レーザ加工ヘッドおよびレーザ加工ヘッドの焦点位置の変化を補償するための方法
本発明は、加工レーザビーム108により工作物を機械加工するためのレーザ加工ヘッド100に関し、このヘッド100は、カメラ102を備え、ビーム経路内において前記カメラの正面に撮像レンズユニット116が、工作物レーザビーム108により機械加工される工作物の機械加工領域を監視するために配置され、更に工作物表面104上又は該表面104に対し規定された位置の上に加工レーザビーム108の焦点合わせのためのフォーカシングレンズユニット114と、集束レンズ系114の焦点シフトが生じた場合にカメラ画像の焦点を再度合わせるための光学軸方向の撮像レンズ系116の調節移動量ΔdKLを用いて補正調節移動量ΔzOS、ΔzBを計算するように設計された評価ユニット122とを備え、この補正調節移動量が工作物表面104又は該表面104に対して規定された位置に対する集束レンズ系114の焦点変位を補償する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッドにおける焦点位置の変化を補償するための、特にレーザ材料加工の際に焦点位置および焦点サイズのモニタリングおよび閉ループ制御を行うための、コンピュータ計算において相互に斟酌される画像において加工表面、溶融プール、プロセス発光、および蒸気毛細管現象(キーホール)を視覚化するための、さらにはレーザ加工プロセスを技術認知的に実施するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工ヘッドにより材料を加工する際には、レーザ放射が、レンズ系により焦点に集められる。しかし、レンズ系自体が、材料加工の際にレーザ光により加熱されるため、その結果として、使用されるレンズ系の光学特性もまた変化する。さらに、これにより、レーザ光のビームプロファイルの焦点位置もまた変化する。加工すべき材料の位置に対して前記焦点位置が変化することにより、所望の加工結果が得られなくなるという影響がもたらされる恐れがある。
【0003】
様々なモニタリングシステムが、レーザ材料加工プロセスにおけるプロセスモニタリングのために使用される。前記モニタリングシステムは、部分的には、フォトダイオード、他の光センサ、または画像センサ技術、特にカメラによるプロセス発光の検出に基づいており、換言すれば特にレーザビームと工作物との間の相互作用領域からの電磁放射の検出に基づいている。リアルタイムモニタリングまたは工程内モニタリングのために、カメラは、一般的には、例えば被覆された半透明表面などにより、レーザ加工ヘッドの光学系内に組み込まれる。
【0004】
各フォトダイオードの強度により工作物に対する焦点位置の変化を決定するアプローチが、当技術において既に議論されてきた。
【0005】
したがって、異なる波長について、2つの光学センサを、供給されるレーザ光の光ファイバ中に導入することが、方法が周知となっている。この場合には、2つの光学センサの強度における相互的な相対変化に基づいて、焦点位置の変化に関する結論を導き出すことが試みられ、次いでこれにより、焦点位置の変化を補償する。F.ハラン、D.ハンド、C.ピーターズ、およびJ.ジョーンズによる「Real−time focus control in laser welding」(Meas.Sci.Technol.,Year:1996,pages:1095−1098)を参照されたい。
【0006】
他の周知の方法においては、レーザ溶接プロセスの際に、フォトダイオードにより、工作物に対する焦点位置の変化に関して波長の強度が測定される。ニューラルネットワークを利用することにより、フォトダイオードの出力と一致し、後に焦点位置の補償制御のために使用される関数が、概算される。G.ヒューイ、O.フレミング・オーブによる「Automatic Optimization of Focal Point Position in CO2 Laser Welding with Neural Networks in Focus Control System」(year 1997)を参照されたい。
【0007】
ドイツ国特許第19516376号は、焦点振動を加えることにより、最適な焦点位置が、フォトダイオード強度の変換された振幅および相の関係から計算されることを開示している。
【0008】
ドイツ国特許第19925413号は、溶接ビームの焦点位置を決定するためのデバイスを説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2004 043076号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第197 16 293号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、加工プロセスの際に被加工材料に対して規定された相対焦点位置を効果的に維持することを可能にする、レーザ加工ヘッドと、レーザ加工ヘッドにおける焦点位置の変化を補償するための方法とを提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載のレーザ加工ヘッドによって、および別の独立請求項15に記載の本発明による方法によって、達成される。本発明の有利な構成および展開が、従属請求項に示される。
【0012】
特に、この目的は、工作物に対する焦点の変化が検出され、次いでこれに応じた補正係数の計算の後に焦点位置が合わせられることによって、達成される。
【0013】
さらに、撮像センサユニットが使用される場合には、可能な限り最高の品質を有する加工プロセスの画像が生じるはずである。
【0014】
本発明の中核は、加工表面に対する焦点位置の変化の検出、およびそれに応じたレーザ材料加工プロセスにおける焦点位置または焦点直径の補正である。この検出は、撮像モニタリングセンサシステムの画像鮮明度を用いて、またはレーザ加工ヘッドにおける温度センサを用いて、または、種々のレーザ放射強度にてレーザ加工ヘッドの測定された火線から計算された時間間隔あたりの光エネルギーもしくは近似モデル、もしくは自己学習機構もしくは学習された経験値を考慮する技術認知的方法、もしくはこれらの検出可能性の中の複数の要素の中の1つおよび加工表面に対するレーザ加工ヘッドの位置を変更することによるもしくは使用される光学系の可動部分を適合化(調整)することによる焦点位置の適合化(調整)から得られた、使用される放射強度を用いて、実施される。
【0015】
したがって、本発明は、レーザ加工ヘッドおよび焦点位置を適合化するための方法を提案する。本発明によるレーザ加工ヘッドは、カメラを有し、ビーム経路内においてこのカメラの上流に撮像光学ユニットが配置され、このカメラは特に溶接または切削により加工レーザビームによって加工される工作物の加工領域を監視する役割を果たす。またレーザ加工ヘッドは、工作物表面の上に加工レーザビームの焦点を合わせるためのフォーカシング光学ユニットと、集束レンズの焦点の変位が生じた場合にカメラ画像の焦点を再度合わせるために必要な光学軸の方向における撮像光学ユニットの調節移動量を用いて、集束レンズの焦点変位または焦点シフトを補償、均衡化、または平滑化する調節移動量を計算するように適合化された評価ユニットとを備える。本発明によれば、さらに、加工レーザビームの作用焦点が工作物表面の上にまたは工作物表面に対して規定された位置に常に位置するように、学習プロセスにより、加工時間または加工状況に応じてフォーカシング光学ユニットの調節を制御する認知システムをさらに使用することにより、最適な溶接結果または分離結果またはレーザ加工結果をもたらすことが可能である。
【0016】
以下、図面を参照として、例として本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるレーザ加工ヘッドの大幅に簡略化した概略図である。
【図2】近すぎる作用焦点位置、最適な作用焦点位置、および遠すぎる作用焦点位置に関して撮影された写真を示す図である。
【図3】本発明によるHDR方法により処理されたカメラ画像の概略図である。
【図4】本発明によるHDR画像シーケンス処理のブロック図である。
【図5】本発明による技術認知的システムのブロック図である。
【図6】本発明による他の技術認知的システムのブロック図である。
【図7】最高に鮮明な画像Smaxのカメラレンズ位置とレンズゼロ位置またはゼロオフセット位置ZPとの比較に基づく、z軸調節の閉制御ループのブロック図である。
【図8】カメラレンズゼロポイントまたはゼロオフセット位置を制御するための印加レーザ出力およびプロセスパラメータが入力される人工ニューラルネットワークのブロック図である。
【図9】各例において加工ヘッドが10mmだけ距離を拡大された、重畳構造体の溶接プロセスの際に記録された画像を示す図である。
【図10】±5mmの模擬焦点変位の際に同軸方向において記録された工程内動画に対して適用された鮮明度評価技術の結果を示す図である。
【図11】様々なレーザ出力および時間間隔(例1:1キロワット、例2:2キロワット、例3:4キロワット、例4:6キロワット、例5:5分後に6キロワット、例6:10分後に6キロワット、例7:20分後に6キロワット)に関して測定された、様々な光学系についての平均焦点変位量を示すグラフである。
【図12】実験結果に基づき経験的モデルを利用して、さらには人工ニューラルネットワークを介して計算された(1〜10分:1キロワット、11〜20分:2キロワット、21〜30分:4キロワット、31〜45分:6キロワット、zRF=7.2mm)焦点変位量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明によるレーザ加工ヘッド100を図示する。このレーザ加工ヘッド100は、プロセスモニタリングカメラ102、温度検出ユニット、調節可能レンズもしくは調節可能ミラーを含む光学系、または加工表面104に対するレーザ加工ヘッド100の位置制御ユニットを含むことが可能である。
【0019】
レーザ加工ヘッド100の光学系は、波長λLを有するファイバ110からのレーザビーム108を平行にするコリメータレンズ106を含み、平行化されたレーザビームは、ビームスプリッタ112を経由して集束レンズ114により加工表面104の上に、または加工表面104に対して画定された位置の上に焦点を集められる。カメラレンズ116が、カメラ102の上流に配置され、光学軸の方向において補正値ΔdKLだけ調節され得る。さらに、レーザ加工ヘッド100は、集束レンズ114に温度センサ118を、さらにはコリメータレンズ106に温度センサ120を有し、これらのセンサは共に、評価/制御ユニット122に接続される。さらに、プロセスモニタリングセンサシステム124が、評価/制御ユニット122に接続される。
【0020】
本発明によるレーザ加工ヘッド100は、カメラ102を備え、撮像光学ユニット116が、ビーム経路中においてカメラ102の上流に配置され、加工レーザビーム108により特に溶接または切削によって加工される工作物の加工領域を監視する役割を果たす。さらに、レーザ加工ヘッド100は、工作物上に加工レーザビーム108の焦点を集めるための集束光学ユニット114と、評価ユニット122とを備える。この評価ユニット122は、集束レンズ114の焦点が変位した場合にカメラ画像の焦点を再度合わせるために必要となる光学軸の方向における撮像光学ユニット116の調節移動量を用いて、集束レンズ114の焦点変位を補償または相殺する調節移動量を計算するように適合化される。
【0021】
加工表面104は、使用される加工レーザ光の波長λLとは異なる波長λKを有する光により、照明デバイス(図1には図示せず)によって照明され得る。この照明デバイスは、外部から工作物表面104を証明するために、レーザ加工ヘッド100の外側に取り付けられ得る。しかし、照明デバイスから入射する光が、ビームスプリッタによりレーザ加工ビーム108のビーム経路へと同軸方向に結合されてもよく、この場合には、照明デバイスは、レーザ加工ヘッド100の光学系中に組み込むことが可能となる。
【0022】
代替的にまたは補助的には、本発明によれば、画像を取得するために、高ダイナミックレンジ(HDR)方法を使用することも可能である。この方法においては、画像センサが、画像ごとにそれぞれ異なる時点で複数回、すなわち少なくとも2回スキャンされるか、または、複数の画像、すなわち2つ、3つ、もしくはそれ以上の画像が、それぞれ異なる露光時間によりもしくは複数のカメラにより生成され、その後、コンピュータ計算において相互に考慮されて、少なくとも1つの画像が形成される。この手順により、周囲の加工領域、プロセス発光、さらには蒸気毛細管現象またはキーホールを画像中に同時に視覚化する、画像記録、画像シーケンス記録、または動画記録が可能となる。レーザ加工プロセスを画像記録する場合には、既述の領域の複数の強度値が、広い範囲にわたり分布し、これが、前記方法により1つの画像中において視覚化され得る。比較的低い強度分解能によるプロセスモニタリングシステムまたは評価ユニットもしくは制御ユニットに関連するスクリーンまたはディスプレイデバイス上の表示については、このように生成された画像または画像シーケンスが、グレースケール値またはトーンマッピング方法により適合化された態様で表示される。
【0023】
図3および図4に図示されるように、本発明によれば、HDR方法、または加工領域、プロセス発光、および蒸気毛細管現象をより良好に視覚化するための方法を実施するためには、複数の画像または画素アレイが、コンピュータ計算において相互に考慮される。
【0024】
図3においては、図示されるプロセス発光が、参照符号1を有し、図示される蒸気毛細管現象(キーホール)が、参照符号2を有する。さらに、図3は、溶融プール3、溶接シームジオメトリ4、および加工表面5を示す。
【0025】
画像センサのマルチスキャニングにより、または複数のカメラによる同時画像記録により、または、マルチ露光技術と呼ばれる、1つのカメラではあるがそれぞれ異なる露光時間による連続画像記録により、異なる複数の画像が生成され得る。それぞれの画像記録は、様々なタイプの方法により、コンピュータ計算において考慮され得る。これは、最も簡単な例においては、少なくとも2つの画像記録から画像シーケンスの中の複数の画像のそれぞれの画像値を合算および平均化することを含む。さらに効率的に画像を取得するために、少なくとも2つの画像記録からの画像シーケンスから画像値またはピクセルを加重平均することが可能である。
【0026】
加重方法としては、エントロピー方法を利用することにより情報内容に応じて加重することが可能であり、または、カメラ応答関数を考慮に入れて加重平均を実施することが可能である。このためには、面積当たりの実際のまたは実質的な放射エネルギーに関する結論を導き出すことが必要となる。これは、以下の関数、すなわち
【数1】
により求められる。
【0027】
次いで、個々の放射エネルギーに対する重みが、以下のように表される。
【数2】
【0028】
この場合に、iは、複数の画像記録の中の画像シーケンスにおける画像インデックスであり、jは、ピクセル位置であり、tiは、画像記録iの露光時間またはスキャニング時間であり、yijは、位置jにおける画像記録iのピクセルの強度値であり、I-1()は、逆カメラ応答関数であり、xjは、ピクセル位置における面積当たりの評価放射エネルギーであり、wijは、信頼性モデルの加重関数である。本発明は、特にレーザ加工ヘッドおよび/またはこのレーザ加工ヘッドに接続されたプロセスモニタリングシステムによる、材料の分離または接合などの加工方法におけるこれらの図示されるHDR画像計算方法の利用に、明白に関係する。
【0029】
工作物に対して適合化されるべき焦点位置から得られる補正値については、例えば以下の公式が当てはまる。
Δzf=A×ΔzB+B×ΔzOS
=C×ΔdKL+D×ΔT+E×Δt+F×ΔPL+G×M+H×COG
ここで、A、B、C、D、E、F、G、Hは、可変的に決定されるパラメータであるとともに、値「0」をとり得る。
【0030】
次に、個々の成分を決定するための方法を示す。
【0031】
個別におよび組み合わせて使用し得る補正値Δzfの検出方法は、以下の通りとなる。
【0032】
プロセスモニタリングシステムを設定する際に、画像処理センサシステムのフォーカシングユニットが、撮像信号によって可能な限り鮮明な画像が生成されるように設定される。この場合には、可能な限り最高の画像鮮明度または分解能の決定は、様々な方法により得られる。本発明は、フォーカシングするためのまたは画像鮮明度を得るためのあらゆる慣例的な方法を含むが、いくつかの重要な方法を明示する。
【0033】
分散: 後の合算を伴う平均値まわりの画像値の平方差。画像をi(x、z)とし、Sを画素数とすると、これは、以下のように、すなわち、
【数3】
のように算出することができる。
【0034】
高い分散、すなわち幅広いヒストグラムは、コントラストが良好であることを意味する。
【0035】
加算係数差法(SMD:sum modulus difference): 画像勾配
【数4】
とその絶対値
【数5】
とに基づく測定。
【0036】
SMDは、
【数6】
により決定され、鮮明な画像の場合には、画素xとx+1との間の差は、非常に大きくなる。
