説明

レーザー加工装置

【課題】 レーザー光の光学系を利用してワークを撮影し、鮮明な撮影画像を取得するとともに、レーザー光の戻り光によるカメラの破損を防止するレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】 レーザー光Lを生成するレーザー発振器41と、ワークWを撮影するカメラ56と、レーザー光Lの出射経路上に配置され、レーザー光Lを透過させる一方、カメラ56の受光軸をレーザー光Lの出射軸と略一致させる偏光ビームスプリッタ46と、ワークWを照明するための照明光として、レーザー光Lと略同一の波長を含む照明光を生成する照明光源53と、照明光の出射軸をレーザー光Lの出射軸と略一致させるハーフミラー54と、レーザー光Lの出力制御を行う制御部32と、カメラ56の受光経路において偏光ビームスプリッタ46よりもカメラ側に配置され、レーザー光Lの出力制御信号に基づいて、ワークWからの戻り光を遮断するシャッタ55により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置に係り、さらに詳しくは、レーザー光を照射して加工対象物を加工するレーザー加工装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーマーキング装置は、レーザー光を照射することにより加工対象物(ワーク)を加工するレーザー加工装置であり、レーザー光の照射位置を走査させることにより、ワーク上に文字、記号、図形などを印字することができる。この様なレーザーマーキング装置には、ワークをカメラ撮影し、加工位置の確認及び調整を行うことができるものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載されたレーザーマーキング装置は、ワーク撮影用のカメラを内蔵し、当該カメラの受光軸をレーザー光の出射軸と一致させることにより、加工前に加工位置の確認及び調整を高精度で行うことができる。ただし、カメラの受光軸とレーザー光の出射軸とを一致させたことにより、ワークで反射したレーザー光が、戻り光としてカメラにも入射され、カメラを破損させるおそれがある。このため、カメラの受光軸上にレーザー光の波長を遮断する波長選択フィルタを設けてカメラの破損を防止する必要がある。
【0004】
しかしながら、一般に、広い波長範囲にわたり、良好な光学特性を有する光学系を設計することは困難であり、特に、高精度の走査手段を備えた光学系では困難である。このため、レーザーマーキング装置におけるレーザー光の出射経路は、その光学特性がレーザー光の波長に対して最適化され、他の波長帯域において良好な光学特性を得ることはできない。例えば、レーザー光の波長と異なる波長帯域では色収差などの影響を受ける。従って、特許文献1のレーザーマーキング装置のように、カメラへの入射光の波長と、レーザー光の波長とが異なる場合、カメラ撮影によって鮮明な撮影画像を得ることができないという問題があった。
【0005】
また、特許文献1に記載されたレーザーマーキング装置では、撮影画像が歪みを有しているため、撮影軸上を除き、撮影画像に基づいて、被写体上の加工位置を正確に把握することはできないという問題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載されたレーザーマーキング装置は、カメラ撮影用の照明光源を備えていないが、照明光源を内蔵し、当該照明光源の出射軸をレーザー光の出射軸と一致させている場合にも、色収差などの影響を受けるという同様の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−78280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ワークを撮影した高品質の撮影画像を得ることができるレーザー加工装置を提供することを目的とする。特に、レーザー光の光学系を利用して、照明光の照射及びワークの撮影を行うことにより、鮮明な撮影画像を得ることができるレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、レーザー光の光学系を利用してワークを撮影し、鮮明な撮影画像を取得するとともに、レーザー光の戻り光によるカメラの破損を防止することができるレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、レーザー光の光学系を利用してワークを撮影し、歪みの少ない撮影画像を得ることができるレーザー加工装置を提供することを目的とする。特に、ワークの撮影画像に基づいて、加工位置の確認又は調整を高い精度で行うことができるレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の本発明によるレーザー加工装置は、加工対象物を加工するためのレーザー光を生成するレーザー生成器と、上記加工対象物を撮影するためのカメラと、上記カメラの受光軸を上記レーザー光の出射軸と略一致させるカメラ用光学スプリッタと、上記レーザー光の出射軸と略一致する出射軸を有し、上記レーザー光と略同一の波長を含む照明光を生成する照明光源と、上記カメラ用光学スプリッタよりも上記カメラ側に配置され、上記加工対象物からの戻り光を開閉可能に遮断するカメラ用シャッタとを備えて構成される。
【0012】
この様な構成により、レーザー光と略同軸の光路を経由して、レーザー光と略同一の波長を含む照明光を加工対象物へ照射するとともに、加工対象物からの戻り光をカメラで受光することができる。このため、レーザー光の波長に対し最適化されたレーザー光用の光学系を利用して、色収差などの影響を受けにくい鮮明な撮影画像を得ることができる。しかも、カメラ用シャッタを用いて、加工対象物で反射されたレーザー光の戻り光を遮断することにより、レーザー光によるカメラの破損を防止することができる。
