト用樹脂組成物に関するものである。本発明のレジスト用樹脂組成物を回路基板に塗布し、乾燥、硬化して得られるプリント配線板は、主として高密度のプリント配線板として、半導体プラスチックパッケージ用等に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
現在、プリント配線板の永久保護皮膜として使用されるレジスト用樹脂組成物としては、現像タイプの光選択熱硬化型樹脂組成物が主流となっている。これらのレジスト用樹脂組成物としては、カルボキシル基含有アクリル系樹脂にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させて得られる不飽和樹脂にエポキシ樹脂を配合して得られる樹脂組成物(例えば特許文献1参照)、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和カルボン酸との反応物に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる化合物に希釈剤を添加した樹脂組成物(例えば特許文献2参照)、(メタ)アクリル酸とラクトン変性ヒドロキシル(メタ)アクリレートを必須成分とするビニル共重合体のカルボキシル基の一部に、脂環式エポキシ基含有(メタ)アクリレートを反応して得られる樹脂にクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を配合した樹脂組成物(例えば特許文献3参照)等が知られている。これらのレジスト用樹脂組成物は、それ自体が自己消火性(耐燃性)を有していないことから、レジスト用樹脂組成物自体に自己消火性を付与する手法が検討されているが、プリント配線板に使用される臭素化エポキシ樹脂をレジスト用樹脂組成物に配合すると、現像性が低下する問題があった。これを解決するために、レジスト用樹脂組成物に水酸化アルミニウムを大量に配合する手法が提案(例えば特許文献4参照)されているが、耐熱性に不安があることや、ニッケルメッキや金メッキ処理での耐薬品性に問題があり、高密度プリント配線板の永久保護皮膜用材料としては十分に満足できるものではなかった。
【0003】
【特許文献1】特開平1-139619号公報
【特許文献2】特開昭61-243869号公報
【特許文献3】特開平8-41150号公報
【特許文献4】特開2002-156749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ハロゲンフリーで、それ自体が自己消火性を有する永久保護皮膜用のレジスト用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を達成するため鋭意研究を重ねた結果、エポキシアクリレートとシアン酸エステル化合物と多塩基酸無水物から誘導される不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂等を使用したレジスト用樹脂組成物に、特定の無機難燃剤を組み合わせることで、耐燃性、耐熱性、耐マイグレーション性等に優れたレジスト用樹脂組成物が得られることを見出し本発明に到達した。即ち、本発明は、エポキシアクリレートとシアン酸エステル化合物との反応生成物に、多塩基酸無水物を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(a)、エポキシ樹脂(b)、エチレン性不飽和モノマー(c)、光重合開始剤(d)を必須成分とする樹脂組成物の樹脂成分 100重量部に対し、水酸化アルミニウム(e) 100〜200重量部、モリブデン化合物(f) 0.1〜20重量部、ホウ酸亜鉛(g) 0.1〜30重量部を必須成分とするレジスト用樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明になるレジスト用樹脂組成物は、ハロゲンフリーで、それ自体が自己消火性(UL94 V-0)を有するものであり、これをハロゲンフリー系材料の回路基板に塗布、硬化させて得られるプリント配線板も自己消火性(UL94 V-0)を有するものである。また樹脂組成物の特性として耐熱性や耐マイグレーション性等に優れていることから、本レジスト用樹脂組成物はプリント配線板の永久保護皮膜用として非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のレジスト用樹脂組成物に使用する不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(a)とは、エポキシアクリレートとシアン酸エステル化合物との反応生成物に、多塩基酸無水物を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(a)であり、その使用量は、レジスト用樹脂組成物の樹脂成分において、20〜90重量%、好ましくは 25〜70重量%である。
【0008】
