説明

レンズの評価方法

【課題】レンズ単体で直線性、フォーカスずれ量等の長尺レンズの特性を評価するレンズの評価方法の提供。
【解決手段】レンズ測定面のXYZ測定データ点列とレンズ設計式の座標ずれ量から得たXYZ位置のずれ量と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の各チルトずれ量のうちの所定断面内での平行移動2方向とチルトの計3方向の位置ずれ量以外はレンズ全面での各位置と各チルトずれ量を用い、レンズ所定断面の測定データを所定ピッチで順次抽出した測定データを用いて計算してレンズ全面での各断面の平行移動量とチルトを求め、レンズ特性を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームプリンター等、回転するポリゴンミラー等により走査されたレーザ光を、直線状に感光体上に、測定物の一例としての長尺レンズを用い収束させる光学系において、レンズの測定面の全面での各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量をそれぞれ測定するレンズの位置ずれ量測定方法を実行して得られた位置ずれ量を基に、長尺レンズの直線性、各走査位置でのフォーカスを評価するレンズの評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレンズ特性を測定評価する方法としては、表裏からレンズを測定できる構造で、かつ3つの基準球を表裏から測定できるように設けた治具に評価対象のレンズを取り付け、レンズの表面の光軸と、裏面の光軸のずれを評価するものがあった(例えば、特許文献1参照)。図は、前記特許文献1に記載された従来のレンズの測定評価方法を示すものである。
【0003】
図20において、治具111により支持されたレンズ101の上面101aを測定し、レンズ101の設計式との比較からレンズ101の測定面のXYZ位置と、X軸を回転中心としたA軸、Y軸を回転中心としたB軸、Z軸を回転中心としたC軸、の各値すなわち姿勢を決定する。
【0004】
さらに治具111の3つの位置決め球111aを測定し、球表面部分のデータより、治具111の姿勢を算出し、この治具位置に対するレンズ101の姿勢を算出する。
【0005】
その後、レンズ101を取り付けたまま治具111の上下を反転し設置する。反転後、前記と同じ手順で、レンズ101の裏面101bを測定し、さらに3つの位置決め球111aを順次測定し、これらの測定結果より、レンズ裏面101bの治具位置に対するレンズ101の姿勢を算出する。
【0006】
位置決め球111aの位置より決定した座標に対し、レンズ表面101aと裏面101bの姿勢を算出することにより、表面101aと裏面101b間のレンズ中心ずれや、レンズ101の測定面の傾きを測定評価していた。
【0007】
【特許文献1】特開2002−71344(第6頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、レンズを固定する治具に設けられた、3つの位置決め球を基準に、レンズ表面の光軸と、裏面の光軸を算出するので、レンズ全面に渡り光を照射する光学系では、その全体的な特性を評価できるが、光をレンズの測定面の一部分を順次用い走査等行う光学系で、レンズの測定面の各部分での光軸ずれ等は評価することができない。
【0009】
例えばレーザビームプリンター等、長尺レンズを用い、走査する光学系において光を高精度に直線状に走査する必要がある。しかし、これらの光学系で光を集光するレンズの走査方向の光軸中心位置が、製造誤差等によりレンズの走査方向の位置に応じて変わることにより、各走査位置での頂点位置すなわち光軸中心がずれ、レーザ光が直線に走査されず、感光体に焼き付けられた信号が直線からずれうねった状態となるが、従来の評価方式では評価できない。また同様に走査方向の各位置での感光体へのビームの焦点位置の位置ずれが評価できず、この状態で紙に転写した場合に、印写した像が歪む、ボケるという課題があり、従来はレーザ、ポリゴンスキャナー、レンズ等を組み立てた後、実際の走査信号をカメラ等により分析することで評価しており、レンズ部品レベルの評価が行えなかった。
【0010】
さらに、近年、レーザビームプリンターのカラー化が進み、合成された色をより精彩に再現するためには赤、緑、青と黒の4色のインクをより高精度に同一のスポットに転写する必要があるが、上記4色の走査光学系のレンズごとの上記、直線性と焦点ずれの特性が評価できず、レンズでの十分な原因究明がなされないという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、レンズの測定面の各位置における光学特性をレンズ単体で評価することを目的とした、レンズの評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0013】
本発明の第1態様によれば、(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの前記測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量と、
(iii)前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズの断面の測定データを測定ピッチでデータ抽出手段により順次抽出した前記レンズの断面の測定データと、を用いるとともに、前記(ii)の位置ずれ量のうち、前記レンズの断面の面内での平行移動2方向とチルトの計3方向の位置ずれ量以外は、前記レンズの測定面の全面での各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量を用いて、演算部により前記3方向の位置ずれ量を計算し、
前記3方向の位置ずれ量の計算結果を基に、前記レンズの前記測定面の全面での各断面の平行移動量とチルトを前記演算部により求め、前記求められた各断面の平行移動量とチルトに基づいて前記レンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法を提供する。
【0014】
本構成によって、レンズ上の一部分を通過する光に応じて、その近辺のレンズの測定面の形状測定データと設計式の差を、レンズの測定面の全面の測定データからも求めた位置ずれ量を基準に、レンズ上の各部分の測定データに対し所定の方向の平行移動2方向とチルト方向のずれを算出し、レンズの各部分での光軸位置を算出することができる。
【0015】
本発明の第2態様によれば、本発明の第2態様によれば、(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの前記測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各チルトABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量と、
(iii)前記各位置ずれ量を基に、前記各測定データ点列と前記レンズの設計式との各差を演算部により求め、
前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズの断面の測定データと前記差を測定ピッチでデータ抽出手段により順次抽出した前記レンズの断面の測定データの前記断面内での各差に対し近似した直線の傾き、あるいは2次曲線等の係数のうちの近似傾きと、前記断面でのレンズの測定面の近似半径との積を前記演算部により求め、
この積の値を前記断面での前記レンズの中心位置の変位として前記演算部により算出することにより、前記算出された前記断面での前記レンズの中心位置の変位に基づいて前記レンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法を提供する。
【0016】
本構成によって、3次元形状測定機等の従来の測定機より出力される、形状測定データと設計形状データの差を用いて、以降の計算でレンズ設計式での比較計算を別途行うことなく、3次元測定機より出力される測定データと設計データの差と、測定データそのものを用いて、簡便にレンズ上の一部分を通過する光に応じて、レンズの各部分での光軸位置を算出することができる。
【0017】
本発明の第3態様によれば、本発明の第3態様によれば、(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの前記測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量とを基に、前記各測定データ点列と前記レンズの設計式との各差を演算部により求め、
前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズ断面の測定データと前記差を測定ピッチでデータ抽出手段により順次抽出した前記レンズの断面の測定データにより、前記レンズの断面での前記レンズの前記測定面の近似半径を前記演算部により求め、
この近似半径と、前記抽出した前記レンズの断面の測定データの断面内での各差に対し近似した直線の傾き、あるいは2次曲線等の係数のうちの近似傾きと、前記断面での近似半径との積を前記演算部により求め、
この積の値を前記断面での前記レンズの中心位置の変位として前記演算部により算出することにより、前記算出された前記断面でのレンズ中心位置の変位に基づいて前記レンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法を提供する。
【0018】
本構成によって、3次元形状測定機等従来の測定機より出力される、形状測定データと設計形状データの差を用いて、以降の計算でレンズ設計式での比較計算を別途行うことなく、3次元測定機より出力される測定データと設計データの差と、測定データそのものを用いて、前記各断面での近似半径Rが変化する場合でも、簡便にレンズ上の一部分を通過する光に応じて、レンズの各部分での光軸位置を算出することができる。
【0019】
本発明の第4態様によれば、前記近似半径の算出方法が2次の最小2乗法であることを特徴とする第2の態様に記載のレンズの評価方法を提供する。
【0020】
この構成によれば、前記近似半径の算出方法が2次の最小2乗法を用いることにより、計算を簡便に行うことができる。
【0021】
本発明の第5態様によれば、前記レンズの前記中心位置の変位形状を前記レンズの光軸に垂直な面で前記演算部により近似し、この近似した垂直な面での変位量を、レンズの深さ方向の値であるサグ量により前記演算部で除算することにより、前記断面の垂線方向の回転方向の位置ずれ量を求めることを特徴とする第1〜4のいずれか1つの態様に記載のレンズの評価方法を提供する。
【0022】
本構成によって、レンズの測定面の全面のデータを用いて求めたチルト量に、前記レンズの各断面での中心位置の変位量と、サグ量を用いずれを求め、補正を加えることにより、高精度にレンズのチルト量を求めることができ、従来の全面のデータのみでチルトを算出する場合に比べ、長尺レンズの走査光軸の直線性をより高精度に評価することができる。
【0023】
本発明の第6態様によれば、前記レンズの光軸に垂直な面での前記レンズの各断面での中心位置の変位を、前記垂直な面での近似を2次の関数により前記演算部で行い、算出した2次の係数により、この近似した垂直な面での変位量を前記演算部で算出し、この算出量を、前記レンズの深さ方向の値であるサグ量により前記演算部で除算することにより、前記断面の垂線方向の回転方向の位置ずれ量を求めることを特徴とする第1〜5のいずれか1つの態様に記載のレンズの評価方法を提供する。
【0024】
本構成によって、レンズの測定面の全面のデータを用いて求めたチルト量に、前記レンズの各断面での中心位置の変位量と、この変位を2次の関数で近似し、この近似した関数より求めた、垂直な面での変位量と、サグ量を用いずれを求め、補正を加えることにより、各中心位置の変位量にばらつき、あるいは測定面上のごみにより生じたずれデータがあり、前記変位量の一部に誤差が含まれる場合でも、高精度にレンズのチルト量を求めることができ、従来の全面のデータのみでチルトを算出する場合に比べ、長尺レンズの走査光軸の直線性をより高精度に評価することができる。
【0025】
本発明の第7態様によれば、(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの前記測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量と、