【0013】
第2の本発明によるレーザー加工装置は、上記構成に加えて、上記カメラの受光経路上に配置され、上記照明光と略同一の波長を選択的に通過させる波長選択フィルタを備えて構成される。
【0014】
この様な構成により、照明光と略同一の波長を含む所定の波長帯域を除き、不要な波長がカメラに入射するのを防止することができる。このため、加工対象物について鮮明な撮影画像を得ることができる。
【0015】
第3の本発明によるレーザー加工装置は、上記構成に加えて、上記加工対象物に対し上記レーザー光の出射光軸を走査させるスキャナを備え、上記カメラ用光学スプリッタが、上記スキャナよりも上記レーザー生成器側に配置されるように構成される。
【0016】
この様な構成により、スキャナの光学特性を考慮し、レーザー光の照射位置と、カメラによる撮影位置とを高い精度で一致させることができる。このため、撮影画像に基づいて加工位置の確認又は調整を高い精度で行うことが可能になる。
【0017】
第4の本発明によるレーザー加工装置は、上記構成に加えて、上記スキャナよりも上記加工対象物側に配置され、上記レーザー光の入射角にかかわらず、上記レーザー光の出射角を一定にするテレセントリックレンズを備えて構成される。
【0018】
この様な構成により、レーザー光の出射軸を走査させても、一定の角度でレーザー光を加工対象物に照射することができるため、レーザー加工の精度を向上させることができるとともに、歪みの少ない撮影画像が得られ、加工位置の確認又は調整を高い精度で行うことが可能になる。
【0019】
第5の本発明によるレーザー加工装置は、上記構成に加えて、上記カメラ用光学スプリッタよりも上記カメラ側に配置され、上記照明光源の出射軸を上記カメラの受光軸と略一致させる照明用光学スプリッタを備えて構成される。
【0020】
この様な構成により、レーザー光の出射光路上に設けられたカメラ用光学スプリッタよりもカメラ側において、カメラの受光経路と、照明光の出射経路とを分離することができる。このため、レーザー光の出射光路上に、カメラ用光学スプリッタ及び照明用光学スプリッタを配置する場合に比べて、加工対象物に照射されるレーザー光の強度が低下するのを抑制することができる。
【0021】
第6の本発明によるレーザー加工装置は、上記構成に加えて、上記照明用光学スプリッタが、上記加工対象物からの戻り光を上記カメラへ透過させ、上記照明光源からの照明光を上記カメラ用光学スプリッタへ反射させるように構成される。
【0022】
この様な構成により、照明用光学スプリッタからの透過光をカメラに入射させることができるので、反射光をカメラに入射させる場合に比べて、ゴーストの発生を抑制し、鮮明な撮影画像を得ることができる。
【0023】
第7の本発明によるレーザー加工装置は、上記構成に加えて、上記照明用光学スプリッタよりも上記照明光源側に配置され、出射軸近傍の上記照明光を選択的に透過させる光学絞りを備えて構成される。
【0024】
この様な構成により、撮影に不要な照明光を遮断し、照明光の出射経路上の光学系により反射され、カメラに入射する光量を抑制することができる。このため、例えば、走査角度の浅い撮影時に、テレセントリックレンズのレンズ中心付近で正反射された反射光により、撮影画像にレンズフレアが生じるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によるレーザー加工装置は、レーザー光と略同軸の光路を経由して、レーザー光と略同一の波長を含む照明光を加工対象物へ照射するとともに、レーザー光と略同軸の光路を経由して、ワークの撮影を行っている。このため、レーザー光の波長に対し最適化された光学系を利用して、鮮明な撮影画像を得ることができる。
【0026】
また、本発明によるレーザー加工装置は、カメラ用シャッタを用いて、加工対象物からの戻り光を遮断することにより、レーザー光によるカメラの破損を防止することができる。従って、カメラ撮影及びレーザー光出力のタイミングを異ならせれば、レーザー光によるカメラの破損を防止しつつ、加工対象物について高画質の撮影画像を得ることができる。
【0027】
また、本発明によるレーザー加工装置は、カメラの受光経路上に、レーザー光と略同一の波長を選択的に通過させる波長選択フィルタを設けることにより、不要な波長がカメラに入射するのを防止し、鮮明な撮影画像を得ることができる。
【0028】
また、本発明によるレーザー加工装置は、テレセントリックレンズを用いることにより、レーザー光の出射軸を走査させても、一定の角度でレーザー光を加工対象物に照射することができる。このため、レーザー加工の精度を向上させることができるとともに、歪みの少ない撮影画像が得られ、加工位置の確認又は調整を高い精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態によるレーザーマーカ20を含むレーザーマーキングシステム1の概略構成の一例を示したシステム図である。
【図2】図1のレーザーマーカ20の詳細構成を示したブロック図である。
【図3】図2のテレセントリックレンズ48の作用の一例を示した説明図である。
【図4】図2のハーフミラー54を経由する光路の一例を示した説明図である。
【図5】図2の光学ユニット41〜48,51〜56の空間的配置を示した図である。
【図6】図1のマーカヘッド21の内部構造を示した斜視図である。
【図7】図5の照明モジュール530の一構成例を示した平面図である。
【図8】図7の照明モジュール530をA−A切断線によって切断した場合の断面図である。
【図9】図5のカメラモジュール560の一構成例を示した平面図である。