【0037】
信号パワー(SP:Signal Power):
【数7】
の最大値により、最良の画像状態を求め、さらに、リャオ(Liao)により修正されたしきい値方法にも適用される。
【0038】
フーリエ解析: 離散フーリエ変換
【数8】
と、より迅速に計算され得る高速フーリエ変換とが、
【数9】
を用いることにより、行ごとにおよび列ごとに決定される。脱焦画像においては、パワースペクトルの合算により算出される高周波範囲が、合焦画像と比べて著しく低下する。
【0039】
ラプラス演算子またはラプラスフォーカシング関数: これは、フーリエスペクトルの二次統計モーメント
【数10】
を表し、高周波に関連付けされる。演算子恒等式および公式拡張により、これは時間領域に変換され得る。これに含まれる個々の成分は、二次導関数の近似により決定されなければならず、これにより、
【数11】
を求め、直接的に決定することが可能となる。
【0040】
特徴ポイントまたは対象の追跡によるフォーカシング: 特徴ポイントは、同一の画像シーケンス内の異なる画像において再度見出すことが可能となるように特徴的な周辺部を有する画素である。その結果、画像シーケンスにおいて移動傾向を判定することが可能となり、したがってフォーカシングが、正確な方向において即座に作動し得るようになる。さらに、既知の画像シーケンスにおける対象認識アルゴリズムにより、フォーカシング機能のためのフォーカスウィンドウを生成することが可能となり、したがって標的対象の最適なフォーカシングが可能となり得る。このためには多数の方法を利用することが可能であるが、本発明は、Harrisコーナ検出器、画像の特定の下位領域への分割、画像勾配およびしきい値の算出、平方差の合算、オートフォーカシングのためのファジー論理、サポートベクター分類、ならびにその他多数を利用することとなる。
【0041】
本発明による方法によれば、システム設定プロセスにおいては、作用焦点が変位した場合に後に記録されるカメラ画像との比較における画像鮮明度の基準としての役割を果たすように、初めに加工領域の基準画像が記録される。この画像は、加工プロセスの間または前に生成され得る。
【0042】
次いで、加工作業の際に、画像信号は、例えば工作物に対する加工ヘッド100の位置が変化した場合、またはレーザ光の熱的影響により光学系の特性が変化した場合などに、光学系の、鮮明度により決定される一定の設定パラメータが失われる恐れがある。吸収されたレーザ出力により集束レンズ114の加熱が生じた場合には、結果として集束レンズ114の屈折率が変化する恐れがあり、その結果、集束レンズ114の焦点は、工作物に対面する側において光学軸の方向に変位される。一般的には、集束レンズ114の焦点、およびしたがってレーザビーム108の作用焦点、すなわち集束レンズ114により工作物上において生成される加工レーザ源の画像が、集束レンズ114の方向に変位する。加工レーザ源は、例えば、レーザ光を供給する光ファイバ110の出口表面などであることが可能である。
【0043】
本発明によれば、次いで、オートフォーカシングアルゴリズムにより、光学系、特に集束レンズ114の位置またはレーザ加工ヘッド100の位置は、撮像信号が、可能な限り最高の画像鮮明度をもたらすように、または記録された基準画像に可能な限り近づくように、加工プロセスの際に光学軸の方向において適合化される。
【0044】
この場合には、本発明によれば、光学系の所要の補正量ΔzBSが、加工表面104に対してΔzBだけレーザ加工ヘッド100の位置を適合化させることにより、または、光学系の可動パーツ、特に集束レンズ114またはその各構成要素(ズーム)を適合化させることにより(ΔzOS)、実行され得る。
【0045】
特に好ましい例示的な一実施形態においては、適合化プロセスにおけるレーザ加工ヘッド100の、または集束レンズ114の調節によって加工結果に対して直接的影響が及ぶのを回避するために、光学軸の方向における調節により、プロセス監視カメラ102のフォーカシングユニット、特にカメラレンズ116のみを適合化させることが可能である。
【0046】
調節により決定され、可能な限り鮮明な画像の取得に必要な、プロセスモニタリングカメラ102のフォーカシングユニット116の補正値ΔdKlは、光学系の結像比を直接的にまたは間接的に考慮に入れ焦点位置または焦点直径を適合化させるために、必要な補正係数Δzfに関連付けられる。
【0047】
換言すれば、プロセスモニタリングカメラ102の画像鮮明度により、フォーカシングは、例えば調節可能レンズ116またはミラーなどの独立したフォーカシングユニットにより、自動的に実行される。次いで、加工においてもたらされるこの適合および補正値ΔdKLが、適合化パラメータにより直接的に、加工表面104に対するレーザ加工ヘッド100の焦点位置に関連付けられてもよく、そのようにして制御されてもよい。
【0048】
本発明によれば、補正値ΔdKLと補正値Δzfとのこの関係の変換またはパラメータ化においては、工作物表面104に対するプロセス監視カメラ102の結像比(imaging ratio)、および工作物表面104に対するレーザビーム源の結像比が、コンピュータ計算において付随的に含まれなければならない点が考慮されるだけでなく、色収差または他の波長依存効果により監視システムの波長λKおよび使用される加工レーザ光の波長λLが異なることによるフォーカシング差もまた考慮される。
【0049】
したがって、本発明によれば、パラメータは、波長差および撮像差に応じて計算され、これにより、レーザ加工ヘッド100の作用焦点の焦点位置の変位量を計算することが可能となる。光学軸方向においてコリメータレンズ106の焦点が変位されることにより、加工レーザビーム108の作用焦点の、特に集束レンズ114の方向に工作物から離れる方向への変位を同様に引き起こさせる、コリメータレンズ106の加熱は、カメラ102のフォーカシングユニット116のオートフォーカス適合化による上述の方法によっては検出され得なくなる。
【0050】
したがって、本発明の他の一構成においては、特に以下において説明されるようなコントローラまたは技術認知的システムにより、加工レーザビーム108の作用焦点位置補正をさらに良好に実施することを可能にする方法が提案される。この方法においては、行過ぎ補正または不適切な補正がさらに回避される。
【0051】
本発明によれば、抽出された画像特徴に基づく分類を利用することにより、場合によっては寸法が縮小される画像データから、過度に遠くなるようなまたは過度に近くなるようなフォーカシングのいずれが選択されたかに関する情報が取得される。人工ニューラルネットワーク、サポートベクター分類、ファジー論理分類器またはファジーK−最近傍分類器、強化学習アルゴリズムが、分類としての役割を果たすことができる。図2は、画像鮮明度の差の一例として提示される。
【0052】
z軸に関する1つの特定の制御アプローチは、例えば、ファジーK−最近傍分類器により、画像鮮明度に関して(SMD)、異なる露光時間による3つの画像記録を分類する。画像鮮明度アルゴリズムが、異なる露光時間を有する各画像に適用される。このアルゴリズムは、これらの画像記録の画像鮮明度の分類、およびそれぞれ異なる画像鮮明度を有する画像シーケンスからのこれらの画像記録から抽出された主成分の分類にも適用される。異なる露光時間を有するこれらの画像記録について、過度に遠くなるような、適切な、または過度に近くなるような監視カメラ102のフォーカシングのいずれが選択されたかを示唆する分類結果を取得することが、可能であった。この例では、加工領域104に対する焦点位置が過度に遠くなるように選択された場合には、換言すれば、距離が過度に遠くなるように選択された場合には、長い露光時間である確率が高くなることが判明した。工作物からの距離が過度に近い場合、または焦点位置が鮮明な画像を得るには加工領域104の後方に遠すぎる場合には、短い露光時間であるクラス確率が比較的高くなる。このようにすることで、HDR方法は、焦点位置が影響を被ることとなる方向を画像特徴に基づき分類する分類器によって、自動フォーカシングとリンクすることが可能となる。この特定の例では、クラス相関確率
【数12】
が、分類のために選択される。この場合に、kは、最近傍を表し、jは、ランニング変数を表す。ui(x)は、クラスiに帰属するサンプルxの確率を表し、ujx(x)は、当該のk近傍の既知の確率であり、mは、1と2との間のスケーリングパラメータである。クラス相関確率は、クラスに対するサンプルの相対距離と共に低下する。良好な、過度に近い、過度に遠いクラスの発生する合計クラス確率は、z軸に関するPIDコントローラ(比例/積分/微分コントローラ)に対する加重入力として使用することが可能である。これらのステップについては、サポートベクター分類方法および技術認知に関する章で説明されるような他の分類方法ならびに他の制御方法を使用することがさらに可能であることは、明白である。したがって、いずれの場合でも、レーザ加工ヘッド100のz軸により工作物に対する焦点位置を制御および調整することが可能となる。
【0053】
波長差、温度プロファイル、およびその他多数によってだけではなく、さらに平行レンズおよび集束レンズを有する従来的なレーザ加工ヘッドの設計によって、さらに複雑な制御アプローチが、すなわち画像鮮明度とレーザ加工ヘッド100の作用焦点位置との間に直接関係をもたらすだけに留まらないことが、必要となる。監視システムが、平行化ユニットと集束ユニットとの間の反射表面に組み込まれる場合には、熱的影響による平行化ユニット106の光学ユニットにおける変化は、プロセスモニタリングカメラ102により検出されない。したがって、本発明において提案されるようなさらに複雑な制御方法により焦点位置の変化の補正バランシングを行う際には、この変化に取り組むことも必要となる。
【0054】
画像鮮明度以外には、加工ヘッド100の、およびしたがって光学系の温度変化ΔTが、変化した焦点位置についての十分な基準となり得る。これを目的として、温度変化は、レーザ加工ヘッド中の対応するセンサ120により検出され、補正値Δzfに直接的におよび間接的に相関づけられ得る。
【0055】
代替的には、さらに、コントローラまたは技術認知的システムについて以下のパラメータを使用することも可能である。
【0056】
加工レーザが加工ステップにおいてオンに切り替えられる時間間隔Δtが、焦点位置の変化につながる可能性がある。これにより、実施時間が、補正値Δzfに直接的にまたは間接的に相関づけられ得る。代替的には、または追加的には、補正値Δzfは、コントローラまたは技術認知的システムについての特徴として使用することも可能である。
【0057】
レーザ出力ΔPL、すなわちレーザ加工ヘッド100を通過するレーザ光の光エネルギーが、同様に焦点位置の変化につながる可能性がある。これにより、レーザ出力が、補正値Δzfに直接的にまたは間接的に相関づけられ得る。代替的には、または追加的には、補正値Δzfは、コントローラまたは技術認知的システムについての特徴として使用することも可能である。
【0058】
漸進モデル(progression model)Mが、同様に焦点位置の変化を表現するものとなり得る。後者は、異なるレーザ出力および実施時間について始動前に現れるレーザ放射の火線を測定することにより求めることが可能である。このようにすることで、焦点の変位および焦点直径の変動を測定することが可能となり、補正値Δzfに直接的にまたは間接的に相関づけられるモデルが、線形近似され得る。代替的には、または追加的には、補正値Δzfは、コントローラまたは技術認知的システムについての特徴として使用することも可能である。
【0059】
漸進モデルと同様に、認知経験値COGを見出すことも可能である。この経験値は、認知技術的システムの統計的方法および自己学習的方法に基づき学習した経験を表す。これについては以下でさらに詳細に説明する。前記経験値は、補正値Δzfに直接的にまたは間接的に相関づけられ得る。
【0060】
図5は、対応するコントローラを有する技術認知的システムを図示する。
【0061】
このシステムの本質的な機能的特徴は、多数のセンサ結果および入力信号に基づく補正値Δzfの調整または制御である。これは、多数の入力信号をモニタリングおよび分類し、学習した知識を信号処理に使用することにより、専門家によって規定された所望の結果を実現するのに役立つ。
【0062】
このシステムは、人間または自然による学習、問題解決、および決定能力と同様の高度に適応的な能力を有するため、技術認知的であると呼ばれる。少なくとも2つのセンサユニットまたは少なくとも多次元センサデータセットから、システムが、少なくとも1つのアクチュエータシステムを作動させ、さらに、妥当な場合には、人間の専門家により事前に正確に決定された態様においてではなく、特徴認識および次元縮小により比較的大きなセンサデータセットから抽出された既存のまたは記録および解析済みのまたは学習された経験的データであって、妥当な場合には人間のオペレータにより直接的に事前決定されたかまたはその事前決定から導出された態様で得られた解決アプローチによりデータベースおよび設定目標内に記憶された経験的データに基づいてセンサデータ取得を行う場合には、このシステムは、技術認知的なものである。したがって、技術認知的システムは、設定目標を達成するまで、解決アプローチまたは制御アプローチまたは調整アプローチを行うが、その後、目標達成をモニタリングし、非達成が検出された場合には、学習された解決アプローチを再度改正する。図6は、かかる技術認知的システムを概略的に説明する。このようなシステムは、制御ロボット、生産設備、およびさらには実にレーザ加工システムに対しても使用することが可能である。
【0063】
さらに詳細に述べるために、使用される個々の要素および方法を次に説明する。
【0064】
原則的には、センサデータ出力を可能にする任意のセンサが、センサシステム124として使用され得る。具体的には、これらは、例としては、マイクロフォンまたは固体伝播音響センサ、カメラ、フォトダイオード、プローブ、技術評価信号およびモニタリング信号、およびさらには例えばレーザ出力などのアクチュエータシステムパラメータである。
【0065】
特徴抽出および次元縮小: この場合には、データボリュームを縮小し情報量を可能な限り最大に維持するあらゆる方法を利用することが可能となる。具体的には、これらは、主成分分析(PCA)、独立成分分析(ICA)、ウェーブレット解析、フーリエ解析、高速フーリエ解析、ラプラス解析、特徴/対象認識方法、ISOMAP、局所線形埋め込み法、人工ニューラルネットワーク、多次元スケーリング、およびその他多数である。
【0066】
縮小されたデータボリュームは、高次元空間から得られた多次元空間のポイントクラウド(点群)として解釈され得る。データを縮小することにより、有限時間にて、このデータを以前に記録され分類されたおよび/または学習されたデータボリュームと比較することが可能となる。この分類においては、新たなセンサデータが既に記録されたセンサデータに類似する否かを判定し、この類似性に対して確率を割り当てることが可能である。以前に記録されたデータボリュームの類似性確率についての所定のしきい値を超過する場合には、以前に記録されたデータボリュームの下で以前に記憶された解決アプローチまたは制御アプローチまたは調整アプローチに従うことが可能となる。以前に学習されたデータボリューム群に関する類似性確率についてのしきい値を超過する場合には、このシステムは、新たな状況にある。
【0067】
新たな状況に対する挙動は、人間のオペレータに問い合わせることにより学習され得るか、または類似性原則に従い以前のデータおよび解決ストラテジから試行され得る。ここでは、設定目標に従い、自己開発アプローチの試行後に、目標が達成されたか否かを引き続き確認し、それに応じて選択された解決アプローチを評価する自己学習アルゴリズムが、使用される。以下の方法、すなわち、サポートベクターマシン、サポートベクター分類、ファジー理論、情報ファジーネットワーク、ファジーK−最近傍分類器、K−最近傍分類器、強化学習、ベイジアンネットワークおよびベイジアン知識データベース、naiveベイジアン分類器、隠れマルコフ連鎖、人工ニューラルネットワークおよび逆伝播法、回帰分析、遺伝子プログラミング、または決定木が、分類、経験値の記憶、および解決ストラテジに対して、ならびに自己学習アルゴリズムとして使用され得る。
【0068】
分類後に得られる解決ストラテジまたはコントローラシステム制御もしくはアクチュエータシステム制御を、単純な態様で組み込むことが可能であるが、これらは、データ取得のタイプを制御することも可能である。例えば、既知のデータボリュームについてのしきい値に達しない場合には、データ取得のタイプを変更することが可能となる。例えば、これは、新たな周波数帯にウェーブレット解析を適合化させることにより、またはPCAからICAに変更することにより、実施することが可能である。
【0069】
