説明

レーザー加工装置

【課題】加工中においても、加工に使用されるレーザー光の強度を測定でき、レーザー光による加工を安定して行うことが可能なレーザー加工装置を提供する
【解決手段】レーザー光を照射してワークに加工を施すレーザー加工装置10であって、前記レーザー光を発振するレーザー発振器11と、加工に使用されるレーザー光の強度を調整する音響光学素子を備えたレーザー光制御部30と、前記レーザー光が通過するレーザー経路上に配置され、前記レーザー光の一部を反射するとともに残りのレーザー光を透過する部分反射板61と、この部分反射板61によって反射されたレーザー光の強度を測定することにより、前記部分反射板を通過したレーザー光の強度を算出する強度算出手段63と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光をワークに照射し、ワークに対して加工を施すレーザー加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前述のレーザー加工装置としては、例えば特許文献1、2に開示されているように、レーザー光を発振するレーザー発振器と、レーザー発振器から発振されたレーザー光を反射させてレーザー光の進路を変更するミラー部材と、レーザー光のビーム径を調整するレンズ部材と、ワークに対してレーザー光を照射する加工ヘッドと、を備えたものが提供されている。
【0003】
このようなレーザー加工装置においては、レーザー光の強度を制御することによって、ワークにおける加工深さが調整されることになるため、レーザー光の強度制御が重要となる。特に、例えば、スリーブ状の印刷版の外周面に凸版を形成する場合等においては、レーザー加工による加工深さが印刷品質に大きく影響するため、レーザー光の強度調整を特に精度良く行う必要がある。
【0004】
前述のレーザー加工装置においては、レーザー発振器から発振されるレーザ光の出力を一定とし、音響光学変調器(AOM;ACOUSTIC OPTICAL MODULATOR)等を備えたレーザー光制御部を用いてレーザー光の強度を調整している。
ここで、このレーザー光制御部に入射されるレーザー光の強度が変動した場合には、加工に使用されるレーザー光の強度を精度良く制御することができなくなってしまう。
【0005】
そこで、従来、レーザー光制御部に入射されるレーザー光の強度を確認するために、レーザー加工を実施する前に、レーザー光制御部の前段側に出力計を設置し、レーザー光の強度を測定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−256477号公報
【特許文献2】特開平02−150085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のように、出力計を設置してレーザー光の強度を測定する方法では、レーザー加工を停止した状態でしかレーザー光の強度を測定することができない。このため、レーザー加工を実施している間に発生するレーザー光の強度変動については全く対応できず、ワークに不良等が発生した後でなければレーザー光の強度変動を検知することができない。よって、長時間にわたってワークを安定して加工することは困難であった。
なお、レーザー発振器におけるレーザー出力が一定であった場合においても、レーザ光がレーザー光制御部にまで伝送されるレーザー経路中に配設されたミラー部材やレンズ部材が劣化していた場合には、レーザー光制御部に入射されるレーザー光の強度変動がレーザー加工中に発生するおそれがある。
【0008】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであって、加工中においても、加工に使用されるレーザー光の強度を測定でき、レーザー光による加工を安定して行うことが可能なレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、本発明に係るレーザー加工装置は、レーザー光を照射してワークに加工を施すレーザー加工装置であって、前記レーザー光を発振するレーザー発振器と、加工に使用されるレーザー光の強度を調整するレーザー光制御部と、前記レーザー光が通過するレーザー経路上に配置され、前記レーザー光の一部を反射するとともに残りのレーザー光を透過する部分反射板と、この部分反射板によって反射されたレーザー光の強度を測定することにより、前記部分反射板を通過したレーザー光の強度を算出する強度算出手段と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
この構成のレーザー加工装置によれば、レーザー光が通過するレーザー経路上に配置され、前記レーザー光の一部を反射するとともに残りのレーザー光を透過する部分反射板と、この部分反射板によって反射されたレーザー光の強度を測定することにより、前記部分反射板を通過したレーザー光の強度を算出する強度算出手段と、を備えているので、部分反射板を透過したレーザー光によってレーザー加工を実施することができ、レーザー加工を実施している状態でもレーザー光の強度測定を行うことができる。つまり、部分反射板の反射率と透過率とを予め把握しておくことによって、反射されたレーザー光の強度から、透過して加工に用いられるレーザー光の強度を算出することが可能となるのである。
【0011】
ここで、前記部分反射板が、前記レーザー光制御部のレーザー光入射部の直前に配置されていることが好ましい。
この場合、レーザー光の強度を調整するレーザー光制御部に入射されるレーザー光の強度を測定することができ、レーザー光制御部におけるレーザー光の強度調整を精度良く行うことができる。よって、ワークの加工を安定して行うことができる。
【0012】
また、前記強度算出手段によって算出されたレーザー光の強度に基づいて、前記レーザー発振器の出力を調整する出力調整手段を備えていることが好ましい。
