説明

レーザー出力断警報の保持システム

【課題】光ネットワークを冗長構成で構築し、現用系でレーザの故障による出力断が発生し予備系に切替えた時に現用系のレーザ出力を止める為に、レーザ出力断警報がマスクされてしまう結果、現用系から予備系にいかなる警報で切替ったのか故障箇所の特定が困難になる。
【解決手段】現用系及び予備系レーザのレーザ出力断を含む警報要因により現用系か予備系の一方を出力制御し他方を出力停止制御する切替制御回路と、現用系レーザの出力パワーを監視してレーザ出力断を検出する現用系レーザ出力断検出回路と、予備系レーザの出力パワーを監視してレーザ出力断を検出する予備系レーザ出力断検出回路と、現用系レーザ出力断警報と系選択状況から現用系レーザ出力断警報を保持する現用系警報保持回路と、予備系レーザ出力断警報と系選択状況から予備系レーザ出力断警報を保持する予備系警報保持回路とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ネットワークに関し、特に、光ネットワークを冗長構成で構築している場合に、レーザー出力断警報の発生で現用、予備の切り替えが起きた場合の問題点と、その改善方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光伝送装置において、レーザーの故障で大幅にレーザー出力パワーの低下が発生すると、レーザー出力断警報を発生させるが、レーザー出力を出力停止制御で止めている場合には止めたことによるパワーの低下で発生する二次的なレーザー出力断警報を不要警報としてマスクしている。
【0003】
ここで、光ネットワークを冗長構成で構築し、現用系でレーザーの故障による出力断が発生し予備系に切り替えた場合には、現用系のレーザー出力を止めるために、レーザー出力断警報がマスクされてしまう。そのために現用系から予備系にいかなる警報で切り替わったのかの履歴がなくなる結果、故障箇所の特定が困難になる。
【0004】
冗長構成にて構築されたこの種の光ネットワークの先行技術として下記のものが提案されている。
【0005】
第1の従来例(特許文献1)として挙げられる特開平6―120967号公報には、左系ループを運用系として使用し、右系ループを待機系として利用し、左系ループに接続されている光送信部のレーザーが異常となり発光出力が低下すると、レーザー発光をモニターしている自動光出力電力制御部がこの異常を検知して監視制御装置インタフェース部を介して警報情報を監視制御装置に出力することが開示されている。しかるに、その警報情報を保持することは記載されてはいない。
【0006】
次に第2の従来例(特許文献2)として挙げられる特開平11−177468号公報に開示された発明は、予備の送受信機がパワーオフ状態のために、現用、予備切替によってパワーオンになるまで障害を発見できないこと、また、故障している送受信機がパワーオンによってアラームとなった後にリセットすると更に現用、予備切替が発生してこの送受信機は予備となり故障の発見が遅れるが、この故障を早期に発見する方法とシステムを提供することを目的とし、この目的を達成するために、切替信号発生部は定期的に送受信機の予備切替を行なうことによりすべての送受信機を定期的にパワーオンにし、アラームが発生した場合には、状態監視及び制御信号発生部は送受信機からの状態報告信号を受信することによりアラーム内容を認識し、パワーオンに伴うアラームであればリセットをせずにアラームを保持することにある。
【0007】
しかしながら、具体的な構成あるいは方法は開示されていない。しかもこの第2の従来例は、現用、予備の送受信機が運用中に障害が発生した場合ではなく、現用、予備の送受信機を定期的に切り替えて正常に動作するか否かの試験を行なう為の技術である。
【特許文献1】特開平6−120967号公報
【特許文献2】特開平11−177468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は従来の上記実情に鑑み、従来の技術に内在する上記諸問題を解消する為になされたものであり、従って本発明の目的は、レーザー出力断警報が発生したために現用系バスと予備系バスの切り替えが惹起されて警報の発生したバスのレーザー出力が停止した場合に、レーザー出力断警報が出力されなくなった後もその警報を有効に保持することで、切り替わった際の切替要因がレーザー出力断であることの適切な判断を可能としたレーザー出力断警報保持手段及びそのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する為に、本発明に係るレーザー出力断警報保持システムは、第1のバスおよび第2のバスと、該第1のバスに接続され光信号を送出する第1のレーザーと、前記第2のバスに接続され光信号を送出する第2のレーザーと、前記第1及び第2のレーザーのレーザー出力断を含む警報要因あるいは手動での第1の系と第2の系の選択により該第1の系か第2の系の一方を出力制御し他方を出力停止制御する切替制御回路と、前記第1のレーザーの出力パワーを監視してレーザー出力断を検出する第1のレーザー出力断検出回路と、前記第2のレーザーの出力パワーを監視してレーザー出力断を検出する第2のレーザー出力断検出回路と、前記第1のレーザー出力断警報と系選択状況から該第1のレーザー出力断警報を保持する第1の警報保持回路と、前記第2のレーザー出力断警報と系選択状況から該第2のレーザー出力断警報を保持する第2の警報保持回路とを具備し、該第1、第2の警報保持回路の出力は前記切替制御回路に結合されているレーザー出力断警報の保持システム、によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上の如く構成され、作用するものであり、本発明によれば、以下に示す如き効果が得られる。
