説明

レーザー光を用いた接合方法

【課題】意匠層を接合品の表側から視認可能にする場合に、意匠層を溶融又は分解させることなく、第1及び第2部材をレーザー光を用いて接合できるようにすることで、外観見栄えを良好にする。
【解決手段】意匠層4はレーザー光非透過性を有する。意匠層4に隣接してレーザー接合用の中間部材5を設ける。意匠層4へ向けて、該意匠層4の溶融又は分解温度を越えない所定温度となるまで該意匠層4を加熱するためのレーザー光Lを照射する。意匠層4の熱によって中間部材5を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を用いて第1部材と第2部材とを接合する接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、樹脂材からなる第1及び第2部材を接合する方法として、レーザー光の照射による接合方法が広く用いられている。レーザー光を用いて接合する場合には、一般的には、第1部材を、レーザー光の透過性を有するレーザー光透過部材とし、一方、第2部材をレーザー光の非透過性を有するレーザー光非透過性部材とする。そして、第1及び第2部材を重ねた後、第1部材側からレーザー光を照射する。このレーザー光は第1部材を透過して第2部材に吸収される。これにより、第2部材が加熱され、第1及び第2部材の接合面が溶融し、その後、固化して両部材が接合された状態となる。
【0003】
上記した一般的なレーザー光溶着では、一方の部材がレーザー光非透過性を有していなければならないが、例えば、特許文献1〜3には、レーザー光透過性を有する部材同士を溶着する方法が開示されている。これら文献に開示されている方法では、第1部材及び第2部材の間にレーザー光を吸収するトナーや塗料を含む樹脂材を介在させて、この樹脂材にレーザー光を吸収させて溶融させ、これによって第1及び第2部材を接合するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−181931号公報
【特許文献2】特開2004−1071号公報
【特許文献3】特開2005−238462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、例えば化粧品用ケース、住設用又は電気製品用外装部材では、外観見栄えが非常に重要視されてきており、様々なデザイン処理が行われている。例えば、表側の第1部材と裏側の第2部材とを接合して外装部材を構成する場合に、透光性を有する第1部材の裏面に印刷等を施して意匠を構成する意匠層を設けることにより、第1部材の表側から該第1部材を透過して意匠層を見たときに意匠に深みを出すことができる。
【0006】
このようなデザイン処理を行う場合に、特許文献1〜3に開示されている方法を用いてレーザー光溶着をすると、第1部材と第2部材との間に位置することになる意匠層がレーザー光を吸収する。そして、この意匠層が溶融又は分解して第1及び第2部材が溶着されることになる。意匠層が一旦溶融又は分解すると冷却しても元通りになることはないので、外観見栄えの悪化を招く。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、第1部材側から視認可能に意匠層を設ける場合に、意匠層を溶融又は分解させることなく、第1及び第2部材を接合できるようにすることで、外観見栄えを良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明では、レーザー接合用中間部材を第1部材と第2部材との間に意匠層に隣接するように設けておき、意匠層を溶融又は分解させないようにレーザー光で加熱し、その加熱された意匠層の熱によって中間部材を加熱して第1及び第2部材を接合するようにした。
【0009】
第1の発明は、透光性を有する第1部材と、第2部材とをレーザー光を用いて接合する接合方法において、上記第1及び第2部材のうち、少なくとも一方はレーザー光透過性を有する材料で構成し、上記第1及び第2部材の少なくとも一方に、該第1部材の表側に意匠が現れるようにレーザー光非透過性の意匠層を設け、上記第1及び第2部材を接合するためのレーザー接合用中間部材を、該第1部材と第2部材との間に、上記意匠層に隣接して設け、上記レーザー光透過性を有する部材側から上記意匠層へ向けて該意匠層の溶融又は分解温度を越えない所定温度となるまで該意匠層を加熱するためのレーザー光を照射し、該意匠層の熱によって上記中間部材を加熱して上記第1及び第2部材を接合することを特徴とするものである。
【0010】
すなわち、第1部材がレーザー光透過性を有する材料で構成されている場合には、第1部材側からレーザー光を照射する。このレーザー光は第1部材を透過して意匠層で吸収され、意匠層が加熱される。この意匠層の熱によって中間部材が加熱される。中間部材が加熱されて溶融ないし軟化することで該中間部材が第1及び第2部材に密着して両部材が所定の接合強度で接合される。このとき意匠層が溶融又は分解することはない。
【0011】
そして、第1及び第2部材を接合した状態では、第1部材の表側から意匠層の意匠を見ることができ、深みのあるデザインが得られる。この意匠層は溶融又は分解していないので、見栄えは良好である。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、中間部材は、第1部材及び第2部材に粘着する粘着性を有していることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、レーザー光の照射前に、中間部材によって第1及び第2部材を簡単に一体化しておくことが可能になる。
【0014】
第3の発明は、第1または2の発明において、中間部材は、意匠層の熱により溶融するホットメルト材であることを特徴とするものである。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、ホットメルト材は、熱可塑性エラストマーであることを特徴とするものである。
【0016】
第5の発明は、第3の発明において、ホットメルト材は、アクリル系のものであることを特徴とするものである。
【0017】
