レンズ装置及びそれを含む撮像システム
【課題】単体又は複数で使用可能なレンズ装置であって、複数で使用する際に、マスター側、スレーブ側のレンズ装置双方で最適な設定に切り替え可能なレンズ装置を提供する。
【解決手段】複数の制御元からの制御指令に従って駆動する光学部材を含むレンズ装置は、単体モードと複数モードを有し、外部機器と通信する通信手段と、単体モードにおいては、全光学部材を第1状態にし、複数モードにおいては光学部材ごとに、対応する光学部材への制御指令を通信手段から他のレンズ装置に出力する第2又は第3状態に設定する設定手段と、光学部材の駆動状態を判別する判別手段と、各光学部材の駆動状態ごとに複数の制御元からのどの制御指令に従って光学部材を駆動するかを決める制御元情報を出力する出力部と、制御元情報に基づいて光学部材の駆動の制御指令を決定する決定手段、を有し、第3状態では第1及び第2状態とは異なる制御元情報を出力する。
【解決手段】複数の制御元からの制御指令に従って駆動する光学部材を含むレンズ装置は、単体モードと複数モードを有し、外部機器と通信する通信手段と、単体モードにおいては、全光学部材を第1状態にし、複数モードにおいては光学部材ごとに、対応する光学部材への制御指令を通信手段から他のレンズ装置に出力する第2又は第3状態に設定する設定手段と、光学部材の駆動状態を判別する判別手段と、各光学部材の駆動状態ごとに複数の制御元からのどの制御指令に従って光学部材を駆動するかを決める制御元情報を出力する出力部と、制御元情報に基づいて光学部材の駆動の制御指令を決定する決定手段、を有し、第3状態では第1及び第2状態とは異なる制御元情報を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置及びそれを含む撮像システムに関し、特に立体撮影等、複数台の撮像システムの運用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、立体撮影を行う際に、単体で利用可能な撮像システムを複数台利用し、立体撮影を行う立体撮影システムが知られている。一方、立体撮影では、左右の画像の微妙なずれが発生するだけで視聴者に違和感を覚えさせるだけでなく、不快感や疲労感を与えてしまうこともある。そのため、このような立体撮影システムでは、複数台の撮像システム間の対応する駆動可能な光学部材の位置を常に等しくする必要がある。従来のシステムにおいては、複数台の撮像システム間の対応する駆動可能な光学部材の位置を常に等しくする方法として、以下のような技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、2つのズームレンズのうち一方をマスター側、他方をスレーブ側とし、スレーブ側のレンズをマスター側のレンズの移動に追従させて駆動する駆動装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では複数台の撮像装置の設定を合わせることができる撮像システムが開示されている。この提案によると、他の撮像装置が設定を変更するタイミングに同期して設定を変更するので、複数の撮像装置の稼働中にも撮像装置の設定を適切に変更できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−127400号公報
【特許文献2】特開2008−154073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、スレーブ側のレンズにマスター側のレンズに追従させるもの以外のコントロール、特に撮像システム内に搭載されている自動駆動機能からコントロールが入った場合については特に記載されていない。さらに、スレーブ側の撮像システムに設定されている機能によって追従ができなくなることについても考慮されていない。
【0007】
実際、スレーブ側の撮像システムで駆動範囲や最高速度を制限させる機能が有効になっていた場合、マスター側のレンズの動きに追従しきれなくなってしまう。
【0008】
また、上述の特許文献2に開示された従来技術で撮像システムの機能に関する設定情報を同期させると、マスター側の撮像システムとスレーブ側の撮像システムが同じ設定になってしまう。すなわち、各々に最適な設定を行うには別々に設定する必要があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、単体でも運用可能な撮像システムにおいて、立体撮影システムとして運用する際に、マスター側の撮像システム、スレーブ側の撮像システム双方で最適な設定に切り替えることを可能にした撮像システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、複数の制御元からの制御指令に従って駆動可能な光学部材を有するレンズ装置であって、該レンズ装置は、レンズ装置が単体で使用される単体モードとレンズ装置が複数で使用される複数モードとを切り換えるモード切替手段と、外部の機器と通信する通信手段と、単体モードにおいては全ての該光学部材を第1の駆動状態に設定し、複数モードにおいては、該光学部材ごとに、第2の駆動状態又は第3の駆動状態に設定する、駆動状態設定手段と、光学部材ごとに設定されている駆動状態を判別する駆動状態判別手段と、各光学部材の駆動状態ごとに、複数の制御元からの制御指令のうちどの制御指令に従って該光学部材を駆動するかを決定するための制御元情報を出力する制御元情報出力部と、前記制御元情報出力部により決定された制御元情報に基づいて光学部材の駆動を制御する指令を決定する指令決定手段と、を有し、第2の駆動状態においては、対応する光学部材に対する制御指令を該通信手段を介して他のレンズ装置に出力し、第3の駆動状態においては、制御元情報出力部は第1の駆動状態及び第2の駆動状態における制御元情報とは異なる制御元情報を出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単体でも運用可能な撮像システムにおいて、立体撮影システムとして運用する際に、マスター側の撮像システム、スレーブ側の撮像システム双方で最適な設定に切り替えることを可能にした撮像システムを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施例の構成ブロック図
【図2】レンズ装置内の構成と指令の流れを示す図
【図3】優先度テーブル1を用いた時のAF機能の働きを示す図
【図4】優先度テーブル2を用いた時のAF機能の働きを示す図
【図5】第1の実施例のフローチャート
【図6】第2の実施例の構成ブロック図
【図7】第2の実施例の機能を無効にする処理のフローチャート
【図8】第2の実施例の設定の変更を許可しない処理のフローチャート
【図9】第3の実施例の構成ブロック図
【図10】第3の実施例での効果を示す図
【図11】第3の実施例のフローチャート
【図12】1台のマスター装置と複数のスレーブ装置を有する撮像システムの構成イメージ図
【図13】1台のマスター装置と複数のスレーブ装置を直列に接続する撮像システムの構成イメージ図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の第1の実施例の撮像システムの構成ブロック図である。
本発明の撮像システムは、同じ構成を持つレンズ装置A10とレンズ装置B11を有する。これらのレンズ装置は、単体で運用する単体運用モード(単体モード)、又は、レンズ装置を接続して互いに通信を行い光学部材の同期運用を行う3D同期運用モード(複数モード)、の何れかの運用モードで運用される。
【0015】
また、3D同期運用モードのときには、レンズ装置に含まれる光学部材は、それぞれの駆動状態がマスター(第2の駆動状態)又はスレーブ(第3の駆動状態)に設定されて駆動される。ここで、マスター駆動状態の光学部材を持つレンズ装置は、他のレンズ装置へ該光学部材の同期駆動を行うための操作指令を出し、スレーブ駆動状態の光学部材を持つレンズ装置は、他のレンズ装置からの該光学部材の操作指令に基づいて該光学部材を駆動する。なお、単体運用モードであるレンズ装置に対しては、全ての光学部材が、他のレンズ装置の光学部材と同期駆動を行わない単体駆動状態(第1の駆動状態)で駆動される。
【0016】
すなわち、表1に示すように、運用モードはレンズ装置ごとに単体運用モード又は3D同期運用モードのどちらかが設定され、レンズ装置に含まれる光学部材ごとに、単体駆動・マスター駆動・スレーブ駆動の何れかの駆動状態が設定される。
【表1】
【0017】
図1のブロック図の説明に戻る。
以下、光学部材がフォーカスレンズのときの実施例について説明する。
レンズ装置A10に対してフォーカス操作部材A12よりフォーカス操作指令が与えられ、レンズ装置B11に対してフォーカス操作部材B13よりフォーカス操作指令が与えられる。
レンズ装置A10、レンズ装置B11には、カメラ等の撮像装置A14、撮像装置B15がそれぞれ接続されている。
【0018】
次に、レンズ装置A10の内部構成について説明する。
レンズ装置A10は、光学部材であるフォーカスレンズ1002を有し、フォーカスレンズ1002はモータ1005により光軸方向へ進退駆動する。フォーカスレンズ1002の位置は、位置検出部1003により検出される。駆動制御部1004は、後述する駆動指令決定手段1012からの駆動指令と位置検出部1003からの位置信号からモータ1005の駆動量を算出し、駆動量に対応した駆動電流を前記モータ1005へ出力する。
【0019】
フォーカスレンズ1002、モータ1005、位置検出部1003、駆動制御部1004によって、駆動機構1001が構成されている。
運用モード設定手段1007(モード切替手段)は、レンズ装置A10の運用モードを単体運用モード又は3D同期運用モードに設定する手段であり、たとえばスイッチや、スイッチとディスプレイで構成されたユーザーインターフェース部で構成される。マスター・スレーブ設定手段1008(駆動状態設定手段)は、レンズ装置内の光学部材ごとに、マスター駆動かスレーブ駆動かの駆動状態を設定する手段であり、たとえばスイッチとディスプレイで構成されたユーザーインターフェース部で構成される。
【0020】
駆動状態判別手段1009は、各光学部材が単体駆動・マスター駆動・スレーブ駆動、の駆動状態のうち、どれに設定されているかを判別する手段である。運用モード設定手段1007で単体運用モードが設定された場合は、駆動状態判別手段1009は、全ての光学部材において単体駆動と判別する。運用モード設定手段1007で3D同期運用モードが設定された場合において、マスター・スレーブ設定手段1008によって光学部材(ここではフォーカスレンズ)がマスター駆動に設定されている場合はマスター駆動と判別し、スレーブ駆動に設定されている場合はスレーブ駆動と判別する。また、駆動状態判別手段1009は、運用モード設定手段1007の設定から、レンズ装置が、単体運用モードに設定されているか、又は、3D同期運用モードに設定されているかの判別も行う。
制御元情報出力部1014は、駆動状態に従って、どの制御指令に従って光学部材を駆動するかに関する制御元情報を決定し、駆動指令決定手段1012に出力する。制御元情報の決定方法については後述する。
【0021】
通信部1006を介して、レンズ装置A10は、フォーカス操作部材A12や、撮像装置A14、レンズ装置B11等の外部の機器と通信を行う。レンズ装置A10に実装されたフォーカス操作機構1010は、フォーカスを操作するための機構であり、たとえばフォーカスノブ等の構成を有する。AF機能制御部1011は、自動焦点調整機能(以後AF機能)によるフォーカスレンズ1002の操作指令を生成する。
【0022】
