説明

レーザスクライブ方法、電気光学装置、電子機器

【課題】レーザ光の透過を抑制し、基板のパターン焼けやパターン切断による不具合を防止することができるレーザスクライブ方法、電気光学装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】端子部11aが形成された第1基板11と、端子部11aが形成された第1基板11の面に対向して第2基板12が配置され、第2基板12を切断するための第1切断予定ラインL1が設けられ、少なくとも第1切断予定ラインL1上であって、端子部11aと端子部11aに対向する第2基板12の面との間に、レーザ光59の透過を抑制する抑制部材としての液晶材25bを備える基板製造工程(図4(a),(b))と、端子部11aが形成された第1基板11の面に対向して配置された第2基板12の面の反対面から、第1切断予定ラインL1に沿って、第2基板12の内部にレーザ光59の集光点Pが移動するようにレーザ光59を照射する照射工程(図4(c))と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザスクライブ方法、電気光学装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ光を用いて基板を切断するレーザスクライブ方法が知られている。例えば、特許文献1に記載のレーザスクライブ方法では、切断しようとする基板の内部にレーザ光の集光点を合わせて、即ち、集光点でレーザ光のパワー密度が最大となるようにレーザ光を照射し、多光子吸収という現象を利用することにより、集光点部に改質領域を形成させる。そして、外力を加えることにより改質領域を起点にして当該基板を切断するという方法である。
【0003】
【特許文献1】特開2002−192371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上下に貼り合わされた基板の上基板の上方から上基板の内部に集光点を設定してレーザ光を照射すると、照射されたレーザ光が、上基板を透過して下基板に形成されたパターンに到達してしまい、パターン焼けやパターン切断による電気的接続不具合を引き起こしやすくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、レーザ光の透過を抑制し、基板のパターン焼けやパターン切断による不具合を防止することができるレーザスクライブ方法、電気光学装置及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、パターンが形成された第1基板と、パターンが形成された第1基板の面に対向して第2基板が配置され、第2基板を切断するための切断予定ラインが設けられ、少なくとも切断予定ライン上であって、パターンとパターンに対向する第2基板の面との間に、レーザ光の透過を抑制する抑制部材を備える基板製造工程と、パターンが形成された第1基板の面に対向して配置された第2基板の面の反対面から、切断予定ラインに沿って、第2基板の内部にレーザ光の集光点が移動するようにレーザ光を照射する照射工程とを有することを要旨とする。
【0007】
本発明に係るレーザスクライブ方法によれば、基板製造工程では、切断予定ライン上であって、パターンとパターンに対向する第2基板の面との間に、レーザ光の透過を抑制する抑制部材が備えられる。そして、照射工程では、切断予定ラインに沿って照射されたレーザ光のうち第2基板の内部に設定された集光点を超えて、更に透過したレーザ光は、抑止部材に達する。当該抑止部材に達したレーザ光は、抑止部材によってレーザ光の透過が抑制される。従って、集光点を超えたレーザ光は、抑止部材によって進行が抑制され、抑止部材を超える個所に形成されたパターンに対して、レーザ光の強度が弱まるので、パターン焼けや切断によるパターン欠陥等の不具合を防止することができる。
【0008】
本発明のレーザスクライブ方法の基板製造工程では、抑止部材は、液晶材であってもよい。
【0009】
これによれば、液晶材によって、照射されたレーザ光の透過を抑制することができる。
【0010】
本発明のレーザスクライブ方法の基板製造工程には、第1基板と第2基板との間に表示材料としての液晶材を塗布する液晶材塗布工程を有し、抑止部としての液晶材は、表示材料としての液晶材と同じ材料であってもよい。
