説明

レーザ光源装置及び画像表示装置

【課題】簡易な構成でスペックルノイズを低減することができるレーザ光源装置を提供する。
【解決手段】全体のレーザ発振波長幅が5nm〜10nmに制御され、全体のレーザ発振波長幅の範囲内で0.1〜0.2nmを1刻みとし、1刻み毎に対応する波長のレーザ光を発振する柱状のエミッタを少なくとも100本以上ずつ有するナノコラムレーザダイオードを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単色又は複数の異なる色のレーザを用いたレーザ光源装置及びこれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザを用いた2次元走査方式の画像表示装置は、色再現性や低消費電力や光源の小型化等の優れた画像表示、装置性能を実現できる可能性を持っている。
【0003】
レーザ光源に一般的に使用されるレーザダイオードにおいては、緑色のレーザダイオードはまだ実現されてなく、赤色及び青色のレーザダイオードは色調を制御できるものの、レーザ発振波長幅が数〜5nm程度と狭いためスペックルノイズが発生し、画質の低下を引き起こすことが知られている。
【0004】
このスペックルノイズを低減するため、一般的な面発光レーザアレイやレーザバーの積層などでチップの数を増やす方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、2次元走査方式の画像表示装置では数mm以下のビーム径のコリメートビームとする必要があるところ、特許文献1の方法では素子サイズが非常に大きくなるため、数mm以下のビーム径のコリメートビームにすることが困難であり、2次元走査方式の画像表示装置の用途に適さない。
【0005】
また、スペックルノイズを低減するために、投射スクリーンを振動させる方法(例えば、特許文献2参照。)、レーザ光と表示素子の間の拡散板を振動又は回転させる方法(例えば、特許文献3参照。)、及びレーザのレーザ発振波長幅を制御する方法(例えば、特許文献4参照。)が提案されている。しかしながら、特許文献2〜4の方法を用いてもスペックルノイズを十分に低減することは困難であり、複雑な構成が必要となる場合もある。
【0006】
一方、レーザ光源としてナノコラムレーザダイオードを使用することが検討されている。ナノコラムレーザダイオードは、ナノスケールの柱状結晶構造体であるナノコラムを多数本成長させてそれぞれをエミッタとして用いたものである。ナノコラムレーザダイオードを使用する場合、結晶成長を制御しないとレーザ発振波長がランダムとなり、色調を制御できない。そこで、結晶成長を制御して、単一波長で発振する手法が検討されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、特許文献5の方法では、単一波長で発振するため、スペックルノイズが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2004−503923号公報
【特許文献2】特開2005−107150号公報
【特許文献3】特開平6−208089号公報
【特許文献4】国際公開第2006/129809号
【特許文献5】特開2008−34482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、レーザを用いた2次元走査方式の画像表示装置において、簡易な構成でスペックルノイズを低減することが困難であった。
【0009】
上記問題点を鑑み、本発明の目的は、簡易な構成でスペックルノイズを低減することができるレーザ光源装置及びこれを用いた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、全体のレーザ発振波長幅が5nm〜10nmに制御され、全体のレーザ発振波長幅の範囲内で0.1〜0.2nmを1刻みとし、1刻み毎に対応する波長のレーザ光を発振する柱状のエミッタ(100)を少なくとも100本以上ずつ有するナノコラムレーザダイオード(21)を備えるレーザ光源装置が提供される。
【0011】
本発明の一態様において、ナノコラムレーザダイオード(21)から発振されたレーザ光をコリメートビーム(23)とするコリメートレンズ(22)を更に備えていても良い。
【0012】
本発明の一態様において、ナノコラムレーザダイオード(21)を複数個備え、複数個のナノコラムレーザダイオード(21)のそれぞれが異なる色のレーザ光を発振しても良い。
【0013】
本発明の他の態様によれば、全体のレーザ発振波長幅が5nm〜10nmに制御され、全体のレーザ発振波長幅の範囲内で0.1〜0.2nmを1刻みとし、1刻み毎に対応する波長のレーザ光を発振する柱状のエミッタ(100)を少なくとも100本以上ずつ有するナノコラムレーザダイオード(21)と、ナノコラムレーザダイオード(21)から発振されたレーザ光をコリメートビーム(23)とするコリメートレンズ(22)と、コリメートビーム(23)を2次元走査するMEMSミラー(18)とを有するレーザ光源部(1)と、レーザ光源部(1)を駆動及び制御する駆動制御回路(2)とを備えることを特徴とする画像表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成でスペックルノイズを低減することができるレーザ光源装置及びこれを用いた画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像表示装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るレーザ光源装置の赤色レーザ発光部の一例を示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るレーザ光源装置のチップの一例を示す上面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るレーザ光源装置のチップの一例を示す鳥瞰図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るナノコラムレーザダイオードの一例を示す断面図である。
【図6】図6(a)は、比較例に係る一般的なレーザダイオードの波長特性を表すグラフである。図6(b)は、本発明の実施の形態に係るナノコラムレーザダイオードの波長特性を表すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態に係る緑色ナノコラムレーザダイオードのレーザ発振波長と発光点の数の関係を模式的に示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態に係るナノコラムレーザダイオードの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るナノコラムレーザダイオードの製造方法の一例を説明するための図8に引き続く工程断面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るナノコラムレーザダイオードの製造方法の一例を説明するための図9に引き続く工程断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るナノコラムレーザダイオードの製造方法の一例を説明するための図10に引き続く工程断面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係るナノコラムレーザダイオードの製造方法の一例を説明するための図11に引き続く工程断面図である。
【図13】本発明の実施の形態に係るナノコラムレーザダイオードの製造方法の一例を説明するための図12に引き続く工程断面図である。
【図14】本発明の実施の形態に係るナノコラムレーザダイオードの製造方法の一例を説明するための図13に引き続く工程断面図である。
【図15】本発明のその他の実施の形態に係るナノコラムレーザダイオードの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0017】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
(画像表示装置)
本発明の実施の形態に係る画像表示装置として、レーザ光を2次元に走査する2次元走査方式の画像表示装置を説明する。本発明の実施の形態に係る画像表示装置10は、図1に示すように、レーザ光源部(レーザ光源装置)1、映像回路3及び駆動制御回路2を備える。
【0019】
レーザ光源部1は、レーザ光4を放射及び走査してスクリーン5に映像6を表示させる。レーザ光源部1は、赤色レーザ発光部11、緑色レーザ発光部12、青色レーザ発光部13、各色のレーザ発光部11,12,13に対応した反射ミラーで構成したダイクロイックミラー部14,15,16、レーザ光4を偏向し2次元走査するマイクロマシーンミラー(MEMSミラー)18、及びMEMSミラー18にレーザ光4を導く反射ミラー17を有する。
【0020】
MEMSミラー18は、中心のミラー部分が直径1mm程度の円形か、又は同等の表面積の多角形を有する。MEMSミラー18としては、シリコン(Si)を加工した2軸一体、または、1軸を2個使用したもの、または、シリコン(Si)と樹脂材料とのハイブリッドで構成した構造を採用可能である。MEMSミラー18の材料としては、シリコン(Si)の他にも、駆動特性仕様に応じた材料を適宜使用可能である。
【0021】
映像回路3は、DVD(登録商標)やテレビ信号等のような外部より入力される映像信号を、レーザ光源部1の各色のレーザ発光部11,12,13とMEMSミラー18を駆動及び制御するための制御信号に変換し、駆動制御回路2に出力する。
【0022】
駆動制御回路2は、映像回路3より出力された制御信号が入力されて、レーザ光源部1の各色のレーザ発光部11,12,13を駆動及び制御するとともに、MEMSミラー18を駆動及び制御する。
【0023】
レーザ光源部1の赤色レーザ発光部11は、図2に示すように、レーザ光を発振するナノコラムレーザダイオード(ナノコラムレーザダイオードチップ)21と、ナノコラムレーザダイオード21から発振されたレーザ光を数mm以下のビーム径のコリメートビーム23とするコリメートレンズ22と、ナノコラムレーザダイオード21を固定する固定部20とを有する。なお、図1に示した緑色レーザ発光部12及び青色レーザ発光部13も、赤色レーザ発光部11と同様の構成を有する。
【0024】
