説明

レバースイッチ装置

【課題】レバーの傾倒操作を行なっても他の回転操作軸センサに影響を与えず、それぞれのレバー操作を独立して動作可能とする構成、配置ができるレバースイッチ装置を提供する。
【解決手段】所定の回転中心軸を中心にしてボディ1に回転可能に支持されると共に、この回転中心軸に対して傾倒操作可能なレバー本体101と、ボディ1に回転可能に取付けられ、回転操作されることにより動作する検出部と、レバー本体101に回転可能に内蔵され、一端部に操作ノブと、他端部に検出器を回転操作するためのアーム部112を有する遠隔シャフト111と、を有し、遠隔シャフト111のアーム部112は、レバー本体101の傾倒操作と独立して検出器を回転操作可能なリンク機構を有することを特徴とするレバースイッチ装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバースイッチ装置に関し、特に、自動車等の車両に適用されるレバースイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に適用されるレバースイッチ装置の一例として、ターンシグナルスイッチを操作するレバーの先端部に操作ノブを設けた構成がある。この構成の場合、レバーはボディに回転可能に設けられていると共に操作ノブにより動作する遠隔シャフトが回転可能な状態でレバー内に内蔵されている。そして、上記操作ノブの回転操作に応じて遠隔シャフトの先端部が回転することでボディに設けられた操作ノブに対応するスイッチがスイッチ動作するように構成されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このレバースイッチ装置によれば、回転操作できる操作ノブをレバー内に備える構成としたので、レバー内の構造を簡素化でき、レバーの形状をスリム化した操作用レバーを有する車両用レバースイッチが可能となる。
【特許文献1】特開2002−93289公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のレバースイッチ装置によれば、操作ノブにより操作される遠隔シャフトの先端部は、その回転中心がレバーの回転中心軸上に設けられていないので、例えば、ターンシグナル操作時に遠隔シャフトの先端部の位置が移動し、操作ノブの回転操作が影響を受け、他の軸と独立して動作可能な構成、配置とするには問題があった。
【0005】
本発明の目的は、レバーの傾倒操作を行なっても他の回転操作軸センサに影響を与えず、それぞれのレバー操作を独立して動作可能とする構成、配置ができるレバースイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明は、上記目的を達成するために、所定の回転中心軸を中心にしてボディに回転可能に支持されると共に、前記回転中心軸に対して傾倒操作可能なレバー本体と、前記ボディに回転可能に取付けられ、回転操作されることにより動作する検出部と、前記レバー本体に回転可能に内蔵され、一端部に操作ノブと、他端部に前記検出器を回転操作するためのアーム部を有する遠隔シャフトと、を有し、前記遠隔シャフトの前記アーム部は、前記レバー本体の傾倒操作と独立して前記検出器を回転操作可能なリンク機構を有することを特徴とするレバースイッチ装置を提供する。
[2]前記リンク機構は、前記検出器に対して、前記レバー本体の傾倒操作時にスライド可能なスライド構造を有することを特徴とする上記[1]に記載のレバースイッチ装置であってもよい。
[3]また、前記スライド構造は、前記レバー本体の傾倒操作時の回転中心を中心とするスライド溝を有して構成されていることを特徴とする上記[2]に記載のレバースイッチ装置であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施の形態によれば、レバーの傾倒操作を行なっても他の回転操作軸センサに影響を与えず、それぞれのレバー操作を独立して動作可能とする構成、配置ができるレバースイッチ装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(本発明の実施の形態)
図1は、本発明実施の形態に係るレバースイッチ装置の断面図である。図2は、図1においてレバー本体101の回転軸Cを含むA−A断面図(センサホルダ201周辺の部分断面図)である。
【0009】
図1に示したレバースイッチ装置は、図示しない車両のステアリングコラムの周囲部分に配設されており、図1中のB方向は、車両の略前方向であり、従って、図1はレバースイッチ装置を車両の略上方向から見た断面図である。
【0010】
ボディ1は、前ケース2と、後ケース3とを有しており、これら前ケース2及び後ケース3によりボディ1の外殻が構成されている。前ケース2及び後ケース3の間には、ミドルケース4が設けられ、前ケース2とミドルケース4との間には、ブラケット6が軸部7を中心としてその回りに回転可能に設けられている。
【0011】
このブラケット6の回転の方向は、軸部7を中心とするレバー部100の回転軸C回りの方向である。このブラケット6の回転を案内するように、ミドルケース4の図1中の上側に、溝8が形成されていると共に、ブラケット6には溝8内を摺動しながら移動可能な凸部9が形成されている。尚、溝8は、図示しないが、軸部7と同心の円弧状をなす溝である。
【0012】