【0011】
これによれば、抑止部材としての液晶材は、表示材料としての液晶材と同じ材料が用いられるので、材料選定等の工数を省き、作業効率を向上させることができる。
【0012】
本発明のレーザスクライブ方法の液晶材塗布工程では、抑止部材としての液晶材と表示材料としての液晶材とを同時期に塗布してもよい。
【0013】
これによれば、前記抑止部材としての液晶材と前記表示材料としての液晶材とを同時期に設けることにより、基板の製造における作業効率を向上させることができる。
【0014】
本発明のレーザスクライブ方法の基板製造工程では、抑止部材は、スペーサ材であってもよい。
【0015】
これによれば、スペーサ材によって、照射されたレーザ光の透過を抑制することができるとともに、ドライ加工を行うことができる。
【0016】
本発明のレーザスクライブ方法では、抑止部としてのスペーサ材は、表示材料としての液晶材に含まれるスペーサ材と同じ材料であってもよい。
【0017】
これによれば、抑止部材としてのスペーサ材は、表示材料としての液晶材に含まれるスペーサ材と同じ材料が用いられるので、材料選定等の工数を省き、作業効率を向上させることができる。
【0018】
本発明のレーザスクライブの基板製造工程では、抑止部材は、樹脂材であることを特徴とするレーザスクライブ方法。
【0019】
これによれば、樹脂材によって、照射されたレーザ光の透過を抑制することができる。
【0020】
本発明のレーザスクライブ方法の基板製造工程では、抑止部材は、金属材であってもよい。
【0021】
これによれば、金属材によって、照射されたレーザ光の透過を抑制することができる。
【0022】
本発明の電気光学装置は、上記のレーザスクライブ方法によって製造されたことを要旨とする。
【0023】
これによれば、レーザ光を照射して、第2基板の一部を切断するとき、レーザ光の照射方向に対して抑止部を超える個所にあたる第1基板に形成されたパターンの焼けや切断によるパターン欠陥等の不具合を抑えるので、信頼性の高い電気光学装置を提供することができる。
【0024】
本発明の電気機器は、上記の電気光学装置を搭載したことを要旨とする。
【0025】
これによれば、信頼性の高い電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した第1及び第2実施形態について図面に従って説明する。なお、本発明の実施形態では、電気光学装置としての液晶表示パネルが形成された基板に対してレーザ光を照射してスクライブするレーザスクライブ方法と、当該レーザスクライブ方法によって製造された液晶表示パネル及び電子機器を例に説明する。
【0027】
[第1実施形態]
【0028】
(基板の構成)
まず、基板の構成について説明する。図1は、基板の構成を示し、図1(a)は平面図を示し、同図(b)は同図(a)のA−A線で切った概略断面図を示す。
【0029】
図1(a),(b)において、基板10は、ウエハ形状であり、第1基板11と第2基板12とが接着され、複数の電気光学装置としての液晶表示パネル20で構成されている。1つの液晶表示パネル20は、基板10の液晶表示パネル20の区画形成領域に設けられた切断予定ラインに沿って切断して、基板10から分割される。
【0030】
(電気光学装置の構成)
次に、電気光学装置の構成について説明する。図2は、電気光学装置としての液晶表示パネルの構成を示し、図2(a)は平面図を示し、同図(b)は同図(a)のB−B線で切った概略断面図を示す。
【0031】
図2において、液晶表示パネル20は、図2(a)および(b)に示すように、TFT(Thin Film Transistor)素子23を有する第1基板11と、対向電極26を有する第2基板12と、シール材24によって接着された両基板11,12の隙間に充填された表示材料としての液晶材25とを備えている。第1基板11は第2基板12より一回り大きく額縁状に張り出した状態となっており、当該張り出した第1基板11の一方の面には、パターンとしての端子部11aが形成されている。
【0032】
