説明

レーザはんだ付け装置

【課題】正確に且つ短時間で、表面実装部品をプリント基板上の所望の位置に接合することができるレーザはんだ付け装置を提供する。
【解決手段】本レーザはんだ付け装置は、設置台12を移動させる基板制御装置4、表面実装部品を搬送する搬送装置3、レーザヘッド16及び17を移動させる駆動制御部、レーザヘッド16及び17からの出力を制御する出力制御部を備える。基板制御装置4は、プリント基板1上の所定の搭載位置を基準位置に合わせる機能を、搬送装置3は、表面実装部品を基準位置まで搬送する機能を備えている。そして、出力制御部は、表面実装部品の各接合箇所に対してレーザヘッド16及び17からレーザ光を同時に出力させるとともに、レーザヘッド16及び17から出力されるレーザ光の出力を、はんだの突沸又は飛散を防止するように出力時間と出力量とを制御し、所定の勾配で上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント基板に表面実装部品を搭載するためのレーザはんだ付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、プリント基板に表面実装部品(SMD)を接合させるレーザはんだ付け装置の従来技術が開示されている。具体的に、特許文献1に記載のものでは、以下の手順によって表面実装部品のはんだ付けを行っている。
【0003】
先ず、吸着ヘッド部によって表面実装部品を把持し、プリント基板の上方まで表面実装部品を搬送する。次に、カメラ画像に基づいて表面実装部品の位置を検出し、吸着ヘッド部を微小移動させて表面実装部品の位置調整を行う。表面実装部品の位置が決定したら、吸着ヘッド部を下降させて表面実装部品をプリント基板上に配置する。そして、吸着ヘッド部によって表面実装部品をプリント基板上に押し付けた状態でレーザ光を照射し、所望箇所のはんだを溶融させて表面実装部品をプリント基板に接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−21998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のものでは、表面実装部品の搬送や位置調整、レーザ光照射時の固定を、全て吸着ヘッド部を用いて行っている。このため、表面実装部品の接合に必要な工程を一つずつ順番に実施しなければならず、作業性が悪いといった問題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載のものでは、1つの表面実装部品について全ての接合工程が完了しなければ、吸着ヘッド部をその表面実装部品から離すことができない。例えば、表面実装部品に2つの端子が備えられている場合、一方の端子の接合が完了した際に装着ヘッド部を表面実装部品から離してしまうと、はんだの凝固に伴い、他方の端子の接合を行う前に表面実装部品に傾きが生じてしまう。このため、双方の端子の接合が完了するまでは装着ヘッド部を表面実装部品から離すことができず、かかる観点からも作業性を向上させることは困難であった。
【0007】
特に、近年では、電子回路の高集積化に伴い、搭載される表面実装部品も小型化及び軽量化が進んでいる。このため、表面実装部品を外力で固定しないままはんだ付けが行われると、表面実装部品が一方の電極側で立ち上がったり(チップ立ち、マンハッタン現象)、表面実装部品が本来の搭載位置から大きく飛ばされたり(チップ飛び)して適切な導通状態が確保できなくなり、不良実装が発生することがあった。このような実装不良は、表面実装部品両端の電極部分においてはんだの溶融及び凝固のタイミングが僅かにずれ、はんだの表面張力にアンバランスが生じたり、はんだが突沸したりすることが主な原因とされている。はんだ付けの熱源としてレーザを採用した場合、一般的なリフロー方式の場合と比較すると接合箇所の加熱が急激に行われるため、上記はんだ表面張力のアンバランスやはんだの突沸が発生し易く、実装不良が多発してしまう。
【0008】
従来のレーザはんだ付け装置では、表面実装部品を所定の搭載位置に運搬及び配置するロボットヘッドの動作により、このような極小SMDにおける実装不良を回避していた。即ち、従来のレーザはんだ付け装置では、上記ロボットヘッドに対し、表面実装部品をプリント基板上に配置した後も、レーザの照射及びはんだの凝固が完了するまでは、表面実装部品をプリント基板側に押し付けた状態を保持するルーチンを採用していた。
【0009】