本発明で使用される不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(a)の生成反応に使用するエポキシアクリレートとは、エポキシ樹脂とアクリル酸との反応物である。具体的には、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールF型エポキシアクリレート、ビフェノール・エポキシアクリレート、テトラメチルビフェノール・エポキシアクリレート、ヘキサメチルビフェノール・エポキシアクリレート、キシレンノボラック・エポキシアクリレート等が例示され、1種或いは2種以上が適宜組み合わせて使用される。
【0009】
本発明で使用される不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(a)の生成反応に使用するシアン酸エステル化合物とは、分子内に2個以上のシアナト基を有する化合物である。具体的は、1,3-又は1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-、1,4-、1,6-、1,8-、2,6-又は2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4,4-ジシアナトビフェニル、ビス(4-ジシアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモー4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、トリス(4-シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4-シアナトフェニル)ホスフェート、およびノボラックとハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などが例示され、1種或いは2種以上が適宜組み合わせて使用される。これらのほかに特公昭41-1928、同43-18468、同44-4791、同45-11712、同46-41112、同47-26853及び特開昭51-63149等に記載のシアン酸エステル化合物類も用い得る。また、これらシアン酸エステル化合物のシアナト基の三量化によって形成されるトリアジン環を有する分子量 400〜6,000 のプレポリマーが使用される。このプレポリマーは、上記のシアン酸エステルモノマーを、例えば鉱酸、ルイス酸等の酸類;ナトリウムアルコラート等、第三級アミン類等の塩基;炭酸ナトリウム等の塩類等を触媒として重合させることにより得られる。このプレポリマー中には一部未反応のモノマーも含まれており、モノマーとプレポリマーとの混合物の形態をしており、このような原料は本発明の用途に好適に使用され、一般には可溶な有機溶剤に溶解させて使用する。
【0010】
本発明で使用される不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(a)の生成反応に使用する多塩基酸無水物としては、1分子内に酸無水物基を有する公知の多塩基酸無水物が使用される。具体的には、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ナフタレンー1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸等が例示され、1種或いは2種以上が適宜組み合わせて使用される。
【0011】
本発明で使用される不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(a)の生成反応において、エポキシアクリレートとシアン酸エステル化合物を反応する条件は特に限定されないが、一般的には、エポキシアクリレート 100重量部に対し、シアン酸エステル化合物を 5〜40重量部、好ましくは 10〜30重量部用いて反応させる。反応温度は、50〜100℃、反応時間 5〜100時間であり、反応時の粘度調整のために溶剤を使用することができる。使用する溶剤は特に限定されないが、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアセテート類;ソルベントナフサ、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が、単独或いは2種以上組み合わせて使用する。次に、この反応生成物に多塩基酸無水物を加えカルボン酸変性を行う。変性量は、前述のエポキシアクリレート 100重量部にシアン酸エステル化合物 5〜40重量部反応させたものに、多塩基酸無水物を 10〜90重量部、好ましくは 20〜80重量部反応させる。これにより得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(a)の酸価は、40〜200mgKOH/g が好ましく、特に 50〜160mgKOH/g がより好ましい。この場合も、粘度調整のために溶剤を使用することが可能である。具体的には、上記溶剤、更にはプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエステル類が使用される。
【0012】
