説明

レーザー溶着装置

【課題】折れ角が大きい(例えば、120〜180°)熱可塑性樹脂製レンズと熱可塑性樹脂製部材とをその外周部全周にわたり、同時にレーザー溶着することが可能なレーザー溶着装置を提供する。
【解決手段】レーザー光に対し透過性を有する熱可塑性樹脂製レンズ20とレーザー光に対し吸収性を有する熱可塑性樹脂製部材30とをレーザー溶着するレーザー溶着装置10において、前記レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラーを含む第1ガルバノスキャン光学系40Aと、前記レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラーを含む第2ガルバノスキャン光学系40Bと、を備えている。第1ガルバノスキャン光学系40Aは、そのレーザー光が前記熱可塑性樹脂製レンズ20表面の外周部全周を走査する。第2ガルバノスキャン光学系40Bは、そのレーザー光が前記熱可塑性樹脂製レンズ20表面の外周部全周を走査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー溶着装置に係り、特にレーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラーを含むガルバノスキャン光学系を備えたレーザー溶着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光に対し透過性を有する熱可塑性樹脂製レンズとレーザー光に対し吸収性を有する熱可塑性樹脂製部材とをレーザー溶着するレーザー溶着装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のレーザー溶着装置においては、ロボットアームに固定されたレーザー射出部からのレーザー光が、熱可塑性樹脂製レンズを透過し、当該熱可塑性樹脂製レンズ裏面に当接した熱可塑性樹脂製部材を照射し、両者を溶融することで、レーザー溶着が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−070679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロボットアームに固定されたレーザー射出部に代え、図7に示すように、フレーム等(図示せず)に固定されたガルバノスキャン光学系210(例えば、レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラー等を含むガルバノスキャンヘッド)を用いる場合には、熱可塑性樹脂製レンズ220の折れ角φが大きいと(例えば、120〜180°)、ガルバノスキャン光学系210からのレーザー光の熱可塑性樹脂製レンズ220(表面)に対する入射角θが部分的に臨界角を超えてしまい、ガルバノスキャン光学系210からのレーザー光は部分的に熱可塑性樹脂製レンズ220に入射しない。このため、ガルバノスキャン光学系を単純に用いるだけでは、折れ角φが大きい(例えば、120〜180°)熱可塑性樹脂製レンズと熱可塑性樹脂製部材とをその外周部全周にわたり、同時にレーザー溶着することができない、という問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、折れ角が大きい(例えば、120〜180°)熱可塑性樹脂製レンズと熱可塑性樹脂製部材とをその外周部全周にわたり、同時にレーザー溶着することが可能なレーザー溶着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、レーザー光に対し透過性を有する熱可塑性樹脂製レンズとレーザー光に対し吸収性を有する熱可塑性樹脂製部材とをレーザー溶着するレーザー溶着装置において、前記レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラーを含む第1ガルバノスキャン光学系と、前記レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラーを含む第2ガルバノスキャン光学系と、を備えており、前記熱可塑性樹脂製レンズは、第1レンズ部と、前記第1レンズ部に対し120〜180°の折れ角をなすように屈曲レンズ部を介して前記第1レンズ部に連続する第2レンズ部と、を含んでおり、前記熱可塑性樹脂製部材は、前記熱可塑性樹脂製レンズ裏面の外周部に当接する環状接合面を含んでおり、前記第1ガルバノスキャン