ナノコラムレーザダイオード21は、図3に示すように直径dが50μm〜200μm程度の円形を有する。なお、ナノコラムレーザダイオード21は、各辺の長さが50μm〜200μm程度の矩形や、円形の場合と同等の面積を有する多角形であっても良い。
【0025】
図3の部分拡大図で示すように、ナノコラムレーザダイオード21は多数の微細柱状結晶であるナノコラム100を有する。ナノコラム100の分布密度は10本/μm〜100本/μm程度である。ナノコラム100は例えば円柱状であり、直径xが50nm〜200nm程度、高さが1μm〜2μm程度である。各ナノコラム100はエミッタとなりレーザ光をそれぞれ発振する。ナノコラム100の形状は柱状であれば特に限定されず、例えば図4に模式的に示すような六角柱状や三角柱状、四角柱状等の、円柱状の場合と同等の横断面積を有する多角形柱状であっても良い。また、ナノコラム100の配置位置及び配置間隔は特に限定されず、例えば格子状に等間隔に配置しても良いし、ランダムに配置しても良い。ここでは、「横断面積」とは、図4に示すナノコラム100の上面と平行な断面の面積をいう。
【0026】
次に、ナノコラムレーザダイオード21の構造の一例を説明する。ナノコラムレーザダイオード21は、図5に示すように、基板101と、基板101上に配置された第1のコンタクト層102と、第1のコンタクト層102上に順次配置された第1の半導体層103、活性層104、第2の半導体層105、第1の分布ブラッグ反射(DBR)膜106、及び第2のコンタクト層107をそれぞれ含む複数のナノコラム100と、基板101下に配置された第2のDBR膜108を備える。図5に示したナノコラムレーザダイオード21においては、各ナノコラム(エミッタ)100の活性層104で発生したレーザ光は、第2のDBR膜108側から発振する。
【0027】
基板101の材料としては、シリコン(Si)、サファイヤ、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、酸化シリコン(SiO)又は酸化亜鉛(ZnO)等が使用可能である。
【0028】
活性層104は、レーザ光を発生させる。活性層104としては窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウムアルミニウム(AlGaN)、又は窒化ガリウムインジウムアルミニウム(AlInGaN)等の量子井戸(QW)層が使用可能である。
【0029】
第1の半導体層103は例えばシリコン(Si)がドープされたn型クラッド層である。第2の半導体層105は例えばマグネシウム(Mg)又は亜鉛(Zn)がドープされたp型クラッド層である。第1のDBR膜106及び第2のDBR膜108は屈折率が互いに異なる層(例えば誘電体層)が交互に積層それた多層膜であり、活性層104で発生したレーザ光を反射する。第1のコンタクト層102は電気的コンタクトをとるためのn型層である。第2のコンタクト層107は各ナノコラム100に電流を注入するためのp型層である。
【0030】
本発明の実施の形態において、活性層104にInGaN量子井戸構造を用い、Inの組成を調整することにより、各ナノコラム100のレーザ発振波長を青色レーザの場合は450nm程度、赤色レーザの場合は630nm程度、緑色レーザの場合は525nm程度に制御する。各ナノコラム100の個別のレーザ発振波長幅は数nm程度である。
【0031】
ここで、ナノコラムレーザダイオード21全体のレーザ発振波長幅を5nm〜10nm程度に制御する。ナノコラム100はその径又は横断面積の大きさに応じてレーザ発振波長が変化するため、例えば各ナノコラム100の径の大きさを50nm〜200nm程度の範囲内でばらつかせることにより、全体のレーザ発振波長幅を5nm〜10nmの範囲に制御することができる。例えば、青色レーザ発振、赤色レーザ発振及び緑色レーザ発振においては、それぞれの波長を450nm〜460nm、630nm〜640nm、525nm〜535nmとすることができる。ナノコラム100の径の大きさのばらつかせ具合は特に限定されず、例えばナノコラムレーザダイオード21内で分布に偏りがないよう規則的に分散して配置しても良いし、ランダムとしても良い。ナノコラムレーザダイオード21全体のレーザ発振波長幅が5nm未満ではスペックルノイズが発生する。
【0032】
図6(a)及び図6(b)に、一般的なレーザダイオードとナノコラムレーザダイオード21の波長特性をそれぞれ示す。図6(a)及び図6(b)から、一般的なレーザダイオードでは一本程度の波長幅で発振するのに対して、ナノコラムレーザダイオード21では、複数本のナノコラム(エミッタ)100が発振するため、広い波長幅で発振可能であることが分かる。
【0033】
更に、ナノコラムレーザダイオード21全体のレーザ発振波長幅の範囲内で0.1〜0.2nmを1刻みとし、1刻み毎に対応するレーザ発振波長を有するナノコラム(エミッタ)100を少なくとも100本以上ずつ配置する。ナノコラム(エミッタ)100が数nm程度の個別のレーザ発振波長幅を有する場合、その1刻み毎の波長が個別の波長幅に収まるナノコラム(エミッタ)100の本数を少なくとも100本以上とする。例えば、緑色レーザの場合、図7に示すように、全体のレーザ発振波長幅525nm〜535nmの範囲内で、0.2nm間隔で50刻みとし、1刻み毎に各波長でのナノコラム100の数を100本とし、全体で5000個のナノコラム100とする。ナノコラムレーザダイオード21全体のレーザ発振波長幅の範囲内で0.1〜0.2nmを1刻みとし、1刻み毎に対応するレーザ発振波長を有するナノコラム(エミッタ)100を少なくとも100本以上ずつ配置することにより、全体のレーザ発振波長幅の範囲内において十分な発光強度を得ることができる。