大抵のレーザ溶接ヘッドは、レーザビームと同一の集束レンズを使用する同軸カメラとの接続が可能である。その結果、これらのレンズの加熱により生じレーザビームに影響を及ぼす焦点変位が、記録される動画データをさらに変化させる。この提案されるアプローチにおいては、記録された動画データの鮮明度は、焦点変位および工作物表面に対する距離における変化をモニタリングするために使用される。距離制御は、制御可能なz軸によって実現される。追加的な人工ニューラルネットワークにより、例えばコリメータ光学系により引き起こされた変位などの補償されないエラーの補正が可能となる。本発明によれば、レンズの加熱により生じたプロセスエラーが低減され、プロセス品質および他のセンサデータ取得が改善される。
【0070】
車両生産ラインは、それぞれ異なる車両モデルごとにカスタマイズされるため、1つ以上のツールが不正確に設定された場合には、設定時間および停止時間が長くなる。そのため、新たなプロセスおよびプロセス環境に対して個別に適応し得る自己学習型加工ツールを備える自由度の高い生産ラインに対する必要性が高まりつつある。これらは、広範囲にわたる可制御性をもたらすツールか、または新規のタスクを遂行するために学習された知識を使用するインテリジェントシステムが可能である。
【0071】
レーザビーム溶接は、今日の工業生産ラインにおいて技術的に最も難しいプロセスステップに含まれる。車両本体の生産においてはレーザビーム溶接を主に使用するため、高い精度および確実性が保証されなければならない。その結果、プロセス特性におけるわずかな変化によっても、故障部分を回避するためのシステムの再較正が必要となる。
【0072】
本発明は、焦点シフトまたは焦点変位としても知られている熱的レンズ効果の保証に関する。レーザ溶接ヘッド内における光学系の継続的なエネルギー吸収により、レーザビーム特性が、加工プロセスおよび溶接プロセスの際に変化する恐れがある。焦点変位のこの特徴は、試験所にて計算することが可能である。しかし、これらの結果は、各システムが固有の設定および未知の影響変数の重複を有するため、現実の生産環境に対しては殆ど当てはまらない。
【0073】
溶融ケイ酸塩(SiO2)からなる光学構成要素が、Nd:YAGレーザ源により発せられた1064nmの波長においては比較的低い吸収率を有するが、レーザ出力の上昇により、焦点変位が増大し、これにより対策が必要となる。近年の成果は、例えば比較的高い熱伝導性を有する硫化亜鉛(ZnS)ベースレンズなどの新しい材料を含む改良された光学機器に関係するものである。しかし、このアプローチは、焦点変位を回避せず、一定の焦点直径を保証する。同様の成果が、レーザビームの光学的補正を向上させ得る変更された構造体により得られる。
【0074】
他のアプローチが、プロセス光学系の変更を伴うことなく、センサデータを検出することにより焦点位置を測定および制御することを目的としている。これらのアプローチは、主に、様々なスペクトル範囲に関する光学的発光の解析および比較に基づいており、色収差を利用する。その結果、プロセス光学系と工作物との間の相対距離を制御することが可能となり、これにより、位置決めおよびフォーカシングの変位エラーを回避することが可能となる。可制御性光学機器を使用することにより、工作物表面に対する焦点位置の推定を可能にするプロセスの小さな振動を達成することが可能となる。
【0075】
これらの技術は、プロセス発光を利用するため、これらは、モニタリングされるプロセスに大きく依存し、したがって扱われるそれぞれのプロセスごとに異なる設置を要する。この問題に対処し得るようになるために、光学発光を分類するために使用される人工ニューラルネットワークを用いた自己学習技術の方向において、第一段階を実施した。種々の設定に関してフォーカシング光学ユニットと工作物との間の距離を変更することにより、訓練を実施した。
【0076】
本発明によるアプローチにおいては、焦点変位が生じる場合または工作物に対する距離が変化する場合には、工作物に対する一定の距離が確保され適用されなければならない。これは、同軸ビデオカメラにより記録された動画データの解析により達成され得る。このカメラは、レーザビームと同一のフォーカシング光学ユニットを部分的に使用し、したがって同様の焦点変位を被り、不鮮明な画像をもたらす。カメラに可制御性光学ユニットを組み込むことにより、z軸調節装置に関して制御信号の計算が可能となり、それにより鮮明画像を再度実現することが可能となる。
【0077】
初めに、導入部として焦点シフトまたは焦点変位の簡単な説明を以下に示し、その後に、試験された鮮明度評価技術、人工ニューラルネットワーク(ANN)、およびシステム構成全体を示す。第2に、焦点変位の測定、距離を変動させた際に得られた画像データの解析、およびANNにより得られた結果を含む、実施した実験を説明する。
【0078】
初めに、理論的背景を説明する。
【0079】
対策を構築するためには、焦点シフトまたは焦点変位を記述および定量化しなければならない。1つのみのコリメータレンズおよび1つの集束レンズを有する加工ヘッドを備える単純な光学的構成を前提とする。その光学的特性に基づき、焦点変位の度合いを計算し、したがってz軸制御の所要の精度を推定することが可能である。制御は、鮮明度、最大検索、およびPIDコントローラによる制御信号の変更を計算するアルゴリズムに基づく。レンズ加熱により生じるレーザビームのビーム経路とカメラ画像との間の差異に対処するために、人工ニューラルネットワーク(ANN)が、実装される。
【0080】
レーザ溶接ヘッドは、入射ビームを平行化して特定の距離でその焦点を合わせるために使用されるレンズのセットを備える。工作物表面に対する焦点の位置決めは、このアプリケーションにより決定される。ファイバがdfの直径を有する場合には、焦点d0の直径を計算することが可能となる。ここではd0=ffoc/fcol×dfである。したがって、焦点距離は、加工光学機器に対する焦点のサイズおよび位置に影響を及ぼす。
【0081】
薄いレンズの焦点距離fは、
【数13】
により計算することが可能である。
【0082】
これにより、レンズの焦点距離は、屈折率nおよび半径Riにより決定されることとなる。これらの両項は、使用される材料の温度により決定される。システムが冷温始動する場合には、レンズが周囲温度にあると考えることが可能である。加工の際に、レンズは、一定の割合のビーム出力を吸収し、自体の温度を上昇させる。この変化ΔTにより、dn/dTにより規定される屈折率Δnが変化する。溶融ケイ酸塩については、dn/dTの値は、10-5/Kの範囲内となる。1064nmの波長での屈折率は、20℃では1.4496となり、100℃では1.4503にまで上昇する。半径の変化は、材料の膨張により引き起こされ、これは、線熱膨張係数αを適用することにより近似され得る。熱的レンズ効果により、コリメータ光学ユニットおよびフォーカシング光学ユニットの両方に影響が及ぶため、拡大項ffoc/fcolは、光学ユニットが正確に設計される場合には、一定に留まる。焦点変位の通例の近似値は、
【数14】
となり、ここで、ΔPabsは、吸収された出力であり、kWは、熱伝導率であり、RLは、レンズ直系である。温度の上昇は、焦点距離を短縮させ、これにより、溶接ヘッドを再位置決めすることが必要となる。
【0083】
焦点変位は、様々な方法で測定することが可能である。1つの従来的な方法は、層ベースのビーム解析(layer-based beam analysis)である。ここでは、加工光学ユニットに対する様々な距離について出力密度プロファイルが検出される。種々の光学ユニットに関する焦点変位の比較を可能にするために、対応するレイリー長ZRFによる正規化が適用される。後者は、ビーム直径が√2の係数により変化する焦点からの距離を規定する。これにより、以下の公式が得られる。
【数15】
【0084】
時間tの影響は、記述がさらに困難であり、例えば冷却システム、雰囲気特性、およびレンズの熱伝導率などの外部パラメータの大きなセットにより決定される。焦点変位が特定の値の方向へと収束するまでに最大で15分を要するということを示す結果が存在する。さらに、数か月にわたる長期的な影響が観察され得ることが判明した。
【0085】
光学ユニットと工作物との間に配置される保護ウィンドウは、光学ビーム経路に影響を及ぼすべきではないが、それにもかかわらずこれらのウィンドウは、焦点の位置を変更させる恐れがある。この場合にもやはり、出力吸収により、ジオメトリ特性の変化および保護ウィンドウの屈折率の変化が生じる。
【0086】
次に、オートフォーカス技術を説明する。
【0087】
今日の画像記録装置の殆どが、対象距離が不明な場合でも鮮明な画像の取得を可能にするオートフォーカス技術を備える。3つの異なるアルゴリズム、すなわち、高速フーリエ変換(FFT)、加算係数差法(SMD)技術、およびテネングラッド(Tenengrad)法を用いたソーベル演算子により、画像の鮮明度を示す値を求めることが可能となる。これらの演算子は、以下の通りに定義される。
【数16】
【0088】
これらの演算子は、画像の各ピクセルに対して適用される。既定の閾値Tを上回るQ(ここでQ=ix2;+iy2)が合算され、その結果が画像鮮明度に関するスカラ値Sとなる。SMDアルゴリズムは、単純化された演算子を有し、しきい値
【数17】
を用いることもない。
【0089】
Qの根が求められ、合算されて、スカラ値Sが求められる。テネングラッド技術およびSMDは、画像センサなどにおいて見受けられるように、セルラーニューラルネットワーク(CNN)において実施されるように単純な態様で利用することが可能である。この場合に、FFT技術は、性能品質比較のために使用される。
【0090】
これらの技術のいずれによっても、最も鮮明な画像が既に実現されているか否かを判定することは、またはフォーカシング光学ユニットを調節しなければならない方向を判定することは、可能とはならない。その結果、フォーカシング光学ユニットに対する制御信号を取得するために少なくとも2つの画像を検出することが必要となる。本発明による1つの構成においては、画像記録装置の上流の集束レンズは、その作動範囲内において一定の態様で駆動され得る。その結果、画像の検出および加工により、最大値Smaxを有する曲線が得られる。この最大値が達成される集束レンズの位置により、最高の鮮明度を有する画像を取得することが可能となる。
【0091】
次に、人工ニューラルネットワークを説明する。
【0092】
人工ニューラルネットワークを利用することにより、入力信号と出力信号との間の複雑な関係をモデル化することが可能となる。ネットワークという用語は、入力層と出力層との間で連結される種々の層に収容されたノードの集合体を指す。各ノードは、入力信号のために使用された以前の層からノードのセットに連結され、それ以降の層は、その出力信号を分配するために用意される。ノードiの特徴的特性は、入力信号xjの重みwij、バイアスθi、ならびに、入力信号およびバイアスの全ての合計に適用される関数fiである。wij、θi、およびノードのセットは、人工ニューラルネットワークの学習プロセスの際に決定される。訓練データは、所要の出力信号が判明している入力信号のセットから構成される。このアプローチは、それが構成される際に人工ニューラルネットワークの結果が提示されるため、教師付き学習として知られている。訓練プロセスまたは学習プロセスは、計算された出力と想定される出力との間の差が最小化されるまでノード特性が変更される、エラー最小化プロセスとして構築される。
【0093】
このようにして訓練された人工ニューラルネットワークは、従来的なパターン認知または分類タスクに使用することが可能である。さらに、非線形システム同定に使用することも可能である。人工ニューラルネットワーク(ANN)は、次いで訓練の際に決定されたパラメータを有する非線形システムを表す。この訓練は、シミュレーションされることとなるシステムの解析モデルが存在する場合には、改良することが可能である。
【0094】
次に、z軸制御を説明する。
【0095】
レーザ溶接ヘッドは、コリメータ光学ユニットとフォーカシング光学ユニットとの間に設置された同軸ビデオカメラを備えることが可能である。焦点が工作物に対して正確に位置決めされると共に、溶融プールの鮮明な画像を取得するためには、さらなるレンズが必要となる。焦点変位の発生は、レーザビームおよび動画信号の両方に影響する。カメラ固有光学ユニットを変更することにより、鮮明な画像を再確立することが可能となる。この変化を利用して、発生する焦点距離エラーを計算することが、したがってz軸を調節して正確な焦点位置決めを維持することが可能となる。
【0096】
ここで、コリメータ光学ユニットに影響を及ぼす熱的レンズ効果が観察されない状態に留まり、したがって焦点距離変位エラーがやはり観察されない状態に留まる点に、留意されたい。さらに、カメラの焦点距離平面が、色収差によりレーザビーム焦点とは異なる焦点距離変位を被る。これらの状況は共に、次の章において説明されるように、カメラレンズゼロポイントZPを制御することにより、緩和され得る。
【0097】
次に、制御ループによる距離制御を説明する。
【0098】
このアプローチにおいては、カメラ固有レンズと画像センサとの間の距離が、継続的に変更される。最も鮮明な画像のためのレンズ位置が、2つの連続する間隔の間において逸脱する場合には、工作物に対する距離が、偏向されたか、またはレンズの加熱が、レーザビームに関してフォーカシング光学ユニットに影響を及ぼす。
【0099】
カメラが1kHzの周波数で画像を記録し、レンズが10Hzで振動する場合には、20Hzの制御レートが達成され得る。その結果、Smaxが、50個の画像の中に見出され得る。さらに、集束レンズにより5mmの鮮明な画像のための範囲が可能となる場合には、システムの精度は、100μmに等しくなる。その結果、100μmまたはそれ以上の焦点面変位を検出することが可能となる。
【0100】
カメラレンズの初期ゼロポイント位置決めまたはゼロオフセット位置は、ZPとして示される。最も鮮明な画像のレンズ位置に対する差異は、ΔZPである。これは、PID制御装置に入力するために使用され、PID制御装置の出力は、z軸調節の制御または調整のために通信される。P部分は、ΔZPを適切な制御信号にスケーリングするために必要となる一方で、I部分およびD部分は、システム応答を変更するために使用される。システム全体が、図7に図示される。
【0101】
次に、焦点変位のモデリングを説明する。
【0102】
説明する制御ループは、コリメータ光学ユニットの焦点距離変位には応答せず、そのため焦点変位エラーは残る。この現象およびレーザビームとカメラ光学ユニットとの間の焦点面の差異の部分的補償を可能にするためには、カメラレンズゼロポイントまたはゼロオフセットの補正が実施されなければならない。コリメータ光学ユニットの直接的なモニタリングが可能ではないため(コリメータ光学ユニットの上述の温度センサは別として)、印加される出力の知識に基づきレーザビームの焦点距離変位を推定するために、モデルが使用される。
【0103】
レンズ加熱効果は、極めて非線形の時間依存特徴を示す。本発明によれば、人工ニューラルネットワークは、これらの特性をモデル化するために使用され、プロセスパラメータの重複ならびに時間に対するそれらの微分および積分が、図8に図示されるように人工ニューラルネットワークに入力される。人工ニューラルネットワーク(ANN)の訓練は、経時変化を伴う種々のレーザ出力と、生じた焦点変位に関する情報との入力を要する。この情報は、実験の章において後に示されるように、対応する測定計器によりビームの火線を測定することにより取得することが可能である。
【0104】
印加されるレーザ出力と発生する焦点変位との間の関係性が確立されると、印加されるレーザ出力および他のシステムパラメータに従ってカメラレンズのゼロポイントまたはゼロオフセットを設定することが可能となる。それにより、その後、画像鮮明度に基づく制御ループが、加工ヘッドと光学ユニットとの間の距離の高速変化に応答し、フォーカシング光学ユニットに対するレンズ加熱の影響に応答する。この場合に、人工ニューラルネットワークの使用は、長期的なエラーを最小限に抑えることを目的としている。
【0105】
次に、実験結果を示す。
【0106】
第1の実験は、制御システムの様々な構成要素の性能および特性を評価するために実施した。図示される鮮明度測定技術の解析は、最も適するアルゴリズムを決定するために実施した。第2の実験セットは、種々のレーザ溶接ヘッドについての焦点変位に関する一般的情報を得るために実施した。
【0107】
熱的レンズ効果の最も明白な効果は、焦点シフトまたは焦点変位である。これらは、焦点面とフォーカシング光学ユニットとの間の距離を縮小させる。この効果のシミュレーションは、プロセス中のレーザ溶接ヘッドのz軸に沿った調節により達成することが可能であり、そのため、ビーム焦点と工作物表面との間の相対位置の変化がもたらされる。これは、プロセス中に様々な溶接結果を得るための出力密度の変動を包含する。
【0108】
この実験に関して、0.7mm軟質鋼プレートの30cm重ね溶接において、開始時には工作物が溶接ヘッドに対して過度に近くなり、プロセスの終了時には工作物が溶接ヘッドに対して過度に遠くなるように、−5mm〜+5mmの変位を生じさせた。200fpsのフレームレートおよび192×256画素の分解能を有する同軸CMOSカメラにより、この実験の動画を記録した。図9に図示されるように、外部カメラにより、光学プロセス発光の画像を記録した。初めは、大きな被加熱区域およびフレーム状プロセス発光をもたらす十分な溶け込みが達成されなかった。距離が大きくなるにつれ、出力密度が上昇し、下降される工作物の下方に火花の雨が現れることにより観察可能な、完全な溶け込み事象がもたらされる。+5mmの変位は、十分な結果は得られないが、完全な溶け込みプロセスを妨げない。溶接シームの後の解析により、1.5cmのみに対して許容可能な品質を得ることが可能であることが判明した。