【図10】図9のカメラモジュール560の側面図である。
【図11】図5のカメラ用シャッタ55の一構成例を示した図であり、カメラ用シャッタ55を閉じた状態が示されている。
【図12】図5のカメラ用シャッタ55の一構成例を示した図であり、カメラ用シャッタ55を開いた状態が示されている。
【図13】図2のカメラ56による撮影画像の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<レーザーマーキングシステム1>
図1は、本発明の実施の形態によるレーザー加工装置を含むレーザーマーキングシステム1の概略構成の一例を示したシステム図であり、レーザー加工装置の一例としてレーザーマーカ20が示されている。このレーザーマーキングシステム1は、レーザー光Lを照射してワークWを加工するレーザーマーカ20と、その加工条件を編集するための端末装置10とにより構成される。また、レーザーマーカ20は、レーザー光Lの生成及び走査を行うマーカヘッド21と、マーカヘッド21の動作制御を行うマーカコントローラ22とからなる。
【0031】
端末装置10は、レーザーマーカ20を制御するための端末装置であり、例えば、レーザーマーカ用のアプリケーションプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータを用いることができる。ユーザは、端末装置10を用いることにより、レーザーマーカ20の加工条件を規定する加工設定データを作成し、編集することができる。
【0032】
マーカコントローラ22は、端末装置10から受信した加工設定データに基づいて、マーカヘッド21の動作制御を行っている。また、レーザー発振用の励起光は、マーカコントローラ22において生成され、光ファイバー23を介してマーカヘッド21へ伝送される。
【0033】
マーカヘッド21は、マーカコントローラ22からの励起光に基づいて、レーザー光Lを生成し、ワークWへ照射する。このとき、マーカコントローラ22からの制御信号に基づいてレーザー光Lの出射軸を走査することにより、ワークW上に文字、記号、図形などのシンボルを印字することができる。また、マーカヘッド21内には、図示しない照明光源及びカメラが内蔵され、当該カメラにより撮影されたワークWの撮影画像が、マーカコントローラ22を介して端末装置10に転送され、ディスプレイ上に表示される。ユーザは、この撮影画像を閲覧することにより、ワークW上の加工位置の確認、調整などを行うことができる。
【0034】
<レーザーマーカ20>
図2は、図1のレーザーマーカ20の詳細構成を示したブロック図であり、マーカヘッド21及びマーカコントローラ22の内部構成の一例が示されている。
【0035】
このレーザーマーカ20は、テレセントリックレンズ48を介してレーザー光Lを照射することにより、高精度のレーザー加工を行うことができる。また、ワークWを撮影するための照明光源53及びカメラ56を備え、照明光源53の光軸及びカメラ56の撮影軸が、レーザー光Lの出射軸と同軸になるように配置されている。このため、テレセントリックレンズ48を介して、歪みの少ない撮影画像を得ることができる。
【0036】
また、照明光源53は、レーザー光Lと略同一の波長を含む照明光を生成し、カメラ56は、レーザー光と略同一の波長からなる戻り光を撮影している。このため、レーザー光Lと略同一の波長の光を用いてワークWを撮影することができるので、鮮明な撮影画像が得られる。さらに、カメラ56の撮影軸上にカメラ用シャッタ55を備えることにより、ワークWで反射したレーザー光Lが、戻り光としてカメラ56に入射し、カメラ56が破損するのを防止している。
【0037】
<マーカコントローラ22>
マーカコントローラ22は、電源30、励起光生成部31及び制御部32からなる。電源30は、商用電源を利用して、マーカヘッド21、励起光生成部31及び制御部32へ電力を供給する。励起光生成部31は、レーザー発振のための励起光を生成する。この励起光は、光ファイバー23を介してマーカヘッド21に伝送される。制御部32は、端末装置10から転送された加工設定データに基づいて励起光生成部31及びマーカヘッド21を制御し、レーザー光Lの出力制御及び走査制御を行う。
【0038】
ここで、レーザーマーカ20は、動作モードとして、加工モード及び撮影モードを備え、これらのモードを選択的に切り替えることができる。すなわち、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)等の外部装置又はマーカコントローラ22に接続されるコンソール等から、モード切替信号が入力されると、制御部32は、加工モードか撮影モードかを判断する。つまり、制御部32は、加工モード又は撮影モードのいずれかを識別する識別手段として機能する。加工モードは、レーザー加工を行うための動作モードであり、発振器用シャッタ43が開き、カメラ用シャッタ55が閉じ、照明光源53を消灯させた動作状態である。また、レーザー発振器41は、レーザー光Lを生成可能であり、XYスキャナ47は、加工設定データに基づいて制御される。一方、撮影モードは、カメラ撮影を行うための動作モードであり、発振器用シャッタ43が閉じ、カメラ用シャッタ55が開き、照明光源53が点灯している動作状態である。また、レーザー発振器41は、レーザー光Lの生成が禁止され、XYスキャナ47は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などの制御装置によって制御することができる。
【0039】