また、ブラケット6の図1中の右側には、空洞部10が形成されており、この空洞部10内には、レバー部100の基端部が挿入されている。図2に示すように、レバー本体101に貫通して固定された軸部12(図1では、D点)を中心として、センサホルダ201の逃げ穴201aを通してブラケット6の回転支持穴6aにより回転可能に支持されている。このレバー部100の軸部12を中心とする回転の方向は、図1に示す矢印E方向(後方)と、それと逆のF方向(前方)である。この場合、レバー部100は、ボディ1の図1中の右側に突出した形態となっている。
【0013】
また、レバー部100の基端部には、穴13を有する突出部14が形成されている。穴13内には、スプリング15と節度ピース16が収容されている。これに対して、ブラケット6の空洞部10の奥部には、3個の谷部を有する節度壁17が形成されている。図1の状態では、節度壁17の中間の谷部に、レバー部100の節度ピース16がスプリング15の付勢力によって嵌合している。
【0014】
レバー部100は、円筒状の中空断面形状を有するレバー本体101、操作ノブ110と一体的に回転する遠隔シャフト111およびこの遠隔シャフト111の操作ノブ110と反対側に形成されたアーム部112、とを有して構成されている。尚、レバー部100は、ボディ1に対して回転可能に支持された部分であり、上記説明した節度ピース16等を含むことができる。
【0015】
レバー本体101には、遠隔シャフト111が回転可能に内蔵され、遠隔シャフト111の一端部に操作ノブ110が装着されると共に、他端部にはアーム部112がレバー本体101の切欠部101aから図1の上方向に突出して取付けられている。
【0016】
後ケース3には、センサホルダ201が取り付けられており、図1に示すように、回転検出のためのMRセンサ210が取り付けられている。センサホルダ201は、中心部にレバー部100が貫通可能な穴部201aを有し、後述するロータ220を回転可能に保持するための円筒部201bを有するフランジ形状に形成されている。尚、図1および図2に示すように、センサホルダ201の上部は、ロータ220の立部220cとの干渉を回避するために切り欠かれた形状とされている。
【0017】
MRセンサ210は、磁界によって抵抗値が変化するインジウムアンチモナイド(InSb)磁気抵抗体と、これに磁気バイアスを与える永久磁石から構成されている。検知面に磁性体が接近すると、磁気抵抗体に働く磁束密度が変わり、抵抗値が変化する事によって、出力信号が得られる。
【0018】
図3は、ロータ220の立体斜視図である。ロータ220は、中心部にレバー部100が貫通可能な穴部220aを有し、センサホルダ201の円筒部201bに回転可能に嵌合する円筒部220bを有するフランジ形状に形成されている。ロータ220には、MRセンサ210に対応する位置に、N極S極に着磁された磁石230が取り付けられている。また、アーム部112が作用するための立部221が対向して形成され、それぞれの立部221には先端に球部222aが形成されたピン222が互いに対向して立設され、アーム部112により駆動されてセンサホルダ201に対して回転できるよう構成されている。
【0019】
MRセンサ210が取り付けられたセンサホルダ201と、磁石230が取り付けられたロータ220とにより検出器が構成されるが、検出器は上記の構成に限られず、スライド接点を内部に有するロータリスイッチ等であってもよい。
【0020】
図1および図2に示されるように、アーム部112のロータ220に対する作用点は、図1におけるレバー本体101(レバー部100)の回転軸C上に配置された構成とされている。また、図1に示されるように、アーム部112は、レバー本体101(レバー部100)の傾倒動作の中心、すなわち、図1に示すD点を中心とする円弧状に形成されている。
【0021】
ここで、アーム部112の断面形状は、図2に示すように、溝部112aを両側に有するH型形状とされている。溝部112aには、ロータ220側のピン222の球部222aがスライド可能に嵌合しており、アーム部112とピン222によりリンク機構を構成している。従って、レバー本体101は、図1のD点を中心としてEまたはF方向に傾倒動作してもロータ220に作用せずにアーム部112がピン222に対してスライド可能である。また、図1のC軸を中心にしてレバー本体101が傾倒動作しても、アーム部112の溝部112aとピン222の球部222aとで回転可能であるので、ロータ220に作用せずに傾倒動作可能である。すなわち、レバー本体101のD点またはC軸を中心にした傾倒動作によって影響されずに、ロータ220をアーム部112により回転動作させることができる。
【0022】
(操作ノブによるスイッチ動作)
操作ノブ110を回転操作すると、遠隔シャフト111が回転することにより、アーム部112がロータ220を回転駆動する。ロータ220の回転により磁石230も回転するので、MRセンサ210に作用する磁束密度が変化する。これにより、MRセンサ210の出力を基にスイッチ信号を生成できる。尚、操作ノブ110の回転方向が逆の場合は、MRセンサ210からは極性が逆の出力信号が出力されるので、極性を有するスイッチ信号を生成することにより操作ノブ110の両方向の回転操作によりスイッチ動作を行なうことができる。
【0023】
(レバースイッチ装置の動作)
また、ボディ1の内部には、いずれも図示しないが、ブラケット6の回転に応じてスイッチ動作する第1スイッチと、レバー部100の図1中の矢印E、F方向の回転に応じてスイッチ動作する第2及び第3スイッチとが設けられている。第1スイッチは例えばターンシグナルの制御を行うスイッチとして機能するものであり、第2スイッチは例えばヘッドランプのディマー制御を行うスイッチとして機能するものであり、第3スイッチは例えばパッシングの制御を行うスイッチとして機能するものである。
