説明

レジスト組成物およびレジストパターン形成方法

【課題】 イマージョンリソグラフィー工程において用いられる液浸媒体中への物質溶出を低減できるレジスト組成物、および該レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】 浸漬露光する工程を含むレジストパターン形成方法に用いられるレジスト組成物であって、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、2−ヘプタノンおよび乳酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(c1)を主成分とする有機溶剤(C)とを含有することを特徴とするレジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イマージョン(immersion)リソグラフィー(浸漬露光)工程を含むレジストパターン形成方法に用いられるレジスト組成物、および該レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスにおける微細構造の製造には、リソグラフィー法が多用されている。
現在、リソグラフィー法においては、たとえばArFエキシマレーザーを用いた最先端の領域では、線幅が90nm程度の微細なレジストパターンを形成することが可能となっているが、今後のデバイス構造のさらなる微細化のために、レジストパターンのさらなる微細化が要求されている。
レジストパターンの微細化を達成するための微細化手段としては、より短波長の光源、たとえばFレーザー、EUV(極端紫外光)、EB(電子線)、X線等を用いる光源波長の短波長化や、露光装置のレンズの開口数(NA)の大口径化(高NA化)等が一般的である。
しかし、光源波長の短波長化は、高額な新たな露光装置が必要となる。また、高NA化は、NAと焦点深度幅とがトレードオフの関係にあるため限界があり、焦点深度幅を低下させることなく解像性を達成することは困難である。
【0003】
そのような中、イマージョンリソグラフィーという方法が報告されている(例えば、非特許文献1〜3参照)。この方法は、露光時に、従来は空気や窒素等の不活性ガスで満たされているレンズとウェーハ上のレジスト層との間の部分を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒、たとえば純水、フッ素系不活性液体等の溶媒で満たした状態で露光(浸漬露光)を行う方法である。
このようなイマージョンリソグラフィーによれば、同じ露光波長の光源を用いても、より短波長の光源を用いた場合や高NAレンズを用いた場合と同様の高解像性を達成でき、しかも焦点深度幅の低下もないといわれている。また、イマージョンリソグラフィーは、既存の露光装置を用いて行うことができる。そのため、イマージョンリソグラフィーは、低コストで、高解像性で、かつ焦点深度幅にも優れるレジストパターンの形成を実現できると予想され、多額な設備投資を必要とする半導体素子の製造において、コスト的にも、解像度等のリソグラフィ特性的にも、半導体産業に多大な効果を与えるものとして大変注目されている。
【非特許文献1】ジャーナルオブバキュームサイエンステクノロジー(Journal of Vacuum Science & Technology B)(米国)、1999年、第17巻、6号、3306−3309頁.
【非特許文献2】ジャーナルオブバキュームサイエンステクノロジー(Journal of Vacuum Science & Technology B)(米国)、2001年、第19巻、6号、2353−2356頁.
【非特許文献3】プロシーディングスオブエスピーアイイ(Proceedings of SPIE)(米国)2002年、第4691巻、459−465頁.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、イマージョンリソグラフィーにより従来の通常露光プロセスと同程度に良好なレジストパターンが形成されるかどうかは、まだまだ未知な点が多い。
たとえば、イマージョンリソグラフィーにおいては、上述のように、露光時にレジスト層やレンズに溶媒が接触する。そのため、レジストに含まれる物質が溶媒中へ溶出する等によりレジスト層が変質してその性能が低下したり、溶出した物質によって溶媒の屈折率を局所的に変化したり、溶出した物質がレンズ表面を汚染する等により、レジストパターン形成に悪影響を与えることが考えられる。すなわち、感度が劣化したり、得られるレジストパターンがT−トップ形状となったり、レジストパターンの表面荒れや膨潤が生じる等の問題が予想される。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、イマージョンリソグラフィー工程において用いられる溶媒中への物質溶出を低減できるレジスト組成物、および該レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、2−ヘプタノンおよび乳酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(c1)を主成分とする有機溶剤(C)が、イマージョンリソグラフィー工程において用いられる溶媒中への溶出が少ない溶剤であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の態様は、浸漬露光する工程を含むレジストパターン形成方法に用いられるレジスト組成物であって、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、2−ヘプタノンおよび乳酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(c1)を主成分とする有機溶剤(C)とを含有することを特徴とするレジスト組成物である。