光学系は、そのレーザー光が前記熱可塑性樹脂製レンズ表面の外周部全周を走査するように、かつ、その全周走査されるレーザー光が少なくとも前記第1レンズ部及び前記屈曲レンズ部を透過するとともに前記第1レンズ部裏面及び前記屈曲レンズ部裏面それぞれに当接した前記環状接合面を照射し、当該環状接合面とこれに当接した前記熱可塑性樹脂製レンズ及び前記屈曲レンズ部とを溶融して接合するように、前記第1レンズ部に対向して配置されており、前記第2ガルバノスキャン光学系は、そのレーザー光が前記熱可塑性樹脂製レンズ表面の外周部全周を走査するように、かつ、その全周走査されるレーザー光が少なくとも前記第2レンズ部及び前記屈曲レンズ部を透過するとともに前記第2レンズ部裏面及び前記屈曲レンズ部裏面それぞれに当接した前記環状接合面を照射し、当該環状接合面とこれに当接した前記熱可塑性樹脂製レンズ及び前記屈曲レンズ部とを溶融して接合するように、前記第2レンズ部に対向して配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、第1ガルバノスキャン光学系及び第2ガルバノスキャン光学系がそれぞれ、特定の姿勢で第1レンズ部及び第2レンズ部に対向して配置されているため、第1レンズ部に対する折れ角が120〜180°の熱可塑性樹脂製レンズと熱可塑性樹脂製部材とをその外周部全周にわたり、同時にレーザー溶着することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、レーザー光に対し透過性を有する熱可塑性樹脂製レンズとレーザー光に対し吸収性を有する熱可塑性樹脂製部材とをレーザー溶着するレーザー溶着装置において、前記レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラーを含む第1ガルバノスキャン光学系と、前記レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラーを含む第2ガルバノスキャン光学系と、前記レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラーを含む第3ガルバノスキャン光学系と、を備えており、前記熱可塑性樹脂製レンズは、第1レンズ部と、前記第1レンズ部に対し90〜120°の折れ角をなすように屈曲レンズ部を介して前記第1レンズ部に連続する第2レンズ部と、を含んでおり、前記熱可塑性樹脂製部材は、前記熱可塑性樹脂製レンズ裏面の外周部に当接する環状接合面を含んでおり、前記第1ガルバノスキャン光学系は、そのレーザー光が少なくとも前記第1レンズ部を透過するとともに前記第1レンズ部裏面に当接した前記環状接合面を照射し、当該環状接合面とこれに当接した前記熱可塑性樹脂製レンズとを溶融して接合するように、前記第1レンズ部に対向して配置されており、前記第2ガルバノスキャン光学系は、そのレーザー光が少なくとも前記第2レンズ部を透過するとともに前記第2レンズ部裏面に当接した前記環状接合面を照射し、当該環状接合面とこれに当接した前記熱可塑性樹脂製レンズとを溶融して接合するように、前記第2レンズ部に対向して配置されており、前記第3ガルバノスキャン光学系は、そのレーザー光が少なくとも前記屈曲レンズ部及びこれに隣接する第1レンズ部の一部及び第2レンズ部の一部を透過するとともに前記屈曲レンズ部裏面、前記第1レンズ部の一部の裏面及び前記第2レンズ部の一部の裏面それぞれに当接した前記環状接合面を照射し、当該環状接合面とこれに当接した前記熱可塑性樹脂製レンズ及び前記屈曲レンズ部とを溶融して接合するように、前記屈曲レンズ部に対向して配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、第1ガルバノスキャン光学系、第2ガルバノスキャン光学系及び第3ガルバノスキャン光学系がそれぞれ、特定の姿勢で第1レンズ部、第2レンズ部及び屈曲レンズ部に対向して配置されているため、第1レンズ部に対する折れ角が90〜120°の熱可塑性樹脂製レンズと熱可塑性樹脂製部材とをその外周部全周にわたり、同時にレーザー溶着することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、折れ角が大きい(例えば、120〜180°)熱可塑性樹脂製レンズと熱可塑性樹脂製部材とをその外周部全周にわたり、同時にレーザー溶着することが可能なレーザー溶着装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態であるレーザー溶着装置10の概略構成図である。