【0024】
レバー本体101を図1に示す軸部7を中心とする回転軸C回りに回転操作すると、レバー本体101は、ブラケット6の軸部7を中心にしてブラケット6と共に回転動作する。これにより、図示しない第1スイッチが操作されて、ターンシグナルのスイッチ制御が行われる。尚、レバー本体101の回転操作についても、図示しない周知の節度機構によって節度感が与えられる構成となっている。
【0025】
また、レバー本体101を図1中の矢印Eで示す方向(後方)に回転操作すると、レバー本体101は、図2に示す軸部12を中心にして矢印Eの方向に回転する。これにより、図示しない第2スイッチが操作されて、ヘッドランプのディマー制御が行われる。このとき、節度ピース16は、節度壁17のうちの中央の谷部からスプリング15を圧縮しつつ図1中の上側の山部を越え、その上側の谷部に係合する。この動作によって、レバー本体101の矢印E方向への操作に節度感が与えられるようになっている。
【0026】
また、レバー本体101を矢印F方向(前方)に回転操作すると、レバー本体101は、図2に示す軸部12を中心にして矢印Fの方向に回転する。これにより、図示しない第3スイッチが操作されて、パッシングの制御が行われる。このとき、節度ピース16は、節度壁17のうちの中央の谷部からスプリング15を圧縮しつつ図1中の下側の山部に移り、それによる抵抗で、レバー本体101の前方への回転操作に節度感が与えられるようになっている。
【0027】
この構成の場合、レバー本体101は、その節度感が与えられたところでユーザーによる操作が解除されると、スプリング15が節度ピース16を元の谷部に戻すことによって、自動復帰するように構成されている。これに対して、前述のレバー本体101を後方に操作した後においては、レバー本体101を手動で戻すことにより、節度ピース16が図1中の上側の谷部からその下側の山部を越えて元の谷部に戻るように構成されている。
【0028】
(本発明の実施の形態による効果)
本発明の実施の形態によれば、アーム部112の断面形状は、図2に示すように、溝部112aを両側に有するH型形状とされている。溝部112aには、ロータ220側のピン222の球部222aがスライド可能に嵌合しているので、レバー本体101は、図1のD点を中心としてEまたはF方向に傾倒動作してもロータ220に作用せずにアーム部112がピン222に対してスライド可能である。また、図1のC軸を中心にしてレバー本体101が傾倒動作しても、アーム部112の溝部112aとピン222の球部222aとで回転可能であるので、ロータ220に作用せずに傾倒動作可能である。すなわち、レバー本体101のD点またはC軸を中心にした傾倒動作によって影響されずに、ロータ220をアーム部112により回転動作させることができる。これにより、レバーの傾倒操作を行なっても他の回転操作軸センサに影響を与えず、それぞれのレバー操作が独立して動作可能な構成、配置とできるレバースイッチ装置を提供することが可能となる。
【0029】
上記示した本発明の実施の形態では、アーム部112が1本の構成を示したが、レバー本体101に同軸状に2以上の遠隔シャフトを配置して複数のアーム部を回転駆動することにより、複数のセンサのスイッチ動作をさせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明実施の形態に係るレバースイッチ装置の断面図である。
【図2】図2は、図1においてレバー本体101の回転軸Cを含むA−A断面図である。
【図3】図3は、ロータ220の立体斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ボディ
2 前ケース
3 後ケース
4 ミドルケース
6 ブラケット
7 軸部
8 溝
9 凸部
10 空洞部
12 軸部
13 穴
14 突出部
15 スプリング
16 節度ピース
17 節度壁
100 レバー部
101 レバー本体
110 操作ノブ
111 遠隔シャフト
112 アーム部
201 センサホルダ
210 MRセンサ
220 ロータ
221 立部
222 ピン222
230 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転中心軸を中心にしてボディに回転可能に支持されると共に、前記回転中心軸に対して傾倒操作可能なレバー本体と、
前記ボディに回転可能に取付けられ、回転操作されることにより動作する検出部と、
前記レバー本体に回転可能に内蔵され、一端部に操作ノブと、他端部に前記検出器を回転操作するためのアーム部を有する遠隔シャフトと、を有し、
前記遠隔シャフトの前記アーム部は、前記レバー本体の傾倒操作と独立して前記検出器を回転操作可能なリンク機構を有することを特徴とするレバースイッチ装置。
【請求項2】
前記リンク機構は、前記検出器に対して、前記レバー本体の傾倒操作時にスライド可能なスライド構造を有することを特徴とする請求項1に記載のレバースイッチ装置。
【請求項3】
前記スライド構造は、前記レバー本体の傾倒操作時の回転中心を中心とするスライド溝を有して構成されていることを特徴とする請求項2に記載のレバースイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−170124(P2009−170124A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3917(P2008−3917)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】