レンズユニット、収差補正用素子、及び収差補正用素子の設計方法
【課題】レーザ光源の発振波長が急激に変化しても、レーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができるレンズユニット、収差補正用素子、及び収差補正用素子の設計方法を提供する。
【解決手段】ピックアップレンズと、ピックアップレンズの光源側に配置され、複数の輪帯段差を有する収差補正用素子14とを有し、複数の輪帯段差は、波長が変化した場合にピックアップレンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する、レンズユニットを備えた。
【解決手段】ピックアップレンズと、ピックアップレンズの光源側に配置され、複数の輪帯段差を有する収差補正用素子14とを有し、複数の輪帯段差は、波長が変化した場合にピックアップレンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する、レンズユニットを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルーレイ又はHD−DVD等の光ディスク装置における対物レンズを含むレンズユニット、当該対物レンズの収差を補正する収差補正用素子及びその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク装置等のレーザ光源の発振波長は、温度変化や出力の変化によって変化する(モードホップ現象)。例えば、BD(ブルーレイディスク)及びHD−DVDに使用される青色レーザーダイオードの発振波長は、出力を大きく変化させることにより、1nm程度変化する。具体的には、波長408nmの青色レーザーダイオードの発振波長は、再生から記録への切り替えにおける出力の変化により、408nmから409nmに変化する。
【0003】
また、光ディスク装置のピックアップ対物レンズの屈折率は、レーザ光源の波長変化によって変化する。そのため、出力の変化によって、レーザ光がピックアップ対物レンズによって収束される位置(収束位置、焦点位置)が変化する。当該収束位置の変化を軸上色収差(以下、単に、色収差と称する。)という。
収束位置の変化量は、ピックアップ対物レンズの焦点距離及び硝材によって異なる。ガラス又はプラスティックにより形成され、焦点距離が1.76mm(設計波長=408nm)である非球面単レンズを、CD、DVD、HD−DVD、BDのピックアップ対物レンズとした場合、レーザ光源の波長変化1nm当たりの収束位置の変化量(μm/nm)は、図26に示す表のようになる。
【0004】
ここで、レーザ光が光ディスク等に収束する場合、焦点ずれを起こすと収束スポットの形状が変化する。そして、焦点ずれを起こした収束スポットのピーク値は、合焦点時のピーク値(即ち、焦点ずれを起こしていない場合のピーク値)に比べて低くなる。また、焦点ずれを起こしたスポット径(1/e2径)は、合焦点時のスポット径(即ち、焦点ずれしない場合のスポット径)より大きくなる。焦点ずれの許容範囲(焦点深度)を、焦点ずれした時のピーク値が合焦点時のピーク値の95%以上となる範囲とした場合、焦点深度は、図27に示す表のようになる。
【0005】
このように、対物レンズのNA(開口数)が大きいほど、また、光源波長が短くなるほど、焦点深度は浅くなる。そのため、温度変化や出力の変化により、光源波長の発振波長が変化して、収束位置が焦点深度の範囲外にずれてしまう場合も発生する。さらに、出力の変化による波長変化は瞬時に生じるため、当該波長変化に伴う焦点ずれを他の方法により補正することは難しい。そのため、光ディスクに記録再生ができなくなる、フォーカス制御が外れてしまう等の問題が発生する。
【0006】
一方、BD及びHD−DVDに使用される青色レーザーダイオードの発振波長は、408nmを中心に±5nm程度ばらついている。
ガラス又はプラスティックにより形成され、焦点距離が1.76mm(設計波長=408nm)であるBD対物レンズに発振波長が異なるレーザ光を平行入射した場合に生じるrms波面収差を図28の表に示す。図28に示すように、発振波長が403nm、408nm、413nmの何れの場合であっても、rms波面収差はマレシャル限界を超えていない。しかし、レーザ光の発振波長が設計波長408nmからずれるほど、rms波面収差が大きくなる。
【0007】
従来、ピックアップ対物レンズの色収差補正方法として2つの方法がよく使用されている。1つ目は、コリメータレンズにより色収差を補正する方法である。2つ目は、対物レンズ自身で色収差を補正する方法である。
【0008】
コリメータレンズにより色収差補正を行う場合、コリメータレンズの片側の面に複数の輪帯段差を設ける。そして、当該輪帯段差による回折を利用して色収差を補正する。
【0009】
また、対物レンズ自身により色収差補正を行う場合、対物レンズの片側の面に複数の輪帯段差を設ける。そして、当該輪帯段差による回折を利用して色収差を補正する。
【0010】
また、特許文献1には、色収差を補正する色収差補正用光学素子が開示されている。この色収差補正用光学素子は、550nm以下の波長の光を発生する光源と、d線のアッベ数が95.0以下である材料から形成された対物レンズとの間の光路中に配置される。そして、この色収差補正用光学素子は、少なくとも1つの面上に複数の輪帯段差からなる回折構造を有する。そして、当該回折構造は、P1<P0<P2を満たす(P0:光源が発生する光の波長λ0における色収差補正用光学素子のトータルの近軸パワー(mm−1)、P1:波長λ0より10nm短い波長λ1における色収差補正用光学素子のトータルの近軸パワー(mm−1)、P2:波長λ0より10nm長い波長λ2における色収差補正用光学素子のトータルの近軸パワー(mm−1))。
【特許文献1】特開2003−167190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、コリメータレンズにより色収差補正を行う場合、1つの対物レンズに対して専用のコリメータレンズを設計しなくてはならない。そのため、対物レンズを変更する場合には、コリメータレンズも変更しなければならないという無駄が生じる。
【0012】
また、対物レンズ自身により色収差補正を行う場合、対物レンズに設ける輪帯段差の数が多くなる。そして、輪帯段差の数が多くなると、輪帯段差間の傾斜部分の面積が増える。そのため、不要光が多くなり、対物レンズの光利用効率が低下してしまう。
【0013】
また、上記特許文献1に記載の色収差補正用光学素子は、上述のような対物レンズの屈折率の波長・温度依存性を考慮して設計されていない。そのため、出力を変化させることにより、レーザ光源の波長が急激に変化した場合に、対物レンズによって収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内とならないという問題がある。
【0014】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、レーザ光源の発振波長が急激に変化しても、レーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができるレンズユニット、収差補正用素子、及び収差補正用素子の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかるレンズユニットは、ピックアップ対物レンズと、前記ピックアップ対物レンズのレーザ光源側に配置され、複数の輪帯段差を有する平板とを有し、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有するものである。
【0016】
本発明においては、複数の輪帯段差を有する平板が設けられ、複数の輪帯段差は、波長が変化した場合にピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるような位相差を発生させる段差量を有する。これにより、レーザ光の波長が変化した場合、当該平板を透過したレーザ光に収束位置が焦点深度内となるような位相差が発生する。そして、当該位相差により、波長変化に伴う収束位置のずれが低減される。そのため、当該レーザ光はピックアップ対物レンズにより焦点深度内に収束される。従って、レーザ光源の発振波長が急激に変化しても、レーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。
【0017】
また、前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであるため、通常時は各輪帯透過時の位相差に変化は無い。そして、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有することが好ましい。
これにより、波長が急激に変化した場合に、レーザ光の収束位置が焦点深度内となるような位相差がレーザ光に発生する。そのため、ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。
【0018】
さらに、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有することが好ましい。
これにより、レーザ光の波長が変化した場合、当該平板を透過したレーザ光にピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減する位相差が発生する。そして、当該位相差により、波長変化に伴ってピックアップ対物レンズにおいて発生する収差が低減される。従って、レーザ光の波長の変化に応じて発生する収差を低減することができる。
【0019】
また、隣り合う前記輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、前記一の輪帯段差の内側の他の輪帯段差より厚いことが好ましい。
これにより、レーザ光源の発振波長が急激に変化しても、レーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。同時に、波長が変化した場合にピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減することができる。
【0020】
また、本発明にかかるレンズユニットは、BD及び/又はHD−DVD用の記録再生装置に使用される。
これにより、例えば、本発明にかかる平板をBDとHD−DVD兼用ピックアップ対物レンズに取り付ければ、1つの平板でBDとHD−DVDの両方の収差を補正することができる。
【0021】
また、本発明にかかる他のレンズユニットは、光束分割素子及びピックアップ対物レンズを有し、波長λの光束を厚さt1の透明基板を有する第1の光記録媒体の情報記録面上に集光させ、且つ、波長λの光束を厚さt2(t1<t2)の透明基板を有する第2の光記録媒体の情報記録面上に集光させるレンズユニットであって、少なくとも前記光束分割素子の一面は、透過する光束を前記ピックアップ対物レンズを介して第1の光記録媒体の情報記録面上に集光させるための第1の光記録媒体用領域と、透過する光束を前記ピックアップ対物レンズを介して第2の光記録媒体の情報記録面上に集光させるための第2の光記録媒体用領域に分割され、前記第1の光記録媒体用領域は、複数の輪帯段差を有し、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有するものである。
【0022】
本発明においては、2種類の光源を利用する光ピックアップ装置においても使用することができる。
【0023】
また、前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有することが好ましい。
【0024】
さらに、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有することが好ましい。
【0025】
本発明にかかる収差補正用素子は、レーザ光源とピックアップ対物レンズとの間に配置される収差補正用素子であって、複数の輪帯段差を有し、前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束される前記レーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有するものである。
【0026】
また、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有することが好ましい。
【0027】
本発明にかかる収差補正用素子の設計方法は、レーザ光源とピックアップ対物レンズとの間に配置される収差補正用素子の設計方法であって、前記収差補正用素子の表面に複数の輪帯段差を形成し、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束される前記レーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有するものである。
【0028】
また、前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有することが好ましい。
【0029】
さらに、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、レーザ光源の発振波長が急激に変化しても、レーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。図1は、本発明の実施の形態にかかる光ピックアップ装置1の一例を示したものである。光ピックアップ装置1は、レンズユニット10を備えている。レンズユニット10は、収差補正用素子14(平板)、ピックアップレンズ15(ピックアップ対物レンズ)等を備えている。
【0032】
光源11は、HD−DVD、及びBD用に用いられる青色レーザーダイオード等を備えている。
【0033】
光源11から出射されたレーザ光の光路上にビームスプリッタ12が設けられている。
【0034】
ビームスプリッタ12より出射したレーザ光の光路上にコリメータレンズ13が設けられている。コリメータレンズ13は、光源11から出射されたレーザ光を発散光から略平行光に変換する。
【0035】
コリメータレンズ13を透過したレーザ光の光路上に収差補正用素子14、及び収差補正用素子14の透過光が入射するピックアップレンズ15が設けられている。
【0036】
収差補正用素子14は、ピックアップレンズ15の光源11側に配置され、複数の輪帯段差を有する平板状の素子である。また、収差補正用素子14は、プラスティック素材から形成されている。
後述するように、収差補正用素子14に形成された複数の輪帯段差の厚さは、通常時(レーザ光の波長が変化していない場合)に透過したレーザ光の位相が隣接する輪帯相互に波長単位で異なるように設定されている。