第6の発明は、第1から5のいずれか1つの発明において、中間部材は、熱伝導性フィラーを有していることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、意匠層の熱が熱伝導性フィラーによって中間部材の全体に伝わりやすくなる。
【0019】
第7の発明は、第1から6のいずれか1つの発明において、中間部材は、意匠層に対し、レーザー光の照射方向と反対側に隣接するように配置され、上記中間部材には、レーザー光を吸収するレーザー光吸収剤が混合されていることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、例えば第1部材側からレーザー光が照射される場合には、第1部材を透過したレーザー光が、まず、意匠層に吸収されるが、全てが意匠層に吸収されなかった場合には、僅かなレーザー光が意匠層を透過して中間部材のレーザー光吸収剤によって吸収されることになる。これにより、中間部材の加熱が可能になる。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、第1部材の表側に意匠が現れるようにレーザー光非透過性の意匠層を設け、レーザー接合用中間部材を第1部材と第2部材との間に意匠層に隣接するように設け、意匠層を溶融又は分解温度を越えない所定温度となるまでレーザー光により加熱し、意匠層の熱によって中間部材を加熱して第1及び第2部材を接合するようにしたので、意匠層が溶融又は分解することはなく、外観見栄えの良好な接合品を得ることができる。
【0022】
第2の発明によれば、中間部材が第1部材及び第2部材に粘着する粘着性を有しているので、レーザー光を照射する前に、第1部材及び第2部材を簡単に一体化して位置ずれを抑制でき、接合強度を十分に確保できるとともに、より見栄えの良好な接合品を得ることができる。
【0023】
第3の発明によれば、中間部材をホットメルト材としたので、第1及び第2部材の接着強度が十分に得られる。
【0024】
第4の発明によれば、熱可塑性エラストマーとすることで、意匠層の熱によって接着力を確実に得ることができる。
【0025】
第5の発明によれば、アクリル系のホットメルト材とすることで、低コスト化を図りながら、接着強度を十分に得ることができる。
【0026】
第6の発明によれば、中間部材に熱伝導性フィラーを混合したので、意匠層の熱が中間部材の全体に伝わりやすくなり、中間部材を確実に溶融または軟化させて第1及び第2部材の接合が確実に行えるようになる。
【0027】
第7の発明によれば、中間部材にレーザー光吸収剤が混合されているので、意匠層に吸収されなかったレーザー光を中間部材に吸収させることができる。これにより、中間部材をレーザー光を有効に利用して加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態にかかる接合品の断面図である。
【図2】各部材を接合する前の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
図1は、本発明の実施形態にかかる接合方法によって接合された接合品1を示すものである。この接合品1は、例えば、化粧品用ケース、住設用又は電気製品用外装部材として用いられるものであり、該外装部材の裏側を構成する基材2と、表側を構成する透光部材3とを積層してなるものであり、透光部材3には表側から視認可能な意匠層4が設けられている。基材2と透光部材3とは接合されて一体化している。透光部材3が本発明の第1部材であり、基材2が本発明の第2部材である。
【0031】
基材2は、レーザー光を通さないレーザー光非透過性を有する材料で構成された板状の部材である。レーザー光非透過性とは、レーザー光を吸収するレーザー光吸収性のことであり、加熱源としてのレーザー光を一部透過及び/又は反射しても残りを吸収する性質をいい、レーザー光の全てを吸収するものも含む。このような性質を持つ材料としては、例えば、金属、セラミックスの他、樹脂やゴムに顔料や染料を混合した材料もある。レーザー光非光透過性としては、例えば、波長940nmのレーザー光の透過率が15%未満であることが好ましい。本実施形態では、基材2は金属材料で構成されている。
【0032】
透光部材3は、無色透明で、レーザー光を通すレーザー光透過性を有する材料で構成された板状の部材である。レーザー光透過性とは、加熱源としてのレーザー光を殆ど反射も吸収もせずに透過させるか、レーザー光を一部透過及び/又は反射しても溶融することなく、残りのレーザー光を透過させることのできる性質をいい、レーザー光の全てを透過させるものも含む。透光部材3は、例えば熱可塑性樹脂で構成することができ、具体的には、ポリエチレン(HDPE、LDPE、LLDPE、VLDPE、ULDPE、UHDPE、Polyethylene)、ポリプロピレン(PPCo-Polymer、PP Homo-Polymer、PP Ter-Polymer)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、スチレンアクリロニトリル樹脂(SAN)、K-レジン、SBS樹脂(SBSblock co-polymer)、PVDC樹脂、EVA樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、シリコン樹脂、ポリアミド(PA、PA6、PA66、PA46、PA610、PA612、PA6/66、PA6/12、PA6T、PA12、PA1212、PAMXD6)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、液晶ポリマー、ポリブチレンテレフ夕レート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエチレンナフタリン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアセタール、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリチオエチルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルイミドなどが挙げられる。