(iii)前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズの断面の測定データを測定ピッチでデータ抽出手段により順次抽出した前記レンズの断面の測定データと、
を用いるとともに、前記(ii)の位置ずれ量のうち、前記レンズの断面の面内での平行移動2方向とチルトの計3方向の位置とチルトずれ量以外は、前記レンズの測定面の全面での各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量を用いて、演算部により前記3方向の位置とチルトずれ量を算出し、
さらに、前記レンズの設計式の前記レンズの断面での半径パラメータが、前記レンズの断面での前記位置ずれ算出量での値で、前記半径パラメータの値と前記レンズの断面で抽出した測定データ点列との差が最小になるように前記演算部により求めかつ前記レンズの前記測定面の全面での各断面の前記最適半径パラメータを前記演算部により求め、前記求められた各断面の前記最適半径パラメータに基づいてレンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法を提供する。
【0026】
本構成により、レンズ上の一部分を通過する光に応じて、その近辺のレンズの測定面の形状測定データと設計式を比較することにより、前記レンズの各断面での前記最適半径パラメータRybfを求めることにより、レンズの各部分でのレンズのフォーカス位置を算出することができる。
【0027】
本発明の第8態様によれば、(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの前記測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量とを基に、前記各測定データ点列と設計式との各差を演算部により求め、
前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズの断面の測定データと前記差を測定ピッチで順次抽出するデータ抽出手段と、前記抽出した前記レンズの断面の測定データの断面内での各差に対し2次以上の関数で近似し、この2次の係数を求め、この係数と、前記断面での前記レンズの前記測定面の近似半径の二乗との積の2倍の値を前記演算部により求め、この値を前記断面での円弧半径ずれ量として前記演算部により算出することにより、前記算出された前記断面での円弧半径ずれ量に基づいて前記レンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法を提供する。
【0028】
本構成により、3次元形状測定機等従来の測定機より出力される、形状測定データと設計形状データの差を用いて、以降の計算でレンズ設計式での比較計算を別途行うことなく、3次元測定機より出力される測定データと設計データの差と、測定データそのものを用いて、簡便にレンズ上の一部分を通過する光に応じて、レンズの各部分でのレンズのフォーカス位置ずれを算出することができる。
【0029】
本発明の第9態様によれば、(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量とを基に、前記各測定データ点列と前記レンズの設計式との各差を演算部により求め、
前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズの断面の測定データと前記差を測定ピッチでデータ抽出手段により順次抽出した前記レンズの断面の測定データについて、2次の関数からの差の2乗が最小になる係数の値を前記演算部により算出し、
前記係数と、前記断面でのレンズの測定面の近似半径の二乗との積の2倍の値を前記演算部により求め、
この値を前記断面での円弧半径ずれ量として前記演算部により算出することにより、前記断面での円弧半径ずれ量に基づいて前記レンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法を提供する。
【0030】
本発明の第10態様によれば、(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量とを基に、前記各測定データ点列と前記レンズの設計式との各差を演算部により求め、
前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズのYZ断面の測定データと前記差を測定ピッチでデータ抽出手段により順次抽出した前記レンズのYZ断面の測定データについて、前記各差に関する2次の関数からの差の2乗が最小になる係数の値を前記演算部により算出し、
前記データ抽出手段により順次抽出した前記レンズのYZ断面の測定データについて、前記Z座標に関する2次の関数からの差の2乗が最小になる係数の値を前記演算部により算出し、
前記後で算出した係数の値を用いて、前記レンズのYZ断面での近似円弧半径を、近似円弧半径=1/(2×係数)の式により前記演算部により算出し、
前記先に算出した係数の値と、前記レンズのYZ断面での前記算出した近似円弧半径を用いて、XY断面内での光軸位置のずれ量を、前記先に算出した係数と前記近似円弧半径との積の式より前記演算部により算出し、
前記先に算出した係数と、前記YZ断面での前記レンズの測定面の前記近似半径の二乗との積の2倍の値を前記演算部により求め、
この値を前記断面での円弧半径ずれ量として前記演算部により算出することにより、前記断面での円弧半径ずれ量に基づいて前記レンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法を提供する。
【0031】
本構成により、3次元形状測定機等従来の測定機より出力される、形状測定データと設計形状データの差を用いて、以降の計算でレンズ設計式での比較計算を別途行うことなく、3次元測定機より出力される測定データと設計データの差と、測定データそのものを用いて、前記各断面での近似半径Rが変化する場合でも、簡便にレンズ上の一部分を通過する光に応じて、レンズの各部分でのレンズのフォーカス位置ずれを算出することができる。
【0032】
本発明の第11態様によれば、(i)レンズ保持治具の表面側から前記レンズ保持治具に保持されたレンズの表面を測定可能にかつ、前記レンズ保持治具を反転させて前記レンズ保持治具の裏面側から前記レンズの裏面を測定可能に構成されかつ前記レンズ保持治具に固定された3つの球を有する前記レンズ保持治具を用い、前記レンズ保持治具の表面側より前記レンズの前記表面と、前記3つの球の面を測定し、
次いで、前記レンズ保持治具を表裏反転させて、前記レンズ保持治具の裏面側より前記レンズの前記裏面と、前記3つの球の面を測定し、
次いで、前記レンズの前記表面の座標軸を前記3つの球の中心を基準として演算部により算出し、
次いで、前記レンズの前記裏面の座標軸を前記3つの球の中心を基準として前記演算部により算出し、
次いで、前記3つの球を基準として前記レンズの前記表裏面のデータを合成して、前記レンズの前記表面に対する前記裏面、あるいは前記レンズの前記裏面に対する前記表面の前記レンズの特性を評価する第1〜9のいずれか1つの態様に記載のレンズの評価方法を提供する。
【0033】
本構成によって、表面基準で裏面、あるいは裏面基準で表面のレンズの直線性とフォーカス位置を評価することができる。
【0034】
本発明の第12態様によれば、前記レンズ保持治具において、前記レンズ保持治具の前記レンズを保持する2つの保持部のうちの一方の保持部が上下方向より各1つの球面で前記レンズの端部の表裏面を支持し、他方の保持部が2つの球面で前記レンズの端部の下面を支持し、1つの球面で前記レンズの端部の上面を支持した状態で、前記測定が行なわれることを特徴とする第10の態様に記載のレンズの評価方法を提供する。
【0035】
本構成によって、レンズを歪めることなく、安定して保持し評価することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明のレンズの評価方法によれば、測定物の一例としての長尺レンズの光の走査方向の直線性とフォーカス位置を高精度に評価することができ、従来、レンズを組み込み装置として完成させなければ評価できなかった前記評価を、装置化せずにレンズ単体の段階で評価を実現し、レンズ評価工程を大幅に合理化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0038】
(第1の実施の形態)
図1Aは、本発明の第1の実施の形態にかかるレンズの評価方法を実施可能な3次元の形状測定機の概略構成を示す斜視図である。図1Bは、本発明の第1の実施の形態における3次元形状測定機によるレンズ測定における測定物の上面での走査経路を示す図である。図1Cは、本発明の第1の実施の形態における3次元形状測定機の測定手段と制御演算部との関係を示す構成図である。
【0039】
前記形状測定機は、定盤7上に固定された測定物1の測定面1a上を走査経路1g(図1B)に沿って走査する測定用プローブ3と、プローブ3のZ方向の移動量を測定するレーザ測長光学ユニット2と、レーザ測長光学ユニット2を搭載するとともに前記プローブ3をZ方向に移動可能に搭載しかつ定盤7上で移動可能な移動体4と、移動体4と共に測定プローブ3をXY方向に移動可能でかつXステージ5及びYステージ6とより構成されるXYステージと、レーザ測長光学ユニット2からの測定情報に基づき種々の演算動作などを行なう制御演算部90と、測定結果及び演算結果などを表示するモニタなどの表示装置95とを備えるように構成している。
【0040】
前記制御演算部90は、種々の動作制御を行う制御部91と、データの抽出を行うデータ抽出手段92と、測定手段89で測定されて得られたデータ及びレンズ1の設計式及び演算結果のデータなどを記憶しているメモリ93と、ずれ量の評価などを行うずれ量評価手段94を備えて、制御部91により、データ抽出手段92とメモリ93とずれ量評価手段94のそれぞれの動作をそれぞれ制御するようにしている。ずれ量評価手段94は、種々の演算動作などを行なう演算部94aと、レンズ1の特性を評価する評価部94bとを有しており、詳しくは後述するように、測定データ点列とレンズ1の設計式を用いて、レンズ1の設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するように構成している。
【0041】
なお、プローブ3及びレーザ測長光学ユニット2は、レンズ1の測定面1a上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段(測定装置)89として機能する。
【0042】
図1Aにおいて、レーザ測長光学ユニット2およびプローブ3を搭載した移動体4はXステージ5及びYステージ6によりXY方向に移動し、プローブ3は、定盤7上に固定した測定物1の一例である長尺レンズの測定面1aに沿ってZ方向に移動するようになっている。レーザ測長光学ユニット2は、周知の光干渉法などによりプローブ3のZ方向の移動量を測定するものである。したがって、この形状測定機は、レンズ1の測定面1a上で測定プローブ3をXY方向にXステージ5及びYステージ6により走査することにより、測定用プローブ3のXY座標位置でのZ座標データの列を求め、このZ座標データの列に基づいて測定面1aの形状測定を測定手段89により行う。
【0043】
この際、図1Bに示す測定用プローブ3の走査経路1gにて測定物1の上面(測定面)1aを測定手段89の測定プローブ3により測定し、測定面1a上のXYZ座標の測定データを測定手段89が得る。例えば、測定物1の一例としてX軸方向に70mm、Y軸方向に4mmの有効エリアのレンズで、X軸方向の走査時に0.5mmピッチ、Y軸方向の走査時に0.5mmピッチでデータを測定手段89に取り込んだ場合、図2のようなレンズ1の測定面1a上の形状測定結果が測定手段89で得られる。ここで、測定物1は、一例として、XY軸方向に非対称で、XZ断面、YZ断面形状とも非円弧(非球面)であるとする。
【0044】
この測定データの評価方法について、図3を参考にしつつ説明する。
【0045】
まず、前記したように、レンズ1の測定面1a上のXYZ方向の形状座標データを測定する前記測定手段89によりレンズ1の測定面1a上のXYZ測定データ点列を得る(ステップA1)。
【0046】
