説明

レーザー加工検知システム

【課題】リモートレーザー加工を行う場合に、レーザー光によって目標とするレーザー加工が行われたか否かを検知することができ、レーザー加工の品質を確認することができるレーザー加工検知システムを提供すること。
【解決手段】レーザー加工検知システム1は、エンドエフェクタ72を三次元に移動させるロボット7と、エンドエフェクタ72に装着しレーザー光Aを照射するレーザー加工手段2と、レーザー光Aの照射を受けて被加工対象8が溶融したときに発する可視光Bを検知するカメラ3と、ロボット7の制御を行うと共にレーザー加工手段2の制御を行う制御手段6と、レーザー加工の異常の有無を判定する判定手段5とを備えている。判定手段5は、制御手段6に記憶させたレーザー光Aの照射位置と、カメラ3によって検知した可視光Bの発生位置とが一致しているか否かを、複数箇所の加工設定位置81についてまとめて判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのエンドエフェクタにレーザー加工手段を装着し、レーザー加工手段によるレーザー光によって被加工対象に実際に加工を行うことができたか否かを判定するレーザー加工検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ライン等においてはロボットが多用されている。例えば、レーザー光によって溶接、切断等の加工を行う工程においては、レーザー照射装置をロボットのエンドエフェクタに装着し、レーザー照射装置における反射ミラーによって焦点距離及び照射方向を調整して、被加工対象における加工設定位置にレーザー光を照射するリモートレーザー加工方法が知られている。
このリモートレーザー加工方法としては、例えば、十字の可視光を被加工対象に照射(投影)し、この十字の可視光の交点と、加工用レーザー光と同軸状に出射したポインターレーザーから出射した直進可視光とが一致したときに、加工用レーザー光の焦点が被加工対象における加工設定位置に合ったことを示すようにしたものがある。
【0003】
また、例えば、特許文献1のリモート溶接教示装置においては、レーザ溶接装置に対し、このレーザ溶接装置から射出されるレーザの照射可能範囲を示す可視光を投影する投影手段を設けることが開示されている。これにより、溶接位置から離れたところからレーザを照射するリモート溶接において、ロボットの動作教示作業を容易にすることができる。
なお、リモートレーザー加工方法に関するものではないが、例えば、引用文献2のレーザ溶接機においては、ワークに照射したレーザ光の反射光と、溶接箇所から発するプラズマ光とを受光し、これらの光強度の分布に基づいて溶接箇所の欠陥を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−346740号公報
【特許文献2】特許第3227650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のリモートレーザー加工方法においては、スポット溶接とは違って非接触で加工するため、レーザー光によって目標とする加工が行われたか否かの検出を行っていない。そのため、リモートレーザー加工を行う場合に、レーザー加工の品質を確認するためには更なる工夫が必要とされる。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、リモートレーザー加工を行う場合に、レーザー光によって目標とするレーザー加工が行われたか否かを検知することができ、レーザー加工の品質を確認することができるレーザー加工検知システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、エンドエフェクタを三次元に移動させるよう構成したロボットと、
上記エンドエフェクタに装着し、焦点距離及び照射方向を調整して被加工対象における加工設定位置にレーザー光を照射するよう構成したレーザー加工手段と、
上記被加工対象を設置した設置部又は上記レーザー加工手段のいずれかに取り付け、上記レーザー光の照射を受けて上記被加工対象が溶融したときに発する可視光を検知すると共に該可視光の発生位置を検知するカメラと、
上記ロボットの制御を行うと共に上記レーザー加工手段の上記焦点距離及び照射方向の制御を行う制御手段と、
該制御手段に記憶させた上記レーザー光の照射位置と、上記カメラによって検知した上記可視光の発生位置とが一致しているか否かを、1箇所又は複数箇所の上記加工設定位置について、逐次又は複数箇所まとめて判定する判定手段とを備えていることを特徴とするレーザー加工検知システムにある(請求項1)。