この場合、例えばレーザー発振器から発振されたレーザー光がレーザー光制御部まで伝送されるレーザー経路中に配設されたミラー部材やレンズ部材が劣化していた場合でも、レーザー発振器の出力を上げることによって、レーザー光制御部に入射されるレーザー光の強度を一定に維持することができる。よって、レーザー加工をさらに安定して行うことができる。また、ワークの加工中に、レーザー光の強度変動があったとしても、加工に用いられるレーザー光の強度が精度良く制御されることになり、加工を安定して行うことが可能となる。
【0013】
さらに、前記部分反射板において、反射率が1%以上50%以下、透過率が50%以上99%以下に設定されていることが好ましい。
この場合、部分反射板の反射率が1%以上50%以下とされているので、反射されたレーザー光の出力を測定することが可能となる。さらに、部分反射板の透過率が50%以上99%以下とされているので、透過したレーザー光によって確実にワークの加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加工中においても、加工に使用されるレーザー光の強度を測定でき、レーザー光による加工を安定して行うことが可能なレーザー加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態であるレーザー加工装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。
本実施形態であるレーザー加工装置10は、例えば円筒状のなすスリーブ印刷版において、その外周面に凸版を形成する際に用いられるものである。
図1に示すレーザー加工装置10は、赤外線領域の波長のレーザー光を発振するレーザー発振器11と、このレーザー発振器11から発振されたレーザ光を遮断するシャッター部12と、レーザ光を反射してレーザー光の進路を変更する第1ミラー部材21と、レーザー光のビーム径を縮小させるコンパウンダー15と、ビーム径が縮小されたレーザー光を反射してレーザー光の進路を変更する第2ミラー部材22と、レーザー光の強度を調整するレーザー光制御部30と、レーザー光制御部30を通過したレーザー光を反射してレーザー光の進路を変更する第3ミラー部材23と、レーザー光のビーム径を拡大するエクスパウンダー17と、ビーム径が拡大されたレーザー光を反射してレーザー光の進路を変更する第4ミラー部材24と、レーザー光をワークWに対して照射する加工ヘッド18と、を備えている。
【0017】
レーザー発振器11は、炭酸ガスが充填された光共振器を備えており、この光共振器内の光を炭酸ガス中において誘導放出によって増幅し、レーザー光を発振する構成とされている。この炭酸ガスを用いたレーザー発振器11からは、波長が10.6μm程度の赤外線領域のレーザー光が発振されることになる。なお、このレーザー発振器11は、安定してレーザー光を発振するために、常時、レーザー光を発振した状態とされている。
【0018】
シャッター部材12は、レーザー発振器11から発振されるレーザー光を遮断するように移動可能とされている。このシャッター部材12がレーザー光の経路上に移動されると、レーザー光が、シャッター部材12によって反射されてビーム吸収器13へと照射されるように構成されている。ビーム吸収器13は、照射されたレーザー光のエネルギーを熱に変換し、冷却することによって吸収するものである。
【0019】
第1ミラー部材21は、レーザー発振器11から発振されたレーザー光を反射して、レーザー光をコンパウンダー15へと伝送する。なお、この第1ミラー部材21には、位置及び角度を調整する駆動部21aが設けられている。
コンパウンダー15は、レーザー光の進行方向に対して複数のレンズが積層するように配設されており、レーザー光のビーム径を縮小するものである。なお、本実施形態では、約20mmのビーム径を約5mmまで縮小する構成とされている。
第2ミラー部材22は、コンパウンダー15を通過したレーザー光を反射して、レーザー光をレーザー光制御部30へと伝送する。なお、この第2ミラー部材22には、位置及び角度を調整する駆動部22aが設けられている。
【0020】
レーザー光制御部30は、音響波によってレーザー光の強度を変調することができ、かつ、その屈折率を変化させて通過するレーザー光の進行方向を変更することができる音響光学素子(Acosto−Optic Modurator:AOM/Acosto−Optic Deflector:AOD)を備えている。
このレーザー光制御部30では、レーザー光の強度を変調させて、レーザー光によるワークWの加工深さを調整することになる。また、レーザー光の進行方向を偏向させることによって、レーザー光による加工のON/OFF制御を行う。
【0021】
第3ミラー部材23は、レーザー光制御部30を通過したレーザー光を反射するものである。ここで、レーザー光制御部30においてレーザー光が偏向された場合、図1の点線で示すように、第3ミラー部材23に反射されたレーザー光は、ビーム吸収器16へと照射されるように構成されている。一方、レーザー光制御部30においてレーザー光が偏向されない場合には、図1の実線で示すように、レーザー光はエクスパウンダー17へと伝送される。なお、この第3ミラー部材23には、位置及び角度を調整する駆動部23aが設けられている。
【0022】
エクスパウンダー17は、レーザー光の進行方向に対して複数のレンズが積層するように配設されており、レーザー光のビーム径を拡大するものである。なお、本実施形態では、約5mmのビーム径を約20mmまで拡大する構成とされている。
第4ミラー部材24は、エクスパウンダー17を通過したレーザー光を反射して、レーザー光を加工ヘッド18へと伝送する。なお、この第4ミラー部材24には、位置及び角度を調整する駆動部24aが設けられている。
加工ヘッド18は、ワークWに対してレーザー光を照射して、ワークWの加工を行うものである。
【0023】