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様のレジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法であって、浸漬露光する工程を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のレジスト組成物およびレジストパターン形成方法により、イマージョンリソグラフィー工程において用いられる溶媒(以下、液浸媒体ということがある)中への物質溶出を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明をより詳細に説明する。
≪レジスト組成物≫
本発明のレジスト組成物は、浸漬露光する工程を含むレジストパターン形成方法に用いられるレジスト組成物であって、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)(以下、(A)成分ということがある)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、(B)成分ということがある)と、2−ヘプタノンおよび乳酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(c1)を主成分とする有機溶剤(C)(以下、(C)成分ということがある)とを含有することを特徴とする。
【0008】
<(A)成分>
(A)成分としては、特に限定されず、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂として提案されている、一種または二種以上のアルカリ可溶性樹脂またはアルカリ可溶性となり得る樹脂を使用することができる。前者の場合はいわゆるネガ型、後者の場合はいわゆるポジ型のレジスト組成物である。
【0009】
ネガ型の場合、レジスト組成物には、アルカリ可溶性樹脂および(B)成分とともに架橋剤が配合される。そして、レジストパターン形成時に、露光により(B)成分から酸が発生すると、かかる酸が作用し、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤との間で架橋が起こり、アルカリ不溶性へ変化する。
【0010】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、またはα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸の低級アルキルエステルから選ばれる少なくとも一つから誘導される単位を有する樹脂が浸漬露光において、膨潤の少ない良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。
また、前記架橋剤としては、例えば、通常は、メチロール基またはアルコキシメチル基、特にはブトキシメチル基を有するグリコールウリルなどの浸漬露光の溶媒に対して難溶性のアミノ系架橋剤を用いると浸漬露光において、膨潤の少ない良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。前記架橋剤の配合量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、1〜50質量部の範囲が好ましい。
【0011】
ポジ型の場合は、(A)成分は、いわゆる酸解離性溶解抑制基を有するアルカリ不溶性のものであり、露光により(B)成分から酸が発生すると、かかる酸が前記酸解離性溶解抑制基を解離させることにより、(A)成分がアルカリ可溶性となる。
そのため、レジストパターンの形成において、基板上に塗布されたレジスト組成物に対して選択的に露光すると、露光部のアルカリ可溶性が増大し、アルカリ現像することができる。
【0012】
(A)成分は、ポジ型、ネガ型のいずれの場合にも、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を含有することが好ましい。
なお、本発明において、「構成単位」とは、重合体を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
また、「(α−低級アルキル)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルと、メタクリル酸エステル等のα−低級アルキルアクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。
また、「(α−低級アルキル)アクリル酸エステル」のα−位の置換基としての低級アルキル基は、炭素原子数1〜5のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
「(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して形成される構成単位を意味する。
本発明においては、(A)成分中、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を、好ましくは20モル%以上、より好ましくは50モル%以上含むと好適なレジスト組成物が得られるので、望ましい。
【0013】
・構成単位(a1)
本発明のレジスト組成物がポジ型の場合、(A)成分は、酸解離性溶解抑制基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を有することが好ましい。
構成単位(a1)における酸解離性溶解抑制基は、露光前は(A)成分全体をアルカリ不溶とするアルカリ溶解抑制性を有するとともに、露光後は(B)成分から発生した酸の作用により解離し、この(A)成分全体をアルカリ可溶性へ変化させるものであれば特に限定せずに用いることができる。一般的には、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基と、環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基、第3級アルコキシカルボニル基、または鎖状アルコキシアルキル基などが広く知られている。なお、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルと、メタクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。
