レベル偏差補正回路付き受信装置及び衛星放送受信装置
【課題】衛星放送信号の信号帯域全体の傾斜がいずれの方向であっても所望の傾斜状態に補正でき、しかも回路規模の小型化を図ることができる衛星放送受信装置を提供すること。
【解決手段】ダウンコンバータ17からケーブル16経由で衛星放送受信装置1に入力された衛星放送受信信号を低雑音増幅器13で増幅した後、レベル偏差補正回路14に入力して衛星放送受信信号のレベル偏差を補正する。レベル偏差補正回路14によって補正された衛星放送受信信号を復調部3で復調してMPEGデコーダ4から映像信号及び音声信号にして出力する。CPU5は、チャンネルセッティング時に復調部3から衛星放送受信信号のレベル情報を取得してレベル偏差補正回路14に設定すべきコントロール信号を求める。
【解決手段】ダウンコンバータ17からケーブル16経由で衛星放送受信装置1に入力された衛星放送受信信号を低雑音増幅器13で増幅した後、レベル偏差補正回路14に入力して衛星放送受信信号のレベル偏差を補正する。レベル偏差補正回路14によって補正された衛星放送受信信号を復調部3で復調してMPEGデコーダ4から映像信号及び音声信号にして出力する。CPU5は、チャンネルセッティング時に復調部3から衛星放送受信信号のレベル情報を取得してレベル偏差補正回路14に設定すべきコントロール信号を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを経由して受信装置に入力される受信信号のレベル偏差を補正するレベル偏差補正回路付き受信装置及び衛星放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パラボラアンテナに設置したダウンコンバータ(LNB)と衛星放送受信装置(例えば、BSチューナ)とをケーブルで接続し、パラボラアンテナで受信された衛星放送受信信号を衛星放送受信装置へ入力している。
【0003】
図9はパラボラアンテナから衛星放送受信装置へ衛星放送受信信号を引き込むための構成を示す構成説明図である。パラボラアンテナ101で反射した衛星放送信号を電気信号に変換してダウンコンバータ102でダウンコンバートする。例えば、12GHz程度の衛星放送信号を1GHz程度に変換する。
【0004】
一方、屋内には屋内ユニットである衛星放送受信装置103がセットトップボックスとして設置される。ダウンコンバータ102の出力端と衛星放送受信装置103の筐体に設けられた入力端子105とがケーブル104で接続される。衛星放送受信装置103内部の入力段に対してインダクタ106を介して電源部が接続されており、ケーブル104を介してダウンコンバータ102へ給電する。
【0005】
衛星放送受信装置103では、ケーブル104を介して入力した衛星放送受信信号が直流カットコンデンサ107を介して低雑音増幅器108に入力して増幅される。低雑音増幅器108の出力信号は復調器を構成するダイレクトコンバージョンレシーバ(DCR)109へ入力される。DCR109は増幅された衛星放送受信信号を復調してベースバンド信号となるI,Qデータを出力する。
【0006】
かかる衛星放送受信装置103において、ケーブル104を介して取り込まれた衛星放送受信信号の信号レベルが受信信号の帯域内で傾斜する現象が生じる。衛星放送受信信号がケーブル104を通過する前のダウンコンバータ102の出力段では、図10(a)に示すように受信信号の帯域内においてフラットな状態であったものが、ケーブル104を通過して衛星放送受信装置103の入力端子105まで到達した時点で、ケーブル104を通過時の高帯域ロスにより図10(b)に示すように高域側に近づくにしたがい信号レベルが低下する右下りの傾斜が生じる。また、共聴受信などでは複数のマッチングロスやブースタにより、図10(c)に示すように低域側が低く高域側に近づくにしたがい信号レベルが高くなる右上りの傾斜が生じる場合もある。
【0007】
従来は、図10(b)に示すような右下りの傾斜を補正する目的で、図11に示す回路を付加することが提案されている(特許文献1参照)。BSチューナの入力端(IN)にバンドパスフィルタ201を接続し、このバンドパスフィルタ201には初段増幅器202、分配器203が順次接続される。分配器203の一方の出力端には可変アッテネータ204が接続される。可変アッテネータ204は受信する衛星放送受信信号のレベルによって制御される。可変アッテネータ204の次段には開閉手段206が設けられ、開閉手段206にはフィルタ205が並列に接続可能になっている。フィルタ205はバンドパスフィルタあるいはハイパスフィルタによって構成され、少なくとも中間周波帯の所定周波数以上の衛星放送信号を通過するように構成される。フィルタ205及び開閉手段206の出力段には次段増幅器207及び復調器208が接続される。
【0008】
レベルが低くなる所定周波数以上の高域側の衛星放送信号を受信するときには、開閉手段206をオフとして、可変アッテネータ204から出力される衛星放送受信信号を、フィルタ205を介して次段増幅器207に入力する。レベルの高い低域側の衛星放送受信信号はフィルタ205によって減衰し、次段増幅器207に入力される時点でレベルが低下する。この結果、次段増幅器207は低域側の衛星放送受信信号によって動作が飽和状態になることが無くいわゆるゲインコンプレッションが引き起こされない。よって、レベルの低い高域側の衛星放送受信信号を復調した際のベースバンド信号のレベル不足を来すことがない。なお、低域側の衛星放送受信信号を受信するときには開閉手段206をONとする。また、入力端(IN)に入力される衛星放送信号のレベルが上記の中間周波帯の全域でほぼ均一であると判断された場合には開閉手段206をON状態とし、フィルタ205を接続する必要はない。