しかし、このような接合方法では、上記ロボットヘッドは、はんだが凝固して表面実装部品の接合が完了するまで、本来の役割である次の表面実装部品を搬送するプロセスに移行することができない。これは、レーザはんだ付け装置の性能課題であるタクトタイム(実装に要する表面実装部品1個当たりの時間)の短縮においては、不利になる。
【0010】
加えて、はんだ付けの熱源としてレーザを採用した場合、リフロー方式の場合よりも短時間ではんだの溶融及び凝固が可能であるといった利点がある反面、はんだの突沸が生じ易く、はんだ片が周囲に飛散し易いといった解決すべき課題もある。即ち、はんだ付けの熱源としてレーザを採用すると、他の接合箇所や配線上、或いは実装済みの電子部品に、突沸によるはんだ片が飛散して電気的短絡を引き起こし、実装不良が発生する恐れがあった。
【0011】
また、従来のレーザはんだ付け装置では、一般に、表面実装部品を吸着するためのノズルとレーザ光の出力部とを一体化して、上記ロボットヘッドを構成していた。即ち、ロボットヘッドは、表面実装部品の搬送のためにテープフィーダーからプリント基板上の搭載位置まで移動し、その表面実装部品の接合が完了した後に、次の表面実装部品を取りにテープフィーダーの位置まで戻るといった動作を繰り返し行っていた。しかし、このようなレーザはんだ付け装置では、レーザ発振器から上記出力部までの光伝送手段として光ファイバが採用されていると、ロボットヘッドを高速に動かすことができず、タクトタイムの短縮が困難になるといった問題があった。即ち、上記構成のレーザはんだ付け装置では、タクトタイム短縮のためにロボットヘッドを高速で動かすと、光ファイバーが高速で繰り返し湾曲され、光ファイバーが破損してしまう恐れがあった。
【0012】
なお、上記以外にも、表面実装部品搭載済みのプリント基板がセットされたテーブルを接合位置まで移動させてはんだ付けを行うレーザはんだ付け装置も提案されている。しかし、このようなレーザはんだ付け装置では、リードインタイプの電子部品を予めプリント基板に挿入しておき、この電子部品が下に配置されるようにプリント基板をテーブルにセットして、テーブルを移動させるため、電子部品をプリント基板に配置してからはんだ付けを完了させるまでの一連の動作に時間が掛かり、タクトタイムを短縮させることはできなかった。
【0013】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、正確に且つ短時間で、表面実装部品をプリント基板上の所望の位置に接合することができるレーザはんだ付け装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係るレーザはんだ付け装置は、プリント基板上の所定の搭載位置に表面実装部品を搭載するためのレーザはんだ付け装置であって、レーザ光を出力する第1光出力部及び第2光出力部と、第1光出力部及び第2光出力部からのレーザ光の出力を制御する出力制御部と、プリント基板が設置される設置台を移動させ、プリント基板上の搭載位置を所定の基準位置に合わせて配置する基板制御装置と、表面実装部品を所定の供給位置から基準位置まで搬送し、プリント基板上に表面実装部品を載せる搬送装置と、第1光出力部及び第2光出力部を移動させ、第1光出力部及び第2出力部から出力されるレーザ光の照射位置を、基準位置に配置された表面実装部品の端子の接合箇所に合わせる駆動装置と、を備え、出力制御部は、表面実装部品の接合箇所からなる第1及び第2のはんだ付け部分に対して第1光出力部及び第2光出力部からレーザ光を同時に出力させるとともに、第1光出力部及び第2光出力部から出力されるレーザ光の出力を、はんだの突沸又は飛散を防止するように出力時間と出力量とを制御し、所定の勾配で上昇させるものである。
【0015】
また、この発明に係るレーザはんだ付け装置は、プリント基板上の所定の搭載位置に表面実装部品を搭載するためのレーザはんだ付け装置であって、レーザ光を出力する第1光出力部及び第2光出力部と、第1光出力部及び第2光出力部からのレーザ光の出力を制御する出力制御部と、プリント基板が設置される設置台を移動させ、プリント基板上の搭載位置を所定の基準位置に合わせて配置する基板制御装置と、表面実装部品を所定の供給位置から基準位置まで搬送し、プリント基板上に表面実装部品を載せる搬送装置と、第1光出力部及び第2光出力部を移動させ、第1光出力部及び第2出力部から出力されるレーザ光の照射位置を、基準位置に配置された表面実装部品の端子の接合箇所に合わせる駆動装置と、を備え、基板制御装置によるプリント基板の移動制御、搬送装置による表面実装部品の搬送制御、駆動装置による第1光出力部及び第2光出力部の移動制御は、それぞれ独立して且つ同時に行うことができるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係るレーザはんだ付け装置であれば、正確に且つ短時間で、表面実装部品をプリント基板上の所望の位置に接合することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1におけるレーザはんだ付け装置の概略を示す上面図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるレーザはんだ付け装置の概略を示す正面図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるレーザはんだ付け装置の概略を示す側面図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるレーザはんだ付け装置の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態1におけるレーザはんだ付け装置の要部拡大図である。
【図6】レーザ装置による位置調整機能を説明するための図である。
【図7】レーザ装置による位置調整機能を説明するための図である。
【図8】レーザ装置の出力特性を説明するための図である。
【図9】この発明の実施の形態1におけるレーザはんだ付け装置の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0019】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるレーザはんだ付け装置の概略を示す上面図、図2はその正面図、図3はその側面図である。また、図4はこの発明の実施の形態1におけるレーザはんだ付け装置の構成を示すブロック図、図5はこの発明の実施の形態1におけるレーザはんだ付け装置の要部拡大図である。
【0020】
本レーザはんだ付け装置は、プリント基板1上の所望の位置(所定の搭載位置)に表面実装部品(SMD)2を搭載するためのものである。表面実装部品2には、基本的に複数の端子が備えられている。本実施の形態では、表面実装部品2に一対の端子2a及び2bが設けられている場合を例に、具体的な説明を行う。
【0021】
本レーザはんだ付け装置は、表面実装部品2を搬送する搬送装置3、プリント基板1の位置制御を行う基板制御装置4、表面実装部品2をプリント基板1にはんだ付けするためのレーザ装置5により、その要部が構成されている。
【0022】
搬送装置3は、表面実装部品2をテープフィーダー6から所定の基準位置に搬送するためのものである。この搬送装置3には、吸着ノズル7及び8、駆動制御部9、カメラ10が備えられている。なお、上記基準位置とは、はんだ付けを行う時の位置合わせ基準点のことである。即ち、搬送装置3及び基板制御装置4は、プリント基板1上の搭載位置と表面実装部品(SMD)2の中心点とをこの基準位置に一致させるように動作する。例えば、搬送装置3は、テープフィーダー6から表面実装部品2を取り出して基準位置まで搬送し、この基準位置において表面実装部品2をプリント基板1上に載せるといった一連の動作を、必要に応じて繰り返し行う。
【0023】
吸着ノズル7は、表面実装部品2をテープフィーダー6から所定の載置台11まで搬送するため、吸着ノズル8は、表面実装部品2を載置台11から上記基準位置まで搬送するためのものである。カメラ10は、表面実装部品2の位置調整用として備えられたものであり、例えば、載置台11の下方から表面実装部品2を撮影する。駆動制御部9は、予め登録されている情報やカメラ10からの画像情報等に基づき、吸着ノズル7及び8の各動作を制御する。
【0024】
具体的に、駆動制御部9は、先ず、吸着ノズル7をテープフィーダー6の部品供給位置まで移動させると、吸着ノズル7の下端部に表面実装部品2を吸着させ、吸着ノズル7に表面実装部品2を保持させる。次に、駆動制御部9は、表面実装部品2を吸着した状態のまま吸着ノズル7を移動させ、表面実装部品2を載置台11の上方位置まで搬送する。
【0025】
吸着ノズル7が載置台11の上方位置に達すると、駆動制御部9は、カメラ10によって表面実装部品2の位置を読み込ませる。駆動制御部9は、周知の画像処理技術等を用いることにより、カメラ10によって撮影された画像に基づいて、表面実装部品2の位置を特定する。そして、駆動制御部9は、表面実装部品2が載置台11に対して所定の位置で所定の方向を向くように、吸着ノズル7を変位させて位置調整を行い、表面実装部品2を載置台11に載せる。
【0026】
なお、駆動制御部9は、表面実装部品2が載置台11に載せられると、吸着ノズル7を表面実装部品2から離し、次の部品の搬送を行うため、テープフィーダー6の部品供給位置に向けて吸着ノズル7の移動を開始させる。