【0008】
第2の発明は、エンドエフェクタを三次元に移動させるよう構成したロボットと、
上記エンドエフェクタに装着し、焦点距離及び照射方向を調整して被加工対象における加工設定位置にレーザー光を照射するよう構成したレーザー加工手段と、
上記被加工対象を設置した設置部又は上記レーザー加工手段のいずれかに取り付け、上記レーザー光の照射を受けて上記被加工対象が溶融したときに発する可視光を検知する可視光検知センサと、
上記ロボットの制御を行うと共に上記レーザー加工手段の上記焦点距離及び照射方向の制御を行う制御手段と、
1箇所の上記加工設定位置に上記レーザー光を照射した直後に逐次上記可視光検知センサが上記可視光を検知したか否かを判定する、又は複数箇所の上記加工設定位置に上記レーザー光を照射した後にまとめて上記可視光検知センサが上記複数箇所の加工設定位置について上記可視光を検知したか否かを判定する判定手段とを備えていることを特徴とするレーザー加工検知システムにある(請求項4)。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明のレーザー加工検知システムは、ロボットのエンドエフェクタにレーザー加工手段を装着してなり、レーザー光の照射を受けて被加工対象が溶融したときに発する可視光を検知すると共にこの可視光の発生位置を検知するカメラを有している。
カメラは、被加工対象を設置した設置部又はレーザー加工手段のいずれかに取り付けてある。カメラは、設置部に取り付けた場合には、ロボットの原点位置に対する絶対位置として可視光の発生位置を検知することができ、レーザー加工手段に取り付けた場合には、その移動位置に対する相対位置として可視光の発生位置を検知することができる。
【0010】
判定手段は、制御手段に記憶させたレーザー光の照射位置と、カメラによって検知した可視光の発生位置とが一致しているか否かを、1箇所又は複数箇所の加工設定位置について、逐次又は複数箇所まとめて判定する。
これにより、本発明においては、カメラによって被加工対象の加工設定位置において実際にレーザー加工が行われたか否かを検知することができる。また、判定手段によって、制御手段に記憶させた意図する位置において実際にレーザー加工が行われたか否かを判定することができる。
【0011】
それ故、第1の発明のレーザー加工検知システムによれば、リモートレーザー加工を行う場合に、レーザー光によって目標とするレーザー加工が行われたか否かを検知することができ、レーザー加工の品質を確認することができる。
【0012】
第2の発明のレーザー加工検知システムは、ロボットのエンドエフェクタにレーザー加工手段を装着してなり、レーザー光の照射を受けて被加工対象が溶融したときに発する可視光を検知する可視光検知センサを有している。
可視光検知センサは、被加工対象を設置した設置部又はレーザー加工手段のいずれかに取り付けてある。
【0013】
判定手段は、1箇所の加工設定位置にレーザー光を照射した直後に逐次可視光検知センサが可視光を検知したか否かを判定するか、又は複数箇所の加工設定位置にレーザー光を照射した後にまとめて可視光検知センサが複数箇所の加工設定位置について可視光を検知したか否かを判定する。
これにより、本発明においては、可視光検知センサによって被加工対象の加工設定位置において実際にレーザー加工が行われたか否かを検知することができる。また、判定手段によって、制御手段に記憶させた意図するタイミングにおいて実際にレーザー加工が行われたか否かを判定することができる。
【0014】
それ故、第2の発明のレーザー加工検知システムによれば、リモートレーザー加工を行う場合に、レーザー光によって目標とするレーザー加工が行われたか否かを検知することができ、レーザー加工の品質を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1にかかる、レーザー加工検知システムを示す説明図。
【図2】実施例1にかかる、レーザー加工検知システムの構成を概略的に示す説明図。
【図3】実施例1にかかる、判定手段が、制御手段に記憶されたレーザー光の照射位置と、カメラによって検知した可視光の発生位置との照合を行う状態を模式的に示す説明図。
【図4】実施例2にかかる、判定手段が、制御手段に記憶されたレーザー光の照射タイミングと、可視光検知センサが可視光を検知したタイミングとの照合を行う状態を模式的に示す説明図。
