説明

レンズアレイの製造方法

【課題】反射防止構造体を有するマスター型を用いて、レンズアレイ基材の光学面転写予定面のレジスト層に反射防止構造体を転写し、均一な反射防止構造体を成形可能として高精度なレンズアレイを得る。
【解決手段】光学面に反射防止構造体14を有する複数のレンズを共通の基材に二次元的に配置したレンズアレイの製造方法であって、光学面形成面12が形成されたマスター型10を準備する工程(S1)と、マスター型10の光学面形成面12に反射防止構造体14を形成する工程(S2)と、光学面転写予定面24を有するレンズアレイ基材23を準備する工程(S3)と、レンズアレイ基材23の光学面転写予定面24にマスター型10を用いて反射防止構造体14を転写する工程(S7)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学面に反射防止構造体を有する複数の光学素子を二次元的に配置したレンズアレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズ表面の反射を抑制するために、反射防止コートが施されていた。そして近年ではレンズなど、光学素子の表面に、微細な凹凸部を形成し、入射光に対する反射を防止する反射防止構造体が提案されている。
この反射防止構造体は、光学素子の表面の屈折率分布を変化させ、光学素子の表面からの光の反射を防止することができる。
このような反射防止構造体を形成するには、例えば、光学素子の表面にレジストパターンを形成し、このレジストパターンを元にして、光学素子の表面にマスクを形成する。さらに、このマスキング以外の部分にエッチング処理を施して、反射防止構造体を形成する。
【0003】
特許文献1には、このような反射防止構造体を有するレンズの製造方法が開示されている。この特許文献1では、X線マスクと感光性部材とを、X線マスクの異なる領域を通過したX線同士が回折により干渉を生じる距離だけ離して配置し、X線マスクを介して感光性部材に向けてX線を露光する。
次いで、露光された感光性部材を現像し、干渉と現像の際の化学的な作用との影響によって、反射防止効果に優れた反射防止構造体を形成できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−235195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のレンズの製造方法では、反射防止構造体を作る感光性部材の表面に感光性レジストをスピンコート法などにより均一に塗布する必要がある。レジスト層の厚さにムラがあると、感光性部材の表面に転写される反射防止構造体の凸部の高さや幅が均一でなくなるためである。
しかし、複数の光学素子(レンズ)を並設したレンズアレイの場合、光学面が球面又は非球面である場合が多いため、各々の光学面に均一にレジストを塗布することは難しい。
また、レンズアレイの光学面の曲率半径が小さいと、レンズの中心部と外周部では、マスクからのX線の到達距離が異なる。このため、光学面に一様な反射防止構造体を形成することは困難であった。
【0006】
本発明は、斯かる課題を解決するためになされたもので、反射防止構造体を有するマスター型を用いて、レンズアレイ基材の光学面転写予定面のレジスト層に反射防止構造体を転写し、均一な反射防止構造体を成形可能として高精度なレンズアレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光学面に反射防止構造体を有する複数の光学素子を共通の基材に二次元的に配置したレンズアレイの製造方法であって、
光学面形成面が形成されたマスター型を準備する工程と、
前記マスター型の前記光学面形成面に前記反射防止構造体を形成する工程と、
光学面転写予定面を有するレンズアレイ基材を準備する工程と、
前記レンズアレイ基材の前記光学面転写予定面に前記マスター型を用いて前記反射防止構造体を転写する工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、請求項1に記載のレンズアレイの製造方法であって、
前記レンズアレイ基材として、前記光学面転写予定面に光硬化樹脂をレジスト層として塗布する際、前記光硬化樹脂の硬化に必要な光の波長領域に対して高透過率材料を用いることが好ましい。
また、請求項1に記載のレンズアレイの製造方法であって、
前記反射防止構造体は錐形状の多数の微小凸部を有することが好ましい。
さらに、請求項1に記載のレンズアレイの製造方法であって、
前記マスター型は、型基材に複数の前記光学面形成面をアレイ状に配置したものであることが好ましい。
また、請求項1に記載のレンズアレイの製造方法であって、
前記マスター型は、前記光学面形成面を有する入れ子を型基材に形成された孔に嵌挿したものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反射防止構造体を有するマスター型を用いて、レンズアレイ基材の光学面転写予定面のレジスト層に反射防止構造体を転写し、均一な反射防止構造体を成形可能として高精度なレンズアレイを製造することができる。
また、同一マスター型を使用する限りは、複数の光学面間における面精度のバラツキも小さくできるので、高精度なレンズアレイを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】本実施の形態のマスター型の断面図である。
【図1B】同上の外観図である。
【図2】陽極酸化法によりマスター型の光学面形成面に反射防止構造体を形成する工程を示す図である。
