説明

レゾルバ構造

【課題】本発明は、輪状ステータ板から立ち上げられたレゾルバステータ片のボビン部に対し、三層のステータ巻線の巻線形状を揃えることを目的とする。
【解決手段】本発明によるレゾルバ構造は、ステータ巻線(4)を巻回する各ボビン部(21)間に凹部(40)を設け、この凹部(40)内に設けられた渡りピン(25)を頂部鍔部(31)を有する断面T字型とし、この頂部鍔部(31)の下面(31a)をボビン部(21)の下部鍔部(24)の上面(21a)より輪状ステータ板(1)側とし、ステータ巻線(4)の下端を上面(21a)に揃える構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバ構造に関し、特に、輪状ステータ板から立ち上げられたレゾルバステータ片のボビン部に対し、三層のステータ巻線の巻線形状を揃えるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のレゾルバ構造としては、一般に、特許文献1に開示された構成を図7として挙げることができ、図7において、輪状ステータ板1の内方へ突出する各磁極2には、輪状絶縁キャップ3を介してステータ巻線4が巻回されている。
前記輪状絶縁キャップ3の一端には、複数の端子ピン5を有するコネクタ6が設けられている。
【0003】
前述の図7の従来構成は、ハイブリッドカー等に多用されているが、輪状ステータ板が多層の積層板で構成される等により高コストであるため、図8で示される特許文献2の低コスト化の構成の提案がなされている。
すなわち、図8において、ステータ1上に設けた励磁巻線4aと検出巻線4bとからなる複数のステータ巻線4上に固定子上部板7が設けられ、前記ステータ1と固定子上部板7との間には、積層型の磁性体回転子8が回転自在に配設されている。
【0004】
前述の図8の従来構成の場合、図7の従来構成に比較すると、低価格化は可能であるが、ステータ巻線を大型化することができず、出力電圧を十分に得ることが困難である。
【0005】
前述の図7及び図8で示される従来構成の課題を克服するために開発された構成として、特許文献は開示していないが、図4〜図6の構成を挙げることができる。
すなわち、図4〜図6において符号1で示されるものは、全体形状が輪状をなす輪状ステータ板であり、この輪状ステータ板1の外周縁10には空隙11を介して多数のステータ舌片12が所定角度間隔で配設されている。
【0006】
前記各空隙11は、前記輪状ステータ板1の各空隙11に相当する部分をプレス時に打ち抜き、図5で示されるように直角状にレゾルバステータ片2を切り起すことにより一体に形成され、各空隙11に対応する内側に配設されている。
【0007】
前記各ステータ舌片12のいくつかには、取付用の取付孔12aが形成され、各取付孔12aを介してレゾルバ20を各種機器等に取付けることができる。
前記輪状ステータ板1の一面上には、インサート成形又は別物による別体として形成された輪状絶縁キャップ3が設けられている。
【0008】
前記各レゾルバステータ片2は、前記各空隙11に対応してその内側に配設されていると共に、前記輪状絶縁キャップ3により各レゾルバステータ片2はその周囲が囲まれるように構成されている。
【0009】
図6は、図5のB部を拡大して示す断面図であり、各レゾルバステータ片2の周囲を囲む前記輪状絶縁キャップ3の各ボビン部21に貫通孔22が形成され、この貫通孔22内に前記各レゾルバステータ片2が貫通して設けられている。
【0010】
前記各ボビン部21は、上部鍔部23と下部鍔部24とを有し、前記各鍔部23,24間の外周に励磁巻線4c、第1、第2出力巻線4a,4bからなる三層構成のステータ巻線4が巻回されている。
前記各ボビン部21間の前記輪状絶縁キャップ3上には、渡りピン25が一体状に突出して形成されている。
前記渡りピン25は、一方のボビン部21から他方のボビン部21に対して前記各巻線4a,4b,4cが渡る時に位置決めの係合用として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6028383号明細書
【特許文献2】特開2008−131667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のレゾルバ構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、各ボビンには励磁巻線、第1出力巻線及び第2出力巻線が三層構造として巻回されているため、図6に示されるように、ボビン部に対して励磁巻線、第1出力巻線及び第2出力巻線の順で巻く場合に、各ボビン部間を渡りピンを介して渡る場合、渡りピンの周面の一部に渡り線が渡りピンの高さ方向へ積み重なることになるため、励磁巻線の外側の第1、第2出力巻線は、図6の階段状となり、巻線の下端部分には巻線が巻回できず、整列巻線が不能となり、占積率が低下して特性のバラツキが大となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるレゾルバ構造は、輪状ステータ板の一面に所定角度間隔毎に切り起して形成された多数のレゾルバステータ片と、前記輪状ステータ板の一面に一体成形又は別体で形成され前記各レゾルバステータ片の周囲を囲うボビン部を有する輪状絶縁キャップと、前記ボビン部に形成された上部鍔部及び下部鍔部と、前記輪状絶縁キャップの前記各下部