【0034】
スペックルノイズ低減に関し、ナノコラムレーザダイオード21全体のレーザ発振波長幅を5nm〜10nmにすることにより、スペックルノイズは20〜15%程度まで低減される。また、一般的に同一波長の発光点の数(N)に対して、1/√Nの割合でスペックルノイズは低減されることが知られている。例えば発光点の数が100本あると1/10に低減できることになる。
【0035】
よって、全体のレーザ発振波長幅を5nm〜10nmとし、且つその範囲内で1刻み当たりのナノコラム(エミッタ)100の数を100個以上にすることにより、0.15×0.1=0.015で1.5%以下にスペックルノイズを低減できる。一般的に5%以下であればスペックルノイズは目立たないといわれており、1.5%は十分スペックルノイズが低減されているといえる。
【0036】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る画像表示装置10によれば、レーザ光源としてナノコラムレーザダイオード21を使用し、全体のレーザ発振波長幅とナノコラム(エミッタ)100のレーザ発振波長及び数を制御することにより、複雑な構成を必要とせずに簡易な構成でスペックルノイズを低減することができる。この結果、レーザ光を数mm以下のビーム径のコリメートビーム23とすることができるので、2次元走査方式の画像表示装置10に適したレーザ光源装置1を実現することが可能となる。
【0037】
(ナノコラムレーザダイオードの製造方法)
次に、本発明の実施の形態に係るナノコラムレーザダイオード21の製造方法の一例を、図8〜図15を用いて説明する。なお、以下で説明する製造方法は一例であり、これ以外の種々の製造方法によりナノコラムレーザダイオード21を製造可能であることは勿論である。
【0038】
(イ)図8に示すように、シリコン(Si)等からなる基板101を用意する。そして、有機金属気相成長(MOCVD)法等により、基板101上に第1のコンタクト層102を成長させる。
【0039】
(ロ)図9に示すように、蒸着法等により、第1のコンタクト層102上に、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)又は金(Au)等からなり、ナノコラム100を成長させる元となる下地膜(ナノコラム成長用マスク膜)109を1nm〜20nm程度の厚さで形成する。
【0040】
(ハ)下地膜109上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてレジストをパターニングする。パターニングされたレジストをマスクとして用いて、反応性イオンエッチング(RIE)法等により、下地膜109の一部を選択的に除去してパターニングする。この結果、図10に示すように、直径50nm〜200nmの円形又は各辺の長さが50nm〜200nmの矩形の表面を有する下地膜109のパターンが形成される。なお、下地膜109のパターンとしては、円形又は矩形の場合と同等の表面積を有する三角形、六角形等の多角形の表面を有していても良い。
【0041】
(ニ)MOCVD法を用いて、900℃程度で、ガリウム(G)原料のトリメチルガリウム(Ga(CH)及び窒素(N)原料のアンモニア(NH)等を供給することにより、図11に示すように、ガリウム原子(Ga)及び窒素原子(N)は下地膜109の表面に選択的に結晶成長して第1の半導体層103が形成される。さらに結晶成長用原料を適宜替えて供給することにより、第1の半導体層103上に、活性層104、第2の半導体層105、第1のDBR膜106及び第2のコンタクト層107を順次結晶成長させ、複数のナノコラム100を一度に形成する。第2のコンタクト層107はGaAs層又はGaN層であり、GaAs層及びGaN層は結晶方位に沿って成長するため、各ナノコラム100の第2のコンタクト層107は径を広げながら結晶成長して一体化する。
【0042】
結晶成長用原料として、シリコン(Si)原料のシラン(SiH)、マグネシウム(Mg)原料のビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)、インジウム(In)原料のトリメチルインジウム(In(CH)等を用いることができる。
【0043】
なお、図5、図11、図12、図13及び図14では下地膜109を省略して示している。
【0044】
(ホ)図12に示すように、RIE法等により基板101における下面側の複数のナノコラム100が形成されている領域に対応する領域を選択的にエッチングして凹部110を形成する。そして、基板101の凹部110に、図13に示すように、MOCVD法等により第2のDBR膜108を成膜する。その後、図5では図示を省略したが、図14に示すように、蒸着法等により、第1のコンタクト層102及び第2のコンタクト層107の表面にニッケル(Ni)及び金(Au)等からなる第1の電極111および第2の電極112をそれぞれ形成する。
【0045】