また、収差補正用素子14に形成された複数の輪帯段差は、波長が変化した場合にピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する。同時に、当該段差量は、波長が変化した場合にピックアップレンズ15において発生する収差を低減するように設定されている。具体的には、隣り合う輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、当該一の輪帯段差の内側の輪帯段差より厚くなるように輪帯段差が形成されている。即ち、収差補正用素子14の板厚が中心から外側に向かうにつれて厚くなるように輪帯段差が形成されている。
【0037】
ピックアップレンズ15は、入射された光を光ディスク16の情報記録面に回折限界近くまで集光させる機能を有する。ピックアップレンズ15は、さらに、光ディスク16の情報記録面で反射されたレーザ光を検出系17に導く機能も有する。
光源11の発振波長は、光源11の出力の変化により1nm程度変化する。例えば、光源11の発振波長は、再生から記録への切り替えにおける出力の変化により、408nmから409nmに変化する。出力の変化によって光源11の発振波長が変化すると、ピックアップレンズ15の屈折率も変化する。そして、ピックアップレンズ15により収束される光源11のレーザ光の収束位置も変化する。しかし、レーザ光が収差補正用素子14を透過することにより、レーザ光に収束位置が焦点深度内となるような位相差が発生する。そのため、光源11の発振波長が変化しても、ピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置は焦点深度内となる。
【0038】
フォーカスサーボ時、及びトラッキングサーボ時には、ピックアップレンズ15と収差補正用素子14とが一体となって図示されないアクチュエータにより動作する。
【0039】
なお、本実施の形態では、HD−DVD用、BD用の光ディスク16の透明基板はポリカーボネイトとし、HD−DVD用、BD用の光ディスク16の透明基板厚は、それぞれ0.6mm、0.0875mmとした。
【0040】
次に、光源11から出射されたレーザ光が光ディスク16の情報記録面で反射され検出系に検出されるまでの挙動について説明する。光源11から出射されたレーザ光はビームスプリッタ12を透過してコリメータレンズ13に入射する。
【0041】
コリメータレンズ13は、光源11から出射されたレーザ光を発散光から略平行光に変換する。
【0042】
コリメータレンズ13を透過したレーザ光は収差補正用素子14に入射される。ここで、本実施の形態においては、レーザ光の波長が変化した場合、この収差補正用素子14は、ピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光の位相を補正する。そして、補正後のレーザ光はピックアップレンズ15に入射される。ピックアップレンズ15は、入射されたレーザ光を光ディスク16の情報記録面に回折限界近くまで集光させる。光ディスク16の情報記録面で反射されたレーザ光は、ピックアップレンズ15を介して検出系17に入射し、検出される。検出系17は、当該レーザ光を検出し、光電変換することによって、フォーカスサーボ信号、トラックサーボ信号、再生信号などを生成する。
【0043】
次に、本発明の実施の形態にかかる光ピックアップ装置1のレンズユニット10において用いられる収差補正用素子14について詳細に説明する。図2は、本実施の形態にかかる光ピックアップ装置1における収差補正用素子14を示す図であり、図2(a)は、通常時におけるレーザ光の波面(位相)を示し、図2(b)は、レーザ光の波長が短くなった場合におけるレーザ光の波面(位相)を示し、図2(c)は、レーザ光の波長が長くなった場合におけるレーザ光の波面(位相)を示している。ピックアップレンズ15の光源11側に、図2に示す輪帯段差付プラスティック製の平板からなる収差補正用素子14を組み合わせる。収差補正用素子14は、上述したように、複数の輪帯段差を有する平板状の素子である。本実施の形態においては、ピックアップレンズ15と同一素材のプラスティックからなる。そして、収差補正用素子14の輪帯段差の厚さは、通常時において透過したレーザ光の位相が隣接する輪帯相互に波長単位で異なるように設定されている。また、収差補正用素子14の輪帯段差は、波長が変化した場合にピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する。
【0044】
すなわち、通常時にレーザ光が収差補正用素子14を透過した場合、各輪帯段差を透過したレーザ光の位相は相互に波長の整数倍だけ異なる。従って、図2(a)に示されるように、通常時には、異なる輪帯段差を透過したレーザ光には位相差が発生しない。そのため、収差補正用素子14に入射したレーザ光は、同一位相のまま、出射し、後段に設けられたピックアップレンズ15(図示せず)に入射する。従って、通常時において、ピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置は収差補正用素子14が無い場合と略同じ位置となる。本実施形態において、レーザ光が最良の状態で収束するように所望する位置は、光ディスク16(図示せず)の情報記録面である。すなわち、レーザ光は、合焦点時に、光ディスク16の情報記録面に良好に集光する。
【0045】
他方、図2(b)、(c)に示されるように、出力の変化等により波長が変化し、波長が変化したレーザ光が収差補正用素子14を透過した場合、各輪帯段差を透過したレーザ光の位相の違いは波長の整数倍とならない。従って、図2(b)、(c)に示されるように、波長が変化した場合には、異なる輪帯段差を透過したレーザ光に位相差が発生する。そして、本発明においては、当該位相差は、ピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるように調節する大きさとなっている。そのため、波長が変化した場合、従来ではピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が変化してしまうが、本発明においては、収差補正用素子14を透過したレーザ光の位相差により、波長変化に伴うレーザ光の収束位置の変化が抑制される。そして、ピックアップレンズ15より出射したレーザ光は、光ディスク16の情報記録面に良好に集光する。
【0046】
また、収差補正用素子14の輪帯段差は、レーザ光の波長が変化した場合にピックアップレンズ15で発生する収差を低減する段差量を有する。
また、実際には、光源11の発振波長は408nmを中心に±5nm程度ばらついている。図3に光源11の波長が403nmである場合にピックアップレンズ15において発生するrms波面収差を示し、図4に光源11の波長が413nmである場合にピックアップレンズ15において発生するrms波面収差を示す。また、光源11とピックアップレンズ15との間に収差補正用素子14を設けない場合のrms波面収差を図3(a)、図4(a)に示し、光源11とピックアップレンズ15との間に収差補正用素子14を設けた場合のrms波面収差を図3(b)、図4(b)に示す。なお、図3、図4において、縦軸はrms波面収差の大きさを表し、横軸はピックアップレンズ15の径方向における位置を表す。
【0047】
図3(a)、図4(a)に示すように、光源11の発振波長が403nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けないと、rms波面収差は非常に大きくなる。
一方、図3(b)、図4(b)に示すように、光源11の発振波長が403nm、413nmであっても、収差補正用素子14を設けると、rms波面収差を小さく抑えることが出来る。具体的には、図3(b)、図4(b)に示すように、収差補正用素子14に形成された輪帯段差によって各輪帯段差を透過したレーザ光に位相差が発生する。そして、当該位相差が、ピックアップレンズ15において発生する収差を低減する。これにより、レーザ光11の発振波長が408nmを中心に±5nm程度ばらついていても、ピックアップレンズ15において発生する収差は低減される。従って、ピックアップレンズ15より出射したレーザ光は、光ディスク16の情報記録面に良好に集光する。
【0048】
このように構成された本実施の形態にかかるレンズユニット10によれば、複数の輪帯段差を有する収差補正用素子14が設けられ、複数の輪帯段差は、波長が変化した場合にピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるような位相差を発生させる段差量を有する。これにより、レーザ光の波長が変化した場合、収差補正用素子14を透過したレーザ光に収束位置が焦点深度内となるような位相差が発生する。そして、当該位相差により、波長変化に伴う収束位置のずれが低減される。そのため、当該レーザ光はピックアップレンズ15により焦点深度内に収束される。従って、光源11の発振波長が急激に変化しても、レーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。
【0049】
具体的には、複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合にピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する。
これにより、波長が急激に変化した場合に、レーザ光の収束位置が焦点深度内となるような位相差がレーザ光に発生する。そのため、ピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。
【0050】
さらに、複数の輪帯段差は、波長が変化した場合にピックアップレンズ15において発生する収差を低減するような段差量を有する。
これにより、レーザ光の波長が変化した場合、収差補正用素子14を透過したレーザ光にピックアップレンズ15において発生する収差を低減する位相差が発生する。そして、当該位相差により、波長変化に伴ってピックアップレンズ15において発生する収差が低減される。従って、レーザ光の波長の変化に応じて発生する収差を低減することができる。
【0051】
具体的には、隣り合う輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、一の輪帯段差の内側の他の輪帯段差より厚い。
これにより、光源11の発振波長が急激に変化しても、レーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。同時に、波長が変化した場合にピックアップレンズ15において発生する収差を低減することができる。
【0052】
また、本発明にかかるレンズユニット10は、BD及びHD−DVD用の光ピックアップ装置1に使用される。
これにより、例えば、本発明にかかる収差補正用素子14をBDとHD−DVD兼用ピックアップレンズ15に取り付ければ、1つの収差補正用素子14でBDとHD−DVDの両方の収差を補正することができる。
【0053】
なお、本実施の形態において、収差補正用素子14は、プラスティック素材からなるとしたが、ガラス素材により形成されてもよい。
【実施例1】
【0054】
次に、本発明の実施例1について、本発明範囲から外れる比較例1と比較して説明する。実施例1としては、図5に示すように、ピックアップレンズ15の光源11(図示せず)側に収差補正用素子14を設けた。収差補正用素子14は、複数の輪帯段差を有するプラスティック製の平板状の素子である。図15に示す表に、本実施例1にかかる収差補正用素子14の輪帯番号、輪帯位置、及び板厚変化量(板厚0.5mmに対する相対値)を示す。図15に示すように、隣り合う輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、当該一の輪帯段差の内側の輪帯段差より厚くなるように輪帯段差が形成されている。具体的には、輪帯段差の厚さは、収差補正用素子14の中心から外縁部へ向かうにつれて、0.003893mmずつ厚くなるように形成されている。また、輪帯段差の数は25である。そして、当該輪帯段差の厚さは、光源11の波長が変化しなかった場合に、隣り合う輪帯段差を透過したレーザ光の位相が波長単位で異なるように設計されている。
また、図16、図17に示す表に、本実施例1にかかる光学系のデータを示す。ピックアップレンズ15としてガラス製レンズを使用した。
【0055】
これに対し、ピックアップレンズ15の光源11側に収差補正用素子14を設けない例を比較例1とする。図6(a)に、比較例1において光源11の波長が403nmから404nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図6(b)に、比較例1において光源11の波長が408nmから409nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図6(c)に、比較例1において光源11の波長が413nmから414nmに変化した場合のrms波面収差を示す。縦軸のスケールは0.5λである。
図6に示すように、収差補正用素子14を設けない場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光スポットの収束位置(光ディスク16の情報記録面)でのrms波面収差は、それぞれ、98.0mλ、92.6mλ、95.6mλとなる。換言すれば、収差補正用素子14を設けない場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのrms波面収差は、それぞれ、98.0mλ、92.6mλ、95.6mλとなる。
また、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けないと、レーザ光の収束位置の合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)からのずれ量は、それぞれ、−1.418μm、+1.366μmとなる。
また、光源11の波長が403nm、408nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けないと、収束位置でのrms波面収差は、それぞれ、28.0mλ、1.6mλ、28.5mλとなる。
【0056】
一方、図7(a)に、実施例1において光源11の波長が403nmから404nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図7(b)に、実施例1において光源11の波長が408nmから409nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図7(c)に、実施例1において光源11の波長が413nmから414nmに変化した場合のrms波面収差を示す。縦軸のスケールは0.1λである。