駆動指令決定手段1012は、制御元情報に基づいて、レンズ装置A10の外部またはレンズ装置A10の内部からの操作指令を、フォーカスレンズ1002を駆動するための駆動指令に変換する手段である。外部からの操作指令としては、フォーカス操作部材A12、撮像装置A14、レンズ装置B11、或いは、PCやその他のデマンドなどのコントローラ等、からの操作指令があり、駆動指令決定手段1012は通信部1006を介して操作指令を受け取る。内部からの操作指令としては、フォーカス操作機構1010からの操作指令、またAF機能制御部1011などのフォーカスレンズ1002を自動駆動させるレンズ装置内蔵の機能からの操作指令等がある。
【0023】
操作指令生成部1013は、3D同期運用モード時に、他のレンズ装置のフォーカスレンズを同期制御するための操作指令を生成して、操作指令を他のレンズ装置に出力する。操作指令の生成には、駆動制御部1004の持つフォーカスレンズの駆動指令の情報や、位置検出部1003で検出された現在のフォーカスレンズ1002の位置情報が利用される。
【0024】
ここで、運用モード及び駆動状態の実際の動きについて、3D同期運用モードである2台のレンズ装置の操作指令の流れを、図2を用いて説明する。なお、図2のレンズ装置は図1のレンズ装置と同じ構成を持つが、説明のため簡略化している。また、レンズ装置Y及びレンズ装置Zは中継ケーブルで接続されており、表1で示す駆動状態となっている。つまり、フォーカスについては、レンズ装置Yがマスター、レンズ装置Zがスレーブに設定され、ズームについては、レンズ装置Yがスレーブ、レンズ装置Zがマスターに設定されている。説明はフォーカス、ズームについて行うが、その他の光学部材についても同様である。
【0025】
まず、フォーカス操作指令は、フォーカス操作部材12から出力される。
レンズ装置Yにフォーカス操作指令が入力されると、通信部1006Yを経由して駆動指令決定手段1012Yに受け渡される。駆動指令決定手段1012Yでは、受け取った操作指令を元に駆動指令を決定し、フォーカス駆動機構1001Yへと受け渡す。
【0026】
フォーカス駆動機構1001Yでは、駆動指令から実際の駆動量の算出とフォーカスレンズの駆動が行われる。ここで、レンズ装置Yはフォーカスがマスター駆動状態のため、操作指令生成部1013Yにて他のレンズ装置を同期制御する操作指令を生成し、通信部1006Yに出力する。操作指令の生成には、フォーカス駆動機構1001Yからの駆動指令の情報やフォーカスレンズの位置情報が利用される。
【0027】
レンズ装置Yとレンズ装置Zは中継ケーブルにて同期運用を行っているので、操作指令生成部1013Yから出力された操作指令はレンズ装置Yの通信部1006Yから出力され、レンズ装置間の中継ケーブルを介してレンズ装置Zの通信部1006Zに入力される。レンズ装置Zにフォーカス操作指令が入力されると、通信部1006Zを経由して駆動指令決定手段1012Zに受け渡される。駆動指令決定手段1012Zでは、受け取った操作指令を元に駆動指令を決定し、フォーカス駆動機構1001Zへと受け渡す。フォーカス駆動機構1001Zでは、駆動指令から実際の駆動量の算出とフォーカスレンズの駆動が行われる。
【0028】
同様に、ズーム操作指令は、ズーム操作部材33から出力される。
レンズ装置Zにズーム操作指令が入力されると、通信部1006Zを経由して駆動指令決定手段3012Zに受け渡される。駆動指令決定手段3012Zでは、受け取った操作指令を元に駆動指令を決定し、ズーム駆動機構3001Zへと受け渡す。ズーム駆動機構3001Zでは、駆動指令から実際の駆動量の算出とズームレンズの駆動が行われる。ここで、レンズ装置Zはズームがマスター駆動状態のため、操作指令生成部3013Zにて他のレンズ装置を同期制御する操作指令を生成し、通信部1006Zに出力する。操作指令の生成には、ズーム駆動機構3001Zからの駆動指令の情報やズームレンズの位置情報が利用される。
【0029】
レンズ装置Yとレンズ装置Zは中継ケーブルにて同期運用を行っているので、操作指令生成部3013Zから出力された操作指令はレンズ装置Zの通信部1006Zから出力され、レンズ装置間の中継ケーブルを介してレンズ装置Yの通信部1006Yに入力される。レンズ装置Yにズーム操作指令が入力されると、通信部1006Yを経由して駆動指令決定手段3012Yに受け渡される。駆動指令決定手段3012Yでは、受け取った操作指令を元に駆動指令を決定し、ズーム駆動機構3001Yへと受け渡す。ズーム駆動機構3001Yでは、駆動指令から実際の駆動量の算出とズームレンズの駆動が行われる。
【0030】
次に、駆動指令決定手段1012における制御元情報の決定方法について説明する。本実施例では、制御元情報は、各制御元の操作指令の優先度テーブルである。駆動指令決定手段1012は、現在有効な各制御元の操作指令のうち、優先度テーブルの中で規定されている優先度に従い、優先度の高い操作指令を優先的に駆動指令として選択する。
【0031】
表2に、単体駆動、マスター駆動、スレーブ駆動における優先順位を示した優先度テーブルを示す。
【表2】
【0032】
単体駆動とマスター駆動における優先順位は、同じであり、他のレンズ装置からの操作指令の優先度を下げ、カメラやデマンド、AF機能からの操作によって駆動することができる。スレーブ駆動においては、他のレンズ装置からの操作指令に最高の優先度を与えることで、フォーカスがスレーブに設定されているレンズ装置側のカメラやデマンド、AF機能による操作に対し、優先的に他の(フォーカスがマスターに設定されている)レンズ装置からの操作指令で駆動することが可能となる。これにより、スレーブ駆動しているレンズ装置のフォーカスレンズは、マスター駆動しているレンズ装置のフォーカスレンズに同期して駆動することができる。
【0033】
図3はAF実行時において3D同期運用モードでの図1に示したフォーカスレンズ1002の動きを示した図である。位置pはフォーカスがマスター駆動に設定されているレンズ装置のフォーカスレンズ1002の位置であり、マスター駆動のレンズ装置は、他のレンズ装置に、フォーカスレンズが位置pへ駆動するように操作指令を出力する。撮像面qはフォーカスがマスター駆動に設定されているレンズ装置に接続されている撮像装置の撮像面であり、撮像面rはフォーカスがスレーブ駆動に設定されているレンズ装置に接続されている撮像装置の撮像面である。図3(a)はフォーカスがマスター駆動に設定されているレンズ装置でのフォーカスレンズの状態を示している。図3(b)は、フォーカスがスレーブ駆動に設定されているレンズ装置であって、AF機能からの操作指令の優先度が他のレンズ装置からの操作指令の優先度よりも高い場合(単体駆動(マスター駆動)と同じフォーカスに対する駆動指令の優先順位である場合)のフォーカスレンズの状態を示す。図3(c)は、本実施例のように、フォーカスがスレーブ駆動に設定されているレンズ装置で、AF機能からの操作指令の優先度を他のレンズ装置からの操作指令よりも低くした場合のフォーカスレンズの状態を示す。
【0034】
フォーカスがスレーブ駆動に設定されているレンズ装置においてAF機能からの操作指令の優先度が他のレンズ装置からの操作指令の優先度よりも高い場合、それぞれのレンズ装置のAF機能で検出された被写体が異なると、図3(b)で示すように、フォーカスがスレーブ駆動のレンズ装置のフォーカスレンズは位置pとは異なる位置に駆動する。そこで、当該レンズ自身のAF機能からの指令の優先度を他のレンズ装置からの操作指令の優先度よりも下げることで、図3(c)で示すように、フォーカスがスレーブ駆動に設定されているレンズ装置のフォーカスレンズも位置pに駆動することができる。
以上により、マスター駆動及びスレーブ駆動のフォーカスレンズの同期駆動を行うことができる。
【0035】
【表3】
表3に、AF機能でそれぞれのレンズ装置に接続されている撮像装置の撮像面にピント位置を追い込むことを可能とした優先度テーブルを示す。
【0036】
ここでの特徴として、「現在の指令位置からある範囲n内でのAF機能からの操作指令」の優先度は、「他のレンズ装置の停止指令」の優先度よりも高く設定している。範囲nについては後述する。また、操作指令とは、指令信号の指示値とレンズ装置の当該可動部の現在の位置との差が所定値より大きい場合の指令であり、停止指令とは、指令信号の指示値と現在位置との差分がゼロかまたはある所定の範囲内に収まる場合の指令のことである。
【0037】
この優先度テーブルを利用してAF機能でそれぞれのレンズ装置に接続されている撮像装置の撮像面にピント位置を追い込む方法を、図4を利用して説明する。フォーカスレンズ1002、位置p、フォーカスがマスターに設定されているレンズ装置が接続されている撮像装置の撮像面q、フォーカスがスレーブに設定されているレンズ装置が接続されている撮像装置の撮像面r、フォーカスがマスターに設定されているレンズ装置のフォーカスレンズの駆動位置の状態(a)は図3と共通である。一般に、レンズ装置や撮像装置の製造誤差等のばらつきによって、撮像面qと撮像面rの位置にずれがある場合があり、ここでは撮像面のずれmとして図中に記載する。範囲nは、フォーカスがスレーブに設定されているレンズ装置において、AF機能からの操作指令に付与される優先度が高くなるフォーカスレンズの駆動範囲である。この範囲nは、位置p(フォーカスがマスターのレンズ装置からのフォーカス操作指令の位置)を中心とするフォーカスがスレーブのレンズ装置のフォーカスレンズの駆動範囲であって、撮像面のずれmを吸収できる幅を持っている。たとえばnは、撮像面の最大ずれ量を算出した結果から求められる。AF機能は、この範囲n内でフォーカスする被写体を選択し、フォーカスレンズ1002を駆動する。
【0038】
図4(b)、(c)は共に、撮像面qと撮像面rとの間に撮像面のずれmが発生している状況下でのフォーカスがスレーブのレンズ装置のフォーカスレンズの状態を示す。図4(b)は、図3(c)と同様に、AF機能からの操作指令の優先度を他のレンズ装置からの操作指令よりも低くした場合のフォーカスレンズの状態である。ここでの優先度テーブルは表2で示すものである。図4(c)は、現在の指令位置からある範囲内でのAF機能からの操作指令の優先度を、他のレンズ装置の停止指令よりも高くした場合のフォーカスレンズの状態である。ここでの優先度テーブルは表3で示すものである。図4(b)では、各レンズ装置のフォーカスレンズ1002を同じ位置に駆動させることができるが、レンズ装置ごとの撮像面の位置のずれ等によって、ピントが若干ずれてしまう。これに対して、表3の優先度テーブルを使用することによって、図4(c)に示すように、AFの操作指令のうち、現在の指令位置(位置p)から所定の範囲n内へのAF機能によるフォーカス駆動に限り、他のレンズ装置の停止指令よりも優先度を高くすることで撮像面のずれによるピントのずれを補償することができる。
以上により、マスター・スレーブの同期駆動を損なうことなく、高精度にAFを行うことができる。
【0039】
次に、図1の構成において、フォーカスレンズ1002の駆動は図5に示した処理フローに従って処理されるものとする。
ステップS100で処理を開始し、ステップS101では、駆動状態判別手段1009により、3D同期運用モードかどうかを判別する。単体運用モードの場合はステップS102へ、3D同期運用モードの場合はステップS103へ移行する。ステップS102では、制御元情報出力部1014が制御元情報として単体駆動状態用の優先度テーブルを出力し、その情報に基づいて駆動指令決定手段1012が駆動指令を決定し、ステップS107へ移行する。
【0040】
一方、ステップS103では、駆動状態判別手段1009により、フォーカスがスレーブ駆動状態かどうかを判別する。マスター駆動状態の場合はステップS104へ、スレーブ駆動状態の場合はステップS106へ移行する。ステップS104では、制御元情報出力部1014が制御元情報としてマスター駆動状態用の優先度テーブルを出力し、その情報に基づいて駆動指令決定手段1012が駆動指令を決定し、ステップS105へ移行する。ステップS105では、操作指令生成部1013が、他のレンズ装置へ送る操作指令を生成し、出力する。その後、ステップS107へ移行する。
【0041】