【0014】
構成単位(a1)における酸解離性抑制基としては、例えば、脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基を好適に用いることができる。
本発明における「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基または多環式基(脂環式基)であることを意味し、このとき「脂肪族環式基」は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。好ましくは多環式基(脂環式基)である。
このような脂肪族環式基の具体例としては、例えば、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テロラシクロアルカンなどから1個の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。この様な単環または多環式基は、ArFレジストにおいて、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。これらの中でも、工業上、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデカニル基が好ましく、特にアダマンチル基が好ましい。
【0015】
構成単位(a1)として、より具体的には、下記一般式(a1−1)〜(a1−9)で表される構成単位が挙げられる。
【0016】
【化1】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基、Rは低級アルキル基である。)
【0017】
【化2】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基、RおよびRはそれぞれ独立して低級アルキル基である。)
【0018】
【化3】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基、Rは第3級アルキル基である。)
【0019】
【化4】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基である。)
【0020】
【化5】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基、Rはメチル基である。)
【0021】
【化6】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基、Rは低級アルキル基である。)
【0022】
【化7】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基である。)
【0023】
【化8】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基である。)
【0024】
【化9】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基、Rは低級アルキル基である。)
【0025】
上記R〜RおよびR〜Rはそれぞれ、炭素数1〜5の低級の直鎖または分岐状アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基またはエチル基が好ましい。
また、Rは、tert−ブチル基やtert−アミル基のような第3級アルキル基であり、tert−ブチル基である場合が工業的に好ましい。
【0026】
構成単位(a1)としては、上記に挙げた中でも、特に一般式(a1−1)、(a1−2)、(a1−3)、(a1−6)で表される構成単位は、イマージョンリソグラフィー工程において使用される溶媒に対する耐溶解性に優れ、高解像性に優れるパターンが形成できるため、より好ましい。
【0027】
構成単位(a1)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)成分中の構成単位(a1)の割合は、(A)成分の全構成単位の合計に対して、5〜60モル%が好ましく、5〜50モル%がより好ましい。下限値以上とすることによって、レジスト組成物とした際にパターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0028】
・構成単位(a2)
(A)成分は、前記構成単位(a1)の他に、ラクトン含有単環または多環式基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を有することが好ましい。
構成単位(a2)のラクトン含有単環または多環式基は、(A)成分をフォトレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高めたり、現像液との親水性を高めたりするうえで有効なものである。
なお、ここでのラクトンとは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環を示し、これをひとつの目の環として数える。したがって、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
【0029】
構成単位(a2)としては、このようなラクトンの構造(−O−C(O)−)と環基とを共に持てば、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、ラクトン含有単環式基としては、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基が挙げられ、また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子一つを除いた基が挙げられる。特に、以下のような構造式(IV)、または構造式(V)を有するラクトン含有トリシクロアルカンから水素原子を1つを除いた基が、工業上入手し易いなどの点で有利である。
【0030】
【化10】