図7に示すように、収差補正用素子14を設ける場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光スポットの収束位置(光ディスク16の情報記録面)でのrms波面収差は、それぞれ、18.4mλ、1.6mλ、17.4mλとなる。換言すれば、収差補正用素子14を設ける場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのrms波面収差は、それぞれ、18.4mλ、1.6mλ、17.4mλとなる。
また、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けると、レーザ光の収束位置の合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)からのずれ量は、それぞれ、−0.029μm、+0.022μmとなる。
また、光源11の波長が403nm、408nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けると、収束位置でのrms波面収差は、それぞれ、18.4mλ、1.6mλ、17.4mλとなる。
【0057】
合焦点位置から収束位置がずれた場合(即ち、焦点ずれした場合)、光スポットの収束位置でのレーザ光のピーク値は、合焦点位置でのピーク値(即ち、焦点ずれしない場合のピーク値)に比べて低くなる。換言すると、レーザ光の収束位置が光ディスク16の情報記録面からずれた場合(焦点ずれした場合)、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのピーク値は、レーザ光の収束位置が光ディスク16の情報記録面となった場合(焦点ずれしない場合)における光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのピーク値に比べて低くなる。焦点ずれの許容範囲(焦点深度)を、焦点ずれした時のピーク値が合焦点時のピーク値の95%以上となる範囲とした場合、焦点深度は、HD−DVDの場合0.21μmであり、BDの場合0.11μmである。
収差補正用素子14を設けない比較例1においては、図6に示すように、光源11の波長が1nm変化することにより、ピックアップレンズ15において発生する収差が大きくなり、マレシャル限界を超えてしまう。
また、比較例1において、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収束位置は焦点深度外となってしまう。
これに対して、収差補正用素子14を設ける実施例1においては、図7に示すように、光源11の波長が1nm変化しても、ピックアップレンズ15において発生する収差は、マレシャル限界を超えない。特に、収差補正用素子14を設けると、波長が変化する前(通常時)での合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)におけるrms波面収差と、波長が1nm変化した場合での光スポットの収束位置(光ディスク16の情報)におけるrms波面収差とが略同じとなる。即ち、収差補正用素子14を設けることにより、光源11の波長が1nm変化したことによる収差の増加は略ゼロに抑えられている。
また、実施例1において、光源11の波長が403nm、413nmであっても、収束位置は焦点深度内となっている。即ち、収差補正用素子14を設けることにより、光源11の波長にばらつきがあっても、レーザ光の収束位置が焦点深度内になっている。
【実施例2】
【0058】
次に、本発明の実施例2について、本発明範囲から外れる比較例2と比較して説明する。実施例2としては、図8に示すように、ピックアップレンズ15の光源11(図示せず)側に収差補正用素子14を設けた。収差補正用素子14は、複数の輪帯段差を有するプラスティック製の平板状の素子である。具体的には、実施例2にかかる収差補正用素子14は、プラスティック材により形成した。図18に示す表に、本実施例2にかかる収差補正用素子14の輪帯番号、輪帯位置、及び板厚変化量(板厚0.5mmに対する相対値)を示す。図18に示すように、隣り合う輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、当該一の輪帯段差の内側の輪帯段差より厚くなるように輪帯段差が形成されている。具体的には、輪帯段差の厚さは、収差補正用素子14の中心から外縁部へ向かうにつれて、0.003893mmずつ厚くなるように形成されている。また、輪帯段差の数は29である。そして、当該輪帯段差の厚さは、光源11の波長が変化しなかった場合に、隣り合う輪帯段差を透過したレーザ光の位相が波長単位で異なるように設計されている。
また、図19、図20に示す表に、本実施例2にかかる光学系のデータを示す。ピックアップレンズ15としてプラスティック製レンズを使用した。
【0059】
これに対し、ピックアップレンズ15の光源11側に収差補正用素子14を設けない例を比較例2とする。図9(a)に、比較例2において光源11の波長が403nmから404nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図9(b)に、比較例2において光源11の波長が408nmから409nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図9(c)に、比較例2において光源11の波長が413nmから414nmに変化した場合のrms波面収差を示す。縦軸のスケールは0.5λである。
図9に示すように、収差補正用素子14を設けない場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光スポットの収束位置(光ディスク16の情報記録面)でのrms波面収差は、それぞれ、113.2mλ、106.4mλ、110.7mλとなる。換言すれば、収差補正用素子14を設けない場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのrms波面収差は、それぞれ、113.2mλ、106.4mλ、110.7mλとなる。
また、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けないと、レーザ光の収束位置の合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)からのずれ量は、それぞれ、−1.634μm、+1.571μmとなる。
また、光源11の波長が403nm、408nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けないと、収束位置でのrms波面収差は、それぞれ、35.1mλ、2.0mλ、35.3mλとなる。
【0060】
一方、図10(a)に、実施例2において光源11の波長が403nmから404nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図10(b)に、実施例2において光源11の波長が408nmから409nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図10(c)に、実施例2において光源11の波長が413nmから414nmに変化した場合のrms波面収差を示す。縦軸のスケールは0.1λである。
図10に示すように、収差補正用素子14を設ける場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光スポットの収束位置(光ディスク16の情報記録面)でのrms波面収差は、それぞれ、16.0mλ、3.9mλ、22.2mλとなる。換言すれば、収差補正用素子14を設ける場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのrms波面収差は、それぞれ、16.0mλ、3.9mλ、22.2mλとなる。
また、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けると、レーザ光の収束位置の合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)からのずれ量は、それぞれ、−0.017μm、+0.051μmとなる。
また、光源11の波長が403nm、408nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けると、収束位置でのrms波面収差は、それぞれ、20.1mλ、2.0mλ、18.6mλとなる。
【0061】
収差補正用素子14を設けない比較例2においては、図9に示すように、光源11の波長が1nm変化することにより、ピックアップレンズ15において発生する収差が大きくなり、マレシャル限界を超えてしまう。
また、比較例2において、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収束位置は焦点深度(HD−DVDの場合0.21μm、BDの場合0.11μm)外となってしまう。
これに対して、収差補正用素子14を設ける実施例2においては、図10に示すように、光源11の波長が1nm変化しても、ピックアップレンズ15において発生する収差は、マレシャル限界を超えない。
また、実施例2において、光源11の波長が403nm、413nmであっても、収束位置は焦点深度内となっている。即ち、収差補正用素子14を設けることにより、光源11の波長にばらつきがあっても、レーザ光の収束位置が焦点深度内になっている。
【0062】
上述の実施例1及び実施例2によれば、回折を利用してピックアップレンズの収差補正を行う場合に比べて、収差補正用素子14に形成する輪帯段差の数をより少なくすることができる。例えば、本発明の収差補正用素子14に設けられる輪帯段差の数は、25〜29輪帯(段差=5次)である。一方、回折を利用して収差補正を行う場合、例えば、ピックアップレンズに設けられる輪帯段差の数は、47輪帯である。そして、輪帯段差の数が少なくなると、輪帯段差間の傾斜部分の面積が減る。そのため、不要光が少なくなり、ピックアップレンズ15の光利用効率を向上することができる。
【実施例3】
【0063】
次に、本発明の実施例3について、本発明範囲から外れる比較例3と比較して説明する。実施例3としては、ガラス製のBD専用のピックアップレンズ15の光源11(図示せず)側に光束分割素子18(収差補正用素子)を設け、図11に示すBD/HD−DVD互換レンズを製作した。
【0064】
実施例3にかかる光束分割素子18のピックアップレンズ15側の面は、透過する光束をピックアップレンズ15を介してBD(第1の光記録媒体)の情報記録面上に集光するためのBD領域(第1の光記録媒体用領域)と、透過する光束をピックアップレンズ15を介してHD−DVD(第2の光記録媒体)の情報記録面上に集光するためのHD領域(第2の光記録媒体用領域)に分割されている。BD領域とHD領域は、光束分割素子18において交互に配置されている。図11では、BD領域を透過する光線のみを表示している。
【0065】
また、実施例3にかかる光束分割素子18は収差補正機能を持つ。具体的には、光束分割素子18は、BD領域に複数の輪帯段差を有する。図21に示す表に、本実施例3にかかる光束分割素子18の輪帯番号、輪帯位置、及び板厚変化量(板厚0.5mmに対する相対値)を示す。図21に示すように、隣り合う輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、当該一の輪帯段差の内側の輪帯段差より厚くなるように輪帯段差が形成されている。具体的には、輪帯段差の厚さは、光束分割素子18の中心から外縁部へ向かうにつれて厚くなるように形成されている。また、輪帯段差の数は16である。そして、当該輪帯段差の厚さは、光源11の波長が変化しなかった場合に、隣り合う輪帯段差を透過したレーザ光の位相が波長単位で異なるように設計されている。また、光束分割素子18のHD領域は、凹レンズ面となるような曲率半径を有する。そのため、実施例3にかかる光束分割素子18のピックアップレンズ15側の面は、全体として、略凹レンズ面となるような形状となっている。
なお、実施例3にかかる光束分割素子18は、プラスティック材により形成した。
また、図22、図23に示す表に、本実施例3のBD領域における光学系のデータを示す。また、図24、図25に示す表に本実施例のHD領域における光学系のデータを示す。
【0066】
これに対し、比較例3としては、実施例3のガラス製のピックアップレンズ15と光源11(図示せず)との間に比較例3にかかる光束分割素子19を設け、図12に示すBD/HD−DVD互換レンズを製作した。
【0067】
比較例3にかかる光束分割素子19のピックアップレンズ15側の面は、実施例3と同様に、BD領域とHD領域とに分割されている。BD領域とHD領域は、光束分割素子19において交互に配置されている。図12では、BD領域を透過する光線のみを表示している。また、比較例3にかかる光束分割素子19は収差補正機能を持たない。即ち、実施例3にかかる光束分割素子18と異なり、光束分割素子19のBD領域には、輪帯段差が形成されておらず、平板状となっている。光束分割素子19のHD領域は、凹レンズ面となるような曲率半径を有する。そして、光束分割素子19のBD領域を透過した光束はそのままピックアップレンズ15に入射し、HD領域を透過した光束は弱発散光となってピックアップレンズ15に入射する。このように構成することにより、BDに対してもHD−DVDに対してもそれぞれの光束は適切な位置に集光する。なお、比較例3にかかる光束分割素子19は、光束分割素子18と同一のプラスティック材により形成した。
【0068】
なお、実施例3及び比較例3にかかるBD/HD−DVD互換レンズでは、入射光の光束分割を行っているため、超解像現象が起こり、スポット径が小さくなりすぎる。そのため、BDにおける通常のNA(開口数)は0.85であるが、実施例3及び比較例3では、NAを約0.79に補正している。
【0069】
図13(a)に、比較例3において光源11の波長が403nmから404nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図13(b)に、比較例3において光源11の波長が408nmから409nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図13(c)に、比較例3において光源11の波長が413nmから414nmに変化した場合のrms波面収差を示す。縦軸のスケールは0.5λである。