本発明で使用されるレジスト用樹脂組成物に使用するエポキシ樹脂(b)としては、公知のものが使用できる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂;ブタジエン、ペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンチルエーテル等の二重結合をエポキシ化したポリエポキシ化合物類;ポリオール、水酸基含有シリコン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジル化合物類等が挙げられ、1種或いは2種類以上が適宜組み合わせて使用される。エポキシ樹脂(b)の使用量は、レジスト用樹脂組成物の樹脂成分において、5〜35重量%、好ましくは10〜30重量%である。
【0013】
本発明で使用されるレジスト用樹脂組成物に使用するエチレン性不飽和モノマー(c)としては、公知のものが使用できる。具体的には、まず、2価以上のアルコール類の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられ、このアルコール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、シクロヘプタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のポリエチレングリコール類;ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のポリプロピレングリコール類;キシレンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ビフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリットール、ジペンタエリスリットール、トリペンタエリスリットール、ソルビトール、グルコース、ブタントリオール、1,2,6-トリヒドロキシヘキサン、1,2,4-ベンゼントリオール等が挙げられる。また、アリル化合物、例えばアジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等のポリアリルエステル類、ポリスルホン酸のポリアリルエステル類、ジアリルエーテル、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。更に、ポリビニル化合物、例えばジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、ジビニルフタレート、ジビニルテレフタレート等が挙げられる。これらの化合物は、1種或いは2種以上が適宜組み合わせて使用される。エチレン性不飽和モノマー(c)の使用量は、レジスト用樹脂組成物の樹脂成分において、1〜30重量%、好ましくは 2〜20重量%である。
【0014】
本発明で使用されるレジスト用樹脂組成物には、光で重合させるための光重合開始剤(d)が使用される。具体的には、ベンジル、ジアセチル等のα-ジケトン類;ベンゾイル等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、1,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、1,2'-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、p-メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類;アントラキノン、1,4-ナフトキノン等のキノン類;ジ-t-ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が例示され、1種或いは2種以上が適宜組み合わせて使用される。光重合開始剤(d)の使用量は、レジスト用樹脂組成物の樹脂成分において、0.1〜20重量%、好ましくは 0.2〜10重量%である。
【0015】
本発明で使用される水酸化アルミニウム(e)は、公知のものが使用できる。これは結晶水を3個有しているが、加熱して結晶水を平均値で2〜2.5程度に減少させたものも使用可能である。平均粒子径は、2mμm以下、好適には 1μm以下が使用される。水酸化アルミニウム(e)の使用量は、レジスト用樹脂組成物の樹脂成分 100重量部に対し、100〜200重量部、好適には120〜180重量部使用する。
【0016】
本発明で使用されるモリブデン化合物(f)とは、モリブデンを含む化合物であり、公知のものが使用できる。具体的には、酸化モリブデン、硼化モリブデン、珪化モリブデン、硫化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸アンモニウム等が例示される。これらはそのまま粉体でレジスト用樹脂組成物中に分散することも可能であるが、好適にはモリブデン化合物を、無機充填剤、例えばタルク、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等の平均粒子径 5μm以下のものに担持したものが使用される。無機充填剤に担持する製造方法は、例えば米国特許第 3,969,127号に記載されている方法等が使用される。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。モリブデン化合物(f)の使用量はレジスト用樹脂組成物の樹脂成分 100重量部に対し、モリブデン化合物として 0.1〜20重量部、好適には 0.5〜10重量部使用する。