第1基板11は、厚みおよそ1.2mmの石英ガラス基板を用いており、その表面には画素を構成する画素電極(図示省略)と、3端子のうちの一つが画素電極に接続されたTFT素子23が形成されている。TFT素子23の残りの2端子は、画素電極を囲んで互いに絶縁状態で格子状に配置されたデータ線(図示省略)と走査線(図示省略)とに接続されている。データ線は、Y軸方向に引き出されて端子部11aに形成されたデータ線駆動回路部29に接続されている。走査線は、X軸方向に引き出され、左右の額縁領域に形成された2つの走査線駆動回路部33に個々に接続されている。各データ線駆動回路部29および走査線駆動回路部33の入力側配線は、端子部11aに沿って配列した実装端子31にそれぞれ接続されている。端子部11aとは反対側の額縁領域には、2つの走査線駆動回路部33を繋ぐ配線32が設けられている。
【0033】
第2基板12は、厚みおよそ1.0mmの透明なガラス基板を用いており、共通電極としての対向電極26が設けられている。対向電極26は、第2基板12の四隅に設けられた上下導通部34を介して第1基板11側に設けられた配線と導通しており、当該配線も端子部11aに設けられた実装端子31に接続されている。
【0034】
液晶材25に面する第1基板11の表面および第2基板12の表面には、それぞれ配向膜27,28が形成されている。
【0035】
液晶表示パネル20は、外部駆動回路と電気的に繋がる中継基板が実装端子31に接続される。そして、外部駆動回路からの入力信号が各データ線駆動回路部29および走査線駆動回路部33に入力されることにより、TFT素子23が画素電極ごとにスイッチングされ、画素電極と対向電極26との間に駆動電圧が印加されて表示が行われる。
【0036】
(レーザ照射装置の構成)
次に、基板10に形成された液晶表示パネル20の区画形成領域に設けられた切断予定ラインに向けてレーザ光を照射して、当該レーザ光が照射された部分に改質層を形成するためのレーザ照射装置の構成について説明する。
【0037】
図3は、レーザ照射装置の構成を示す模式図である。図3において、レーザ照射装置40は、パルスレーザ光を出射するレーザ光源41と、出射されたパルスレーザ光を反射するダイクロイックミラー42と、反射したパルスレーザ光を集光する集光手段としての集光レンズ43とを備えている。また、基板10を載置するステージ47と、ステージ47を集光レンズ43に対してX,Y軸方向に移動させる移動手段としてのX軸スライド部48およびY軸スライド部51とを備えている。また、ステージ47に載置された基板10に対して集光レンズ43のZ軸方向の位置を変えて、パルスレーザ光の集光点の位置を調整する調整手段としてのZ軸スライド機構54を備えている。さらに、ダイクロイックミラー42を挟んで集光レンズ43と反対側に位置する撮像装置55を備えている。
【0038】
レーザ照射装置40は、上記各構成を制御するメインコンピュータ60を備えており、メインコンピュータ60には、CPUや各種メモリ(図示省略)の他に撮像装置55が撮像した画像情報を処理する画像処理部61を有している。撮像装置55は、同軸落射型光源とCCD(固体撮像素子)が組み込まれたものである。同軸落射型光源から出射した可視光は、集光レンズ43を透過して焦点を結ぶ。
【0039】
メインコンピュータ60には、レーザ加工の際に用いられる各種加工条件のデータを入力する入力部63とレーザ加工時の各種情報を表示する表示部64が接続されている。また、レーザ光源41の出力やパルス幅、パルス周期を制御するレーザ制御部66と、Z軸スライド機構54を駆動して集光レンズ43のZ軸方向の位置を制御するレンズ制御部67とが接続されている。さらに、X軸スライド部48とY軸スライド部51をそれぞれレール68,69に沿って移動させるサーボモータ(図示省略)を駆動するステージ制御部70が接続されている。
【0040】
集光レンズ43をZ軸方向に移動させるZ軸スライド機構54には、移動距離を検出可能な位置センサが内蔵されており、レンズ制御部67は、この位置センサの出力を検出して集光レンズ43のZ軸方向の位置を制御可能となっている。したがって、撮像装置55の同軸落射型光源から出射した可視光の焦点が基板10の表面と合うように集光レンズ43をZ軸方向に移動させれば、基板10の厚みを計測することが可能である。
【0041】
レーザ光源41は、例えばチタンサファイアを固体光源とするレーザ光をフェムト秒のパルス幅で出射するいわゆるフェムト秒レーザである。この場合、パルスレーザ光は、波長分散特性を有しており、中心波長が800nmであり、その半値幅はおよそ20nmである。またパルス幅はおよそ300fs(フェムト秒)、パルス周期は1kHz、出力はおよそ700mWである。