【図2】(a)レンズ20とハウジング30の断面図(突き当て前)、(b)レンズ20とハウジング30の断面図(突き当て後)である。
【図3】溶着ラインLA、LB及びオーバーラップ部分OLを説明するための図である。
【図4】(a)〜(c)オーバーラップ部分OLにおける発泡等を防止するための構成例である。
【図5】本発明の一実施形態であるレーザー溶着装置10(変形例)の概略構成図である。
【図6】溶着ラインLA、LB、LC及びオーバーラップ部分OLを説明するための図である。
【図7】熱可塑性樹脂製レンズ220の折れ角φが大きいと(例えば、120〜180°)、ガルバノスキャン光学系210からのレーザー光の熱可塑性樹脂製レンズ220に対する入射角との関係で、ガルバノスキャン光学系210からのレーザー光が熱可塑性樹脂製レンズ220に入射しないことを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態であるレーザー溶着装置について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
本実施形態のレーザー溶着装置10は、レンズ20とこのレンズ20に組み合わされて車両用灯具(例えば、車両後部の左右両側にそれぞれ配置されるリアコンビネーションランプ)を構成するハウジング30とをレーザー溶着するための装置であり、図1に示すように、第1ガルバノスキャン光学系40A、第2ガルバノスキャン光学系40B等を備えている。
【0015】
レンズ20は、レーザー光に対し透過性を有する熱可塑性樹脂製レンズである。レンズ20は、第1レンズ部21と、第1レンズ部21に対し120〜180°の折れ角φをなすように屈曲レンズ部22を介して第1レンズ部21に連続する第2レンズ部23と、を含んでいる。なお、折れ角φとは、灯具の意匠面(レンズ20表面)の曲げ角(車両のボディラインの曲げ角)を意味する。
【0016】
図2(a)に示すように、レンズ20裏面の外周部には、先端に環状接合面24aを含む環状リブ24が形成されている。
【0017】
ハウジング30は、レーザー光に対し吸収性を有する熱可塑性樹脂製部材である。図2(a)に示すように、ハウジング30は、レンズ20裏面の外周部(環状接合面24a)が当接する環状接合面31を含んでいる。
【0018】
レンズ20とハウジング30とは加圧され、レンズ20(環状接合面24a)とハウジング30(環状接合面31)とがその全周にわたり互いに当接(密着)した状態で保持されている。例えば、レンズ20とハウジング30とは、図2(a)、図2(b)に示すように、ハウジング30(環状接合面31)を図示しない機構を用いてレンズ20に対し突き上げ、表面の外周部に透明押さえ部60が当接したレンズ20の裏面(環状接合面24)にハウジング30(環状接合面31)を突き当てることで、互いに当接(密着)した状態で保持される。
【0019】
第1ガルバノスキャン光学系40A及び第2ガルバノスキャン光学系40Bはいずれも同一の構成であり、公知のフレーム等(図示せず)に固定されている。第1ガルバノスキャン光学系40A及び第2ガルバノスキャン光学系40Bとしては、例えば、レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラー等(図示せず)を含むガルバノスキャンヘッドを用いることが可能である。
【0020】
第1ガルバノスキャン光学系40Aは、そのレーザー光RayAがレンズ20表面の外周部全周を走査するように、かつ、その全周走査されるレーザー光RayAの第1レンズ部21及び屈曲レンズ部22に対する入射角θが臨界角(例えば60°)よりも小さくなるように、第1レンズ部21に対向して配置されている(図1参照)。
【0021】
すなわち、第1ガルバノスキャン光学系40Aは、そのレーザー光RayAがレンズ20表面の外周部全周を走査するように、かつ、その全周走査されるレーザー光RayAが少なくとも第1レンズ部21及び屈曲レンズ部22を透過するとともに第1レンズ部21裏面及び屈曲レンズ部22裏面それぞれに当接したハウジング30(環状接合面31)を照射し、当該ハウジング30(環状接合面31)とこれに当接した第1レンズ部21及び屈曲レンズ部22とを溶融して接合するように、第1レンズ部21に対向して配置されている。
【0022】