本発明の実施の形態に係る画像表示装置10で使用するナノコラムレーザダイオード21の製造方法によれば、スペックルノイズを低減することができるナノコラムレーザダイオード21を実現可能となる。
【0046】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0047】
例えば、本発明の実施の形態に係るナノコラムレーザダイオード21としては、全体のレーザ発振波長幅及びナノコラム100のレーザ発振波長及び数を制御可能なものであれば、ナノコラムレーザダイオード21の構造は特に限定されない。例えば、図15に示すように、ナノコラムレーザダイオードが、基板201と、基板201上に順次配置された第1のDBR膜202、第1の半導体層203、活性層204、第2の半導体層205、第2のDBR膜206及びコンタクト層207をそれぞれ含む複数のナノコラム200を備えていても良い。活性層204で発生したレーザ光は、コンタクト層207側から発振される。図15に示したナノコラムレーザダイオードの各部材の構成は、本発明の実施の形態において説明したナノコラムレーザダイオード21と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0048】
また、本発明の実施の形態に係るナノコラムレーザダイオード21の製造方法の一例として、図11に示すように第1のコンタクト層102と下地膜109との間にナノコラム100を成長させる場合を説明したが、下地膜としてアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)等の窒化物、又は亜鉛(Zn)の酸化物等を使用し、下地膜上にナノコラムを成長させても良い。
【0049】
また、図11に示したナノコラム100を成長させるための手法として、MOCVD法の他にも、分子線エピタキシー(MBE)法やハイドライド気相成長(HVPE)法等を用いても良い。このように、種々の方法を使用可能である。
【0050】
また、図1に示した緑色レーザ発光部12、赤色レーザ発光部11及び青色レーザ発光部13の全てにナノコラムレーザダイオード21を使用しなくても良く、例えば青色レーザ発光部13として一般的な青色レーザダイオードを使用しても良い。
【0051】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、映像表示装置、照明装置、撮像装置、センサー装置、医療機器装置又は分析機器装置等のレーザ光を照射する装置に適用できる。
【符号の説明】
【0053】
1…レーザ光源装置(レーザ光源部)
2…駆動制御回路
3…映像回路
4…レーザ光
5…スクリーン
6…映像
10…画像表示装置
11…赤色レーザ発光部
12…緑色レーザ発光部
13…青色レーザ発光部
14,15,16…ダイクロイックミラー部
17…反射ミラー
18…MEMSミラー
20…固定部
21…ナノコラムレーザダイオード(ナノコラムレーザダイオードチップ)
22…コリメートレンズ
100,200…ナノコラム(エミッタ)
101,201…基板
102,107,207…コンタクト層
103,105,203,205…半導体層
104,204…活性層
106,108,202,206…DBR膜
109…下地膜(ナノコラム成長用マスク)
110…凹部
111,112…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体のレーザ発振波長幅が5nm〜10nmに制御され、前記全体のレーザ発振波長幅の範囲内で0.1〜0.2nmを1刻みとし、前記1刻み毎に対応する波長のレーザ光を発振する柱状のエミッタを少なくとも100本以上ずつ有するナノコラムレーザダイオードを備えることを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項2】
前記ナノコラムレーザダイオードから発振されたレーザ光をコリメートビームとするコリメートレンズを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ光源装置。
【請求項3】
前記ナノコラムレーザダイオードを複数個備え、前記複数個のナノコラムレーザダイオードのそれぞれが異なる色のレーザ光を発振することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ光源装置。
【請求項4】
全体のレーザ発振波長幅が5nm〜10nmに制御され、前記全体のレーザ発振波長幅の範囲内で0.1〜0.2nmを1刻みとし、前記1刻み毎に対応する波長のレーザ光を発振する柱状のエミッタを少なくとも100本以上ずつ有するナノコラムレーザダイオードと、前記ナノコラムレーザダイオードから発振されたレーザ光をコリメートビームとするコリメートレンズと、前記コリメートビームを2次元走査するMEMSミラーとを有するレーザ光源部と、
前記レーザ光源部を駆動及び制御する駆動制御回路
とを備えることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−222001(P2012−222001A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83004(P2011−83004)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】