ステップS106では、制御元情報出力部1014が制御元情報としてスレーブ駆動状態用の優先度テーブルを出力し、その情報に基づいて駆動指令決定手段1012が駆動指令を決定し、ステップS107へ移行する。ステップS107では、駆動機構1001は駆動指令に従ってフォーカスレンズ1002を駆動し、処理を終わる。
【0042】
以上、説明した様に、フォーカスがスレーブ駆動状態である場合は、優先度テーブルを切り替えて他のレンズ装置からの操作指令の優先度を上げる。これによって、他のレンズ装置以外からの操作指令によりスレーブ駆動状態側のフォーカスレンズ1002だけが駆動してしまい、2本のレンズ装置の動きが異なってしまうことを防ぐことができる。
上記実施例では優先度テーブルを二種類用いて実現させたが、不図示の優先度切り替え手段を設け、スレーブ駆動状態時において一部の制御元からの操作指令の優先度を他のレンズ装置よりも高くできるようにしてもよい。
【0043】
また、優先度テーブル1つに対して、スレーブ駆動状態と判断したら、特定の制御元からの操作指令を無効にするという方法を用いて同様の機能を実現させることもできる。例えば、表4に示す優先度テーブルのように、単体駆動・マスター駆動とスレーブ駆動で同等のものを利用している。そして、スレーブ駆動の場合には、カメラからの指令・デマンドからの操作指令・デマンドからの停止指令・通常のAFからの操作指令、すなわち、他のレンズ装置からの制御指令以外を無効にすることにより、基本的には同じ優先度テーブルを使用しながら、異なる優先順位での駆動指令に基づいてフォーカス駆動をしている。
【0044】
【表4】
【0045】
これによって、表4のスレーブ駆動の場合は、表3の優先度テーブルの上位3つが残る形となり、上記実施例と同等の機能を実現できる。このように設定することにより1つの優先度テーブルのみを有して所望の駆動指令の処理をすることができる。なお、表4に示したように、単体駆動・マスター駆動時にも、他のレンズ装置から駆動指令が優先順位のリストに入っているが、他のレンズ装置から駆動指令が入力されることはないため、他のレンズ装置からの駆動指令で駆動することはない。従って、単体駆動・マスター駆動時には、「他のレンズ:操作指令」と「他のレンズ:停止指令」を無効に設定するようにしても、所望の優先順位に従って駆動指令を処理することができる。
【0046】
さらに、制御元についての設定情報の変更手段を有する際、無効にした制御元についての設定情報の変更を許可しないようにしてもよい。制御元としてAF機能を例にとると、設定情報としては有効・無効の設定や駆動方法の設定などがあり、変更手段としてはスイッチ等がある。表4に示したように、スレーブ駆動においてAF機能を無効にした際はこれらの設定情報の変更を許可しないようにする。詳しくは実施例2で説明する。
【実施例2】
【0047】
図6は本発明の第2の実施例の構成ブロック図である。本実施例の撮像システムは、同じ構成をもつレンズ装置A20とレンズ装置B21を有し、カメラシステムとしての構成は第1の実施例と同じであり、図1と共通する構成要素には同符号を付す。
【0048】
本実施例の撮像システムは、第1の実施例のシステムの構成に対し、制御元情報出力部1014を有さないこと、フォーカス操作機構1010を有さないこと、AF機能の有効・無効や動作方法を設定するAF機能設定値設定手段2015を有することが異なる。AF機能設定値設定手段2015は、たとえばスイッチや、スイッチとディスプレイにより構成されたユーザーインターフェースで構成される。
【0049】
AF機能制御部2011は、AF機能設定値設定手段2015の設定によりAF機能が有効となりスレーブ駆動でない場合にのみ、位相差信号または映像信号またはその両方を用いて操作指令を生成する。駆動指令決定手段2012は、外部、または内部からの操作指令をレンズ装置内部の駆動指令に変換する。
【0050】
本実施例では、駆動指令決定手段2012における駆動指令の決定方法はレンズ装置単体で運用する従来のレンズ装置と同様であるため、説明を省略する。
以上、図6の構成において、AFの有効・無効設定は図7に示した処理フローに従って処理されるものとする。この処理フローのスタートは電源投入時、また駆動状態判別手段1009が駆動状態の変化を判別した際に行われる。
【0051】
ステップS200で処理を開始し、ステップS201へ進む。
ステップS201では、駆動状態判別手段1009により、3D同期運用モードかどうかを判別する。単体運用モードの場合はステップS203へ、3D同期運用モードの場合はステップS202へ移行する。ステップS202では、駆動状態判別手段1009により、フォーカスがスレーブ駆動状態かどうかを判別する。フォーカスがマスターの場合はステップS203へ、スレーブの場合はステップS204へ移行する。
【0052】
ステップS203では、従来と同様にAF機能を利用できるように、AF機能制御部2011がAF機能の有効・無効をAF機能制御部に設定されている設定値にし、処理を終わる。
ステップS204では、AF機能に設定されている設定値にかかわらず、AF機能制御部2011がAF機能を無効にする。
これによって、スレーブの場合はAF機能が無効となり、AF機能から駆動指令決定手段2012に操作指令が入力されることがなくなる。また、AF機能を無効にすることで、レンズ装置内部の消費電力の削減やCPUの負荷低減が見込まれる。
【0053】
また、図6の構成において、AF機能の設定変更は図8に示した処理フローに従って処理される。処理はステップS210で開始し、ステップS211へ進む。
【0054】
ステップS211では、AF機能設定値設定手段2015により、AF機能に関する設定が変更され、ステップS212へ移行する。ステップS212では、駆動状態判別手段1009により3D同期運用モードかどうかを判別する。単体運用モードの場合はステップS214へ、3D同期運用モードの場合はステップS213へ移行する。ステップS213では、駆動状態判別手段1009により、フォーカスにおいてスレーブかどうかを判別する。フォーカスがマスターの場合はステップS214へ、スレーブの場合はステップS215へ移行する。
【0055】
ステップS214では、AF機能設定値設定手段2015により設定された設定値をAF機能制御部2011に反映し、処理を終了する。ステップS215では、AF機能設定値設定手段2015により設定された設定値をAF機能制御部2011に反映せずに、処理を終了する。
なお、設定された設定値を反映しなかった旨をAF機能設定値設定手段2015に通知し、ユーザーに設定不可のメッセージを出力してもよい。
【0056】
これによって、フォーカスにおいてスレーブであるレンズ装置では、AFの有効・無効や動作方法の設定を変更しようとした場合でも、設定を反映させないようにすることができる。本実施例では、スレーブであるレンズ装置では、AFの有効・無効や動作方法の設定を変更しようとした場合でも、設定を反映させないようにした。しかし、スレーブのレンズ装置で設定値を変更しようとしたら、マスターのレンズ装置に設定変更に関する情報を通信し、マスターのレンズ装置で設定の変更を反映するようにしてもよい。すると、スレーブのレンズ装置は、設定の変更が反映されたマスターのレンズ装置の駆動に追従することになるため、3Dシステムとしての駆動に設定の変更が反映されることになる。フォーカスレンズを駆動させる機能としてAFを例に挙げたが、他にも駆動を自動で再生する自動再生機能などが挙げられる。
【0057】
本実施例では、フォーカスについてスレーブである場合に無効にする機能としてAF機能を例に挙げたが、他にも自動再生機能や、レンズ装置に実装されている不図示のフォーカス操作機能などが挙げられる。また、フォーカス操作部材A12との通信機能や撮像装置・不図示のPCとの通信機能の一部であるフォーカス操作指令通信機能などを無効にすることも考えられる。このように一部の通信機能を無効にすることにより、通信の負荷を減らすという効果も期待できる。
【実施例3】
【0058】
図9は本発明の第3の実施例の構成ブロック図である。本実施例の撮像システムは、同じ構成をもつレンズ装置A30とレンズ装置B31を有し、図1または図6と共通する構成要素には同符号を付す。
【0059】
ズーム操作部材32及び33は、それぞれレンズ装置A30及びレンズ装置B31にズーム操作指令を与える。ズームレンズの駆動範囲を限定することができるズームトラッキング機能の有効・無効やトラッキング範囲などのトラッキング情報を設定するトラッキングの設定値設定手段3015である。ズームレンズの駆動範囲を限定する方法については後述する。
光学部材であるズームレンズ3002である。ズームレンズ3002を光軸方向へ進退駆動するためのモータ3005である。ズームレンズ3002の位置を検出する位置検出部3003である。
【0060】
後述する駆動指令決定手段3012からの駆動指令と、位置検出部3003からの位置信号から、モータ3005の駆動量を算出し、駆動量に対応した駆動電流を前記モータ3005へ出力する駆動制御部3004である。さらに駆動制御部3004は、トラッキングの設定値設定手段3015からのトラッキング情報に従って、駆動範囲を制限させる機能も持つ。また、ズームレンズ3002、モータ3005、位置検出部3003、駆動制御部3004は、駆動機構3001を構成する。
【0061】
駆動指令決定手段3012は、外部、または内部からの操作指令を、レンズ装置内部の駆動指令に変換する。本実施例では、駆動指令決定手段3012における駆動指令の決定方法は単体で運用する従来のレンズ装置と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
操作指令生成部3013は、他のレンズ装置のズームレンズを同期制御するための操作指令を生成して、操作指令を他のレンズ装置に出力する。操作指令生成部3013の操作指令の生成には、駆動制御部3004の持つズームレンズ3002の駆動指令の情報や、位置検出部3003で検出された現在のズームレンズ3002の位置情報が利用される。
【0063】
次に、図10を用いて、本実施例での効果を説明する。
位置Pは、ズームにおいてマスターに設定されているレンズ装置のズームレンズ3002の位置であり、マスターに設定されているレンズ装置は、他のレンズ装置に、ズームレンズが位置Pへ駆動するように操作指令を出力する。図10中、S11、S12はそれぞれ、ズームがマスターに設定されているレンズ装置のズームレンズの至近側・望遠側の端である至近端・望遠端を示す。S21、S22も同様に、それぞれ、ズームがスレーブのレンズ装置におけるズームレンズの至近端、望遠端を示す。T11、T12はそれぞれ、ズームがマスターのレンズ装置に設定されている、至近側、望遠側のトラッキング端である。ズームレンズ3002は、トラッキング機能が有効となっているとき、T11よりも至近側、T12よりも望遠側には駆動できない。T21、T22も同様に、ズームがスレーブのレンズ装置に設定されている、至近側、望遠側のトラッキング端である。
【0064】
図10(A)は、ズームがマスターのレンズ装置でのズームレンズの駆動可能範囲R1を示し、トラッキング端T11、T12が設定されており、トラッキング機能が有効となっている。図10(B)は、従来技術のように、ズームがスレーブに設定されているレンズ装置でのズームレンズの駆動可能範囲R2を示し、トラッキング端T21、T22が設定されており、トラッキング機能が有効となっている。図10(C)は本実施例のように、トラッキング端T21、T22が設定されており、トラッキング機能を無効とした場合の、ズームがスレーブのレンズ装置でのズームレンズの駆動可能範囲R3を示す。
【0065】
図10(B)では、従来技術のように、トラッキング端が設定されて有効となっているので、ズームにおいてスレーブに設定されているレンズ装置のズームレンズ3002をT21よりも至近側に駆動することができない。よって、位置Pまで駆動できず、トラッキング端T21の位置で停止する。そこで、図10(C)で示すように、スレーブと判断した場合、トラッキング機能を無効にすることで、ズームレンズ3002を位置Pまで駆動することができる。