【0042】
集光レンズ43は、この場合、倍率が100倍、開口数(NA)が0.8、WD(Working Distance)が3mmの対物レンズである。集光レンズ43はZ軸スライド機構54から延びたスライドアーム54aによって支持されている。
【0043】
なお、本実施形態では、ステージ47は、Y軸スライド部51に支持されているが、X軸スライド部48とY軸スライド部51との位置関係を逆転させてX軸スライド部48に支持される形態としてもよい。また、ステージ47をθテーブル(図示せず)を介してY軸スライド部51に支持することが好ましい。これによれば、基板10を光軸41aに対してより垂直な状態とすることが可能である。
【0044】
(レーザスクライブ方法)
次に、第1実施形態に係るレーザスクライブ方法について説明する。図4は、本実施形態におけるスクライブ方法を示す工程図である。
【0045】
まず、基板製造工程について説明する。図4(a)の液晶塗布工程では、TFT素子23や端子部11a等が形成された第1基板の面にシール材24を形成した後、シール材24によって区画された第1,第2区画領域S1,S2のそれぞれに液晶材25(25a,25b)を塗布する。第1区画領域S1は、TFT素子23等が形成された領域であり、第2区画領域S2は、端子部11aが形成された領域である。塗布された液晶材25のうち、第1区画領域S1に塗布された液晶材25は、表示材料としての液晶材25aであり、第2区画領域S2に塗布された液晶材25は、後の工程のレーザ光の透過を抑制する抑止部材としての液晶材25bであり、液晶材25aは、少なくとも第2基板12の一部を切断するために設けられた第1切断予定ラインL1上であって、第1基板11の端子部11aと第1基板11に対向する第2基板12の面との間に塗布する。なお、液晶材25には、第1基板11と第2基板12との間のスペースを確保するためのスペーサ材が含まれていてもよい。
【0046】
次に、図4(b)では、第1基板11と、対向電極26等が形成された第2基板12とをシール材24の接着力によって接着する。
【0047】
以上の工程を経ることにより、基板10が形成される。
【0048】
次に、照射工程について説明する。図4(c)の照射工程では、レーザ照射装置40を用いて、基板10に設けられた第1及び第2切断予定ラインL1,L2のうち、第1切断予定ラインL1に沿ってレーザ光59を照射する。第1切断予定ラインL1は、第2基板12を部分的に切断するために設けられたラインであり、第1切断予定ラインL1の延長線上には第1基板11の端子部11aが形成されている。第2切断予定ラインL2は、第1及び第2基板11,12を切断して、液晶表示パネル20に分割するために設けられたラインである。
【0049】
レーザ光59は、第2基板12の対向電極26等が形成された面の反対面から第2基板12に向けて、第2基板12と略垂直な方向に、かつ、第1切断予定ラインL1に沿って、第2基板12の内部にレーザ光59の集光点Pが位置するように照射される。
【0050】
そして、第1切断予定ラインL1に沿って、集光点Pをレーザ光が照射される第2基板12の面に近づく方向に位置設定し、レーザ光59を照射しながら走査する。これを複数回走査することにより、第2基板12の内部に第1切断予定ラインL1に沿った改質層Rc1が形成される。
【0051】
次に、図4(d)に示すように、レーザ照射装置40を用いて、基板10に設けられた第2切断予定ラインL2に沿ってレーザ光59を照射する。そして、同図(c)と同様に、レーザ光59を照射しながら複数回走査により、第1及び第2基板11,12の内部に第2切断予定ラインL2に沿った改質層Rc2が形成される。
【0052】
そして、図4(e)では、基板10に外力を与えることにより、改質層Rc1,Rc2を起点として、第1及び第2基板11,12が切断され、液晶表示パネル20が形成される。
【0053】
(電子機器の構成)
次に、電子機器の構成について説明する。図5は、電子機器としてのプロジェクタの構成を示す斜視図である。図5において、プロジェクタ80を構成する光学系に液晶表示パネル20が搭載されている。
【0054】
従って、上記の第1実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0055】