次いで、前記測定手段89により得られた前記測定データ点列とメモリ93に予め記憶された前記レンズ1の設計式を用いて、XY座標の同一点における前記レンズ1の設計式に対する前記測定データ点列の各点の差の2乗和をずれ量評価手段94の演算部94aにより求め、測定データのXYZ水平移動をずれ量評価手段94の演算部94aにより実行し、さらに各X、Y、Z軸周りの回転方向であるA、B、Cをずれ量評価手段94の演算部94aにより回転させ、前記2乗和が最小になる各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量である計算値X、Y、Z、A、B、Cをずれ量評価手段94の演算部94aにより算出する(ステップA2)。ここでいう、XYZ水平移動とは、測定データの座標を、設計データのXYZ座標に合わせるように移動させることを意味する。レンズ1を測定装置に設置した場合に、1mm以下のオーダで、測定装置のXYZ座標の中心にレンズ1を設置することは容易ではない。同様に、ABC軸方向の角度を測定装置の座標に平行設置することも容易ではない。そこで、ある程度(1mm以下、3度以下)の精度で測定装置にレンズ1を設置し、レンズ1のXYZ座標軸が理想の座標となるように測定結果を用い、測定装置の0位置に対しXYZのずれ量を算出し、測定結果をオフセットすることにより、測定データの0が、レンズ設計の0と重なるようにする。
【0047】
次いで、前記レンズ1の所定の断面(レンズ1を通過する光軸に平行なレンズ1の断面)の測定データを所定のピッチ(測定ピッチ)でデータ抽出手段92により順次抽出する。具体的には、レンズ1のYZ断面のXYZ方向の測定データ点列をX軸方向に0.5mmピッチで、順次、データ抽出手段92により抽出して各YZ断面の測定データを得る(ステップA3)。ここで、所定の断面とは、評価するレンズ形状の断面のことで、レンズ1を通過する光軸に平行な方向に切断した断面であって、本実施形態ではXZ断面あるいはYZ断面のことである。よって、所定の断面とは、レンズ1を通過する光軸に平行なレンズ1の断面、あるいは、本実施形態ではXZ断面あるいはYZ断面であると言うことができる。また、所定のピッチとは、一例として、走査線数で5から100本程度の間隔であることを意味し、走査方向の測定ピッチが100〜400点である。走査線の数は、測定時間に比例する。走査線数と測定ピッチは、レンズ形状の悪さ具合(仕上がり(でき)の良いレンズの場合には、少ない走査線数、ピッチ)と測定タクト(増やすと測定時間が増える。)を勘案しつつ決定することができる。よって、所定のピッチとは、レンズ面形状の仕上がり具合に応じた測定ピッチであるとも言うことができる。
【0048】
次いで、前記データ抽出手段92により抽出した各YZ断面の測定データについて、前記ステップA2で求められた前記位置ずれ量のうち、前記YZ断面の面内でのYZ方向の平行移動2方向とX軸まわりのチルトAの計3方向の位置ずれ量以外は、前記レンズ1の測定面1aの全面での各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量X、B、Cを用いて、測定データと設計形状データの差の2乗和が最小になる前記3方向の位置ずれ量Y、Z、A(先の計算値Y1、Z1、A1などと区別するため、Ypi、Zpi、Apiとする。)をずれ量評価手段94の演算部94aにより算出し、前記3方向の位置ずれ量Yの計算結果と、X座標位置Xを各断面に応じて、順次、制御部91によりメモリ93に記憶させる(ステップA4)。ここで、iは、1,2,……,jと、一定距離間隔で取り込んだ測定値を意味しており、例えば、i=1,2,……,jでは、前記3方向の位置ずれ量Ypi、Zpi、Apiは(Yp1,Zp1,Ap1),(Yp2,Zp2,Ap2),……,(Ypj,Zpj,Apj)となる。ただし、jは1〜j個評価データがあるという意味である。
【0049】
次いで、制御部91により、これら(ステップA3)及び(ステップA4)のシーケンスをレンズ1の測定面1aの全体に対して行う(ステップA5)。
【0050】
次いで、前記3方向の位置ずれ量の計算結果を基に、言い換えれば、計算したX座標位置Xと位置ずれ量Ypjについて制御部91により表示装置95にグラフを表示し、表示されたグラフに基づいて、レンズ1の特性、すなわち、XY断面内でのレンズ1の設計中心位置からの直線性のずれをずれ量評価手段94の評価部94bにより評価する(ステップA6)。すなわち、前記3方向の位置ずれ量の計算結果を基に、前記レンズ1の前記測定面1aの全面での各断面の平行移動量とチルトを前記演算部94aにより求める。このようにして求められた各断面の平行移動量とチルトに基づき、レンズ1の特性をずれ量評価手段94の評価部94bにより評価することにより、レンズ1の測定面1a内での各部分で、レンズ1の光軸をずれ量評価手段94の演算部94aにより算出することができ、レンズ単体での長尺レンズ1の直線性を評価することができる。
【0051】
この計算結果例をグラフに表示したものを、図4に示す。例えば、レーザ光を直線状に走査し、感光体に照射するレーザビームプリンター等に使用するレンズ1では、この計算結果により表示されたグラフがより直線に近い場合、より高品質なプリントが行えると判断することができる。
【0052】
前記第1の実施の形態にかかる前記構成によれば、レンズ1の測定面1a上のXYZ方向の形状座標データを前記測定手段89により、まず、測定してレンズ1の測定面1a上のXYZ測定データ点列を得る。次いで、前記測定データ点列と前記レンズ1の設計式を用いて、前記レンズ1の設計式と前記測定データ点列の座標位置のずれ量をずれ量評価手段94により評価する。次いで、レンズ1の所定の断面の測定データを所定のピッチでデータ抽出手段92により順次抽出する。次いで、(i)前記測定手段89により得られたレンズ1の測定面1a上のXYZ測定データ点列と、(ii)ずれ量評価手段94により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量と、(iii)前記レンズの所定の断面の測定データを所定のピッチで前記データ抽出手段92により順次抽出した所定の断面の測定データと、を用いるとともに、前記(ii)の位置ずれ量のうち、前記所定の断面の面内での平行移動2方向とチルトの計3方向の位置ずれ量以外は、前記レンズ1の測定面1aの全面での各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量を用いて、演算部94aにより前記3方向の位置ずれ量を計算する。次いで、前記3方向の位置ずれ量の計算結果を基に、各断面に応じて順次メモリ93に記憶し、前記レンズ1の測定面1aの全面での各断面の平行移動量とチルトを演算部94aにより求め、前記求められた各断面の平行移動量とチルトに基づいて前記レンズ1の特性をずれ量評価手段94により評価するようにしている。このように構成することにより、レンズ1の測定面1a内での各部分で、レンズ1の光軸を演算部94aにより算出することができ、レンズ単体での長尺レンズ1の直線性を評価することができる。
【0053】
なお、本第1の実施の形態において、XY方向の測定ピッチを0.5mmとしたが、この数値に限定されることなく、同様の効果を得ることができ、他のピッチで測定してもよい。
【0054】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態にかかるレンズの評価方法について、図5を用いて説明する。第1の実施の形態と同様に、まず、前記レンズの評価方法を実施可能な3次元形状測定機の前記測定手段89によりレンズ1の測定面1a上のXYZ測定データ点列を取得する(ステップB1)。
【0055】
次いで、前記測定手段89により得られた前記測定データ点列とメモリ93に予め記憶された前記レンズ1の設計式を用いて、XY座標の同一点における前記レンズ1の設計式に対する前記測定データ点列の各点の差の2乗和をずれ量評価手段94の演算部94aにより求め、測定データのXYZ水平移動をずれ量評価手段94の演算部94aにより実行し、さらに各X、Y、Z軸周りの回転方向であるA、B、Cをずれ量評価手段94の演算部94aにより回転させ、前記2乗和が最小になるXYZ方向の各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量である計算値X、Y、Z、A、B、Cをずれ量評価手段94の演算部94aにより算出する(ステップB2)。
【0056】
次いで、前記各位置ずれ量を基に、前記各測定データ点列と前記レンズ1の設計式との各差Zdを求める。すなわち、XYZ方向の前記各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量X、Y、Z、A、B、Cを用いて演算部94aにより行列式等を用いて座標変換された測定データに対し、前記レンズ1の設計式を用いて前記各位置と各チルトについて求められた設計データを用いて、XY座標の同一点における{(測定データ)―(設計データ)}のZの値Zdをずれ量評価手段94の演算部94aにより順次算出し、X座標位置X、位置ずれ量Ypi、位置ずれ量Zdとして制御部91によりメモリ93に記憶する(ステップB3)。
【0057】
次いで、前記算出した位置ずれ量であるデータ点列を制御部91により表示装置95にグラフにプロットした例を図6に示す。図6で、Z軸方向の値は、XYの座標が同一点でのZd={(測定データ)―(設計式)}の値である。
【0058】
次いで、前記レンズ1の所定の断面の測定データと前記差Zdを所定のピッチでデータ抽出手段92により順次抽出する。具体的には、レンズ1のYZ断面のXYZの測定データ点列を、X軸方向に0.5mmピッチでデータ抽出手段92により順次抽出する。すなわち、X軸方向にj番目の位置でのデータ列(Y、Zd)(ただし、i=1〜9であり、jは1〜9の9点の測定データであり、この9点を用いて計算する。)をデータ抽出手段92により順次抽出して、各YZ断面の測定データ列を得る(ステップB4)。なお、iの最大値が9であるのは、図6での測定例で、Y方向に±2mmのエリアを0.5mmピッチで測定しており、走査線数としては、4/0.5+1=9本となるからである。ここでは、2次元配列でデータを取り扱っており、Y軸方向の配列をiで表すと、X軸方向はjで表される。XYZ測定した座標値の点列が、測定点の配置に応じて、2次元配列に格納されているとすると、X(i,j)、Y(i,j)、Z(i,j)で、これが実際のXY(ij)面上に並ぶことになる。
【0059】
次いで、前記データ抽出手段92により抽出した各YZ断面の測定データ列iについて、Zd=a*Y*Y+b*Y+c の2次の関数からの差の2乗が最小になる各係数a,b,cの値をずれ量評価手段94の演算部94aにより算出し、X座標位置Xの値とともに制御部91によりメモリ93に記憶する(ステップB5)。
【0060】
次いで、制御部91により、これら(ステップB4)及び(ステップB5)のシーケンスをレンズ1の測定面1aの全体に対して行う(ステップB6)。
【0061】
次いで、前記レンズの所定の断面の測定データと前記差Zdを所定のピッチでデータ抽出手段92により順次抽出した前記所定の断面の測定データの前記断面内での各差Zdに対して近似した直線の傾き、あるいは2次曲線等の係数のうちの近似傾きと、前記断面でのレンズ1の測定面1aの近似半径Rとの積を前記演算部94aにより求める。具体的には、前記算出したX座標位置Xの位置での係数bの値と、レンズ1のYZ断面での近似円弧半径Rを用いて、XY断面内での光軸位置のずれ量ΔYを、ΔY=b*Rの式を使用してずれ量評価手段94の演算部94aにより算出する(ステップB7)。ここで、Y=0を光軸の中心とすると、ΔYが光軸中心となる。
【0062】
ここで、上記算出式の内容を簡単に図7A及び図7Bを用いて説明する。
【0063】
レンズ1の設計データのY軸方向の頂点位置をyとし、レンズ1の形状をf(y)とする。
【0064】
また、Y軸中心よりずれて加工されたレンズ1の測定面1aのY軸方向の頂点位置をyとし、測定データをf(y)とする。
【0065】
半径Rの円弧を2次関数で近似した場合、
(y)=1/(2R)*(y−y+c
(y)=1/(2R)*(y−y+c'
となり、ずれ量評価手段94の演算部94aにより、{(測定データ)−(設計データ)}を求めると、
(y)−f(y)=ΔY*(y−y)/R+c''
と、直線データで近似される。
【0066】