【0033】
その他、極性官能基が化学的に結合した変性樹脂も含み、具体的には、アクリル酸変性オレフィン樹脂、マレイン酸変性オレフィン樹脂、塩化変性オレフィン樹脂(CPP、CPE)、シラン変性オレフィン樹脂、アイオノマー樹脂、ナイロン変性オレフィン樹脂、エポキシ変性樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂(EVOH)、エチレンビニールアセテート樹脂、ホットメルト接着樹脂などの樹脂が挙げられ、これらと上記熱可塑性樹脂の混合物または組合物であってもよい。
【0034】
透光部材3は、熱可塑性エラストマーであってもよく、具体的には、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、塩ビ系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、イソプレン系エラストマー、イオンクラスターと非晶性PE系のエラストマー(商品例:三井・デュポン ポリケミカル製ハイミラン)、塩素化PEと非晶性PE系のエラストマー(商品例:三菱化学製ミラプレーン)、フッ素系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー等が挙げられる。
【0035】
透光部材3は熱硬化性樹脂であってもよく、具体的には、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0036】
透光部材3は、熱硬化性を有するゴムであってもよく、具体的には、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム及びシリコンゴム等が挙げられる。
【0037】
また、上述した熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂に補強材や充填材を混合して作った複合樹脂で透光部材3を構成してもよい。
【0038】
上記樹脂、エラストマーに対しては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、導電剤、核剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤、加工調剤、着色及び機能性顔料または染料、架橋剤、可塑剤及び加硫剤からなる群から選択された少なくとも一つを混合することも可能である。着色顔料や染料を混合する場合は、所定のレーザー光透過性を確保できる程度の量とする。
【0039】
透光部材3は、上記樹脂の他、例えば、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス等で構成してもよい。また、強化ガラス、合わせガラス、積層ガラス等であってもよい。レーザー光透過性としては、例えば、波長940nmのレーザー光の透過率が20%以上であることが好ましく、さらに好ましくは50%以上である。尚、透光部材3は、無色に限られるものではなく、薄く着色されていてもよく、意匠層4を表側から見ることのできる透光性を有していればよい。
【0040】
基材2及び透光部材3の厚みは、外装部材の種類等により異なるが、数mm程度である。また、基材2をレーザー光透過性部材からなるものとしてもよい。
【0041】
透光部材3の裏面である基材2側の面には、透光部材3の表側に意匠が現れるように意匠層4が設けられている。この意匠層4は、染料や顔料を含むインクを透光部材3の裏面に付着させることによって形成された印刷塗膜からなるものである。インクの硬化性化合物については、例えば、アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、カルボキシル基変性エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、不飽和ポリエステル樹脂、共重合系アクリレート、ポリアクリルアクリレート、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。硬化性インクは、例えば、自然乾燥硬化タイプ、焼付け乾燥による熱硬化タイプ、硬化剤を用いる二液型の反応硬化タイプ、紫外線や電子線などで硬化させる放射光硬化タイプ、漆などが挙げられる。融点以下のレーザー照射条件に限り熱可塑性であっても問題ない。また、染料としては、レーザー光の非透過性を有するものであればよく、アカネ、ベニバナなどの天然染料、反応、硫化、ナフトールなどの合成染料、蛍光染料など種類は問わない。また、顔料としては、レーザー光の非透過性を有するものであればよく、例えば、カーボンブラックや複合酸化物系顔料等の無機顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、レーキ顔料、多環式系顔料等の有機顔料が挙げられ、レーザー光の波長に対応した非透過性を有する各種顔料を使用できる。意匠層4を印刷塗膜で形成したことで、精緻な意匠が得られる。印刷方法としては、例えば、凸版印刷、凹版印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、シルク印刷、グラビア印刷、レーザー印刷、インクジェット印刷等、各種印刷方法を用いることができる。
【0042】
また、意匠層4によって構成される意匠は、例えば、文字、図形、記号、絵、グラデーションパターン、単色による塗りつぶし、又はこれらを組み合わせたもの等、様々な形態がある。また、意匠層4の厚みとしては、例えば、1μm以上100μm以下であるが、この範囲に限られるものではない。また、意匠層4におけるレーザー光非透過性としては、例えば、波長940nmのレーザー光の透過率が15%未満であることが好ましい。
【0043】
尚、意匠層4は、上記のように印刷塗膜で形成するもの以外にも、例えば、蒸着膜、フィルムの貼り付け、プライマーの塗布等で形成することも可能である。蒸着膜の場合は、意匠層4は極めて薄くなる。また、意匠層4の全部がレーザー光非透過性である必要はなく、基材2と透光部材3との接合部分に対応する一部のみがレーザー光非透過性であってもよい。
