説明

レジスト除去装置及びレジスト除去方法

【課題】レジスト以外の基板材料を酸化させること無く、溶剤を用いた従来のレジスト除去方法に比べてレジストを効果的に除去することができるレジスト除去装置を提供することにある。
【解決手段】レジストを成膜したウェハWからレジストを除去するレジスト除去装置に、有機系溶剤分子が複数集合してなるクラスターをウェハWに噴射するクラスター噴射手段3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストを成膜した基板からレジストを除去するレジスト除去装置及びレジスト除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エッチング、ドーピング等の基板処理工程後、不要になったレジストをウェハから除去するレジスト除去手法として、主に高温SPM(Sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture)、酸素プラズマが用いられている(例えば、特許文献1)。エッチング、ドーピング等の基板処理後のレジストは、化学構造が変化するため、溶剤等を用いた洗浄手法で除去することが困難な場合が多い。特に高ドーズ後のレジストにおいては、レジスト表面に強固なクラスト層(炭素リッチ層)が形成される。このため、現状では、高温SPM、酸素プラズマ等を用いてレジスト除去が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−80850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高温SPM、酸素プラズマ等を用いた場合、レジスト以外の基板材料、例えばケイ素Si、銅Cu等も酸化されるため、材料の酸化部分が後段の洗浄工程でエッチングされ、デバイス性能が低下する要因となっている。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、有機系溶剤をクラスター化して基板に噴射することによって、レジスト以外の基板材料を酸化させること無く、溶剤を用いた従来のレジスト除去方法に比べてレジストを効果的に除去することができるレジスト除去装置及びレジスト除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレジスト除去装置は、レジストを成膜した基板からレジストを除去するレジスト除去装置において、有機系溶剤分子が複数集合してなるクラスターを前記基板に噴射するクラスター噴射手段を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るレジスト除去装置は、前記基板を収容する収容体と、該収容体の内部を減圧する真空ポンプと、有機系溶剤を収容する溶剤収容部とを備え、前記クラスター噴射手段は、前記溶剤収容部から前記収容体へ有機系溶剤を供給する供給路と、該供給路を通じて供給された有機系溶剤を噴射するノズルとを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るレジスト除去装置は、有機系溶剤の噴射方向が前記基板の非法線方向になるように前記ノズルを支持する支持部材と、該支持部材に支持された前記ノズルを前記基板のレジストが成膜された面に沿って移送する移送機構とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るレジスト除去装置は、前記クラスターの噴射によって有機系溶剤に溶解し又は該有機溶剤によって分解したレジストを吸引する吸引手段を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るレジスト除去装置は、前記クラスターの噴射によって有機系溶剤に溶解し又は該有機溶剤によって分解したレジストを前記基板から除去し、外部へ搬送する搬送ガスを基板に送出する手段を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るレジスト除去方法は、レジストを成膜した基板からレジストを除去するレジスト除去方法において、有機系溶剤分子が複数集合してなるクラスターを前記基板に噴射する工程と、前記クラスターの噴射によって有機系溶剤に溶解し又は該有機溶剤によって分解したレジストを前記基板から除去し、外部へ搬送する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、クラスター噴射手段によって、有機系溶剤分子が複数集合してなるクラスターを基板に噴射する。基板に噴射されるクラスターは、有機系溶剤の分子が集合したものであるため、レジスト以外の基板材料が酸化されることは無い。