【0109】
1.5cmの移動距離によるこの溶接プロセスの際に、0.5mmの焦点のシフトを生じさせた。その結果、距離制御からなる精度要件は、0.25mmまたはそれよりも良好なものとなる。
【0110】
図示される3つの原理の全てにより、記録された各画像フレームについて鮮明度評価を実施した。これらのアルゴリズムの結果を、10フレームにわたり正規化し、平滑化して、高周波ノイズを回避した。図10は、結果的に得られた曲線を示す。3つの全ての関数が、異なる最大値を有し、そのためこれらは全て、0.5mm未満のz軸オフセットの範囲内に位置することが、確定される。FFTの結果とSMDの結果との比較も、同様の特性を示すが、極大値が、SMDの結果におけるものよりも低い程度で強調される。テネングラッド関数は、FFT方法およびSMD方法よりも低い変動を示し、そのためこの関数は、作製された同他にとって最も良く適する関数となる。
【0111】
次に、焦点変位の測定を説明する。
【0112】
種々の光学構成に関してレーザビームを解析することにより、発生する焦点遠位の深い理解を得た。この例では、Primes FocusMonitorによりビーム火線をモニタリングした。このPrimes FocusMonitorは、焦点に対して様々な距離を有するビームでサンプルを貫通する際の出力密度を測定する。この測定を繰り返すことにより、一定のレーザ出力または変動するレーザ出力についてのビームの変化を解析することが可能となる。次いで、それらの結果を使用して、人工ニューラルネットワークを訓練することが可能となる。実験プロセスは、様々なレーザ出力および時間間隔についての複数の測定からなり、実験1〜実験7における印加レーザ出力は、1kW、2kW、4kW、6kW、6kW、6kW、6kWに等しく、それらにそれぞれ対応する開始後の時間は、0分、0分、0分、0分、5分、10分、20分であった。
【0113】
測定構成は、6kWファイバレーザ、400μmの直径を有するファイバ、ならびに3つの異なる光学ユニット、すなわち光学ユニット1(fcol約150mm、ffoc約250mm)、光学ユニット2(fcol約150mm、ffoc約250mm)、および光学ユニット3(fcol約125mm、ffoc約200mm)から構成した。実験プロセスは、光学ユニット1および光学ユニット2については3回実施し、光学ユニット3については1回実施した。
【0114】
図11は、Δz/zRFの平均化されたプロファイルを示す。実験1について測定された変位は、初期焦点位置fF(0)にて生じた。上昇したレーザ出力に関する焦点変位の増大は、明確に認められるものである。実験2〜実験4における変位(レーザ出力におけるそれぞれ2kWの上昇)は、レーザ出力との間に事実上の線形関係を呈する。実験4〜実験7の例では(6kWの一定のレーザ出力)、変位は、10分後に約1mmに収束するように見える。その結果、制御について数分の範囲の時定数を考慮することが必要となる。これらの特性は、さらに以下で説明されるように、システム理論の従来的な要素により、または人工ニューラルネットワークの形態でモデル化されることにより、焦点変位の推定値を計算することが可能となる。
【0115】
レイリー長zRFは、光学ユニット1および光学ユニット2については7.3mmに近く、光学ユニット3については6.6mmに近く、これらは、高いレーザ出力では0.5mm超の絶対焦点変位をもたらすものであった。したがって、結果的に得られる生産エラーを最小限に抑えるために、制御システムが適切なものとなり得る。
【0116】
次に、本発明によれば特に好ましい人工ニューラルネットワークによる焦点変位の推定を説明する。
【0117】
測定された焦点変位を理解することにより、印加レーザ出力に依拠する態様において焦点変位のモデリングが可能となる。これは、非線形システムにおける人工ニューラルネットワークの初期試験にとって適切なものとなる。以下の関数関係が、実験により求められた。
【数18】
【0118】
これは、前章の試験された光学ユニットと同一の態様で、上昇するおよび一定状態のレーザ出力に応答する。10分間にわたり連続して印加されるレーザ出力(1kW、2kW、4kW、6kW)による試験は、それぞれの例において、図12に図示されるような焦点変位推定値となった。レーザ出力の変化により、焦点距離が即座に変化したが、一定値に達するまでには10分を要した。
【0119】
次のプロセスの際に、上記に示した公式から得られた入力データおよび出力データにより、人工ニューラルネットワークを訓練した。
【数19】
は、入力となり、Δfは、出力となる。前述の実験におけるものと同一のレーザ出力を使用して試験を実施した。図12は、人工ニューラルネットワークにより、経験モデルにおける結果と非常に類似の結果がもたらされることを示す。したがって、人工ニューラルネットワークの利用は、本発明によれば非線形システムのシミュレーションに非常に適すると考えることが可能となる。
【0120】
現実の環境において使用するためには、後に制御されることとなる加工ヘッドに関して生じた、検出された焦点変位測定値の訓練特徴を求めることが必要となる。この場合には、実施された焦点変位測定の回数により、十分な結果を実現することは不可能である。なぜならば、人工ニューラルネットワーク全体の訓練が、数個のサンプルに限定されることとなるからである。
【0121】
次に、もたらされた結果から導かれる結論を示す。
【0122】
レーザ溶接ヘッドの焦点変位または焦点シフトは、不十分な溶接結果をもたらす恐れがあり、したがって、高いレーザ出力によっても均一な品質基準を実現するために、焦点変位補償機構が必要となる。
【0123】
鮮明度確認アルゴリズムによるカメラ固有光学系および他の画像加工の継続的制御により、工作物に対する距離が正確であるか否か、およびz軸をどのように調節すべきかを判定することが可能となった。テネングラッド鮮明度評価技術は、本発明による最も有用な結果を示した。
【0124】
3つの異なる加工ヘッドの場合における焦点変位の実験的測定により、4kW超の印加レーザ出力の場合における補償が、焦点変位が0.6mmまでに限定されるように意図される場合には必要であることが判明した。これらの実験に基づき、人工ニューラルネットワークのための訓練データソースとして役立つ焦点変位の経験モデルを設計した。さらなるシミュレーションにより、本発明によれば、人工ニューラルネットワークを使用して非線形システム関係を調整することが可能であることが確認された。
【0125】
さらなる研究は、例えば可制御性カメラ光学系および高精度z軸調節装置などのハードウェアの展開を目的とする。さらに、光学収差の影響が、低減されるように意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッドにおける焦点位置の変化を補償するための、特にレーザ材料加工の際に焦点位置および焦点サイズのモニタリングおよび閉ループ制御を行うための、コンピュータ計算において相互に斟酌される画像において加工表面、溶融プール、プロセス発光、および蒸気毛細管現象(キーホール)を視覚化するための、さらにはレーザ加工プロセスを技術認知的に実施するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工ヘッドにより材料を加工する際には、レーザ放射が、レンズ系により焦点に集められる。しかし、レンズ系自体が、材料加工の際にレーザ光により加熱されるため、その結果として、使用されるレンズ系の光学特性もまた変化する。さらに、これにより、レーザ光のビームプロファイルの焦点位置もまた変化する。加工すべき材料の位置に対して前記焦点位置が変化することにより、所望の加工結果が得られなくなるという影響がもたらされる恐れがある。
【0003】
様々なモニタリングシステムが、レーザ材料加工プロセスにおけるプロセスモニタリングのために使用される。前記モニタリングシステムは、部分的には、フォトダイオード、他の光センサ、または画像センサ技術、特にカメラによるプロセス発光の検出に基づいており、換言すれば特にレーザビームと工作物との間の相互作用領域からの電磁放射の検出に基づいている。リアルタイムモニタリングまたは工程内モニタリングのために、カメラは、一般的には、例えば被覆された半透明表面などにより、レーザ加工ヘッドの光学系内に組み込まれる。
【0004】
各フォトダイオードの強度により工作物に対する焦点位置の変化を決定するアプローチが、当技術において既に議論されてきた。
【0005】
したがって、異なる波長について、2つの光学センサを、供給されるレーザ光の光ファイバ中に導入することが、方法が周知となっている。この場合には、2つの光学センサの強度における相互的な相対変化に基づいて、焦点位置の変化に関する結論を導き出すことが試みられ、次いでこれにより、焦点位置の変化を補償する。F.ハラン、D.ハンド、C.ピーターズ、およびJ.ジョーンズによる「Real−time focus control in laser welding」(Meas.Sci.Technol.,Year:1996,pages:1095−1098)を参照されたい。
【0006】
他の周知の方法においては、レーザ溶接プロセスの際に、フォトダイオードにより、工作物に対する焦点位置の変化に関して波長の強度が測定される。ニューラルネットワークを利用することにより、フォトダイオードの出力と一致し、後に焦点位置の補償制御のために使用される関数が、概算される。G.ヒューイ、O.フレミング・オーブによる「Automatic Optimization of Focal Point Position in CO2 Laser Welding with Neural Networks in Focus Control System」(year 1997)を参照されたい。
【0007】
ドイツ国特許第19516376号は、焦点振動を加えることにより、最適な焦点位置が、フォトダイオード強度の変換された振幅および相の関係から計算されることを開示している。
【0008】
ドイツ国特許第19925413号は、溶接ビームの焦点位置を決定するためのデバイスを説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2004 043076号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第197 16 293号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、加工プロセスの際に被加工材料に対して規定された相対焦点位置を効果的に維持することを可能にする、レーザ加工ヘッドと、レーザ加工ヘッドにおける焦点位置の変化を補償するための方法とを提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載のレーザ加工ヘッドによって、および別の独立請求項15に記載の本発明による方法によって、達成される。本発明の有利な構成および展開が、従属請求項に示される。
【0012】
特に、この目的は、工作物に対する焦点の変化が検出され、次いでこれに応じた補正係数の計算の後に焦点位置が合わせられることによって、達成される。
【0013】
さらに、撮像センサユニットが使用される場合には、可能な限り最高の品質を有する加工プロセスの画像が生じるはずである。
【0014】
本発明の中核は、加工表面に対する焦点位置の変化の検出、およびそれに応じたレーザ材料加工プロセスにおける焦点位置または焦点直径の補正である。この検出は、撮像モニタリングセンサシステムの画像鮮明度を用いて、またはレーザ加工ヘッドにおける温度センサを用いて、または、種々のレーザ放射強度にてレーザ加工ヘッドの測定された火線から計算された時間間隔あたりの光エネルギーもしくは近似モデル、もしくは自己学習機構もしくは学習された経験値を考慮する技術認知的方法、もしくはこれらの検出可能性の中の複数の要素の中の1つおよび加工表面に対するレーザ加工ヘッドの位置を変更することによるもしくは使用される光学系の可動部分を適合化(調整)することによる焦点位置の適合化(調整)から得られた、使用される放射強度を用いて、実施される。
【0015】
したがって、本発明は、レーザ加工ヘッドおよび焦点位置を適合化するための方法を提案する。本発明によるレーザ加工ヘッドは、カメラを有し、ビーム経路内においてこのカメラの上流に撮像光学ユニットが配置され、このカメラは特に溶接または切削により加工レーザビームによって加工される工作物の加工領域を監視する役割を果たす。またレーザ加工ヘッドは、工作物表面の上に加工レーザビームの焦点を合わせるためのフォーカシング光学ユニットと、集束レンズの焦点の変位が生じた場合にカメラ画像の焦点を再度合わせるために必要な光学軸の方向における撮像光学ユニットの調節移動量を用いて、集束レンズの焦点変位または焦点シフトを補償、均衡化、または平滑化する調節移動量を計算するように適合化された評価ユニットとを備える。本発明によれば、さらに、加工レーザビームの作用焦点が工作物表面の上にまたは工作物表面に対して規定された位置に常に位置するように、学習プロセスにより、加工時間または加工状況に応じてフォーカシング光学ユニットの調節を制御する認知システムをさらに使用することにより、最適な溶接結果または分離結果またはレーザ加工結果をもたらすことが可能である。
【0016】
以下、図面を参照として、例として本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるレーザ加工ヘッドの大幅に簡略化した概略図である。
【図2】近すぎる作用焦点位置、最適な作用焦点位置、および遠すぎる作用焦点位置に関して撮影された写真を示す図である。
【図3】本発明によるHDR方法により処理されたカメラ画像の概略図である。
【図4】本発明によるHDR画像シーケンス処理のブロック図である。
【図5】本発明による技術認知的システムのブロック図である。
【図6】本発明による他の技術認知的システムのブロック図である。
【図7】最高に鮮明な画像Smaxのカメラレンズ位置とレンズゼロ位置またはゼロオフセット位置ZPとの比較に基づく、z軸調節の閉制御ループのブロック図である。
【図8】カメラレンズゼロポイントまたはゼロオフセット位置を制御するための印加レーザ出力およびプロセスパラメータが入力される人工ニューラルネットワークのブロック図である。
【図9】各例において加工ヘッドが10mmだけ距離を拡大された、重畳構造体の溶接プロセスの際に記録された画像を示す図である。
【図10】±5mmの模擬焦点変位の際に同軸方向において記録された工程内動画に対して適用された鮮明度評価技術の結果を示す図である。
【図11】様々なレーザ出力および時間間隔(例1:1キロワット、例2:2キロワット、例3:4キロワット、例4:6キロワット、例5:5分後に6キロワット、例6:10分後に6キロワット、例7:20分後に6キロワット)に関して測定された、様々な光学系についての平均焦点変位量を示すグラフである。
【図12】実験結果に基づき経験的モデルを利用して、さらには人工ニューラルネットワークを介して計算された(1〜10分:1キロワット、11〜20分:2キロワット、21〜30分:4キロワット、31〜45分:6キロワット、zRF=7.2mm)焦点変位量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明によるレーザ加工ヘッド100を図示する。このレーザ加工ヘッド100は、プロセスモニタリングカメラ102、温度検出ユニット、調節可能レンズもしくは調節可能ミラーを含む光学系、または加工表面104に対するレーザ加工ヘッド100の位置制御ユニットを含むことが可能である。
【0019】
レーザ加工ヘッド100の光学系は、波長λLを有するファイバ110からのレーザビーム108を平行にするコリメータレンズ106を含み、平行化されたレーザビームは、ビームスプリッタ112を経由して集束レンズ114により加工表面104の上に、または加工表面104に対して画定された位置の上に焦点を集められる。カメラレンズ116が、カメラ102の上流に配置され、光学軸の方向において補正値ΔdKLだけ調節され得る。さらに、レーザ加工ヘッド100は、集束レンズ114に温度センサ118を、さらにはコリメータレンズ106に温度センサ120を有し、これらのセンサは共に、評価/制御ユニット122に接続される。さらに、プロセスモニタリングセンサシステム124が、評価/制御ユニット122に接続される。
【0020】