【0031】
構成単位(a2)の例としては、ラクトン含有モノシクロアルキル基またはトリシクロアルキル基を含む(α−低級アルキル基)アクリル酸エステルから誘導される構成単位等が挙げられる。
構成単位(a2)の例として、より具体的には、下記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位が挙げられる。
【0032】
【化11】

(式中、R’は水素原子または低級アルキル基である。)
【0033】
【化12】

(式中、R’は水素原子または低級アルキル基である。)
この構成単位は、結合位置が5位又は6位の異性体の混合物として存在する。
【0034】
【化13】

(式中、R’は水素原子または低級アルキル基であり、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または低級アルキル基である。)
【0035】
【化14】

(式中、R’は水素原子または低級アルキル基であり、oは0または1である。)
【0036】
【化15】

(式中、R’は水素原子または低級アルキル基である)
【0037】
一般式(a2−1)〜(a2−5)におけるR’の低級アルキル基としては、前記構成単位(a1)におけるRの低級アルキル基と同じである。
一般式(a2−3)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または低級アルキル基であり、工業上入手が容易であること等を考慮すると、水素原子が好ましい。
【0038】
また、このような一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位の中では、レジスト組成物に用いた場合に近接効果の抑制・低減についての効果が優れる等の点で、ラクトン骨格上のα炭素にエステル結合を有する一般式(a2−3)で表される(α−低級アルキル)アクリル酸のγ−ブチロラクトンエステル、すなわちγ−ブチロラクトンの(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
また、一般式(a2−1)、(a2−2)で表される(α−低級アルキル)アクリル酸のノルボルナンラクトンエステル、すなわちノルボルナンラクトンの(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位は、レジスト組成物に用いた場合に得られるレジストパターンの形状、例えば矩形性がさらに良好であるため、好ましい。特に、一般式(a2−2)で表される構成単位はその効果が極めて高く、好ましい。これらのなかでも一般式(a2−3)で表される構成単位が最も好ましい。
【0039】
(A)成分において、構成単位(a2)は、1種だけを用いてもよいし、相互に異なる2種以上を組み合わせて用いることも可能である。(A)成分の骨格中に、相互に異なる2種以上のラクトン骨格を導入することにより、フォトレジスト膜の基板への密着性やアルカリ現像液親和性およびエッチング耐性が更に向上するため好ましい。
【0040】
構成単位(a2)の割合は、(A)成分を構成する全構成単位の合計に対して、5〜80モル%が好ましく、5〜60モル%がより好ましい。下限値以上とすることにより構成単位(a2)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0041】
・構成単位(a3)
(A)成分は、前記構成単位(a1)に加えて、または前記構成単位(a1)および(a2)に加えて、さらに極性基含有脂肪族炭化水素基を含有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を有することが好ましい。構成単位(a3)を有することにより、(A)成分の親水性が高まり、現像液との親和性が高まって、露光部でのアルカリ溶解性が向上し、解像性の向上に寄与する。
極性基としては、水酸基、シアノ基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の炭化水素基(アルキレン基)や、多環式の脂肪族炭化水素基(多環式基)が挙げられる。該多環式基としては、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。
その中でも、水酸基、シアノ基またはカルボキシル基含有脂肪族多環式基を含み、かつ(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。この様な多環式基は、ArFエキシマレーザー用レジスト組成物用のポリマー(樹脂成分)において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。これらの多環式基の中でもアダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデカニル基が工業上好ましい。
【0042】
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における炭化水素基が炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の炭化水素基のときは、(α−低級アルキル)アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位が好ましく、該炭化水素基が多環式基のときは、下記式(a3−1)、(a3−2)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0043】
【化16】

(式中、R’は前記に同じであり、nは1〜3の整数である。)
【0044】
これらの中でも、nが1であり、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0045】
【化17】

(式中、R’は前記に同じであり、kは1〜3の整数である。)
【0046】
これらの中でも、kが1であるものが好ましい。これらは異性体の混合物として存在する(シアノ基がノルボルナニル基の4位または5位に結合している化合物の混合物)。
【0047】
構成単位(a3)は(A)成分の必須成分ではないが、これを(A)成分に含有させる際には、(A)成分を構成する全構成単位の合計に対して、5〜50モル%、好ましくは10〜40モル%含まれていると好ましい。下限値以上とすることにより、LER(ラインエッジラフネス)の向上効果が良好となり、上限値をこえると他の構成単位のバランスの点等からレジストパターン形状が劣化するおそれがある。
【0048】
・構成単位(a4)
(A)成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の構成単位(a1)ないし(a3)に分類されない他の構成単位(a4)、すなわち酸解離性溶解抑制基、ラクトン官能基、極性基を含有しない構成単位を有していてもよい。
構成単位(a4)としては、例えば酸非解離性の脂肪族多環式基を含み、かつ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位などが好ましい。この様な構成単位を用いると、ポジ型レジスト組成物用として用いたときに、孤立パターンからセミデンスパターン(ライン幅1に対してスペース幅が1.2〜2のラインアンドスペースパターン)の解像性に優れ、好ましい。
【0049】
該多環式基は、例えば、前記の構成単位(a3)の場合に例示したものと同様のものを例示することができ、ArFポジレジスト材料として従来から知られている多数のものから適宜選択して使用可能である。
特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基から選ばれる少なくとも1種以上であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。
特に下記一般式(a4−1)〜(a4−3)であることが好ましい。
【0050】
【化18】