すなわち、アライメント後のデータの、YZ断面データをずれ量評価手段94の演算部94aにより直線近似し、ずれ量評価手段94の演算部94aにより、その近似傾きb=(f(y)−f(y))/(y−y)に、設計半径Rを掛けることで、中心ずれ量dY(光軸位置のずれ量ΔY)を算出できることが数学的に説明できる(ここで、図7Bの2つの三角形A,Bを参照。三角形の相似より、y/(2R)=z/y z=y/(2R)である。)。
【0067】
次いで、制御部91により、この(ステップB7)のシーケンスを各X座標位置Xについてレンズ1の測定面1aの全体に対して行う(ステップB8)。
【0068】
次いで、前記した積の値を前記断面での前記レンズ1の中心位置の変位として前記演算部94aにより算出することにより、前記算出された前記断面での前記レンズ1の中心位置の変位に基づいて前記レンズ1の特性を評価する。具体的には、前記計算したX座標位置X、レンズ1の中心位置の変位すなわち光軸位置のずれ量ΔYについて制御部91により表示装置95にグラフを表示し、表示されたグラフに基づいて、レンズ1の特性、すなわち、XY断面内での走査方向のレンズ直線性をずれ量評価手段94の評価部94bにより評価する(言い換えれば、レンズ直線性を、これらステップB7、ステップB8、ステップB9により評価する)(ステップB7〜ステップB9)。計算結果は、図4に示す形態と同様の出力が得られる。
【0069】
前記第2の実施の形態にかかる前記構成によって、3次元形状測定機等の従来の測定機より出力される形状測定データと、メモリ93などに記憶された設計形状データ(設計データ)の差を用いて、以降の計算でレンズ設計式での比較計算を別途行うことなく、3次元形状測定機の測定手段96より出力される測定データと設計データの差と、測定データそのものを用いて、簡便にレンズ1上の一部分を通過する光に応じて、レンズ1の各部分での光軸位置のずれ(言い換えれば、前記レンズの中心位置の変位)を算出することができる。よって、前記算出された前記断面での前記レンズの中心位置の変位に基づいて、前記レンズの特性を評価することができる。
【0070】
なお、本第2の実施の形態において、2次関数で位置ずれ量Ypi、Zdデータを近似したが、1次関数、あるいは3次以上の関数で近似してもよく、同様の効果を得ることができる。
【0071】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態にかかるレンズの評価方法について、図8を用いて説明する。第1の実施の形態と同様に、まず、前記レンズの評価方法を実施可能な3次元形状測定機の前記測定手段89によりレンズ1の測定面1a上のXYZ測定データ点列を取得する(ステップC1)。
【0072】
次いで、前記測定手段89により得られた前記測定データ点列とメモリ93に予め記憶された前記レンズ1の設計式を用いて、XY座標の同一点における前記レンズ1の設計式に対する前記測定データ点列の各点の差の2乗和をずれ量評価手段94の演算部94aにより求め、測定データのXYZ水平移動をずれ量評価手段94の演算部94aにより実行し、さらに各X、Y、Z軸周りの回転方向であるA、B、Cをずれ量評価手段94の演算部94aにより回転させ、前記2乗和が最小になるXYZ方向の各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量である計算値X、Y、Z、A、B、Cをずれ量評価手段94の演算部94aにより算出する(ステップC2)。
【0073】
次いで、前記レンズ1の設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段94により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量とを基に、前記各測定データ点列と前記レンズ1の設計式との各差Zdを演算部94aにより求める。具体的には、XYZ方向の前記各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量X、Y、Z、A、B、Cを用いて演算部94aにより座標変換された測定データに対し、前記レンズ1の設計式を用いて前記各位置と各チルトについて求められた設計データを用いて、XY座標の同一点における{(測定データ)―(設計データ)}のZの値Zdをずれ量評価手段94の演算部94aにより順次算出し、X座標位置X、位置ずれ量Ypi、位置ずれ量Zdとして制御部91によりメモリ93に記憶する(ステップC3)。
【0074】
次いで、前記レンズ1の所定の断面の測定データと前記差Zdを所定のピッチでデータ抽出手段92により順次抽出する。具体的には、レンズ1のYZ断面のXYZの測定データ点列を、X軸方向に0.5mmピッチでデータ抽出手段92により順次抽出する。すなわち、X軸方向にj番目の位置でのデータ列(Y、Zd)、(Y、Z)(ただしi=1〜9であり、jは1〜9の9点の測定データであり、この9点を用いて計算する。)をデータ抽出手段92により順次抽出して、各YZ断面の測定データ列を得る(ステップC4)。なお、iの最大値が9であるのは、図6での測定例で、Y方向に±2mmのエリアを0.5mmピッチで測定しており、走査線数としては、4/0.5+1=9本となるからである。ここでは、2次元配列でデータを取り扱っており、Y軸方向の配列をiで表すと、X軸方向はjで表される。XYZ測定した座標値の点列が、測定点の配置に応じて、2次元配列に格納されているとすると、X(i,j)、Y(i,j)、Z(i,j)で、これが実際のXY(ij)面上に並ぶことになる。
【0075】
次いで、前記データ抽出手段92により抽出した各YZ断面の測定データ列iについて、Zd=a*Y*Y+b*Y+c の2次の関数からの差の2乗が最小になる各係数a,b,cの値をずれ量評価手段94の演算部94aにより算出し、X座標位置Xの値とともに制御部91によりメモリ93に記憶する(ステップC5)。
【0076】
次いで、前記データ抽出手段92により抽出した各YZ断面の測定データ列iについて、Z=ar*Y*Y+br*Y+cr の2次の関数からの差の2乗が最小になる各係数ar,br,crの値を演算部94aにより算出し、X座標位置Xの値とともに制御部91によりメモリ93に記憶する(ステップC6)。なお、第1及び第2実施形態ではY方向の位置ずれを評価していたのに対して、第3実施形態では、レンズの曲率Rを評価するものであり、この意味を強調するために、係数にrのサフィックスを使用したものが、前記係数ar,br,crである。
【0077】
次いで、制御部91により、これら(ステップC4)、(ステップC5)、及び(ステップC6)のシーケンスをレンズ1の測定面1aの全体に対して行う(ステップC7)。
【0078】
次いで、データ抽出手段92により順次抽出した前記所定の断面の測定データにより、前記所定の断面での前記レンズ1の前記測定面1aの近似半径Rを前記演算部94aにより求める。具体的には、算出したX座標位置Xの位置での係数arの値を用いて、レンズ1のYZ断面での近似円弧半径(近似半径)Rを、R=1/(2・ar)より演算部94aにより算出する(ステップC8)。
【0079】
次いで、この近似半径Rと、前記抽出した所定の断面の測定データの断面内での各差Zdに対し近似した直線の傾き、あるいは2次曲線等の係数のうちの近似傾きと、前記断面での近似半径Rとの積を前記演算部94aにより求める。具体的には、前記算出したX座標位置Xの位置での係数(近似傾き)bの値と、レンズ1のYZ断面での前記算出した近似円弧半径Rを用いて、XY断面内での光軸位置のずれ量(レンズ1の中心位置の変位量)ΔYを、ΔY=b*Rより演算部94aにより算出する(ステップC9)。
【0080】
次いで、制御部91により、この、(ステップC8)、及び(ステップC9)のシーケンスをX座標位置Xについてレンズ1の測定面1aの全体に対して行う(ステップC10)。
【0081】
次いで、前記積の値を前記断面での前記レンズ1の中心位置の変位として前記演算部94aにより算出することにより、前記算出された前記断面でのレンズ中心位置の変位に基づいて前記レンズ1の特性を評価する。具体的には、前記計算したX座標位置X、光軸位置のずれ量ΔYについて制御部91により表示装置95にグラフを表示し、表示されたグラフに基づいて、レンズ1の特性、すなわち、XY断面内での走査方向のレンズ直線性をずれ量評価手段94の評価部94bにより評価する(ステップC11)。計算結果は図4に示す形態と同様の出力が得られる。
【0082】
前記第3の実施の形態にかかる前記構成によって、3次元形状測定機等の従来の測定機より出力される形状測定データと、メモリ93などに記憶された設計形状データ(設計データ)の差を用いて、以降の計算でレンズ設計式での比較計算を別途行うことなく、3次元形状測定機の測定手段96より出力される測定データと設計データの差と、測定データそのものを用いて、前記各断面での近似半径Rが変化する場合でも、簡便にレンズ1上の一部分を通過する光に応じて、レンズ1の各部分での光軸位置のずれ(言い換えれば、前記レンズの中心位置の変位)を算出することができる。よって、前記算出された前記断面でのレンズ中心位置の変位に基づいて、前記レンズの特性を評価することができる。
【0083】
(第4の実施の形態)
前記第2の実施の形態、あるいは前記第3の実施の形態の前記レンズの評価方法で求めたレンズ1の光軸位置の直線性データ(レンズ直線性のデータ)で、例えば評価したレンズ1でXZ断面とYZ断面の近似円弧半径が近い場合、あるいはYZ断面での非円弧量が小さい場合には、前記第1〜3の実施の形態中、(ステップA2)、(ステップB2)あるいは(ステップC2)の算出工程で、求めたチルトAの値について十分な精度で算出できない場合がある。これは、X、Y軸周りのチルト(回転位置)A、Bのみならず、Z軸まわりのチルトCの算出を演算部94aにより同時に行うことにより、前記算出すべき全パラメータに対し、均一に2乗和の誤差が配分されるように計算されるためと考えられる。
【0084】
そこで、より高精度にX軸まわりのチルトAを演算部94aにより求めるために、図9A〜図9Cを用いて簡単に説明する。レンズ1のXZ断面形状は、蒲鉾型の部分あるいは、上下を反転した蒲鉾型の部分に有効である。
【0085】
レンズ1の前記(ステップA2)、(ステップB2)、あるいは(ステップC2)で求めた、位置ずれ量である計算値X、Y、Z、A、B、Cを用いて、測定データの座標変換を演算部94aにより行ない、さらに、第2の実施の形態、または第4の実施の形態の評価手順で、レンズ1の座標位置を演算部94aにより求めた結果、図9Aのように、レンズ1の光軸のXY断面での形状がUの字型に変形している場合に、本補正計算は有効である。これは、前述したように、XYZABCの全ての軸に対して{(測定データ)―(設計データ)}の2乗が最小になるように演算部94aにより計算されるため、X軸周りのチルトAでの2乗和が最小になるように求められていない。そこで、求められたチルトAに対する補正値ΔAを演算部94aにより算出する。
【0086】
レンズ1のXZ断面での形状が、図9Cのように蒲鉾型で、X軸まわりに補正値ΔAだけ設計形状に対して傾いている場合、このレンズ1の光軸をYZ断面で見た場合、図9Cに示すとおり、レンズ1の光軸も歪んだ形状となる。具体的には、レンズ1の測定面1aのX軸の有効エリアの端部で、Y軸方向の最大位置ずれ量はYmaxとなり、このときレンズ1のサグ量(Z軸方向の深さ)がSである場合、図9Cより、補正値ΔAは幾何学的な考察より、ΔA=Ymax/Sにて演算部94aにより算出する。
【0087】
この補正値(補正量)ΔAを算出したチルトAの値に演算部94aにより足し込み、前記(ステップA2)、(ステップB2)あるいは(ステップC2)のシーケンスより再度計算を演算部94aにより行うことにより、より正確なレンズ1の測定面1aの直線性をずれ量評価手段94の評価部94bにより評価することができる。
【0088】
ここで、図9Aの状態で補正値ΔAを求め、この向きに測定データの座標を変換することにより、図9Bの結果を得ることができる。すなわち、ステップA2、B2、C2のシーケンスで求めたAの値をより高精度に算出することにより、レンズ直線性を高精度に表示することができる。
【0089】
以下に、より詳細かつ高精度な算出手順を、図10を用いて説明する。
【0090】