【0027】
載置台11に表面実装部品2が置かれると、駆動制御部9は、吸着ノズル8を用いた表面実装部品2の搬送を開始する。即ち、駆動制御部9は、吸着ノズル8を載置台11の上方位置まで移動させると、吸着ノズル8の下端部に表面実装部品2を吸着させ、吸着ノズル8に表面実装部品2を保持させる。次に、駆動制御部9は、表面実装部品2を吸着した状態のまま吸着ノズル8を移動させ、表面実装部品2を上記基準位置まで搬送する。例えば、駆動制御部9は、表面実装部品2の中心位置が基準位置に一致するように、表面実装部品2を配置する。
【0028】
なお、詳細は後述するが、設置台12に設置されたプリント基板1は、その搭載位置が基準位置に合わせて配置される。駆動制御部9は、吸着ノズル8(表面実装部品2)を基準位置まで移動させると、吸着ノズル8を下降させ、上記基準位置において表面実装部品2をプリント基板1上(の搭載位置)に載せる。そして、駆動制御部9は、表面実装部品2がプリント基板1に載せられた後に吸着ノズル8を表面実装部品2から離し、次の部品の搬送を行うため、載置台11に向けて吸着ノズル8の移動を開始させる。
【0029】
基板制御装置4は、設置台12を移動させて、プリント基板1上の所定の搭載位置を基準位置に合わせて配置するためのものである。なお、設置台12は、その上面にプリント基板1を設置するための台である。基板制御装置4には、設置台12(即ち、設置台12に固定されたプリント基板1)の位置制御を行うため、移動ステージ13、駆動制御部14、カメラ15が備えられている。
【0030】
移動ステージ13は、設置台12を移動自在に支持する。具体的に、移動ステージ13は、直交する水平な2方向(X方向、Y方向)と、所定の軸を中心とした回転方向(θ方向)とに設置台12を変位させるための所定の駆動機構を有している。カメラ15は、プリント基板1に設けられたアライメントマーク(図示せず)の読み込みを行うために備えられたものである。駆動制御部14は、予め登録されている情報やカメラ15からの画像情報等に基づいて移動ステージ13を駆動し、設置台12の位置制御を行う。
【0031】
具体的に、駆動制御部14は、先ず、移動ステージ13を駆動して、設置台12(即ち、プリント基板1)をカメラ15の下方位置に配置させる。そして、駆動制御部14は、カメラ15にプリント基板1のアライメントマークを読み込ませ、設置台12に設置されているプリント基板1の正確な設置位置を特定する。なお、このアライメントマークの読み込み等の動作は、はんだ付けの初期工程として、他の動作に先駆けて行われる。
【0032】
また、駆動制御部14は、アライメントマークからプリント基板1の設置位置を特定すると、予め登録されている情報に基づき、プリント基板1上の各搭載位置を、はんだ付けを行う表面実装部品2に合わせて、順次基準位置に一致させるための制御を行う。即ち、駆動制御部14は、移動ステージ13を駆動して設置台12を移動させることにより、吸着ノズル8が搬送している(次にはんだ付けを行う)表面実装部品2を搭載するための位置が上記基準位置に合うように、プリント基板1を配置させる。この時、駆動制御部14は、例えば、上記搭載位置の中心位置が基準位置に一致するように、プリント基板1の位置調整を行う。
【0033】
なお、駆動制御部14は、プリント基板1の所定の搭載位置を基準位置に合わせた後にレーザ装置5からレーザ光が照射されると、次の表面実装部品2の搭載位置を基準位置に合わせるための動作を開始する。
【0034】
レーザ装置5は、レーザ光を照射してプリント基板1上のはんだを溶融させ、表面実装部品2をプリント基板1に接合させる機能を有している。レーザ装置5は、例えば、レーザヘッド16及び17(光出力部)、移動ステージ18及び19、駆動制御部20、出力制御部21により、その要部が構成される。
【0035】
レーザヘッド16及び17は、レーザ光を出力する部分である。光出力部としては、複数のレーザ発振器を備えても良いし、1台のレーザ発振器から導出された伝送ファイバを分岐して加工ヘッドを2系統にした光学系を用意しても良い。例えば、レーザヘッド16及び17には、光ファイバ22が接続されており、光ファイバ22内を伝播してきたレーザ光をコリメーター等で平行光に変換することにより、上記基準位置の方向に向かってレーザ光を照射する。なお、レーザヘッド16は、表面実装部品2の一方の端子2aのはんだ付けを行うため、レーザヘッド17は他方の端子2bのはんだ付けを行うためのものである。表面実装部品2は、その両端部に端子を備えているものが多いため、レーザヘッド16及び17は、例えば、表面実装部品2に対してその両側からレーザ光を照射できるように、上記基準位置の両側に配置される。
【0036】
移動ステージ18及び19は、レーザヘッド16及び17をそれぞれ移動自在に支持する。具体的に、移動ステージ18は、直交する水平な2方向(X方向、Y方向)と、鉛直方向(Z方向)とにレーザヘッド16を変位させるための所定の駆動機構を有している。また、移動ステージ19も同様に、レーザヘッド17をXYZの各方向に変位させるための所定の駆動機構を有している。駆動制御部20は、既登録情報等に基づいて移動ステージ18及び19を駆動し、レーザヘッド16及び17の位置(レーザ光の照射位置)を制御する。即ち、駆動制御部20は、レーザヘッド16(第1光出力部)を移動させる第1駆動部の機能と、レーザヘッド17(第2光出力部)を移動させる第2駆動部の機能との双方を備えている。
【0037】
以下に、図6及び図7も参照し、レーザヘッド16及び17の位置調整機能について、具体的に説明する。図6及び図7は、レーザ装置による位置調整機能を説明するための図である。
【0038】
レーザヘッド16及び17には、破損し易い光ファイバ22が接続されているため、プリント基板1の搭載位置に合わせてレーザヘッド16及び17を大きく移動させることは好ましくない。このため、本レーザはんだ付け装置においては、表面実装部品2毎の搭載位置(中心位置)合わせを、上述の通り、重量が比較的軽いプリント基板1の移動によって実施し、レーザ装置5は、レーザ光の照射位置に関する微小な位置補正(例えば、表面実装部品2を搭載する位置や向きの変更、表面実装部品2のサイズ変更等に伴う位置補正)を実施する。
【0039】
具体的に、駆動制御部20は、レーザヘッド16から出力されるレーザ光の照射位置が、上記基準位置においてプリント基板1に載せられた表面実装部品2の端子2aの接合箇所に合うように、移動ステージ18を駆動する。同様に、駆動制御部20は、レーザヘッド17から出力されるレーザ光の照射位置が表面実装部品2の端子2bの接合箇所に合うように、移動ステージ19を駆動する。なお、駆動制御部20による移動ステージ18及び19の駆動制御は、予め登録されている表面実装部品2の部品データ(例えば、中心位置、サイズ、端子位置等)に基づいて行われる。
【0040】
例えば、図6に示すように、小型の表面実装部品2とそれよりも大型の表面実装部品23とが、各中心位置を上記基準位置に合わせて配置されると、表面実装部品2及び23の両側の端子2a及び2bと23a及び23bとは、当然のことながら互いに異なる位置に配置される。表面実装部品2の次に表面実装部品23の接合を行う場合、駆動制御部20は、レーザヘッド16及び17からレーザ光が照射されて端子2a及び2bの接合が行われると、それらの部品データに基づいて移動ステージ18及び19を駆動し、レーザヘッド16から出力されるレーザ光の照射位置が端子23aの接合箇所に、レーザヘッド17から出力されるレーザ光の照射位置が端子23bの接合箇所に合うように位置制御を行う。
【0041】
なお、図7はレーザヘッド17から出力されたレーザ光の照射範囲(スポット径)を変更する場合を示している。駆動制御部20は、レーザ光の照射位置を補正する際に、例えば、表面実装部品2の側面(端子)、プリント基板1に形成されたランド、そのランド上のはんだが適切に加熱されるように、必要に応じてレーザ光の照射範囲も調整する。
【0042】
また、出力制御部21は、レーザヘッド16及び17からの各出力を制御する機能を有している。
搬送装置3の吸着ノズル8によって表面実装部品2をプリント基板1上に配置した後、吸着ノズル8によって表面実装部品2を押さえつけながらレーザ光を照射したのでは、作業の効率化を図ることはできない。そこで、搬送装置3の駆動制御部9は、表面実装部品2をプリント基板1上に載せると、レーザ光の照射が行われる前に、吸着ノズル8を表面実装部品2から離し、次の部品の搬送動作を開始させる。即ち、出力制御部21は、表面実装部品2がプリント基板1に載せられ、吸着ノズル8が表面実装部品2から離れた後に、レーザヘッド16及び17からレーザ光を出力させる。
【0043】
上記構成を有するレーザはんだ付け装置では、搬送装置3、基板制御装置4、レーザ装置5が、それぞれ独立して制御可能に構成されている。即ち、例えば、駆動制御部9による表面実装部品2の搬送制御により、駆動制御部14によるプリント基板1の位置制御や、駆動制御部20によるレーザヘッド16及び17の位置制御が影響を受けることはない。そして、本レーザはんだ付け装置では、搬送装置3(吸着ノズル7及び8)、設置台12、レーザヘッド16及び17の3要素を、必要に応じて並行動作させて位置合わせを行い、接合箇所のはんだ付けを行う方式を採用している。