(式中、R’は前記と同じである。)
【0051】
【化19】

(式中、R’は前記と同じである。)
【0052】
【化20】

(式中、R’は前記と同じである。)
【0053】
かかる構成単位(a4)は、(A)成分の必須成分ではないが、これを(A)成分に含有させる際には、(A)成分を構成する全構成単位の合計に対して、構成単位(a4)を1〜30モル%、好ましくは10〜20モル%含有させると、孤立パターンからセミデンスパターンの解像性において良好な向上効果が得られるので好ましい。
【0054】
(A)成分は、各構成単位にそれぞれ相当するモノマーを、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって共重合させることにより、容易に製造することかできる。
【0055】
また、(A)成分の質量平均分子量(ポリスチレン換算、以下同様)は、特に限定するものではないが、2000〜30000が好ましく、ネガ型の場合は2000〜20000がより好ましく、4000〜15000がさらに好ましく、ポジ型の場合は5000〜30000がより好ましく、8000〜20000がさらに好ましい。この範囲よりも大きいとレジスト溶剤への溶解性が悪くなり、小さいと耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が悪くなるおそれがある。
【0056】
<(B)成分>
(B)成分は、従来の化学増幅型レジスト組成物において使用されている公知の酸発生剤から特に限定せずに用いることができる。
このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
【0057】
オニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロンメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネートなどが挙げられる。
【0058】
前記オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α‐(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(p‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロ‐2‐トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐クロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,4‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,6‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(2‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐チエン‐2‐イルアセトニトリル、α‐(4‐ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐[(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐(トシルオキシイミノ)‐4‐チエニルシアニド、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘプテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロオクテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐エチルアセトニトリル、α‐(プロピルスルホニルオキシイミノ)‐プロピルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロペンチルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。これらの中で、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリルが好ましい。
【0059】
前記ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、以下に示す構造をもつ1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物A、分解点135℃)、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン(化合物B、分解点147℃)、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物C、融点132℃、分解点145℃)、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物D、分解点147℃)、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン(化合物E、分解点149℃)、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物F、分解点153℃)、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物G、融点109℃、分解点122℃)、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物H、分解点116℃)などを挙げることができる。
【0060】
【化21】