【特許文献1】特開2004−48123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した付加回路では、図10(b)のように低域側の信号レベルが高い右下がりの場合には有効であるが、どちらが高いか不明な場合には適用できない。図10(c)に示すように高域側の信号レベルが高くなる右上りの場合は、フィルタ及び開閉手段からなる回路を追加しなければならず、回路規模が大きくなってしまう。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、受信信号の信号帯域全体の傾斜がいずれの方向であっても所望の傾斜状態(フラットな状態を含む)に補正でき、しかも回路規模の小型化を図ることのできるレベル偏差補正回路付き受信装置及び衛星放送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のレベル偏差補正回路付き受信装置は、ダウンコンバートされた中間周波帯の受信信号を増幅する増幅器と、前記増幅器で増幅された受信信号のレベル偏差を補正するレベル偏差補正回路と、前記レベル偏差補正回路によって補正された受信信号を復調する復調部と、を具備したことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、受信信号のレベル偏差を補正するレベル偏差補正回路を備えたので、受信信号の信号帯域全体の傾斜がいずれの方向であっても所望の傾斜状態(フラットな状態を含む)に補正でき、しかも傾斜方向毎に補正回路を設ける必要が無いので、回路規模の小型化を図ることができる。
【0013】
また本発明は、上記レベル偏差補正回路付き受信装置において、前記レベル偏差補正回路は、前記受信信号の帯域内で上側が高くなる周波数傾斜又は下側が高くなる周波数傾斜のいずれかを選択可能である。
【0014】
この構成により、受信信号の帯域内で上側が高くなる周波数傾斜又は下側が高くなる周波数傾斜のいずれかを選択可能であるので、受信信号の周波数傾斜が上側が高くなる場合及び下側が高くなる場合のいずれであっても1つのレベル偏差補正回路で対応でき、回路規模の小型化を図ることができる。
【0015】
また前記レベル偏差補正回路は、共振回路の周波数特性の傾斜部を用いてレベル偏差を補正するように構成することができる。
【0016】
また本発明は、上記レベル偏差補正回路付き受信装置において、前記増幅器で増幅された受信信号の信号レベルを検知するレベル検知手段と、前記レベル検知手段によって検知されたレベル偏差補正前の受信信号の信号レベルから当該受信信号の周波数傾斜を所望の状態に補正するコントロール信号を求めて前記レベル偏差補正回路にコントロール信号を与える制御手段と、を具備したことを特徴とする。
【0017】
この構成により、レベル偏差補正回路は制御手段からのコントロール信号によって制御されることとなり、受信信号の周波数傾斜の状態に応じて自在に補正可能となる。
【0018】
また本発明は、上記レベル偏差補正回路付き受信装置において、前記制御手段は、前記受信信号に含まれるチャンネルをサーチするチャンネルセッティング時に、前記レベル検知手段から受信信号の信号レベルを取得してコントロール信号を求めることを特徴とする。
【0019】
この構成により、チャンネルセッティング時に受信信号の周波数傾斜を検出できるので、その後の受信時には当該周波数傾斜を補正するコントロール信号を与えることにより最適な復調性能を実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、受信信号の信号帯域全体の傾斜がいずれの方向であっても所望の傾斜状態(フラットな状態を含む)に補正でき、しかも回路規模の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施の形態に係る衛星放送受信装置の全体構成図である。衛星放送受信装置1は、衛星放送受信信号をダイレクトコンバージョンレシーバにて希望チャンネルをベースバンド信号であるI,Q信号に変換して出力するチューナ部2と、チューナ部2から出力されるI,Q信号をデジタル復調及び誤り訂正する復調部3と、復調部3から出力されるTS(トランスポートストリーム)をMPEGデコードして映像信号及び音声信号を出力するMPEGデコーダ4とを備える。また、衛星放送受信装置1は、後述するレベル偏差補正用のデータを生成すると共にチューナ部2に対してレベル偏差補正用のコントロール信号を出力するCPU5を備える。
【0022】
チューナ部2の入力段にインダクタ11を介して図示していない電源部が接続され、インダクタ11と信号線路との接続点よりも後段に直流カットコンデンサ12及び低雑音増幅器13が設けられている。低雑音増幅器13の出力段にレベル偏差補正回路14が接続されている。レベル偏差補正回路14の出力段にダイレクトコンバージョンレシーバ19が接続されている。チューナ部2は衛星放送受信信号から希望チャンネルを受信するためのその他の回路素子を備えているが省略されている。
【0023】
衛星放送受信装置1の入力端子15にはケーブル16の一端が接続されている。ケーブル16の他端はダウンコンバータ17に接続されている。ダウンコンバータ17は、パラボラアンテナ18に設置されている。ダウンコンバータ17は、ケーブル16経由で上記電源部から電力供給を受けて動作し、パラボラアンテナ18で受けた衛星放送受信信号をダウンコンバートしてケーブル16へ送出する。
【0024】
レベル偏差補正回路14は、衛星放送受信信号の帯域内での周波数傾斜を所望の状態に調整する回路である。レベル偏差補正回路14の特性は、トラップ型の共振回路、同調回路又はフィルタ等の特性を単独で又はそれら特性を組み合わせて実現することができる。レベル偏差補正回路14は、衛星放送受信信号の帯域内での周波数傾斜をCPU5からのコントロール信号に基づいて補正する。レベル偏差補正回路14により受信信号の帯域内での周波数傾斜を適切な状態にしてから後段のダイレクトコンバージョンレシーバ19へ出力するように構成している。なお、ダイレクトコンバージョンレシーバ19は、衛星放送受信信号をベースバンド信号であるI,Q信号に直接変換する回路である。
【0025】