【0044】
具体的に、搬送装置3は、テープフィーダー6から上記基準位置まで表面実装部品2を吸着搬送すると、基準位置において表面実装部品2をプリント基板1上に載置する。基板制御装置4は、搬送装置3が表面実装部品2を基準位置に搬送している間に、プリント基板1の所定の搭載位置が基準位置に一致するように設置台12を移動させる。即ち、搬送装置3が基準位置において表面実装部品2を降下させる時にはプリント基板1の上記搭載位置が基準位置に合わせて配置されており、搬送装置3が表面実装部品2をプリント基板1上に載置することによって、表面実装部品2は、その搭載位置に適切に配置される。
【0045】
表面実装部品2をプリント基板1の所定の搭載位置に配置すると、搬送装置3は、吸着ノズル8による表面実装部品2の吸着保持を直ちに解消し、次の表面実装部品2の搬送を行うため、吸着ノズル8を載置台11の上方位置に向けて移動させる。
【0046】
一方、レーザ装置5は、搬送装置3が表面実装部品2を基準位置に搬送している間に、レーザ光の照射位置が表面実装部品2の端子2a及び2bの各接合箇所に一致するように、レーザヘッド16及び17を移動させる。なお、このレーザヘッド16及び17の移動は、必要に応じてプリント基板1の移動とともに行われる。そして、レーザ装置5は、基準位置において表面実装部品2がプリント基板1上に載置され、且つ、レーザ光の照射位置が表面実装部品2の接合箇所に合わせて設定されると、即座にレーザヘッド16及び17からレーザ光を出力させて、はんだを溶融させる。
【0047】
上述したように、レーザ光の照射時に、表面実装部品2を搬送装置3によって吸着保持しておく必要はない。このため、搬送装置3は、レーザヘッド16及び17からレーザ光が出力される時には、既に次の表面実装部品2の搬送(或いは、搬送のための動作)を行っている。
【0048】
一方、レーザ光の照射が完了するまでは、プリント基板1並びにレーザヘッド16及び17の移動を再開することはできない。このため、基板制御装置4は、レーザ光の照射が完了すると、次の表面実装部品2に対するプリント基板1の搭載位置が基準位置に一致するように、設置台12の移動を開始する。同様に、レーザ装置5は、レーザ光の照射が完了すると、レーザ光の照射位置が次の表面実装部品2の接合箇所に一致するように、レーザヘッド16及び17の位置調整を開始する。
なお、このような並行動作は、具体的には駆動制御部9、14、20の機能によって実現される。
【0049】
また、吸着ノズル8が表面実装部品2から離れた後に表面実装部品2の各端子2a及び2bに対して順番にレーザ光を照射したのでは、はんだの凝固に伴って表面実装部品2に傾きが生じ、適切な導通状態が確保できなくなる恐れがある。このため、出力制御部21は、例えば、レーザヘッド16及び17からレーザ光を同時に出力させることにより、端子2a及び2bの接合を同時に行って、表面実装部品2に傾きが生じてしまうことを防止する。また、出力制御部21は、レーザヘッド16及び17からレーザ光を照射させる際に、各レーザ光の出力値及び出力波形が同じになるようにその出力を調整し、端子2a側の接合箇所のはんだと端子2b側の接合箇所のはんだとが、同じ状態で溶融及び凝固するようにする。
【0050】
なお、レーザヘッド16及び17からレーザ光を出力する時間は、表面実装部品2のサイズ等の条件により異なるが、1箇所の接合において0.1乃至2.0秒程度が必要となる。タクトタイムを短縮させるためにはレーザ光の高出力化が望ましいが、レーザ光の出力があまりにも高いと、入熱量が大きすぎて、レーザ光が照射された瞬間に接合箇所周辺が焼け焦げてしまう。一方、レーザ光の出力が低すぎると、はんだは溶融するが入熱量が小さいため、接合完了までの時間が掛かり過ぎて実用的ではない。また、レーザ光の出力を所定の設定値まで上昇させるまでの時間が短すぎると(レーザ光の出力の上昇勾配が大き過ぎると)、はんだの温度が急激に上昇し、はんだの突沸(はんだ内のフラックスの突沸も含む)が生じてしまう。そして、はんだの突沸が生じた場合は、その衝撃によって表面実装部品2が動いたり、飛散してしまう恐れや、又は、はんだそのものが飛散し、他の接合箇所に付着して短絡(ショート)を起こすことがある等、品質的な問題が生じてしまう。
【0051】