【0061】
(B)成分としては、これらの酸発生剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の含有量は、高分子化合物(A)100質量部に対し、0.5〜30質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。上記範囲より少ないとパターン形成が十分に行われないおそれがあり、上記範囲を超えると均一な溶液が得られにくく、保存安定性が低下する原因となるおそれがある。
【0062】
<(C)成分>
本発明においては、(C)成分が、2−ヘプタノンおよび乳酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(c1)を主成分とすることが必要である。溶剤(c1)を含むレジスト組成物を用いたレジスト層においては、イマージョンリソグラフィー工程において用いられる液浸媒体中に溶剤(c1)が溶出しにくく、これにより、イマージョンリソグラフィー工程において用いられる液浸媒体中への物質溶出を低減できる。
(C)成分中における主成分としての溶剤(c1)の含有割合は、50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%がさらに好ましい。最も好ましくは100質量%、すなわち(C)成分が溶剤(c1)のみからなることが好ましい。
溶剤(c1)としては、2−ヘプタノンおよび乳酸エチルのいずれか一方を単独で用いてもよく、両方を併用してもよい。
これらのなかでも、2−ヘプタノンが、特に液浸媒体中に溶出しにくく、好ましい。
【0063】
本発明において、(C)成分は、上記溶剤(c1)以外の溶剤(c2)を含有してもよい。溶剤(c2)としては、本発明の効果を損なわず、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
溶剤(c2)としては、例えば、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトンなどの、2−ヘプタノン以外のケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、またはジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類およびその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどの、乳酸エチル以外のエステル類などを挙げることができる。
これらの溶剤(c2)は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0064】
(C)成分の使用量は、特に限定されず、基板等の支持体に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0065】
<(D)成分>
本発明のポジ型レジスト組成物には、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに、任意の成分として、含窒素有機化合物(D)(以下、(D)成分という)を配合させることができる。
この(D)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いれば良いが、アミン、特に第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミンが好ましい。
ここで、低級脂肪族アミンとは炭素数12以下のアルキルまたはアルキルアルコールのアミンを言い、この第2級や第3級アミンの例としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ぺンチルアミン、トリ−n−ドデシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールなどが挙げられる。特に炭素数5〜12のアルキル基を有する脂肪族第3級アミンが好ましく、特にはトリ−n−オクチルアミンが好ましい。
また、下記一般式(VI)で表される含窒素有機化合物も好ましく用いることができる。
【0066】
【化22】