制御部32は、マーカヘッド21内のXYスキャナ47を制御しているが、この制御処理は、レーザーマーカ20の動作モードによって異なる。加工モード時には、加工設定データに基づいて、XYスキャナ47の走査角を制御することにより、レーザー光Lの照射位置を制御する。一方、撮影モード時には、PLCからのスキャン要求が入力され、このスキャン要求に基づいて、XYスキャナ47の走査角を制御する。スキャン要求は、カメラ56の撮影位置を指定したXYスキャナ47の制御情報である。スキャン要求に基づいてXYスキャナ47を移動させ、XYスキャナ47の走査角が指定された撮影位置に一致すれば、スキャン応答が、制御部32からPLCへ出力される。
【0040】
また、制御部32は、レーザーマーカ20の動作モードに基づいて、つまり、上述したモード切替信号を受信して、識別した動作モードに基づいて、発振器用シャッタ43及びカメラ用シャッタ55の開閉状態を制御している。加工モード時には、発振器用シャッタ43を開状態、カメラ用シャッタ55を閉状態にすることにより、レーザー光Lを照射可能にするとともに、カメラ56の破損を防止する。一方、撮影モード時には、発振器用シャッタ43を閉状態、カメラ用シャッタ55を開状態にすることにより、レーザー光Lの漏出を防止するとともに、カメラ56によるワークWの撮影を可能にする。
【0041】
また、制御部32は、レーザーマーカ20の動作モードに基づいて、レーザー発振器41を制御する。加工モード時には、加工設定データに基づいてレーザー光Lを発生させる一方、撮影モード時には、レーザー光Lを発生させない。
【0042】
さらに、制御部32は、レーザーマーカ20の動作モードに基づいて、照明光源53を制御する。加工モード時には、照明光源53を消灯させる一方、撮影モード時には、照明光源53を点灯させてワークWを照明する。
【0043】
<マーカヘッド21>
マーカヘッド21は、レーザー発振器41、ビームサンプラー42、発振器用シャッタ43、ミキシングミラー44、Zスキャナ45、偏光ビームスプリッタ46、XYスキャナ47、テレセントリックレンズ48、パワーモニタ51、ガイド光源52、照明光源53、ハーフミラー54、カメラ用シャッタ55及びカメラ56により構成される。
【0044】
レーザー発振器41は、励起光を吸収してレーザービームからなるレーザー光Lを生成するレーザー生成器であり、レーザー媒質、共振器、Qスイッチなどによって構成される。ここでは、レーザー発振器41が、パルス発振する固体レーザー発振器、例えば、SHG型レーザー発振器であるものとする。SHG型レーザー発振器は、レーザー媒質として、Nd(ネオジム)がドープされたYVO(イットリウム・バナデート)結晶を用い、第2高調波を利用して波長532nmの緑色光を出力する。上記レーザー媒質を励起するための励起光には、波長808nmのレーザー光が用いられる。レーザー発振器41によって生成されたレーザー光Lは、ビームサンプラー42、ミキシングミラー44、Zスキャナ45、偏光ビームスプリッタ46、XYスキャナ47及びテレセントリックレンズ48を順に経由してワークWに照射される。
【0045】
ビームサンプラー42は、レーザー発振器41から出力されるレーザー光Lのうち、一定割合をサンプリングビームとして分岐させる光学スプリッタである。例えば、透明基板の表面反射などを利用することにより、入射したレーザー光Lの全光量の約3%が分光され、サンプリングビームとしてパワーモニタ51へ入射される。パワーモニタ51は、レーザー発振器41の出力パワーを検出するための光強度検出手段であり、例えば、サーモパイルなどの感熱素子からなり、その検出結果はレーザー発振器41の出力制御に用いられる。
【0046】
発振器用シャッタ43は、レーザー光Lの出射経路を開閉可能に遮断し、レーザー光Lの漏出を防止する漏出防止用遮断手段であり、偏光ビームスプリッタ46よりも上流側に配置される。ここでは、ビームサンプラー42及びミキシングミラー44間に発振器用シャッタ43が設けられ、レーザー光Lの出力制御信号に基づいて、レーザー光Lの照射時を除き、レーザー光Lの出射経路を遮断している。このため、カメラ56によるワークWの撮影時には、レーザー光Lの出射経路が、発振用シャッタ43により遮断されている。
【0047】
ミキシングミラー44は、ガイド光の出射軸をレーザー光Lの出射軸と略一致させる光混合用光学スプリッタであり、レーザー発振器41からのレーザー光Lを透過させ、ガイド光源52からのガイド光を反射させることにより、ともにZスキャナ45へ送り出している。ガイド光源52は、加工位置をワークW上に表示するガイド光を生成する光源装置であり、LD(レーザーダイオード)などの発光素子からなる。ガイド光の点灯制御と、ガイド光の出射軸の高速スキャンとによって、印字しようとするシンボルパターンを照射スポットの残像として視認させることができる。
【0048】
Zスキャナ45は、レーザー光Lのビーム径を調整するビーム径制御手段であり、レーザー光Lの光軸上に配置された2枚のレンズからなり、これらのレンズの相対距離を変化させることにより、例えば、レーザー光Lのビーム径2mmφを最大8mmφまで拡大させることができる。レーザー光のスポット径を拡大させることにより、スポット内におけるエネルギー密度を低下させるデフォーカス制御を行うことができる。
【0049】
偏光ビームスプリッタ46は、レーザー光Lの出射経路上であって、XYスキャナ47よりも上流側に配置され、Zスキャナ45からのレーザー光Lを透過させる一方、カメラ56の受光軸をレーザー光Lの出射軸と略一致させるカメラ用光学スプリッタである。すなわち、ワークWによる反射光のうち、テレセントリックレンズ48に入射してレーザー光Lの出射経路を遡る戻り光は、偏光ビームスプリッタ46で反射されることにより、レーザー光Lの出射軸から分離され、カメラ56の方へ向かう。また、偏光ビームスプリッタ46は、ハーフミラー54を介して入射される照明光をXYスキャナ47に向けて反射し、照明光の出射軸をレーザー光Lの出射軸と一致させている。例えば、レーザー発振器41により、P偏光のレーザー光Lが生成される場合、P偏光成分を選択的に透過させ、S偏光成分を反射させる偏光ビームスプリッタ46を用いることにより、レーザー光Lを通過させる一方、S偏光成分を含む戻り光及び照射光をそれぞれ反射させることができる。