第1の実施の形態と同様に、3次元形状測定機の前記測定手段89によりレンズ1の測定面1a上のXYZ測定データ点列を取得する(ステップD1)。以降、(ステップD2)、(ステップD3)、(ステップD4)、及び(ステップD5)のシーケンスは第1の実施の形態の(ステップA2)、(ステップA3)、(ステップA4)、及び(ステップA5)とそれぞれ同様である。
【0091】
次いで、前記レンズ1の前記中心位置の変位状態(変化形状)をレンズ1の光軸に垂直な面で前記演算部94aにより近似する。例えば、前記レンズ1の光軸に垂直な面での前記レンズ1の各断面での中心位置の変位を、前記垂直な面での近似を、2次の関数により、前記演算部94aで行い、算出した2次の係数により、この近似した垂直な面での変位量を前記演算部94aで算出する。具体的には、前記データ抽出手段92により抽出したXY断面の測定データ列iについて、Y=a*X*X+b*X+c の2次の関数からの差の2乗が最小になる各係数a,b,cの値をずれ量評価手段94の演算部94aにより算出する。このように関数で近似することにより、各中心位置の変位量にばらつき、あるいは測定面1a上のゴミにより生じた位置ずれ量のデータがあり、前記X座標位置X、位置ずれ量Ypiの変位量の一部に誤差が含まれる場合でも、ばらつき、あるいは測定面1a上に載ったゴミの影響を受けずに、Y軸方向の最大位置ずれ量Ymaxに相当する位置ずれ量を演算部94aにより算出することができる(ステップD6)。
【0092】
次いで、前記近似した垂直な面での変位量を、レンズ1の深さ方向の値であるサグ量(レンズ1のX軸方向の最大深さ)により前記演算部94aで除算することにより、前記断面の垂線方向の回転方向の位置ずれ量を求める。具体的には、前記演算部94aにより算出した係数aを用い、レンズ1のX軸方向のサグ量(レンズ1のX軸方向の最大深さ)をSとすると、αの補正値ΔA(ここで、αはX軸まわりについて、(測定データのXYZ座標)―(設計データのXYZ座標)の差の回転角Aである。)は、
ΔA=a*Xmax*Xmax/S (ただし、Xmax:レンズ評価エリア/2)[ここで、レンズ評価エリアとは、実際にレンズに光が入り、レンズとして作用するエリアのことである。]
として、
’=A+fb*ΔA
を演算部94aにより算出する(ステップD7)。
(ここで、fbは、レンズが凹面か凸面かの形状に依存する係数であって、レンズ1の前面または後面での凹形状あるいは凸形状で+1、または−1の値をとる。また、Aは、ステップA2、B2、C2のシーケンスで求めた、位置ずれ量である計算値Aの値である。)。
【0093】
補正値ΔAが所定の値より小さい場合は、チルトAの計算値に補正の必要がないので計算を終了し、前記X座標位置X,位置ずれ量Ypiのデータ列をレンズ1の光軸直線性としてずれ量評価手段94の評価部94bに出力する(ステップD8)。ここで、前記所定の値とは、求めたいAの計算精度以下の値のことであり、この計算は、繰り返しの演算を行うことにより達成される。すなわち、例えば、一般的な数値計算で微分方程式をニュートン法等で解く場合、繰り返して方程式に求めた解Hを代入し、値が安定した場合に、数値が求まったものとして計算を終了している。この場合、解Hの変化ΔHが、所定の値以下の場合に計算を終了している。答えが0.1のオーダで良い場合には、0.05の変化であれば、答えが求まったと判断する。これを利用して、この実施形態の場合には、0.1分=0.0016度以下の程度まで安定すれば、計算終了とする。
【0094】
補正値ΔAが前記所定値以上の場合、(ステップD3)、(ステップD4)、(ステップD5)と同じ内容のシーケンスである、(ステップD9)、(ステップD10)、(ステップD11)を行い、さらに(ステップD6)と同じシーケンスである、(ステップD12)を行い、上記(ステップD7)のシーケンスを行うことにより、X軸まわりのチルトAについて最適に演算部94aにより計算された、前記所定値以内の補正値ΔAを演算部94aにより算出し、前記X座標位置X,位置ずれ量Ypiのデータ列をレンズ1の光軸直線性としてずれ量評価手段94の評価部94bに出力する。
【0095】
図11に、前記でのチルトAの補正値ΔAを補正した後の、光軸直線性のデータ例を示す。前記評価手順により、Uの字型の大きなうねりが除かれ、本来評価したい、加工による小さなうねりを、ずれ量評価手段94の評価部94bにより評価することができる。
【0096】
前記第4の実施の形態にかかる前記構成によって、レンズ1の測定面1aの全面の測定データを用いて求めたチルト量に、前記レンズ1の各断面でのレンズ1の中心位置の変位量と、サグ量を用いて位置ずれ量を演算部94aにより求め、補正を演算部94aにより加えることにより、高精度にレンズ1のチルト量を演算部94aにより求めることができ、従来の全面のデータのみでチルトを算出する場合に比べ、長尺レンズ1の特性、すなわち、走査光軸の直線性をより高精度にずれ量評価手段94の評価部94bにより評価することができる。
【0097】
さらに、レンズ1の測定面1aの全面のデータを用いて演算部94aにより求めたチルト量に、前記レンズ1の各断面での中心位置の変位量と、この変位を2次の関数で近似し、この近似した関数より求めた、垂直な面での変位量と、サグ量を用いて位置ずれ量を演算部94aにより求め、補正を演算部94aにより加えることにより、各中心位置の変位量にばらつき、あるいは測定面上のゴミにより生じた位置ずれ量のデータがあり、前記変位量の一部に誤差が含まれる場合でも、高精度にレンズ1のチルト量を演算部94aにより求めることができ、従来の全面のデータのみでチルトを算出する場合に比べ、長尺レンズの走査光軸の直線性をより高精度にずれ量評価手段94の評価部94bにより評価することができる。
【0098】
(第5の実施の形態)
以下、本発明の第5の実施の形態にかかる前記レンズの評価方法について、図12を用いて説明する。第1の実施の形態と同様に、前記レンズの評価方法を実施可能な3次元形状測定機の前記測定手段89によりレンズ1の測定面1a上のXYZ測定データ点列を取得する(ステップE1)。
【0099】
次いで、前記測定データ点列と前記レンズ1の設計式を用いて、XYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量を前記ずれ量評価手段94の演算部94aにより算出する。具体的には、(ステップA2)のシーケンスに相当する、(ステップE2)のシーケンスにより、位置ずれ量である計算値X、Y、Z、A、B、Cをずれ量評価手段94の演算部94aにより算出する(ステップE2)。
【0100】
次いで、前記レンズ1の所定の断面の測定データを所定のピッチでデータ抽出手段92により順次抽出する。具体的には、レンズ1のYZ断面のXYZの測定データ点列をX軸方向に0.5mmピッチでデータ抽出手段92により順次抽出する(ステップE3)。
【0101】
次いで、前記位置ずれ量のうち、前記所定の断面の面内での平行移動2方向とチルトの計3方向の位置とチルトずれ量以外は、前記レンズ1の測定面1aの全面での各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量を用いて、演算部94aにより前記3方向の位置とチルトずれ量を算出するとともに、前記レンズ1の設計式の前記所定の断面での半径パラメータRyが、前記所定の断面での前記位置ずれ算出量での値で、前記半径パラメータRyの値と前記所定の断面で抽出した測定データ点列との差が最小になるように、最適半径パラメータRybfを前記演算部94aにより求める。具体的には、前記データ抽出手段92により抽出した各YZ断面の測定データについて、前記位置ずれ量のうち、前記YZ断面の面内でのYZ方向の平行移動2方向とX軸まわりのチルトAの計3方向の位置ずれ量以外は、前記レンズ1の測定面1aの全面での各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量X、B、Cを用いて、測定データと設計形状データの差の2乗和が最小になる前記3方向の位置ずれ量Y、Z、A(先の計算値Y1、Z1、A1などと区別するため、Ypi、Zpi、Apiとする。)と、レンズ1の設計式に含まれる半径パラメータRyについて測定データと設計形状データの差の2乗和が最小になる最適半径Rybfを演算部94aにより算出し、X座標位置X、半径パラメータRyを各断面に応じて順次メモリ93に記憶する(ステップE4)。
【0102】
次いで、前記レンズ1の前記測定面1aの全面での各断面の前記最適半径パラメータRybfを前記演算部94aにより求める。具体的には、制御部91により、これら(ステップE3)、(ステップE4)のシーケンスをレンズ1の測定面1aの全体に対して行う(ステップE5)。
【0103】
次いで、レンズ1の設計式より求まる円弧半径Rと、前記半径パラメータRyの差を用いて、レンズ1の焦点方向の半径Rずれ量ΔRを、ΔR=Rybf−Rの式で演算部94aにより算出する。(ステップE6)。
【0104】
次いで、制御部91により、(ステップE6)のシーケンスをレンズ1の測定面1aの全体に対して行う(ステップE7)。
【0105】
次いで、前記求められた各断面の前記最適半径パラメータRybf(具体的には、半径ずれ量ΔR)に基づいてレンズ1の特性を評価する。すなわち、レンズフォーカス位置(レンズ1の焦点位置)からの位置ずれ量に比例する半径ずれ量ΔRを、X座標位置X、半径Rずれ量ΔRについて制御部91により表示装置95にグラフを表示し、表示されたグラフに基づいて、レンズ1の特性、すなわち、フォーカス位置ずれ量をずれ量評価手段94の評価部94bにより評価する(ステップE8)。
【0106】
前記第5の実施の形態にかかる前記構成により、レンズ1上の一部分を通過する光に応じて、その近辺のレンズ1の測定面1aの形状測定データと設計式を比較することにより、前記所定の各断面での前記最適半径Rybfを求めることにより、レンズ1の各部分でのレンズ1のフォーカス位置を算出することができる。
【0107】
(第6の実施の形態)
前記第5の実施の形態にかかるレンズの評価方法での評価の場合、最適半径Rybfを算出するベースとなる半径パラメータRyがレンズ1の設計式で表記されている必要があるが、昨今のコンピュータ技術の進化によりレンズ形状の表現式の多様化が進み、YZ断面での形状が、級数の組み合わせ等で表現され、レンズ1の設計式に半径パラメータRyがない場合もあり、この際、フォーカスずれ量を評価する基準となる、近似円弧半径Rを求めることができない場合もある。
【0108】
以下、本発明の第6の実施の形態にかかるレンズの評価方法について、図13を用いて説明する。第1の実施の形態と同様に、前記レンズの評価方法を実施可能な3次元形状測定機の前記測定手段89によりレンズ1の測定面1a上のXYZ測定データ点列を取得する(ステップF1)。
【0109】
次いで、前記測定データ点列と前記レンズ1の設計式を用いて、XYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量を、前記レンズ1の設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段94の演算部94aにより算出する。具体的には、(ステップB2)のシーケンスに相当する、(ステップF2)のシーケンスにより、位置ずれ量である計算値X、Y、Z、A、B、Cをずれ量評価手段94の演算部94aにより算出する(ステップF2)。
【0110】
次いで、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量とを基に、前記各測定データ点列と前記レンズ1の設計式との各差Zdを演算部94aにより求める。具体的には、前記位置ずれ量X、Y、Z、A、B、Cを用いて演算部94aにより座標変換された測定データに対し、XY座標の同一点における{(測定データ)―(設計データ)}のZの値Zdを演算部94aにより順次算出し、X座標位置X、位置ずれ量Ypi、位置ずれ量Zdとしてメモリ93に記憶する(ステップF3)。
【0111】
次いで、前記レンズ1の所定の断面の測定データと前記差Zdを所定のピッチでデータ抽出手段92により順次抽出する。具体的には、レンズ1のYZ断面のXYZの測定データ点列を、X軸方向に0.5mmピッチでX軸方向にj番目の位置でのデータ列(Y、Zd)(ただし、i=1〜9であり、jは1〜9の9点の測定データであり、この9点を用いて計算する。)をデータ抽出手段92により順次抽出する(F4)。なお、iの最大値が9であるのは、図6での測定例で、Y方向に±2mmのエリアを0.5mmピッチで測定しており、走査線数としては、4/0.5+1=9本となるからである。ここでは、2次元配列でデータを取り扱っており、Y軸方向の配列をiで表すと、X軸方向はjで表される。XYZ測定した座標値の点列が、測定点の配置に応じて、2次元配列に格納されているとすると、X(i,j)、Y(i,j)、Z(i,j)で、これが実際のXY(ij)面上に並ぶことになる。