以上により、マスター・スレーブの同期駆動を行うことができる。
【0066】
次に、図9の構成において、トラッキング機能を駆動指令に適応させるかどうかの処理は、図11に示した処理フローに従って処理されるものとする。
処理は、ステップS300から開始され、ステップS308へ進む。ステップS308では、駆動指令決定手段3012が駆動指令を決定し、ステップS101へ移行する。ステップS101では、駆動状態判別手段1009により、3D同期運用モードかどうかを判別する。単体運用モードの場合はステップS302へ、3D同期運用モードの場合はステップS103へ移行する。ステップS302では、駆動制御部3004がトラッキングの設定値設定手段3015から設定されたトラッキング情報に基づいて、駆動指令をトラッキング範囲に限定し、ステップS107へ移行する。
【0067】
一方、ステップS103では、駆動状態判別手段1009により、フォーカスにおいてスレーブに設定されているかどうかを判別する。フォーカスがマスターに設定されている場合はステップS304へ、スレーブの場合はステップS306へ移行する。ステップS304では、駆動制御部3004がトラッキングの設定値設定手段3015から設定されたトラッキング情報に基づいて、駆動指令をトラッキング範囲に限定し、ステップS105へ移行する。ステップS105では、操作指令生成部3013が、他のレンズ装置へ送る操作指令を生成し出力する。その後、ステップS107へ移行する。
【0068】
ステップS306では、トラッキングの設定値設定手段3015の機能を無効とし、駆動制御部3004は駆動指令を変更することなくステップS107へ移行する。
ステップS107では、駆動機構3001は駆動指令に従ってズームレンズを駆動し、処理を終わる。
【0069】
以上により、スレーブのレンズ装置に設定されているズームトラッキング機能によって、マスターに設定されている他のレンズ装置からの操作指令に対して駆動範囲を制限してしまい、2本のレンズ装置の動きが異なってしまうことを防ぐことができる。
また、第2の実施例の場合と同様に、スレーブに設定されているときには、トラッキングについての設定情報の変更を許可しないようにしてもよい。
【0070】
トラッキングのような駆動の範囲を制限する機能の例として、所定の明るさを維持するために望遠側のズーム位置にリミットを設けるF−Hold機能や、駆動端の位置を調整するための端調整機能などが挙げられる。また、最高速度制限や最低速度制限などの駆動速度を制限する機能、動き出し特性や止まり際特性などの駆動のゲインを制限する機能に対しても同様の効果を得ることができる。
以上、第1〜第3の実施例によって本発明を例示して説明してきたが、ここで本発明の実施形態の派生形を示す。
【0071】
第1〜第3の実施例では光学部材がフォーカスレンズまたはズームレンズの例で説明したが、実施例によってフォーカスレンズ・ズームレンズを入れ替えたり、光路にIE(エクステンダー)レンズを挿脱したり、マクロレンズ、光学部材がアイリス機構、IS機構(防振機構、防振機能)、輻輳角調節機構に変えても同じ効果を得ることができる。フォーカスレンズを自動駆動させる機能としてAFを例に挙げたが、他にも自動再生機能などが挙げられる。ズームレンズを自動駆動させる機能としては、画角補正機能や自動再生機能(記憶したズーム位置に移動するショット機能や、記憶したズームの移動を再現するプリセット機能)などが挙げられる。アイリス機構を自動駆動させる機能としては、アイリス補正、クローズ検出などが挙げられる。ここで、アイリス補正とクローズ検出について簡単に説明する。
【0072】
エクステンダーレンズの挿入による光量落ちを補正するため、暗くなった分の明るさを補償するようにアイリスを駆動させる機能がアイリス補正機能である。また、アイリス補正機能が有効で、かつエクステンダーレンズが挿入されていると、アイリスのクローズに相当する指令が入力されたときに、クローズ相当の指令に対して明るさを補正するための位置にアイリスが駆動し、アイリスがクローズしないという問題がある。そこで、アイリスに対してクローズ相当の指令が入力されたら、アイリス補正機能による補正を行わずにアイリスをクローズさせる機能がクローズ検出機能である。
【0073】
駆動状態判別手段1009は、運用モード設定手段1007からの設定以外に、通信部1006がレンズ装置B11と接続されているかどうかを利用して単体運用モードか3D同期運用モードかを判別してもよい。同様に駆動状態判別手段1009は、3D同期運用モードと判別した際、接続されている光学部材の操作部材や他の光学部材の駆動状態、またレンズ装置B11の駆動状態などからスレーブ駆動状態・マスター駆動状態を自動的に判断してもよい。
【0074】
また、今回は複数台での運用として2本のレンズ装置による3D同期撮影を例に挙げたが、2本以上のレンズ装置による多点撮像システム上での運用も考えられる。1つの方法として、図12で示すように、1台のマスターに設定されているレンズ装置(レンズ装置M)と複数のスレーブに設定されているレンズ装置(レンズ装置S)がそれぞれ接続された多点撮影システムがある。この方法によって、全てのスレーブのレンズ装置は1台のマスターのレンズ装置に追従し、全てのレンズ装置において同期撮影が可能である。
【0075】
また、別の方法として、図13で示すような、1台のマスターに設定されたレンズ装置(レンズ装置M)を先頭に、複数台のレンズ装置(レンズ装置R、レンズ装置S)が直列に接続された多点撮像システムも考えられる。この方法の場合、単体運用モード、マスター駆動状態、スレーブ駆動状態に加えて、他のレンズ装置からの操作指令を元に駆動し、さらに他のレンズ装置へ操作指令を出す、同期中継運用モードがあっても良い。図13において、同期中継運用モードに設定されたレンズ装置(レンズ装置R)では、制御元情報出力部はスレーブ駆動状態と同様の処理を行い、操作指令生成部は受信した他のレンズ装置からの操作指令をそのまま出力する。直列に接続された末端のレンズ装置はスレーブに設定されたレンズ装置(レンズ装置S)となる。これによって、複数台のレンズ装置がマスターのレンズ装置を先頭に、直列に連なった多点撮像システムでも本発明の上記した実施例の派生形の本発明のレンズ装置が適応可能である。
【0076】
なお、実施例ではレンズ装置を対象として説明したが、レンズ装置を内蔵した撮像システムにおいても同様の効果を発揮することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
10、11、20、21、30、31 レンズ装置
1002 フォーカスレンズ
1004 フォーカス駆動制御部
1006 通信部
1007 運用モード設定手段
1008 マスター・スレーブ設定手段
1009 駆動状態判別手段
1012 フォーカス駆動指令決定手段
1013 フォーカス操作指令生成部
1014 制御元情報出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置及びそれを含む撮像システムに関し、特に立体撮影等、複数台の撮像システムの運用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、立体撮影を行う際に、単体で利用可能な撮像システムを複数台利用し、立体撮影を行う立体撮影システムが知られている。一方、立体撮影では、左右の画像の微妙なずれが発生するだけで視聴者に違和感を覚えさせるだけでなく、不快感や疲労感を与えてしまうこともある。そのため、このような立体撮影システムでは、複数台の撮像システム間の対応する駆動可能な光学部材の位置を常に等しくする必要がある。従来のシステムにおいては、複数台の撮像システム間の対応する駆動可能な光学部材の位置を常に等しくする方法として、以下のような技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、2つのズームレンズのうち一方をマスター側、他方をスレーブ側とし、スレーブ側のレンズをマスター側のレンズの移動に追従させて駆動する駆動装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では複数台の撮像装置の設定を合わせることができる撮像システムが開示されている。この提案によると、他の撮像装置が設定を変更するタイミングに同期して設定を変更するので、複数の撮像装置の稼働中にも撮像装置の設定を適切に変更できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−127400号公報
【特許文献2】特開2008−154073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、スレーブ側のレンズにマスター側のレンズに追従させるもの以外のコントロール、特に撮像システム内に搭載されている自動駆動機能からコントロールが入った場合については特に記載されていない。さらに、スレーブ側の撮像システムに設定されている機能によって追従ができなくなることについても考慮されていない。
【0007】
実際、スレーブ側の撮像システムで駆動範囲や最高速度を制限させる機能が有効になっていた場合、マスター側のレンズの動きに追従しきれなくなってしまう。
【0008】
また、上述の特許文献2に開示された従来技術で撮像システムの機能に関する設定情報を同期させると、マスター側の撮像システムとスレーブ側の撮像システムが同じ設定になってしまう。すなわち、各々に最適な設定を行うには別々に設定する必要があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、単体でも運用可能な撮像システムにおいて、立体撮影システムとして運用する際に、マスター側の撮像システム、スレーブ側の撮像システム双方で最適な設定に切り替えることを可能にした撮像システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、複数の制御元からの制御指令に従って駆動可能な光学部材を有するレンズ装置であって、該レンズ装置は、レンズ装置が単体で使用される単体モードとレンズ装置が複数で使用される複数モードとを切り換えるモード切替手段と、外部の機器と通信する通信手段と、単体モードにおいては全ての該光学部材を第1の駆動状態に設定し、複数モードにおいては、該光学部材ごとに、第2の駆動状態又は第3の駆動状態に設定する、駆動状態設定手段と、光学部材ごとに設定されている駆動状態を判別する駆動状態判別手段と、各光学部材の駆動状態ごとに、複数の制御元からの制御指令のうちどの制御指令に従って該光学部材を駆動するかを決定するための制御元情報を出力する制御元情報出力部と、前記制御元情報出力部により決定された制御元情報に基づいて光学部材の駆動を制御する指令を決定する指令決定手段と、を有し、第2の駆動状態においては、対応する光学部材に対する制御指令を該通信手段を介して他のレンズ装置に出力し、第3の駆動状態においては、制御元情報出力部は第1の駆動状態及び第2の駆動状態における制御元情報とは異なる制御元情報を出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単体でも運用可能な撮像システムにおいて、立体撮影システムとして運用する際に、マスター側の撮像システム、スレーブ側の撮像システム双方で最適な設定に切り替えることを可能にした撮像システムを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施例の構成ブロック図
【図2】レンズ装置内の構成と指令の流れを示す図
【図3】優先度テーブル1を用いた時のAF機能の働きを示す図
【図4】優先度テーブル2を用いた時のAF機能の働きを示す図
【図5】第1の実施例のフローチャート
【図6】第2の実施例の構成ブロック図
【図7】第2の実施例の機能を無効にする処理のフローチャート
【図8】第2の実施例の設定の変更を許可しない処理のフローチャート