(式中、R11、R12は、それぞれ独立して低級アルキレン基、R13は低級アルキル基を示す。)
【0067】
11、R12、R13は直鎖、分岐鎖、環状であってもよいが、直鎖、分岐鎖状であることが好ましい。
11、R12、R13の炭素数は、分子量調整の観点から、それぞれ1〜5、好ましくは1〜3である。R11、R12、R13の炭素数は同じであってもよいし、異なっていてもよい。R11、R12の構造は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(VI)で表される化合物としては、例えばトリス-(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス−2−(2−メトキシ(エトキシ))エチルアミン、トリス-(2−(2−メトキシエトキシ)メトキシエチル)アミン等が挙げられる。中でもトリス−2−(2−メトキシ(エトキシ))エチルアミンが好ましい。
これらの(D)成分の中では、とくに上記一般式(VI)で表される化合物が好ましく、特にトリス−2−(2−メトキシ(エトキシ))エチルアミンが、液浸媒体に対する溶解性が小さく好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの(D)成分は、(A)成分に対して、通常0.01〜5.0質量%の範囲で用いられる。
【0068】
<(E)成分>
また、前記(D)成分の配合による感度劣化を防ぎ、またレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸またはリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E)(以下、(E)成分という)を含有させることができる。なお、(D)成分と(E)成分は併用することもできるし、いずれか1種を用いることもできる。
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ‐n‐ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸またはそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸‐ジ‐n‐ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸およびそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸およびそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
(E)成分は、(A)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0069】
<その他の任意成分>
本発明のポジ型レジスト組成物には、さらに所望により、混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを適宜、添加含有させることができる。
【0070】
本発明のレジスト組成物は、上記(A)成分および(B)成分、並びにその他の任意の成分を、(C)成分に溶解させて製造することができる。例えば、上述する各成分を通常の方法で混合、攪拌するだけでよく、必要に応じディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用い分散、混合させてもよい。また、混合した後で、さらにメッシュ、メンブレンフィルターなどを用いてろ過してもよい。
【0071】
≪レジストパターン形成方法≫
次に、本発明にかかるレジストパターン形成方法について説明する。
まずシリコンウェーハ等の基板上に、本発明にかかるレジスト組成物をスピンナーなどで塗布した後、プレベーク(PAB処理)を行う。
なお、基板とレジスト組成物の塗布層との間には、有機系または無機系の反射防止膜を設けた2層積層体とすることもできる。
また、レジスト組成物の塗布層上に有機系の反射防止膜を設けた2層積層体とすることもでき、さらにこれに下層の反射防止膜を設けた3層積層体とすることもできる。
ここまでの工程は、周知の手法を用いて行うことができる。操作条件等は、使用するレジスト組成物の組成や特性に応じて適宜設定することが好ましい。
【0072】
次いで、上記で得られたレジスト組成物の塗膜であるレジスト層に対して、所望のマスクパターンを介して選択的に浸漬露光(Liquid Immersion Lithography)を行う。
このとき、予め、レジスト層と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒で満たすが、さらに、空気の屈折率よりも大きくかつ前記レジスト層の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒で満たした状態で露光を行うことが好ましい。
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、電子線、X線、軟X線などの放射線を用いて行うことができる。本発明にかかるレジスト組成物は、KrFまたはArFエキシマレーザー、特にArFエキシマレーザーに対して有効である。
【0073】
上記のように、本発明のレジストパターン形成方法においては、露光時に、レジスト層と露光装置の最下位置のレンズ間に、空気の屈折率よりも大きい溶媒で満たすことが好ましい。
空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体等が挙げられる。
【0074】
該フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl、COCH、COC、C等のフッ素系化合物を主成分とする液体や、パーフロオロアルキル化合物のような、沸点が好ましくは70〜180℃、より好ましくは80〜160℃のものを挙げることができる。このパーフロオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。フッ素系不活性液体の中では、上記範囲の沸点を有するものが、露光終了後に行う液浸媒体の除去が簡便な方法で行えることから、好ましい。
【0075】
本発明においては、本発明のレジスト組成物が特に水に対する悪影響を受けにくく、感度、レジストパターンプロファイル形状に優れることから、液浸媒体が水であることが好ましい。また、水は、コスト、安全性、環境問題および汎用性の観点からも好ましい。
【0076】
次いで、露光工程を終えた後、PEB(露光後加熱)を行い、続いて、アルカリ性水溶液からなるアルカリ現像液を用いて現像処理する。そして、好ましくは純水を用いて水リンスを行う。水リンスは、例えば、基板を回転させながら基板表面に水を滴下または噴霧して、基板上の現像液および該現像液によって溶解したレジスト組成物を洗い流す。そして、乾燥を行うことにより、レジスト組成物の塗膜がマスクパターンに応じた形状にパターニングされた、レジストパターンが得られる。
【0077】
上記本発明のレジスト組成物およびレジストパターン形成方法においては、液浸媒体中への(C)成分の溶出量が少ないことから、イマージョンリソグラフィー工程において用いられる液浸媒体中への物質溶出を低減できる。そのため、液浸媒体の汚染が低減され、それによって、液浸媒体の性質の変化、たとえば屈折率の局所的変化を軽減できる。また、露光装置のレンズの汚染も低減される。さらに、(C)成分の溶出が軽減され、レジスト組成の変化が軽減されるため、レジスト層の性能の変化も抑制されると推測される。
そのため、形成されるレジストパターンの解像性や形状等の劣化についても抑制できると期待される。
また、液浸媒体や露光装置のレンズの汚染が低減されるため、これらに対する保護対策を行わなくてもよく、プロセスや露光装置の簡便化に貢献することが期待される。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
下記の(A)成分、(B)成分、および(D)成分を(C)成分に均一に溶解し、ポジ型レジスト組成物1を調製した。
(A)成分としては、下記式(1)に示した3種の構成単位からなるメタクリル酸エステル・アクリル酸エステルの共重合体100質量部を用いた。(A)成分の調製に用いた各構成単位p、q、rの比は、p=50モル%、q=30モル%、r=20モル%とした。調製した(A)成分の質量平均分子量は10000であった。
【0079】
【化23】