【0044】
基材2の表面である透光部材3側の面には、レーザー接合用中間部材5が設けられており、この中間部材5は意匠層4に隣接している。
【0045】
中間部材5は、シート状の弾性部材からなる。具体的には、中間部材5は、レーザー光で加熱された意匠層4の熱によって溶融するホットメルト材で構成されており、常温付近でゴム弾性を示す高分子物質(粘着剤やエラストマー)のうち、熱可塑性を有するものが好ましい。すなわち、中間部材5の材料としては、上記した粘着剤や熱可塑性エラストマーや、架橋ゴム等を使用することができ、特に限定されないが、粘着剤としてはゴム系、アクリル系、ウレタン系、シリコン系等が挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、塩ビ系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、イソプレン系エラストマー、イオンクラスターと非晶性PE系のエラストマー(商品例:三井・デュポン ポリケミカル製ハイミラン)、塩素化PEと非晶性PE系のエラストマー(商品例:三菱化学製ミラプレーン)、フッ素系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー等が挙げられる。熱可塑性エラストマーはゴム系粘着剤のベースとしても一般的であり、特に限定されないがタッキファイヤやオイル、液状オリゴマー、架橋剤等を配合することで粘着剤になり得る。
【0046】
タッキファイヤとしては、具体的に、例えばロジン系粘着付与樹脂である、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合などにより変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンの他、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが挙げられる。前記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物や、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物などのロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン類や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩などが挙げられる。また、ロジン誘導体としては、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂なども用いることができる。
【0047】
テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペン−フェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0048】
炭化水素系粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂[炭素数4〜5のオレフィンやジエン(ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1等のオレフィン;ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン等のジエンなど)などの脂肪族炭化水素の重合体など]、芳香族系炭化水素樹脂[炭素数が8〜10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン、メチルインデンなど)の重合体など]、脂肪族系環状炭化水素樹脂[いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテンなど)の重合体又はその水素添加物、芳香族系炭化水素樹脂や脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂など]、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体など)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂などの各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。オイルとしては大別されるパラフィン系、ナフテン系、アロマ系から選べばよい。
【0049】
液状オリゴマーとしては、アクリル系、スチレン系、ポリイソプレンやブタジエンなどのゴム系、ポリエステル系、その他分子量数百〜数千程度の高粘度の重合体から選択する。その他必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、導電剤、核剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤、加工調剤、着色及び機能性顔料または染料、架橋剤、可塑剤及び加硫剤からなる群から選択された少なくとも一つを使用することが好ましい。
【0050】
また、架橋ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム及びシリコンゴム等が挙げられる。これらの架橋ゴムには必要に応じていろいろな添加剤が配合されていてもよい。例えば、芳香族メルカプタン系、芳香族ジスルフィド系、芳香族メルカプタン亜鉛系の素練り促進剤、有機酸系、ニトロソ化合物系、スルフェンアミド系のスコーチ防止剤、パラフィン系、芳香族系、ナフテン系、液状ゴム系の可塑剤、ロジン誘導体系、テルペン系の天然樹脂系粘着付与剤やクマロン(インデン)樹脂系、石油樹脂系、アルキルフェノール樹脂系、キシレン・ホルムアルデヒド系樹脂等の合成樹脂系粘着付与剤、ハロゲン系、金属水和物系、シリコン系、リン系難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、架橋剤、架橋助剤、加硫もどり防止剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤といった一般的なゴムプラスチック配合薬品が挙げられる。