【図9】第3の実施例の構成ブロック図
【図10】第3の実施例での効果を示す図
【図11】第3の実施例のフローチャート
【図12】1台のマスター装置と複数のスレーブ装置を有する撮像システムの構成イメージ図
【図13】1台のマスター装置と複数のスレーブ装置を直列に接続する撮像システムの構成イメージ図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の第1の実施例の撮像システムの構成ブロック図である。
本発明の撮像システムは、同じ構成を持つレンズ装置A10とレンズ装置B11を有する。これらのレンズ装置は、単体で運用する単体運用モード(単体モード)、又は、レンズ装置を接続して互いに通信を行い光学部材の同期運用を行う3D同期運用モード(複数モード)、の何れかの運用モードで運用される。
【0015】
また、3D同期運用モードのときには、レンズ装置に含まれる光学部材は、それぞれの駆動状態がマスター(第2の駆動状態)又はスレーブ(第3の駆動状態)に設定されて駆動される。ここで、マスター駆動状態の光学部材を持つレンズ装置は、他のレンズ装置へ該光学部材の同期駆動を行うための操作指令を出し、スレーブ駆動状態の光学部材を持つレンズ装置は、他のレンズ装置からの該光学部材の操作指令に基づいて該光学部材を駆動する。なお、単体運用モードであるレンズ装置に対しては、全ての光学部材が、他のレンズ装置の光学部材と同期駆動を行わない単体駆動状態(第1の駆動状態)で駆動される。
【0016】
すなわち、表1に示すように、運用モードはレンズ装置ごとに単体運用モード又は3D同期運用モードのどちらかが設定され、レンズ装置に含まれる光学部材ごとに、単体駆動・マスター駆動・スレーブ駆動の何れかの駆動状態が設定される。
【表1】
【0017】
図1のブロック図の説明に戻る。
以下、光学部材がフォーカスレンズのときの実施例について説明する。
レンズ装置A10に対してフォーカス操作部材A12よりフォーカス操作指令が与えられ、レンズ装置B11に対してフォーカス操作部材B13よりフォーカス操作指令が与えられる。
レンズ装置A10、レンズ装置B11には、カメラ等の撮像装置A14、撮像装置B15がそれぞれ接続されている。
【0018】
次に、レンズ装置A10の内部構成について説明する。
レンズ装置A10は、光学部材であるフォーカスレンズ1002を有し、フォーカスレンズ1002はモータ1005により光軸方向へ進退駆動する。フォーカスレンズ1002の位置は、位置検出部1003により検出される。駆動制御部1004は、後述する駆動指令決定手段1012からの駆動指令と位置検出部1003からの位置信号からモータ1005の駆動量を算出し、駆動量に対応した駆動電流を前記モータ1005へ出力する。
【0019】
フォーカスレンズ1002、モータ1005、位置検出部1003、駆動制御部1004によって、駆動機構1001が構成されている。
運用モード設定手段1007(モード切替手段)は、レンズ装置A10の運用モードを単体運用モード又は3D同期運用モードに設定する手段であり、たとえばスイッチや、スイッチとディスプレイで構成されたユーザーインターフェース部で構成される。マスター・スレーブ設定手段1008(駆動状態設定手段)は、レンズ装置内の光学部材ごとに、マスター駆動かスレーブ駆動かの駆動状態を設定する手段であり、たとえばスイッチとディスプレイで構成されたユーザーインターフェース部で構成される。
【0020】
駆動状態判別手段1009は、各光学部材が単体駆動・マスター駆動・スレーブ駆動、の駆動状態のうち、どれに設定されているかを判別する手段である。運用モード設定手段1007で単体運用モードが設定された場合は、駆動状態判別手段1009は、全ての光学部材において単体駆動と判別する。運用モード設定手段1007で3D同期運用モードが設定された場合において、マスター・スレーブ設定手段1008によって光学部材(ここではフォーカスレンズ)がマスター駆動に設定されている場合はマスター駆動と判別し、スレーブ駆動に設定されている場合はスレーブ駆動と判別する。また、駆動状態判別手段1009は、運用モード設定手段1007の設定から、レンズ装置が、単体運用モードに設定されているか、又は、3D同期運用モードに設定されているかの判別も行う。
制御元情報出力部1014は、駆動状態に従って、どの制御指令に従って光学部材を駆動するかに関する制御元情報を決定し、駆動指令決定手段1012に出力する。制御元情報の決定方法については後述する。
【0021】
通信部1006を介して、レンズ装置A10は、フォーカス操作部材A12や、撮像装置A14、レンズ装置B11等の外部の機器と通信を行う。レンズ装置A10に実装されたフォーカス操作機構1010は、フォーカスを操作するための機構であり、たとえばフォーカスノブ等の構成を有する。AF機能制御部1011は、自動焦点調整機能(以後AF機能)によるフォーカスレンズ1002の操作指令を生成する。
【0022】
駆動指令決定手段1012は、制御元情報に基づいて、レンズ装置A10の外部またはレンズ装置A10の内部からの操作指令を、フォーカスレンズ1002を駆動するための駆動指令に変換する手段である。外部からの操作指令としては、フォーカス操作部材A12、撮像装置A14、レンズ装置B11、或いは、PCやその他のデマンドなどのコントローラ等、からの操作指令があり、駆動指令決定手段1012は通信部1006を介して操作指令を受け取る。内部からの操作指令としては、フォーカス操作機構1010からの操作指令、またAF機能制御部1011などのフォーカスレンズ1002を自動駆動させるレンズ装置内蔵の機能からの操作指令等がある。
【0023】
操作指令生成部1013は、3D同期運用モード時に、他のレンズ装置のフォーカスレンズを同期制御するための操作指令を生成して、操作指令を他のレンズ装置に出力する。操作指令の生成には、駆動制御部1004の持つフォーカスレンズの駆動指令の情報や、位置検出部1003で検出された現在のフォーカスレンズ1002の位置情報が利用される。
【0024】
ここで、運用モード及び駆動状態の実際の動きについて、3D同期運用モードである2台のレンズ装置の操作指令の流れを、図2を用いて説明する。なお、図2のレンズ装置は図1のレンズ装置と同じ構成を持つが、説明のため簡略化している。また、レンズ装置Y及びレンズ装置Zは中継ケーブルで接続されており、表1で示す駆動状態となっている。つまり、フォーカスについては、レンズ装置Yがマスター、レンズ装置Zがスレーブに設定され、ズームについては、レンズ装置Yがスレーブ、レンズ装置Zがマスターに設定されている。説明はフォーカス、ズームについて行うが、その他の光学部材についても同様である。
【0025】
まず、フォーカス操作指令は、フォーカス操作部材12から出力される。
レンズ装置Yにフォーカス操作指令が入力されると、通信部1006Yを経由して駆動指令決定手段1012Yに受け渡される。駆動指令決定手段1012Yでは、受け取った操作指令を元に駆動指令を決定し、フォーカス駆動機構1001Yへと受け渡す。
【0026】
フォーカス駆動機構1001Yでは、駆動指令から実際の駆動量の算出とフォーカスレンズの駆動が行われる。ここで、レンズ装置Yはフォーカスがマスター駆動状態のため、操作指令生成部1013Yにて他のレンズ装置を同期制御する操作指令を生成し、通信部1006Yに出力する。操作指令の生成には、フォーカス駆動機構1001Yからの駆動指令の情報やフォーカスレンズの位置情報が利用される。
【0027】
レンズ装置Yとレンズ装置Zは中継ケーブルにて同期運用を行っているので、操作指令生成部1013Yから出力された操作指令はレンズ装置Yの通信部1006Yから出力され、レンズ装置間の中継ケーブルを介してレンズ装置Zの通信部1006Zに入力される。レンズ装置Zにフォーカス操作指令が入力されると、通信部1006Zを経由して駆動指令決定手段1012Zに受け渡される。駆動指令決定手段1012Zでは、受け取った操作指令を元に駆動指令を決定し、フォーカス駆動機構1001Zへと受け渡す。フォーカス駆動機構1001Zでは、駆動指令から実際の駆動量の算出とフォーカスレンズの駆動が行われる。
【0028】
同様に、ズーム操作指令は、ズーム操作部材33から出力される。
レンズ装置Zにズーム操作指令が入力されると、通信部1006Zを経由して駆動指令決定手段3012Zに受け渡される。駆動指令決定手段3012Zでは、受け取った操作指令を元に駆動指令を決定し、ズーム駆動機構3001Zへと受け渡す。ズーム駆動機構3001Zでは、駆動指令から実際の駆動量の算出とズームレンズの駆動が行われる。ここで、レンズ装置Zはズームがマスター駆動状態のため、操作指令生成部3013Zにて他のレンズ装置を同期制御する操作指令を生成し、通信部1006Zに出力する。操作指令の生成には、ズーム駆動機構3001Zからの駆動指令の情報やズームレンズの位置情報が利用される。
【0029】
レンズ装置Yとレンズ装置Zは中継ケーブルにて同期運用を行っているので、操作指令生成部3013Zから出力された操作指令はレンズ装置Zの通信部1006Zから出力され、レンズ装置間の中継ケーブルを介してレンズ装置Yの通信部1006Yに入力される。レンズ装置Yにズーム操作指令が入力されると、通信部1006Yを経由して駆動指令決定手段3012Yに受け渡される。駆動指令決定手段3012Yでは、受け取った操作指令を元に駆動指令を決定し、ズーム駆動機構3001Yへと受け渡す。ズーム駆動機構3001Yでは、駆動指令から実際の駆動量の算出とズームレンズの駆動が行われる。
【0030】
次に、駆動指令決定手段1012における制御元情報の決定方法について説明する。本実施例では、制御元情報は、各制御元の操作指令の優先度テーブルである。駆動指令決定手段1012は、現在有効な各制御元の操作指令のうち、優先度テーブルの中で規定されている優先度に従い、優先度の高い操作指令を優先的に駆動指令として選択する。
【0031】
表2に、単体駆動、マスター駆動、スレーブ駆動における優先順位を示した優先度テーブルを示す。
【表2】
【0032】
単体駆動とマスター駆動における優先順位は、同じであり、他のレンズ装置からの操作指令の優先度を下げ、カメラやデマンド、AF機能からの操作によって駆動することができる。スレーブ駆動においては、他のレンズ装置からの操作指令に最高の優先度を与えることで、フォーカスがスレーブに設定されているレンズ装置側のカメラやデマンド、AF機能による操作に対し、優先的に他の(フォーカスがマスターに設定されている)レンズ装置からの操作指令で駆動することが可能となる。これにより、スレーブ駆動しているレンズ装置のフォーカスレンズは、マスター駆動しているレンズ装置のフォーカスレンズに同期して駆動することができる。
【0033】
図3はAF実行時において3D同期運用モードでの図1に示したフォーカスレンズ1002の動きを示した図である。位置pはフォーカスがマスター駆動に設定されているレンズ装置のフォーカスレンズ1002の位置であり、マスター駆動のレンズ装置は、他のレンズ装置に、フォーカスレンズが位置pへ駆動するように操作指令を出力する。撮像面qはフォーカスがマスター駆動に設定されているレンズ装置に接続されている撮像装置の撮像面であり、撮像面rはフォーカスがスレーブ駆動に設定されているレンズ装置に接続されている撮像装置の撮像面である。図3(a)はフォーカスがマスター駆動に設定されているレンズ装置でのフォーカスレンズの状態を示している。図3(b)は、フォーカスがスレーブ駆動に設定されているレンズ装置であって、AF機能からの操作指令の優先度が他のレンズ装置からの操作指令の優先度よりも高い場合(単体駆動(マスター駆動)と同じフォーカスに対する駆動指令の優先順位である場合)のフォーカスレンズの状態を示す。図3(c)は、本実施例のように、フォーカスがスレーブ駆動に設定されているレンズ装置で、AF機能からの操作指令の優先度を他のレンズ装置からの操作指令よりも低くした場合のフォーカスレンズの状態を示す。
【0034】