【0050】
XYスキャナ47は、レーザー光Lの出射軸を2次元走査させるための走査光学系であり、レーザー光Lを反射させるX方向走査用ミラー及びY方向走査用ミラーと、これらの走査用ミラーを回転させる駆動部からなる。走査用ミラーは、ガルバノミラーと呼ばれ、レーザー光Lの出射経路上に配置される。このXYスキャナ47は、マーカコントローラ22からの走査制御信号に基づいて、上記走査用ミラーを回転させる。
【0051】
テレセントリックレンズ48は、レーザー光LをワークWに向けて出射させる出射光学系であり、レーザー光Lの出射経路においてXYスキャナ47よりも下流側、すなわち、ワークW側に配置される。このテレセントリックレンズ48は、複数の光学レンズやカバーガラスによって構成され、ワークW側の画角が略0°となるオブジェクト側テレセントリック光学系からなる。つまり、テレセントリックレンズ48は、レーザー光Lの入射角度に関わらず、レーザー光の主光線がレンズ光軸と略平行となるように、ワークWに向けてレーザー光Lを出射させる。偏光ビームスプリッタ46を通過したレーザー光Lは、テレセントリックレンズ48によってワークWに向けて出射される。
【0052】
照明光源53は、ワークWを照明するための照明光を生成する光源装置であり、LED(発光ダイオード)などの発光素子からなる。この照明光源53は、少なくともレーザー光Lと略同一の波長を含む照明光を生成し、ハーフミラー54へ出射する。
【0053】
ハーフミラー54は、カメラ56の受光経路上に配置され、偏光ビームスプリッタ46からの戻り光を透過させる一方、照明光の出射軸をカメラ56の受光軸と略一致させる照明用光学スプリッタである。すなわち、偏光ビームスプリッタ46からの戻り光を透過させ、カメラ56に入射する一方、照明光源53からの照明光を偏光ビームスプリッタに向けて反射する。
【0054】
カメラ用シャッタ55は、カメラ56の受光経路を開閉可能に遮断し、レーザー光Lの照射時に戻り光がカメラ56に入射するのを防止するためのカメラ保護用遮断手段であり、偏光ビームスプリッタ46よりも上流側に配置される。すなわち、カメラ用シャッタ55は、偏光ビームスプリッタ46よりもカメラ56側に配置され、レーザー光Lが加工対象物に照射されたときに、加工対象物で反射した戻り光であって、かつ、後述する波長選択フィルタ566を通過してしまう戻り光を遮断する。ここでは、ハーフミラー54及びカメラ56間にカメラ用シャッタ55が設けられ、レーザー光Lの出力制御信号に基づいて開閉され、少なくともレーザー光Lの照射期間中は、カメラ56の受光経路を遮断している。このため、レーザー照射のタイミングと、カメラ撮影のタイミングを異ならせれば、レーザー光Lの戻り光によってカメラ56が損傷を受けるのを防止することができる。
【0055】
カメラ56は、ワークWを撮影し、撮影画像を生成するための撮像ユニットであり、マーカコントローラ22からの撮像制御信号に基づいて撮影を行い、得られた撮影画像をマーカコントローラ22へ出力する。ここでは、カメラ56が、レーザー光と略同一の波長を受光し、撮影画像を生成しているものとする。
【0056】
カメラ56を用いたワークWの撮影時には、照明光源53が点灯され、ハーフミラー54、偏光ビームスプリッタ(PBS)46、XYスキャナ47及びテレセントリックレンズ48を介して、ワークWに照明光が照射される。このとき、照明光のワークWによる反射光が、テレセントリックレンズ48、XYスキャナ47、PBS46及びハーフミラー54を介して、カメラ56によって受光される。ここで、カメラ56の受光軸は、PBS46において、レーザー光Lの出射軸から分離される。つまり、PBS46は、カメラ56の受光経路に配置されている。
【0057】
<テレセントリックレンズ48>
図3は、図2のテレセントリックレンズ48の作用の一例を示した説明図である。図中の(a)には、印字可能エリアの中央にレーザー光Lを照射する場合、(b)には、印字可能エリアの左端付近にレーザー光Lを照射する場合、(c)には、印字可能エリアの右端付近にレーザー光Lを照射する場合がそれぞれ示されている。
【0058】
このテレセントリックレンズ48は、レーザー光Lの入射角度にかかわらず、その主光線がテレセントリックレンズ48の光軸と略平行となるようにレーザー光Lを出射させる。このため、XYスキャナ47の走査角が深くなり、テレセントリックレンズ48への入射角が大きくなった場合であっても、ワークW上に形成されるレーザー光Lのスポット径は変化せず、高精度のレーザー加工を行うことができる。
【0059】
この様なレーザーマーカ20において、レーザー光Lの出射軸と略一致させた受光軸を有するカメラ56を用いてワークWを撮影すれば、歪みの少ない撮影画像を得ることができる。すなわち、XYスキャナ47の走査角が深くなり、テレセントリックレンズ48への入射角が大きくなった場合であっても、撮影画像が歪むことはない。さらに、XYスキャナ47の走査角にかかわらず、撮影画像内において周辺の画像が歪むこともなくなる。従って、歪みの少ない撮影画像に基づいて、加工位置の確認又は調整を高い精度で行うことができる。
【0060】
<ハーフミラー54>
図4は、図2のハーフミラー54を経由する光路の一例を示した説明図である。ハーフミラー54における反射は、光が入射する第1面で生じるのに加えて、第1面に対向する第2面でも生じる。このため、ハーフミラー54の反射光を撮影した場合、像が二重に見えるゴーストが発生する。これに対し、透過光を撮影した場合には、この様な問題が発生しない。