出力制御部21は、はんだの突沸を防止した上で効率的な作業を行うため、例えば、図8に示すように、レーザ光の出力値が所定の上昇勾配内で上昇するように、レーザヘッド16及び17からの出力を制御する。これにより、出力制御部21は、はんだの急激な温度上昇を防止するとともに、表面実装部品2の側面、ランド、はんだの迅速な加熱を実現する。
【0052】
具体的に、出願人は、1005サイズ(長辺1.0mm、短辺0.5mm)の抵抗チップ(表面実装部品2)であれば、60ms以上の時間を掛けて、レーザ光の出力を2乃至5W程度まで一定の上昇勾配で上昇させた場合に、安定した接合品質が得られることを確認している。即ち、上記条件であれば、吸着ノズル8で表面実装部品2をプリント基板1上に押し付けていなくても、レーザヘッド16及び17からのレーザ光により、チップ飛びやはんだ片の飛散を伴うことなく、短時間で接合を完了させることができる。更に、出願人は、上記条件において、1608サイズ(長辺1.6mm、短辺0.8mm)の抵抗チップでも安定した接合品質が得られることを確認している。このような結果に基づけば、抵抗やコンデンサ・インダクタを有するチップであれば、長辺が0.4乃至5.7mm、短辺が0.2乃至5.0mmのサイズまで安定した接合品質を得ることができ、端子を多数備えたIC等の表面実装部品2も、良好な品質で接合することができる。
【0053】
この発明の実施の形態1によれば、レーザはんだ付け装置において、正確且つ短時間で、表面実装部品2をプリント基板1上の所望の搭載位置に接合することができるようになる。
即ち、搬送装置3、基板制御装置4、レーザ装置5は、所定の基準位置を基準にしてそれぞれの動作を行うため、各動作を並行して行うことができ、作業の高速化及び高効率化が可能となる。例えば、所定の表面実装部品2をプリント基板1上の所定の搭載位置に接合する場合、搬送装置3による表面実装部品2の搬送、基板制御装置4によるプリント基板1の位置合わせ、レーザ装置5によるレーザ光照射位置の調整といった各動作を、同時進行的に行うことができる。
【0054】
具体的に、本レーザはんだ付け装置では、レーザヘッド16及び17と搬送装置3とを分け、更に、プリント基板1上の搭載位置間の移動動作を、搬送装置3ではなく基板制御装置4に担当させている。このため、表面実装部品2の搬送及び設置とはんだ付けとを同じ装置で一度に行う方式を実現したまま、レーザヘッド16及び17の移動範囲を、上記基準位置付近の数mm角程度の微小範囲に抑えることが可能となった。この結果、光ファイバ22の湾曲量も小さく抑えることができ、レーザヘッド16及び17を高速で動作させても、光ファイバ22が破損する恐れはない。
【0055】
加えて、搬送装置3をレーザヘッド16及び17やその照射位置の制御機構から独立させ、更にプリント基板1上の搭載位置間の移動及びその位置合わせの動作を基板制御装置4に分担させたため、搬送装置3の構造を簡略化することができる。その結果、搬送装置3が軽量化されてその慣性が大幅に小さくなり、位置合わせが容易になるとともに、搬送装置3の高速動作化によってタクトタイムの短縮を図ることが可能となる。
【0056】
更に、本レーザはんだ付け装置であれば、従来方式においてリードタイム中の大きな割合を占めていたテープフィーダーから接合箇所までの表面実装部品の搬送・設置動作を、レーザ光の照射中に行うことができるため、タクトタイムを大幅に短縮させることができる(図9参照)。
【0057】
本発明の導入効果によるタクトタイム短縮の一例として、1005サイズ(長辺1.0mm、短辺0.5mm)の抵抗チップをはんだ付けする場合、ロボットヘッドによってレーザ光の照射中に表面実装部品2をプリント基板1側に押さえ付けておく従来方式では約3秒のタクトタイムを要したのに対し、本発明の方式では約2秒となり、タクトタイムが約1秒短縮できることを確認している。これを1日当たりの生産数に換算すると、従来技術ベースの方式では約29000個なのに対し、本発明の方式では約43000個となり、装置1台当たりの生産効力を約50%向上させることができる。即ち、本発明の方式であれば、大きな効率化、生産能力の向上が期待できる。
【0058】
また、本レーザはんだ付け装置には、2つ(複数)のレーザヘッド16及び17が用意されており、レーザヘッド16及び17から照射される各レーザ光が、同じ出力値及び出力波形を有するように、且つ、その出力が一定の上昇勾配で設定値まで上昇するように、適切に制御される。このため、各接合箇所におけるはんだの溶融及び凝固を最適化させることができ、各接合箇所のはんだ表面張力にアンバランスが生じたり、はんだの突沸が生じたりすることを確実に防止することができる。即ち、本レーザはんだ付け装置であれば、レーザ装置5によるレーザ光の照射時に、搬送装置3によって表面実装部品2を押さえつけておかなくても、チップ立ちやチップ飛びの発生を確実に防止することができる。このため、搬送装置3を、表面実装部品2をプリント基板1に載せた直後から次の部品の搬送工程に移行させることができ、多数の表面実装部品2をプリント基板1に搭載する場合には、作業時間を大幅に短縮させることが可能となる。更に、本レーザはんだ付け装置であれば、はんだ片の飛散も防止できるため、高品質な製品を提供することが可能となる。