【0051】
中間部材5の溶融温度は、意匠層4の溶融又は分解温度よりも低く設定されている。
【0052】
尚、粘着剤や架橋ゴムを中間部材5の材料とする場合には、レーザー光による溶着性が低下してしまうのを回避する理由から、架橋の程度が低い方が好ましい。
【0053】
また、中間部材5の厚さは、例えば、10μm以上1000μm以下が好ましいが、この範囲に限定されるものではない。中間部材5は、極めて薄い場合には、フィルム状を呈することになり、一方、厚い場合には板状を呈することになる。
【0054】
中間部材5を構成するホットメルト材としては、より具体的には、例えは常温で弾性を有するアクリル系のブロックポリマーが好ましい。また、ホットメルト材としては、例えば、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SEBS(スチレン−水添ブタジエン−スチレン)等であってもよい。
【0055】
中間部材5には、熱伝導性フィラーが混合されている。熱伝導性フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化タンタル、窒化ニオブ等の無機窒化物等がある。
【0056】
その他熱伝導性フィラーとして、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム等とそのウィスカー、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、アスベスト、炭化ケイ素、セラミック、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、シリカ、パイロフィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、モンモリロナイト、マイカ、雲母、ネフェリンシナイト、タルク、アタルバルシャイト、ウォラストナイト、PMF、フェライト、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、二硫化モリブデン、黒鉛、石こう、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスバルーン、石英、石英ガラスなどが挙げられる。また使用するフィラーは中空であってもよい。また、これらのフィラーは2種以上を併用することが可能であり、必要によりシラン系、チタン系などのカップリング剤で予備処理して使用することができる。
【0057】
また、熱伝導性のフィルムやクロス、アルミニウム箔、銅箔等を、中間部材5の一部として用いてもよい。アルミニウム箔の厚さは例えば50μm程度が好ましく、また、銅箔の厚さは例えば30μm程度が好ましい。また、アルミニウム箔や銅箔に限られるものではなく、各種金属フィルムやシートを中間部材5の一部として用いてもよい。
【0058】
さらに、中間部材5には、レーザー光を吸収するレーザー光吸収剤が混合されている。レーザー光吸収剤としては、例えば、黒色の吸収剤では、無機顔料としてカーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、グラファイトや金属酸化物のマグネタイト、チタンブラック、酸化クロム等があり、有機顔料としてはアゾ顔料、多環式系顔料等が挙げられる。
【0059】
また、近赤外領域の波長を吸収する吸収剤もレーザー光吸収剤として使用することができ、例えば、ミアニン色素、チオニールニッケル錯体、ビス−[ミス1,2トルイル]エチレン−1,2ジチオレートニッケル、ビス−[1クロロ−3,4ジチオレート]ニッケル・テトラブチルアンモニウム等の金属錯体を好適に使用でき、また、830nmに最大吸収波長を有するジエチルアミノナフトールスクアリリウム、ジメチルアミノナフトールスクアリリウム等のスクアリリウム色素も使用できる。さらに、ポリメチン系色素、(ジ)インモニウム系色素、フタロシアニン系色素、トリアリルメタン系色素、ナフトキノン系色素等を好適に使用することができる。
【0060】
尚、レーザー吸収剤は、これらに限られるものではなく、レーザー光を吸収して発熱する材料であれば溶解または分散させて使用できる。
【0061】
中間部材5には、粘着性付与剤が混合されている。これにより、中間部材5の基材2側の面及び透光部材3側の面は、粘着性を有することになる。従って、中間部材5は、基材2及び透光部材3に粘着する。中間部材5の粘着力は、JIS Z0237の10.4に基づいて測定したSUS304板に対する180度引きはがし粘着力が0.1N/25mm以上となるように設定されている。
【0062】
粘着性付与剤としては、上記したものが挙げられる。
【0063】
また、中間部材5と意匠層4の樹脂組成はSP値(溶解性パラメータ)が近いほど相溶性が良く高い接合強度が得られる。
【0064】
次に、上記接合品1の製造要領について説明する。まず、透光部材3の裏面に意匠層4を形成する。顔料を含む着色インクを印刷機等によって透光部材3の裏面に付着させる。
【0065】
尚、意匠層4を蒸着膜とする場合には、蒸着装置によって金属等の蒸着物を透光部材3の裏面に蒸着させる。また、意匠層4をフィルムとする場合には、フィルムを透光部材3の裏面に貼り付ける。さらに、意匠層4をプライマーとする場合には、プライマーを透光部材3の裏面に塗布する。
【0066】
また、基材2に、例えば、UV(紫外線)、EB(電子線)、オゾン等を照射してもよい。こうすることによってレーザー光照射後の接着力を向上させることもできる。
【0067】
そして、基材2と透光部材3との間に中間部材5を配置して、基材2、中間部材5及び透光部材3を重ねる。このとき、中間部材5が粘着性を有しているので、透光部材3及び基材2は中間部材5に粘着する。これにより、透光部材3が基材2に仮固定された状態となるので、後述のレーザー光を照射する際に両部材2,3をクランプしなくても位置ずれを抑制できる。尚、基材2及び透光部材3を厚み方向にクランプしてもよく、クランプすることで、レーザー光が照射されたときの発熱による基材2及び透光部材3の膨張、基材2及び透光部材3間の気泡の発生を抑制できるので、接合の信頼性をより向上できる。