本発明によるレーザ加工ヘッド100は、カメラ102を備え、撮像光学ユニット116が、ビーム経路中においてカメラ102の上流に配置され、加工レーザビーム108により特に溶接または切削によって加工される工作物の加工領域を監視する役割を果たす。さらに、レーザ加工ヘッド100は、工作物上に加工レーザビーム108の焦点を集めるための集束光学ユニット114と、評価ユニット122とを備える。この評価ユニット122は、集束レンズ114の焦点が変位した場合にカメラ画像の焦点を再度合わせるために必要となる光学軸の方向における撮像光学ユニット116の調節移動量を用いて、集束レンズ114の焦点変位を補償または相殺する調節移動量を計算するように適合化される。
【0021】
加工表面104は、使用される加工レーザ光の波長λLとは異なる波長λKを有する光により、照明デバイス(図1には図示せず)によって照明され得る。この照明デバイスは、外部から工作物表面104を証明するために、レーザ加工ヘッド100の外側に取り付けられ得る。しかし、照明デバイスから入射する光が、ビームスプリッタによりレーザ加工ビーム108のビーム経路へと同軸方向に結合されてもよく、この場合には、照明デバイスは、レーザ加工ヘッド100の光学系中に組み込むことが可能となる。
【0022】
代替的にまたは補助的には、本発明によれば、画像を取得するために、高ダイナミックレンジ(HDR)方法を使用することも可能である。この方法においては、画像センサが、画像ごとにそれぞれ異なる時点で複数回、すなわち少なくとも2回スキャンされるか、または、複数の画像、すなわち2つ、3つ、もしくはそれ以上の画像が、それぞれ異なる露光時間によりもしくは複数のカメラにより生成され、その後、コンピュータ計算において相互に考慮されて、少なくとも1つの画像が形成される。この手順により、周囲の加工領域、プロセス発光、さらには蒸気毛細管現象またはキーホールを画像中に同時に視覚化する、画像記録、画像シーケンス記録、または動画記録が可能となる。レーザ加工プロセスを画像記録する場合には、既述の領域の複数の強度値が、広い範囲にわたり分布し、これが、前記方法により1つの画像中において視覚化され得る。比較的低い強度分解能によるプロセスモニタリングシステムまたは評価ユニットもしくは制御ユニットに関連するスクリーンまたはディスプレイデバイス上の表示については、このように生成された画像または画像シーケンスが、グレースケール値またはトーンマッピング方法により適合化された態様で表示される。
【0023】
図3および図4に図示されるように、本発明によれば、HDR方法、または加工領域、プロセス発光、および蒸気毛細管現象をより良好に視覚化するための方法を実施するためには、複数の画像または画素アレイが、コンピュータ計算において相互に考慮される。
【0024】
図3においては、図示されるプロセス発光が、参照符号1を有し、図示される蒸気毛細管現象(キーホール)が、参照符号2を有する。さらに、図3は、溶融プール3、溶接シームジオメトリ4、および加工表面5を示す。
【0025】
画像センサのマルチスキャニングにより、または複数のカメラによる同時画像記録により、または、マルチ露光技術と呼ばれる、1つのカメラではあるがそれぞれ異なる露光時間による連続画像記録により、異なる複数の画像が生成され得る。それぞれの画像記録は、様々なタイプの方法により、コンピュータ計算において考慮され得る。これは、最も簡単な例においては、少なくとも2つの画像記録から画像シーケンスの中の複数の画像のそれぞれの画像値を合算および平均化することを含む。さらに効率的に画像を取得するために、少なくとも2つの画像記録からの画像シーケンスから画像値またはピクセルを加重平均することが可能である。
【0026】
加重方法としては、エントロピー方法を利用することにより情報内容に応じて加重することが可能であり、または、カメラ応答関数を考慮に入れて加重平均を実施することが可能である。このためには、面積当たりの実際のまたは実質的な放射エネルギーに関する結論を導き出すことが必要となる。これは、以下の関数、すなわち
【数1】
により求められる。
【0027】
次いで、個々の放射エネルギーに対する重みが、以下のように表される。
【数2】
【0028】
この場合に、iは、複数の画像記録の中の画像シーケンスにおける画像インデックスであり、jは、ピクセル位置であり、tiは、画像記録iの露光時間またはスキャニング時間であり、yijは、位置jにおける画像記録iのピクセルの強度値であり、I-1()は、逆カメラ応答関数であり、xjは、ピクセル位置における面積当たりの評価放射エネルギーであり、wijは、信頼性モデルの加重関数である。本発明は、特にレーザ加工ヘッドおよび/またはこのレーザ加工ヘッドに接続されたプロセスモニタリングシステムによる、材料の分離または接合などの加工方法におけるこれらの図示されるHDR画像計算方法の利用に、明白に関係する。
【0029】
工作物に対して適合化されるべき焦点位置から得られる補正値については、例えば以下の公式が当てはまる。
Δzf=A×ΔzB+B×ΔzOS
=C×ΔdKL+D×ΔT+E×Δt+F×ΔPL+G×M+H×COG
ここで、A、B、C、D、E、F、G、Hは、可変的に決定されるパラメータであるとともに、値「0」をとり得る。
【0030】
次に、個々の成分を決定するための方法を示す。
【0031】
個別におよび組み合わせて使用し得る補正値Δzfの検出方法は、以下の通りとなる。
【0032】
プロセスモニタリングシステムを設定する際に、画像処理センサシステムのフォーカシングユニットが、撮像信号によって可能な限り鮮明な画像が生成されるように設定される。この場合には、可能な限り最高の画像鮮明度または分解能の決定は、様々な方法により得られる。本発明は、フォーカシングするためのまたは画像鮮明度を得るためのあらゆる慣例的な方法を含むが、いくつかの重要な方法を明示する。
【0033】
分散: 後の合算を伴う平均値まわりの画像値の平方差。画像をi(x、z)とし、Sを画素数とすると、これは、以下のように、すなわち、
【数3】
のように算出することができる。
【0034】
高い分散、すなわち幅広いヒストグラムは、コントラストが良好であることを意味する。
【0035】
加算係数差法(SMD:sum modulus difference): 画像勾配
【数4】
とその絶対値
【数5】
とに基づく測定。
【0036】
SMDは、
【数6】
により決定され、鮮明な画像の場合には、画素xとx+1との間の差は、非常に大きくなる。
【0037】
信号パワー(SP:Signal Power):
【数7】
の最大値により、最良の画像状態を求め、さらに、リャオ(Liao)により修正されたしきい値方法にも適用される。
【0038】
フーリエ解析: 離散フーリエ変換
【数8】
と、より迅速に計算され得る高速フーリエ変換とが、
【数9】
を用いることにより、行ごとにおよび列ごとに決定される。脱焦画像においては、パワースペクトルの合算により算出される高周波範囲が、合焦画像と比べて著しく低下する。
【0039】
ラプラス演算子またはラプラスフォーカシング関数: これは、フーリエスペクトルの二次統計モーメント
【数10】
を表し、高周波に関連付けされる。演算子恒等式および公式拡張により、これは時間領域に変換され得る。これに含まれる個々の成分は、二次導関数の近似により決定されなければならず、これにより、
【数11】
を求め、直接的に決定することが可能となる。
【0040】
特徴ポイントまたは対象の追跡によるフォーカシング: 特徴ポイントは、同一の画像シーケンス内の異なる画像において再度見出すことが可能となるように特徴的な周辺部を有する画素である。その結果、画像シーケンスにおいて移動傾向を判定することが可能となり、したがってフォーカシングが、正確な方向において即座に作動し得るようになる。さらに、既知の画像シーケンスにおける対象認識アルゴリズムにより、フォーカシング機能のためのフォーカスウィンドウを生成することが可能となり、したがって標的対象の最適なフォーカシングが可能となり得る。このためには多数の方法を利用することが可能であるが、本発明は、Harrisコーナ検出器、画像の特定の下位領域への分割、画像勾配およびしきい値の算出、平方差の合算、オートフォーカシングのためのファジー論理、サポートベクター分類、ならびにその他多数を利用することとなる。
【0041】
本発明による方法によれば、システム設定プロセスにおいては、作用焦点が変位した場合に後に記録されるカメラ画像との比較における画像鮮明度の基準としての役割を果たすように、初めに加工領域の基準画像が記録される。この画像は、加工プロセスの間または前に生成され得る。
【0042】
次いで、加工作業の際に、画像信号は、例えば工作物に対する加工ヘッド100の位置が変化した場合、またはレーザ光の熱的影響により光学系の特性が変化した場合などに、光学系の、鮮明度により決定される一定の設定パラメータが失われる恐れがある。吸収されたレーザ出力により集束レンズ114の加熱が生じた場合には、結果として集束レンズ114の屈折率が変化する恐れがあり、その結果、集束レンズ114の焦点は、工作物に対面する側において光学軸の方向に変位される。一般的には、集束レンズ114の焦点、およびしたがってレーザビーム108の作用焦点、すなわち集束レンズ114により工作物上において生成される加工レーザ源の画像が、集束レンズ114の方向に変位する。加工レーザ源は、例えば、レーザ光を供給する光ファイバ110の出口表面などであることが可能である。
【0043】
本発明によれば、次いで、オートフォーカシングアルゴリズムにより、光学系、特に集束レンズ114の位置またはレーザ加工ヘッド100の位置は、撮像信号が、可能な限り最高の画像鮮明度をもたらすように、または記録された基準画像に可能な限り近づくように、加工プロセスの際に光学軸の方向において適合化される。
【0044】
この場合には、本発明によれば、光学系の所要の補正量ΔzBSが、加工表面104に対してΔzBだけレーザ加工ヘッド100の位置を適合化させることにより、または、光学系の可動パーツ、特に集束レンズ114またはその各構成要素(ズーム)を適合化させることにより(ΔzOS)、実行され得る。
【0045】
特に好ましい例示的な一実施形態においては、適合化プロセスにおけるレーザ加工ヘッド100の、または集束レンズ114の調節によって加工結果に対して直接的影響が及ぶのを回避するために、光学軸の方向における調節により、プロセス監視カメラ102のフォーカシングユニット、特にカメラレンズ116のみを適合化させることが可能である。
【0046】
調節により決定され、可能な限り鮮明な画像の取得に必要な、プロセスモニタリングカメラ102のフォーカシングユニット116の補正値ΔdKlは、光学系の結像比を直接的にまたは間接的に考慮に入れ焦点位置または焦点直径を適合化させるために、必要な補正係数Δzfに関連付けられる。
【0047】
換言すれば、プロセスモニタリングカメラ102の画像鮮明度により、フォーカシングは、例えば調節可能レンズ116またはミラーなどの独立したフォーカシングユニットにより、自動的に実行される。次いで、加工においてもたらされるこの適合および補正値ΔdKLが、適合化パラメータにより直接的に、加工表面104に対するレーザ加工ヘッド100の焦点位置に関連付けられてもよく、そのようにして制御されてもよい。
【0048】
本発明によれば、補正値ΔdKLと補正値Δzfとのこの関係の変換またはパラメータ化においては、工作物表面104に対するプロセス監視カメラ102の結像比(imaging ratio)、および工作物表面104に対するレーザビーム源の結像比が、コンピュータ計算において付随的に含まれなければならない点が考慮されるだけでなく、色収差または他の波長依存効果により監視システムの波長λKおよび使用される加工レーザ光の波長λLが異なることによるフォーカシング差もまた考慮される。
【0049】
したがって、本発明によれば、パラメータは、波長差および撮像差に応じて計算され、これにより、レーザ加工ヘッド100の作用焦点の焦点位置の変位量を計算することが可能となる。光学軸方向においてコリメータレンズ106の焦点が変位されることにより、加工レーザビーム108の作用焦点の、特に集束レンズ114の方向に工作物から離れる方向への変位を同様に引き起こさせる、コリメータレンズ106の加熱は、カメラ102のフォーカシングユニット116のオートフォーカス適合化による上述の方法によっては検出され得なくなる。
【0050】
したがって、本発明の他の一構成においては、特に以下において説明されるようなコントローラまたは技術認知的システムにより、加工レーザビーム108の作用焦点位置補正をさらに良好に実施することを可能にする方法が提案される。この方法においては、行過ぎ補正または不適切な補正がさらに回避される。
【0051】
本発明によれば、抽出された画像特徴に基づく分類を利用することにより、場合によっては寸法が縮小される画像データから、過度に遠くなるようなまたは過度に近くなるようなフォーカシングのいずれが選択されたかに関する情報が取得される。人工ニューラルネットワーク、サポートベクター分類、ファジー論理分類器またはファジーK−最近傍分類器、強化学習アルゴリズムが、分類としての役割を果たすことができる。図2は、画像鮮明度の差の一例として提示される。
【0052】
z軸に関する1つの特定の制御アプローチは、例えば、ファジーK−最近傍分類器により、画像鮮明度に関して(SMD)、異なる露光時間による3つの画像記録を分類する。画像鮮明度アルゴリズムが、異なる露光時間を有する各画像に適用される。このアルゴリズムは、これらの画像記録の画像鮮明度の分類、およびそれぞれ異なる画像鮮明度を有する画像シーケンスからのこれらの画像記録から抽出された主成分の分類にも適用される。異なる露光時間を有するこれらの画像記録について、過度に遠くなるような、適切な、または過度に近くなるような監視カメラ102のフォーカシングのいずれが選択されたかを示唆する分類結果を取得することが、可能であった。この例では、加工領域104に対する焦点位置が過度に遠くなるように選択された場合には、換言すれば、距離が過度に遠くなるように選択された場合には、長い露光時間である確率が高くなることが判明した。工作物からの距離が過度に近い場合、または焦点位置が鮮明な画像を得るには加工領域104の後方に遠すぎる場合には、短い露光時間であるクラス確率が比較的高くなる。このようにすることで、HDR方法は、焦点位置が影響を被ることとなる方向を画像特徴に基づき分類する分類器によって、自動フォーカシングとリンクすることが可能となる。この特定の例では、クラス相関確率
【数12】
が、分類のために選択される。この場合に、kは、最近傍を表し、jは、ランニング変数を表す。ui(x)は、クラスiに帰属するサンプルxの確率を表し、ujx(x)は、当該のk近傍の既知の確率であり、mは、1と2との間のスケーリングパラメータである。クラス相関確率は、クラスに対するサンプルの相対距離と共に低下する。良好な、過度に近い、過度に遠いクラスの発生する合計クラス確率は、z軸に関するPIDコントローラ(比例/積分/微分コントローラ)に対する加重入力として使用することが可能である。これらのステップについては、サポートベクター分類方法および技術認知に関する章で説明されるような他の分類方法ならびに他の制御方法を使用することがさらに可能であることは、明白である。したがって、いずれの場合でも、レーザ加工ヘッド100のz軸により工作物に対する焦点位置を制御および調整することが可能となる。
【0053】
波長差、温度プロファイル、およびその他多数によってだけではなく、さらに平行レンズおよび集束レンズを有する従来的なレーザ加工ヘッドの設計によって、さらに複雑な制御アプローチが、すなわち画像鮮明度とレーザ加工ヘッド100の作用焦点位置との間に直接関係をもたらすだけに留まらないことが、必要となる。監視システムが、平行化ユニットと集束ユニットとの間の反射表面に組み込まれる場合には、熱的影響による平行化ユニット106の光学ユニットにおける変化は、プロセスモニタリングカメラ102により検出されない。したがって、本発明において提案されるようなさらに複雑な制御方法により焦点位置の変化の補正バランシングを行う際には、この変化に取り組むことも必要となる。
【0054】
画像鮮明度以外には、加工ヘッド100の、およびしたがって光学系の温度変化ΔTが、変化した焦点位置についての十分な基準となり得る。これを目的として、温度変化は、レーザ加工ヘッド中の対応するセンサ120により検出され、補正値Δzfに直接的におよび間接的に相関づけられ得る。
【0055】
代替的には、さらに、コントローラまたは技術認知的システムについて以下のパラメータを使用することも可能である。
【0056】
加工レーザが加工ステップにおいてオンに切り替えられる時間間隔Δtが、焦点位置の変化につながる可能性がある。これにより、実施時間が、補正値Δzfに直接的にまたは間接的に相関づけられ得る。代替的には、または追加的には、補正値Δzfは、コントローラまたは技術認知的システムについての特徴として使用することも可能である。
【0057】
レーザ出力ΔPL、すなわちレーザ加工ヘッド100を通過するレーザ光の光エネルギーが、同様に焦点位置の変化につながる可能性がある。これにより、レーザ出力が、補正値Δzfに直接的にまたは間接的に相関づけられ得る。代替的には、または追加的には、補正値Δzfは、コントローラまたは技術認知的システムについての特徴として使用することも可能である。
【0058】