図2は衛星放送受信装置1の機能ブロック図である。MPEGデコーダ4に対してCPU5が接続されると共にRAM21が接続されている。RAM21はMPEGデコーダ4が映像再生のために使用するメモリである。CPU5にはROM22及びRAM23が接続される。例えば、ROM22にはCPU5が読み込んで実行するプログラムが格納され、RAM23にはCPU5からデータが書き込み/読み出しされる。
【0026】
チューナ部2においてレベル偏差補正後の衛星放送受信信号を増幅する増幅器(ダイレクトコンバージョンレシーバに内蔵)に対して復調部3から出力されるAGC信号にてゲイン制御が行われる。かかるゲイン制御は衛星放送受信信号の全ての帯域に対して行われる。CPU5は、レベル偏差補正データを生成するためにMPEGデコーダ4を経由して復調部3から衛星放送受信信号のレベル情報を全ての帯域について取得する。
【0027】
図3はレベル偏差補正回路14を並列共振回路によるトラップで構成した場合の回路構成図である。同図に示す回路は、抵抗素子31、インダクタ32及び可変コンデンサ33を信号線路に対して並列接続して構成している。本回路は、図4に示すように共振点(中央部の落ち込み部)を挟んで2つの傾斜部K1,K2を有する周波数特性となる。本回路に設けた抵抗素子31の抵抗値Rを大きくするほど傾斜部K1,K2の傾きが大きくなる。本回路の傾斜部K1,K2は、可変コンデンサ33の容量値に応じて矢印方向(図4)へ移動する。本実施の形態は、本回路の傾斜部K1又はK2を用いることにより衛星放送受信信号の周波数傾斜を所望の状態に調整する。
【0028】
図5はレベル偏差補正回路14を並列共振による同調回路で構成した場合の回路構成図である。同図に示す同調回路は、抵抗素子34、インダクタ35及び可変コンデンサ36を信号線路とグラウンドとの間に並列接続して構成している。レベル偏差補正回路14の入力段及び出力段にはそれぞれ直流カットコンデンサ24,25が設けられている。同調回路は、図6に示すように2つの傾斜部K3,K4を有する周波数特性を持つ。同調回路の傾斜部K3,K4は、可変コンデンサ36の容量値に応じて矢印方向(図6)へ移動する。本実施の形態は、図3のトラップを用いるのとは別に図5に示す同調回路を用いても良く、同調回路の傾斜部K3又はK4を用いることにより衛星放送受信信号の周波数傾斜を所望の状態に調整する。
【0029】
CPU5から可変コンデンサ33又は36に容量値を決めるコントロール信号(制御電圧)を印加可能に構成されている。すなわち、CPU5から可変コンデンサ33又は36に容量値を制御することにより、トラップ型の共振回路(図3)又は同調回路(図5)の周波数特性を変化させて衛星放送受信信号の周波数傾斜を所望の状態に調整することができるように構成されている。
【0030】
なお、レベル偏差補正回路14は衛星放送受信信号の周波数傾斜を所望の状態に調整することができるのであれば、トラップ型の共振回路(図3)又は同調回路(図5)に限定されるものではなく、その他のタイプの共振回路を用いることもできる。共振回路の持つ傾斜部を利用して衛星放送受信信号の周波数傾斜を所望の状態に調整することができる。
【0031】
次に、以上のように構成された本実施の形態の動作について説明する。
本実施の形態に係る衛星放送受信装置1は、チャンネルセッティングを行う初期設定において信号帯域全体をスキャンしてチャンネルサーチを実行する。チャンネルサーチでは、CPU5が衛星放送受信信号に含まれる各チャンネルの中心周波数を検出する。このとき、衛星放送受信信号の全信号帯域におけるレベル情報が得られる。そこで、CPU5はMPEGデコーダ4を経由して復調部3から衛星放送受信信号の全信号帯域におけるレベル情報を取得してRAM23に保存する。本実施の形態では、検出された各チャンネルのレベル情報を記憶するものとするが、チャンネル毎のレベル情報に限定されるものではない。
【0032】
いま、CPU5がRAM23に記憶した各チャンネルのレベル情報から、図7(a)に示すような周波数傾斜が検出されたとして説明する。図7(a)に示す右上りの周波数傾斜を図7(b)に示すようなフラットな状態に調整するのであれば、図4に示すトラップの傾斜部K1を利用することができる。トラップの傾斜部K1を利用して図7(a)に示す斜線部Pを減衰させることにより、フラットな状態の周波数特性とすることができる。CPU5は、RAM23に記憶した各チャンネルのレベル情報から周波数傾斜を検出し、周波数傾斜が最もフラットになる傾斜部K1の位置を求め、この求めた位置まで傾斜部K1をシフトさせるための容量値を求める。この求められた容量値となるような制御電圧をコントロール信号として可変コンデンサ33に与える。この結果、レベル偏差補正回路14におけるトラップが衛星放送受信信号の周波数傾斜をフラットな周波数特性に調整可能な特性に設定される。
【0033】
チャンネルセッティング後のチャンネル受信時には、CPU5からレベル偏差補正回路14へコントロール信号が与えられる。これにより、レベル偏差補正回路14からは信号帯域全体において信号レベルがフラットな周波数特性に調整された衛星放送受信信号が出力される。
【0034】
ところで、衛星放送受信信号の周波数傾斜は個別の状況により周波数傾斜の状況が変化することは上述したとおりである。例えば、図10(b)のように周波数傾斜が右下りとなる場合もある。図10(b)に示す右下りの周波数傾斜を図7(b)に示すようなフラットな状態に調整するのであれば、図4に示す回路の傾斜部K2を利用することができる。CPU5は、RAM23に記憶した各チャンネルのレベル情報から図10(b)の周波数傾斜を検出し、周波数傾斜が最もフラットになる傾斜部K2の位置を求め、この求めた位置まで傾斜部K2をシフトさせるための容量値を求める。この求められた容量値となるような制御電圧をコントロール信号として可変コンデンサ33に与える。この結果、レベル偏差補正回路14を構成するトラップ型の共振回路が衛星放送受信信号の周波数傾斜をフラットな周波数特性に調整可能な特性に設定される。
【0035】
レベル偏差補正回路14を同調回路(図5)で構成した場合もトラップの場合と同様に傾斜部K3,K4を利用して、衛星放送受信信号の周波数傾斜をフラットな周波数特性に調整することができる。