フォーカスがスレーブ駆動に設定されているレンズ装置においてAF機能からの操作指令の優先度が他のレンズ装置からの操作指令の優先度よりも高い場合、それぞれのレンズ装置のAF機能で検出された被写体が異なると、図3(b)で示すように、フォーカスがスレーブ駆動のレンズ装置のフォーカスレンズは位置pとは異なる位置に駆動する。そこで、当該レンズ自身のAF機能からの指令の優先度を他のレンズ装置からの操作指令の優先度よりも下げることで、図3(c)で示すように、フォーカスがスレーブ駆動に設定されているレンズ装置のフォーカスレンズも位置pに駆動することができる。
以上により、マスター駆動及びスレーブ駆動のフォーカスレンズの同期駆動を行うことができる。
【0035】
【表3】
表3に、AF機能でそれぞれのレンズ装置に接続されている撮像装置の撮像面にピント位置を追い込むことを可能とした優先度テーブルを示す。
【0036】
ここでの特徴として、「現在の指令位置からある範囲n内でのAF機能からの操作指令」の優先度は、「他のレンズ装置の停止指令」の優先度よりも高く設定している。範囲nについては後述する。また、操作指令とは、指令信号の指示値とレンズ装置の当該可動部の現在の位置との差が所定値より大きい場合の指令であり、停止指令とは、指令信号の指示値と現在位置との差分がゼロかまたはある所定の範囲内に収まる場合の指令のことである。
【0037】
この優先度テーブルを利用してAF機能でそれぞれのレンズ装置に接続されている撮像装置の撮像面にピント位置を追い込む方法を、図4を利用して説明する。フォーカスレンズ1002、位置p、フォーカスがマスターに設定されているレンズ装置が接続されている撮像装置の撮像面q、フォーカスがスレーブに設定されているレンズ装置が接続されている撮像装置の撮像面r、フォーカスがマスターに設定されているレンズ装置のフォーカスレンズの駆動位置の状態(a)は図3と共通である。一般に、レンズ装置や撮像装置の製造誤差等のばらつきによって、撮像面qと撮像面rの位置にずれがある場合があり、ここでは撮像面のずれmとして図中に記載する。範囲nは、フォーカスがスレーブに設定されているレンズ装置において、AF機能からの操作指令に付与される優先度が高くなるフォーカスレンズの駆動範囲である。この範囲nは、位置p(フォーカスがマスターのレンズ装置からのフォーカス操作指令の位置)を中心とするフォーカスがスレーブのレンズ装置のフォーカスレンズの駆動範囲であって、撮像面のずれmを吸収できる幅を持っている。たとえばnは、撮像面の最大ずれ量を算出した結果から求められる。AF機能は、この範囲n内でフォーカスする被写体を選択し、フォーカスレンズ1002を駆動する。
【0038】
図4(b)、(c)は共に、撮像面qと撮像面rとの間に撮像面のずれmが発生している状況下でのフォーカスがスレーブのレンズ装置のフォーカスレンズの状態を示す。図4(b)は、図3(c)と同様に、AF機能からの操作指令の優先度を他のレンズ装置からの操作指令よりも低くした場合のフォーカスレンズの状態である。ここでの優先度テーブルは表2で示すものである。図4(c)は、現在の指令位置からある範囲内でのAF機能からの操作指令の優先度を、他のレンズ装置の停止指令よりも高くした場合のフォーカスレンズの状態である。ここでの優先度テーブルは表3で示すものである。図4(b)では、各レンズ装置のフォーカスレンズ1002を同じ位置に駆動させることができるが、レンズ装置ごとの撮像面の位置のずれ等によって、ピントが若干ずれてしまう。これに対して、表3の優先度テーブルを使用することによって、図4(c)に示すように、AFの操作指令のうち、現在の指令位置(位置p)から所定の範囲n内へのAF機能によるフォーカス駆動に限り、他のレンズ装置の停止指令よりも優先度を高くすることで撮像面のずれによるピントのずれを補償することができる。
以上により、マスター・スレーブの同期駆動を損なうことなく、高精度にAFを行うことができる。
【0039】
次に、図1の構成において、フォーカスレンズ1002の駆動は図5に示した処理フローに従って処理されるものとする。
ステップS100で処理を開始し、ステップS101では、駆動状態判別手段1009により、3D同期運用モードかどうかを判別する。単体運用モードの場合はステップS102へ、3D同期運用モードの場合はステップS103へ移行する。ステップS102では、制御元情報出力部1014が制御元情報として単体駆動状態用の優先度テーブルを出力し、その情報に基づいて駆動指令決定手段1012が駆動指令を決定し、ステップS107へ移行する。
【0040】
一方、ステップS103では、駆動状態判別手段1009により、フォーカスがスレーブ駆動状態かどうかを判別する。マスター駆動状態の場合はステップS104へ、スレーブ駆動状態の場合はステップS106へ移行する。ステップS104では、制御元情報出力部1014が制御元情報としてマスター駆動状態用の優先度テーブルを出力し、その情報に基づいて駆動指令決定手段1012が駆動指令を決定し、ステップS105へ移行する。ステップS105では、操作指令生成部1013が、他のレンズ装置へ送る操作指令を生成し、出力する。その後、ステップS107へ移行する。
【0041】
ステップS106では、制御元情報出力部1014が制御元情報としてスレーブ駆動状態用の優先度テーブルを出力し、その情報に基づいて駆動指令決定手段1012が駆動指令を決定し、ステップS107へ移行する。ステップS107では、駆動機構1001は駆動指令に従ってフォーカスレンズ1002を駆動し、処理を終わる。
【0042】
以上、説明した様に、フォーカスがスレーブ駆動状態である場合は、優先度テーブルを切り替えて他のレンズ装置からの操作指令の優先度を上げる。これによって、他のレンズ装置以外からの操作指令によりスレーブ駆動状態側のフォーカスレンズ1002だけが駆動してしまい、2本のレンズ装置の動きが異なってしまうことを防ぐことができる。
上記実施例では優先度テーブルを二種類用いて実現させたが、不図示の優先度切り替え手段を設け、スレーブ駆動状態時において一部の制御元からの操作指令の優先度を他のレンズ装置よりも高くできるようにしてもよい。
【0043】
また、優先度テーブル1つに対して、スレーブ駆動状態と判断したら、特定の制御元からの操作指令を無効にするという方法を用いて同様の機能を実現させることもできる。例えば、表4に示す優先度テーブルのように、単体駆動・マスター駆動とスレーブ駆動で同等のものを利用している。そして、スレーブ駆動の場合には、カメラからの指令・デマンドからの操作指令・デマンドからの停止指令・通常のAFからの操作指令、すなわち、他のレンズ装置からの制御指令以外を無効にすることにより、基本的には同じ優先度テーブルを使用しながら、異なる優先順位での駆動指令に基づいてフォーカス駆動をしている。
【0044】
【表4】
【0045】
これによって、表4のスレーブ駆動の場合は、表3の優先度テーブルの上位3つが残る形となり、上記実施例と同等の機能を実現できる。このように設定することにより1つの優先度テーブルのみを有して所望の駆動指令の処理をすることができる。なお、表4に示したように、単体駆動・マスター駆動時にも、他のレンズ装置から駆動指令が優先順位のリストに入っているが、他のレンズ装置から駆動指令が入力されることはないため、他のレンズ装置からの駆動指令で駆動することはない。従って、単体駆動・マスター駆動時には、「他のレンズ:操作指令」と「他のレンズ:停止指令」を無効に設定するようにしても、所望の優先順位に従って駆動指令を処理することができる。
【0046】
さらに、制御元についての設定情報の変更手段を有する際、無効にした制御元についての設定情報の変更を許可しないようにしてもよい。制御元としてAF機能を例にとると、設定情報としては有効・無効の設定や駆動方法の設定などがあり、変更手段としてはスイッチ等がある。表4に示したように、スレーブ駆動においてAF機能を無効にした際はこれらの設定情報の変更を許可しないようにする。詳しくは実施例2で説明する。
【実施例2】
【0047】
図6は本発明の第2の実施例の構成ブロック図である。本実施例の撮像システムは、同じ構成をもつレンズ装置A20とレンズ装置B21を有し、カメラシステムとしての構成は第1の実施例と同じであり、図1と共通する構成要素には同符号を付す。
【0048】
本実施例の撮像システムは、第1の実施例のシステムの構成に対し、制御元情報出力部1014を有さないこと、フォーカス操作機構1010を有さないこと、AF機能の有効・無効や動作方法を設定するAF機能設定値設定手段2015を有することが異なる。AF機能設定値設定手段2015は、たとえばスイッチや、スイッチとディスプレイにより構成されたユーザーインターフェースで構成される。
【0049】
AF機能制御部2011は、AF機能設定値設定手段2015の設定によりAF機能が有効となりスレーブ駆動でない場合にのみ、位相差信号または映像信号またはその両方を用いて操作指令を生成する。駆動指令決定手段2012は、外部、または内部からの操作指令をレンズ装置内部の駆動指令に変換する。
【0050】
本実施例では、駆動指令決定手段2012における駆動指令の決定方法はレンズ装置単体で運用する従来のレンズ装置と同様であるため、説明を省略する。
以上、図6の構成において、AFの有効・無効設定は図7に示した処理フローに従って処理されるものとする。この処理フローのスタートは電源投入時、また駆動状態判別手段1009が駆動状態の変化を判別した際に行われる。
【0051】
ステップS200で処理を開始し、ステップS201へ進む。
ステップS201では、駆動状態判別手段1009により、3D同期運用モードかどうかを判別する。単体運用モードの場合はステップS203へ、3D同期運用モードの場合はステップS202へ移行する。ステップS202では、駆動状態判別手段1009により、フォーカスがスレーブ駆動状態かどうかを判別する。フォーカスがマスターの場合はステップS203へ、スレーブの場合はステップS204へ移行する。
【0052】
ステップS203では、従来と同様にAF機能を利用できるように、AF機能制御部2011がAF機能の有効・無効をAF機能制御部に設定されている設定値にし、処理を終わる。
ステップS204では、AF機能に設定されている設定値にかかわらず、AF機能制御部2011がAF機能を無効にする。
これによって、スレーブの場合はAF機能が無効となり、AF機能から駆動指令決定手段2012に操作指令が入力されることがなくなる。また、AF機能を無効にすることで、レンズ装置内部の消費電力の削減やCPUの負荷低減が見込まれる。
【0053】
また、図6の構成において、AF機能の設定変更は図8に示した処理フローに従って処理される。処理はステップS210で開始し、ステップS211へ進む。
【0054】
ステップS211では、AF機能設定値設定手段2015により、AF機能に関する設定が変更され、ステップS212へ移行する。ステップS212では、駆動状態判別手段1009により3D同期運用モードかどうかを判別する。単体運用モードの場合はステップS214へ、3D同期運用モードの場合はステップS213へ移行する。ステップS213では、駆動状態判別手段1009により、フォーカスにおいてスレーブかどうかを判別する。フォーカスがマスターの場合はステップS214へ、スレーブの場合はステップS215へ移行する。
【0055】
ステップS214では、AF機能設定値設定手段2015により設定された設定値をAF機能制御部2011に反映し、処理を終了する。ステップS215では、AF機能設定値設定手段2015により設定された設定値をAF機能制御部2011に反映せずに、処理を終了する。
なお、設定された設定値を反映しなかった旨をAF機能設定値設定手段2015に通知し、ユーザーに設定不可のメッセージを出力してもよい。
【0056】