【0068】
その後、図1に示すように、レーザー光Lを透光部材3側から意匠層4へ向けて照射する。このレーザー光Lを照射する装置は、周知の装置を利用することができる。レーザー光Lの種類としては、例えば、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザー等のいずれでもよく、レーザー光Lの種類は限定されない。レーザー光Lの種類は、基材2及び透光部材3の材料や、透光部材3の厚さ、意匠層4の溶融又は分解温度、透光部材3のレーザー光透過度合い等に応じて適宜選択できる。また、レーザー光Lは、1つの波長からなるものであってもよいし、2つ以上の波長を有するものであってもよい。
【0069】
レーザー光照射装置の出力は数W程度の低い値に設定されており、透光部材3を透過して意匠層4に到達したレーザー光Lによって意匠層4が溶融又は分解しない程度の出力である。また、レーザー光Lの走査速度についても、意匠層4が溶融又は分解しない程度の速度に設定されている。接合範囲がレーザー光Lの照射径よりも広い場合には、必要に応じてレーザー光源又は接合対象物(基材2、中間部材5及び透光部材3)を移動させながらレーザー光Lの照射を行ってもよい。
【0070】
照射されたレーザー光Lは、透光部材3を透過して意匠層4に到達する。意匠層4に到達したレーザー光Lは、意匠層4に吸収され、意匠層4が加熱される。意匠層4の温度は、レーザー光Lの出力が上記したように低出力に設定されているので、意匠層4の溶融又は分解温度を超えない温度となる。
【0071】
意匠層4の熱は隣接する中間部材5に伝わる。中間部材5には熱伝導性フィラーが混合されているので、意匠層4の熱が中間部材5の全体に伝わりやすい。中間部材5が溶融温度となるまで加熱されて溶融する。中間部材5が溶融すると、透光部材3の意匠層4に密着するとともに、基材2にも密着する。このとき、レーザー光Lの出力が上記のように設定されているので、意匠層4は溶融又は分解しない。
【0072】
レーザー光Lの一部(照射されたレーザー光Lのうちの数%)は、意匠層4を透過することがある。意匠層4を透過した僅かなレーザー光Lは中間部材5に到達する。この中間部材5にレーザー光吸収剤が混合されているので、意匠層4を透過したレーザー光Lは中間部材5に吸収される。このことによっても、中間部材5が僅かではあるが加熱されるので、レーザー光Lを有効に利用できる。
【0073】
上記のように、本接合方法によればレーザー光Lが数W程度の低出力で済むので、基材2や透光部材3が熱によって損傷(焦げや変形)してしまうのを抑制でき、また、基材2の周辺に他の部材や機器がある場合には、それらの熱による損傷も抑制できる。よって、本接合方法の用途は広い。
【0074】
そして、レーザー光Lの照射を終了した後、中間部材5は冷却・固化される。中間部材5が固化すると、基材2と透光部材3とが接合されて接合品1が得られる。この接合品1を透光部材3の表側から見ると、意匠層4の意匠が透光部材3を通して奥の方に見えることになり、意匠に深みが出る。この意匠層4は溶解していないので、見栄えは良好である。
【0075】
また、レーザー光Lの照射によって基材2と透光部材3とを溶着する際には、加熱された後冷却されるという、熱サイクルを受ける。このとき、基材2と透光部材3との線膨張係数の違い等が原因となって接合界面に応力が生じることがある。このことに対しては、中間部材5が粘着剤やエラストマーで構成されていることから、接合界面の応力を緩和することができる。これにより、接合強度の低下や剥がれを防止できる。
【0076】
また、得られた接合品1には、使用時に熱的なストレスや機械的な力が加わって基材2と透光部材3との接合界面に応力が発生することがあるが、このような応力も中間部材5の存在によって緩和することができる。従って、接合品1を長期間に亘って使用しても接合強度を維持することができる。
【0077】
以上説明したように、この実施形態にかかる接合方法によれば、透光部材3の表側に意匠が現れるようにレーザー光非透過性の意匠層4を設け、中間部材5を、透光部材3と基材2との間において意匠層4に隣接するように設け、意匠層4を溶融又は分解温度を越えない所定温度となるまでレーザー光Lにより加熱し、意匠層4の熱によって中間部材5を加熱して基材2及び透光部材3を接合するようにしたので、外観見栄えの良好な接合品1を得ることができる。
【0078】
また、中間部材5が基材2及び透光部材3に粘着する粘着性を有しているので、レーザー光Lを照射する前に、基材2及び透光部材3を簡単に一体化して位置ずれを抑制でき、接合強度を十分に得ることができるとともに、より見栄えの良好な接合品1を得ることができる。
【0079】
また、中間部材5をホットメルト材としたので、接着強度が十分に得られる。
【0080】
また、中間部材5に熱伝導性フィラーを混合したので、意匠層4の熱が中間部材5の全体に伝わりやすくなり、中間部材5を確実に溶融させて接合が確実に行えるようになる。
【0081】
また、中間部材5にレーザー光吸収剤が混合されているので、意匠層4に吸収されなかったレーザー光を中間部材5に吸収させることができる。これにより、レーザー光Lを有効に利用して中間部材5を加熱できる。
【0082】
尚、上記実施形態では、透光部材3側からレーザー光を照射するようにしているが、これに限らず、基材2をレーザー光透過性を有する部材で構成し、基材2側からレーザー光を照射するようにしてもよい。この場合、中間部材5はレーザー光透過性を有する部材とする。これにより、基材2側から照射されたレーザー光が意匠層4に到達して意匠層4が加熱されるので、上記したように中間部材5が意匠層4の熱により加熱されて基材2と透光部材3とが接合される。
【0083】
また、中間部材5をコア層と、コア層の両面にそれぞれ設けられた粘着層とで構成してもよい。
【0084】
また、中間部材5は意匠層4の熱で溶融又は分解させることなく、単に軟化させるようにしてもよい。これはレーザー光の出力や中間部材5の材料を変更すること等で可能である。中間部材5を軟化させることによっても、中間部材5を基材2及び透光部材3に密着させることができるので、確実に接着できる。