(1)第1切断予定ラインL1に沿ってレーザ光59を照射したとき、集光点Pを超えて透過したレーザ光59は、第1基板11と第2基板12との間の第1切断予定ラインL1上に形成された液晶材25bによって、反射、散乱または吸収されるので、レーザ光59の透過がほぼ抑制され、端子部11aの実装端子31等への照射をほぼ抑えることができる。従って、端子部11aのパターンの焼け、パターン欠陥等の不具合を低減することができる。
【0056】
(2)抑止部材としての液晶材25bは、表示材料としての液晶材25aと同じ材料を用いるので、材料選定等の管理を省いて、作業効率を向上させることができる。
【0057】
(3)液晶材25a,25bは、液晶材塗布工程において同時期に形成されるので、作業効率を向上させることができる。
【0058】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、基板の構成、電気光学装置としての液晶表示パネルの構成、レーザ照射装置の構成及び電子機器としてのプロジェクタの構成については、第1実施形態と同じなので説明を省略する。
【0059】
(レーザスクライブ方法)
図6は、本実施形態におけるスクライブ方法を示す工程図である。
【0060】
まず、基板製造工程について説明する。図6(a)では、TFT素子23や端子部11a等が形成された第1基板の面にシール材24を形成した後、シール材24によって区画された第1,第2区画領域S1,S2のうち、第1区画領域S1に液晶材25を塗布し、第2区画領域S2には、抑止部材としてのスペーサ材90を散布する。スペーサ材90は、少なくとも第2基板12の一部を切断するために設けられた第1切断予定ラインL1上であって、第1基板11の端子部11aと第1基板11に対向する第2基板12の面との間に塗布する。スペーサ材90としては、ガラスファイバ、シリカ、プラスチック等を用いることができる。なお、スペーサ材90は、第1区画領域S1に塗布した液晶材25に含まれるスペーサ材と同じもの用いることができる。
【0061】
次に、図6(b)では、第1基板11と、対向電極26等が形成された第2基板12とをシール材24の接着力によって接着する。
【0062】
以上の工程を経ることにより、基板10が形成される。
【0063】
次に、照射工程について説明する。図6(c)の照射工程では、レーザ照射装置40を用いて、基板10に設けられた第1及び第2切断予定ラインL1,L2のうち、第1切断予定ラインL1に沿ってレーザ光59を照射する。第1切断予定ラインL1は、第2基板12を部分的に切断するために設けられたラインであり、第1切断予定ラインL1の延長線上には第1基板11の端子部11aが形成されている。第2切断予定ラインL2は、第1及び第2基板11,12を切断して、液晶表示パネル20に分割するために設けられたラインである。
【0064】
レーザ光59は、第2基板12の対向電極26等が形成された面の反対面から第2基板12に向けて、第2基板12と略垂直な方向に、かつ、第1切断予定ラインL1に沿って、第2基板12の内部にレーザ光59の集光点Pが位置するように照射される。
【0065】
そして、第1切断予定ラインL1に沿って、集光点Pをレーザ光が照射される第2基板12の面に近づく方向に位置設定し、レーザ光59を照射しながら走査する。これを複数回走査することにより、第2基板12の内部に第1切断予定ラインL1に沿った改質層Rc1が形成される。
【0066】
次に、図6(d)に示すように、レーザ照射装置40を用いて、基板10に設けられた第2切断予定ラインL2に沿ってレーザ光59を照射する。そして、同図(c)と同様に、レーザ光59を照射しながら複数回走査により、第1及び第2基板11,12の内部に第2切断予定ラインL2に沿った改質層Rc2が形成される。
【0067】
そして、図6(e)では、基板10に外力を与えることにより、改質層Rc1,Rc2を起点として、第1及び第2基板11,12が切断され、液晶表示パネル20が形成される。
【0068】
従って、上記の第2実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0069】