【図5】他の実施例にかかる、レーザー加工検知システムの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述した第1、第2の発明における好ましい実施の形態につき説明する。
第1の発明において、制御手段に記憶させるレーザー光の絶対照射位置は、ロボットのエンドエフェクタの位置及び姿勢と、レーザー加工手段の焦点距離及び照射方向とを、被加工対象に対して実際に移動させて教示するオンラインティーチングによって記憶させることができる。また、制御手段に記憶させるレーザー光の絶対照射位置は、コンピュータにおいて動作するソフトウェア上で、ロボット及びレーザー加工手段の主要部を構築し、ソフトウェア上でロボットのエンドエフェクタの位置及び姿勢と、レーザー加工手段の焦点距離及び照射方向とを教示するオフラインティーチングによって記憶させることもできる。
また、上記レーザー光の照射位置と上記可視光の発生位置との一致は、所定の許容範囲を設けて検知することができる。
【0017】
第2の発明においても、第1の発明と同様に、ロボットのエンドエフェクタの位置及び姿勢と、レーザー加工手段の焦点距離及び照射方向とを、オンラインティーチング又はオフラインティーチングによって制御手段に記憶させておくことができる。
第1、第2の発明において、上記被加工対象を設置する設置部とは、被加工対象をセットする治具、この治具を取り付けた架台等とすることができる。
【0018】
第1の発明において、上記カメラは、上記レーザー加工手段に取り付けてあり、上記レーザー光の照射位置は、上記レーザー加工手段における基準位置から上記加工設定位置までの平面方向の位置であり、上記可視光の発生位置は、上記レーザー加工手段における基準位置から上記可視光の発生位置までの平面方向の位置であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、カメラによる検知を加工設定位置に近い位置で行うことができ、カメラによる可視光の発生位置の検知精度を向上させることができる。
【0019】
また、上記判定手段は、上記カメラによって検知した上記可視光の発生位置を、上記複数箇所の加工設定位置について記憶しておき、該複数箇所の加工設定位置についてまとめて上記レーザー光の照射位置と上記可視光の発生位置とが一致しているか否かを判定することが好ましい(請求項3)。
この場合には、判定手段によって、複数箇所の加工設定位置についてまとめて判定を行うことにより、被加工対象全体に対してレーザー加工を行う生産サイクルにおいて、判定を行うための待ち時間をなくす又は短くすることができる。
【0020】
また、第2の発明において、上記可視光検知センサは、上記レーザー加工手段に取り付けてあることが好ましい(請求項5)。
この場合には、可視光検知センサによる検知を加工設定位置に近い位置で行うことができ、可視光検知センサによる可視光の発生位置の検知精度を向上させることができる。
【0021】
また、上記判定手段は、上記可視光検知センサによって検知した上記可視光の発生タイミングを、上記複数箇所の加工設定位置について記憶しておき、該複数箇所の加工設定位置についてまとめて上記可視光を検知したか否かを判定することが好ましい(請求項6)。
この場合には、判定手段によって、複数箇所の加工設定位置についてまとめて判定を行うことにより、被加工対象全体に対してレーザー加工を行う生産サイクルにおいて、判定を行うための待ち時間をなくす又は短くすることができる。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明のレーザー加工検知システムにかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
本例のレーザー加工検知システム1は、図2に示すごとく、以下のロボット7、レーザー加工手段2、カメラ3、制御手段6及び判定手段5を備えている。
図1に示すごとく、ロボット7は、エンドエフェクタ72を三次元に移動させるよう構成してある。レーザー加工手段2は、エンドエフェクタ72に装着し、焦点距離及び照射方向を調整して被加工対象8における加工設定位置81にレーザー光Aを照射するよう構成してある。カメラ3は、レーザー加工手段2に取り付けてあり、レーザー光Aの照射を受けて被加工対象8が溶融したときに発する可視光Bを検知すると共にこの可視光Bの発生位置P2を検知するよう構成してある。なお、レーザー光Aは赤外線の光である。