また、有機系溶剤分子のクラスターをレジストに噴射した場合、有機系溶剤を用いた従来手法に比べて、該有機系溶剤はより効果的にレジストの内部に浸透する。有機系溶剤のクラスターが基板表面に到達すると、有機系溶剤分子が液体に近い高密度状態で基板表面に広がると考えられており、有機系溶剤によるレジストの膨潤及び溶解が可能であると推測されている。有機系溶剤の浸透によって、レジストはその内部も有機系溶剤に溶解し、又は該有機系溶剤によって分解され、基板との接合部が切断される。従って、溶剤を用いた従来のレジスト除去方法に比べてレジストを効果的に除去することが可能である。
更に、有機溶剤のイオンビームを照射した場合、イオン及び電子によって基板が損傷する虞があるが、有機溶剤のクラスターを基板に噴射した場合、有機溶剤分子は基板表面に沿って広がるのみであり、基板が損傷することは無い。
【0013】
本発明にあっては、収容体の内部は真空ポンプによって減圧されている。クラスター噴射手段のノズルは、溶剤収容部から供給路を通じて供給された有機系溶剤を収容体内へ噴射する。ノズルから噴射された有機系溶剤は断熱膨張によって温度が低下し、クラスター化される。基板には、低温のクラスターが噴射されるため、従来のレジスト除去方法に比べてより低温環境下でレジストを基板から除去することが可能であり、基板材料の酸化を防止することができる。
【0014】
本発明にあっては、有機系溶剤の噴射方向が基板の非法線方向になるようにノズルが支持部材によって支持されており、移送機構によってノズルを基板に沿って移送させることができる。従って、クラスターを噴射させながらノズルを基板の外側へ搬送させることによって、溶解又は分解したレジストをクラスターの噴射によって、基板の外側へ吹き飛ばすことが可能である。
【0015】
本発明にあっては、吸引手段が、有機系溶剤のクラスター噴射によって、有機系溶剤に溶解し又は該有機溶剤によって分解したレジストを吸引し、基板から除去することが可能である。
【0016】
本発明にあっては、搬送ガスを基板に送出することによって、溶解又は分解したレジストを基板の外側へ吹き飛ばすことが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レジスト以外の基板材料を酸化させること無く、溶剤を用いた従来のレジスト除去方法に比べてレジストを効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係るレジスト除去装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】レジストの除去方法の一例を概念的に示した説明図である。
【図4】基板に対するクラスター噴射と、イオンビーム照射との相異を示した説明図である。
【図5】溶解又は分解したレジストの搬送除去方法の一例を概念的に示した説明図である。
【図6】クラスト層が形成されたレジストの除去方法の一例を概念的に示した説明図である。
【図7】変形例1における、レジスト除去装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。
【図8】変形例1における、溶解又は分解したレジストの搬送除去方法の一例を概念的に示した説明図である。
【図9】変形例2における、基板洗浄装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。本発明の実施の形態に係るレジスト除去装置は、エッチング、ドーピング等の基板処理工程後、不要になったレジストをウェハ(基板)から除去する装置であり、特にレジストに対して親和性が高い溶剤、即ち有機系溶剤のクラスターをウェハに対して噴射することによって、レジスト以外の基板材料を酸化させること無く、レジストを効果的に除去することを可能にしたものである。
【0020】
<レジスト除去装置>
図1は、本発明の実施の形態に係るレジスト除去装置の一構成例を模式的に示した側断面図、図2は、図1のII−II線断面図である。本実施の形態に係るレジスト除去装置は、ウェハWを収容する中空略直方体の処理室(収容体)1を備える。処理室1には、図2に示すように、処理室1内の処理空間にウェハWを搬入及び搬出させるための搬入出口11が設けられている。この搬入出口11を扉体12で閉じることにより、処理空間を密閉状態にすることができる。
【0021】
処理室1の内部には、ウェハWを略水平に保持し、回転させるウェハ支持台2が設けられている。ウェハ支持台2は、ウェハWが載せられるテーブル部21を備える。テーブル部21には、図2に示すように、上部に3個の保持部材22が設けられ、保持部材22をウェハWの周縁3箇所にそれぞれ当接させてウェハWを略水平に保持するように構成されている。テーブル部21は、その略中央部から下方へ突出した回転軸23を備え、回転軸23の下端部は、テーブル部21を略垂直方向の回転中心軸を中心として回転させるモータ24に接続されている。モータ24の駆動により、テーブル部21を回転させると、ウェハWがテーブル部21と一体的に、ウェハWの略中心を回転中心として、略水平面内で回転する。なお、図示の例では、平面視において、ウェハWは反時計方向に回転する。モータ24の駆動は、制御部7によって制御される。また、本実施の形態では、テーブル部21を回転させる構成を例示したが、必ずしもテーブル部21を回転させる必要は無く、モータ24及び保持部材22を備えずにウェハ支持台2を構成しても良い。