【0112】
次いで、データ抽出手段92により順次抽出した所定の断面の測定データにより、前記所定の断面でのレンズ1の測定面の近似半径Rを前記演算部94aにより求める。次いで、この近似半径Rと、前記抽出した所定の断面の測定データの断面内での各差Zdに対し2次以上の関数で前記演算部94aにより近似する。次いで、この2次の係数を前記演算部94aにより求める。
【0113】
以下、これについて、具体的に説明する。
【0114】
まず、前記データ抽出手段92により抽出した各YZ断面の測定データ列iについて、Zd=a*Y*Y+b*Y+c、の2次の関数からの差の2乗が最小になる各係数a,b,cの値を演算部94aにより算出し、X座標位置Xの値とともにメモリ93に記憶する(ステップF5)。
【0115】
次いで、制御部91により、これら(ステップF4)、(ステップF5)のシーケンスをレンズ1の測定面1aの全体に対して行う(ステップF6)。
【0116】
次いで、X座標位置Xの位置でのYZ断面内での円弧半径Rと、前記係数aを用いて、レンズ1の焦点方向の半径Rずれ量ΔRを、ΔR=2*a*(R*R)の算出式により演算部94aにより算出する(ステップF7)。
【0117】
ここで、上記算出式の内容を簡単に図14を用いて説明する。
【0118】
測定されたレンズ1の球面のレンズ形状が設計半径Rより、yの位置で位置ずれ量Δhだけずれて加工された場合の、半径ずれ量ΔRを以下の手順で演算部94aにより算出する。
【0119】
図14でレンズの、y位置でのサグ量をhとすると、y=2mm程度の場合で、Rが50mm以上の場合、図14の左図の三角形の相似より、
h/y≒y/(2*R)・・・・・・・・・・・・[1]
(Δh+h)/y≒y/2/(R+ΔR)・・・[2]
前記[1]−[2]の式より、Δh/y=y/(2*R)−y/2/(R+ΔR)
Δh/y≒y/2*ΔR/(R*R)
これを変形すると、
Δh/(y*y)=1/2*ΔR/(R*R)
より、
ΔR=2*Δh*(R*R)/(y*y)・・・[3]
ここで、レンズ1の球面(図14のレンズ面)からの位置ずれ量Δhが2次式、Δh=a*y*yで表される場合、[3]式は、
ΔR=2*a*(R*R)・・・・・・・・・・[4]
であり、2次関数の2次の係数aと、半径Rを用いて、位置ずれ量を演算部94aにより算出できる。すなわち、前記係数と、前記断面でのレンズ1の測定面の近似半径Rの二乗との積の2倍の値を前記演算部94aにより求める。
【0120】
次いで、制御部91により、この、(ステップF7)のシーケンスを各X座標位置Xについてレンズ1の測定面1aの全体に対して行う(ステップF8)。
【0121】
次いで、前記した値を前記断面での円弧半径ずれ量として前記演算部94aにより算出することにより、前記断面での円弧半径ずれ量に基づいて前記レンズ1の特性を評価する。具体的には、前記計算したX座標位置X、半径Rずれ量ΔRについて制御部91により表示装置95にグラフを表示し、表示されたグラフに基づいて、レンズ1の特性、すなわち、XY断面内での走査方向のフォーカスずれ量をずれ量評価手段94の評価部94bにより評価する(ステップF9)。
【0122】
前記第6の実施の形態にかかる前記構成によって、3次元形状測定機等の従来の測定機より出力される、形状測定データと設計形状データの差を用いて、以降の計算でレンズ1の設計式での比較計算を別途行うことなく、3次元形状測定機の前記測定手段89より出力される測定データと設計データの差と、測定データそのものを用いて、簡便にレンズ1上の一部分を通過する光に応じて、レンズ1の各部分でのレンズ1のフォーカス位置ずれ量を算出することができる。
【0123】
なお、本第6の実施の形態において、2次関数で位置ずれ量Ypi、Zdデータを近似したが、3次以上の関数で近似し、2次の係数を使用してもよく、同様の効果を得ることができる。
【0124】
(第7の実施の形態)
さらに、本発明の第7の実施の形態にかかるレンズの評価方法について、図15を用いて説明する。第1の実施の形態と同様に、前記レンズの評価方法を実施可能な3次元形状測定機の前記測定手段89によりレンズ1の測定面1a上のXYZ測定データ点列を取得する(ステップG1)。
【0125】
次いで、前記測定データ点列と前記レンズ1の設計式を用いて、XYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量とを、前記レンズ1の設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段94の演算部94aにより算出する。具体的には、前記測定データ点列と前記レンズ1の設計式を用いて、XY座標の同一点における設計式に対する測定データ点列の各点の差の2乗和を演算部94aにより求め、測定データのXYZ水平移動をずれ量評価手段94の演算部94aにより実行し、さらに各X、Y、Z軸周りの回転方向であるA、B、Cを演算部94aにより回転させ、前記2乗和が最小になる位置ずれ量である計算値X、Y、Z、A、B、Cを演算部94aにより算出する(ステップG2)。
【0126】
次いで、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量とを基に、前記各測定データ点列と前記レンズ1の設計式との各差Zdを演算部94aにより求める。具体的には、前記位置ずれ量X、Y、Z、A、B、Cを用いて演算部94aにより座標変換された測定データに対し、XY座標の同一点における(測定データ)―(設計データ)のZの値Zdを演算部94aにより順次算出し、X座標位置X、位置ずれ量Ypi、位置ずれ量Zdとしてメモリ93に記憶する(ステップG3)。
【0127】
次いで、前記レンズ1の所定の断面の測定データと前記差Zdを所定のピッチでデータ抽出手段92により順次抽出する。具体的には、レンズ1のYZ断面のXYZの測定データ点列を、X軸方向に0.5mmピッチでX軸方向にj番目の位置でのデータ列(Y、Zd)、(Y、Z)(ただし、i=1〜9であり、jは1〜9の9点の測定データであり、この9点を用いて計算する。)をデータ抽出手段92により順次抽出する(ステップG4)。なお、iの最大値が9であるのは、図6での測定例で、Y方向に±2mmのエリアを0.5mmピッチで測定しており、走査線数としては、4/0.5+1=9本となるからである。ここでは、2次元配列でデータを取り扱っており、Y軸方向の配列をiで表すと、X軸方向はjで表される。XYZ測定した座標値の点列が、測定点の配置に応じて、2次元配列に格納されているとすると、X(i,j)、Y(i,j)、Z(i,j)で、これが実際のXY(ij)面上に並ぶことになる。
【0128】
次いで前記データ抽出手段92により抽出した各YZ断面の測定データ列iについて、Zd=a*Y*Y+b*Y+c の2次の関数からの差の2乗が最小になる各係数a,b,cの値を演算部94aにより算出し、X座標位置Xの値とともにメモリ93に記憶する(ステップG5)。
【0129】
次いで、前記データ抽出手段92により抽出した各YZ断面の測定データ列iについて、Z=ar*Y*Y+br*Y+cr の2次の関数からの差の2乗が最小になる各係数ar,br,crの値を演算部94aにより算出し、X座標位置Xの値とともにメモリ93に記憶する(ステップG6)。
【0130】
次いで、制御部91により、これら(ステップG4)、(ステップG5)、(ステップG6)のシーケンスをレンズ1の測定面1aの全体に対して行う(ステップC7)。
【0131】
次いで、前記算出したX座標位置Xの位置での係数arの値を用いて、レンズ1のYZ断面での近似円弧半径Rを、R=1/(2・ar)の式により演算部94aにより算出する(ステップG8)。
【0132】
次いで、算出したX座標位置Xの位置での係数bの値と、レンズ1のYZ断面での前記算出した近似円弧半径Rを用いて、XY断面内での光軸位置のずれ量ΔYを、ΔY=b*Rの式より演算部94aにより算出する(ステップG9)。
【0133】
次いで、X座標位置Xの位置でのYZ断面内での円弧半径Rと、前記aを用いて、レンズ1の焦点方向の半径Rのずれ量ΔRを、ΔR=2*a*(R*R)の式で演算部94aにより算出する(ステップG10)。
【0134】
次いで、制御部91により、この、(ステップG8)、(ステップG9)、(ステップG10)のシーケンスを各X座標位置Xについてレンズ1の測定面1aの全体に対して行う(ステップG11)。
【0135】
次いで、計算したX座標位置X、光軸位置のずれ量ΔYについて制御部91により表示装置95にグラフを表示し、表示されたグラフに基づいて、レンズ1の特性、すなわち、XY断面内での走査方向のレンズ直線性をずれ量評価手段94の評価部94bにより評価する(ステップG12)。さらに、計算したX座標位置X、半径Rずれ量ΔRについて制御部91により表示装置95にグラフを表示し、表示されたグラフに基づいて、レンズ1の特性、すなわち、XY断面内での走査方向のフォーカスずれ量をずれ量評価手段94の評価部94bにより評価する(ステップG13)。
【0136】
次いで、計算結果は図16に示す形態の出力が得られる。
【0137】
前記第7の実施の形態にかかる前記構成により、3次元形状測定機等の従来の測定機より出力される、形状測定データと設計形状データの差を用いて、以降の計算でレンズ1の設計式での比較計算を別途行うことなく、3次元形状測定機の前記測定手段89より出力される測定データと設計データの差と、測定データそのものを用いて、前記各断面での近似半径Rが変化する場合でも、簡便にレンズ1上の一部分を通過する光に応じて、レンズ1の各部分でのレンズ1の直線性の位置ずれ量と、フォーカス位置ずれ量を算出することができる。
【0138】
(第8の実施の形態)
図17A及び図17Bは、それぞれ、本発明の第8の実施の形態にかかるレンズの評価方法を実施するときに使用する、レンズ保持治具30と、そのレンズ保持治具30に保持されたコバ部無しのレンズ1及びコバ部有りのレンズ1の構成図である。レンズ保持治具30には、レンズ1の表面と、レンズ1を保持したレンズ保持治具30を表裏反転させてレンズ1の裏面を測定できるように、長方形板体の中央に長方形の貫通孔30aを設けるとともに、レンズ保持治具30が反転しても安定して保持できるように3箇所に支持脚30bを上下に貫通して設けて構成されている。
【0139】
また、貫通孔30aの端部近傍において、レンズ1の長手方向の両端部の側面を保持する保持部31a,31bが備えられており、一方の保持部31aはレンズ保持治具30に固定されており、他方の保持部31bは、レンズ1の長手方向に位置調整可能にレンズ保持治具30に取付けられている。
【0140】
また、貫通孔30aの幅方向の両側の4箇所には、それぞれ一対の対向しかつねじ送りによりレンズ1を挟持可能なクランプ部30c,30cを備えて、コバ部の無いレンズ1に対して、レンズ1の長手方向沿いの側面の2箇所を挟持可能としている。
【0141】
さらに、前記レンズ保持治具30のレンズ1の表面側からと、レンズ保持治具30を反転させてレンズ1の裏面側からレンズ保持治具30の座標を測定できるように、レンズ保持治具30の図17Aの上面の上下貫通した嵌合孔内に嵌合固定された3つの球BA、BB、BCを有するレンズ保持治具31があり、レンズ1の表面側、裏面側よりそれぞれ前記した測定を前記測定手段89で行えるように構成されている。
【0142】
このレンズ保持治具30を用いてレンズの評価を行うには、大略、以下のように行う。
【0143】
まず、レンズ保持治具30の表面側よりレンズ1の表面と、前記3つの球BA、BB、BCの球面を前記測定手段89のプローブ3により測定する。
【0144】
次いで、レンズ保持治具30を表裏反転させ、レンズ保持治具30の裏面側よりレンズ1の裏面と、前記3つの球BA、BB、BCの面を、前記貫通孔30a内に挿入されたプローブ3により測定する。
【0145】
次いで、レンズ1の表面の座標軸を、前記3つの球BA、BB、BCの中心を基準として演算部94aにより算出する。
【0146】