【図3】光学面形成面に反射防止構造体が形成されたマスター型の断面図である。
【図4】平板状のレンズアレイ基材の断面図である。
【図5】レンズアレイ基材に複数の光学面転写予定面を研削加工した状態の断面図である。
【図6】レンズアレイ基材の光学面転写予定面にレジスト層を塗布した状態を示す図である。
【図7A】レンズアレイ基材の光学面転写予定面の上方にマスター型を対向配置した状態を示す図である。
【図7B】レンズアレイ基材のレジスト層にマスター型の反射防止構造体を押し付けて硬化させる状態を示す図である。
【図8】レンズアレイ基材を間欠的に移動させて全ての光学面転写予定面に反射防止構造体を転写する工程を示す図である。
【図9A】レジスト層に反射防止構造体が転写された状態を示す図である。
【図9B】ドライエッチングによりレンズアレイ基材に反射防止構造体が転写された状態を示す図である。
【図10】反射防止構造体が転写されたレンズアレイ基材を用いてレンズアレイを成形する工程を示す図である。
【図11】本実施の形態の製造工程のフローチャートを示す図である。
【図12】平板状のレンズアレイ基材の断面図である。
【図13】レンズアレイ基材に多数の光学面転写予定面を研削加工した状態の断面図である。
【図14】レンズアレイ基材の光学面転写予定面にレジスト液を滴下した状態を示す図である。
【図15A】レンズアレイ基材の光学面転写予定面の上方にマスター型を対向配置した状態を示す図である。
【図15B】レンズアレイ基材のレジスト液にマスター型の反射防止構造体を押し付けて硬化させる状態を示す図である。
【図16】ステップ&リピートにより光学面転写予定面に反射防止構造体を転写する工程を示す図である。
【図17A】レジスト層に反射防止構造体を転写した状態を示す図である。
【図17B】ドライエッチングにてレンズアレイ基材に反射防止構造体を転写した状態を示す図である。
【図18】反射防止構造体が転写されたレンズアレイ基材を用いてレンズアレイを成形する工程を示す図である。
【図19A】1列型のマスター型の断面図である。
【図19B】同上の外観図である。
【図20A】アレイ型の光学面形成面を有するマスター型の断面図である。
【図20B】同上の外観図である。
【図21A】入れ子型のマスター型の断面図である。
【図21B】同上の外観図である。
【図22】同上の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
[第1の実施の形態]
図1〜図10は、本実施の形態のレンズアレイの製造方法の実施の形態を示す図であり、図11は、本実施の形態の製造工程のフローチャートを示す図である。
(マスター型10を準備する工程)(図11のS1)
【0012】
図1Aは、本実施の形態のマスター型の断面図、図1Bは、その外観図である。
同図に示すように、アルミ製の円柱状(又は角柱状)の型基材11の一端に光学面形成面12を研削加工により形成して、マスター型10を作成する。なお、光学面には鏡面加工が施されている。
本実施の形態では、マスター型10の一端の平坦部13の中央に凸非球面状の光学面形成面12が形成されている。このマスター型10は単型である。なお、光学面形成面13は球面でも非球面でもよい。また、本実施の形態ではマスター型10の型基材11として、例えばアルミ材(Al)を用いている。
(反射防止構造体14を形成する工程)(図11のS2)
【0013】
図2は、陽極酸化法によりマスター型10の光学面形成面12に反射防止構造体14を形成する工程を示す図、図3は、光学面形成面12に反射防止構造体14が形成されたマスター型10の断面図である。
この反射防止構造体14は、ピッチと高さの比であるアスペクト比が、1以上である円錐形状(又は角錐形状)の凹部の構造単位が、反射を防止すべき光の波長以下のピッチで多数配列されている。
【0014】
なお、反射防止構造体14の凹部が円錐形状の場合、そのアスペクト比が高いほど(円錐部の径が小さく、また、高さが高いほど)、反射防止効果が高いと考えられている。
具体的には、図2において、シュウ酸溶液15を満たした容器16内にマスター型10の光学面形成面12を浸漬する。また、マスター型10を陽極17に接続し、電極板18を陰極19に接続する。また、マスター型10の光学面形成面12以外の平坦部13はマスク21で覆う。
なお、本実施の形態では、反射防止構造体14の形成に陽極酸化法を用いた場合について説明したが、これに限らない。例えば、二光束干渉パターニングなどを用いてもよい。
【0015】
この陽極酸化法では、印加電圧を変えることで反射防止構造体14の凹部のピッチを変えることができる。例えば、反射防止構造体14の凹部のピッチは、150nm〜200nmである。また、通電時間を変えることで反射防止構造体14の凹部の深さを変えることができる。例えば、反射防止構造体14の凹部の深さは、150nm〜250nmである。
この工程により、図3に示すように、マスター型10の光学面形成面12に、錐形状の凹部を有する反射防止構造体14が形成される。
(レンズアレイ基材23を準備する工程)(図11のS3)
【0016】
図4は、薄板状のレンズアレイ基材23の断面図である。
本実施の形態では、このレンズアレイ基材23として石英を用いた。なお、このレンズアレイ基材23は高透過率材料であることが好ましい。なお、後述するUV硬化樹脂の硬化に必要な光の波長領域に対して高透過率材料であれば、他のガラス材料や、樹脂材料等でもよい。
また、材料の透過率は、UV硬化樹脂を硬化するに必要な光の波長やレンズアレイ基材20の厚みなどによって異なる。