【0085】
また、中間部材5は、粘着テープで構成してもよい。この場合、中間部材5を軟化させて密着させることで接合部分に気泡が存在するのを抑制でき、気密性及び水密性が向上する。特に、幅の狭い粘着テープでは、気密性及び水密性が向上するという効果が顕著に現れる。
【0086】
また、意匠層4を基材2に設け、意匠層4の表側に中間部材5を設けてもよい。この場合、中間部材5をレーザー非透過性部材とすることで、透光部材3側からレーザー光を照射した際に、レーザー光が中間部材5を透過して意匠層4を加熱し、この意匠層4の熱が中間部材5に伝わることになる。
【0087】
また、本発明にかかる接合方法は、化粧品用ケース、住設用又は電気製品用外装部材以外にも、各種接合品を製造する場合に適用できる。
【実施例】
【0088】
本発明の実施例について表1に基づいて説明する。
【0089】
【表1】

【0090】
透光部材3は、比較例及び実施例1〜4の全てで同じ部材であり、メタクリル樹脂(PMMA)の板材で厚みは2mm、レーザー光の透過率は93%である。
【0091】
意匠層4は、比較例及び実施例1〜4の全てで同じであり、UVスクリーンインクの黒色(十条ケミカル株式会社製:レイキュアGA4100)を用いて厚みが10μmとなるようにスクリーン印刷により形成した。レーザー光の透過率は4%である。
【0092】
また、基材2と透光部材3とは、幅25mm×奥行35mmの範囲で重ねている。中間部材5は、幅25mm×奥行5mmとし、その全体が基材2と透光部材3との間に位置するように、基材2と透光部材3とで挟んだ状態としている。
【0093】
また、レーザー光はフォーカス0mmで照射し、基材2及び透光部材3の幅方向に走査した(走査距離25mm)。
【0094】
1.比較例
中間部材5は、アクリル系ホットメルト粘着剤であり、厚みは50μmである。アクリル系ホットメルトは、アクリルポリマー(例えば、株式会社クラレ製のLA2250)と、粘着付与剤(例えば、荒川化学工業株式会社製のSE−A−115)とを混合してなる。
【0095】
基材2は、ステンレス鋼(SUS304)の板材であり、厚みは1mmである。
【0096】
レーザー光は半導体レーザーであり、波長940nm、出力30W、走査速度6m/分である。
【0097】
レーザー光を照射する前は、接合強度は実用に耐えるのが困難なほど低かった。具体的には、基材2と透光部材3とを手で持って引き離そうとすると容易に剥離してしまう程度の接合強度であった。
【0098】
接合強度の試験方法は、接合状態にある基材2及び透光部材3を剪断方向で、かつ、レーザー光の走査方向と直交する方向に引張力(引張速度5mm/分)を加えて行った。比較例のレーザー光照射前では、剥離したときの力を応力に換算すると、0.5MPa以下であった。
【0099】
また、基材2及び透光部材3を水に浸けると、基材2及び透光部材3の間に水が侵入した。
【0100】
レーザー光を照射した後については、照射前と同じで、接合強度は実用に耐えるのが困難なほど低かった。つまり、上記試験方法で応力値が0.5MPa以下であった。また、基材2及び透光部材3の間に水が侵入した。意匠層4は、インクが分解して白化する現象が起こった。これはレーザー光の出力が強かったことに起因する現象である。
【0101】
2.実施例1
中間部材5及び基材2は、比較例と同じである。
【0102】
レーザー光は半導体レーザーであり、波長808nm、出力2W、走査速度0.6m/分である。
【0103】
レーザー光を照射する前は、接合強度は実用に耐えるのが困難なほど低く、上記試験方法で応力値が0.5MPa以下であった。また、基材2及び透光部材3の間に水が侵入した。
【0104】
レーザー光を照射した後は、接合強度は実用に十分に耐えるレベルであった。具体的には、上記試験方法で応力値が1.2MPa以上であった。1.2MPa以上とは、基材2と透光部材3とを手で持って引き離そうとしても容易には剥離しない程度の接合強度である。
【0105】
また、基材2及び透光部材3の間には水が侵入しなかった。意匠層4には変化がなかった。
【0106】
3.実施例2
中間部材5は、アクリル系粘着テープであり、厚みは100μmである。このテープは、日東電工株式会社製の品番No.5000NSである。
【0107】
基材2は、ポリカーボネートの板材であり、厚みは2mmである。ポリカーボネートは、三菱樹脂株式会社製のステラS300である。
【0108】
レーザー光は半導体レーザーであり、波長808nm、出力3W、走査速度0.6m/分である。
【0109】
レーザー光を照射する前は、接合強度はある程度確保できるが、基材2及び透光部材3の間に水が侵入した。
【0110】
レーザー光を照射した後は、接合強度は実用に十分に耐えるレベルであった。具体的には、上記試験方法で応力値が1.0MPa以上であった。また、基材2及び透光部材3の間には水が侵入しなかった。意匠層4には、レーザー光を照射した痕跡が残ったが、比較例に比べて見栄えはよい。
【0111】
4.実施例3
中間部材5は、アクリル系ホットメルト粘着剤に窒化ホウ素(熱伝導性フィラー)を混合したものであり、厚みは50μmである。窒化ホウ素は、ESK CERAMICS株式会社製のものであり、平均粒径は2μmである。また、窒化ホウ素の添加量は、10重量%である。
【0112】
基材2は、比較例と同じである。
【0113】
レーザー光は半導体レーザーであり、波長808nm、出力3W、走査速度0.6m/分である。
【0114】
レーザー光を照射する前は、接合強度は実用に耐えるのが困難なほど低く、上記試験方法で応力値が0.5MPa以下であった。また、基材2及び透光部材3の間に水が侵入した。
【0115】
レーザー光を照射した後は、接合強度は実用に十分に耐えるレベルであった。具体的には、上記試験方法で応力値が2.4MPa以上であった。2.4MPa以上とは、基材2と透光部材3とを手で持って引き離そうとしても強い力を加えなければ剥離しない程度の接合強度である。
【0116】
また、基材2及び透光部材3の間には水が侵入しなかった。意匠層4には変化がなかった。