漸進モデル(progression model)Mが、同様に焦点位置の変化を表現するものとなり得る。後者は、異なるレーザ出力および実施時間について始動前に現れるレーザ放射の火線を測定することにより求めることが可能である。このようにすることで、焦点の変位および焦点直径の変動を測定することが可能となり、補正値Δzfに直接的にまたは間接的に相関づけられるモデルが、線形近似され得る。代替的には、または追加的には、補正値Δzfは、コントローラまたは技術認知的システムについての特徴として使用することも可能である。
【0059】
漸進モデルと同様に、認知経験値COGを見出すことも可能である。この経験値は、認知技術的システムの統計的方法および自己学習的方法に基づき学習した経験を表す。これについては以下でさらに詳細に説明する。前記経験値は、補正値Δzfに直接的にまたは間接的に相関づけられ得る。
【0060】
図5は、対応するコントローラを有する技術認知的システムを図示する。
【0061】
このシステムの本質的な機能的特徴は、多数のセンサ結果および入力信号に基づく補正値Δzfの調整または制御である。これは、多数の入力信号をモニタリングおよび分類し、学習した知識を信号処理に使用することにより、専門家によって規定された所望の結果を実現するのに役立つ。
【0062】
このシステムは、人間または自然による学習、問題解決、および決定能力と同様の高度に適応的な能力を有するため、技術認知的であると呼ばれる。少なくとも2つのセンサユニットまたは少なくとも多次元センサデータセットから、システムが、少なくとも1つのアクチュエータシステムを作動させ、さらに、妥当な場合には、人間の専門家により事前に正確に決定された態様においてではなく、特徴認識および次元縮小により比較的大きなセンサデータセットから抽出された既存のまたは記録および解析済みのまたは学習された経験的データであって、妥当な場合には人間のオペレータにより直接的に事前決定されたかまたはその事前決定から導出された態様で得られた解決アプローチによりデータベースおよび設定目標内に記憶された経験的データに基づいてセンサデータ取得を行う場合には、このシステムは、技術認知的なものである。したがって、技術認知的システムは、設定目標を達成するまで、解決アプローチまたは制御アプローチまたは調整アプローチを行うが、その後、目標達成をモニタリングし、非達成が検出された場合には、学習された解決アプローチを再度改正する。図6は、かかる技術認知的システムを概略的に説明する。このようなシステムは、制御ロボット、生産設備、およびさらには実にレーザ加工システムに対しても使用することが可能である。
【0063】
さらに詳細に述べるために、使用される個々の要素および方法を次に説明する。
【0064】
原則的には、センサデータ出力を可能にする任意のセンサが、センサシステム124として使用され得る。具体的には、これらは、例としては、マイクロフォンまたは固体伝播音響センサ、カメラ、フォトダイオード、プローブ、技術評価信号およびモニタリング信号、およびさらには例えばレーザ出力などのアクチュエータシステムパラメータである。
【0065】
特徴抽出および次元縮小: この場合には、データボリュームを縮小し情報量を可能な限り最大に維持するあらゆる方法を利用することが可能となる。具体的には、これらは、主成分分析(PCA)、独立成分分析(ICA)、ウェーブレット解析、フーリエ解析、高速フーリエ解析、ラプラス解析、特徴/対象認識方法、ISOMAP、局所線形埋め込み法、人工ニューラルネットワーク、多次元スケーリング、およびその他多数である。
【0066】
縮小されたデータボリュームは、高次元空間から得られた多次元空間のポイントクラウド(点群)として解釈され得る。データを縮小することにより、有限時間にて、このデータを以前に記録され分類されたおよび/または学習されたデータボリュームと比較することが可能となる。この分類においては、新たなセンサデータが既に記録されたセンサデータに類似する否かを判定し、この類似性に対して確率を割り当てることが可能である。以前に記録されたデータボリュームの類似性確率についての所定のしきい値を超過する場合には、以前に記録されたデータボリュームの下で以前に記憶された解決アプローチまたは制御アプローチまたは調整アプローチに従うことが可能となる。以前に学習されたデータボリューム群に関する類似性確率についてのしきい値を超過する場合には、このシステムは、新たな状況にある。
【0067】
新たな状況に対する挙動は、人間のオペレータに問い合わせることにより学習され得るか、または類似性原則に従い以前のデータおよび解決ストラテジから試行され得る。ここでは、設定目標に従い、自己開発アプローチの試行後に、目標が達成されたか否かを引き続き確認し、それに応じて選択された解決アプローチを評価する自己学習アルゴリズムが、使用される。以下の方法、すなわち、サポートベクターマシン、サポートベクター分類、ファジー理論、情報ファジーネットワーク、ファジーK−最近傍分類器、K−最近傍分類器、強化学習、ベイジアンネットワークおよびベイジアン知識データベース、naiveベイジアン分類器、隠れマルコフ連鎖、人工ニューラルネットワークおよび逆伝播法、回帰分析、遺伝子プログラミング、または決定木が、分類、経験値の記憶、および解決ストラテジに対して、ならびに自己学習アルゴリズムとして使用され得る。
【0068】
分類後に得られる解決ストラテジまたはコントローラシステム制御もしくはアクチュエータシステム制御を、単純な態様で組み込むことが可能であるが、これらは、データ取得のタイプを制御することも可能である。例えば、既知のデータボリュームについてのしきい値に達しない場合には、データ取得のタイプを変更することが可能となる。例えば、これは、新たな周波数帯にウェーブレット解析を適合化させることにより、またはPCAからICAに変更することにより、実施することが可能である。
【0069】
大抵のレーザ溶接ヘッドは、レーザビームと同一の集束レンズを使用する同軸カメラとの接続が可能である。その結果、これらのレンズの加熱により生じレーザビームに影響を及ぼす焦点変位が、記録される動画データをさらに変化させる。この提案されるアプローチにおいては、記録された動画データの鮮明度は、焦点変位および工作物表面に対する距離における変化をモニタリングするために使用される。距離制御は、制御可能なz軸によって実現される。追加的な人工ニューラルネットワークにより、例えばコリメータ光学系により引き起こされた変位などの補償されないエラーの補正が可能となる。本発明によれば、レンズの加熱により生じたプロセスエラーが低減され、プロセス品質および他のセンサデータ取得が改善される。
【0070】
車両生産ラインは、それぞれ異なる車両モデルごとにカスタマイズされるため、1つ以上のツールが不正確に設定された場合には、設定時間および停止時間が長くなる。そのため、新たなプロセスおよびプロセス環境に対して個別に適応し得る自己学習型加工ツールを備える自由度の高い生産ラインに対する必要性が高まりつつある。これらは、広範囲にわたる可制御性をもたらすツールか、または新規のタスクを遂行するために学習された知識を使用するインテリジェントシステムが可能である。
【0071】
レーザビーム溶接は、今日の工業生産ラインにおいて技術的に最も難しいプロセスステップに含まれる。車両本体の生産においてはレーザビーム溶接を主に使用するため、高い精度および確実性が保証されなければならない。その結果、プロセス特性におけるわずかな変化によっても、故障部分を回避するためのシステムの再較正が必要となる。
【0072】
本発明は、焦点シフトまたは焦点変位としても知られている熱的レンズ効果の保証に関する。レーザ溶接ヘッド内における光学系の継続的なエネルギー吸収により、レーザビーム特性が、加工プロセスおよび溶接プロセスの際に変化する恐れがある。焦点変位のこの特徴は、試験所にて計算することが可能である。しかし、これらの結果は、各システムが固有の設定および未知の影響変数の重複を有するため、現実の生産環境に対しては殆ど当てはまらない。
【0073】
溶融ケイ酸塩(SiO2)からなる光学構成要素が、Nd:YAGレーザ源により発せられた1064nmの波長においては比較的低い吸収率を有するが、レーザ出力の上昇により、焦点変位が増大し、これにより対策が必要となる。近年の成果は、例えば比較的高い熱伝導性を有する硫化亜鉛(ZnS)ベースレンズなどの新しい材料を含む改良された光学機器に関係するものである。しかし、このアプローチは、焦点変位を回避せず、一定の焦点直径を保証する。同様の成果が、レーザビームの光学的補正を向上させ得る変更された構造体により得られる。
【0074】
他のアプローチが、プロセス光学系の変更を伴うことなく、センサデータを検出することにより焦点位置を測定および制御することを目的としている。これらのアプローチは、主に、様々なスペクトル範囲に関する光学的発光の解析および比較に基づいており、色収差を利用する。その結果、プロセス光学系と工作物との間の相対距離を制御することが可能となり、これにより、位置決めおよびフォーカシングの変位エラーを回避することが可能となる。可制御性光学機器を使用することにより、工作物表面に対する焦点位置の推定を可能にするプロセスの小さな振動を達成することが可能となる。
【0075】
これらの技術は、プロセス発光を利用するため、これらは、モニタリングされるプロセスに大きく依存し、したがって扱われるそれぞれのプロセスごとに異なる設置を要する。この問題に対処し得るようになるために、光学発光を分類するために使用される人工ニューラルネットワークを用いた自己学習技術の方向において、第一段階を実施した。種々の設定に関してフォーカシング光学ユニットと工作物との間の距離を変更することにより、訓練を実施した。
【0076】
本発明によるアプローチにおいては、焦点変位が生じる場合または工作物に対する距離が変化する場合には、工作物に対する一定の距離が確保され適用されなければならない。これは、同軸ビデオカメラにより記録された動画データの解析により達成され得る。このカメラは、レーザビームと同一のフォーカシング光学ユニットを部分的に使用し、したがって同様の焦点変位を被り、不鮮明な画像をもたらす。カメラに可制御性光学ユニットを組み込むことにより、z軸調節装置に関して制御信号の計算が可能となり、それにより鮮明画像を再度実現することが可能となる。
【0077】
初めに、導入部として焦点シフトまたは焦点変位の簡単な説明を以下に示し、その後に、試験された鮮明度評価技術、人工ニューラルネットワーク(ANN)、およびシステム構成全体を示す。第2に、焦点変位の測定、距離を変動させた際に得られた画像データの解析、およびANNにより得られた結果を含む、実施した実験を説明する。
【0078】
初めに、理論的背景を説明する。
【0079】
対策を構築するためには、焦点シフトまたは焦点変位を記述および定量化しなければならない。1つのみのコリメータレンズおよび1つの集束レンズを有する加工ヘッドを備える単純な光学的構成を前提とする。その光学的特性に基づき、焦点変位の度合いを計算し、したがってz軸制御の所要の精度を推定することが可能である。制御は、鮮明度、最大検索、およびPIDコントローラによる制御信号の変更を計算するアルゴリズムに基づく。レンズ加熱により生じるレーザビームのビーム経路とカメラ画像との間の差異に対処するために、人工ニューラルネットワーク(ANN)が、実装される。
【0080】
レーザ溶接ヘッドは、入射ビームを平行化して特定の距離でその焦点を合わせるために使用されるレンズのセットを備える。工作物表面に対する焦点の位置決めは、このアプリケーションにより決定される。ファイバがdfの直径を有する場合には、焦点d0の直径を計算することが可能となる。ここではd0=ffoc/fcol×dfである。したがって、焦点距離は、加工光学機器に対する焦点のサイズおよび位置に影響を及ぼす。
【0081】
薄いレンズの焦点距離fは、
【数13】
により計算することが可能である。
【0082】
これにより、レンズの焦点距離は、屈折率nおよび半径Riにより決定されることとなる。これらの両項は、使用される材料の温度により決定される。システムが冷温始動する場合には、レンズが周囲温度にあると考えることが可能である。加工の際に、レンズは、一定の割合のビーム出力を吸収し、自体の温度を上昇させる。この変化ΔTにより、dn/dTにより規定される屈折率Δnが変化する。溶融ケイ酸塩については、dn/dTの値は、10-5/Kの範囲内となる。1064nmの波長での屈折率は、20℃では1.4496となり、100℃では1.4503にまで上昇する。半径の変化は、材料の膨張により引き起こされ、これは、線熱膨張係数αを適用することにより近似され得る。熱的レンズ効果により、コリメータ光学ユニットおよびフォーカシング光学ユニットの両方に影響が及ぶため、拡大項ffoc/fcolは、光学ユニットが正確に設計される場合には、一定に留まる。焦点変位の通例の近似値は、
【数14】
となり、ここで、ΔPabsは、吸収された出力であり、kWは、熱伝導率であり、RLは、レンズ直系である。温度の上昇は、焦点距離を短縮させ、これにより、溶接ヘッドを再位置決めすることが必要となる。
【0083】
焦点変位は、様々な方法で測定することが可能である。1つの従来的な方法は、層ベースのビーム解析(layer-based beam analysis)である。ここでは、加工光学ユニットに対する様々な距離について出力密度プロファイルが検出される。種々の光学ユニットに関する焦点変位の比較を可能にするために、対応するレイリー長ZRFによる正規化が適用される。後者は、ビーム直径が√2の係数により変化する焦点からの距離を規定する。これにより、以下の公式が得られる。
【数15】
【0084】
時間tの影響は、記述がさらに困難であり、例えば冷却システム、雰囲気特性、およびレンズの熱伝導率などの外部パラメータの大きなセットにより決定される。焦点変位が特定の値の方向へと収束するまでに最大で15分を要するということを示す結果が存在する。さらに、数か月にわたる長期的な影響が観察され得ることが判明した。
【0085】
光学ユニットと工作物との間に配置される保護ウィンドウは、光学ビーム経路に影響を及ぼすべきではないが、それにもかかわらずこれらのウィンドウは、焦点の位置を変更させる恐れがある。この場合にもやはり、出力吸収により、ジオメトリ特性の変化および保護ウィンドウの屈折率の変化が生じる。
【0086】
次に、オートフォーカス技術を説明する。
【0087】
今日の画像記録装置の殆どが、対象距離が不明な場合でも鮮明な画像の取得を可能にするオートフォーカス技術を備える。3つの異なるアルゴリズム、すなわち、高速フーリエ変換(FFT)、加算係数差法(SMD)技術、およびテネングラッド(Tenengrad)法を用いたソーベル演算子により、画像の鮮明度を示す値を求めることが可能となる。これらの演算子は、以下の通りに定義される。
【数16】
【0088】
これらの演算子は、画像の各ピクセルに対して適用される。既定の閾値Tを上回るQ(ここでQ=ix2;+iy2)が合算され、その結果が画像鮮明度に関するスカラ値Sとなる。SMDアルゴリズムは、単純化された演算子を有し、しきい値
【数17】
を用いることもない。
【0089】
Qの根が求められ、合算されて、スカラ値Sが求められる。テネングラッド技術およびSMDは、画像センサなどにおいて見受けられるように、セルラーニューラルネットワーク(CNN)において実施されるように単純な態様で利用することが可能である。この場合に、FFT技術は、性能品質比較のために使用される。
【0090】
これらの技術のいずれによっても、最も鮮明な画像が既に実現されているか否かを判定することは、またはフォーカシング光学ユニットを調節しなければならない方向を判定することは、可能とはならない。その結果、フォーカシング光学ユニットに対する制御信号を取得するために少なくとも2つの画像を検出することが必要となる。本発明による1つの構成においては、画像記録装置の上流の集束レンズは、その作動範囲内において一定の態様で駆動され得る。その結果、画像の検出および加工により、最大値Smaxを有する曲線が得られる。この最大値が達成される集束レンズの位置により、最高の鮮明度を有する画像を取得することが可能となる。
【0091】
次に、人工ニューラルネットワークを説明する。
【0092】
人工ニューラルネットワークを利用することにより、入力信号と出力信号との間の複雑な関係をモデル化することが可能となる。ネットワークという用語は、入力層と出力層との間で連結される種々の層に収容されたノードの集合体を指す。各ノードは、入力信号のために使用された以前の層からノードのセットに連結され、それ以降の層は、その出力信号を分配するために用意される。ノードiの特徴的特性は、入力信号xjの重みwij、バイアスθi、ならびに、入力信号およびバイアスの全ての合計に適用される関数fiである。wij、θi、およびノードのセットは、人工ニューラルネットワークの学習プロセスの際に決定される。訓練データは、所要の出力信号が判明している入力信号のセットから構成される。このアプローチは、それが構成される際に人工ニューラルネットワークの結果が提示されるため、教師付き学習として知られている。訓練プロセスまたは学習プロセスは、計算された出力と想定される出力との間の差が最小化されるまでノード特性が変更される、エラー最小化プロセスとして構築される。