【0017】
本発明で使用されるホウ酸亜鉛(g)の使用量は、レジスト用樹脂組成物の樹脂成分100重量部に対し、0.1〜30重量部、好適には0.5〜20重量部使用する。
【0018】
本発明のレジスト用樹脂組成物には、通常、色を付けるために、顔料を添加するが、顔料としては、ハロゲン含有量 1重量%以下である顔料が、好適に使用される。具体的には、青色顔料としては、銅フタロシアニンブルー(C.I. Pigment Blue 15:3)、ニッケルフタロシアニンブルー、鉄フタロシアニンブルー、アルカリブルー(C.I. Pigment Blue1,2,3,10,14,18,19,24,56,57,61)等が、黄色顔料としては、ベンズイミドロンイエロー(C.I. Pigment 120,151,175,180,181,194)、アントラキノンイエロー(C.I. PigmenYellow 123,147)、クロモフタルイエロー(C.I.Pigment Yellow 139)等が例示され、緑色に着色する場合、青色顔料と黄色顔料を併用する。一般に緑色顔料として使用されるフタロシアニングリーン(C.I.Pigment Green 7)は、分子内に50重量%程度の塩素を含有しており、本発明の目的には合致しない。
【0019】
本発明のレジスト用樹脂組成物には、組成物本来の特性が損なわれない範囲で、所望により種々の添加物を配合することができる。これらの添加物としては、例えば、多官能性マレイミド類、ポリブタジエン、マレイン化ブタジエン、ブタジエンーアクリロニトリル共重合体、ブタジエンースチレン共重合体、アクリルゴム、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、不飽和基含有PPE樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリウレタン等が挙げられる。また、その他、公知の有機の充填剤、無機の充填剤、カップリング剤、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光増感剤、チキソ性付与剤等の各種添加剤が、所望に応じて適宜組み合わせて使用される。
【0020】
本発明のレジスト用樹脂組成物は、各成分を組み合わせ、均質に分散させた無溶剤タイプとするか、樹脂組成物を溶剤に溶解或いは懸濁させ無機充填剤を均質に分散させた溶液タイプで使用される。この無溶剤タイプ又は溶液タイプのレジスト用樹脂組成物を、回路基板等の表面に塗布し、必要に応じて前乾燥を行って溶剤を除去してから、紫外線等の活性エネルギー線を照射して必要部分を選択的に光硬化させてから、未硬化部分を希アルカリ水溶液等で現像除去した後、加熱して後硬化を行う。その後、必要により電解、無電解のニッケルメッキ、金メッキを行い、プリント配線板とする。
【0021】
本発明のレジスト用樹脂組成物の回路基板への塗布方法としては、スクリーン印刷法、ロールコーター法、或いはカーテンコーター法等の公知の方法で行うことができる。塗布後、必要により加熱して前乾燥を行って溶剤を除去する。乾燥には熱風乾燥炉等の公知の装置が使用できる。乾燥温度は 30〜100℃、好ましくは 50〜80℃である。温度が低いと乾燥時間が長くなりすぎ作業効率が悪い。また温度が高いと樹脂の反応が進み、現像液に溶解しにくくなる。乾燥時間は 10分〜2時間、好ましくは 15〜60分である。
【0022】
本発明のレジスト用樹脂組成物を塗布する回路基板は、レジスト用樹脂組成物を塗布する前に、回路表面を研磨するだけでも使用可能であるが、好適には予め銅キレート剤等が配合された防錆処理剤で処理を行う。処理を行うことにより、回路面とレジスト用樹脂組成物との密着性が向上し、プレッシャークッカー処理後の絶縁性劣化やレジスト剥離が抑制される。これらの銅キレート剤は、例えば、ポリベンズイミダゾール、クロメート処理等の公知のものが使用され、1種或いは2種以上が組み合わせて使用される。防錆処理剤としては公知のものが使用され、例えば<株>メック社製のSL8300E 等が好適に使用される。
【0023】
レジスト用樹脂組成物を回路基板の上に塗布した後、無溶剤タイプの場合はそのまま、溶液タイプの場合、溶剤を乾燥・除去した後、塗膜上にフィルムを配置し、活性エネルギー線を照射して必要な部分を光硬化させる。光の照射されない部分は現像液で溶解除去し、その後熱で後硬化してから銅導体表面に付着した防錆処理、キレート剤等を公知の方法で除去し、ニッケルメッキ、金メッキを行い、プリント配線板とする。
【0024】
本発明のレジスト用樹脂組成物を光硬化するための活性エネルギー線の照射光原としては、低圧、中圧、高圧、超高圧の水銀灯、キセノンランプ或いはメタルハライドランプ等が用いられる。露光量は特に制限はないが、一般には 100〜3,000mJ/cm2、好ましくは 300〜2,000mJ/cm2 である。その他、電子線、レーザー等も使用できる。
【0025】