図13に示すように、比較例3にかかる光束分割素子19を用いた場合では、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光スポットの収束位置(光ディスク16の情報記録面)でのrms波面収差は、それぞれ、83.5mλ、79.4mλ、79.0mλとなる。換言すれば、比較例3にかかる光束分割素子19を用いた場合では、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのrms波面収差は、それぞれ、83.5mλ、79.4mλ、79.0mλとなる。
また、光源11の波長が403nm、413nmである場合、比較例3の光束分割素子19を用いると、レーザ光の収束位置の合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)からのずれ量は、それぞれ、−1.374μm、+1.325μmとなる。
また、光源11の波長が403nm、408nm、413nmである場合、比較例3の光束分割素子19を用いると、収束位置でのrms波面収差は、それぞれ、16.1mλ、1.0mλ、16.6mλとなる。
【0070】
一方、図14(a)に、実施例3において光源11の波長が403nmから404nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図14(b)に、実施例3において光源11の波長が408nmから409nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図14(c)に、実施例3において光源11の波長が413nmから414nmに変化した場合のrms波面収差を示す。縦軸のスケールは0.1λである。
図14に示すように、実施例3にかかる光束分割素子18を用いる場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光スポットの収束位置(光ディスク16の情報記録面)でのrms波面収差は、それぞれ、17.4mλ、3.9mλ、24.2mλとなる。換言すれば、実施例3にかかる光束分割素子18を用いる場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのrms波面収差は、それぞれ、17.4mλ、3.9mλ、24.2mλとなる。
また、光源11の波長が403nm、413nmである場合、実施例3の光束分割素子18を用いると、レーザ光の収束位置の合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)からのずれ量は、それぞれ、−0.039μm、+0.011μmとなる。
また、光源11の波長が403nm、408nm、413nmである場合、実施例3の光束分割素子18を用いると、収束位置でのrms波面収差は、それぞれ、21.0mλ、1.1mλ、19.9mλとなる。
【0071】
比較例3においては、図13に示すように、光源11の波長が1nm変化することにより、ピックアップレンズ15において発生する収差が大きくなり、マレシャル限界を超えてしまう。
また、比較例3において、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収束位置は焦点深度(BDの場合0.11μm)外となってしまう。
これに対して、実施例3においては、図14に示すように、光源11の波長が1nm変化しても、ピックアップレンズ15において発生する収差は、マレシャル限界を超えない。
また、実施例3において、光源11の波長が403nm、413nmであっても、収束位置は焦点深度内となっている。即ち、光束分割素子18に形成された輪帯段差による収差補正機能により、光源11の波長にばらつきがあっても、レーザ光の収束位置が焦点深度内になっている。
【0072】
なお、実施例3においては、ガラス製のピックアップレンズ15を使用したが、プラスティック製のピックアップレンズ15を使用しても同様の作用効果が得られる。
また、実施例3においては、光束分割素子18のBD領域にのみ収差補正機能を設けたが、HD領域にも同様に適宜収差を補正する機能を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態にかかる光ピックアップ装置の一例を示したものである。
【図2】通常時におけるレーザ光の波面(位相)を示す図(図2(a))であり、レーザ光の波長が短くなった場合におけるレーザ光の波面(位相)を示す図(図2(b))、レーザ光の波長が長くなった場合におけるレーザ光の波面(位相)を示す図(図2(c))である。
【図3】光源の波長が403nmであり、収差補正用素子を用いない場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図3(a))、光源の波長が403nmであり、収差補正用素子を用いる場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図3(b))である。
【図4】光源の波長が413nmであり、収差補正用素子を用いない場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図4(a))、光源の波長が413nmであり、収差補正用素子を用いる場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図4(b))である。
【図5】本発明の実施例1にかかる収差補正用素子及びピックアップレンズを示す図である。
【図6】比較例1において光源の波長が403nmから404nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図6(a))、比較例1において光源の波長が408nmから409nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図6(b))、比較例1において光源の波長が413nmから414nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図6(c))である。
【図7】実施例1において光源の波長が403nmから404nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図7(a))、実施例1において光源の波長が408nmから409nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図7(b))、実施例1において光源の波長が413nmから414nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図7(c))である。
【図8】本発明の実施例2にかかる収差補正用素子及びピックアップレンズを示す図である。
【図9】比較例2において光源の波長が403nmから404nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図9(a))、比較例2において光源の波長が408nmから409nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図9(b))、比較例2において光源の波長が413nmから414nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図9(c))である。
【図10】実施例2において光源の波長が403nmから404nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図10(a))、実施例2において光源の波長が408nmから409nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図10(b))、実施例2において光源の波長が413nmから414nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図10(c))である。
【図11】本発明の実施例3にかかる光束分割素子及びピックアップレンズを示す図である。
【図12】比較例3にかかる光束分割素子及びピックアップレンズを示す図である。
【図13】比較例3において光源の波長が403nmから404nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図13(a))、比較例3において光源の波長が408nmから409nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図13(b))、比較例3において光源の波長が413nmから414nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図13(c))である。
【図14】実施例3において光源の波長が403nmから404nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図14(a))、実施例3において光源の波長が408nmから409nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図14(b))、実施例3において光源の波長が413nmから414nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図14(c))である。
【図15】本発明の実施例1にかかる収差補正用素子の輪帯番号、輪帯位置、及び板厚変化量(板厚0.5mmに対する相対値)を示す表である。
【図16】本発明の実施例1にかかる光学系のデータを示す表である。
【図17】本発明の実施例1にかかる光学系のデータを示す表である。
【図18】本発明の実施例2にかかる収差補正用素子の輪帯番号、輪帯位置、及び板厚変化量(板厚0.5mmに対する相対値)を示す表である。
【図19】本発明の実施例2にかかる光学系のデータを示す表である。
【図20】本発明の実施例2にかかる光学系のデータを示す表である。
【図21】本発明の実施例3にかかる光束分割素子の輪帯番号、輪帯位置、及び板厚変化量(板厚0.5mmに対する相対値)を示す表である。
【図22】本発明の実施例3のBD領域における光学系のデータを示す表である。
【図23】本発明の実施例3のBD領域における光学系のデータを示す表である。
【図24】本発明の実施例3のHD領域における光学系のデータを示す表である。
【図25】本発明の実施例3のHD領域における光学系のデータを示す表である。
【図26】ガラス製非球面単レンズをピックアップ対物レンズとした場合におけるレーザ光源の波長変化1nm当たりの収束位置の変化量(μm/nm)を示す表である。
【図27】焦点ずれの許容範囲を、焦点ずれした時のピーク値が合焦点時のピーク値の95%以上となる範囲とした場合における焦点深度を示す表である。
【図28】ガラス材により形成され、焦点距離が1.76mm(設計波長=408nm)である対物レンズに発振波長が異なるレーザ光を平行入射した場合に生じるrms波面収差を示す表である。
【符号の説明】
【0074】
10 レンズユニット
11 光源(レーザ光源)
14 収差補正用素子(平板)
15 ピックアップレンズ(ピックアップ対物レンズ)
16 光ディスク(光記録媒体)
18 光束分割素子(収差補正用素子)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルーレイ又はHD−DVD等の光ディスク装置における対物レンズを含むレンズユニット、当該対物レンズの収差を補正する収差補正用素子及びその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク装置等のレーザ光源の発振波長は、温度変化や出力の変化によって変化する(モードホップ現象)。例えば、BD(ブルーレイディスク)及びHD−DVDに使用される青色レーザーダイオードの発振波長は、出力を大きく変化させることにより、1nm程度変化する。具体的には、波長408nmの青色レーザーダイオードの発振波長は、再生から記録への切り替えにおける出力の変化により、408nmから409nmに変化する。
【0003】
また、光ディスク装置のピックアップ対物レンズの屈折率は、レーザ光源の波長変化によって変化する。そのため、出力の変化によって、レーザ光がピックアップ対物レンズによって収束される位置(収束位置、焦点位置)が変化する。当該収束位置の変化を軸上色収差(以下、単に、色収差と称する。)という。
収束位置の変化量は、ピックアップ対物レンズの焦点距離及び硝材によって異なる。ガラス又はプラスティックにより形成され、焦点距離が1.76mm(設計波長=408nm)である非球面単レンズを、CD、DVD、HD−DVD、BDのピックアップ対物レンズとした場合、レーザ光源の波長変化1nm当たりの収束位置の変化量(μm/nm)は、図26に示す表のようになる。
【0004】
ここで、レーザ光が光ディスク等に収束する場合、焦点ずれを起こすと収束スポットの形状が変化する。そして、焦点ずれを起こした収束スポットのピーク値は、合焦点時のピーク値(即ち、焦点ずれを起こしていない場合のピーク値)に比べて低くなる。また、焦点ずれを起こしたスポット径(1/e2径)は、合焦点時のスポット径(即ち、焦点ずれしない場合のスポット径)より大きくなる。焦点ずれの許容範囲(焦点深度)を、焦点ずれした時のピーク値が合焦点時のピーク値の95%以上となる範囲とした場合、焦点深度は、図27に示す表のようになる。
【0005】
このように、対物レンズのNA(開口数)が大きいほど、また、光源波長が短くなるほど、焦点深度は浅くなる。そのため、温度変化や出力の変化により、光源波長の発振波長が変化して、収束位置が焦点深度の範囲外にずれてしまう場合も発生する。さらに、出力の変化による波長変化は瞬時に生じるため、当該波長変化に伴う焦点ずれを他の方法により補正することは難しい。そのため、光ディスクに記録再生ができなくなる、フォーカス制御が外れてしまう等の問題が発生する。
【0006】
一方、BD及びHD−DVDに使用される青色レーザーダイオードの発振波長は、408nmを中心に±5nm程度ばらついている。
ガラス又はプラスティックにより形成され、焦点距離が1.76mm(設計波長=408nm)であるBD対物レンズに発振波長が異なるレーザ光を平行入射した場合に生じるrms波面収差を図28の表に示す。図28に示すように、発振波長が403nm、408nm、413nmの何れの場合であっても、rms波面収差はマレシャル限界を超えていない。しかし、レーザ光の発振波長が設計波長408nmからずれるほど、rms波面収差が大きくなる。
【0007】
従来、ピックアップ対物レンズの色収差補正方法として2つの方法がよく使用されている。1つ目は、コリメータレンズにより色収差を補正する方法である。2つ目は、対物レンズ自身で色収差を補正する方法である。
【0008】