次いで、レンズ1の裏面の座標軸を、前記3つの球BA、BB、BCの中心を基準として演算部94aにより算出する。
【0147】
次いで、3つの球BA、BB、BCを基準としてレンズ1の表裏面の測定データを演算部94aにより合成して、レンズ1の表面に対する裏面、あるいはレンズ1の裏面に対する表面のレンズ1の特性を評価部94bにより評価する。
【0148】
一方、図17Bにおいて、コバ部1bを有するレンズ1を前記レンズ保持治具30で支持する場合においては、レンズ1の長手方向の両端部を保持する保持部31a,31bが備えられている。片方(図17Bの右側)の保持部31aでは、上下方向より各1つの球31cを有して、各1つの球31cの球面でレンズ1のコバ部1bの表裏面を支持するようにしている。他方(図17Bの左側)の保持部31bでは、下面が2つの球31dを有して、各2つの球31dの球面でレンズ1のコバ部1bの裏面を支持し、上面が1つの球31eを有して、1つの球31eの球面でレンズ1のコバ部1bの表面を支持するようにしている。コバ部1bを有するレンズ1でも、前記したのと同様な方法でレンズの評価を行うことができる。
【0149】
かかる構成でのレンズ保持治具30を用いてのより具体的なレンズの評価方法を、図18を用いて以下に説明する。
【0150】
まず最初に、基準位置を特定する表裏両面より測定可能な、3つの球BA、BB、BCが設けられた、レンズ1を支持するレンズ保持治具30にレンズ1を保持する(ステップH1)。
【0151】
次いで、レンズ1の測定面1aを、第1の実施の形態に示した方法でXY断面上の形状座標データを測定手段89により測定し、XYZ測定データ点列の形状データを取得する(ステップH2)。
【0152】
次いで、3つの球BA、BB、BCの頂点を中心に、XY軸上での頂点の位置を測定手段89で測定し、頂点の精確な位置を演算部94aにより算出する(ステップH3)。
【0153】
次いで、予め測定された球BA、BB、BCの半径と、前記測定値より球BA、BB、BCの中心位置を演算部94aにより算出する(ステップH4)。
【0154】
次いで、制御部91により、上記(ステップH3)、(ステップH4)のシーケンスを繰り返して、3つの基準球BA、BB、BCを測定する(ステップステップH5)。
【0155】
次いで、レンズ保持治具30を反転し、上記(ステップH2)、(ステップH3)、(ステップH4)、(ステップH5)のシーケンスを制御部91により繰り返す(ステップH6)。
【0156】
次いで、レンズ保持治具30の表面側のレンズ1の表面の全面の測定データと、設計式を演算部94aにより比較し、面形状の差の最小2乗和が最小となる、レンズ表面座標の中心位置と方向(X,Y,Z,A,B,C)の座標軸を演算部94aにより算出する(ただし、サフィックスfはレンズ1の表面を表す文字である。)(ステップH7)。
【0157】
次いで、レンズ保持治具30の表面側における、レンズ1の測定面1aである表面の直線性、フォーカスずれ量を第1〜7の実施形態のいずれかの前記評価方法で評価部94bにより評価する(ステップH8)。
【0158】
次いで、レンズ保持治具30の表面側の、レンズ1の表面と同じ面の、前記3球BA、BB、BCの中心を通る平面と、前記3球BA、BB、BCのうちの2球BA,BBの中心を結ぶベクトルをX軸方向とし、前記レンズ保持治具30の中心位置と方向(X1j、Y1j,Z1j,A1j,B1j,C1j)の座標軸を演算部94aにより算出する(ただし、ここでのサフィックス1はレンズ1の表面を表す文字である。)(ステップH9)。
【0159】
次いで、レンズ表面座標と3球BA、BB、BCより求めたレンズ保持治具30の座標軸より、レンズ保持治具30の座標を基準としたレンズ表面の座標(X1s、Y1s,Z1s,A1s,B1s,C1s)を演算部94aにより算出し、この座標で、レンズ保持治具30の表面側における、レンズ1の表面の直線性、フォーカスずれ量の評価データの座標を演算部94aにより変換する(ただし、ここでのサフィックス1はレンズ1の表面を表す文字であり、X1s、Y1s,Z1s,A1s,B1s,C1sは、3球BA、BB、BCの中心を通る平面で定義される表面側からの座標系である。)(ステップH10)。
【0160】
次いで、レンズ保持治具30の裏面側のレンズ1の裏面の全面の測定データと、設計式を演算部94aにより比較し、面形状の差の最小2乗和が最小となる、レンズ裏面座標の中心位置と方向(X,Y,Z,A,B,C)の座標軸を演算部94aにより算出する(ただし、サフィックスbはレンズ1の裏面を表す文字である。)(ステップH11)。
【0161】
次いで、レンズ保持治具30の裏面側における、レンズ1の測定面1aである裏面の直線性、フォーカスずれ量を第1〜7の実施の形態のいずれかの前記評価方法で、表面と同様に評価部94bにより評価する(ステップH12)。
【0162】
次いで、レンズ保持治具30の裏面側の、レンズ1の裏面と同じ面の、前記3球BA、BB、BCの中心を通る平面と、前記3球BA、BB、BCのうちの2球BA,BBの中心を結ぶベクトルをX軸方向とし、前記レンズ保持治具30の中心位置と方向(X2j、Y2j,Z2j,A2j,B2j,C2j)の座標軸を算出する(ただし、ここでのサフィックス2はレンズ1の裏面を表す文字である。)(ステップH13)。
【0163】
次いで、レンズ裏面座標と3球BA、BB、BCより求めたレンズ保持治具30の座標軸より、レンズ保持治具30の座標を基準としたレンズ裏面の座標(X2s、Y2s,Z2s,A2s,B2s,C2s)を算出し、この座標で、レンズ保持治具30の裏面側における、レンズ1の裏面の直線性、フォーカスずれ量の評価データの座標を演算部94aにより変換する(ただし、ここでのサフィックス2はレンズ1の裏面を表す文字であり、X2s、Y2s,Z2s,A2s,B2s,C2sは、3球BA、BB、BCの中心を通る平面で定義される裏面側からの座標系である。)(ステップH14)。
【0164】
次いで、前記で算出したデータより、レンズ保持治具30の表面側のレンズ1の表面の直線性、フォーカスずれ量の評価データを、レンズ保持治具30の裏面基準での座標に演算部94aにより変換して表示装置95に表示するとともに、レンズ保持治具30の裏側の面を基準とした上下(表裏)のレンズ1の測定面(表裏両面)1a間の直線性、フォーカスずれ量を演算部94aにより算出する(ステップH15)。ここで、裏面基準でレンズ1の表面のデータを評価したが、上下の基準を反転させ、表面基準でレンズ1の裏面を評価してもよい。
【0165】
次いで、上記評価方法での評価結果例を、図19A〜図19Dに示す。図19Bの太線の曲線は裏面基準での表面のレンズ1の直線性を、図19Cの一点鎖線の曲線は裏面のレンズ1の直線性をそれぞれ示している。図19Dは、裏面基準で、太線の曲線は表面のレンズ1の直線性、一点鎖線の曲線は裏面のレンズ1の直線性、点線の曲線は表面と裏面の直線性の差を示している。
【0166】
前記第8実施の形態にかかる前記構成によって、表面基準で裏面、あるいは裏面基準で表面のレンズ1の直線性とフォーカス位置を評価することができる。さらに、レンズ1の端面の下側を3つの球31c,31dの球面と、上側を2つの球31c,31eの球面で支持するので、レンズ1を歪めることなく、安定して保持し評価することができる。
【0167】
なお、実際の測定では、測定時の温度変化等による、測定物と治具の変形を避けるために、測定だけ先に行い、その後、計算処理を行うようにしてもよい。例えば、前記第8の実施の形態において、レンズの前記表面と前記3つの球の面を測定し、レンズの前記表面の座標軸を算出し、レンズの前記裏面と前記3つの球の面を測定し、レンズの前記裏面の座標軸を算出し、レンズの前記表裏面のデータを合成して評価するようにしてもよい。
【0168】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明のレンズの評価方法は、長尺レンズの光の走査方向の直線性とフォーカス位置を高精度に評価することができ、従来、レンズを組み込み装置として完成させなければ評価できなかった前記評価を、装置化せずにレンズ単体の段階で評価を実現し、レンズ評価工程を大幅に合理化でき、このレンズを用いたレーザビームプリンター等印写装置の高精度化、高機能化の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1A】本発明の第1の実施の形態における3次元形状測定機によるレンズ測定の斜視図
【図1B】本発明の第1の実施の形態における3次元形状測定機によるレンズ測定における測定物の上面での走査経路を示す図
【図1C】本発明の第1の実施の形態における3次元形状測定機の測定手段と制御演算部との関係を示す構成図
【図2】本発明の第1の実施の形態における3次元形状測定機でのXYZ測定データ例を示す図
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるレンズ評価方法の評価手順を示すフローチャート
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるレンズ評価方法により求められた直線性のずれの計算結果例(直線性の評価の例)を示すグラフ
【図5】本発明の第2の実施の形態におけるレンズ評価方法の評価手順を示すフローチャート
【図6】本発明の第2の実施の形態における3次元形状測定機での{(測定データ)−(設計形状データ)}の例を示す図
【図7A】本発明の第2の実施の形態におけるレンズ評価方法の算出式の内容を簡単に説明するための図
【図7B】本発明の第2の実施の形態におけるレンズ評価方法の算出式の内容を簡単に説明するための図
【図8】本発明の第3の実施の形態におけるレンズ評価方法の評価手順を示すフローチャート
【図9A】本発明の第4の実施の形態におけるレンズ評価方法において、X軸まわりのチルトAをより高精度に求めるときの面データからのチルトA軸のアライメントを説明するための説明図であって、(a)はレンズの斜視図、(b)はレンズの平面図、((c)はレンズの右側面図
【図9B】本発明の第4の実施の形態におけるレンズ評価方法において、X軸まわりのチルトAをより高精度に求めるときの直線性からのチルトA軸のアライメントを説明するための説明図であって、(a)はレンズの斜視図、(b)はレンズの平面図、((c)はレンズの右側面図
【図9C】本発明の第4の実施の形態におけるレンズ評価方法において、X軸まわりのチルトAをより高精度に求めることを説明するための説明図
【図10】本発明の第4の実施の形態におけるレンズ評価方法の評価手順を示すフローチャート
【図11】本発明の第4の実施の形態におけるレンズ評価方法において、チルトAの補正値ΔAを補正した後の、光軸直線性のデータ例を示す図
【図12】本発明の第5の実施の形態におけるレンズ評価方法の評価手順を示すフローチャート
【図13】本発明の第6の実施の形態におけるレンズ評価方法の評価手順を示すフローチャート
【図14】本発明の第6の実施の形態におけるレンズ評価方法において、算出式の内容を簡単に説明するための説明図
【図15】本発明の第5の実施の形態におけるレンズ評価方法の評価手順を示すフローチャート
【図16】本発明の第7の実施の形態におけるレンズ評価方法により求められた計算結果例(直線性とフォーカスずれの同時評価の例)を示すグラフ
【図17A】本発明の第8の実施の形態にかかるレンズの評価方法を実施するときに使用するレンズ保持治具であって、コバ部無しのレンズを支持している状態の平面図
【図17B】本発明の第8の実施の形態にかかるレンズの評価方法を実施するときに使用するレンズ保持治具であって、コバ部有りのレンズを支持している状態において、図17AのV−V線に沿って破断したとき(両端部の支持脚を貫通孔の端部に向かって斜めに貫通しかつ貫通孔沿いに破断したとき)の一部断面側面図
【図18】本発明の第8の実施の形態におけるレンズ評価方法の評価手順を示すフローチャート
【図19A】本発明の第8の実施の形態におけるレンズ評価方法での評価結果例を説明するための説明図
【図19B】本発明の第8の実施の形態におけるレンズ評価方法での評価結果例において、レンズの表面の直線性を示すグラフ
【図19C】本発明の第8の実施の形態におけるレンズ評価方法での評価結果例において、レンズの裏面の直線性を示すグラフ
【図19D】本発明の第8の実施の形態におけるレンズ評価方法での評価結果例において、裏面基準での表面の直線性を示すグラフ
【図20】従来のレンズの評価方法の説明図
