説明

レーザ加工位置アライメント方法、レーザ加工方法、及びレーザ加工装置並びにソーラパネル製造方法

【課題】ワーク上にアライメントマークを設けることなく複数の加工線同士が重なったり交差しないように加工を行なうことができるようにする。
【解決手段】レーザ光による最初の加工処理が終了した時点で、その加工処理によって形成された形状変化部分(スクライブ線P1)を含む箇所の画像を取得し、その画像を次回以降の加工(スクライブ線P2,P3)の処理前の加工位置アライメント処理に利用するようにした。また、ワークの形状変化部分を含む複数箇所の画像を取得し、取得された複数箇所の画像に基づいてアライメント処理を行なうことで、画像認識処理が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の薄膜等をレーザ光を用いて加工するレーザ加工位置アライメント方法、レーザ加工方法、及びレーザ加工装置並びにソーラパネル製造方法に係り、特に基板上のアライメントマークを使用する事なく、正確に加工を行なうことのできるレーザ加工位置アライメント方法、レーザ加工方法、及びレーザ加工装置並びにソーラパネル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソーラパネル製造工程では、透光性基板(ガラス基板)上に透明電極層、半導体層、金属層を順次形成し、形成後の各工程で各層をレーザ光を用いて短冊状に加工してソーラパネルモジュールを完成している。これらの各工程を行なう際に、ガラス基板をレーザ加工装置内に正確にアライメントしなければならない。ガラス基板をアライメントする方法については、特許文献1に記載のようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−353816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものは、レーザ光でガラス基板の隅にアライメントマークを形成し、このアライメントマークを参照してアライメント処理を行なっている。パネルを製造する場合、ガラス基板上の薄膜に例えば約10mmピッチで加工線が形成され、この加工線の線幅は約30μmで、線と線の間隔は約30μmとなるような3本の線で構成されている。基板加工装置は、基板をエア浮上やローラ等を用いて搬送させながらレーザ光を照射しアライメントマーク間に直線的な加工線を形成している。ところが、ガラス基板の大型化(例えば、1400[mm]×1100[mm])に伴い、搬送時に基板自身の歪みや捩じれ(うねり等)によって加工線が曲がってしまって、直線的な加工線を形成することが困難となり、最悪の場合、隣り合う加工線同士が重なったり交差してしまうという問題があった。また、特許文献1のようにガラス基板上にアライメントマークを形成した場合、その部分をソーラモジュールとして利用することができなくなるため、ソーラパネルの高効率化という観点からも問題であった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、基板上にアライメントマークを設けなくても、複数の加工線同士が重なったり交差しないようにレーザ加工を行なうことのできるレーザ加工位置アライメント方法、レーザ加工方法、及びレーザ加工装置並びにソーラパネル製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレーザ加工位置アライメント方法の第1の特徴は、レーザ光をワークに対して相対的に移動させながら照射して前記ワークに所定のレーザ加工を施す際に、前記ワークを前記レーザ加工の所定位置にアライメント処理するレーザ加工位置アライメント方法であって、前記レーザ光による2回目以降の加工において、前記レーザ加工によって形成された前記ワークの形状変化部分を含む箇所の画像に基づいて、前記アライメント処理を行なうことにある。
ワークにレーザ光を照射する加工処理としては、透光性ワーク(ガラス基板)上に金属層、半導体層、透明電極層を順次形成し、形成後の各工程で各層をレーザ光を用いて短冊状に加工してソーラパネルを作成するソーラパネル製造などが該当する。このようなソーラパネルを作成するようなレーザ加工においては、各工程でアライメント処理が行なわれる。この発明では、ワークにレーザ光を照射する加工処理を施す際に、最初の加工線の画像を取得し、2回目以降の加工処理を施す際は前記画像に基づいて前記レーザ加工時のアライメント処理を行なうようにした。例えば、ソーラパネル製造の場合、レーザ光を照射した最初の加工処理によって形成された加工線P1の画像を取得し、取得した画像に基づいて2回目以降のレーザ加工処理の前に加工位置のアライメント処理を行なうようにした。取得した画像の中には最初の加工線P1の加工位置変化部分の画像を含んでいるので、この画像に基づいてアライメント処理を行なうことによって、ワーク上にアライメントマークを設けることなく複数の加工線P1〜P3同士が重なったり交差しないようにレーザ加工を行なうことができる。