【0093】
このようにして訓練された人工ニューラルネットワークは、従来的なパターン認知または分類タスクに使用することが可能である。さらに、非線形システム同定に使用することも可能である。人工ニューラルネットワーク(ANN)は、次いで訓練の際に決定されたパラメータを有する非線形システムを表す。この訓練は、シミュレーションされることとなるシステムの解析モデルが存在する場合には、改良することが可能である。
【0094】
次に、z軸制御を説明する。
【0095】
レーザ溶接ヘッドは、コリメータ光学ユニットとフォーカシング光学ユニットとの間に設置された同軸ビデオカメラを備えることが可能である。焦点が工作物に対して正確に位置決めされると共に、溶融プールの鮮明な画像を取得するためには、さらなるレンズが必要となる。焦点変位の発生は、レーザビームおよび動画信号の両方に影響する。カメラ固有光学ユニットを変更することにより、鮮明な画像を再確立することが可能となる。この変化を利用して、発生する焦点距離エラーを計算することが、したがってz軸を調節して正確な焦点位置決めを維持することが可能となる。
【0096】
ここで、コリメータ光学ユニットに影響を及ぼす熱的レンズ効果が観察されない状態に留まり、したがって焦点距離変位エラーがやはり観察されない状態に留まる点に、留意されたい。さらに、カメラの焦点距離平面が、色収差によりレーザビーム焦点とは異なる焦点距離変位を被る。これらの状況は共に、次の章において説明されるように、カメラレンズゼロポイントZPを制御することにより、緩和され得る。
【0097】
次に、制御ループによる距離制御を説明する。
【0098】
このアプローチにおいては、カメラ固有レンズと画像センサとの間の距離が、継続的に変更される。最も鮮明な画像のためのレンズ位置が、2つの連続する間隔の間において逸脱する場合には、工作物に対する距離が、偏向されたか、またはレンズの加熱が、レーザビームに関してフォーカシング光学ユニットに影響を及ぼす。
【0099】
カメラが1kHzの周波数で画像を記録し、レンズが10Hzで振動する場合には、20Hzの制御レートが達成され得る。その結果、Smaxが、50個の画像の中に見出され得る。さらに、集束レンズにより5mmの鮮明な画像のための範囲が可能となる場合には、システムの精度は、100μmに等しくなる。その結果、100μmまたはそれ以上の焦点面変位を検出することが可能となる。
【0100】
カメラレンズの初期ゼロポイント位置決めまたはゼロオフセット位置は、ZPとして示される。最も鮮明な画像のレンズ位置に対する差異は、ΔZPである。これは、PID制御装置に入力するために使用され、PID制御装置の出力は、z軸調節の制御または調整のために通信される。P部分は、ΔZPを適切な制御信号にスケーリングするために必要となる一方で、I部分およびD部分は、システム応答を変更するために使用される。システム全体が、図7に図示される。
【0101】
次に、焦点変位のモデリングを説明する。
【0102】
説明する制御ループは、コリメータ光学ユニットの焦点距離変位には応答せず、そのため焦点変位エラーは残る。この現象およびレーザビームとカメラ光学ユニットとの間の焦点面の差異の部分的補償を可能にするためには、カメラレンズゼロポイントまたはゼロオフセットの補正が実施されなければならない。コリメータ光学ユニットの直接的なモニタリングが可能ではないため(コリメータ光学ユニットの上述の温度センサは別として)、印加される出力の知識に基づきレーザビームの焦点距離変位を推定するために、モデルが使用される。
【0103】
レンズ加熱効果は、極めて非線形の時間依存特徴を示す。本発明によれば、人工ニューラルネットワークは、これらの特性をモデル化するために使用され、プロセスパラメータの重複ならびに時間に対するそれらの微分および積分が、図8に図示されるように人工ニューラルネットワークに入力される。人工ニューラルネットワーク(ANN)の訓練は、経時変化を伴う種々のレーザ出力と、生じた焦点変位に関する情報との入力を要する。この情報は、実験の章において後に示されるように、対応する測定計器によりビームの火線を測定することにより取得することが可能である。
【0104】
印加されるレーザ出力と発生する焦点変位との間の関係性が確立されると、印加されるレーザ出力および他のシステムパラメータに従ってカメラレンズのゼロポイントまたはゼロオフセットを設定することが可能となる。それにより、その後、画像鮮明度に基づく制御ループが、加工ヘッドと光学ユニットとの間の距離の高速変化に応答し、フォーカシング光学ユニットに対するレンズ加熱の影響に応答する。この場合に、人工ニューラルネットワークの使用は、長期的なエラーを最小限に抑えることを目的としている。
【0105】
次に、実験結果を示す。
【0106】
第1の実験は、制御システムの様々な構成要素の性能および特性を評価するために実施した。図示される鮮明度測定技術の解析は、最も適するアルゴリズムを決定するために実施した。第2の実験セットは、種々のレーザ溶接ヘッドについての焦点変位に関する一般的情報を得るために実施した。
【0107】
熱的レンズ効果の最も明白な効果は、焦点シフトまたは焦点変位である。これらは、焦点面とフォーカシング光学ユニットとの間の距離を縮小させる。この効果のシミュレーションは、プロセス中のレーザ溶接ヘッドのz軸に沿った調節により達成することが可能であり、そのため、ビーム焦点と工作物表面との間の相対位置の変化がもたらされる。これは、プロセス中に様々な溶接結果を得るための出力密度の変動を包含する。
【0108】
この実験に関して、0.7mm軟質鋼プレートの30cm重ね溶接において、開始時には工作物が溶接ヘッドに対して過度に近くなり、プロセスの終了時には工作物が溶接ヘッドに対して過度に遠くなるように、−5mm〜+5mmの変位を生じさせた。200fpsのフレームレートおよび192×256画素の分解能を有する同軸CMOSカメラにより、この実験の動画を記録した。図9に図示されるように、外部カメラにより、光学プロセス発光の画像を記録した。初めは、大きな被加熱区域およびフレーム状プロセス発光をもたらす十分な溶け込みが達成されなかった。距離が大きくなるにつれ、出力密度が上昇し、下降される工作物の下方に火花の雨が現れることにより観察可能な、完全な溶け込み事象がもたらされる。+5mmの変位は、十分な結果は得られないが、完全な溶け込みプロセスを妨げない。溶接シームの後の解析により、1.5cmのみに対して許容可能な品質を得ることが可能であることが判明した。
【0109】
1.5cmの移動距離によるこの溶接プロセスの際に、0.5mmの焦点のシフトを生じさせた。その結果、距離制御からなる精度要件は、0.25mmまたはそれよりも良好なものとなる。
【0110】
図示される3つの原理の全てにより、記録された各画像フレームについて鮮明度評価を実施した。これらのアルゴリズムの結果を、10フレームにわたり正規化し、平滑化して、高周波ノイズを回避した。図10は、結果的に得られた曲線を示す。3つの全ての関数が、異なる最大値を有し、そのためこれらは全て、0.5mm未満のz軸オフセットの範囲内に位置することが、確定される。FFTの結果とSMDの結果との比較も、同様の特性を示すが、極大値が、SMDの結果におけるものよりも低い程度で強調される。テネングラッド関数は、FFT方法およびSMD方法よりも低い変動を示し、そのためこの関数は、作製された同他にとって最も良く適する関数となる。
【0111】
次に、焦点変位の測定を説明する。
【0112】
種々の光学構成に関してレーザビームを解析することにより、発生する焦点遠位の深い理解を得た。この例では、Primes FocusMonitorによりビーム火線をモニタリングした。このPrimes FocusMonitorは、焦点に対して様々な距離を有するビームでサンプルを貫通する際の出力密度を測定する。この測定を繰り返すことにより、一定のレーザ出力または変動するレーザ出力についてのビームの変化を解析することが可能となる。次いで、それらの結果を使用して、人工ニューラルネットワークを訓練することが可能となる。実験プロセスは、様々なレーザ出力および時間間隔についての複数の測定からなり、実験1〜実験7における印加レーザ出力は、1kW、2kW、4kW、6kW、6kW、6kW、6kWに等しく、それらにそれぞれ対応する開始後の時間は、0分、0分、0分、0分、5分、10分、20分であった。
【0113】
測定構成は、6kWファイバレーザ、400μmの直径を有するファイバ、ならびに3つの異なる光学ユニット、すなわち光学ユニット1(fcol約150mm、ffoc約250mm)、光学ユニット2(fcol約150mm、ffoc約250mm)、および光学ユニット3(fcol約125mm、ffoc約200mm)から構成した。実験プロセスは、光学ユニット1および光学ユニット2については3回実施し、光学ユニット3については1回実施した。
【0114】
図11は、Δz/zRFの平均化されたプロファイルを示す。実験1について測定された変位は、初期焦点位置fF(0)にて生じた。上昇したレーザ出力に関する焦点変位の増大は、明確に認められるものである。実験2〜実験4における変位(レーザ出力におけるそれぞれ2kWの上昇)は、レーザ出力との間に事実上の線形関係を呈する。実験4〜実験7の例では(6kWの一定のレーザ出力)、変位は、10分後に約1mmに収束するように見える。その結果、制御について数分の範囲の時定数を考慮することが必要となる。これらの特性は、さらに以下で説明されるように、システム理論の従来的な要素により、または人工ニューラルネットワークの形態でモデル化されることにより、焦点変位の推定値を計算することが可能となる。
【0115】
レイリー長zRFは、光学ユニット1および光学ユニット2については7.3mmに近く、光学ユニット3については6.6mmに近く、これらは、高いレーザ出力では0.5mm超の絶対焦点変位をもたらすものであった。したがって、結果的に得られる生産エラーを最小限に抑えるために、制御システムが適切なものとなり得る。
【0116】
次に、本発明によれば特に好ましい人工ニューラルネットワークによる焦点変位の推定を説明する。
【0117】
測定された焦点変位を理解することにより、印加レーザ出力に依拠する態様において焦点変位のモデリングが可能となる。これは、非線形システムにおける人工ニューラルネットワークの初期試験にとって適切なものとなる。以下の関数関係が、実験により求められた。
【数18】
【0118】
これは、前章の試験された光学ユニットと同一の態様で、上昇するおよび一定状態のレーザ出力に応答する。10分間にわたり連続して印加されるレーザ出力(1kW、2kW、4kW、6kW)による試験は、それぞれの例において、図12に図示されるような焦点変位推定値となった。レーザ出力の変化により、焦点距離が即座に変化したが、一定値に達するまでには10分を要した。
【0119】
次のプロセスの際に、上記に示した公式から得られた入力データおよび出力データにより、人工ニューラルネットワークを訓練した。
【数19】
は、入力となり、Δfは、出力となる。前述の実験におけるものと同一のレーザ出力を使用して試験を実施した。図12は、人工ニューラルネットワークにより、経験モデルにおける結果と非常に類似の結果がもたらされることを示す。したがって、人工ニューラルネットワークの利用は、本発明によれば非線形システムのシミュレーションに非常に適すると考えることが可能となる。
【0120】
現実の環境において使用するためには、後に制御されることとなる加工ヘッドに関して生じた、検出された焦点変位測定値の訓練特徴を求めることが必要となる。この場合には、実施された焦点変位測定の回数により、十分な結果を実現することは不可能である。なぜならば、人工ニューラルネットワーク全体の訓練が、数個のサンプルに限定されることとなるからである。
【0121】
次に、もたらされた結果から導かれる結論を示す。
【0122】
レーザ溶接ヘッドの焦点変位または焦点シフトは、不十分な溶接結果をもたらす恐れがあり、したがって、高いレーザ出力によっても均一な品質基準を実現するために、焦点変位補償機構が必要となる。
【0123】
鮮明度確認アルゴリズムによるカメラ固有光学系および他の画像加工の継続的制御により、工作物に対する距離が正確であるか否か、およびz軸をどのように調節すべきかを判定することが可能となった。テネングラッド鮮明度評価技術は、本発明による最も有用な結果を示した。
【0124】
3つの異なる加工ヘッドの場合における焦点変位の実験的測定により、4kW超の印加レーザ出力の場合における補償が、焦点変位が0.6mmまでに限定されるように意図される場合には必要であることが判明した。これらの実験に基づき、人工ニューラルネットワークのための訓練データソースとして役立つ焦点変位の経験モデルを設計した。さらなるシミュレーションにより、本発明によれば、人工ニューラルネットワークを使用して非線形システム関係を調整することが可能であることが確認された。
【0125】
さらなる研究は、例えば可制御性カメラ光学系および高精度z軸調節装置などのハードウェアの展開を目的とする。さらに、光学収差の影響が、低減されるように意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工レーザビーム(108)により工作物を加工するためのレーザ加工ヘッド(100)であって、
カメラ(102)であって、撮像光学ユニット(116)がビーム経路内において前記カメラ(102)の上流に配置され、前記加工レーザビーム(108)により加工される前記工作物の加工領域を監視する役割を果たす、カメラ(102)と、
工作物表面(104)の上に、または前記工作物表面(104)に対して規定された位置の上に、前記加工レーザビーム(108)の焦点を合わせるためのフォーカシング光学ユニット(114)と、
前記集束レンズ(114)の焦点の変位が生じた場合にカメラ画像の焦点を再度合わせるために必要な光学軸の方向における前記撮像光学ユニット(116)の調節移動量(ΔdKL)を用いて、前記工作物表面(104)に対するまたは前記工作物表面(104)に対して規定された位置に対する前記フォーカシング光学ユニット(114)の焦点変位を補償する補正調節移動量(ΔzOS、ΔzB)を計算するように設計された、評価ユニット(122)と
を備えることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、照明デバイスをさらに備え、前記照明デバイスからの光が、ビームスプリッタにより前記レーザ加工ビーム(108)の前記ビーム経路へと同軸方向に結合されて、前記工作物の前記加工領域を照明することを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記カメラ(102)は、画像を取得するために高ダイナミックレンジ(HDR)方法を利用するように設計されることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項4】
前記請求項のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、前記カメラ画像の焦点を再度合わせるために必要な前記光学軸の方向における前記撮像光学ユニット(116)の前記調節移動量(ΔdKL)を決定するために、分散法、加算係数差(SMD)法、信号出力(SP)方法、フーリエ解析方法、ラプラス演算子もしくはラプラスフォーカシング関数方法、または特徴ポイントもしくは対象の追跡方法によるフォーカシングを含む、画像鮮明度を確認するための方法を利用するように設計されていることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項5】
前記請求項のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、前記撮像光学ユニット(116)の前記調節移動量(ΔdKL)から前記フォーカシング光学ユニット(114)の前記補正調節移動量(ΔzOS、ΔzB)を計算する際に、監視システムの波長および使用される加工レーザ光の波長が異なることによる前記撮像光学ユニット(116)のおよび前記フォーカシング光学ユニット(114)のフォーカシング差を前記計算に含むように設計されることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項6】