【0023】
制御手段6は、ロボット7の制御を行うと共にレーザー加工手段2の焦点距離及び照射方向の制御を行うよう構成してある。判定手段5は、図3に示すごとく、制御手段6に記憶させたレーザー光Aの照射位置P1と、カメラ3によって検知した可視光Bの発生位置P2とが一致しているか否かを、複数箇所の加工設定位置81についてまとめて判定する。そして、判定手段5は、レーザー光Aの照射位置P1と可視光Bの発生位置P2とが一致している場合には、レーザー加工が正常に行われたことを検知し、一方、レーザー光Aの照射位置P1と可視光Bの発生位置P2とが一致していない場合には、レーザー加工に異常があったことを検知する。また、本例においては、主にレーザー加工手段2に異常があったか否かを検知する。
【0024】
以下に、本例のレーザー加工検知システム1につき、図1〜図4を参照して詳説する。
図1に示すごとく、本例のロボット7及びレーザー加工手段2は、リモートレーザー加工を行うものであり、ロボット7の制御手段6による加工位置のティーチングを行ってレーザー加工を行う。
図2に示すごとく、本例のレーザー加工手段2は、6つの回転軸71を備えた多関節ロボット7のエンドエフェクタ72に配設してある。多関節ロボット7における各回転軸71はサーボモータによって駆動するよう構成されており、各サーボモータは、制御手段(制御コントローラ)6によって制御される。また、エンドエフェクタ72の位置・姿勢、移動軌道、移動速度、各回転軸71の角度等は、ティーチングユニット61によって調整、教示が可能である。
【0025】
図1に示すごとく、本例のレーザー加工手段2は、ロボット7のエンドエフェクタ72に取り付けたレーザー照射本体部20と、このレーザー照射本体部20に供給するレーザーエネルギーを発生させるレーザーエネルギー発生装置200とを備えている。レーザー照射本体部20は、レーザー光Aを出射するレーザー光源21と、レーザー光源21から出射されたレーザー光Aの焦点距離を可変させる焦点レンズ22と、焦点レンズ22を通過したレーザー光Aの照射方向を可変させる反射ミラー23とを有している。また、レーザーエネルギー発生装置200は、発振機、チラー等から構成されている。また、レーザー光源21は、ファイバーケーブル等を介してレーザーエネルギー発生装置200に接続されている。
【0026】
本例においては、レーザー光Aによって被加工対象8としての金属部品(車両用フレーム、車両用鋼板等)における加工設定位置81にレーザー溶接を行う。このとき、加工設定位置81に対するレーザー光Aの照射は、加工設定位置81としての1点のみに集中して行うのではなく、円、直線、曲線等を描くように設定したライン状の加工設定位置81に対して行う。すなわち、加工設定位置81は、レーザー光Aの照射位置P1の移動を伴って設定される位置である。
なお、図1においては、レーザー加工手段2のレーザー光Aによる加工可能範囲Rを点線によって示す。
【0027】
レーザーエネルギー発生装置200においては、被加工対象8の全体に設定されたすべての加工設定位置81に対してレーザー加工を行うレーザー加工工程において、常時レーザー光Aを発振させておく。そして、制御手段6の制御プログラムによる命令に応じて、レーザーエネルギー発生装置200に設けたレーザー光Aを出射するためのシャッターを開け、レーザー光Aをレーザー加工手段2のレーザー光源21へ導く。
【0028】
本例において、レーザー加工手段2による焦点距離とは、反射ミラー23の中心から被加工対象8までのレーザー光Aの照射距離のことをいう。また、レーザー加工手段2による照射方向とは、反射ミラー23の中心から被加工対象8に対して向けられるレーザー光Aの照射方向のことをいう。
【0029】
焦点レンズ22及び反射ミラー23は、それぞれサーボモータ等の駆動源によって移動動作が可能であり、これらの駆動源は、多関節ロボット7の制御コントローラ6によって制御される。また、焦点レンズ22及び反射ミラー23を構成する駆動源の移動動作は、ティーチングユニット61によって調整、教示が可能である。
【0030】
本例のカメラ3は、レーザー加工手段2においてレーザー光Aの出射面を設けた面24に平行に受光レンズ31を位置させて、レーザー加工手段2に配設してある。カメラ3は、被加工対象(金属部品)8が溶融する際に発する可視光Bの映像を撮影し、画像処理を行って、可視光Bの発生位置P2を検知するよう構成されている。