レジスト用樹脂組成物の塗膜の現像は、スプレー現像法、現像液に回路基板を浸せきして振動させるディップ現像法等、公知の方法で実施する。現像液の温度は 5〜50℃、好ましくは 25〜40℃である。温度が低いと現像時間がかかる、現像性が悪い等の問題が生じる。温度が高いと光照射した硬化部分が溶解する場合がある。現像液としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム或いはアンモニウムハイドロオキサイドの水溶液等、公知の希アルカリ水溶液が使用できる。また、水に水溶性有機溶剤を添加した水溶液や、これにアルカリ剤を加えた水溶液も使用できる。溶液中のアルカリ剤の量は 0.1〜5重量%が好適である。
【0026】
水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、ジエチレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、γ-ブチロラクトン、メチルセロソルブ等、公知のものが使用できる。これらの溶剤は水溶液全体の 10〜80重量%、好ましくは 15〜50重量%の範囲で使用される。更に、現像性を高めるために水酸化ナトリウム、珪酸ナトリウム、モノメタノールアミン等のアルカリ剤を添加することもできる。本発明のレジスト用樹脂組成物は、現像後に加熱硬化させる。硬化温度は 100〜250℃、好ましくは 120〜180℃である。
【実施例】
【0027】
以下に本発明を具体的に説明する。『部』は重量部を表す。
(合成例1)<シアン酸エステルプレポリマーの合成>
2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン 1,000部を、150℃溶融させ、撹拌しながら4時間反応させ、重量平均分子量 1,900、融点 66℃のプレポリマー(X-1)を得た。これをメチルエチルケトンに溶解し、シアン酸エステル溶液とした。
【0028】
(合成例2)<不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂の合成>
温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート及び窒素吹込管を取りつけたフラスコに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 1,000部を仕込み、100℃に加熱した中に、ベンゾイルパーオキサイド 14部、メチルメタクリレート 420部、ヒドロキシエチルメタクリレート 70部、メタクリル酸 210部の混合物を2時間かけて滴下し、8時間保持し、酸価 200mgKOH/gのアクリル樹脂を得た。次いで、この樹脂にグリシジルメタクリレート 210部、トリエチルアミン 3.5部、ハイドロキノン 0.07部を加え、100℃で5時間反応させ、酸価 89mgKOH/g の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A-1)溶液を得た。
【0029】
(合成例3)
ビスフェノールA型エポキシアクリレート(SP1509、昭和高分子<株>製) 1,000部、合成例1で得たシアン酸エステルプレポリマー(X-1)を 50部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/ソルベントナフサ(50/50重量比)を 1,050部加え、固形分 50重量%とした後、70℃に加熱して攪拌混合しながら反応させ、赤外吸収スペクトルによりシアナト基のピーク(2300cm-1付近)の変化を追跡した。5.5時間後にシアナト基のピークが消滅した時点で反応を終了した。この反応液に無水ピロメリット酸を 218部、及び上記混合溶剤を 218部加え、温度 70℃にて攪拌混合しながら反応を行い、赤外吸収スペクトルにより無水カルボン酸のピーク(1,850cm-1付近)を追跡し、6時間後にピークが消滅した時点で反応を終了し、酸価 90mgKOH/gの不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A-2)溶液を得た。
【0030】
(合成例4)
合成例3において、シアン酸エステルプレポリマー(X-1)を 50部から 300部に、無水ピロメリット酸の代わりにテトラヒドロフタル酸無水物を 521部加える以外は合成例2と同様にして行い、酸価 100mgKOH/gの不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A-3)溶液を得た。
【0031】
(実施例1、2、比較例1〜4)
表1に示す割合で各成分を配合し、レベリング剤(BYK055、ビックケミー・ジャパン<株>製) 0.5部、脱泡剤(フローレンAC300、共栄社化学<株>製) 0.5部、カップリング剤(A-187、日本ユニカー<株>製) 1.5部を添加した後、3本ロールで混練してレジスト用樹脂組成物の溶液を得た。これらの溶液を、防錆処理剤(SL8300E、<株>メック)で銅回路表面をした櫛形パターン(ライン/スペース=60/60μm)を 50個形成した回路基板(CCL-HL830、厚さ0.6mm、三菱ガス化学<株>製)上に、スクリーン印刷法にて乾燥後の厚みが 30〜40μmとなるように塗布し、80℃で 20分乾燥して溶剤を飛ばし、その上にネガフィルムを配置して、紫外線を 1,000mJ/cm2 照射した後、1wt%の炭酸ナトリウム水溶液で現像した。その後 150℃で1時間熱硬化し、永久保護皮膜とした。測定結果を表2に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