【0022】
また、処理室1の上部には、レジスト103(図3参照)に対して親和性が高い有機系溶剤分子が複数集合してなるクラスター100をウェハWに噴射するクラスター噴射手段3が設けられている。クラスター噴射手段3は、後述する溶剤供給管32を通じて供給された有機系溶剤を噴射するノズル31を備える。処理室1が減圧されている場合、ノズル31から噴射された有機系溶剤は断熱膨張によってクラスター化される。有機系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルアセテート、エチルラクテート、エチルセロソルブアセテート、メチルメトキシプロピオネート等のシンナー(レジスト溶解剤)、アセトン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0023】
ノズル31は、ノズルアーム(支持部材)42の先端下面に支持されている。ノズルアーム42は、ウェハ支持台2に支持されたウェハWの上方に備えられており、有機系溶剤の噴射方向がウェハWの非法線方向になるようにノズル31を支持する。ノズルアーム42の基端部は、略水平に配置されたガイドレール41(移送機構)に沿って移動自在に支持されている。また、ガイドレール41に沿ってノズルアーム42を移送させる駆動機構43(移送機構)が備えられている。なお、ガイドレール41及び駆動機構43は、ノズルアーム42に支持されたノズル31をウェハWのレジスト103が成膜された面に沿って移送する移送機構を構成している。駆動機構43の駆動により、ノズルアーム42は、ウェハ支持台2に保持されたウェハWの上方とウェハWの周縁より外側との間で移動することができる。駆動機構43の動作は制御部7によって制御される。
【0024】
ノズル31には、有機系溶剤を収容する溶剤収容部5に接続された溶剤供給管(供給路)32が接続されている。溶剤供給管32は、溶剤収容部5から収容体へ気相状態の有機系溶剤を供給する供給路であり、溶剤供給管32には、開閉弁33が設けられている。開閉弁33の開閉動作は、制御部7によって制御される。
【0025】
更に、処理室1の適宜箇所に排気部10が設けられ、各排気部10には、処理室1内部を例えば約10Paに減圧する真空ポンプ6が配管63を介して接続されている。有機系溶剤のクラスター化は、有機系溶剤の断熱膨張によって実現されるため、ノズル31の近傍が減圧状態にある方が好ましい。例えば、図1に示すように、ノズル31の近傍に第1の排気部10を設け、第2及び第3の排気部10,10を処理室1の側壁の下部に設けると良い。真空ポンプ6は、例えば、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)61と、その前段に設けられた粗引き用のドライ真空ポンプ(DP:Dry Pump)62とで構成されており、真空ポンプ6の動作は制御部7によって制御されている。
【0026】
<レジスト除去方法1>
次に、レジスト103を成膜し、エッチング、イオン注入等の基板処理を施したウェハWから、上述のレジスト除去装置を用いてレジスト103を除去する方法を説明する。
図3は、レジスト103の除去方法の一例を概念的に示した説明図である。図3(a)に示すように、ウェハWには、絶縁層101、ゲート102及びレジスト103が成膜されている。まず、制御部7は、真空ポンプ6を駆動させて、処理室1の内部を約10Paに減圧させ、駆動機構43の動作を制御することによって、ノズル31をウェハWの略中央部へ移送する。そして、モータ24を駆動させることによって、テーブル部21に載置されたウェハWを回転させ、次いで、制御部7は、開閉弁33を開状態にさせることによって、有機系溶剤をノズル31へ供給させる。また、制御部7は、駆動機構43の動作を制御することによって、ノズル31をウェハWの中央部から径方向外側へ所定速度で移送させる。ノズル31へ供給された有機系溶剤は、処理室1内のウェハWに向けて噴射されるが、処理室1の内部が真空ポンプ6によって減圧されているため、噴射された有機系溶剤は、断熱膨張し、有機系溶剤分子が集合してなるクラスター100が生成される。生成された有機系溶剤のクラスター100は、図3(a)に示すように、ウェハWに形成されたレジスト103に衝突する。
【0027】