【0036】
このように、本実施の形態によれば、衛星放送受信信号の周波数傾斜が右上り又は右下りのいずれの場合であっても1つのレベル偏差補正回路14でフラットな周波数特性に調整することができ、回路規模の小型化が可能である。
【0037】
以上の説明では、衛星放送受信信号の周波数傾斜をフラットな周波数特性に調整しているが、受信すべき周波数に応じて望ましい傾斜状態に調整するようにしても良い。
【0038】
図7(a)において周波数f1を中心周波数とするチャンネルを受信する場合、当該チャンネル以外の周波数f2〜f4を周波数f1の信号レベルが小さくなるように調整する。例えば、周波数f1を中心周波数とするチャンネルを受信する場合、図8(a)に示すような周波数傾斜となるようにレベル補正偏差回路14の特性を設定する。
【0039】
周波数f2又はf3を中心周波数とするチャンネルを受信する場合、図8(b)(c)に示すような周波数傾斜となるようにレベル補正偏差回路14の特性を設定する。レベル偏差補正前の衛星放送受信信号が図7(a)に示す右上りの周波数傾斜の場合、周波数f2又はf3よりも低周波帯域は信号レベルが小さいので調整不要である。周波数f2又はf3よりも高周波帯域はトラップの傾斜部K1(図4)又は同調回路の傾斜部K3(図6)を利用してカットし、図8(b)又は(c)に示すように周波数f2又はf3よりも高周波帯域の信号レベルが小さくなるように調整する。
【0040】
一方、周波数f4を中心周波数とするチャンネルを受信する場合、図8(d)に示すようにレベル偏差補正前の衛星放送受信信号の周波数傾斜のまま出力する。図7(a)に示す右上りの周波数傾斜の場合、周波数f4を中心周波数とするチャンネルの信号レベルは他の周波数の信号レベルよりも大きいので調整する必要がない。レベル補正偏差回路14における補正量が0となるように特性を設定する。
【0041】
以上のように、受信すべき周波数に応じてレベル補正偏差回路14の特性をアクティブに設定するため、RAM23に各周波数(又はチャンネル)に対応して制御電圧を計算して記憶しておく。そして、当該衛星放送受信装置1に外部から供給される選局信号に基づいて対応する制御電圧をRAM23から読み出し、当該制御電圧をコントロール信号でレベル補正偏差回路14に与える。
【0042】
このように受信すべき周波数に応じてレベル補正偏差回路14の特性をアクティブに設定することにより、受信すべき周波数毎に適切な信号レベルを実現できる。
【0043】
なお、図2に示す構成例ではCPU5とMPEGデコーダ4とが分かれているが、CPU5とMPEGデコーダ4とが一体化した一体型の集積回路を用いることもできる。CPU5及びMPEGデコーダ4一体型の集積回路を用いた場合も上記同様の動作となる。
【0044】
本発明は衛星放送受信装置に限定されるものではなく、受信信号に周波数傾斜が生じる可能性の有る他の受信装置にも同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、ケーブルを経由して受信装置に入力される受信信号にレベル偏差が生じるために当該レベル偏差を補正する必要のある種々の受信装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係る衛星放送受信装置の概略的な全体構成図
【図2】上記実施の形態に係る衛星放送受信装置の部分的な機能ブロック図
【図3】上記実施の形態におけるレベル偏差補正回路及びその周辺回路の構成図
【図4】図3に示すレベル偏差補正回路の特性図
【図5】上記実施の形態における他のレベル偏差補正回路及びその周辺回路の構成図
【図6】図5に示すレベル偏差補正回路の特性図
【図7】(a)レベル偏差補正前の衛星放送受信信号の周波数傾斜を示す図、(b)レベル偏差補正後の衛星放送受信信号の周波数傾斜を示す図
【図8】レベル偏差補正回路の特性を周波数に応じてアクティブに変更する変形例におけるレベル偏差補正後の衛星放送受信信号の周波数傾斜を示す図
【図9】従来の衛星放送受信装置の概略的な構成図
【図10】衛星放送受信信号の周波数傾斜の状態を説明するための特性図
【図11】従来の補正回路の追加された衛星放送受信装置の構成図
【符号の説明】
【0047】
1 衛星放送受信装置
2 チューナ部
3 復調部
4 MPEGデコーダ
5 CPU
13 低雑音増幅器
14 レベル偏差補正回路
16 ケーブル
17 ダウンコンバータ
18 パラボラアンテナ
21、23 RAM
22 ROM
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを経由して受信装置に入力される受信信号のレベル偏差を補正するレベル偏差補正回路付き受信装置及び衛星放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パラボラアンテナに設置したダウンコンバータ(LNB)と衛星放送受信装置(例えば、BSチューナ)とをケーブルで接続し、パラボラアンテナで受信された衛星放送受信信号を衛星放送受信装置へ入力している。
【0003】
図9はパラボラアンテナから衛星放送受信装置へ衛星放送受信信号を引き込むための構成を示す構成説明図である。パラボラアンテナ101で反射した衛星放送信号を電気信号に変換してダウンコンバータ102でダウンコンバートする。例えば、12GHz程度の衛星放送信号を1GHz程度に変換する。
【0004】
一方、屋内には屋内ユニットである衛星放送受信装置103がセットトップボックスとして設置される。ダウンコンバータ102の出力端と衛星放送受信装置103の筐体に設けられた入力端子105とがケーブル104で接続される。衛星放送受信装置103内部の入力段に対してインダクタ106を介して電源部が接続されており、ケーブル104を介してダウンコンバータ102へ給電する。
【0005】
衛星放送受信装置103では、ケーブル104を介して入力した衛星放送受信信号が直流カットコンデンサ107を介して低雑音増幅器108に入力して増幅される。低雑音増幅器108の出力信号は復調器を構成するダイレクトコンバージョンレシーバ(DCR)109へ入力される。DCR109は増幅された衛星放送受信信号を復調してベースバンド信号となるI,Qデータを出力する。