(レンズアレイ基材23に光学面転写予定面24を加工する工程)(図11のS4)
【0017】
図5は、レンズアレイ基材23に複数の光学面転写予定面24を研削加工した状態の断面図である。
この光学面転写予定面24は、マスター型10の光学面形成面12を収容可能な凹球面状又は凹非球面状に形成されている。この光学面形成面12の加工は、例えば研削盤等を用いた研削加工により行われる。
(レジスト層25の塗布工程)(図11のS5)
【0018】
図6は、レンズアレイ基材23の光学面転写予定面24にレジスト層25を塗布した状態を示す図である。
このレジスト層25として、本実施の形態ではUV硬化型樹脂を用いた。なお、レジスト層25としてはUV硬化型樹脂に限らない。例えば、熱可塑性樹脂などを用いてもよい。このUV硬化型樹脂を、レンズアレイ基材23の光学面転写予定面24に均一な厚さに塗布するのが好ましい。
ただし、このレジスト層25は、光学面転写予定面24に必ずしも均一厚さに塗布する必要はない。マスター型10を押し付けることで、反射防止構造体14をレジスト層25に転写するため、厚さに多少のばらつきがあってもよい。
(レジスト層25に反射防止構造体14’を転写する工程)(図11のS6)
【0019】
図7Aは、レンズアレイ基材23の光学面転写予定面24の上方に、マスター型10を対向配置した状態を示す図であり、図7Bは、レンズアレイ基材23のレジスト層25にマスター型10の反射防止構造体14を押し付けて硬化させる状態を示す図である。また、図8は、レンズアレイ基材23を間欠的に移動させて全ての光学面転写予定面24に反射防止構造体14’を転写する工程を示す図である。
本実施の形態では、レンズアレイ基材23の光学面転写予定面24ごとに塗布されたレジスト層25にマスター型10を押し付ける。次いで、その状態で、レジスト層25の1個ごとに、下方からUV光源26によりUV光を照射してレジスト層25を硬化させている。
このように、本実施の形態では、感光した部分を現像液に溶解させてレジスト層25を除去するのではなく、マスター型10を押し付けてレジスト層25に凹凸を形成している。
【0020】
また、本実施の形態では、レンズアレイ基材23として、高透過率材料である石英を用いているので、UV光がレンズアレイ基材23を効率よく透過してレジスト層25を短時間で硬化させることができる。なお、硬化時間を気にしない場合には高透過率材料にこだわる必要はない。また、ここでの高透過率は例えば透過率90%以上をいう。
【0021】
また、転写に際しては、図8に示すように、レンズアレイ基材23を1ステップずつ矢印A方向に間欠的に移動させる。そして、ステップ&リピートにより、全てのレジスト層25に反射防止構造体14’を転写する。
すなわち、まず1個目(図8の左端の1個目)のレジスト層25にマスター型10を押し付け、反射防止構造体14’を転写したら、その状態でUV光源26によりUV光を照射する。そして、レジスト層25が硬化したら、マスター型10を上方に退避移動させる。次いで、レンズアレイ基材23をA方向に1ステップ移動させる。
【0022】
続いて、2個目(図8の左端から2個目)のレジスト層25にマスター型10を押し付け、反射防止構造体14’を転写したら、その状態でUV光源26によりUV光を照射する。そして、レジスト層25が硬化したら、マスター型10を上方に退避移動させる。次いで、レンズアレイ基材23をA方向に1ステップ移動させる。
以下、これを繰り返す。
(ドライエッチングによりレジスト層25に転写された反射防止構造体14’をレンズアレイ基材23に転写する工程)(図11のS7)
【0023】
次に、図9Aは、全てのレジスト層25に反射防止構造体14’が転写された状態を示す図であり、図9Bは、ドライエッチングによりレンズアレイ基材23に反射防止構造体14が転写された状態を示す図である。
このように、本実施の形態では、ドライエッチングによりプラズマガスやイオンを用いて、レンズアレイ基材23からレジスト層25を除去する。こうして、レンズアレイ基材23の夫々の光学面転写予定面24に反射防止構造体14を転写する。
(反射防止構造体14が転写されたレンズアレイ基材23を用いてレンズアレイ30を成形する工程)(図11のS8)
【0024】
図10は、反射防止構造体14が転写されたレンズアレイ基材23を用いてレンズアレイ30を成形する工程を示す図である。
反射防止構造体14が転写された2つのレンズアレイ基材23を、所定間隔で上下に対向配置する。こうして、形成された複数のキャビティ空間にUV硬化樹脂27を充填する。
次いで、下方からUV光源26により複数のキャビティ空間にまとめてUV光を照射してUV硬化樹脂27を硬化させる。こうして、光学面に反射防止構造体14を有する複数のレンズを二次元状に配置したレンズアレイ30を得ることができる。
【0025】
本実施の形態によれば、マスター型10に形成された反射防止構造体14を、レンズアレイ基材23に塗布されたレジスト層25に押し付けることで、反射防止構造体14’が転写されるので、たとえレジスト層25が均一に塗布されていなくても、エッチング処理を経てレンズアレイ基材23のレジスト層25に均一に反射防止構造体14’を転写することができる。
また、この反射防止構造体14’をエッチングしてレンズアレイ基材23に反射防止構造体14を転写し、このレンズアレイ基材23を成形型として用いることで高精度なレンズアレイ30を製造することができる。
また、1個の同一のマスター型10を使用する限り、転写された複数の光学面のバラツキも小さいので、均一な反射防止構造体14が得られ、高精度なレンズアレイ30を製造することができる。