【0061】
このため、偏光ビームスプリッタ46から入射した戻り光が、ハーフミラー54を透過して出射される方向にカメラ56を配置し、ハーフミラー54で反射した照明光が、偏光ビームスプリッタ46へ入射するように照明光源53を配置すれば、鮮明な撮影画像を得ることができる。
【0062】
<光学ユニットの空間的配置>
図5は、図2の光学ユニット41〜48,51〜56の空間的配置を示した図である。レーザー発振器41、ビームサンプラー42、ミキシングミラー44、Zスキャナ45、偏光ビームスプリッタ46及びXYスキャナ47は、水平方向に略一直線に整列配置され、レーザー光Lは、レーザー発振器41からXYスキャナ47まで直線経路を通り、XYスキャナ47によって下方へ曲げられ、テレセントリックレンズ48に入射する。このような構成を採用することにより、レーザー光が折れ曲がる回数を少なくすることができるので、上記光学ユニット41〜47のばらつきによる誤差を抑制し、レーザー加工の精度を向上させることができる。
【0063】
レーザ発振器41は、T字型の形状からなり、右下の入力端子41Tから励起光が入力され、左上の出力筒41Bの先端に形成された出力窓41Wからレーザー光Lが出力される。
【0064】
ビームサンプラー42及びミキシングミラー44は、レーザー光Lの出射軸に対し、45°傾斜させて配置されている。
【0065】
発振器用シャッタ43は、遮光板43a、回転駆動部43b、位置検出部43c及び反射光吸収装置43dにより構成される。遮光板43aは、レーザー光Lの光路を遮断する遮光手段であり、例えば金属板からなる。回転駆動部43bは、遮光板43aを回転させる駆動手段であり、例えば、ロータリーソレノイドが用いられる。この回転駆動部43bが、遮光板43aを回転させることにより、レーザー光Lの光路を開閉可能に遮断することができる。位置検出部43cは、遮光板43aの回転位置を検出する検出手段であり、例えば、フォトカプラが用いられる。反射光吸収装置43dは、遮光板43aにより反射されたレーザー光Lを吸収し、レーザー光Lが散乱するのを防止している。
【0066】
偏光ビームスプリッタ46は、レーザー光Lの出射軸に対して約56.6°傾斜させて配置され、レーザー光Lの入射角をブリュースター角と略一致させている。このため、レーザー光Lを概ね100%透過させることができる。戻り光は、偏光ビームスプリッタ46で反射され、水平方向のレーザー光Lの出射軸に対し、約66.8°の角度をもって上に向かう。
【0067】
照明モジュール530は、紙面手前側に照明光源53が配置され、紙面奥側にハーフミラー54が配置されたモジュールであり、手前から奥に向けて照射された照明光は、ハーフミラー54で反射され、左下方向の偏光ビームスプリッタ46に入射する。また、偏光ビームスプリッタ46から入射する戻り光は、ハーフミラー54を透過して、右上方向のカメラモジュール560へ入射される。
【0068】
カメラモジュール560は、カメラ56及びレンズ鏡筒561により構成されるモジュールであり、カメラ56は、レンズ鏡筒561に対し交換可能に取り付けられている。
【0069】
<マーカヘッド21の内部構造>
図6は、図1のマーカヘッド21の内部構造を示した斜視図である。マーカヘッド21は、図2に示した光学ユニット41〜48,51〜56のうち、テレセントリックレンズ48及びカメラ56を除く各光学ユニットが、筐体フレーム60内に収容されている。
【0070】
筐体フレーム60は、アルミニウムなどの金属からなる一体成型されたダイキャストフレームであり、ともに一体成形された仕切り板61によって2つの収容部62,63に分割されている。筐体フレーム60を一体成形し、各光学ユニット41〜48,51〜56を筐体フレーム60に固定することにより、これらの光学ユニットの配置精度を向上させ、レーザー加工の精度を向上させることができる。
【0071】
右側の収容部62は、レーザー発振器41が収容されるとともに、光ファイバー23の接続部23Cが外壁に取り付けられ、光ファイバー23が壁面を貫通している。励起光は、光ファイバー23を介して、レーザー発振器41の右下部へ入射され、レーザー発振器41の左上部の出力窓41Wからレーザー光Lが出射される。この出力窓41Wは、仕切り板61を貫通するレーザー発振器41の出力筒41Bの先端、つまり、左側の収容部63内に配置されている。
【0072】
左の収容部63には、レーザー発振器41、テレセントリックレンズ48及びカメラ56を除く、各光学ユニットが収容されている。この収容部63は、防塵構造を有し、粉塵の影響による加工品質の低下を防止している。
【0073】
筐体フレーム60には、マーカヘッド21を支持するための3本の高さ調整脚65が取り付けられている。各高さ調整脚65は、円柱状の支持部材であり、個別に長さを調整することができる。各高さ調整脚65は、共通のアタッチメントプレート66に取り付けられ、マーカヘッド21は、アタッチメントプレート66を介して作業台などの上に設置される。
【0074】
<照明モジュール530>
図7は、図5の照明モジュール530の一構成例を示した平面図である。また、図8は、図7の照明モジュール530をA−A切断線によって切断した場合の断面図である。この照明モジュール530は、照明光源53、ヒートシンク531、アパーチャ532、集光レンズ533及びハーフミラー54により構成され、取付面534が、筐体フレーム60に固着される。
【0075】
ヒートシンク531は、多数の放熱フィンを備えた放熱板であり、照明光源53の背面に取り付けられている。アパーチャ532は、出射軸近傍の照明光のみを透過させる光学絞りであり、照明光の出射軸上に小さな透過窓を形成した遮光板からなる。アパーチャ532を透過した照明光は、集光レンズ533を通って、ハーフミラー54に入射される。ハーフミラー54は、カメラ56の受光軸に対し、45°傾斜させて配置されている。