【0117】
5.実施例4
中間部材5は、アクリル系ホットメルト粘着剤に近赤外線吸収剤を混合したものであり、厚みは50μmである。近赤外線吸収剤は、昭和電工株式会社製のIR−13Fである。また、近赤外線吸収剤の添加量は、0.5重量%である。
【0118】
基材2は、比較例と同じである。
【0119】
レーザー光は半導体レーザーであり、波長808nm、出力3W、走査速度0.6m/分である。
【0120】
レーザー光を照射する前は、接合強度は実用に耐えるのが困難なほど低く、上記試験方法で応力値が0.5MPa以下であった。また、基材2及び透光部材3の間に水が侵入した。
【0121】
レーザー光を照射した後は、接合強度は実用に十分に耐えるレベルであった。具体的には、上記試験方法で応力値が2.4MPa以上であった。また、基材2及び透光部材3の間には水が侵入しなかった。意匠層4には変化がなかった。
【0122】
6.実施例5
中間部材5は、スチレン系エラストマーホットメルト粘着剤に近赤外線吸収剤を混合したものを含んでいる。具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレンエラストマー(JSR株式会社製 TR−2601)50部と、粘着付与剤(ヤスハラケミカル株式会社製 TO−115)50部と、赤外線吸収剤(日本化薬株式会社製 カヤソープIGR−068)0.5部とをトルエンに溶解し、固形分40%の溶液を得て、この溶液を厚さ25μmのPETフィルムの両面に100μmの厚さで塗布し、両面に粘着性を有する両面粘着材を作製した。これが中間部材5である。尚、レーザー光の照射条件は実施例4等と同様である。
【0123】
レーザー光を照射する前は、接合強度は実用に耐えるのが困難なほど低く、上記試験方法で応力値が0.5MPa以下であった。また、基材2及び透光部材3の間に水が侵入した。
【0124】
レーザー光を照射した後は、接合強度は実用に十分に耐えるレベルであった。また、基材2及び透光部材3の間には水が侵入しなかった。意匠層4には変化がなかった。
【0125】
7.実施例6
中間部材5は、スチレン系エラストマーホットメルト粘着剤に近赤外線吸収剤を混合したものを含んでいる。具体的には、スチレン−イソプレン−スチレンエラストマー(JSR株式会社製 5200P)50部と、粘着付与剤(ヤスハラケミカル株式会社製 P−115)50部と、赤外線吸収剤(日本化薬株式会社製 カヤソーブIGR−068)0.5部とをトルエンに溶解し、固形分40%の溶液を得て、この溶液を厚さ25μmのPETフィルムの両面に100μmの厚さで塗布し、両面に粘着性を有する両面粘着材を作製した。これが中間部材5である。尚、レーザー光の照射条件は実施例4等と同様である。
【0126】
レーザー光を照射する前は、接合強度は実用に耐えるのが困難なほど低く、上記試験方法で応力値が0.5MPa以下であった。また、基材2及び透光部材3の間に水が侵入した。
【0127】
レーザー光を照射した後は、接合強度は実用に十分に耐えるレベルであった。また、基材2及び透光部材3の間には水が侵入しなかった。意匠層4には変化がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
以上説明したように、本発明にかかるレーザー光を用いた接合方法は、例えば、化粧品用ケース、住設用又は電気製品用外装部材を製造するのに用いることができる。
【符号の説明】
【0129】
1 接合品
2 基材(第2部材)
3 透光部材(第1部材)
4 意匠層
5 中間部材
L レーザー光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する第1部材と、第2部材とをレーザー光を用いて接合する接合方法において、
上記第1及び第2部材のうち、少なくとも一方はレーザー光透過性を有する材料で構成し、
上記第1及び第2部材の少なくとも一方に、該第1部材の表側に意匠が現れるようにレーザー光非透過性の意匠層を設け、
上記第1及び第2部材を接合するためのレーザー接合用中間部材を、該第1部材と第2部材との間に、上記意匠層に隣接して設け、
上記レーザー光透過性を有する部材側から上記意匠層へ向けて該意匠層の溶融又は分解温度を越えない所定温度となるまで該意匠層を加熱するためのレーザー光を照射し、該意匠層の熱によって上記中間部材を加熱して上記第1及び第2部材を接合することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接合方法において、
中間部材は、第1部材及び第2部材に粘着する粘着性を有していることを特徴とする接合方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の接合方法において、
中間部材は、意匠層の熱により溶融するホットメルト材であることを特徴とする接合方法。
【請求項4】
請求項3に記載の接合方法において、
ホットメルト材は、熱可塑性エラストマーであることを特徴とする接合方法。
【請求項5】
請求項3に記載の接合方法において、
ホットメルト材は、アクリル系のものであることを特徴とする接合方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の接合方法において、
中間部材は、熱伝導性フィラーを有していることを特徴とする接合方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の接合方法において、
中間部材は、意匠層に対し、レーザー光の照射方向と反対側に隣接するように配置され、
上記中間部材には、レーザー光を吸収するレーザー光吸収剤が混合されていることを特徴とする接合方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−156858(P2011−156858A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252765(P2010−252765)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【Fターム(参考)】