コリメータレンズにより色収差補正を行う場合、コリメータレンズの片側の面に複数の輪帯段差を設ける。そして、当該輪帯段差による回折を利用して色収差を補正する。
【0009】
また、対物レンズ自身により色収差補正を行う場合、対物レンズの片側の面に複数の輪帯段差を設ける。そして、当該輪帯段差による回折を利用して色収差を補正する。
【0010】
また、特許文献1には、色収差を補正する色収差補正用光学素子が開示されている。この色収差補正用光学素子は、550nm以下の波長の光を発生する光源と、d線のアッベ数が95.0以下である材料から形成された対物レンズとの間の光路中に配置される。そして、この色収差補正用光学素子は、少なくとも1つの面上に複数の輪帯段差からなる回折構造を有する。そして、当該回折構造は、P1<P0<P2を満たす(P0:光源が発生する光の波長λ0における色収差補正用光学素子のトータルの近軸パワー(mm−1)、P1:波長λ0より10nm短い波長λ1における色収差補正用光学素子のトータルの近軸パワー(mm−1)、P2:波長λ0より10nm長い波長λ2における色収差補正用光学素子のトータルの近軸パワー(mm−1))。
【特許文献1】特開2003−167190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、コリメータレンズにより色収差補正を行う場合、1つの対物レンズに対して専用のコリメータレンズを設計しなくてはならない。そのため、対物レンズを変更する場合には、コリメータレンズも変更しなければならないという無駄が生じる。
【0012】
また、対物レンズ自身により色収差補正を行う場合、対物レンズに設ける輪帯段差の数が多くなる。そして、輪帯段差の数が多くなると、輪帯段差間の傾斜部分の面積が増える。そのため、不要光が多くなり、対物レンズの光利用効率が低下してしまう。
【0013】
また、上記特許文献1に記載の色収差補正用光学素子は、上述のような対物レンズの屈折率の波長・温度依存性を考慮して設計されていない。そのため、出力を変化させることにより、レーザ光源の波長が急激に変化した場合に、対物レンズによって収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内とならないという問題がある。
【0014】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、レーザ光源の発振波長が急激に変化しても、レーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができるレンズユニット、収差補正用素子、及び収差補正用素子の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかるレンズユニットは、ピックアップ対物レンズと、前記ピックアップ対物レンズのレーザ光源側に配置され、複数の輪帯段差を有する平板とを有し、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有するものである。
【0016】
本発明においては、複数の輪帯段差を有する平板が設けられ、複数の輪帯段差は、波長が変化した場合にピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるような位相差を発生させる段差量を有する。これにより、レーザ光の波長が変化した場合、当該平板を透過したレーザ光に収束位置が焦点深度内となるような位相差が発生する。そして、当該位相差により、波長変化に伴う収束位置のずれが低減される。そのため、当該レーザ光はピックアップ対物レンズにより焦点深度内に収束される。従って、レーザ光源の発振波長が急激に変化しても、レーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。
【0017】
また、前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであるため、通常時は各輪帯透過時の位相差に変化は無い。そして、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有することが好ましい。
これにより、波長が急激に変化した場合に、レーザ光の収束位置が焦点深度内となるような位相差がレーザ光に発生する。そのため、ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。
【0018】
さらに、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有することが好ましい。
これにより、レーザ光の波長が変化した場合、当該平板を透過したレーザ光にピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減する位相差が発生する。そして、当該位相差により、波長変化に伴ってピックアップ対物レンズにおいて発生する収差が低減される。従って、レーザ光の波長の変化に応じて発生する収差を低減することができる。
【0019】
また、隣り合う前記輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、前記一の輪帯段差の内側の他の輪帯段差より厚いことが好ましい。
これにより、レーザ光源の発振波長が急激に変化しても、レーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。同時に、波長が変化した場合にピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減することができる。
【0020】
また、本発明にかかるレンズユニットは、BD及び/又はHD−DVD用の記録再生装置に使用される。
これにより、例えば、本発明にかかる平板をBDとHD−DVD兼用ピックアップ対物レンズに取り付ければ、1つの平板でBDとHD−DVDの両方の収差を補正することができる。
【0021】
また、本発明にかかる他のレンズユニットは、光束分割素子及びピックアップ対物レンズを有し、波長λの光束を厚さt1の透明基板を有する第1の光記録媒体の情報記録面上に集光させ、且つ、波長λの光束を厚さt2(t1<t2)の透明基板を有する第2の光記録媒体の情報記録面上に集光させるレンズユニットであって、少なくとも前記光束分割素子の一面は、透過する光束を前記ピックアップ対物レンズを介して第1の光記録媒体の情報記録面上に集光させるための第1の光記録媒体用領域と、透過する光束を前記ピックアップ対物レンズを介して第2の光記録媒体の情報記録面上に集光させるための第2の光記録媒体用領域に分割され、前記第1の光記録媒体用領域は、複数の輪帯段差を有し、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有するものである。
【0022】
本発明においては、2種類の光源を利用する光ピックアップ装置においても使用することができる。
【0023】
また、前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有することが好ましい。
【0024】
さらに、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有することが好ましい。
【0025】
本発明にかかる収差補正用素子は、レーザ光源とピックアップ対物レンズとの間に配置される収差補正用素子であって、複数の輪帯段差を有し、前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束される前記レーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有するものである。
【0026】
また、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有することが好ましい。
【0027】
本発明にかかる収差補正用素子の設計方法は、レーザ光源とピックアップ対物レンズとの間に配置される収差補正用素子の設計方法であって、前記収差補正用素子の表面に複数の輪帯段差を形成し、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束される前記レーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有するものである。
【0028】
また、前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有することが好ましい。
【0029】
さらに、前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、レーザ光源の発振波長が急激に変化しても、レーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。図1は、本発明の実施の形態にかかる光ピックアップ装置1の一例を示したものである。光ピックアップ装置1は、レンズユニット10を備えている。レンズユニット10は、収差補正用素子14(平板)、ピックアップレンズ15(ピックアップ対物レンズ)等を備えている。
【0032】
光源11は、HD−DVD、及びBD用に用いられる青色レーザーダイオード等を備えている。
【0033】
光源11から出射されたレーザ光の光路上にビームスプリッタ12が設けられている。
【0034】
ビームスプリッタ12より出射したレーザ光の光路上にコリメータレンズ13が設けられている。コリメータレンズ13は、光源11から出射されたレーザ光を発散光から略平行光に変換する。
【0035】
コリメータレンズ13を透過したレーザ光の光路上に収差補正用素子14、及び収差補正用素子14の透過光が入射するピックアップレンズ15が設けられている。
【0036】
収差補正用素子14は、ピックアップレンズ15の光源11側に配置され、複数の輪帯段差を有する平板状の素子である。また、収差補正用素子14は、プラスティック素材から形成されている。
後述するように、収差補正用素子14に形成された複数の輪帯段差の厚さは、通常時(レーザ光の波長が変化していない場合)に透過したレーザ光の位相が隣接する輪帯相互に波長単位で異なるように設定されている。
また、収差補正用素子14に形成された複数の輪帯段差は、波長が変化した場合にピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する。同時に、当該段差量は、波長が変化した場合にピックアップレンズ15において発生する収差を低減するように設定されている。具体的には、隣り合う輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、当該一の輪帯段差の内側の輪帯段差より厚くなるように輪帯段差が形成されている。即ち、収差補正用素子14の板厚が中心から外側に向かうにつれて厚くなるように輪帯段差が形成されている。
【0037】
ピックアップレンズ15は、入射された光を光ディスク16の情報記録面に回折限界近くまで集光させる機能を有する。ピックアップレンズ15は、さらに、光ディスク16の情報記録面で反射されたレーザ光を検出系17に導く機能も有する。
光源11の発振波長は、光源11の出力の変化により1nm程度変化する。例えば、光源11の発振波長は、再生から記録への切り替えにおける出力の変化により、408nmから409nmに変化する。出力の変化によって光源11の発振波長が変化すると、ピックアップレンズ15の屈折率も変化する。そして、ピックアップレンズ15により収束される光源11のレーザ光の収束位置も変化する。しかし、レーザ光が収差補正用素子14を透過することにより、レーザ光に収束位置が焦点深度内となるような位相差が発生する。そのため、光源11の発振波長が変化しても、ピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置は焦点深度内となる。
【0038】
フォーカスサーボ時、及びトラッキングサーボ時には、ピックアップレンズ15と収差補正用素子14とが一体となって図示されないアクチュエータにより動作する。
【0039】
なお、本実施の形態では、HD−DVD用、BD用の光ディスク16の透明基板はポリカーボネイトとし、HD−DVD用、BD用の光ディスク16の透明基板厚は、それぞれ0.6mm、0.0875mmとした。
【0040】
次に、光源11から出射されたレーザ光が光ディスク16の情報記録面で反射され検出系に検出されるまでの挙動について説明する。光源11から出射されたレーザ光はビームスプリッタ12を透過してコリメータレンズ13に入射する。
【0041】
コリメータレンズ13は、光源11から出射されたレーザ光を発散光から略平行光に変換する。
【0042】
コリメータレンズ13を透過したレーザ光は収差補正用素子14に入射される。ここで、本実施の形態においては、レーザ光の波長が変化した場合、この収差補正用素子14は、ピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光の位相を補正する。そして、補正後のレーザ光はピックアップレンズ15に入射される。ピックアップレンズ15は、入射されたレーザ光を光ディスク16の情報記録面に回折限界近くまで集光させる。光ディスク16の情報記録面で反射されたレーザ光は、ピックアップレンズ15を介して検出系17に入射し、検出される。検出系17は、当該レーザ光を検出し、光電変換することによって、フォーカスサーボ信号、トラックサーボ信号、再生信号などを生成する。
【0043】
次に、本発明の実施の形態にかかる光ピックアップ装置1のレンズユニット10において用いられる収差補正用素子14について詳細に説明する。図2は、本実施の形態にかかる光ピックアップ装置1における収差補正用素子14を示す図であり、図2(a)は、通常時におけるレーザ光の波面(位相)を示し、図2(b)は、レーザ光の波長が短くなった場合におけるレーザ光の波面(位相)を示し、図2(c)は、レーザ光の波長が長くなった場合におけるレーザ光の波面(位相)を示している。ピックアップレンズ15の光源11側に、図2に示す輪帯段差付プラスティック製の平板からなる収差補正用素子14を組み合わせる。収差補正用素子14は、上述したように、複数の輪帯段差を有する平板状の素子である。本実施の形態においては、ピックアップレンズ15と同一素材のプラスティックからなる。そして、収差補正用素子14の輪帯段差の厚さは、通常時において透過したレーザ光の位相が隣接する輪帯相互に波長単位で異なるように設定されている。また、収差補正用素子14の輪帯段差は、波長が変化した場合にピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する。
【0044】