(1)第1切断予定ラインL1に沿ってレーザ光59を照射したとき、集光点Pを超えて透過したレーザ光59は、第1基板11と第2基板12との間の第1切断予定ラインL1上に形成されたスペーサ材90によって、反射、散乱または吸収されるので、レーザ光59の透過がほぼ抑制され、端子部11aの実装端子31等への照射をほぼ抑えることができる。従って、端子部11aのパターンの焼け、パターン欠陥等の不具合を低減することができる。
【0070】
(2)抑止部材としてのスペーサ材90は、液晶材25に含まれるスペーサ材と同じ材料を用いるので、材料選定等の管理作業を省いて、作業効率を向上させることができる。
【0071】
(3)スペーサ材90は、固体物質であるため基板10を分割した際に、容易に排除することができる。
【0072】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。なお、基板の構成、電気光学装置としての液晶表示パネルの構成、レーザ照射装置の構成及び電子機器としてのプロジェクタの構成については、第1実施形態と同じなので説明を省略する。
【0073】
(レーザスクライブ方法)
図7は、本実施形態におけるスクライブ方法を示す工程図である。
【0074】
まず、基板製造工程について説明する。図7(a)では、TFT素子23や端子部11a等が形成された第1基板の面にシール材24を形成した後、シール材24によって区画された第1,第2区画領域S1,S2のうち、第1区画領域S1に液晶材25を塗布し、第2区画領域S2には、抑止部材としての樹脂材100を配置する。樹脂材100は、少なくとも第2基板12の一部を切断するために設けられた第1切断予定ラインL1上であって、第1基板11の端子部11aと第1基板11に対向する第2基板12の面との間に配置する。樹脂材100は、例えば、エポキシ樹脂や塩化ビニル樹脂等を用いることができる。また、樹脂材100の色彩は、黒色を採用することが好ましいが、半透明であってもよい。
【0075】
次に、図7(b)では、第1基板11と、対向電極26等が形成された第2基板12とをシール材24の接着力によって接着する。
【0076】
以上の工程を経ることにより、基板10が形成される。
【0077】
次に、照射工程について説明する。図7(c)の照射工程では、レーザ照射装置40を用いて、基板10に設けられた第1及び第2切断予定ラインL1,L2のうち、第1切断予定ラインL1に沿ってレーザ光59を照射する。第1切断予定ラインL1は、第2基板12を部分的に切断するために設けられたラインであり、第1切断予定ラインL1の延長線上には第1基板11の端子部11aが形成されている。第2切断予定ラインL2は、第1及び第2基板11,12を切断して、液晶表示パネル20に分割するために設けられたラインである。
【0078】
レーザ光59は、第2基板12の対向電極26等が形成された面の反対面から第2基板12に向けて、第2基板12と略垂直な方向に、かつ、第1切断予定ラインL1に沿って、第2基板12の内部にレーザ光59の集光点Pが位置するように照射される。
【0079】
そして、第1切断予定ラインL1に沿って、集光点Pをレーザ光が照射される第2基板12の面に近づく方向に位置設定し、レーザ光59を照射しながら走査する。これを複数回走査することにより、第2基板12の内部に第1切断予定ラインL1に沿った改質層Rc1が形成される。
【0080】
次に、図7(d)に示すように、レーザ照射装置40を用いて、基板10に設けられた第2切断予定ラインL2に沿ってレーザ光59を照射する。そして、同図(c)と同様に、レーザ光59を照射しながら複数回走査により、第1及び第2基板11,12の内部に第2切断予定ラインL2に沿った改質層Rc2が形成される。
【0081】
そして、図7(e)では、基板10に外力を与えることにより、改質層Rc1,Rc2を起点として、第1及び第2基板11,12が切断され、液晶表示パネル20が形成される。
【0082】
従って、上記の第3実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0083】
(1)第1切断予定ラインL1に沿ってレーザ光59を照射したとき、集光点Pを超えて透過したレーザ光59は、第1基板11と第2基板12との間の第1切断予定ラインL1上に配置された樹脂材100によって、反射、散乱または吸収されるので、レーザ光59の透過がほぼ抑制され、端子部11aの実装端子31等への照射をほぼ抑えることができる。従って、端子部11aのパターンの焼け、パターン欠陥等の不具合を低減することができる。