制御手段6及び判定手段5は、コンピュータを用いて構築されている。判定手段5は、制御手段6とは別に設けたコンピュータによって構成することができ、制御手段6と同じコンピュータによって構成することもできる。
【0031】
図1に示すごとく、判定手段5において、制御手段6に記憶した位置として用いるレーザー光Aの照射位置P1は、レーザー加工手段2における基準位置から加工設定位置81までの平面方向の位置である。判定手段5において、カメラ3によって検知する可視光Bの発生位置P2は、レーザー加工手段2における基準位置から可視光Bの発生位置P2までの平面方向の位置である。ここで、レーザー加工手段2における基準位置は、レーザー加工手段2におけるレーザー出射位置(反射ミラー23の中心位置231)とすることができる。
【0032】
ロボット7のエンドエフェクタ72の位置及び姿勢と、レーザー加工手段2の焦点距離及び照射方向との教示(ティーチング)は、ティーチングユニット61を使って、実際の被加工対象8に対して設定するオンライン作業によって行う。そして、各加工設定位置81に対して、ロボット7及びレーザー加工手段2のティーチングポイント(教示点)を設定、記憶する。このとき、互いに近くに位置する複数の加工設定位置81に対しては、ロボット7(エンドエフェクタ72)のティーチングポイントを固定した状態で、レーザー加工手段2(焦点レンズ22及び反射ミラー23)のティーチングポイントを複数の位置に変更して設定、記憶することができる。
こうして、被加工対象8におけるすべての加工設定位置81に対してティーチングを行い、制御プログラムとして、制御手段6に格納しておく。
【0033】
レーザー加工手段2による加工設定位置81へのレーザー光Aの照射は、ロボット7のエンドエフェクタ72が移動している最中に行うことができる。そして、カメラ3による加工設定位置81の撮影も、ロボット7のエンドエフェクタ72が移動している最中に行うことができる。そして、判定手段5による、レーザー光Aの照射位置P1とカメラ3によって検知した可視光Bの発生位置P2とが一致しているか否かの照合は、ロボット7の移動位置が考慮された位置で行われる。
【0034】
図3に示すごとく、本例の判定手段5は、カメラ3によって検知した可視光Bの発生位置P2を、複数箇所の加工設定位置81について記憶しておき、複数箇所の加工設定位置81について、レーザー光Aの照射位置P1と可視光Bの発生位置P2とが一致しているか否かの判定をまとめて行い、レーザー加工に異常が生じたか否かの検知を行う。同図は、判定手段5によって、制御手段6に記憶されたレーザー光Aの照射位置P1(加工設定位置81)と、カメラ3によって検知した可視光Bの発生位置P2との照合を行う状態を模式的に示す。
また、複数箇所の加工設定位置81についての異常の有無の検知が終わった後には、他の複数箇所の加工設定位置81のレーザー加工を行い、この他の複数箇所の加工設定位置81についての異常の有無の検知を行う。これにより、被加工対象8の全体に対してレーザー加工を行う生産サイクルにおいて、判定を行うための待ち時間をなくす又は短くすることができる。
【0035】
本例のレーザー加工検知システム1は、上記のごとく、ロボット7のエンドエフェクタ72にレーザー加工手段2を装着してなり、レーザー光Aの照射を受けて被加工対象8が溶融したときに発する可視光Bを検知すると共にこの可視光Bの発生位置P2を検知するカメラ3を有している。
カメラ3は、レーザー加工手段2に取り付けてあり、レーザー加工手段2における基準位置から加工設定位置81までの平面方向の位置として、レーザー光Aの照射位置P1を検知することができる。
【0036】
判定手段5は、制御手段6に記憶させたレーザー光Aの照射位置P1と、カメラ3によって検知した可視光Bの発生位置P2とが一致しているか否かを、複数箇所の加工設定位置81についてまとめて判定する。
これにより、本例においては、カメラ3によって被加工対象8の加工設定位置81において実際にレーザー加工が行われたか否かを検知することができる。また、判定手段5によって、制御手段6に記憶させた意図する位置において実際にレーザー加工が行われたか否かを判定することができる。
【0037】
それ故、本例のレーザー加工検知システム1によれば、リモートレーザー加工を行う場合に、レーザー光Aによって目標とするレーザー加工が行われたか否かを検知することができ、レーザー加工の品質を確認することができる。
【0038】
(実施例2)