すなわち、通常時にレーザ光が収差補正用素子14を透過した場合、各輪帯段差を透過したレーザ光の位相は相互に波長の整数倍だけ異なる。従って、図2(a)に示されるように、通常時には、異なる輪帯段差を透過したレーザ光には位相差が発生しない。そのため、収差補正用素子14に入射したレーザ光は、同一位相のまま、出射し、後段に設けられたピックアップレンズ15(図示せず)に入射する。従って、通常時において、ピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置は収差補正用素子14が無い場合と略同じ位置となる。本実施形態において、レーザ光が最良の状態で収束するように所望する位置は、光ディスク16(図示せず)の情報記録面である。すなわち、レーザ光は、合焦点時に、光ディスク16の情報記録面に良好に集光する。
【0045】
他方、図2(b)、(c)に示されるように、出力の変化等により波長が変化し、波長が変化したレーザ光が収差補正用素子14を透過した場合、各輪帯段差を透過したレーザ光の位相の違いは波長の整数倍とならない。従って、図2(b)、(c)に示されるように、波長が変化した場合には、異なる輪帯段差を透過したレーザ光に位相差が発生する。そして、本発明においては、当該位相差は、ピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるように調節する大きさとなっている。そのため、波長が変化した場合、従来ではピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が変化してしまうが、本発明においては、収差補正用素子14を透過したレーザ光の位相差により、波長変化に伴うレーザ光の収束位置の変化が抑制される。そして、ピックアップレンズ15より出射したレーザ光は、光ディスク16の情報記録面に良好に集光する。
【0046】
また、収差補正用素子14の輪帯段差は、レーザ光の波長が変化した場合にピックアップレンズ15で発生する収差を低減する段差量を有する。
また、実際には、光源11の発振波長は408nmを中心に±5nm程度ばらついている。図3に光源11の波長が403nmである場合にピックアップレンズ15において発生するrms波面収差を示し、図4に光源11の波長が413nmである場合にピックアップレンズ15において発生するrms波面収差を示す。また、光源11とピックアップレンズ15との間に収差補正用素子14を設けない場合のrms波面収差を図3(a)、図4(a)に示し、光源11とピックアップレンズ15との間に収差補正用素子14を設けた場合のrms波面収差を図3(b)、図4(b)に示す。なお、図3、図4において、縦軸はrms波面収差の大きさを表し、横軸はピックアップレンズ15の径方向における位置を表す。
【0047】
図3(a)、図4(a)に示すように、光源11の発振波長が403nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けないと、rms波面収差は非常に大きくなる。
一方、図3(b)、図4(b)に示すように、光源11の発振波長が403nm、413nmであっても、収差補正用素子14を設けると、rms波面収差を小さく抑えることが出来る。具体的には、図3(b)、図4(b)に示すように、収差補正用素子14に形成された輪帯段差によって各輪帯段差を透過したレーザ光に位相差が発生する。そして、当該位相差が、ピックアップレンズ15において発生する収差を低減する。これにより、レーザ光11の発振波長が408nmを中心に±5nm程度ばらついていても、ピックアップレンズ15において発生する収差は低減される。従って、ピックアップレンズ15より出射したレーザ光は、光ディスク16の情報記録面に良好に集光する。
【0048】
このように構成された本実施の形態にかかるレンズユニット10によれば、複数の輪帯段差を有する収差補正用素子14が設けられ、複数の輪帯段差は、波長が変化した場合にピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるような位相差を発生させる段差量を有する。これにより、レーザ光の波長が変化した場合、収差補正用素子14を透過したレーザ光に収束位置が焦点深度内となるような位相差が発生する。そして、当該位相差により、波長変化に伴う収束位置のずれが低減される。そのため、当該レーザ光はピックアップレンズ15により焦点深度内に収束される。従って、光源11の発振波長が急激に変化しても、レーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。
【0049】
具体的には、複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合にピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する。
これにより、波長が急激に変化した場合に、レーザ光の収束位置が焦点深度内となるような位相差がレーザ光に発生する。そのため、ピックアップレンズ15により収束されるレーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。
【0050】
さらに、複数の輪帯段差は、波長が変化した場合にピックアップレンズ15において発生する収差を低減するような段差量を有する。
これにより、レーザ光の波長が変化した場合、収差補正用素子14を透過したレーザ光にピックアップレンズ15において発生する収差を低減する位相差が発生する。そして、当該位相差により、波長変化に伴ってピックアップレンズ15において発生する収差が低減される。従って、レーザ光の波長の変化に応じて発生する収差を低減することができる。
【0051】
具体的には、隣り合う輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、一の輪帯段差の内側の他の輪帯段差より厚い。
これにより、光源11の発振波長が急激に変化しても、レーザ光の収束位置を焦点深度内とすることができる。同時に、波長が変化した場合にピックアップレンズ15において発生する収差を低減することができる。
【0052】
また、本発明にかかるレンズユニット10は、BD及びHD−DVD用の光ピックアップ装置1に使用される。
これにより、例えば、本発明にかかる収差補正用素子14をBDとHD−DVD兼用ピックアップレンズ15に取り付ければ、1つの収差補正用素子14でBDとHD−DVDの両方の収差を補正することができる。
【0053】
なお、本実施の形態において、収差補正用素子14は、プラスティック素材からなるとしたが、ガラス素材により形成されてもよい。
【実施例1】
【0054】
次に、本発明の実施例1について、本発明範囲から外れる比較例1と比較して説明する。実施例1としては、図5に示すように、ピックアップレンズ15の光源11(図示せず)側に収差補正用素子14を設けた。収差補正用素子14は、複数の輪帯段差を有するプラスティック製の平板状の素子である。図15に示す表に、本実施例1にかかる収差補正用素子14の輪帯番号、輪帯位置、及び板厚変化量(板厚0.5mmに対する相対値)を示す。図15に示すように、隣り合う輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、当該一の輪帯段差の内側の輪帯段差より厚くなるように輪帯段差が形成されている。具体的には、輪帯段差の厚さは、収差補正用素子14の中心から外縁部へ向かうにつれて、0.003893mmずつ厚くなるように形成されている。また、輪帯段差の数は25である。そして、当該輪帯段差の厚さは、光源11の波長が変化しなかった場合に、隣り合う輪帯段差を透過したレーザ光の位相が波長単位で異なるように設計されている。
また、図16、図17に示す表に、本実施例1にかかる光学系のデータを示す。ピックアップレンズ15としてガラス製レンズを使用した。
【0055】
これに対し、ピックアップレンズ15の光源11側に収差補正用素子14を設けない例を比較例1とする。図6(a)に、比較例1において光源11の波長が403nmから404nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図6(b)に、比較例1において光源11の波長が408nmから409nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図6(c)に、比較例1において光源11の波長が413nmから414nmに変化した場合のrms波面収差を示す。縦軸のスケールは0.5λである。
図6に示すように、収差補正用素子14を設けない場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光スポットの収束位置(光ディスク16の情報記録面)でのrms波面収差は、それぞれ、98.0mλ、92.6mλ、95.6mλとなる。換言すれば、収差補正用素子14を設けない場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのrms波面収差は、それぞれ、98.0mλ、92.6mλ、95.6mλとなる。
また、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けないと、レーザ光の収束位置の合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)からのずれ量は、それぞれ、−1.418μm、+1.366μmとなる。
また、光源11の波長が403nm、408nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けないと、収束位置でのrms波面収差は、それぞれ、28.0mλ、1.6mλ、28.5mλとなる。
【0056】
一方、図7(a)に、実施例1において光源11の波長が403nmから404nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図7(b)に、実施例1において光源11の波長が408nmから409nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図7(c)に、実施例1において光源11の波長が413nmから414nmに変化した場合のrms波面収差を示す。縦軸のスケールは0.1λである。
図7に示すように、収差補正用素子14を設ける場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光スポットの収束位置(光ディスク16の情報記録面)でのrms波面収差は、それぞれ、18.4mλ、1.6mλ、17.4mλとなる。換言すれば、収差補正用素子14を設ける場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのrms波面収差は、それぞれ、18.4mλ、1.6mλ、17.4mλとなる。
また、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けると、レーザ光の収束位置の合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)からのずれ量は、それぞれ、−0.029μm、+0.022μmとなる。
また、光源11の波長が403nm、408nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けると、収束位置でのrms波面収差は、それぞれ、18.4mλ、1.6mλ、17.4mλとなる。
【0057】
合焦点位置から収束位置がずれた場合(即ち、焦点ずれした場合)、光スポットの収束位置でのレーザ光のピーク値は、合焦点位置でのピーク値(即ち、焦点ずれしない場合のピーク値)に比べて低くなる。換言すると、レーザ光の収束位置が光ディスク16の情報記録面からずれた場合(焦点ずれした場合)、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのピーク値は、レーザ光の収束位置が光ディスク16の情報記録面となった場合(焦点ずれしない場合)における光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのピーク値に比べて低くなる。焦点ずれの許容範囲(焦点深度)を、焦点ずれした時のピーク値が合焦点時のピーク値の95%以上となる範囲とした場合、焦点深度は、HD−DVDの場合0.21μmであり、BDの場合0.11μmである。
収差補正用素子14を設けない比較例1においては、図6に示すように、光源11の波長が1nm変化することにより、ピックアップレンズ15において発生する収差が大きくなり、マレシャル限界を超えてしまう。
また、比較例1において、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収束位置は焦点深度外となってしまう。
これに対して、収差補正用素子14を設ける実施例1においては、図7に示すように、光源11の波長が1nm変化しても、ピックアップレンズ15において発生する収差は、マレシャル限界を超えない。特に、収差補正用素子14を設けると、波長が変化する前(通常時)での合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)におけるrms波面収差と、波長が1nm変化した場合での光スポットの収束位置(光ディスク16の情報)におけるrms波面収差とが略同じとなる。即ち、収差補正用素子14を設けることにより、光源11の波長が1nm変化したことによる収差の増加は略ゼロに抑えられている。
また、実施例1において、光源11の波長が403nm、413nmであっても、収束位置は焦点深度内となっている。即ち、収差補正用素子14を設けることにより、光源11の波長にばらつきがあっても、レーザ光の収束位置が焦点深度内になっている。
【実施例2】
【0058】
次に、本発明の実施例2について、本発明範囲から外れる比較例2と比較して説明する。実施例2としては、図8に示すように、ピックアップレンズ15の光源11(図示せず)側に収差補正用素子14を設けた。収差補正用素子14は、複数の輪帯段差を有するプラスティック製の平板状の素子である。具体的には、実施例2にかかる収差補正用素子14は、プラスティック材により形成した。図18に示す表に、本実施例2にかかる収差補正用素子14の輪帯番号、輪帯位置、及び板厚変化量(板厚0.5mmに対する相対値)を示す。図18に示すように、隣り合う輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、当該一の輪帯段差の内側の輪帯段差より厚くなるように輪帯段差が形成されている。具体的には、輪帯段差の厚さは、収差補正用素子14の中心から外縁部へ向かうにつれて、0.003893mmずつ厚くなるように形成されている。また、輪帯段差の数は29である。そして、当該輪帯段差の厚さは、光源11の波長が変化しなかった場合に、隣り合う輪帯段差を透過したレーザ光の位相が波長単位で異なるように設計されている。