【0084】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。なお、基板の構成、電気光学装置としての液晶表示パネルの構成、レーザ照射装置の構成及び電子機器としてのプロジェクタの構成については、第1実施形態と同じなので説明を省略する。
【0085】
(レーザスクライブ方法)
図8は、本実施形態におけるスクライブ方法を示す工程図である。
【0086】
まず、基板製造工程について説明する。図8(a)では、TFT素子23や端子部11a等が形成された第1基板の面にシール材24を形成した後、シール材24によって区画された第1,第2区画領域S1,S2のうち、第1区画領域S1に液晶材25を塗布し、第2区画領域S2には、抑止部材としての金属材110を配置する。金属材110は、少なくとも第2基板12の一部を切断するために設けられた第1切断予定ラインL1上であって、第1基板11の端子部11aと第1基板11に対向する第2基板12の面との間に配置する。
【0087】
次に、図8(b)では、第1基板11と、対向電極26等が形成された第2基板12とをシール材24の接着力によって接着する。
【0088】
以上の工程を経ることにより、基板10が形成される。
【0089】
次に、照射工程について説明する。図8(c)の照射工程では、レーザ照射装置40を用いて、基板10に設けられた第1及び第2切断予定ラインL1,L2のうち、第1切断予定ラインL1に沿ってレーザ光59を照射する。第1切断予定ラインL1は、第2基板12を部分的に切断するために設けられたラインであり、第1切断予定ラインL1の延長線上には第1基板11の端子部11aが形成されている。第2切断予定ラインL2は、第1及び第2基板11,12を切断して、液晶表示パネル20に分割するために設けられたラインである。
【0090】
レーザ光59は、第2基板12の対向電極26等が形成された面の反対面から第2基板12に向けて、第2基板12と略垂直な方向に、かつ、第1切断予定ラインL1に沿って、第2基板12の内部にレーザ光59の集光点Pが位置するように照射される。
【0091】
そして、第1切断予定ラインL1に沿って、集光点Pをレーザ光が照射される第2基板12の面に近づく方向に位置設定し、レーザ光59を照射しながら走査する。これを複数回走査することにより、第2基板12の内部に第1切断予定ラインL1に沿った改質層Rc1が形成される。
【0092】
次に、図8(d)に示すように、レーザ照射装置40を用いて、基板10に設けられた第2切断予定ラインL2に沿ってレーザ光59を照射する。そして、同図(c)と同様に、レーザ光59を照射しながら複数回走査により、第1及び第2基板11,12の内部に第2切断予定ラインL2に沿った改質層Rc2が形成される。
【0093】
そして、図8(e)では、基板10に外力を与えることにより、改質層Rc1,Rc2を起点として、第1及び第2基板11,12が切断され、液晶表示パネル20が形成される。
【0094】
従って、上記の第4実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0095】
(1)第1切断予定ラインL1に沿ってレーザ光59を照射したとき、集光点Pを超えて透過したレーザ光59は、第1基板11と第2基板12との間の第1切断予定ラインL1上に配置された金属材110によって、反射または散乱されるので、レーザ光59の透過がほぼ抑制され、端子部11aの実装端子31等への照射をほぼ抑えることができる。従って、端子部11aのパターンの焼け、パターン欠陥等の不具合を低減することができる。
【0096】
本発明は、上記の第1〜第4実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0097】
(変形例1)第1実施形態において、第2区画領域S2いっぱいに液晶材25bを塗布したが、これに限定されず、少なくとも端子部11aを覆う程度であってもよい。このようにしても、レーザ光59による端子部11aの損傷等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】基板の構成を示し、(a)は平面図、(b)概略断面図。
【図2】電気光学装置としての液晶表示パネルの構成を示し、(a)は平面図、(b)は概略断面図。