[第2の実施の形態]
【0026】
図12〜図18は、本実施の形態のレンズアレイの製造方法を示す図である。
図1〜図3の反射防止構造体を有するマスター型の作製方法は、第1の実施の形態と同様である。また、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には同一の符号を付して説明する。
(レンズアレイ基材への光学面転写面の加工)
【0027】
図12は、平板状のレンズアレイ基材23の断面図、図13は、レンズアレイ基材23に多数の光学面転写予定面24を研削加工した状態の断面図である。
本実施の形態では、レンズアレイ基材23として石英を用いた。なお、このレンズアレイ基材23は高透過率材料であることが好ましい。
この光学面転写予定面24は、マスター型10の光学面形成面12を収容可能な凹球面又は凹非球面に形成されている。
(レジスト塗布)
【0028】
図14は、レンズアレイ基材23の光学面転写予定面24にレジスト液25’を滴下した状態を示す図である。
このレジスト液25’として、本実施の形態ではUV硬化型樹脂を用いた。このレジスト液25’を均一量滴下する。
図15Aは、レンズアレイ基材23の光学面転写予定面24の上方にマスター型10を対向配置した状態を示す図であり、図15Bは、レンズアレイ基材23のレジスト液25’にマスター型10の反射防止構造体14を押し付けて硬化させる状態を示す図である。
【0029】
本実施の形態では、レンズアレイ基材23の光学面転写予定面24ごとに滴下されたレジスト液25’に対し、マスター型10を押し付けてレジスト液25’を押延し、形成されたレジスト層に下方からUV光源26によりUV光を照射して硬化させている。
このとき、本実施の形態では、レンズアレイ基材23として、高透過率材料である石英を用いているので、UV光がレンズアレイ基材23を効率よく透過してレジスト層を短時間で硬化させることができる。
【0030】
図16は、ステップ&リピートにより光学面転写予定面に反射防止構造体を転写する工程を示す図である。
すなわち、レンズアレイ基材23を1ステップずつ矢印A方向に間欠的に移動させて、ステップ&リピートにより、全ての光学面転写予定面24に反射防止構造体14’を転写するとよい。
【0031】
例えば、1個目(図16の左端の1個目)の光学面転写予定面24にマスター型10を押し付け、反射防止構造体14’を転写したら、その状態でUV光源26によりUV光を照射する。そして、レジスト層が硬化したら、マスター型10を上方に退避移動させる。次いで、レンズアレイ基材23をA方向に1ステップ移動させる。
続いて、2個目(図16の左端から2個目)の光学面転写予定面24にマスター型10を押し付け、反射防止構造体14’を転写したら、その状態でUV光源26によりUV光を照射する。そして、レジスト層が硬化したら、マスター型10を上方に退避移動させる。次いで、レンズアレイ基材23をA方向に1ステップ移動させる。以下、これを繰り返す。
【0032】
図17Aは、レジスト層に反射防止構造体14’を転写した状態を示す図、図17Bは、ドライエッチングにてレンズアレイ基材23に反射防止構造体14を転写した状態を示す図である。
こうして、レンズアレイ基材23の複数の光学面転写予定面24に反射防止構造体14が転写される。
【0033】
図18は、反射防止構造体14が転写されたレンズアレイ基材23を用いてレンズアレイ30を成形する工程を示す図である。
反射防止構造体14が転写された2つのレンズアレイ基材23を、所定間隔で上下に対向配置する。こうして、形成された複数のキャビティ空間にUV硬化樹脂27を充填する。
次いで、下方からUV光源26により複数のキャビティ空間にまとめてUV光を照射してUV硬化樹脂27を硬化させる。これにより、光学面に反射防止構造体14を有する複数のレンズを二次元状に配置したレンズアレイ30を得ることができる。
【0034】
本実施の形態によれば、マスター型10に形成された反射防止構造体14をレンズアレイ基材23に塗布されたレジスト層25に押し付けることで、レジスト液25’が押延されてレジスト層が形成される。このとき、均一量のレジスト液25’を滴下するようにしたので、一様な厚さのレジスト層が形成され、均一な反射防止構造体14’を転写することができる。
また、1個の同一のマスター型10を使用して転写する限り、転写された複数の光学面のバラツキも小さいので、均一な反射防止構造体14が得られ、高精度なレンズアレイ30を製造することができる。