鍔部間に形成された凹部と、前記凹部内に設けられ頂部鍔部を有する断面T字型の渡りピンと、前記ボビン部の外周に巻回された三層のステータ巻線と、を備え、前記各ボビン部間を渡る前記ステータ巻線の渡り線は前記渡りピンの頂部鍔部の下面に係合すると共に、前記下面は前記下部鍔部の上面より輪状ステータ板側へ位置している構成であり、また、前記下部鍔部は、前記上部鍔部より厚さが厚く形成されている構成であり、また、前記レゾルバステータ片は、前記ボビン部から外方へ突出している構成であり、また、前記輪状ステータ板の外周縁は、所定角度間隔で形成されると共に半径方向に延設された多数のステータ舌片よりなり、前記各ステータ舌片間の空隙に対応して前記各レゾルバステータ片が配設されている構成であり、また、前記ステータ舌片には取付固定用の取付孔が形成されている構成である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるレゾルバ構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、輪状ステータ板の一面に所定角度間隔毎に切り起して形成された多数のレゾルバステータ片と、前記輪状ステータ板の一面に一体成形又は別体で形成され前記各レゾルバステータ片の周囲を囲うボビン部を有する輪状絶縁キャップと、前記ボビン部に形成された上部鍔部及び下部鍔部と、前記輪状絶縁キャップの前記各下部鍔部間に形成された凹部と、前記凹部内に設けられ頂部鍔部を有する断面T字型の渡りピンと、前記ボビン部の外周に巻回された三層のステータ巻線と、を備え、前記各ボビン部間を渡る前記ステータ巻線の渡り線は前記渡りピンの頂部鍔部の下面に係合すると共に、前記下面は前記下部鍔部の上面より輪状ステータ板側へ位置していることにより、巻線時の渡り線は全て渡りピンの頂部鍔部の下面で抑えられるため、励磁巻線を巻回した後の第1、第2出力巻線も励磁巻線と同様に下部から巻回でき、整列巻線によって検出精度が向上し、製品の品質向上及び生産性の向上が可能となる。
また、前記下部鍔部は、前記上部鍔部より厚さが厚く形成されていることにより、渡りピンの周囲の凹部を形成することが容易となる。
また、前記レゾルバステータ片は、前記ボビン部から外方へ突出していることにより、図示しないロータとの対応が容易となる。
また、前記輪状ステータ板の外周縁は、所定角度間隔で形成されると共に半径方向に延設された多数のステータ舌片よりなり、前記各ステータ舌片間の空隙に対応して前記各レゾルバステータ片が配設されていることにより、ステータ構造の作成が容易となる。
また、前記ステータ舌片には取付固定用の取付孔が形成されていることにより、レゾルバステータ片に対する輪状絶縁キャップの装着が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるレゾルバ構造を示す平面図である。
【図2】図1のA−A拡大断面図である。
【図3】図2のC部の拡大断面図である。
【図4】従来のレゾルバ構造を示す平面図である。
【図5】図4のA−A拡大断面図である。
【図6】図5のB部の拡大断面図である。
【図7】従来のレゾルバ構造を示す平面図である。
【図8】従来のレゾルバ構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、輪状ステータ板から立上げられたレゾルバステータ片のボビンに対し、三層のステータ巻線の巻線形状を揃えるようにしたレゾルバ構造を提供することを目的とする。
【実施例】
【0017】
以下、図面と共に本発明によるレゾルバ構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
すなわち、図1〜図3において符号1で示されるものは、全体形状が輪状をなす輪状ステータ板であり、この輪状ステータ板の外周縁10には空隙11を介して多数のステータ舌片12が所定角度間隔で半径方向に延設して配設されている。
【0018】
前記空隙11は、前記輪状ステータ板1の各空隙11に相当する部分をプレス時に打ち抜き、図2で示されるように直角状にレゾルバステータ片2をその一面1a側に切り起すことにより一体に形成され、各空隙11に対応する内側に配設されている。
【0019】
前記各ステータ舌片12のいくつかには、取付用の取付孔12aが形成され、各取付孔12aを介してレゾルバ20を各種機器等に取付けることができる。
前記輪状ステータ板1の一面1a上には、インサート成形または別物による別体として形成された輪状絶縁キャップ3が設けられている。
【0020】
前記各レゾルバステータ片2は、前記各空隙11に対応してその内側に配設されていると共に、前記輪状絶縁キャップ3により各レゾルバステータ片2はその周囲が囲まれるように構成されている。
【0021】
図3は、図2のC部を拡大して示す断面図であり、各レゾルバステータ片2の周囲を囲む前記輪状絶縁キャップ3の各ボビン部21に貫通孔22が形成され、この貫通孔22内に前記各レゾルバステータ片2が貫通して設けられている。
【0022】
前記各ボビン部21は、上部鍔部23と下部鍔部24とを有し、前記各鍔部23,24間の外周に励磁巻線4c、第1、第2出力巻線4a,4bからなる三層構成のステータ巻線4が巻回されている。
前記各ボビン部21間の前記輪状絶縁キャップ3上には、渡りピン25が一体状又は別体状にて突出して形成されている。