第2ガルバノスキャン光学系40Bは、そのレーザー光RayBがレンズ20表面の外周部全周を走査するように、かつ、その全周走査されるレーザー光RayBの第2レンズ部23及び屈曲レンズ部22に対する入射角θが臨界角(例えば60°)よりも小さくなるように、第2レンズ部21に対向して配置されている(図1参照)。
【0023】
すなわち、第2ガルバノスキャン光学系40Bは、そのレーザー光RayBがレンズ20表面の外周部全周を走査するように、かつ、その全周走査されるレーザー光RayBが少なくとも第2レンズ部23及び屈曲レンズ部22を透過するとともに第2レンズ部23裏面及び屈曲レンズ部22裏面それぞれに当接したハウジング30(環状接合面31)を照射し、当該ハウジング30(環状接合面)とこれに当接した第2レンズ部23及び屈曲レンズ部22とを溶融して接合するように、第2レンズ部23に対向して配置されている。
【0024】
上記構成のレーザー溶着装置10によれば、第1ガルバノスキャン光学系40Aからのレーザー光RayAは、レンズ20表面の外周部全周を走査し、かつ、その全周走査されるレーザー光RayAが少なくとも第1レンズ部21及び屈曲レンズ部22を透過するとともに第1レンズ部21裏面及び屈曲レンズ部22裏面それぞれに当接したハウジング30(環状接合面31)を照射し、当該ハウジング30(環状接合面31)とこれに当接した第1レンズ部21及び屈曲レンズ部22とを溶融して接合する。図3中、LAは、第1ガルバノスキャン光学系40Aからのレーザー光RayAにより形成された接合ラインを示している。
【0025】
一方、第2ガルバノスキャン光学系40Bからのレーザー光RayBは、レンズ20表面の外周部全周を走査し、かつ、その全周走査されるレーザー光RayBが少なくとも第2レンズ部23及び屈曲レンズ部22を透過するとともに第2レンズ部23裏面及び屈曲レンズ部22裏面それぞれに当接したハウジング30(環状接合面31)を照射し、当該ハウジング30(環状接合面31)とこれに当接した第2レンズ部23及び屈曲レンズ部22とを溶融して接合する。図3中、LBは、第2ガルバノスキャン光学系40Bからのレーザー光RayBにより形成された接合ラインを示している。
【0026】
以上のように、二つのガルバノスキャン光学系40A、40Bを上記の特定の姿勢(図1参照)で配置することにより、ガルバノスキャン光学系40A、40Bからのレーザー光RayA、RayBのレンズ20に対する入射角θ<臨界角(例えば60°)に収めることが可能となるため、第1レンズ部21に対する折れ角φが120〜180°のレンズ20とハウジング30とをその外周部全周にわたり、同時にレーザー溶着することが可能となる。
【0027】
上記構成のレーザー溶着装置10においては、図3に示すように、接合ラインLAと接合ラインLBとが、屈曲レンズ部22近傍においてオーバーラップする。このオーバーラップ部分OLにおいては、単純に2倍のエネルギーが照射されるため、発泡等を生じ、外観見栄えに影響を及ぼす恐れがある。
【0028】
これを防止するために、例えば、図4(a)に示すように、レンズ20表面のうちオーバーラップ部分OLに対応する領域(レーザー光RayA、RayBがオーバーラップして入射する領域)に、ハウジング30(環状接合面31)を照射するレーザー光を半減させる目的で、レーザー光に対する導光率が50%のレンズカット25(例えばローレット)を施してもよい。
【0029】
あるいは、図4(b)に示すように、レンズ20裏面のうちハウジング30(環状接合面31)が当接する領域(レーザー光RayA、RayBがオーバーラップして入射する領域)に、ハウジング30(環状接合面31)を照射するレーザー光を半減させる目的で、レーザー光に対する導光率が50%のシボ加工26を施してもよい。
【0030】
あるいは、図3(c)に示すように、レンズ20表面のうちオーバーラップ部分OLに対応する領域(レーザー光RayA、RayBがオーバーラップして入射する領域)に、ハウジング30(環状接合面31)を照射するレーザー光を半減させる目的で、レーザー光に対する導光率が50%の塗装27を施してもよい。
【0031】
あるいは、オーバーラップ部分OLにおいてレーザー光RayA、レーザー光RayBの出力が半減するように、各光学系40A、40Bを制御してもよい。
【0032】
このようにすれば、オーバーラップ部分OLにおける接合ラインLAと接合ラインLBに対するエネルギーがそれぞれ0.5倍で、合計1倍のエネルギーとなるため、オーバーラップ部分OLにおける発泡等を防止することが可能となる。
【0033】