[第3の実施の形態]
【0035】
図19Aは、1列型のマスター型10の断面図、図19Bは、その外観図である。なお、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には同一の符号を付して説明する。
このマスター型10は、1列に3個の光学面形成面12を有している。また、この光学面形成面12に、前記と同様の陽極酸化法により反射防止構造体14を形成する(この点は、以下の実施の形態においても同様である)。
一方、レンズアレイ基材23には、例えば3×3の9個の光学面転写予定面24がマトリクス状に研削加工されている。
【0036】
この9個の光学面転写予定面24に塗布したレジスト層25にマスター型10を押し付けて反射防止構造体14’を転写する場合、マスター型10を行方向に平行移動させて行う。例えば、マスター型10を、1行目の3個の光学面転写予定面24に押し付け、その後、2行目の3個の光学面転写予定面24に押し付け、さらに、その後、3行目の3個の光学面転写予定面24に押し付けて行う。こうして、9個の反射防止構造体14’をレジスト層25に転写することができる。
【0037】
また、図20Aは、アレイ型の光学面形成面12を有するマスター型10の断面図、図20Bは、その外観図である。
このマスター型10は、2×2の4個の光学面形成面12がマトリクス状に設けられている。
一方、レンズアレイ基材23には、例えば2×2の4個の光学面形成面12がマトリクス状に研削加工されている。
【0038】
本実施の形態によれば、1つのマスター型10に、複数の光学面形成面12が1列に又はアレイ状に配置されているので、マスター型10をレンズアレイ基材23のレジスト層に1回押し付けるだけで、複数の反射防止構造体14’をレジスト層25に転写することができる。このため、効率よくレンズアレイを製造することができる。