【0076】
このようなアパーチャ532を照明光源53の前方に配置すれば、撮影に不要な光を遮断し、照射光の光量を抑制することができる。このため、撮影画像にレンズフレアが生じるのを抑制することができる。特に、XYスキャナ47が浅い走査角度の場合に、照明光がテレセントリックレンズ48で反射され、撮影画像にレンズフレアが生じるのを抑制することができる。
【0077】
<カメラモジュール560>
図9は、図5のカメラモジュール560の一構成例を示した平面図であり、図10は、図9のカメラモジュール560の側面図である。このカメラモジュール560は、カメラ56及びレンズ鏡筒561からなる。
【0078】
カメラ56は、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)などの撮像素子563が形成された回路基板562からなり、レンズ鏡筒561に着脱可能に取り付けられている。
【0079】
レンズ鏡筒561は、カメラ取付部564、結像レンズ565及び波長選択フィルタ566を備え、取付面567が筐体フレーム60に固定されている。カメラ取付部564は、カメラ56と係合させるねじ込み式マウント部であり、カメラ56の取付位置を調整することができる。結像レンズ565は、戻り光を撮像素子563に結像させるための受光光学系である。
【0080】
波長選択フィルタ566は、外乱光が撮影画像に映り込むのを防止するための光学部材であり、カメラ56の受光経路上に配置され、照明光源53の照明光と略同一の波長を選択的に透過させる。すなわち、波長選択フィルタ566は、照明光にて照らされた加工対象物からの戻り光を選択的に通過させる。波長選択フィルタ566を用いて、照明光と略同一の波長からなる戻り光をカメラ56に入射させるとともに、撮影に必要のない波長成分を除去することにより、鮮明な撮影画像を得ることができる。
【0081】
高精度のレーザ加工を行うためには、レーザー光Lの波長について最適な光学特性が得られるように、マーカヘッド21内の光学系を設計する必要がある。特に、テレセントリックレンズ48は、レーザー光Lの波長に対し、色収差などの影響を抑制するように設計される。このため、レーザー光Lと略同一の波長からなる戻り光を撮影することにより、鮮明な撮影画像を得ることができる。また、外乱光による影響も抑制することができる。なお、波長選択フィルタ566は、少なくともレーザー光Lと略同一の波長を含む帯域を選択的に通過させるものであればよい。
【0082】
また、波長選択フィルタ566を偏光ビームスプリッタ46よりもカメラ56側に配置することにより、偏光ビームスプリッタ46よりもワークW側に配置する場合に比べて、レーザー光Lの出射強度が低下するのを抑制することができる。
【0083】
<カメラ用シャッタ55>
図11及び図12は、図5のカメラ用シャッタ55の一構成例を示した図であり、図11には、カメラ用シャッタ55を閉じた状態が示され、図12には、カメラ用シャッタ55を開いた状態が示されている。
【0084】
カメラ用シャッタ55は、遮光板550、回転駆動部551及び位置検出部552により構成される。遮光板550は、レーザー光Lの光路を遮断する遮光手段であり、例えば金属板からなる。回転駆動部551は、遮光板550を回転させる駆動手段であり、例えば、ロータリーソレノイドが用いられる。この回転駆動部551が、遮光板550を回転させることにより、カメラ56への入射光を開閉可能に遮断することができる。位置検出部552は、遮光板550の回転位置を検出する検出手段であり、例えば、遮光板550とともに回転する位置検出用突起553の位置を検出するフォトカプラからなる。
【0085】
図11には、カメラ撮影時以外のカメラ用シャッタ55の状態が示されている。遮光板550により、レンズ鏡筒561の受光部を塞ぐことにより、カメラ56の受光経路を遮断すれば、ワークWからの戻り光がカメラ56に入射することはない。
【0086】
一方、図12には、カメラ撮影時のカメラ用シャッタ55の状態が示されている。図11の状態から遮光板550を回動させ、レンズ鏡筒561の受光部を露出させることにより、カメラ56の受光経路を開放すれば、ワークWからの戻り光はカメラ56に入射される。
【0087】
<撮影画像>
図13は、図2のカメラ56による撮影画像の一例を示した図であり、図中の(a1)〜(a3)には、照明光源53にアパーチャ532を用いることなく撮影された撮影画像が示され、(b1)〜(b3)には、アパーチャ532を用いて撮影された撮影画像が示されている。
【0088】
照明光源53から出射された照明光は、ハーフミラー54及び偏光ビームスプリッタ46を経由してXYスキャナ47により反射され、テレセントリックレンズ48に入射する。その際、テレセントリックレンズ48に対する入射角度が浅いほど、テレセントリックレンズ48を構成する光学レンズの表面で反射してカメラ56の受光経路を遡る照明光の光量が増大し、撮影画像が白くなる。このような現象は、レンズフレアと呼ばれている。つまり、XYスキャナ47による走査角度が浅い場合、レンズフレアの影響により、撮影画像の輝度レベルが飽和し、白くなってしまう。
【0089】
図中の(a1)及び(b1)は、走査角度を0°とし、印字可能エリアの中央近傍を撮影した場合の撮影画像である。照明光源53にアパーチャ532を用いてない(a1)の撮影画像は、レンズフレアの影響により画像全体が白くなっている。これに対し、アパーチャ532を用いた(b1)の撮影画像は、レンズフレアの影響が低く抑えられており、ワークWの表面状態を識別することができる。