次に、変形例について説明する。
【0034】
図5に示すように、第1レンズ部21に対する第2レンズ部23の折れ角φが90〜120°である場合には、第1ガルバノスキャン光学系40A、第2ガルバノスキャン光学系40Bだけでは、レンズ20とハウジング30とを外周部全周にわたりレーザー溶着することができない(図6参照)。すなわち、第1レンズ部21に対する第2レンズ部23の折れ角φが120〜180°である場合には、第1ガルバノスキャン光学系40A、第2ガルバノスキャン光学系40Bからのレーザー光RayA、RayBは、レンズ20表面の外周部全周を走査できないため、図6に示すように、溶着ラインLA、LBが形成されない部分ができる。
【0035】
本変形例では、この溶着ラインLA、LBが形成されない部分を補うために、さらに、第3ガルバノスキャン光学系40Cが追加されている(図5参照)。
【0036】
第3ガルバノスキャン光学系40Cは、第1及び第2ガルバノスキャン光学系40A、40Bと同一の構成であり、これら光学系40A、40Bとともに公知のフレーム等(図示せず)に固定されている。
【0037】
第3ガルバノスキャン光学系40Cは、そのレーザー光RayCの屈曲レンズ部22及びこれに隣接する第1レンズ部21の一部及び第2レンズ部の一部に対する入射角θが臨界角(例えば60°)よりも小さくなるように、屈曲レンズ部22に対向して配置されている(図5参照)。
【0038】
すなわち、第3ガルバノスキャン光学系40Cは、そのレーザー光RayCが少なくとも屈曲レンズ部22及びこれに隣接する第1レンズ部21の一部及び第2レンズ部の一部を透過するとともに屈曲レンズ部22裏面、第1レンズ部21の一部の裏面及び第2レンズ部23の一部の裏面それぞれに当接したハウジング30(環状接合面31)を照射し、両者を溶融して接合するように、屈曲レンズ部22に対向して配置されている(図5参照)。
【0039】
上記変形例のレーザー溶着装置10によれば、第3ガルバノスキャン光学系40Cからのレーザー光RayCは、少なくとも屈曲レンズ部22及びこれに隣接する第1レンズ部21の一部及び第2レンズ部の一部を透過するとともに屈曲レンズ部22裏面とこれに隣接する第1レンズ部21の一部及び第2レンズ部の一部それぞれに当接したハウジング30(環状接合面31)を照射し、両者を溶融して接合する。図6中、LCは、第3ガルバノスキャン光学系40Cからのレーザー光RayCにより形成された接合ラインを示している。
【0040】
以上のように、三つのガルバノスキャン光学系40A、40B、40Cを上記の特定の姿勢で配置することにより、ガルバノスキャン光学系40A、40B、40Cからのレーザー光RayA、RayB、RayCのレンズ20に対する入射角θ<臨界角(例えば60°)に収めることが可能となるため、第1レンズ部21に対する第2レンズ部23の折れ角φが90〜120°のレンズ20とハウジング30とをその外周部全周にわたり、同時にレーザー溶着することが可能となる。
【0041】
なお、レンズ20表面のうちオーバーラップ部分OLに対応する領域(レーザー光RayA、RayBとRayCとがオーバーラップして入射する領域。図6参照)に、ハウジング30(環状接合面31)を照射するレーザー光を半減させる目的で、レーザー光に対する導光率が50%のレンズカット(例えばローレット)等を施してもよいのは、上記実施形態と同様である。
【0042】
上記変形例では、三つのガルバノスキャン光学系40A、40B、40Cを用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、四つ又はそれ以上のガルバノスキャン光学系を用いることも可能である。
【0043】
また、上記実施形態では、熱可塑性樹脂製部材がハウジング30の例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、熱可塑性樹脂製部材はリフレクタ等の車両用灯具構成部材、その他電子部品の小物部品等であってもよい。
【0044】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
10…レーザー溶着装置、20…レンズ、21…第1レンズ部、22…屈曲レンズ部、23…第2レンズ部、30…ハウジング、31…環状接合面、40A〜40C…ガルバノスキャン光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光に対し透過性を有する熱可塑性樹脂製レンズとレーザー光に対し吸収性を有する熱可塑性樹脂製部材とをレーザー溶着するレーザー溶着装置において、