前記請求項のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記工作物の加工表面(104)または前記光学系の可動部分に対する前記レーザ加工ヘッド(100)の位置を調整して、前記補正調節距離(ΔzOS、ΔzB)だけ移動させることにより、前記フォーカシング光学ユニット(114)の焦点変位を補償する、アクチュエータシステムをさらに備えることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、前記アクチュエータシステムにより、補正調節移動量(ΔzOS、ΔzB)だけ移動させることによって前記フォーカシング光学ユニット(114)の焦点の位置を直接的に制御するように設計されることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、前記レーザビーム(108)の作用焦点が前記工作物表面(104)の上にまたは前記工作物表面(104)に対して規定された位置に常に位置するように、学習プロセスにより、加工時間または加工状況に応じて前記フォーカシング光学ユニット(114)の調節を制御する認知システムをさらに有することを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記カメラ(102)に加えて少なくとも1つのセンサユニット(124)をさらに備え、前記評価ユニット(122)は、前記カメラ(102)の信号および前記少なくとも1つの追加的なセンサユニット(124)の信号に基づき、前記工作物の前記加工表面(104)に対する前記フォーカシング光学ユニット(114)の調節を調整または制御するように設計されることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項10】
請求項9に記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、少なくとも1つのセンサユニット(118、120、124)が、少なくとも1つのマイクロフォンもしくは固体伝播音響センサ、少なくとも1つの追加のカメラ、少なくとも1つのフォトダイオード、技術評価信号およびモニタリング信号を検出するためのプローブおよびセンサ、ならびにさらにはレーザ出力などのアクチュエータシステムパラメータであることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項11】
請求項8から10のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、対応する光学ユニットの温度を検出するために、前記フォーカシング光学ユニット(114)に温度センサ(118)を、および/またはコリメータ光学ユニット(106)に温度センサ(120)をさらに備えることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項12】
請求項11に記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、前記温度センサ(120)により検出された前記コリメータ光学ユニット(106)の温度を学習プロセスに入力して、前記加工時間または前記加工状況に応じて前記フォーカシング光学ユニット(114)の調節を制御するように設計されていることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項13】
請求項8から12のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、前記加工時間または前記加工状況に応じて前記フォーカシング光学ユニット(114)を調節するために、学習プロセスに時間間隔(Δt)、レーザ出力(PL)、漸進モデル(M)、または認知経験値(COG)を含むようにさらに設計されていることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項14】
請求項8から13のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、少なくとも1つのセンサ(124)の信号に基づき前記フォーカシング光学ユニット(114)の調節移動量(ΔzOS、ΔzB)を調整または制御するために、サポートベクターマシン、サポートベクター分類、ファジー理論、情報ファジーネットワーク、ファジーK−最近傍分類器、K−最近傍分類器、強化学習、ベイジアンネットワークおよびベイジアン知識データベース、naiveベイジアン分類器、隠れマルコフ連鎖、人工ニューラルネットワークおよび逆伝播法、回帰分析、遺伝子プログラミング、または決定木などの、分類アルゴリズムまたは自己学習アルゴリズムを使用するように設計されることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項15】
前記請求項のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)における焦点位置の変化を補償するための方法であって、
工作物に対する溶接プロセスまたは切削プロセスを実施するために、前記工作物の上に前記加工レーザビーム(108)の焦点を合わせるステップと、
加工表面(104)の上の加工ラインに沿って前記加工レーザビーム(108)の焦点を移動させるステップであって、前記フォーカシング光学ユニット(114)と前記工作物の前記加工表面(104)との間の距離が、一定に維持される、ステップと、
補正調節移動量(ΔzOS、ΔzB)によりフォーカシング光学ユニット(114)と前記工作物の加工表面(104)との間の距離を調節することによって、前記フォーカシング光学ユニット(114)の焦点変位を補償するステップであって、前記フォーカシング光学ユニット(114)の前記補正調節移動量(ΔzOS、ΔzB)は、前記集束レンズ(114)の焦点の変位が生じた場合に前記カメラ(102)のカメラ画像の焦点を再度合わせるために必要な、前記光学軸の方向における前記撮像光学ユニット(116)の調節移動量(ΔdKL)によって計算される、ステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記フォーカシング光学ユニット(114)の前記調節移動量(ΔzOS、ΔzB)を計算するために、前記加工レーザビーム(108)の作用焦点が前記工作物表面(104)の上にまたは前記工作物表面(104)に対して規定された位置に常に位置するように、学習プロセスにより、加工時間または加工状況に応じて前記フォーカシング光学ユニット(114)の調節を制御する認知システムをさらに使用することを特徴とする、方法。
【請求項1】
加工レーザビーム(108)により工作物を加工するためのレーザ加工ヘッド(100)であって、
カメラ(102)であって、撮像光学ユニット(116)がビーム経路内において前記カメラ(102)の上流に配置され、前記加工レーザビーム(108)により加工される前記工作物の加工領域を監視する役割を果たす、カメラ(102)と、
工作物表面(104)の上に、または前記工作物表面(104)に対して規定された位置の上に、前記加工レーザビーム(108)の焦点を合わせるためのフォーカシング光学ユニット(114)と、
前記集束レンズ(114)の焦点の変位が生じた場合にカメラ画像の焦点を再度合わせるために必要な光学軸の方向における前記撮像光学ユニット(116)の調節移動量(ΔdKL)を用いて、前記工作物表面(104)に対するまたは前記工作物表面(104)に対して規定された位置に対する前記フォーカシング光学ユニット(114)の焦点変位を補償する補正調節移動量(ΔzOS、ΔzB)を計算するように設計された、評価ユニット(122)と
を備えることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、照明デバイスをさらに備え、前記照明デバイスからの光が、ビームスプリッタにより前記レーザ加工ビーム(108)の前記ビーム経路へと同軸方向に結合されて、前記工作物の前記加工領域を照明することを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記カメラ(102)は、画像を取得するために高ダイナミックレンジ(HDR)方法を利用するように設計されることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項4】
前記請求項のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、前記カメラ画像の焦点を再度合わせるために必要な前記光学軸の方向における前記撮像光学ユニット(116)の前記調節移動量(ΔdKL)を決定するために、分散法、加算係数差(SMD)法、信号出力(SP)方法、フーリエ解析方法、ラプラス演算子もしくはラプラスフォーカシング関数方法、または特徴ポイントもしくは対象の追跡方法によるフォーカシングを含む、画像鮮明度を確認するための方法を利用するように設計されていることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項5】
前記請求項のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、前記撮像光学ユニット(116)の前記調節移動量(ΔdKL)から前記フォーカシング光学ユニット(114)の前記補正調節移動量(ΔzOS、ΔzB)を計算する際に、監視システムの波長および使用される加工レーザ光の波長が異なることによる前記撮像光学ユニット(116)のおよび前記フォーカシング光学ユニット(114)のフォーカシング差を前記計算に含むように設計されることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項6】
前記請求項のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記工作物の加工表面(104)または前記光学系の可動部分に対する前記レーザ加工ヘッド(100)の位置を調整して、前記補正調節距離(ΔzOS、ΔzB)だけ移動させることにより、前記フォーカシング光学ユニット(114)の焦点変位を補償する、アクチュエータシステムをさらに備えることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、前記アクチュエータシステムにより、補正調節移動量(ΔzOS、ΔzB)だけ移動させることによって前記フォーカシング光学ユニット(114)の焦点の位置を直接的に制御するように設計されることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、前記レーザビーム(108)の作用焦点が前記工作物表面(104)の上にまたは前記工作物表面(104)に対して規定された位置に常に位置するように、学習プロセスにより、加工時間または加工状況に応じて前記フォーカシング光学ユニット(114)の調節を制御する認知システムをさらに有することを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記カメラ(102)に加えて少なくとも1つのセンサユニット(124)をさらに備え、前記評価ユニット(122)は、前記カメラ(102)の信号および前記少なくとも1つの追加的なセンサユニット(124)の信号に基づき、前記工作物の前記加工表面(104)に対する前記フォーカシング光学ユニット(114)の調節を調整または制御するように設計されることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項10】
請求項9に記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、少なくとも1つのセンサユニット(118、120、124)が、少なくとも1つのマイクロフォンもしくは固体伝播音響センサ、少なくとも1つの追加のカメラ、少なくとも1つのフォトダイオード、技術評価信号およびモニタリング信号を検出するためのプローブおよびセンサ、ならびにさらにはレーザ出力などのアクチュエータシステムパラメータであることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項11】
請求項8から10のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、対応する光学ユニットの温度を検出するために、前記フォーカシング光学ユニット(114)に温度センサ(118)を、および/またはコリメータ光学ユニット(106)に温度センサ(120)をさらに備えることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項12】
請求項11に記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、前記温度センサ(120)により検出された前記コリメータ光学ユニット(106)の温度を学習プロセスに入力して、前記加工時間または前記加工状況に応じて前記フォーカシング光学ユニット(114)の調節を制御するように設計されていることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項13】
請求項8から12のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、前記加工時間または前記加工状況に応じて前記フォーカシング光学ユニット(114)を調節するために、学習プロセスに時間間隔(Δt)、レーザ出力(PL)、漸進モデル(M)、または認知経験値(COG)を含むようにさらに設計されていることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項14】
請求項8から13のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)であって、前記評価ユニット(122)は、少なくとも1つのセンサ(124)の信号に基づき前記フォーカシング光学ユニット(114)の調節移動量(ΔzOS、ΔzB)を調整または制御するために、サポートベクターマシン、サポートベクター分類、ファジー理論、情報ファジーネットワーク、ファジーK−最近傍分類器、K−最近傍分類器、強化学習、ベイジアンネットワークおよびベイジアン知識データベース、naiveベイジアン分類器、隠れマルコフ連鎖、人工ニューラルネットワークおよび逆伝播法、回帰分析、遺伝子プログラミング、または決定木などの、分類アルゴリズムまたは自己学習アルゴリズムを使用するように設計されることを特徴とする、レーザ加工ヘッド(100)。
【請求項15】
前記請求項のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド(100)における焦点位置の変化を補償するための方法であって、
工作物に対する溶接プロセスまたは切削プロセスを実施するために、前記工作物の上に前記加工レーザビーム(108)の焦点を合わせるステップと、
加工表面(104)の上の加工ラインに沿って前記加工レーザビーム(108)の焦点を移動させるステップであって、前記フォーカシング光学ユニット(114)と前記工作物の前記加工表面(104)との間の距離が、一定に維持される、ステップと、
補正調節移動量(ΔzOS、ΔzB)によりフォーカシング光学ユニット(114)と前記工作物の加工表面(104)との間の距離を調節することによって、前記フォーカシング光学ユニット(114)の焦点変位を補償するステップであって、前記フォーカシング光学ユニット(114)の前記補正調節移動量(ΔzOS、ΔzB)は、前記集束レンズ(114)の焦点の変位が生じた場合に前記カメラ(102)のカメラ画像の焦点を再度合わせるために必要な、前記光学軸の方向における前記撮像光学ユニット(116)の調節移動量(ΔdKL)によって計算される、ステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記フォーカシング光学ユニット(114)の前記調節移動量(ΔzOS、ΔzB)を計算するために、前記加工レーザビーム(108)の作用焦点が前記工作物表面(104)の上にまたは前記工作物表面(104)に対して規定された位置に常に位置するように、学習プロセスにより、加工時間または加工状況に応じて前記フォーカシング光学ユニット(114)の調節を制御する認知システムをさらに使用することを特徴とする、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−533434(P2012−533434A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520945(P2012−520945)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004437
【国際公開番号】WO2011/009594
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(594127592)
【出願人】(511124932)プレシテック アイテーエム ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004437
【国際公開番号】WO2011/009594
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(594127592)
【出願人】(511124932)プレシテック アイテーエム ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
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