【0059】
なお、本レーザはんだ付け装置は、予め登録されている部品データ等に基づいて、表面実装部品2毎にレーザ光の照射位置や照射範囲等が適切に調整されるため、サイズや耐熱特性等が異なる複数種類の表面実装部品2が混在する場合であっても、正確且つ迅速に、各表面実装部品2をプリント基板1に接合することができる。
【0060】
したがって、本レーザはんだ付け装置は、多品種少量生産の製品や、搭載される表面実装部品2が製品毎に変化するカスタムメイド的な製品、短期間で開発や設計変更が行われる製品、搭載される表面実装部品2が少ない製品(例えば、補聴器等)の製造において、特に有効な手段となり得る。
【符号の説明】
【0061】
1 プリント基板
2、23 表面実装部品(SMD)
2a、2b、23a、23b 端子
3 搬送装置
4 基板制御装置
5 レーザ装置
6 テープフィーダー
7、8 吸着ノズル
9、14、20 駆動制御部
10、15 カメラ
11 載置台
12 設置台
13、18、19 移動ステージ
16、17 レーザヘッド
21 出力制御部
22 光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板上の所定の搭載位置に、第1端子及び第2端子を有する表面実装部品を搭載するためのレーザはんだ付け装置であって、
前記プリント基板が設置される設置台を移動させ、前記プリント基板上の前記搭載位置を所定の基準位置に合わせて配置する基板制御装置と、
前記表面実装部品を所定の供給位置から前記基準位置まで搬送し、前記プリント基板上に前記表面実装部品を載せる搬送装置と、
レーザ光を出力する第1光出力部及び第2光出力部と、
前記第1光出力部及び前記第2光出力部を移動させ、前記第1光出力部及び前記第2光出力部から出力されるレーザ光の照射位置を、前記基準位置に配置された前記表面実装部品の前記第1端子及び前記第2端子の各接合箇所に合わせる駆動装置と、
前記第1光出力部及び前記第2光出力部からのレーザ光の出力を制御する出力制御部と、
を備え、
前記基板制御装置による前記プリント基板の移動制御、前記搬送装置による前記表面実装部品の搬送制御、前記駆動装置による前記第1光出力部及び前記第2光出力部の移動制御は、それぞれ他の2つの制御から独立し、且つ、同時に行うことができるように構成されたことを特徴とするレーザはんだ付け装置。
【請求項2】
前記出力制御部は、前記搬送装置によって前記表面実装部品が前記プリント基板上に載せられ、前記搬送装置から前記表面実装部品が離れた後に、前記第1光出力部及び前記第2光出力部からレーザ光を出力させ、
前記搬送装置は、前記表面実装部品を離した後、前記第1光出力部及び前記第2光出力部からレーザ光が出力されている間、次に接合する表面実装部品を搬送するために前記供給位置に向けて移動する
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザはんだ付け装置。
【請求項3】
前記出力制御部は、はんだの突沸及び前記表面実装部品の実装不良を防止するため、前記第1光出力部及び前記第2光出力部から同時にレーザ光を出力し、この出力されるレーザ光の各出力値を所定の上昇勾配内で上昇させ、且つ、前記第1光出力部及び前記第2光出力部から出力されるレーザ光の出力が同じになるように制御することを特徴とする請求項2に記載のレーザはんだ付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−15477(P2012−15477A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252788(P2010−252788)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19〜21年度、経済産業省東北経済産業局(戦略的基盤技術高度化支援事業)「超小型部品の鉛フリー実装技術における細密溶接技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(593097236)東成エレクトロビーム株式会社 (6)
【Fターム(参考)】