【0006】
かかる衛星放送受信装置103において、ケーブル104を介して取り込まれた衛星放送受信信号の信号レベルが受信信号の帯域内で傾斜する現象が生じる。衛星放送受信信号がケーブル104を通過する前のダウンコンバータ102の出力段では、図10(a)に示すように受信信号の帯域内においてフラットな状態であったものが、ケーブル104を通過して衛星放送受信装置103の入力端子105まで到達した時点で、ケーブル104を通過時の高帯域ロスにより図10(b)に示すように高域側に近づくにしたがい信号レベルが低下する右下りの傾斜が生じる。また、共聴受信などでは複数のマッチングロスやブースタにより、図10(c)に示すように低域側が低く高域側に近づくにしたがい信号レベルが高くなる右上りの傾斜が生じる場合もある。
【0007】
従来は、図10(b)に示すような右下りの傾斜を補正する目的で、図11に示す回路を付加することが提案されている(特許文献1参照)。BSチューナの入力端(IN)にバンドパスフィルタ201を接続し、このバンドパスフィルタ201には初段増幅器202、分配器203が順次接続される。分配器203の一方の出力端には可変アッテネータ204が接続される。可変アッテネータ204は受信する衛星放送受信信号のレベルによって制御される。可変アッテネータ204の次段には開閉手段206が設けられ、開閉手段206にはフィルタ205が並列に接続可能になっている。フィルタ205はバンドパスフィルタあるいはハイパスフィルタによって構成され、少なくとも中間周波帯の所定周波数以上の衛星放送信号を通過するように構成される。フィルタ205及び開閉手段206の出力段には次段増幅器207及び復調器208が接続される。
【0008】
レベルが低くなる所定周波数以上の高域側の衛星放送信号を受信するときには、開閉手段206をオフとして、可変アッテネータ204から出力される衛星放送受信信号を、フィルタ205を介して次段増幅器207に入力する。レベルの高い低域側の衛星放送受信信号はフィルタ205によって減衰し、次段増幅器207に入力される時点でレベルが低下する。この結果、次段増幅器207は低域側の衛星放送受信信号によって動作が飽和状態になることが無くいわゆるゲインコンプレッションが引き起こされない。よって、レベルの低い高域側の衛星放送受信信号を復調した際のベースバンド信号のレベル不足を来すことがない。なお、低域側の衛星放送受信信号を受信するときには開閉手段206をONとする。また、入力端(IN)に入力される衛星放送信号のレベルが上記の中間周波帯の全域でほぼ均一であると判断された場合には開閉手段206をON状態とし、フィルタ205を接続する必要はない。
【特許文献1】特開2004−48123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した付加回路では、図10(b)のように低域側の信号レベルが高い右下がりの場合には有効であるが、どちらが高いか不明な場合には適用できない。図10(c)に示すように高域側の信号レベルが高くなる右上りの場合は、フィルタ及び開閉手段からなる回路を追加しなければならず、回路規模が大きくなってしまう。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、受信信号の信号帯域全体の傾斜がいずれの方向であっても所望の傾斜状態(フラットな状態を含む)に補正でき、しかも回路規模の小型化を図ることのできるレベル偏差補正回路付き受信装置及び衛星放送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のレベル偏差補正回路付き受信装置は、ダウンコンバートされた中間周波帯の受信信号を増幅する増幅器と、前記増幅器で増幅された受信信号のレベル偏差を補正するレベル偏差補正回路と、前記レベル偏差補正回路によって補正された受信信号を復調する復調部と、を具備したことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、受信信号のレベル偏差を補正するレベル偏差補正回路を備えたので、受信信号の信号帯域全体の傾斜がいずれの方向であっても所望の傾斜状態(フラットな状態を含む)に補正でき、しかも傾斜方向毎に補正回路を設ける必要が無いので、回路規模の小型化を図ることができる。
【0013】
また本発明は、上記レベル偏差補正回路付き受信装置において、前記レベル偏差補正回路は、前記受信信号の帯域内で上側が高くなる周波数傾斜又は下側が高くなる周波数傾斜のいずれかを選択可能である。
【0014】
この構成により、受信信号の帯域内で上側が高くなる周波数傾斜又は下側が高くなる周波数傾斜のいずれかを選択可能であるので、受信信号の周波数傾斜が上側が高くなる場合及び下側が高くなる場合のいずれであっても1つのレベル偏差補正回路で対応でき、回路規模の小型化を図ることができる。
【0015】
また前記レベル偏差補正回路は、共振回路の周波数特性の傾斜部を用いてレベル偏差を補正するように構成することができる。
【0016】
また本発明は、上記レベル偏差補正回路付き受信装置において、前記増幅器で増幅された受信信号の信号レベルを検知するレベル検知手段と、前記レベル検知手段によって検知されたレベル偏差補正前の受信信号の信号レベルから当該受信信号の周波数傾斜を所望の状態に補正するコントロール信号を求めて前記レベル偏差補正回路にコントロール信号を与える制御手段と、を具備したことを特徴とする。
【0017】
この構成により、レベル偏差補正回路は制御手段からのコントロール信号によって制御されることとなり、受信信号の周波数傾斜の状態に応じて自在に補正可能となる。
【0018】
また本発明は、上記レベル偏差補正回路付き受信装置において、前記制御手段は、前記受信信号に含まれるチャンネルをサーチするチャンネルセッティング時に、前記レベル検知手段から受信信号の信号レベルを取得してコントロール信号を求めることを特徴とする。