また、図19、図20に示す表に、本実施例2にかかる光学系のデータを示す。ピックアップレンズ15としてプラスティック製レンズを使用した。
【0059】
これに対し、ピックアップレンズ15の光源11側に収差補正用素子14を設けない例を比較例2とする。図9(a)に、比較例2において光源11の波長が403nmから404nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図9(b)に、比較例2において光源11の波長が408nmから409nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図9(c)に、比較例2において光源11の波長が413nmから414nmに変化した場合のrms波面収差を示す。縦軸のスケールは0.5λである。
図9に示すように、収差補正用素子14を設けない場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光スポットの収束位置(光ディスク16の情報記録面)でのrms波面収差は、それぞれ、113.2mλ、106.4mλ、110.7mλとなる。換言すれば、収差補正用素子14を設けない場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのrms波面収差は、それぞれ、113.2mλ、106.4mλ、110.7mλとなる。
また、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けないと、レーザ光の収束位置の合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)からのずれ量は、それぞれ、−1.634μm、+1.571μmとなる。
また、光源11の波長が403nm、408nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けないと、収束位置でのrms波面収差は、それぞれ、35.1mλ、2.0mλ、35.3mλとなる。
【0060】
一方、図10(a)に、実施例2において光源11の波長が403nmから404nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図10(b)に、実施例2において光源11の波長が408nmから409nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図10(c)に、実施例2において光源11の波長が413nmから414nmに変化した場合のrms波面収差を示す。縦軸のスケールは0.1λである。
図10に示すように、収差補正用素子14を設ける場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光スポットの収束位置(光ディスク16の情報記録面)でのrms波面収差は、それぞれ、16.0mλ、3.9mλ、22.2mλとなる。換言すれば、収差補正用素子14を設ける場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのrms波面収差は、それぞれ、16.0mλ、3.9mλ、22.2mλとなる。
また、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けると、レーザ光の収束位置の合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)からのずれ量は、それぞれ、−0.017μm、+0.051μmとなる。
また、光源11の波長が403nm、408nm、413nmである場合、収差補正用素子14を設けると、収束位置でのrms波面収差は、それぞれ、20.1mλ、2.0mλ、18.6mλとなる。
【0061】
収差補正用素子14を設けない比較例2においては、図9に示すように、光源11の波長が1nm変化することにより、ピックアップレンズ15において発生する収差が大きくなり、マレシャル限界を超えてしまう。
また、比較例2において、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収束位置は焦点深度(HD−DVDの場合0.21μm、BDの場合0.11μm)外となってしまう。
これに対して、収差補正用素子14を設ける実施例2においては、図10に示すように、光源11の波長が1nm変化しても、ピックアップレンズ15において発生する収差は、マレシャル限界を超えない。
また、実施例2において、光源11の波長が403nm、413nmであっても、収束位置は焦点深度内となっている。即ち、収差補正用素子14を設けることにより、光源11の波長にばらつきがあっても、レーザ光の収束位置が焦点深度内になっている。
【0062】
上述の実施例1及び実施例2によれば、回折を利用してピックアップレンズの収差補正を行う場合に比べて、収差補正用素子14に形成する輪帯段差の数をより少なくすることができる。例えば、本発明の収差補正用素子14に設けられる輪帯段差の数は、25〜29輪帯(段差=5次)である。一方、回折を利用して収差補正を行う場合、例えば、ピックアップレンズに設けられる輪帯段差の数は、47輪帯である。そして、輪帯段差の数が少なくなると、輪帯段差間の傾斜部分の面積が減る。そのため、不要光が少なくなり、ピックアップレンズ15の光利用効率を向上することができる。
【実施例3】
【0063】
次に、本発明の実施例3について、本発明範囲から外れる比較例3と比較して説明する。実施例3としては、ガラス製のBD専用のピックアップレンズ15の光源11(図示せず)側に光束分割素子18(収差補正用素子)を設け、図11に示すBD/HD−DVD互換レンズを製作した。
【0064】
実施例3にかかる光束分割素子18のピックアップレンズ15側の面は、透過する光束をピックアップレンズ15を介してBD(第1の光記録媒体)の情報記録面上に集光するためのBD領域(第1の光記録媒体用領域)と、透過する光束をピックアップレンズ15を介してHD−DVD(第2の光記録媒体)の情報記録面上に集光するためのHD領域(第2の光記録媒体用領域)に分割されている。BD領域とHD領域は、光束分割素子18において交互に配置されている。図11では、BD領域を透過する光線のみを表示している。
【0065】
また、実施例3にかかる光束分割素子18は収差補正機能を持つ。具体的には、光束分割素子18は、BD領域に複数の輪帯段差を有する。図21に示す表に、本実施例3にかかる光束分割素子18の輪帯番号、輪帯位置、及び板厚変化量(板厚0.5mmに対する相対値)を示す。図21に示すように、隣り合う輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、当該一の輪帯段差の内側の輪帯段差より厚くなるように輪帯段差が形成されている。具体的には、輪帯段差の厚さは、光束分割素子18の中心から外縁部へ向かうにつれて厚くなるように形成されている。また、輪帯段差の数は16である。そして、当該輪帯段差の厚さは、光源11の波長が変化しなかった場合に、隣り合う輪帯段差を透過したレーザ光の位相が波長単位で異なるように設計されている。また、光束分割素子18のHD領域は、凹レンズ面となるような曲率半径を有する。そのため、実施例3にかかる光束分割素子18のピックアップレンズ15側の面は、全体として、略凹レンズ面となるような形状となっている。
なお、実施例3にかかる光束分割素子18は、プラスティック材により形成した。
また、図22、図23に示す表に、本実施例3のBD領域における光学系のデータを示す。また、図24、図25に示す表に本実施例のHD領域における光学系のデータを示す。
【0066】
これに対し、比較例3としては、実施例3のガラス製のピックアップレンズ15と光源11(図示せず)との間に比較例3にかかる光束分割素子19を設け、図12に示すBD/HD−DVD互換レンズを製作した。
【0067】
比較例3にかかる光束分割素子19のピックアップレンズ15側の面は、実施例3と同様に、BD領域とHD領域とに分割されている。BD領域とHD領域は、光束分割素子19において交互に配置されている。図12では、BD領域を透過する光線のみを表示している。また、比較例3にかかる光束分割素子19は収差補正機能を持たない。即ち、実施例3にかかる光束分割素子18と異なり、光束分割素子19のBD領域には、輪帯段差が形成されておらず、平板状となっている。光束分割素子19のHD領域は、凹レンズ面となるような曲率半径を有する。そして、光束分割素子19のBD領域を透過した光束はそのままピックアップレンズ15に入射し、HD領域を透過した光束は弱発散光となってピックアップレンズ15に入射する。このように構成することにより、BDに対してもHD−DVDに対してもそれぞれの光束は適切な位置に集光する。なお、比較例3にかかる光束分割素子19は、光束分割素子18と同一のプラスティック材により形成した。
【0068】
なお、実施例3及び比較例3にかかるBD/HD−DVD互換レンズでは、入射光の光束分割を行っているため、超解像現象が起こり、スポット径が小さくなりすぎる。そのため、BDにおける通常のNA(開口数)は0.85であるが、実施例3及び比較例3では、NAを約0.79に補正している。
【0069】
図13(a)に、比較例3において光源11の波長が403nmから404nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図13(b)に、比較例3において光源11の波長が408nmから409nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図13(c)に、比較例3において光源11の波長が413nmから414nmに変化した場合のrms波面収差を示す。縦軸のスケールは0.5λである。
図13に示すように、比較例3にかかる光束分割素子19を用いた場合では、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光スポットの収束位置(光ディスク16の情報記録面)でのrms波面収差は、それぞれ、83.5mλ、79.4mλ、79.0mλとなる。換言すれば、比較例3にかかる光束分割素子19を用いた場合では、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのrms波面収差は、それぞれ、83.5mλ、79.4mλ、79.0mλとなる。
また、光源11の波長が403nm、413nmである場合、比較例3の光束分割素子19を用いると、レーザ光の収束位置の合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)からのずれ量は、それぞれ、−1.374μm、+1.325μmとなる。
また、光源11の波長が403nm、408nm、413nmである場合、比較例3の光束分割素子19を用いると、収束位置でのrms波面収差は、それぞれ、16.1mλ、1.0mλ、16.6mλとなる。
【0070】
一方、図14(a)に、実施例3において光源11の波長が403nmから404nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図14(b)に、実施例3において光源11の波長が408nmから409nmに変化した場合のrms波面収差を示し、図14(c)に、実施例3において光源11の波長が413nmから414nmに変化した場合のrms波面収差を示す。縦軸のスケールは0.1λである。
図14に示すように、実施例3にかかる光束分割素子18を用いる場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光スポットの収束位置(光ディスク16の情報記録面)でのrms波面収差は、それぞれ、17.4mλ、3.9mλ、24.2mλとなる。換言すれば、実施例3にかかる光束分割素子18を用いる場合、光源11の波長が403nmから404nm、408nmから409nm、413nmから414nmに変化すると、光ディスク16の情報記録面に形成された光スポットのrms波面収差は、それぞれ、17.4mλ、3.9mλ、24.2mλとなる。
また、光源11の波長が403nm、413nmである場合、実施例3の光束分割素子18を用いると、レーザ光の収束位置の合焦点位置(光ディスク16の情報記録面)からのずれ量は、それぞれ、−0.039μm、+0.011μmとなる。
また、光源11の波長が403nm、408nm、413nmである場合、実施例3の光束分割素子18を用いると、収束位置でのrms波面収差は、それぞれ、21.0mλ、1.1mλ、19.9mλとなる。
【0071】
比較例3においては、図13に示すように、光源11の波長が1nm変化することにより、ピックアップレンズ15において発生する収差が大きくなり、マレシャル限界を超えてしまう。
また、比較例3において、光源11の波長が403nm、413nmである場合、収束位置は焦点深度(BDの場合0.11μm)外となってしまう。
これに対して、実施例3においては、図14に示すように、光源11の波長が1nm変化しても、ピックアップレンズ15において発生する収差は、マレシャル限界を超えない。
また、実施例3において、光源11の波長が403nm、413nmであっても、収束位置は焦点深度内となっている。即ち、光束分割素子18に形成された輪帯段差による収差補正機能により、光源11の波長にばらつきがあっても、レーザ光の収束位置が焦点深度内になっている。
【0072】
なお、実施例3においては、ガラス製のピックアップレンズ15を使用したが、プラスティック製のピックアップレンズ15を使用しても同様の作用効果が得られる。
また、実施例3においては、光束分割素子18のBD領域にのみ収差補正機能を設けたが、HD領域にも同様に適宜収差を補正する機能を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態にかかる光ピックアップ装置の一例を示したものである。
【図2】通常時におけるレーザ光の波面(位相)を示す図(図2(a))であり、レーザ光の波長が短くなった場合におけるレーザ光の波面(位相)を示す図(図2(b))、レーザ光の波長が長くなった場合におけるレーザ光の波面(位相)を示す図(図2(c))である。
【図3】光源の波長が403nmであり、収差補正用素子を用いない場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図3(a))、光源の波長が403nmであり、収差補正用素子を用いる場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図3(b))である。