前記レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラーを含む第1ガルバノスキャン光学系と、
前記レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラーを含む第2ガルバノスキャン光学系と、
を備えており、
前記熱可塑性樹脂製レンズは、第1レンズ部と、前記第1レンズ部に対し120〜180°の折れ角をなすように屈曲レンズ部を介して前記第1レンズ部に連続する第2レンズ部と、を含んでおり、
前記熱可塑性樹脂製部材は、前記熱可塑性樹脂製レンズ裏面の外周部に当接する環状接合面を含んでおり、
前記第1ガルバノスキャン光学系は、そのレーザー光が前記熱可塑性樹脂製レンズ表面の外周部全周を走査するように、かつ、その全周走査されるレーザー光が少なくとも前記第1レンズ部及び前記屈曲レンズ部を透過するとともに前記第1レンズ部裏面及び前記屈曲レンズ部裏面それぞれに当接した前記環状接合面を照射し、当該環状接合面とこれに当接した前記熱可塑性樹脂製レンズ及び前記屈曲レンズ部とを溶融して接合するように、前記第1レンズ部に対向して配置されており、
前記第2ガルバノスキャン光学系は、そのレーザー光が前記熱可塑性樹脂製レンズ表面の外周部全周を走査するように、かつ、その全周走査されるレーザー光が少なくとも前記第2レンズ部及び前記屈曲レンズ部を透過するとともに前記第2レンズ部裏面及び前記屈曲レンズ部裏面それぞれに当接した前記環状接合面を照射し、当該環状接合面とこれに当接した前記熱可塑性樹脂製レンズ及び前記屈曲レンズ部とを溶融して接合するように、前記第2レンズ部に対向して配置されていることを特徴とするレーザー溶着装置。
【請求項2】
レーザー光に対し透過性を有する熱可塑性樹脂製レンズとレーザー光に対し吸収性を有する熱可塑性樹脂製部材とをレーザー溶着するレーザー溶着装置において、
前記レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラーを含む第1ガルバノスキャン光学系と、
前記レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラーを含む第2ガルバノスキャン光学系と、
前記レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラーを含む第3ガルバノスキャン光学系と、
を備えており、
前記熱可塑性樹脂製レンズは、第1レンズ部と、前記第1レンズ部に対し90〜120°の折れ角をなすように屈曲レンズ部を介して前記第1レンズ部に連続する第2レンズ部と、を含んでおり、
前記熱可塑性樹脂製部材は、前記熱可塑性樹脂製レンズ裏面の外周部に当接する環状接合面を含んでおり、
前記第1ガルバノスキャン光学系は、そのレーザー光が少なくとも前記第1レンズ部を透過するとともに前記第1レンズ部裏面に当接した前記環状接合面を照射し、当該環状接合面とこれに当接した前記熱可塑性樹脂製レンズとを溶融して接合するように、前記第1レンズ部に対向して配置されており、
前記第2ガルバノスキャン光学系は、そのレーザー光が少なくとも前記第2レンズ部を透過するとともに前記第2レンズ部裏面に当接した前記環状接合面を照射し、当該環状接合面とこれに当接した前記熱可塑性樹脂製レンズとを溶融して接合するように、前記第2レンズ部に対向して配置されており、
前記第3ガルバノスキャン光学系は、そのレーザー光が少なくとも前記屈曲レンズ部及びこれに隣接する第1レンズ部の一部及び第2レンズ部の一部を透過するとともに前記屈曲レンズ部裏面、前記第1レンズ部の一部の裏面及び前記第2レンズ部の一部の裏面それぞれに当接した前記環状接合面を照射し、当該環状接合面とこれに当接した前記熱可塑性樹脂製レンズ及び前記屈曲レンズ部とを溶融して接合するように、前記屈曲レンズ部に対向して配置されていることを特徴とするレーザー溶着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−255575(P2011−255575A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131402(P2010−131402)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】