【図3】レーザ照射装置の構成を示す模式図。
【図4】第1実施形態におけるスクライブ方法を示す工程図。
【図5】電子機器としてのプロジェクタの構成を示す斜視図。
【図6】第2実施形態におけるスクライブ方法を示す工程図。
【図7】第3実施形態におけるスクライブ方法を示す工程図。
【図8】第4実施形態におけるスクライブ方法を示す工程図。
【符号の説明】
【0099】
10…基板、11…第1基板、11a…パターンとしての端子部、12…第2基板、24…シール材、25…液晶材、25a…表示材料としての液晶材、25b…抑止部材としての液晶材、31…実装端子、40…レーザ照射装置、59…レーザ光、80…プロジェクタ、90…抑止部材としてのスペーサ材、100…抑止部材としての樹脂材、110…抑止部材としての金属材、S1…第1区画領域、S2…第2区画領域、L1…第1切断予定ライン、L2…第2切断予定ライン、P…集光点、Rc1,Rc2…改質層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された第1基板と、前記パターンが形成された前記第1基板の面に対向して第2基板が配置され、前記第2基板を切断するための切断予定ラインが設けられ、少なくとも前記切断予定ライン上であって、前記パターンと前記パターンに対向する前記第2基板の面との間に、レーザ光の透過を抑制する抑制部材を備える基板製造工程と、
前記パターンが形成された前記第1基板の面に対向して配置された前記第2基板の面の反対面から、前記切断予定ラインに沿って、前記第2基板の内部にレーザ光の集光点が移動するように前記レーザ光を照射する照射工程と、を有することを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザスクライブ方法において、
前記基板製造工程では、前記抑止部材は、液晶材であることを特徴とする表示パネルのレーザスクライブ方法。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザスクライブ方法において、
前記基板製造工程は、前記第1基板と前記第2基板との間に表示材料としての液晶材を塗布する液晶材塗布工程を有し、
前記抑止部としての液晶材は、前記表示材料としての液晶材と同じ材料であることを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載のレーザスクライブ方法において、
前記液晶材塗布工程では、前記抑止部材としての液晶材と前記表示材料としての液晶材とを同時期に塗布することを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項5】
請求項1に記載のレーザスクライブ方法において、
前記基板製造工程では、前記抑止部材は、スペーサ材であることを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザスクライブ方法において、
前記抑止部としてのスペーサ材は、前記表示材料としての液晶材に含まれるスペーサ材と同じ材料であることを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項7】
請求項1に記載のレーザスクライブ方法において、
前記基板製造工程では、前記抑止部材は、樹脂材であることを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項8】
請求項1に記載のレーザスクライブ方法において、
前記基板製造工程では、抑止部材は、金属材であることを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のレーザスクライブ方法によって製造された電気光学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気光学装置を搭載したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−229793(P2007−229793A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57314(P2006−57314)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】