【0019】
この構成により、チャンネルセッティング時に受信信号の周波数傾斜を検出できるので、その後の受信時には当該周波数傾斜を補正するコントロール信号を与えることにより最適な復調性能を実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、受信信号の信号帯域全体の傾斜がいずれの方向であっても所望の傾斜状態(フラットな状態を含む)に補正でき、しかも回路規模の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施の形態に係る衛星放送受信装置の全体構成図である。衛星放送受信装置1は、衛星放送受信信号をダイレクトコンバージョンレシーバにて希望チャンネルをベースバンド信号であるI,Q信号に変換して出力するチューナ部2と、チューナ部2から出力されるI,Q信号をデジタル復調及び誤り訂正する復調部3と、復調部3から出力されるTS(トランスポートストリーム)をMPEGデコードして映像信号及び音声信号を出力するMPEGデコーダ4とを備える。また、衛星放送受信装置1は、後述するレベル偏差補正用のデータを生成すると共にチューナ部2に対してレベル偏差補正用のコントロール信号を出力するCPU5を備える。
【0022】
チューナ部2の入力段にインダクタ11を介して図示していない電源部が接続され、インダクタ11と信号線路との接続点よりも後段に直流カットコンデンサ12及び低雑音増幅器13が設けられている。低雑音増幅器13の出力段にレベル偏差補正回路14が接続されている。レベル偏差補正回路14の出力段にダイレクトコンバージョンレシーバ19が接続されている。チューナ部2は衛星放送受信信号から希望チャンネルを受信するためのその他の回路素子を備えているが省略されている。
【0023】
衛星放送受信装置1の入力端子15にはケーブル16の一端が接続されている。ケーブル16の他端はダウンコンバータ17に接続されている。ダウンコンバータ17は、パラボラアンテナ18に設置されている。ダウンコンバータ17は、ケーブル16経由で上記電源部から電力供給を受けて動作し、パラボラアンテナ18で受けた衛星放送受信信号をダウンコンバートしてケーブル16へ送出する。
【0024】
レベル偏差補正回路14は、衛星放送受信信号の帯域内での周波数傾斜を所望の状態に調整する回路である。レベル偏差補正回路14の特性は、トラップ型の共振回路、同調回路又はフィルタ等の特性を単独で又はそれら特性を組み合わせて実現することができる。レベル偏差補正回路14は、衛星放送受信信号の帯域内での周波数傾斜をCPU5からのコントロール信号に基づいて補正する。レベル偏差補正回路14により受信信号の帯域内での周波数傾斜を適切な状態にしてから後段のダイレクトコンバージョンレシーバ19へ出力するように構成している。なお、ダイレクトコンバージョンレシーバ19は、衛星放送受信信号をベースバンド信号であるI,Q信号に直接変換する回路である。
【0025】
図2は衛星放送受信装置1の機能ブロック図である。MPEGデコーダ4に対してCPU5が接続されると共にRAM21が接続されている。RAM21はMPEGデコーダ4が映像再生のために使用するメモリである。CPU5にはROM22及びRAM23が接続される。例えば、ROM22にはCPU5が読み込んで実行するプログラムが格納され、RAM23にはCPU5からデータが書き込み/読み出しされる。
【0026】
チューナ部2においてレベル偏差補正後の衛星放送受信信号を増幅する増幅器(ダイレクトコンバージョンレシーバに内蔵)に対して復調部3から出力されるAGC信号にてゲイン制御が行われる。かかるゲイン制御は衛星放送受信信号の全ての帯域に対して行われる。CPU5は、レベル偏差補正データを生成するためにMPEGデコーダ4を経由して復調部3から衛星放送受信信号のレベル情報を全ての帯域について取得する。
【0027】
図3はレベル偏差補正回路14を並列共振回路によるトラップで構成した場合の回路構成図である。同図に示す回路は、抵抗素子31、インダクタ32及び可変コンデンサ33を信号線路に対して並列接続して構成している。本回路は、図4に示すように共振点(中央部の落ち込み部)を挟んで2つの傾斜部K1,K2を有する周波数特性となる。本回路に設けた抵抗素子31の抵抗値Rを大きくするほど傾斜部K1,K2の傾きが大きくなる。本回路の傾斜部K1,K2は、可変コンデンサ33の容量値に応じて矢印方向(図4)へ移動する。本実施の形態は、本回路の傾斜部K1又はK2を用いることにより衛星放送受信信号の周波数傾斜を所望の状態に調整する。
【0028】
図5はレベル偏差補正回路14を並列共振による同調回路で構成した場合の回路構成図である。同図に示す同調回路は、抵抗素子34、インダクタ35及び可変コンデンサ36を信号線路とグラウンドとの間に並列接続して構成している。レベル偏差補正回路14の入力段及び出力段にはそれぞれ直流カットコンデンサ24,25が設けられている。同調回路は、図6に示すように2つの傾斜部K3,K4を有する周波数特性を持つ。同調回路の傾斜部K3,K4は、可変コンデンサ36の容量値に応じて矢印方向(図6)へ移動する。本実施の形態は、図3のトラップを用いるのとは別に図5に示す同調回路を用いても良く、同調回路の傾斜部K3又はK4を用いることにより衛星放送受信信号の周波数傾斜を所望の状態に調整する。
【0029】
CPU5から可変コンデンサ33又は36に容量値を決めるコントロール信号(制御電圧)を印加可能に構成されている。すなわち、CPU5から可変コンデンサ33又は36に容量値を制御することにより、トラップ型の共振回路(図3)又は同調回路(図5)の周波数特性を変化させて衛星放送受信信号の周波数傾斜を所望の状態に調整することができるように構成されている。
【0030】
なお、レベル偏差補正回路14は衛星放送受信信号の周波数傾斜を所望の状態に調整することができるのであれば、トラップ型の共振回路(図3)又は同調回路(図5)に限定されるものではなく、その他のタイプの共振回路を用いることもできる。共振回路の持つ傾斜部を利用して衛星放送受信信号の周波数傾斜を所望の状態に調整することができる。