従来手法の高温SPMではウェハW温度は約80度、酸素プラズマでは約250度に達するが、本実施の形態によれば、ウェハWに到達するクラスター100の温度はおよそ有機系溶剤の凝縮温度以下であるため、ウェハWの温度上昇を抑えることができる。なお、一般的に、ウェハWの温度を上昇させると、レジスト103の除去効率は上がるが、他の基板材料の酸化が促進される。基板材料の酸化は、デバイス性能の低下を招く。従って、有機系溶剤のクラスター100を利用することによって、従来手法に比べて、レジスト103以外の基板材料が酸化することを効果的に抑制することができ、デバイス性能を向上させることができる。
【0028】
次いで、図3(b)に示すように、ウェハWに噴射された有機系溶剤のクラスター100は、レジスト103の内部まで浸透し、有機系溶剤が浸透したレジスト103は、図3(c)に示すように膨潤する。なお、図3中、ハッチングが付された部分は、有機系溶剤が浸透したレジスト103を示している。そして、有機系溶剤が内部まで浸透したレジスト103は、図3(d)に示すように、内部のレジスト103も有機系溶剤に溶解し、又は該有機系溶剤によって分解する。そして、レジスト103と、ウェハWとの接合部が切断される。図3(d)に図示した縦横の破線は、レジスト103が溶解及び分解された様子を示している。
【0029】
図4は、基板に対するクラスター噴射と、イオンビーム照射との相異を示した説明図である。ここでは、アルゴン原子のイオンビーム及びクラスターを基板に照射又は噴射させた場合のアルゴン原子の挙動及び基板の状態を示したシミュレーションについて説明する。なお、有機系溶剤分子のイオンビーム及びクラスター100についてもアルゴン原子と同様の挙動を示すと考えられる。図4(a)、(b)は、イオンビーム及びクラスターの照射及び噴射の前後における基板と、基板に照射されるアルゴンイオン及びアルゴンのクラスターを示している。図4(a)では、例えば、2000個のアルゴン原子が集まったイオンビームが図示されている。イオンビームは、20keVのエネルギーを有している。従って、2000個のアルゴン原子が集まったイオンビームを構成する個々のアルゴン原子は、10eVのエネルギーを有する。このように、高エネルギーのアルゴン原子が基板に衝突すると、図4(b)に示すように、基板が物理的に損傷してしまうことが分かる。基板の損傷は、言うまでも無く、デバイスの不良及び性能の低下を招く。
【0030】
一方、図4(b)の右図には、例えば、20000個のアルゴン原子が集まったクラスターが図示されている。クラスター100も、イオンビームと同様、20keVのエネルギーを有している。従って、20000個のアルゴン原子が集まったイオンビームを構成する個々のアルゴン原子は、1eVのエネルギーを有する。このように、低エネルギーのアルゴン原子が基板に衝突すると、図4(b)に示すように、基板を損傷すること無く、液体に近い高密度状態で基板表面に広がることが分かる。
【0031】
以上のシミュレーション結果より、有機系溶剤のクラスター100をウェハWに噴射した場合、有機系溶剤分子は、ウェハWを損傷させること無く、ウェハW表面に液体のような高密度状態で広がっていると考えられる。有機系溶剤分子は、液体に近い状態でウェハW表面に広がるため、有機系溶剤と、レジスト103との反応は、液相反応に近い状態であると考えられており、有機系溶剤によるレジスト103の膨潤、溶解乃至分解を可能にしていると予想されている。
【0032】
次いで、図3(e)に示すように、溶解及び分解したレジスト103は、ウェハW上に噴射された有機系溶剤のクラスター100によって、ウェハWの径方向外側へ吹き飛ばされ、系外へ搬送される。
【0033】
図5は、溶解又は分解したレジスト103の搬送除去方法の一例を概念的に示した説明図である。ノズル31は、有機系溶剤のクラスター100を噴射しながら、駆動機構43によってウェハWの径方向外側へ移送されているため、ウェハW上で溶解及び分解したレジスト103は、移送方向、即ちウェハWの外側へ搬送除去される。
【0034】
<レジスト除去方法2>
次に、基板処理によってクラスト層が形成されたレジストを、ウェハWから上述のレジスト除去装置を用いて除去する方法を説明する。
図6は、クラスト層が形成されたレジストの除去方法の一例を概念的に示した説明図である。図6(a)に示すように、ウェハWには、絶縁層101、ゲート102及びレジスト103が成膜されており、更にレジスト103には、高ドーズによってクラスト層104が形成されている。制御部7は、図3で説明した同様の手順で、真空ポンプ6、モータ24、及び駆動機構43を動作させることによって、処理室1の内部を約10Paに減圧させ、ノズル31をウェハWの略中央部へ移送し、テーブル部21に載置されたウェハWを回転させる。そして、制御部7は、開閉弁33を開状態にさせることによって、有機系溶剤をノズル31へ供給させ、ノズル31をウェハWの中央部から径方向外側へ移送させる。有機系溶剤の噴射によって生成された有機系溶剤のクラスター100は、図6(a)に示すように、ウェハWに形成されたレジスト103及びクラスト層104に衝突する。