B-1:変性キシレン樹脂エポキシ化物(デナカルT、ナガセ化成工業<株>製)
B-2:脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021、ダイセル化学工業<株>製)
B-3:多官能脂環式エポキシ樹脂(EHPE3150、ダイセル化学工業<株>製)
C-1:テトラエチレングリコールジアクリレート
C-2:トリメチロールプロパントリアクリレート
D-1:光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー<株>製)
E-1:水酸化アルミニウム(B-303、平均粒子径 2μm、巴工業(株)製)
F-1:モリブデン酸亜鉛を担時したタルク(KEMGARD911C、モリブデン酸亜鉛含有率 19wt%、シャーウイン・ウイリアムズ<株>製)
G-1:ホウ酸亜鉛(ALCANEX XF-100C 水澤化学工業(株)製)
H-1:青色顔料(銅フタロシアニンブルー、C.I. Pigment Blue 15:3)
H-2:黄色顔料(ベンズイミドロンイエロー、C.I. Pigment Yellow 151)
H-3:緑色顔料(フタロシアニングリーン、C.I. Pigment Green 7)
【0034】
【表2】

【0035】
<試験方法>
1)全塩素、全臭素:後述の耐燃性-1の試験片を使用し、JPCA-ES-01に準じて測定した。(ハロゲンフリー基板の規格は 各900ppm以下)
2)鉛筆硬度:JIS K 5400 に準じて評価を行った。
3)密着性 :JIS K 5400 に準じて、試験片に1mmの碁盤目を100個作成し、セロハンテープにて引き剥がし試験を行い、碁盤目の剥離状態を見た。
(表中の分母は試験碁盤目数、分子は残存数)
4)現像性及び耐酸性:現像後、現像面を目視で観察するとともに、無電解ニッケルメッキ(PH 4.5、浸漬 90℃・20分)を施し、ニッケルメッキの付着状態を観察して現像性を判定した。同時にレジスト面の耐薬品性を評価した。
5)半田耐熱性:260℃の半田槽に 30秒間浸漬後、塗膜の異常の有無を目視観察した。
6)ガラス転移温度:別途厚さ40μmの塗膜を作成し、TMA法(JIS C6481)にて測定した。
7)耐燃性-1:基板としてハロゲンフリー銅張積層板(CCL-HL832NB 0.2mm)の銅箔をエッチング除去して、この両面にレジスト厚みが40μmとなるように塗布し、硬化させた後、UL94の測定法に準じて耐燃性を測定した。
8)耐燃性-2:レジスト用樹脂組成物のみ、単独で重ね塗り、硬化させ、厚さ200〜300μmとしたものをUL94の測定法に準じて耐燃性を測定した。
9)耐マイグレーション性:櫛形パターンのライン/ライン間の絶縁抵抗を、85℃,85%RH,50VDC条件下で測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシアクリレートとシアン酸エステル化合物との反応生成物に、多塩基酸無水物を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(a)、エポキシ樹脂(b)、エチレン性不飽和モノマー(c)、光重合開始剤(d)を必須成分とする樹脂組成物の樹脂成分 100重量部に対し、水酸化アルミニウム(e) 100〜200重量部、モリブデン化合物(f) 0.1〜20重量部、ホウ酸亜鉛(g) 0.1〜30重量部を配合するレジスト用樹脂組成物。
【請求項2】
該不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(a)が、エポキシアクリレート 100重量部とシアン酸エステル化合物 5〜40重量部との反応生成物に、多塩基酸無水物 10〜90重量部を反応させて得られる、酸価 40〜200mgKOH/g の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(a)である請求項1記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項3】
該樹脂組成物の樹脂成分の比率が、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(a)20〜90重量%、エポキシ樹脂(b)5〜35重量%、エチレン性不飽和モノマー(c) 1〜30重量%、光重合開始剤(d) 0.1〜20重量%である請求項1または2記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のレジスト用樹脂組成物に、ハロゲン含有量 1重量%以下の顔料を配合するレジスト用樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−91243(P2006−91243A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274689(P2004−274689)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】