これによって、フォーカスにおいてスレーブであるレンズ装置では、AFの有効・無効や動作方法の設定を変更しようとした場合でも、設定を反映させないようにすることができる。本実施例では、スレーブであるレンズ装置では、AFの有効・無効や動作方法の設定を変更しようとした場合でも、設定を反映させないようにした。しかし、スレーブのレンズ装置で設定値を変更しようとしたら、マスターのレンズ装置に設定変更に関する情報を通信し、マスターのレンズ装置で設定の変更を反映するようにしてもよい。すると、スレーブのレンズ装置は、設定の変更が反映されたマスターのレンズ装置の駆動に追従することになるため、3Dシステムとしての駆動に設定の変更が反映されることになる。フォーカスレンズを駆動させる機能としてAFを例に挙げたが、他にも駆動を自動で再生する自動再生機能などが挙げられる。
【0057】
本実施例では、フォーカスについてスレーブである場合に無効にする機能としてAF機能を例に挙げたが、他にも自動再生機能や、レンズ装置に実装されている不図示のフォーカス操作機能などが挙げられる。また、フォーカス操作部材A12との通信機能や撮像装置・不図示のPCとの通信機能の一部であるフォーカス操作指令通信機能などを無効にすることも考えられる。このように一部の通信機能を無効にすることにより、通信の負荷を減らすという効果も期待できる。
【実施例3】
【0058】
図9は本発明の第3の実施例の構成ブロック図である。本実施例の撮像システムは、同じ構成をもつレンズ装置A30とレンズ装置B31を有し、図1または図6と共通する構成要素には同符号を付す。
【0059】
ズーム操作部材32及び33は、それぞれレンズ装置A30及びレンズ装置B31にズーム操作指令を与える。ズームレンズの駆動範囲を限定することができるズームトラッキング機能の有効・無効やトラッキング範囲などのトラッキング情報を設定するトラッキングの設定値設定手段3015である。ズームレンズの駆動範囲を限定する方法については後述する。
光学部材であるズームレンズ3002である。ズームレンズ3002を光軸方向へ進退駆動するためのモータ3005である。ズームレンズ3002の位置を検出する位置検出部3003である。
【0060】
後述する駆動指令決定手段3012からの駆動指令と、位置検出部3003からの位置信号から、モータ3005の駆動量を算出し、駆動量に対応した駆動電流を前記モータ3005へ出力する駆動制御部3004である。さらに駆動制御部3004は、トラッキングの設定値設定手段3015からのトラッキング情報に従って、駆動範囲を制限させる機能も持つ。また、ズームレンズ3002、モータ3005、位置検出部3003、駆動制御部3004は、駆動機構3001を構成する。
【0061】
駆動指令決定手段3012は、外部、または内部からの操作指令を、レンズ装置内部の駆動指令に変換する。本実施例では、駆動指令決定手段3012における駆動指令の決定方法は単体で運用する従来のレンズ装置と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
操作指令生成部3013は、他のレンズ装置のズームレンズを同期制御するための操作指令を生成して、操作指令を他のレンズ装置に出力する。操作指令生成部3013の操作指令の生成には、駆動制御部3004の持つズームレンズ3002の駆動指令の情報や、位置検出部3003で検出された現在のズームレンズ3002の位置情報が利用される。
【0063】
次に、図10を用いて、本実施例での効果を説明する。
位置Pは、ズームにおいてマスターに設定されているレンズ装置のズームレンズ3002の位置であり、マスターに設定されているレンズ装置は、他のレンズ装置に、ズームレンズが位置Pへ駆動するように操作指令を出力する。図10中、S11、S12はそれぞれ、ズームがマスターに設定されているレンズ装置のズームレンズの至近側・望遠側の端である至近端・望遠端を示す。S21、S22も同様に、それぞれ、ズームがスレーブのレンズ装置におけるズームレンズの至近端、望遠端を示す。T11、T12はそれぞれ、ズームがマスターのレンズ装置に設定されている、至近側、望遠側のトラッキング端である。ズームレンズ3002は、トラッキング機能が有効となっているとき、T11よりも至近側、T12よりも望遠側には駆動できない。T21、T22も同様に、ズームがスレーブのレンズ装置に設定されている、至近側、望遠側のトラッキング端である。
【0064】
図10(A)は、ズームがマスターのレンズ装置でのズームレンズの駆動可能範囲R1を示し、トラッキング端T11、T12が設定されており、トラッキング機能が有効となっている。図10(B)は、従来技術のように、ズームがスレーブに設定されているレンズ装置でのズームレンズの駆動可能範囲R2を示し、トラッキング端T21、T22が設定されており、トラッキング機能が有効となっている。図10(C)は本実施例のように、トラッキング端T21、T22が設定されており、トラッキング機能を無効とした場合の、ズームがスレーブのレンズ装置でのズームレンズの駆動可能範囲R3を示す。
【0065】
図10(B)では、従来技術のように、トラッキング端が設定されて有効となっているので、ズームにおいてスレーブに設定されているレンズ装置のズームレンズ3002をT21よりも至近側に駆動することができない。よって、位置Pまで駆動できず、トラッキング端T21の位置で停止する。そこで、図10(C)で示すように、スレーブと判断した場合、トラッキング機能を無効にすることで、ズームレンズ3002を位置Pまで駆動することができる。
以上により、マスター・スレーブの同期駆動を行うことができる。
【0066】
次に、図9の構成において、トラッキング機能を駆動指令に適応させるかどうかの処理は、図11に示した処理フローに従って処理されるものとする。
処理は、ステップS300から開始され、ステップS308へ進む。ステップS308では、駆動指令決定手段3012が駆動指令を決定し、ステップS101へ移行する。ステップS101では、駆動状態判別手段1009により、3D同期運用モードかどうかを判別する。単体運用モードの場合はステップS302へ、3D同期運用モードの場合はステップS103へ移行する。ステップS302では、駆動制御部3004がトラッキングの設定値設定手段3015から設定されたトラッキング情報に基づいて、駆動指令をトラッキング範囲に限定し、ステップS107へ移行する。
【0067】
一方、ステップS103では、駆動状態判別手段1009により、フォーカスにおいてスレーブに設定されているかどうかを判別する。フォーカスがマスターに設定されている場合はステップS304へ、スレーブの場合はステップS306へ移行する。ステップS304では、駆動制御部3004がトラッキングの設定値設定手段3015から設定されたトラッキング情報に基づいて、駆動指令をトラッキング範囲に限定し、ステップS105へ移行する。ステップS105では、操作指令生成部3013が、他のレンズ装置へ送る操作指令を生成し出力する。その後、ステップS107へ移行する。
【0068】
ステップS306では、トラッキングの設定値設定手段3015の機能を無効とし、駆動制御部3004は駆動指令を変更することなくステップS107へ移行する。
ステップS107では、駆動機構3001は駆動指令に従ってズームレンズを駆動し、処理を終わる。
【0069】
以上により、スレーブのレンズ装置に設定されているズームトラッキング機能によって、マスターに設定されている他のレンズ装置からの操作指令に対して駆動範囲を制限してしまい、2本のレンズ装置の動きが異なってしまうことを防ぐことができる。
また、第2の実施例の場合と同様に、スレーブに設定されているときには、トラッキングについての設定情報の変更を許可しないようにしてもよい。
【0070】
トラッキングのような駆動の範囲を制限する機能の例として、所定の明るさを維持するために望遠側のズーム位置にリミットを設けるF−Hold機能や、駆動端の位置を調整するための端調整機能などが挙げられる。また、最高速度制限や最低速度制限などの駆動速度を制限する機能、動き出し特性や止まり際特性などの駆動のゲインを制限する機能に対しても同様の効果を得ることができる。
以上、第1〜第3の実施例によって本発明を例示して説明してきたが、ここで本発明の実施形態の派生形を示す。
【0071】
第1〜第3の実施例では光学部材がフォーカスレンズまたはズームレンズの例で説明したが、実施例によってフォーカスレンズ・ズームレンズを入れ替えたり、光路にIE(エクステンダー)レンズを挿脱したり、マクロレンズ、光学部材がアイリス機構、IS機構(防振機構、防振機能)、輻輳角調節機構に変えても同じ効果を得ることができる。フォーカスレンズを自動駆動させる機能としてAFを例に挙げたが、他にも自動再生機能などが挙げられる。ズームレンズを自動駆動させる機能としては、画角補正機能や自動再生機能(記憶したズーム位置に移動するショット機能や、記憶したズームの移動を再現するプリセット機能)などが挙げられる。アイリス機構を自動駆動させる機能としては、アイリス補正、クローズ検出などが挙げられる。ここで、アイリス補正とクローズ検出について簡単に説明する。
【0072】
エクステンダーレンズの挿入による光量落ちを補正するため、暗くなった分の明るさを補償するようにアイリスを駆動させる機能がアイリス補正機能である。また、アイリス補正機能が有効で、かつエクステンダーレンズが挿入されていると、アイリスのクローズに相当する指令が入力されたときに、クローズ相当の指令に対して明るさを補正するための位置にアイリスが駆動し、アイリスがクローズしないという問題がある。そこで、アイリスに対してクローズ相当の指令が入力されたら、アイリス補正機能による補正を行わずにアイリスをクローズさせる機能がクローズ検出機能である。
【0073】
駆動状態判別手段1009は、運用モード設定手段1007からの設定以外に、通信部1006がレンズ装置B11と接続されているかどうかを利用して単体運用モードか3D同期運用モードかを判別してもよい。同様に駆動状態判別手段1009は、3D同期運用モードと判別した際、接続されている光学部材の操作部材や他の光学部材の駆動状態、またレンズ装置B11の駆動状態などからスレーブ駆動状態・マスター駆動状態を自動的に判断してもよい。
【0074】
また、今回は複数台での運用として2本のレンズ装置による3D同期撮影を例に挙げたが、2本以上のレンズ装置による多点撮像システム上での運用も考えられる。1つの方法として、図12で示すように、1台のマスターに設定されているレンズ装置(レンズ装置M)と複数のスレーブに設定されているレンズ装置(レンズ装置S)がそれぞれ接続された多点撮影システムがある。この方法によって、全てのスレーブのレンズ装置は1台のマスターのレンズ装置に追従し、全てのレンズ装置において同期撮影が可能である。
【0075】
また、別の方法として、図13で示すような、1台のマスターに設定されたレンズ装置(レンズ装置M)を先頭に、複数台のレンズ装置(レンズ装置R、レンズ装置S)が直列に接続された多点撮像システムも考えられる。この方法の場合、単体運用モード、マスター駆動状態、スレーブ駆動状態に加えて、他のレンズ装置からの操作指令を元に駆動し、さらに他のレンズ装置へ操作指令を出す、同期中継運用モードがあっても良い。図13において、同期中継運用モードに設定されたレンズ装置(レンズ装置R)では、制御元情報出力部はスレーブ駆動状態と同様の処理を行い、操作指令生成部は受信した他のレンズ装置からの操作指令をそのまま出力する。直列に接続された末端のレンズ装置はスレーブに設定されたレンズ装置(レンズ装置S)となる。これによって、複数台のレンズ装置がマスターのレンズ装置を先頭に、直列に連なった多点撮像システムでも本発明の上記した実施例の派生形の本発明のレンズ装置が適応可能である。
【0076】
なお、実施例ではレンズ装置を対象として説明したが、レンズ装置を内蔵した撮像システムにおいても同様の効果を発揮することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
10、11、20、21、30、31 レンズ装置
1002 フォーカスレンズ
1004 フォーカス駆動制御部