【0031】
次に、以上のように構成された本実施の形態の動作について説明する。
本実施の形態に係る衛星放送受信装置1は、チャンネルセッティングを行う初期設定において信号帯域全体をスキャンしてチャンネルサーチを実行する。チャンネルサーチでは、CPU5が衛星放送受信信号に含まれる各チャンネルの中心周波数を検出する。このとき、衛星放送受信信号の全信号帯域におけるレベル情報が得られる。そこで、CPU5はMPEGデコーダ4を経由して復調部3から衛星放送受信信号の全信号帯域におけるレベル情報を取得してRAM23に保存する。本実施の形態では、検出された各チャンネルのレベル情報を記憶するものとするが、チャンネル毎のレベル情報に限定されるものではない。
【0032】
いま、CPU5がRAM23に記憶した各チャンネルのレベル情報から、図7(a)に示すような周波数傾斜が検出されたとして説明する。図7(a)に示す右上りの周波数傾斜を図7(b)に示すようなフラットな状態に調整するのであれば、図4に示すトラップの傾斜部K1を利用することができる。トラップの傾斜部K1を利用して図7(a)に示す斜線部Pを減衰させることにより、フラットな状態の周波数特性とすることができる。CPU5は、RAM23に記憶した各チャンネルのレベル情報から周波数傾斜を検出し、周波数傾斜が最もフラットになる傾斜部K1の位置を求め、この求めた位置まで傾斜部K1をシフトさせるための容量値を求める。この求められた容量値となるような制御電圧をコントロール信号として可変コンデンサ33に与える。この結果、レベル偏差補正回路14におけるトラップが衛星放送受信信号の周波数傾斜をフラットな周波数特性に調整可能な特性に設定される。
【0033】
チャンネルセッティング後のチャンネル受信時には、CPU5からレベル偏差補正回路14へコントロール信号が与えられる。これにより、レベル偏差補正回路14からは信号帯域全体において信号レベルがフラットな周波数特性に調整された衛星放送受信信号が出力される。
【0034】
ところで、衛星放送受信信号の周波数傾斜は個別の状況により周波数傾斜の状況が変化することは上述したとおりである。例えば、図10(b)のように周波数傾斜が右下りとなる場合もある。図10(b)に示す右下りの周波数傾斜を図7(b)に示すようなフラットな状態に調整するのであれば、図4に示す回路の傾斜部K2を利用することができる。CPU5は、RAM23に記憶した各チャンネルのレベル情報から図10(b)の周波数傾斜を検出し、周波数傾斜が最もフラットになる傾斜部K2の位置を求め、この求めた位置まで傾斜部K2をシフトさせるための容量値を求める。この求められた容量値となるような制御電圧をコントロール信号として可変コンデンサ33に与える。この結果、レベル偏差補正回路14を構成するトラップ型の共振回路が衛星放送受信信号の周波数傾斜をフラットな周波数特性に調整可能な特性に設定される。
【0035】
レベル偏差補正回路14を同調回路(図5)で構成した場合もトラップの場合と同様に傾斜部K3,K4を利用して、衛星放送受信信号の周波数傾斜をフラットな周波数特性に調整することができる。
【0036】
このように、本実施の形態によれば、衛星放送受信信号の周波数傾斜が右上り又は右下りのいずれの場合であっても1つのレベル偏差補正回路14でフラットな周波数特性に調整することができ、回路規模の小型化が可能である。
【0037】
以上の説明では、衛星放送受信信号の周波数傾斜をフラットな周波数特性に調整しているが、受信すべき周波数に応じて望ましい傾斜状態に調整するようにしても良い。
【0038】
図7(a)において周波数f1を中心周波数とするチャンネルを受信する場合、当該チャンネル以外の周波数f2〜f4を周波数f1の信号レベルが小さくなるように調整する。例えば、周波数f1を中心周波数とするチャンネルを受信する場合、図8(a)に示すような周波数傾斜となるようにレベル補正偏差回路14の特性を設定する。
【0039】
周波数f2又はf3を中心周波数とするチャンネルを受信する場合、図8(b)(c)に示すような周波数傾斜となるようにレベル補正偏差回路14の特性を設定する。レベル偏差補正前の衛星放送受信信号が図7(a)に示す右上りの周波数傾斜の場合、周波数f2又はf3よりも低周波帯域は信号レベルが小さいので調整不要である。周波数f2又はf3よりも高周波帯域はトラップの傾斜部K1(図4)又は同調回路の傾斜部K3(図6)を利用してカットし、図8(b)又は(c)に示すように周波数f2又はf3よりも高周波帯域の信号レベルが小さくなるように調整する。
【0040】
一方、周波数f4を中心周波数とするチャンネルを受信する場合、図8(d)に示すようにレベル偏差補正前の衛星放送受信信号の周波数傾斜のまま出力する。図7(a)に示す右上りの周波数傾斜の場合、周波数f4を中心周波数とするチャンネルの信号レベルは他の周波数の信号レベルよりも大きいので調整する必要がない。レベル補正偏差回路14における補正量が0となるように特性を設定する。
【0041】
以上のように、受信すべき周波数に応じてレベル補正偏差回路14の特性をアクティブに設定するため、RAM23に各周波数(又はチャンネル)に対応して制御電圧を計算して記憶しておく。そして、当該衛星放送受信装置1に外部から供給される選局信号に基づいて対応する制御電圧をRAM23から読み出し、当該制御電圧をコントロール信号でレベル補正偏差回路14に与える。
【0042】
このように受信すべき周波数に応じてレベル補正偏差回路14の特性をアクティブに設定することにより、受信すべき周波数毎に適切な信号レベルを実現できる。
【0043】
なお、図2に示す構成例ではCPU5とMPEGデコーダ4とが分かれているが、CPU5とMPEGデコーダ4とが一体化した一体型の集積回路を用いることもできる。CPU5及びMPEGデコーダ4一体型の集積回路を用いた場合も上記同様の動作となる。
【0044】