【符号の説明】
【0171】
1 レンズ
1a レンズ表面(測定面)
1b レンズコバ部
2 レーザ測長光学ユニット
3 プローブ
4 移動体
5 Xステージ
6 Yステージ
7 定盤
30 レンズ保持治具
30a 貫通孔
30b 支持脚
30c クランプ部
BA、BB、BC 球
31a,31b レンズ保持部
31c,31d,31e 球
89 測定手段
90 制御演算部
91 制御部
92 データ抽出手段
93 メモリ
94 ずれ量評価手段
94a 演算部
94b 評価部
95 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの前記測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量と、
(iii)前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズの断面の測定データを測定ピッチでデータ抽出手段により順次抽出した前記レンズの断面の測定データと、
を用いるとともに、前記(ii)の位置ずれ量のうち、前記レンズの断面の面内での平行移動2方向とチルトの計3方向の位置ずれ量以外は、前記レンズの測定面の全面での各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量を用いて、演算部により前記3方向の位置ずれ量を計算し、
前記3方向の位置ずれ量の計算結果を基に、前記レンズの前記測定面の全面での各断面の平行移動量とチルトを前記演算部により求め、前記求められた各断面の平行移動量とチルトに基づいて前記レンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法。
【請求項2】
(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの前記測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各チルトABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量と、
(iii)前記各位置ずれ量を基に、前記各測定データ点列と前記レンズの設計式との各差を演算部により求め、
前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズの断面の測定データと前記差を測定ピッチでデータ抽出手段により順次抽出した前記レンズの断面の測定データの前記断面内での各差に対し近似した直線の傾き、あるいは2次曲線等の係数のうちの近似傾きと、前記断面でのレンズの測定面の近似半径との積を前記演算部により求め、
この積の値を前記断面での前記レンズの中心位置の変位として前記演算部により算出することにより、前記算出された前記断面での前記レンズの中心位置の変位に基づいて前記レンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法。
【請求項3】
(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの前記測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量とを基に、前記各測定データ点列と前記レンズの設計式との各差を演算部により求め、
前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズ断面の測定データと前記差を測定ピッチでデータ抽出手段により順次抽出した前記レンズの断面の測定データにより、前記レンズの断面での前記レンズの前記測定面の近似半径を前記演算部により求め、
この近似半径と、前記抽出した前記レンズの断面の測定データの断面内での各差に対し近似した直線の傾き、あるいは2次曲線等の係数のうちの近似傾きと、前記断面での近似半径との積を前記演算部により求め、
この積の値を前記断面での前記レンズの中心位置の変位として前記演算部により算出することにより、前記算出された前記断面でのレンズ中心位置の変位に基づいて前記レンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法。
【請求項4】
前記近似半径の算出方法が2次の最小2乗法であることを特徴とする請求項2に記載のレンズの評価方法。
【請求項5】
前記レンズの前記中心位置の変位形状を前記レンズの光軸に垂直な面で前記演算部により近似し、この近似した垂直な面での変位量を、レンズの深さ方向の値であるサグ量により前記演算部で除算することにより、前記断面の垂線方向の回転方向の位置ずれ量を求めることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のレンズの評価方法。
【請求項6】
前記レンズの光軸に垂直な面での前記レンズの各断面での中心位置の変位を、前記垂直な面での近似を2次の関数により前記演算部で行い、算出した2次の係数により、この近似した垂直な面での変位量を前記演算部で算出し、この算出量を、前記レンズの深さ方向の値であるサグ量により前記演算部で除算することにより、前記断面の垂線方向の回転方向の位置ずれ量を求めることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のレンズの評価方法。
【請求項7】
(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの前記測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量と、
(iii)前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズの断面の測定データを測定ピッチでデータ抽出手段により順次抽出した前記レンズの断面の測定データと、
を用いるとともに、前記(ii)の位置ずれ量のうち、前記レンズの断面の面内での平行移動2方向とチルトの計3方向の位置とチルトずれ量以外は、前記レンズの測定面の全面での各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量を用いて、演算部により前記3方向の位置とチルトずれ量を算出し、
さらに、前記レンズの設計式の前記レンズの断面での半径パラメータが、前記レンズの断面での前記位置ずれ算出量での値で、前記半径パラメータの値と前記レンズの断面で抽出した測定データ点列との差が最小になるように前記演算部により求めかつ前記レンズの前記測定面の全面での各断面の前記最適半径パラメータを前記演算部により求め、前記求められた各断面の前記最適半径パラメータに基づいてレンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法。
【請求項8】
(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの前記測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量とを基に、前記各測定データ点列と設計式との各差を演算部により求め、
前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズの断面の測定データと前記差を測定ピッチで順次抽出するデータ抽出手段と、前記抽出した前記レンズの断面の測定データの断面内での各差に対し2次以上の関数で近似し、この2次の係数を求め、この係数と、前記断面での前記レンズの前記測定面の近似半径の二乗との積の2倍の値を前記演算部により求め、この値を前記断面での円弧半径ずれ量として前記演算部により算出することにより、前記算出された前記断面での円弧半径ずれ量に基づいて前記レンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法。
【請求項9】
(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量とを基に、前記各測定データ点列と前記レンズの設計式との各差を演算部により求め、
前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズの断面の測定データと前記差を測定ピッチでデータ抽出手段により順次抽出した前記レンズの断面の測定データについて、2次の関数からの差の2乗が最小になる係数の値を前記演算部により算出し、
前記係数と、前記断面でのレンズの測定面の近似半径の二乗との積の2倍の値を前記演算部により求め、
この値を前記断面での円弧半径ずれ量として前記演算部により算出することにより、前記断面での円弧半径ずれ量に基づいて前記レンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法。
【請求項10】
(i)レンズの測定面上のXYZ方向の形状座標データを測定する測定手段により得られた前記レンズの測定面上のXYZ測定データ点列と、
(ii)前記測定データ点列と前記レンズの設計式を用いて、前記レンズの設計式と前記測定データ点列の座標ずれ量を評価するずれ量評価手段により得られたXYZ座標系におけるXYZ位置と各XYZ軸周りの回転方向の各ABC方向の、各位置の位置ずれ量と各チルトの位置ずれ量とを基に、前記各測定データ点列と前記レンズの設計式との各差を演算部により求め、
前記レンズを通過する光軸に平行な前記レンズのYZ断面の測定データと前記差を測定ピッチでデータ抽出手段により順次抽出した前記レンズのYZ断面の測定データについて、前記各差に関する2次の関数からの差の2乗が最小になる係数の値を前記演算部により算出し、
前記データ抽出手段により順次抽出した前記レンズのYZ断面の測定データについて、前記Z座標に関する2次の関数からの差の2乗が最小になる係数の値を前記演算部により算出し、
前記後で算出した係数の値を用いて、前記レンズのYZ断面での近似円弧半径を、近似円弧半径=1/(2×係数)の式により前記演算部により算出し、
前記先に算出した係数の値と、前記レンズのYZ断面での前記算出した近似円弧半径を用いて、XY断面内での光軸位置のずれ量を、前記先に算出した係数と前記近似円弧半径との積の式より前記演算部により算出し、
前記先に算出した係数と、前記YZ断面での前記レンズの測定面の前記近似半径の二乗との積の2倍の値を前記演算部により求め、
この値を前記断面での円弧半径ずれ量として前記演算部により算出することにより、前記断面での円弧半径ずれ量に基づいて前記レンズの特性を評価することを特徴とするレンズの評価方法。
【請求項11】
(i)レンズ保持治具の表面側から前記レンズ保持治具に保持されたレンズの表面を測定可能にかつ、前記レンズ保持治具を反転させて前記レンズ保持治具の裏面側から前記レンズの裏面を測定可能に構成されかつ前記レンズ保持治具に固定された3つの球を有する前記レンズ保持治具を用い、前記レンズ保持治具の表面側より前記レンズの前記表面と、前記3つの球の面を測定し、
次いで、前記レンズ保持治具を表裏反転させて、前記レンズ保持治具の裏面側より前記レンズの前記裏面と、前記3つの球の面を測定し、
次いで、前記レンズの前記表面の座標軸を前記3つの球の中心を基準として演算部により算出し、
次いで、前記レンズの前記裏面の座標軸を前記3つの球の中心を基準として前記演算部により算出し、
次いで、前記3つの球を基準として前記レンズの前記表裏面のデータを合成して、前記レンズの前記表面に対する前記裏面、あるいは前記レンズの前記裏面に対する前記表面の前記レンズの特性を評価する請求項1〜9のいずれか1つに記載のレンズの評価方法。
【請求項12】
前記レンズ保持治具において、前記レンズ保持治具の前記レンズを保持する2つの保持部のうちの一方の保持部が上下方向より各1つの球面で前記レンズの端部の表裏面を支持し、他方の保持部が2つの球面で前記レンズの端部の下面を支持し、1つの球面で前記レンズの端部の上面を支持した状態で、前記測定が行なわれることを特徴とする請求項10に記載のレンズの評価方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−170262(P2008−170262A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3403(P2007−3403)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】