【0090】
図中の(a2)及び(b2)は、走査角度を上限の半分程度とした場合の撮影画像である。(a1)及び(b1)の場合に比べて、レンズフレアの影響は小さくなっている。また、図中の(a3)及び(b3)は、走査角度を上限とし、印字可能エリアの外縁近傍を撮影した場合の撮影画像である。(a2)及び(b2)の場合に比べて、レンズフレアの影響は更に小さくなっている。つまり、走査角度が浅いほど、レンズフレアの影響は顕著であるが、いずれの場合にも、アパーチャ532を用いて撮影した画像の方が、鮮明な撮影画像が得られることがわかる。
【0091】
本実施の形態によれば、レーザー光Lと略同軸の光路を経由して、レーザー光と略同一の波長を含む照明光を加工対象物へ照射するとともに、加工対象物からの戻り光をカメラ56で撮影することができる。このため、レーザー光の波長に対し最適化された光学系を利用して色収差などの影響を受けにくい鮮明な撮影画像を得ることができる。
【0092】
また、本実施の形態によれば、カメラ用シャッタ55を用いて、加工対象物で反射されたレーザー光Lの戻り光を遮断することにより、レーザー光Lによるカメラ56の破損を防止することができる。特に、カメラ用シャッタ55を偏光ビームスプリッタ46よりもカメラ56側に配置することにより、加工対象物に照射されるレーザー光の強度が低下するのを抑制することができる。
【0093】
また、本実施の形態によれば、カメラ56の受光経路上にレーザー光と略同一の波長を選択的に通過させる波長選択フィルタ566を設けることにより、不要な波長がカメラに入射するのを防止し、レーザー光Lと略同一の波長の戻り光を撮影することができるので、鮮明な撮影画像を得ることができる。
【0094】
また、本実施の形態によれば、テレセントリックレンズ48を用いることにより、レーザー加工の精度を向上させることができるとともに、歪みの少ない撮影画像を得ることができる。
【0095】
なお、本実施の形態では、SHG型レーザー発振を用いる場合の例について説明したが、本発明によるこれに限定されない。例えば、Yb(イッテルビウム)をドープしたファイバーを増幅器として用いるファイバーレーザーを用いたレーザー加工装置に対しても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 レーザーマーキングシステム
10 端末装置
20 レーザーマーカ
21 マーカヘッド
22 マーカコントローラ
23 光ファイバー
41 レーザー発振器
42 ビームサンプラー
43 発振器用シャッタ
44 ミキシングミラー
45 Zスキャナ
46 偏光ビームスプリッタ
47 XYスキャナ
48 テレセントリックレンズ
51 パワーモニタ
52 ガイド光源
53 照明光源
530 照明モジュール
531 ヒートシンク
532 アパーチャ
54 ハーフミラー
55 カメラ用シャッタ
56 カメラ
60 筐体フレーム
61 仕切り板
62,63 収容部
533 集光レンズ
550 遮光板
551 回転駆動部
552 位置検出部
553 位置検出用突起
560 カメラモジュール
561 レンズ鏡筒
562 回路基板
563 撮像素子
564 カメラ取付部
565 結像レンズ
566 波長選択フィルタ
L レーザー光
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を加工するためのレーザー光を生成するレーザー生成器と、
上記加工対象物を撮影するためのカメラと、
上記カメラの受光軸を上記レーザー光の出射軸と略一致させるカメラ用光学スプリッタと、
上記レーザー光の出射軸と略一致する出射軸を有し、上記レーザー光と略同一の波長を含む照明光を生成する照明光源と、
上記カメラ用光学スプリッタよりも上記カメラ側に配置され、上記加工対象物からの戻り光を開閉可能に遮断するカメラ用シャッタとを備えたことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
上記カメラの受光経路上に配置され、上記照明光と略同一の波長を選択的に通過させる波長選択部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
上記加工対象物に対し上記レーザー光の出射光軸を走査させるスキャナを備え、
上記カメラ用光学スプリッタが、上記スキャナよりも上記レーザー生成器側に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
上記スキャナよりも上記加工対象物側に配置され、上記レーザー光の入射角にかかわらず、上記レーザー光の出射角を一定にするテレセントリックレンズを備えたことを特徴とする請求項3に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
上記カメラ用光学スプリッタよりも上記カメラ側に配置され、上記照明光源の出射軸を上記カメラの受光軸と略一致させる照明用光学スプリッタを備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
上記照明用光学スプリッタは、上記加工対象物からの戻り光を上記カメラへ透過させ、上記照明光源からの照明光を上記カメラ用光学スプリッタへ反射させることを特徴とする請求項5に記載のレーザー加工装置。
【請求項7】
上記照明用光学スプリッタよりも上記照明光源側に配置され、出射軸近傍の上記照明光を選択的に透過させる光学絞りを備えたことを特徴とする請求項6に記載のレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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