【0035】
ウェハWに噴射された有機系溶剤のクラスター100は、図6(b)に示すように、クラスト層104がある場合もレジスト103の内部まで浸透し、有機系溶剤が浸透したレジスト103は、図6(c)に示すように膨潤する。レジスト103の膨潤によってクラスト層104は分断される。そして、有機系溶剤が内部まで浸透したレジスト103は、図6(d)に示すように、内部も有機系溶剤に溶解し、又は該有機系溶剤によって分解する。そして、レジスト103と、ウェハWとの接合部が切断される。
【0036】
次いで、図6(e)に示すように、溶解及び分解したレジスト103及びクラスト層104は、ウェハW上に噴射された有機系溶剤のクラスター100によって、ウェハWの径方向外側へ吹き飛ばされ、系外へ搬送される。
【0037】
実施の形態に係るレジスト除去装置及びレジスト除去方法によれば、レジスト103以外の基板材料を酸化させること無く、溶剤を用いた従来のレジスト除去方法に比べて、ウェハWからレジスト103を効果的に除去することができる。
【0038】
また、断熱膨張によって温度低下した有機系溶剤のクラスター100がウェハWに噴射されるため、従来のレジスト除去方法に比べてより低温環境下でレジスト103をウェハWから除去することができる。従って、基板材料の酸化を防止することができ、デバイス性能を向上させることができる。
【0039】
更に、ノズル31の移送及びクラスター100の噴射によって、溶解及び分解したレジスト103を系外へ搬出することができる。
【0040】
更にまた、ノズル31を移送させるように構成してあるため、ウェハWを移送させる場合に比べて、処理室1を小型化することができる。
【0041】
(変形例1)
変形例1に係るレジスト除去装置は、有機系溶剤のクラスター噴射によって溶解及び分解したレジスト103を搬送する搬送ガスによって系外へ搬送するように構成されている。変形例1に係るレジスト除去装置は、ノズル31及び搬送ガスの送出に係る構成のみが上述の実施の形態と異なるため、以下では主に上記相異点について説明する。
【0042】
図7は、変形例1における、レジスト除去装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。変形例1に係るレジスト除去装置を構成するクラスター噴射手段203のノズル231は、有機系溶剤の噴射方向がウェハWの略法線方向になるようにノズルアーム42によって支持されている。ウェハWに対して略垂直に有機系溶剤をクラスター噴射した場合、斜め方向に噴射する場合に比べてよりレジスト103の溶解及び分解効率を上昇させることができる。
【0043】
また、処理室1の側壁の適宜箇所には、レジスト103を系外へ搬送するための搬送ガスをウェハW表面に送出するための搬送ガス送出口13が設けられている。例えば、テーブル部21よりも上方に設けられた排気部10に対向する部位に搬送ガス送出口13を設けると良い。このように構成した場合、搬送ガスがウェハWの表面を流れ、処理室1外に排気され、レジスト103を効率的に除去することができる。排気部10には、アルゴンガス、窒素ガス等の搬送ガスを供給する搬送ガス供給部8に接続された搬送ガス供給管81が接続されている。搬送ガス供給部8は、例えば、アルゴンガス、窒素ガス等を収容したガスボンベである。
【0044】
搬送ガス供給部8には、開閉弁82が設けられている。開閉弁82の開閉動作は、制御部7によって制御される。開閉弁82の開閉タイミングは特に限定されないが、例えば、制御部7が開閉弁33及び開閉弁82を交互に開閉させるように構成すると良い。有機系溶剤のクラスター噴射と、クラスター噴射によって溶解及び分解したレジスト103の搬送除去とを交互に行うことによって、ウェハWに対するクラスター100の噴射が搬送ガスの流れによって阻害されることを避けることができ、効果的にレジスト103を除去することができる。もちろん、搬送ガスの流量を最適化することによって、有機系溶剤のクラスター100照射と、搬送ガスの送出とを並行させても良い。
【0045】
図8は、変形例1における、溶解又は分解したレジスト103の搬送除去方法の一例を概念的に示した説明図である。開閉弁82が開状態になり、処理室1内に供給された搬送ガスはウェハW表面を流れ、排気部10から排気される。このように、有機系溶剤のクラスター噴射によって、溶解及び分解したレジスト103は搬送ガスに乗せて系外へ搬送される。
【0046】
変形例1に係るレジスト除去装置及びレジスト除去方法によれば、有機系溶剤をウェハWに対して略垂直に噴射させることによって、より効果的にレジスト103を除去することができ、また、搬送ガスをウェハWに送出することによって、溶解又は分解したレジスト103をウェハWの外側へ効果的に搬送することができる。
【0047】
(変形例2)