本例のレーザー加工検知システム1は、カメラ3の代わりに可視光検知センサ4を備えており、可視光検知センサ4により被加工対象8における加工設定位置81に対するレーザー加工が行われたか否かの検知を行う例である(図1参照)。
可視光検知センサ4は、レーザー加工手段2に取り付けてあり、レーザー光Aの照射を受けて被加工対象8が溶融したときに発する可視光Bを検知するよう構成してある。本例の判定手段5は、複数箇所の加工設定位置81にレーザー光Aを照射した後にまとめて可視光検知センサ4が複数箇所の加工設定位置81について可視光Bを検知したか否かを判定する。本例においても、ロボット7、レーザー加工手段2及び制御手段6の構造は上記実施例1と同様である。
【0039】
判定手段5は、可視光検知センサ4によって検知した可視光Bの発生タイミングを、複数箇所の加工設定位置81について記憶しておき、この複数箇所の加工設定位置81についてまとめて可視光Bを検知したか否かを判定する。
制御手段6においては、上記実施例1と同様に、ティーチング(教示)作業を行って、被加工対象8におけるすべての加工設定位置81に対するティーチング(教示)データを、制御プログラムとして記憶しておく。
【0040】
本例の判定手段5は、レーザー加工を行う際に、可視光検知センサ4が加工設定位置81から可視光Bを検知したタイミングをタイミングチャートによって記憶していく。そして、図4に示すごとく、判定手段5は、複数箇所のレーザー加工が終わった後に、制御手段6に記憶された、レーザーエネルギー発生装置200におけるシャッターが開くタイミング(レーザー光Aの照射タイミング)T1と、可視光検知センサ4が加工設定位置81から可視光Bを検知したタイミングT2とを照合し、これらのタイミングT1、T2が一致するときにはレーザー加工が正常に行われたことを検知する一方、これらのタイミングT1、T2が一致していないときにはレーザー加工に異常が生じたことを検知する。なお、同図においては、時間を横軸にとって示す。また、各タイミングT1、T2は、若干の時間の幅をもって観測される。
なお、シャッターが開いた後、レーザー加工は瞬時に行われるため、レーザー加工が正常に行われた場合には、上記各タイミングT1、T2は実質的には略同時となる。
【0041】
本例においても、可視光検知センサ4によって被加工対象8の加工設定位置81において実際にレーザー加工が行われたか否かを検知することができる。また、本例においては、判定手段5によって、制御手段6に記憶させた意図するタイミングにおいて実際にレーザー加工が行われたか否かを判定することができる。
本例においても、レーザー加工検知システム1のその他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
(その他の実施例)
レーザー加工検知システム1の判定手段5は、以下のようにレーザー加工手段2に発生した異常を検知することができる。
上記実施例1、2において、判定手段5は、可視光検知センサ4が可視光Bの発生位置P2を検知した回数をカウントし、このカウント回数が、制御手段6に記憶したレーザー照射回数(加工設定位置81の数)と一致するか否かを判定することができる。
また、上記実施例1においては、カメラ3によって検知した、加工設定位置81における可視光Bの発生タイミングT2を判定手段5に記憶しておき、レーザー光Aの照射位置P1と可視光Bの発生位置P2との照合を行うと共に、レーザー光Aの照射タイミングT1と可視光Bの発生タイミング(検知タイミング)T2との照合も行うことができる。さらに、これらの照合に加え、上記カウント回数とレーザー照射回数との照合も合わせて行うことができる。
【0043】
上記実施例1に示したレーザー加工検知システムによる動作の概略を図5のフローチャートに示す。
ロボット7及びレーザー加工手段2のティーチングが行われた後には、ロボット7のエンドエフェクタ72を移動させると共にレーザー加工手段2を動作させ、かつレーザー加工を行う状態をカメラ3で撮影する(ステップS101〜S103)。そして、判定手段5によって、制御手段6に記憶したレーザー光Aの照射位置P1とカメラ3によって撮影した可視光Bの発生位置P2とが一致するか否かの照合を行い(S104)、これらが一致しない場合にはレーザー加工の異常を検知する(S105)。
【0044】
また、レーザー光Aを照射した回数と、可視光Bを検出した回数とが一致するか否かの照合を行い(S106)、これらが一致しない場合にはレーザー加工の異常を検知する(S107)。