1006 通信部
1007 運用モード設定手段
1008 マスター・スレーブ設定手段
1009 駆動状態判別手段
1012 フォーカス駆動指令決定手段
1013 フォーカス操作指令生成部
1014 制御元情報出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御元からの制御指令に従って駆動可能な光学部材を有するレンズ装置であって、該レンズ装置は、
レンズ装置が単体で使用される単体モードとレンズ装置が複数で使用される複数モードとを切り換える、モード切替手段と、
外部の機器と通信する通信手段と、
単体モードにおいては、全ての該光学部材を第1の駆動状態に設定し、複数モードにおいては該光学部材ごとに、第2の駆動状態又は第3の駆動状態に設定する、駆動状態設定手段と、
該光学部材ごとに設定されている駆動状態を判別する駆動状態判別手段と、
各光学部材の駆動状態ごとに、複数の制御元からの制御指令のうちどの制御指令に従って該光学部材を駆動するかを決定するための制御元情報を出力する制御元情報出力部と、
該制御元情報出力部により決定された制御元情報に基づいて光学部材の駆動を制御する指令を決定する指令決定手段と、
を有し、
第2の駆動状態においては、対応する光学部材に対する制御指令を該通信手段を介して他のレンズ装置に出力し、
第3の駆動状態においては、制御元情報出力部は第1の駆動状態及び第2の駆動状態における制御元情報とは異なる制御元情報を出力する、
ことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記第3の駆動状態であるとき、前記制御元情報出力部は、前記第2の駆動状態である他のレンズ装置が持つ制御元からの制御指令の優先度を、他の制御元からの指令の優先度よりも上げる、ことを特徴とする、請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記第3の駆動状態の前記制御元情報において、他のレンズ装置からの制御指令以外は無効である、ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記第3の駆動状態の前記制御元情報において、前記光学部材の特定の制御元からの制御指令は無効である、ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記複数の制御元のうち一つ以上の制御元に関する設定情報を変更する設定変更手段を有する前記レンズ装置において、
前記第3の駆動状態であるときは、無効にした制御元に関して、前記設定変更手段による設定情報の変更を許可しない、
ことを特徴とする、請求項3または4に記載のレンズ装置。
【請求項6】
複数の制御元からの制御指令に従って駆動可能な光学部材を有するレンズ装置であって、該レンズ装置は、
該レンズ装置が単体で運用される第1の駆動状態と、該レンズ装置が複数で運用され、かつ、他のレンズ装置へ該光学部材の制御指令を出力する第2の駆動状態と、該ンズ装置が複数で運用され、かつ、該第2の駆動状態である他のレンズ装置からの制御指令を元に該光学部材を駆動する第3の駆動状態と、を判別する駆動状態判別手段と、
第3の駆動状態であるときに、特定の制御元の機能を無効にする手段と、
を有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項7】
前記特定の制御元の機能は、ショット機能、プリセット機能、画角補正機能、自動焦点調整機能、防振機能、アイリス補正機能、クローズ検出機能、レンズ装置に実装されている操作機構、レンズ装置の外部からレンズ装置内の光学部材を操作するコントローラ、のうち何れか1つ以上であることを特徴とする、請求項6に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記レンズ装置は、特定の制御元ついての設定情報を変更する設定変更手段を有し、
前記第3の駆動状態であるときは、無効にした制御元に関して、該設定変更手段による設定情報の変更を許可しない、
ことを特徴とする、請求項6または7の何れかに記載のレンズ装置。
【請求項9】
複数の制御元からの制御指令に従って駆動可能な光学部材を有し、該光学部材の駆動を制限する機能を有するレンズ装置であって、該レンズ装置は、
該レンズ装置が単体で運用される第1の駆動状態と、該レンズ装置が複数で運用され、かつ、他のレンズ装置へ該光学部材の制御指令を出力する第2の駆動状態と、該ンズ装置が複数で運用され、かつ、該第2の駆動状態である他のレンズ装置からの制御指令を元に該光学部材を駆動する第3の駆動状態と、を判別する駆動状態判別手段と、
該第3の駆動状態であるときに、該光学部材の駆動を制限する機能を無効にする手段と、
を有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項10】
前記光学部材の駆動を制限する手段は、駆動範囲を制限する手段、駆動速度を制限する手段、または、駆動のゲインを制限する手段である、ことを特徴とする請求項9に記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記レンズ装置は、前記駆動を制限する手段についての設定情報を変更する設定変更手段を有し、
前記第3の駆動状態であるときは、該設定変更手段による前記設定情報の変更を許可しない、
ことを特徴とする請求項9または10の何れかに記載のレンズ装置。
【請求項12】
前記光学部材は、画角を変更するズームレンズ、フォーカスを調節するフォーカスレンズ、防振機構、アイリス、光路に対して挿脱するエクステンダーレンズ、マクロレンズ、である、ことを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載のレンズ装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のレンズ装置を含む撮像システム。
【請求項1】
複数の制御元からの制御指令に従って駆動可能な光学部材を有するレンズ装置であって、該レンズ装置は、
レンズ装置が単体で使用される単体モードとレンズ装置が複数で使用される複数モードとを切り換える、モード切替手段と、
外部の機器と通信する通信手段と、
単体モードにおいては、全ての該光学部材を第1の駆動状態に設定し、複数モードにおいては該光学部材ごとに、第2の駆動状態又は第3の駆動状態に設定する、駆動状態設定手段と、
該光学部材ごとに設定されている駆動状態を判別する駆動状態判別手段と、
各光学部材の駆動状態ごとに、複数の制御元からの制御指令のうちどの制御指令に従って該光学部材を駆動するかを決定するための制御元情報を出力する制御元情報出力部と、
該制御元情報出力部により決定された制御元情報に基づいて光学部材の駆動を制御する指令を決定する指令決定手段と、
を有し、
第2の駆動状態においては、対応する光学部材に対する制御指令を該通信手段を介して他のレンズ装置に出力し、
第3の駆動状態においては、制御元情報出力部は第1の駆動状態及び第2の駆動状態における制御元情報とは異なる制御元情報を出力する、
ことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記第3の駆動状態であるとき、前記制御元情報出力部は、前記第2の駆動状態である他のレンズ装置が持つ制御元からの制御指令の優先度を、他の制御元からの指令の優先度よりも上げる、ことを特徴とする、請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記第3の駆動状態の前記制御元情報において、他のレンズ装置からの制御指令以外は無効である、ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記第3の駆動状態の前記制御元情報において、前記光学部材の特定の制御元からの制御指令は無効である、ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記複数の制御元のうち一つ以上の制御元に関する設定情報を変更する設定変更手段を有する前記レンズ装置において、
前記第3の駆動状態であるときは、無効にした制御元に関して、前記設定変更手段による設定情報の変更を許可しない、
ことを特徴とする、請求項3または4に記載のレンズ装置。
【請求項6】
複数の制御元からの制御指令に従って駆動可能な光学部材を有するレンズ装置であって、該レンズ装置は、
該レンズ装置が単体で運用される第1の駆動状態と、該レンズ装置が複数で運用され、かつ、他のレンズ装置へ該光学部材の制御指令を出力する第2の駆動状態と、該ンズ装置が複数で運用され、かつ、該第2の駆動状態である他のレンズ装置からの制御指令を元に該光学部材を駆動する第3の駆動状態と、を判別する駆動状態判別手段と、
第3の駆動状態であるときに、特定の制御元の機能を無効にする手段と、
を有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項7】
前記特定の制御元の機能は、ショット機能、プリセット機能、画角補正機能、自動焦点調整機能、防振機能、アイリス補正機能、クローズ検出機能、レンズ装置に実装されている操作機構、レンズ装置の外部からレンズ装置内の光学部材を操作するコントローラ、のうち何れか1つ以上であることを特徴とする、請求項6に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記レンズ装置は、特定の制御元ついての設定情報を変更する設定変更手段を有し、
前記第3の駆動状態であるときは、無効にした制御元に関して、該設定変更手段による設定情報の変更を許可しない、
ことを特徴とする、請求項6または7の何れかに記載のレンズ装置。
【請求項9】
複数の制御元からの制御指令に従って駆動可能な光学部材を有し、該光学部材の駆動を制限する機能を有するレンズ装置であって、該レンズ装置は、
該レンズ装置が単体で運用される第1の駆動状態と、該レンズ装置が複数で運用され、かつ、他のレンズ装置へ該光学部材の制御指令を出力する第2の駆動状態と、該ンズ装置が複数で運用され、かつ、該第2の駆動状態である他のレンズ装置からの制御指令を元に該光学部材を駆動する第3の駆動状態と、を判別する駆動状態判別手段と、
該第3の駆動状態であるときに、該光学部材の駆動を制限する機能を無効にする手段と、
を有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項10】
前記光学部材の駆動を制限する手段は、駆動範囲を制限する手段、駆動速度を制限する手段、または、駆動のゲインを制限する手段である、ことを特徴とする請求項9に記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記レンズ装置は、前記駆動を制限する手段についての設定情報を変更する設定変更手段を有し、
前記第3の駆動状態であるときは、該設定変更手段による前記設定情報の変更を許可しない、
ことを特徴とする請求項9または10の何れかに記載のレンズ装置。
【請求項12】
前記光学部材は、画角を変更するズームレンズ、フォーカスを調節するフォーカスレンズ、防振機構、アイリス、光路に対して挿脱するエクステンダーレンズ、マクロレンズ、である、ことを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載のレンズ装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のレンズ装置を含む撮像システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−213039(P2012−213039A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77651(P2011−77651)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]