【0080】
(B)成分としては、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート9.0質量部を用いた。
(C)成分としては、乳酸エチル(以下、「EL」と略記する。)1250質量部を用いた。
(D)成分としては、トリ−n−オクチルアミン1.0質量部を用いた。
【0081】
次に、上記で得られたポジ型レジスト組成物1を用いて、レジストパターンの形成を行った。
まず、ポジ型レジスト組成物1を、スピンナーを用いて直径8インチのシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、膜厚200nmのレジスト層を形成した。
【0082】
このようにして形成されたレジスト層上に、直径130mmの円内抽出用の器具を設けた後、23℃の純水を30mL滴下し、常温で5分間放置した。次に該純水をGC−MS(ガスクロマトグラフ/質量分析計)5973型(Agilent Technologies社製)にて分析して(C)成分の濃度を測定し、露光前のレジスト層1平方センチメートルあたりの(C)成分の溶出量(モル/cm)を求めた。その結果を表1に示す。
【0083】
また、上記と同様にしてレジスト層を形成し、簡易型露光装置VUVES4500(リソテックジャパン株式会社製)を用いて、ArFエキシマレーザー(193nm)で、30mJ/cmの露光量でオープンフレーム露光(マスクを介さないで露光)を行った。次に、露光されたレジスト層上に直径130mmの円内抽出用の器具を設けた後、23℃の純水を30mL滴下し、常温で5分間放置した。該純水をGC−MS(ガスクロマトグラフ/質量分析計)5973型(Agilent Technologies社製)にて分析して(C)成分の濃度を測定し、露光後のレジスト層1平方センチメートルあたりの(C)成分の溶出量(モル/cm)を求めた。その結果を表1に示す。
【0084】
[実施例2]
実施例1において(C)成分として2−ヘプタノン(以下、「HP」と略記する)1250質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製し、同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0085】
[比較例1]
実施例1において(C)成分としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PM」と略記する)1250質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製し、同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0086】
[比較例2]
実施例1において(C)成分として、EL:PM=4:6(質量比)の混合溶剤1250質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製し、同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0087】
[比較例3]
実施例1において(C)成分として、PM:プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PE」と略記する)=6:4(質量比)の混合溶剤1250質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製し、同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
上記結果から、実施例1および実施例2のレジスト組成物を用いた場合、露光処理前後の液浸媒体(水)中の(C)成分の濃度はいずれも1×10−12モル/cm未満(1ppb未満)と非常に低いものであった。
これに対し、比較例1〜3のレジスト組成物を用いた場合、露光処理前後の液浸媒体(水)中の(C)成分の濃度は、いずれも1.6×10−12モル/cmを越えており、実施例のほぼ10倍以上であった。
上記実施例および比較例において、露光前の溶出量は、選択的露光を施してレジストパターンを形成する際の未露光部における溶出量を評価するためのものであり、露光後の溶出量は、露光部における溶出量を評価するためのものである。したがって、実施例1,2においては、露光前と露光後の両方において、液浸媒体(水)に対して(C)成分の溶出量が少なかったことから、実施例1および実施例2のレジスト組成物が、浸漬露光する工程を含むレジストパターン形成方法に好適に使用できることは明らかである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬露光する工程を含むレジストパターン形成方法に用いられるレジスト組成物であって、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、2−ヘプタノンおよび乳酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(c1)を主成分とする有機溶剤(C)とを含有することを特徴とするレジスト組成物。
【請求項2】
前記有機溶剤(C)中に占める前記溶剤(c1)の割合が50〜100質量%である請求項1記載のレジスト組成物。
【請求項3】
前記樹脂成分(A)が、酸解離性溶解抑制基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を有する請求項1または2記載のレジスト組成物。
【請求項4】
前記樹脂成分(A)が、さらにラクトン含有単環または多環式基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を有する請求項3記載のレジスト組成物。
【請求項5】
前記樹脂成分(A)が、さらに極性基含有脂肪族炭化水素基を含有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を有する請求項3または4記載のレジスト組成物。
【請求項6】
さらに、含窒素有機化合物(D)を含む請求項1〜5のいずれかに記載のレジスト組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のレジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法であって、浸漬露光する工程を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法。


【公開番号】特開2006−30532(P2006−30532A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208488(P2004−208488)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】