本発明は衛星放送受信装置に限定されるものではなく、受信信号に周波数傾斜が生じる可能性の有る他の受信装置にも同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、ケーブルを経由して受信装置に入力される受信信号にレベル偏差が生じるために当該レベル偏差を補正する必要のある種々の受信装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係る衛星放送受信装置の概略的な全体構成図
【図2】上記実施の形態に係る衛星放送受信装置の部分的な機能ブロック図
【図3】上記実施の形態におけるレベル偏差補正回路及びその周辺回路の構成図
【図4】図3に示すレベル偏差補正回路の特性図
【図5】上記実施の形態における他のレベル偏差補正回路及びその周辺回路の構成図
【図6】図5に示すレベル偏差補正回路の特性図
【図7】(a)レベル偏差補正前の衛星放送受信信号の周波数傾斜を示す図、(b)レベル偏差補正後の衛星放送受信信号の周波数傾斜を示す図
【図8】レベル偏差補正回路の特性を周波数に応じてアクティブに変更する変形例におけるレベル偏差補正後の衛星放送受信信号の周波数傾斜を示す図
【図9】従来の衛星放送受信装置の概略的な構成図
【図10】衛星放送受信信号の周波数傾斜の状態を説明するための特性図
【図11】従来の補正回路の追加された衛星放送受信装置の構成図
【符号の説明】
【0047】
1 衛星放送受信装置
2 チューナ部
3 復調部
4 MPEGデコーダ
5 CPU
13 低雑音増幅器
14 レベル偏差補正回路
16 ケーブル
17 ダウンコンバータ
18 パラボラアンテナ
21、23 RAM
22 ROM
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンコンバートされた中間周波帯の受信信号を増幅する増幅器と、
前記増幅器で増幅された受信信号のレベル偏差を補正するレベル偏差補正回路と、
前記レベル偏差補正回路によって補正された受信信号を復調する復調部と、
を具備したことを特徴とするレベル偏差補正回路付き受信装置。
【請求項2】
前記レベル偏差補正回路は、前記受信信号の帯域内で上側が高くなる周波数傾斜又は下側が高くなる周波数傾斜のいずれかの周波数特性を選択可能であることを特徴とする請求項1記載のレベル偏差補正回路付き受信装置。
【請求項3】
前記レベル偏差補正回路は、共振回路の周波数特性の傾斜部を用いてレベル偏差を補正することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレベル偏差補正回路付き受信装置。
【請求項4】
前記増幅器で増幅された受信信号の信号レベルを検知するレベル検知手段と、
前記レベル検知手段によって検知されたレベル偏差補正前の受信信号の信号レベルから当該受信信号の周波数傾斜を所望の状態に補正するコントロール信号を求めて前記レベル偏差補正回路にコントロール信号を与える制御手段と、を具備したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のレベル偏差補正回路付き受信装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記受信信号に含まれるチャンネルをサーチするチャンネルセッティング時に、前記レベル検知手段から受信信号の信号レベルを取得してコントロール信号を求めることを特徴とする請求項4記載のレベル偏差補正回路付き受信装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載のレベル偏差補正回路付き受信装置を備え、前記受信信号は衛星放送信号であることを特徴とする衛星放送受信装置。
【請求項1】
ダウンコンバートされた中間周波帯の受信信号を増幅する増幅器と、
前記増幅器で増幅された受信信号のレベル偏差を補正するレベル偏差補正回路と、
前記レベル偏差補正回路によって補正された受信信号を復調する復調部と、
を具備したことを特徴とするレベル偏差補正回路付き受信装置。
【請求項2】
前記レベル偏差補正回路は、前記受信信号の帯域内で上側が高くなる周波数傾斜又は下側が高くなる周波数傾斜のいずれかの周波数特性を選択可能であることを特徴とする請求項1記載のレベル偏差補正回路付き受信装置。
【請求項3】
前記レベル偏差補正回路は、共振回路の周波数特性の傾斜部を用いてレベル偏差を補正することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレベル偏差補正回路付き受信装置。
【請求項4】
前記増幅器で増幅された受信信号の信号レベルを検知するレベル検知手段と、
前記レベル検知手段によって検知されたレベル偏差補正前の受信信号の信号レベルから当該受信信号の周波数傾斜を所望の状態に補正するコントロール信号を求めて前記レベル偏差補正回路にコントロール信号を与える制御手段と、を具備したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のレベル偏差補正回路付き受信装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記受信信号に含まれるチャンネルをサーチするチャンネルセッティング時に、前記レベル検知手段から受信信号の信号レベルを取得してコントロール信号を求めることを特徴とする請求項4記載のレベル偏差補正回路付き受信装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載のレベル偏差補正回路付き受信装置を備え、前記受信信号は衛星放送信号であることを特徴とする衛星放送受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−158659(P2007−158659A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350394(P2005−350394)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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