変形例2に係るレジスト除去装置は、クラスター噴射手段を処理室に固定し、ウェハ側を移送させるように構成し、更にクラスターの噴射によって除去されたレジストを吸引する吸引部(吸引手段)を備えるように構成されている。変形例2に係るレジスト除去装置は、斯かる構成のみが上述の実施の形態と異なるため、以下では主に上記相異点について説明する。
【0048】
図9は、変形例2における、レジスト除去装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。変形例2に係るレジスト除去装置は、クラスター噴射手段3のノズル31が天板の略中央部に固定された処理室301を備える。また、処理室301の天板には、クラスターの噴射によって除去されたレジストを吸引する吸引部9が設けられており、ノズル31及び吸引部9は並設されている。吸引部9には、吸引管92を介して吸引ポンプ91が接続されている。処理室301の底部には、テーブル部21をモータ24と共に水平方向へ移送させる駆動機構343が設けられている。駆動機構343は、少なくともウェハWの全面をクラスター噴射手段3で走査できるような範囲でテーブル部21を移送させることができる。また、処理室301は、ウェハWの全面をクラスター噴射手段3で走査できるような範囲でテーブル部21を移送させるために必要な横幅を有している。
【0049】
変形例2にあっては、ノズル31は処理室301の天板に固定されているため、実施の形態に比べて、駆動機構343からのパーティクルでウェハWが汚染される虞を低減することができる。
【0050】
なお、言うまでも無く、変形例2に係る処理室に搬送ガス送出口を更に設けるように構成しても良い。この場合、より効率的にレジストを除去することができる。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 処理室(収容体)
2 ウェハ支持台
3 クラスター噴射手段
5 溶剤収容部
6 真空ポンプ
7 制御部
8 搬送ガス供給部
9 吸引部(吸引手段)
13 搬送ガス送出口
31 ノズル
32 溶剤供給管(供給路)
33 開閉弁
41 ガイドレール(移送手段)
42 ノズルアーム(支持部材)
43 駆動機構(移送手段)
81 搬送ガス供給管
82 開閉弁
100 クラスター
103 レジスト
104 クラスト層
W ウェハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストを成膜した基板からレジストを除去するレジスト除去装置において、
有機系溶剤分子が複数集合してなるクラスターを前記基板に噴射するクラスター噴射手段を備える
ことを特徴とするレジスト除去装置。
【請求項2】
前記基板を収容する収容体と、
該収容体の内部を減圧する真空ポンプと、
有機系溶剤を収容する溶剤収容部と
を備え、
前記クラスター噴射手段は、
前記溶剤収容部から前記収容体へ有機系溶剤を供給する供給路と、
該供給路を通じて供給された有機系溶剤を噴射するノズルと
を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のレジスト除去装置。
【請求項3】
有機系溶剤の噴射方向が前記基板の非法線方向になるように前記ノズルを支持する支持部材と、
該支持部材に支持された前記ノズルを前記基板のレジストが成膜された面に沿って移送する移送機構と
を備えることを特徴とする請求項2に記載のレジスト除去装置。
【請求項4】
前記クラスターの噴射によって有機系溶剤に溶解し又は該有機溶剤によって分解したレジストを吸引する吸引手段を備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のレジスト除去装置。
【請求項5】
前記クラスターの噴射によって有機系溶剤に溶解し又は該有機溶剤によって分解したレジストを前記基板から除去し、外部へ搬送する搬送ガスを基板に送出する手段を備える
請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載のレジスト除去装置。
【請求項6】
レジストを成膜した基板からレジストを除去するレジスト除去方法において、
有機系溶剤分子が複数集合してなるクラスターを前記基板に噴射する工程と、
前記クラスターの噴射によって有機系溶剤に溶解し又は該有機溶剤によって分解したレジストを前記基板から除去し、外部へ搬送する工程と
を有することを特徴とするレジスト除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−198933(P2011−198933A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62769(P2010−62769)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】