【0011】
即ち、本発明は、光ネットワークを冗長構成で構築している場合に、レーザー出力断警報の発生で現用系、予備系の切り替えが起きた場合にレーザー出力断警報で切り替えが実現されたことを的確に特定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態について実施例に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0013】
図1は本発明の一実施例を示すブロック構成図である。
【0014】
本発明においては、レーザー出力断警報を保持する回路を持たせることで、現用系、予備系とが切り替わった後もそのレーザー出力断警報を保持する。
【0015】
図1において、本発明に係るシステムは、現用系バス1と予備系バス2、レーザー出力断を含む警報要因や手動での現用系と予備系の選択により、現用系か予備系の片方を出力制御しもう片方を出力停止制御する切替制御回路3、電気信号を光信号に変換し、光信号を送出するレーザー4と5、レーザーの出力パワーを監視してレーザー出力断警報を検出するレーザー出力断検出回路6と7、レーザー出力断警報と系選択状況からレーザー出力断警報を保持する警報保持回路8と9からなっている。13は切替制御回路3に必要に応じて入力される例えば定期的に実行される現用、予備の切り替え動作をさせる他の切替要因あるいは手動切替制御信号である。
【0016】
従来の構成では、現用系バス1を選択中にレーザー4が故障して出力パワーが低下した場合には、レーザー出力断検出回路6はレーザー出力断警報を直接切替制御回路3へ通知し、通知を受けた切替制御回路3は予備系バス2への切替制御を行なうためにレーザー5を出力制御し、レーザー4を出力停止制御していた。レーザー4の出力を停止するために、レーザー出力断検出回路6はレーザー出力断警報をマスクする。従って、レーザー出力断検出回路6のレーザー出力断警報が消えてしまうために、いかなる警報が発生されて切替制御がなされたのか分からなくなってしまっていた。
【0017】
この問題を解決する方法として、本発明においては、現用系バス1を選択中にレーザー4が故障して出力パワーが低下した場合には、レーザー出力断検出回路6はレーザー出力断警報を警報保持回路8に通知し、警報保持回路8は切替制御回路3へ通知する。通知を受けた切替制御回路3は予備系バス2への切替制御を行なうためにレーザー5を出力制御してレーザー4を出力停止制御する。同時に切替制御回路3は警報保持回路8と9に対して現用系バス1が非選択になり予備系バス2が選択されたことを通知する。現用系バス1が非選択となり、レーザー4が出力停止制御されるとレーザー出力断警報が不要警報としてマスクされる。警報保持回路8はレーザー出力断警報がマスクされたために通知されなくなるが、レーザー4が出力停止制御されたためにレーザー出力断警報が通知されなくなったことを判断し、レーザー出力断警報を保持する、という構成にすることでいかなる警報で切替制御が行なわれたのかを判別することができる。
【0018】
次に本発明に係る実施の形態の一実施例の動作について説明する。
【0019】
図2に警報保持回路8と9の入出力端子図を、図3に警報保持回路8と9の動作フローチャートを、図4と図5に警報保持回路8と9の動作タイムチャートをそれぞれ示す。
【0020】
図2は警報保持回路8と9の入出力端子図である。警報保持回路8と9は同じ構成であるために、説明の便宜上、図2の一つの図のみで共通に記載されている。警報保持回路8、9は、入力が、入力端子10aに入力されるレーザー出力断警報10、入力端子11aに入力される切替制御11の二つ、出力が、出力端子12aから出力される警報出力12の一つである。
【0021】
図3は警報保持回路8と9の動作フローチャートである。
【0022】
図3を参照するに、ステップS11で警報保持回路8または9の入力端子10aにレーザー出力断警報10が入力される。次にステップS12において、切替制御回路3からの切替制御11の入力が“1”系選択から“0”系選択に変化したか否かが判断される。ステップS12の判断の結果“YES”の場合にはステップS13において警報保持回路8または9の出力端子12aから切替制御回路3に警報出力12として“1”を出力し続ける。ステップS12の判断の結果、“NO”の場合にはステップS15に示すように警報出力12はレーザー出力断警報10の入力値をそのまま出力する。
【0023】
前述したようにステップS12の判断の結果、切替制御回路3の切替制御11の入力が“1”系選択から“1”系非選択に変化した場合にはステップS13に示すように警報保持回路8または9から警報出力12(“1”)を出力し続けるが、この出力保持によってステップS14において保守、点検等のメンテナンス処理が実行される。このメンテナンス処理が終了した後の所定の時間経過後に警報出力“1”が消去、即ちリセットされる。ステップS14において警報出力“1”が消去されると、ステップS11に戻る。
【0024】
このように、レーザー出力断警報10から“1”が入力された後に切替制御11が“1”系選択から“0”系選択に変化するかしないかによって警報出力12の出力が保持されるかレーザー出力断警報10の値をそのまま出力するかに分かれる。