前記渡りピン25は、一方のボビン部21から他方のボビン部21に対して前記各巻線4a,4b,4cが渡る時に位置決めの係合用として用いられる。
【0023】
前記各ボビン部21の各下部鍔部24間には、凹部40が形成され、この凹部40の中央位置に前記渡りピン25が配設されている。
前記渡りピン25の先端には、頂部鍔部31が形成されて断面T字型に構成され、前記ステータ巻線4の各巻線4a,4b,4cの渡り線30は、一方のボビン部21の上面21aから渡りピン25の頂部鍔部31の下面31aに係合して他方のボビン部21の上面21aから巻き付けられている。
【0024】
前記凹部40は、前記下部鍔部24の上面21aよりも輪状ステータ板1側に向けて深さを有するように窪んで形成され、前記下面31aは前記上面21aより前記輪状ステータ板1側へ位置するように構成されている。
【0025】
前記下部鍔部24の第2厚さTは、前記上部鍔部23の第1厚さTより厚く形成されていることにより、この下部鍔部24に凹部40が形成できるように構成されている。
【0026】
前記各ボビン部21に設けられたレゾルバステータ片2は、前記ボビン部21の貫通孔22から外方へ向けて突出し、前記各ボビン部21から突出した前記各レゾルバステータ片2の内側には、図示しないレゾルバロータが回転自在に配設できるように構成されている。
【0027】
従って、前述の構成において、各ボビン部21に対して、励磁巻線4c、第1出力巻線4a、第2出力巻線4bを巻回させる場合、下部鍔部24の上面21aよりも渡りピン25の頂部鍔部31の下面31aが下方、すなわち、輪状ステータ板1側へ位置しているため、各ボビン部21間を渡る渡り線30は、常に、各ボビン部21の下部鍔部24の上面21aに接しつつ前記下面31aに係合することになる。その結果、前記各巻線4a〜4cの下端は前記上面21a上に接して揃うことになり、従来のように下端が階段状に不揃いとなることもなく、均一な巻線形状とすることができる。
【0028】
前述のステータ巻線4の均一な巻線形状により、ステータ巻線4の下端と鉄心である輪状ステータ板1との距離が従来より接近した状態で巻線可能となり、磁気効率の向上、変圧比の精度向上、巻線形状の均一化、レゾルバの検出精度向上、レゾルバの品質向上、生産性の向上を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によるレゾルバ構造は、レゾルバのみではなく、各種モータのステータ構造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 輪状ステータ板
1a 上面
2 レゾルバステータ片
3 輪状絶縁キャップ
4 ステータ巻線
4a 第1出力巻線
4b 第2出力巻線
4c 励磁巻線
10 外周縁
11 空隙
12 ステータ舌片
12a 取付孔
20 レゾルバ
21 ボビン部
21a 上面
22 貫通孔
23 上部鍔部
24 下部鍔部
25 渡りピン
30 渡り線
31 頂部鍔部
31a 下面
40 凹部
第1厚さ
第2厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪状ステータ板(1)の一面(1a)に所定角度間隔毎に切り起して形成された多数のレゾルバステータ片(2)と、前記輪状ステータ板(1)の一面(1a)に一体成形又は別体で形成され前記各レゾルバステータ片(2)の周囲を囲うボビン部(21)を有する輪状絶縁キャップ(3)と、前記ボビン部(21)に形成された上部鍔部(23)及び下部鍔部(24)と、前記輪状絶縁キャップ(3)の前記各下部鍔部(24)間に形成された凹部(40)と、前記凹部(40)内に設けられ頂部鍔部(31)を有する断面T字型の渡りピン(25)と、前記ボビン部(21)の外周に巻回された三層のステータ巻線(4)と、を備え、
前記各ボビン部(21)間を渡る前記ステータ巻線(4)の渡り線(30)は前記渡りピン(25)の頂部鍔部(31)の下面(31a)に係合すると共に、前記下面(31a)は前記下部鍔部(24)の上面(21a)より輪状ステータ板(1)側へ位置していることを特徴とするレゾルバ構造。
【請求項2】
前記下部鍔部(24)は、前記上部鍔部(23)より厚さが厚く形成されていることを特徴とする請求項1記載のレゾルバ構造。
【請求項3】
前記レゾルバステータ片(2)は、前記ボビン部(21)から外方へ突出していることを特徴とする請求項1又は2記載のレゾルバ構造。
【請求項4】
前記輪状ステータ板(1)の外周縁(10)は、所定角度間隔で形成されると共に半径方向に延設された多数のステータ舌片(12)よりなり、前記各ステータ舌片(12)間の空隙(11)に対応して前記各レゾルバステータ片(2)が配設されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のレゾルバ構造。
【請求項5】
前記ステータ舌片(12)には取付固定用の取付孔(12a)が形成されていることを特徴とする請求項4記載のレゾルバ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−223774(P2011−223774A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91518(P2010−91518)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】