さらに、レーザー光Aの照射タイミングと可視光Bの発生タイミング(検知タイミング)とが一致するか否かの照合を行い(S108)、これらが一致しない場合にはレーザー加工の異常を検知する(S109)。
その後、レーザー溶接の終了になるまでは(S110)、上記ステップS101〜S109を繰り返す。
【符号の説明】
【0045】
1 レーザー加工検知システム
2 レーザー加工手段
3 カメラ
4 可視光検知センサ
5 判定手段
6 制御手段
7 ロボット
72 エンドエフェクタ
8 被加工対象
81 加工設定位置
A レーザー光
B 可視光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドエフェクタを三次元に移動させるよう構成したロボットと、
上記エンドエフェクタに装着し、焦点距離及び照射方向を調整して被加工対象における加工設定位置にレーザー光を照射するよう構成したレーザー加工手段と、
上記被加工対象を設置した設置部又は上記レーザー加工手段のいずれかに取り付け、上記レーザー光の照射を受けて上記被加工対象が溶融したときに発する可視光を検知すると共に該可視光の発生位置を検知するカメラと、
上記ロボットの制御を行うと共に上記レーザー加工手段の上記焦点距離及び照射方向の制御を行う制御手段と、
該制御手段に記憶させた上記レーザー光の照射位置と、上記カメラによって検知した上記可視光の発生位置とが一致しているか否かを、1箇所又は複数箇所の上記加工設定位置について、逐次又は複数箇所まとめて判定する判定手段とを備えていることを特徴とするレーザー加工検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザー加工検知システムにおいて、上記カメラは、上記レーザー加工手段に取り付けてあり、
上記レーザー光の照射位置は、上記レーザー加工手段における基準位置から上記加工設定位置までの平面方向の位置であり、上記可視光の発生位置は、上記レーザー加工手段における基準位置から上記可視光の発生位置までの平面方向の位置であることを特徴とするレーザー加工検知システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザー加工検知システムにおいて、上記判定手段は、上記カメラによって検知した上記可視光の発生位置を、上記複数箇所の加工設定位置について記憶しておき、該複数箇所の加工設定位置についてまとめて上記レーザー光の照射位置と上記可視光の発生位置とが一致しているか否かを判定することを特徴とするレーザー加工検知システム。
【請求項4】
エンドエフェクタを三次元に移動させるよう構成したロボットと、
上記エンドエフェクタに装着し、焦点距離及び照射方向を調整して被加工対象における加工設定位置にレーザー光を照射するよう構成したレーザー加工手段と、
上記被加工対象を設置した設置部又は上記レーザー加工手段のいずれかに取り付け、上記レーザー光の照射を受けて上記被加工対象が溶融したときに発する可視光を検知する可視光検知センサと、
上記ロボットの制御を行うと共に上記レーザー加工手段の上記焦点距離及び照射方向の制御を行う制御手段と、
1箇所の上記加工設定位置に上記レーザー光を照射した直後に逐次上記可視光検知センサが上記可視光を検知したか否かを判定する、又は複数箇所の上記加工設定位置に上記レーザー光を照射した後にまとめて上記可視光検知センサが上記複数箇所の加工設定位置について上記可視光を検知したか否かを判定する判定手段とを備えていることを特徴とするレーザー加工検知システム。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザー加工検知システムにおいて、上記可視光検知センサは、上記レーザー加工手段に取り付けてあることを特徴とするレーザー加工検知システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のレーザー加工検知システムにおいて、上記判定手段は、上記可視光検知センサによって検知した上記可視光の発生タイミングを、上記複数箇所の加工設定位置について記憶しておき、該複数箇所の加工設定位置についてまとめて上記可視光を検知したか否かを判定することを特徴とするレーザー加工検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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