【図4】光源の波長が413nmであり、収差補正用素子を用いない場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図4(a))、光源の波長が413nmであり、収差補正用素子を用いる場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図4(b))である。
【図5】本発明の実施例1にかかる収差補正用素子及びピックアップレンズを示す図である。
【図6】比較例1において光源の波長が403nmから404nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図6(a))、比較例1において光源の波長が408nmから409nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図6(b))、比較例1において光源の波長が413nmから414nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図6(c))である。
【図7】実施例1において光源の波長が403nmから404nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図7(a))、実施例1において光源の波長が408nmから409nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図7(b))、実施例1において光源の波長が413nmから414nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図7(c))である。
【図8】本発明の実施例2にかかる収差補正用素子及びピックアップレンズを示す図である。
【図9】比較例2において光源の波長が403nmから404nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図9(a))、比較例2において光源の波長が408nmから409nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図9(b))、比較例2において光源の波長が413nmから414nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図9(c))である。
【図10】実施例2において光源の波長が403nmから404nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図10(a))、実施例2において光源の波長が408nmから409nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図10(b))、実施例2において光源の波長が413nmから414nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図10(c))である。
【図11】本発明の実施例3にかかる光束分割素子及びピックアップレンズを示す図である。
【図12】比較例3にかかる光束分割素子及びピックアップレンズを示す図である。
【図13】比較例3において光源の波長が403nmから404nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図13(a))、比較例3において光源の波長が408nmから409nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図13(b))、比較例3において光源の波長が413nmから414nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図13(c))である。
【図14】実施例3において光源の波長が403nmから404nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図14(a))、実施例3において光源の波長が408nmから409nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図14(b))、実施例3において光源の波長が413nmから414nmに変化した場合にピックアップレンズにおいて発生するrms波面収差を示す図(図14(c))である。
【図15】本発明の実施例1にかかる収差補正用素子の輪帯番号、輪帯位置、及び板厚変化量(板厚0.5mmに対する相対値)を示す表である。
【図16】本発明の実施例1にかかる光学系のデータを示す表である。
【図17】本発明の実施例1にかかる光学系のデータを示す表である。
【図18】本発明の実施例2にかかる収差補正用素子の輪帯番号、輪帯位置、及び板厚変化量(板厚0.5mmに対する相対値)を示す表である。
【図19】本発明の実施例2にかかる光学系のデータを示す表である。
【図20】本発明の実施例2にかかる光学系のデータを示す表である。
【図21】本発明の実施例3にかかる光束分割素子の輪帯番号、輪帯位置、及び板厚変化量(板厚0.5mmに対する相対値)を示す表である。
【図22】本発明の実施例3のBD領域における光学系のデータを示す表である。
【図23】本発明の実施例3のBD領域における光学系のデータを示す表である。
【図24】本発明の実施例3のHD領域における光学系のデータを示す表である。
【図25】本発明の実施例3のHD領域における光学系のデータを示す表である。
【図26】ガラス製非球面単レンズをピックアップ対物レンズとした場合におけるレーザ光源の波長変化1nm当たりの収束位置の変化量(μm/nm)を示す表である。
【図27】焦点ずれの許容範囲を、焦点ずれした時のピーク値が合焦点時のピーク値の95%以上となる範囲とした場合における焦点深度を示す表である。
【図28】ガラス材により形成され、焦点距離が1.76mm(設計波長=408nm)である対物レンズに発振波長が異なるレーザ光を平行入射した場合に生じるrms波面収差を示す表である。
【符号の説明】
【0074】
10 レンズユニット
11 光源(レーザ光源)
14 収差補正用素子(平板)
15 ピックアップレンズ(ピックアップ対物レンズ)
16 光ディスク(光記録媒体)
18 光束分割素子(収差補正用素子)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピックアップ対物レンズと、
前記ピックアップ対物レンズのレーザ光源側に配置され、複数の輪帯段差を有する平板とを有し、
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する、レンズユニット。
【請求項2】
前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有する請求項1又は2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
隣り合う前記輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、前記一の輪帯段差の内側の他の輪帯段差より厚い請求項1乃至3の何れか一項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
BD及び/又はHD−DVD用の記録再生装置に使用される請求項1乃至4の何れか一項に記載のレンズユニット。
【請求項6】
光束分割素子及びピックアップ対物レンズを有し、波長λの光束を厚さt1の透明基板を有する第1の光記録媒体の情報記録面上に集光させ、且つ、波長λの光束を厚さt2(t1<t2)の透明基板を有する第2の光記録媒体の情報記録面上に集光させるレンズユニットであって、
少なくとも前記光束分割素子の一面は、透過する光束を前記ピックアップ対物レンズを介して第1の光記録媒体の情報記録面上に集光させるための第1の光記録媒体用領域と、透過する光束を前記ピックアップ対物レンズを介して第2の光記録媒体の情報記録面上に集光させるための第2の光記録媒体用領域に分割され、
前記第1の光記録媒体用領域は、複数の輪帯段差を有し、
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有するレンズユニット。
【請求項7】
前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する請求項6に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有する請求項6又は7に記載のレンズユニット。
【請求項9】
レーザ光源とピックアップ対物レンズとの間に配置される収差補正用素子であって、
複数の輪帯段差を有し、
前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束される前記レーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する収差補正用素子。
【請求項10】
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有する請求項9に記載の収差補正用素子。
【請求項11】
レーザ光源とピックアップ対物レンズとの間に配置される収差補正用素子の設計方法であって、
前記収差補正用素子の表面に複数の輪帯段差を形成し、
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束される前記レーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する収差補正用素子の設計方法。
【請求項12】
前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束される前記レーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する請求項11に記載の収差補正用素子の設計方法。
【請求項13】
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有する請求項11又は12に記載の収差補正用素子の設計方法。
【請求項1】
ピックアップ対物レンズと、
前記ピックアップ対物レンズのレーザ光源側に配置され、複数の輪帯段差を有する平板とを有し、
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する、レンズユニット。
【請求項2】
前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有する請求項1又は2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
隣り合う前記輪帯段差において、一の輪帯段差の厚さが、前記一の輪帯段差の内側の他の輪帯段差より厚い請求項1乃至3の何れか一項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
BD及び/又はHD−DVD用の記録再生装置に使用される請求項1乃至4の何れか一項に記載のレンズユニット。
【請求項6】
光束分割素子及びピックアップ対物レンズを有し、波長λの光束を厚さt1の透明基板を有する第1の光記録媒体の情報記録面上に集光させ、且つ、波長λの光束を厚さt2(t1<t2)の透明基板を有する第2の光記録媒体の情報記録面上に集光させるレンズユニットであって、
少なくとも前記光束分割素子の一面は、透過する光束を前記ピックアップ対物レンズを介して第1の光記録媒体の情報記録面上に集光させるための第1の光記録媒体用領域と、透過する光束を前記ピックアップ対物レンズを介して第2の光記録媒体の情報記録面上に集光させるための第2の光記録媒体用領域に分割され、
前記第1の光記録媒体用領域は、複数の輪帯段差を有し、
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有するレンズユニット。
【請求項7】
前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束されるレーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する請求項6に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有する請求項6又は7に記載のレンズユニット。
【請求項9】
レーザ光源とピックアップ対物レンズとの間に配置される収差補正用素子であって、
複数の輪帯段差を有し、
前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束される前記レーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する収差補正用素子。
【請求項10】
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有する請求項9に記載の収差補正用素子。
【請求項11】
レーザ光源とピックアップ対物レンズとの間に配置される収差補正用素子の設計方法であって、
前記収差補正用素子の表面に複数の輪帯段差を形成し、
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束される前記レーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する収差補正用素子の設計方法。
【請求項12】
前記複数の輪帯段差は、通常時における透過光の位相が輪帯相互に波長単位で異なる厚さであって、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにより収束される前記レーザ光の収束位置が焦点深度内となるようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する請求項11に記載の収差補正用素子の設計方法。
【請求項13】
前記複数の輪帯段差は、波長が変化した場合に前記ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような段差量を有する請求項11又は12に記載の収差補正用素子の設計方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2009−76161(P2009−76161A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246046(P2007−246046)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
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