[第4の実施の形態]
【0039】
図21A及び図21Bは、入れ子型のマスター型10を示し、図22は、その製造工程を示す図である。なお、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には同一の符号を付して説明する。
このマスター型10は、型基材11として矩形状のステンレス(SUS)や超硬材(WC)などを用いている。この型基材11に形成された複数(本実施の形態では16個)の有底孔29に、夫々鉄砲玉形状の入れ子28を嵌挿する。
【0040】
この入れ子28は、一端に球面又は非球面の光学面形成面12を有している。入れ子28の材質はアルミ材などを用いている。本実施の形態では、図21に示すように、型基材11に4×4の円形の有底孔29をマトリクス状に形成している。そして、この有底孔29に夫々入れ子28を嵌挿し、接着手段や圧入手段により固定している。
そして、嵌挿された入れ子28の先端の光学面形成面12に、前記と同様の陽極酸化法により反射防止構造体14を形成する。
【0041】
次いで、反射防止構造体14が形成されたマスター型10を、レンズアレイ基材23のレジスト層25(図6等参照)に押し付けて、レジスト層25に4×4の16個の反射防止構造体14’を転写する。次いで、ドライエッチングにより、レジスト層25に転写された反射防止構造体14’をレンズアレイ基材23に転写して反射防止構造体14を得る。
さらに、反射防止構造体14が転写された2つのレンズアレイ基材23を上下に対向配置して、不図示のキャビティ空間にUV硬化樹脂27を充填し、硬化させてレンズアレイを得る。
【0042】
本実施の形態によれば、先端に光学面形成面12を有する鉄砲玉状の入れ子28を、型基材11とは別体に加工することができるので、入れ子28と型基材11の夫々の加工作業が容易であり、かつ高精度に加工することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 マスター型
11 型基材
12 光学面形成面
13 平坦部
14 反射防止構造体
14’ 反射防止構造体
15 シュウ酸溶液
16 容器
17 陽極
18 電極棒
19 陰極
21 マスク
23 レンズアレイ基材
24 光学面転写面予定面
25 レジスト層
25’ レジスト液
26 UV光源
27 UV硬化樹脂
28 入れ子
29 有底孔
30 レンズアレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学面に反射防止構造体を有する複数の光学素子を共通の基材に二次元的に配置したレンズアレイの製造方法であって、
光学面形成面が形成されたマスター型を準備する工程と、
前記マスター型の前記光学面形成面に前記反射防止構造体を形成する工程と、
光学面転写予定面を有するレンズアレイ基材を準備する工程と、
前記レンズアレイ基材の前記光学面転写予定面に前記マスター型を用いて前記反射防止構造体を転写する工程と、
を含むことを特徴とするレンズアレイの製造方法。
【請求項2】
前記レンズアレイ基材として、前記光学面転写予定面に光硬化樹脂をレジスト層として塗布する際、前記光硬化樹脂の硬化に必要な光の波長領域に対して高透過率材料を用いることを特徴とする請求項1に記載のレンズアレイの製造方法。
【請求項3】
前記反射防止構造体は錐形状の多数の微小凸部を有することを特徴とする請求項1に記載のレンズアレイの製造方法。
【請求項4】
前記マスター型は、型基材に複数の前記光学面形成面をアレイ状に配置したものであることを特徴とする請求項1に記載のレンズアレイの製造方法。
【請求項5】
前記マスター型は、前記光学面形成面を有する入れ子を型基材に形成された孔に嵌挿したものであることを特徴とする請求項1に記載のレンズアレイの製造方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図19A】
image rotate

【図19B】
image rotate

【図20A】
image rotate

【図20B】
image rotate

【図21A】
image rotate

【図21B】
image rotate

【図22】
image rotate

【図10】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図16】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−136419(P2011−136419A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295853(P2009−295853)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】