そして、本実施形態においては、レーザー光制御部30の前段側(レーザー発振器11側)に、レーザー光の一部を反射するとともに残りのレーザー光を透過する部分反射板61と、この部分反射板61で反射された反射光の強度を測定する強度測定部62が設けられている。
また、強度測定部62で測定されたレーザー光の強度から、部分反射板を透過したレーザー光の強度を算出する算出部63と、この算出部63によって算出されたレーザー光の強度に基づいて、レーザー発振器11に対してレーザー出力を調整する制御信号を発信する調整部64と、が設けられている。
【0024】
ここで、部分反射板61は、反射率が1%以上50%以下、透過率が50%以上99%以下に設定されており、本実施形態では、例えば反射率が2%、透過率が98%とされている。
よって、部分反射板61によって反射されたレーザー光の強度が、全レーザー光の2%であり、透過されたレーザー光の強度は全レーザー光の98%となるので、部分反射板61によって反射されたレーザー光の強度から、部分反射板61を透過したレーザー光の強度が算出されることになる。
【0025】
以上のような構成とされた本実施形態であるレーザー加工装置10によれば、レーザー光が通過するレーザー経路上に、レーザー光の一部を反射するとともに残りのレーザー光を透過する部分反射板61が配設され、強度測定部62によって部分反射板61で反射されたレーザー光の強度を測定することにより、算出部63において部分反射板61を通過したレーザー光の強度を算出することが可能となる。ここで、部分反射板61を透過したレーザー光によって加工を行うことができるため、レーザー加工を実施している状態においても、レーザー光の強度測定を行うことができる。よって、ワークWの加工を安定して行うことができる。
【0026】
そして、本実施形態では、部分反射板61がレーザー光制御部30のレーザー光入射部の直前に配置されているので、レーザー光の強度を調整するレーザー光制御部30に入射されるレーザー光の強度を確実に測定することができ、レーザー光制御部30に入射されるレーザー光の強度が一定になり、レーザー光制御部30におけるレーザー光の強度調整を精度良く行うことができる。よって、ワークの加工深さを精度良く制御することができ、加工品質を向上させることができる。
【0027】
また、算出部63によって算出されたレーザー光の強度に基づいて、レーザー発振器11の出力を調整する調整部64を備えているので、レーザー発振器11から発振されたレーザー光をレーザー光制御部30まで伝送するまでの間に配設された第1ミラー部材21、コンパウンダー15、第2ミラー部材22が劣化し、レーザー光の強度が変動した場合でも、調整部64からの制御信号によりレーザー発振器11の出力を上げることによって、レーザー光制御部30に入射されるレーザー光の強度を一定に維持することができる。よって、ワークの加工中に、レーザー光の強度変動があったとしても、加工に用いられるレーザー光の強度が精度良く制御されることになり、加工を安定して行うことが可能となる。
【0028】
さらに、部分反射板61において、反射率が1%以上50%以下、透過率が50%以上99%以下に設定されており、本実施形態では、反射率が2%、透過率が98%に設定されているので、部分反射板61で反射されたレーザー光の出力を確実に測定することができ、かつ、部分反射板を透過したレーザー光によって確実にワークの加工を行うことができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、レーザー光制御部の直前に部分反射板を配設したものとして説明したが、これに限定されることはなく、他のレーザー経路上に部分反射板を配設してもよい。
また、ミラー部材の数、レンズ部材の数、レーザー発振器の配置等は、本実施形態に限定されることはなく、適宜設計変更することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 レーザー加工装置
11 レーザー発振器
30 レーザー光制御部
61 部分反射板
62 強度測定部
63 算出部(強度算出手段)
64 調整部(出力調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を照射してワークに加工を施すレーザー加工装置であって、
前記レーザー光を発振するレーザー発振器と、
加工に使用されるレーザー光の強度を調整するレーザー光制御部と、
前記レーザー光が通過するレーザー経路上に配置され、前記レーザー光の一部を反射するとともに残りのレーザー光を透過する部分反射板と、
この部分反射板によって反射されたレーザー光の強度を測定することにより、前記部分反射板を通過したレーザー光の強度を算出する強度算出手段と、
を備えていることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
前記部分反射板が、前記レーザー光制御部のレーザー光入射部の直前に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
前記強度算出手段によって算出されたレーザー光の強度に基づいて、前記レーザー発振器の出力を調整する出力調整手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記部分反射板において、反射率が1%以上50%以下、透過率が50%以上99%以下に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に一項に記載のレーザー加工装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−221291(P2010−221291A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74334(P2009−74334)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】