【0025】
図4はレーザー出力断警報10から“1”(警報状態)が入力されたときに、切替制御11が選択系を“1”(または“0”)系選択(図では“1”系選択の場合を示している)から“0”(または“1”)系選択へ変化させる場合のタイムチャートである。この場合、“1”系の警報出力12はレーザー出力断警報10からの警報状態の出力を保持し続ける。
【0026】
図5はレーザー出力断警報10から“1”(警報状態)が入力されたときに、切替制御11が選択系を“1”系選択から変化させない場合のタイムチャートである。この場合、“1”系の警報出力12はレーザー出力断警報10の警報信号をそのまま出力する。
【0027】
警報出力12はレーザー出力断警報10の値をそのまま出力する。その後に切替制御11が“0”系選択になったときにはレーザー出力断警報10から“1”が入力されることはありえない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は光ネットワーク機器で且つUPSR、BLSRなどの冗長構成を組んでいる機器に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック構成図である。
【図2】警報保持回路の入出力端子図である。
【図3】警報保持回路の動作フローチャートである。
【図4】レーザー出力断警報から“1”が入力された後に切替制御が“1”系選択から“1”系非選択に変化した場合のタイムチャートである。
【図5】レーザー出力断警報から“1”が入力された時に切替制御が“1”系選択のまま変化しなかった場合のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0030】
1…現用系バス
2…予備系バス
3…切替制御回路
4、5…レーザー
6、7…レーザー出力断検出回路
8、9…警報保持回路
10…レーザー出力断警報
11…切替制御
12…警報出力
13…他の切替要因または手動切替制御

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のバス及び第2のバスと、
該第1のバスに接続され光信号を送出する第1のレーザー及び前記第2のバスに接続され光信号を送出する第2のレーザーと、
該第1または第2のレーザーのレーザー出力断を含む警報要因あるいは手動での第1の系、第2の系の選択により該第1の系か第2の系の一方を出力制御し他方を出力停止制御する切替制御回路と、
前記第1のレーザーの出力パワーを監視してレーザー出力断を検出する第1のレーザー出力断検出回路及び前記第2のレーザーの出力パワーを監視してレーザー出力断を検出する第2のレーザー出力断検出回路と、
前記第1のレーザー出力断警報と系選択状況から該第1のレーザー出力断警報を保持する第1の警報保持回路及び前記第2のレーザー出力断警報と系選択状況から該第2のレーザー出力断警報を保持する第2の警報保持回路と、
を具備し、該第1及び第2の警報保持回路の出力は前記切替制御回路に結合されている、
ことを特徴としたレーザー出力断警報の保持システム。
【請求項2】
前記第1の警報保持回路は、前記第1のレーザー出力断検出回路の出力を入力とする第1の入力端子と、前記切替制御回路からの切替制御信号を入力とする第2の入力端子と、警報出力を前記切替制御回路へ出力する第1の出力端子とを有することを更に特徴とする請求項1に記載のレーザー出力断警報の保持システム。
【請求項3】
前記第2の警報保持回路は、前記第2のレーザー出力断検出回路の出力を入力とする第3の入力端子と、前記切替制御回路から切替制御信号を入力とする第4の入力端子と、警報出力を前記切替制御回路へ出力する第2の出力端子とを有し、前記第1の警報保持回路とほぼ同様のハードウェア構成を備えていることを更に特徴とする請求項1に記載のレーザー出力断警報の保持システム。
【請求項4】
前記第1の警報保持回路は、前記第1の入力端子に前記第1のレーザー出力断検出回路からレーザー出力断警報が入力されると共に、前記第2の入力端子に切替制御信号が入力されて、“1”系選択から“1”系非選択に変化したときに、前記第1の出力端子から警報出力を出力し続け、“1”系選択から“1”系非選択に変化しなかったときには前記第1の出力端子から前記第1の入力端子に入力されたレーザー出力断警報の入力値をそのまま出力することを更に特徴とする請求項2に記載のレーザー出力断警報の保持システム。
【請求項5】
前記第2の警報保持回路は、前記第3の入力端子に前記第2のレーザー出力断検出回路からレーザー出力断警報が入力されると共に、前記第4の入力端子に切替制御信号が入力されて、“1”系選択から“1”系非選択に変化したときに、前記第2の出力端子から警報出力を出力し続け、“1”系選択から“1”系非選択に変化しなかったときには前記第2の出力端子から前記第3の入力端子に入力されたレーザー出力断警報の入力値をそのまま出力することを更に特徴とする請求項3に記載のレーザー出力断警報の保持システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−244024(P2008−244024A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80377(P2007−80377)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】