【0007】
本発明に係るレーザ加工位置アライメント方法の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載のレーザ加工位置アライメント方法において、前記ワークの形状変化部分を含む複数箇所の画像を取得し、前記取得された複数箇所の画像に基づいて前記アライメント処理を行なうことにある。この発明は、ワークの形状変化部分を含む複数箇所の画像を取得しているので画像認識処理が容易となるという効果がある。
【0008】
本発明に係るレーザ加工位置アライメント方法の第3の特徴は、前記第1の特徴に記載のレーザ加工位置アライメント方法において、前記ワークの形状変化部分に倣って前記レーザ光による2回目以降のレーザ加工処理を行なうことにある。この発明は、最初のレーザ加工によってワーク上に形成された形状変化部分(スキライブ線P1)をトラッキング等に方法によって検出しながら倣い加工を行なう。これによって、2回目以降のレーザ加工によって形成されるスクライブ線P2,P3は、スクライブ線P1と常にその間隔を一定とすることができ、複数の加工線同士は重なったり交差することがないので、最適なレーザ加工を行なうことができる。
【0009】
本発明に係るレーザ加工方法の第1の特徴は、レーザ光をワークに対して相対的に移動させながら照射することによってワークに所定の加工を施すレーザ加工方法であって、前記レーザ光による2回目以降の加工において、前記レーザ加工によって形成された前記ワークの形状変化部分を含む箇所の画像に基づいて前記レーザ加工処理を施す際のアライメント処理を行なうことにある。これは、前述の第1の特徴に記載のレーザ加工位置アライメント方法を用いたレーザ加工方法の発明である。
【0010】
本発明に係るレーザ加工方法の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載のレーザ加工方法において、前記ワークの形状変化部分を含む複数箇所の画像を取得し、前記取得された複数箇所の画像に基づいて前記アライメント処理を行なうことにある。これは、前述の第2の特徴に記載のレーザ加工位置アライメント方法を用いたレーザ加工方法の発明である。
【0011】
本発明に係るレーザ加工方法の第3の特徴は、前記第1の特徴に記載のレーザ加工方法において、前記ワークの形状変化部分に倣って前記レーザ光による2回目以降のレーザ加工処理を行なうことにある。これは、前述の第3の特徴に記載のレーザ加工位置アライメント方法を用いたレーザ加工方法の発明である。
【0012】
本発明に係るレーザ加工装置の第1の特徴は、ワークを保持する保持手段と、前記ワークにレーザ光を照射して所定の加工処理を施すレーザ光照射手段と、前記レーザ光照射手段による加工処理によって形成された前記ワークの形状変化部分を含む箇所の画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段によって取得された前記画像に基づいて2回目以降のレーザ加工処理を施す際のアライメント処理を制御する制御手段とを備えたことにある。これは、前述の第1の特徴に記載のレーザ加工方法に対応したレーザ加工装置の発明である。
【0013】
本発明に係るレーザ加工装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載のレーザ加工装置において、前記画像取得手段が、前記ワークの形状変化部分を含む複数箇所の画像を取得し、前記制御手段が、前記画像取得手段によって取得された前記画像を補正処理し、補正処理された画像に基づいて前記アライメント処理を制御することにある。これは、前述の第2の特徴に記載のレーザ加工方法に対応したレーザ加工装置の発明である。
【0014】
本発明に係るレーザ加工装置の第3の特徴は、前記第1の特徴に記載のレーザ加工装置において、前記制御手段が、前記ワークの形状変化部分に倣って前記レーザ光による2回目以降のレーザ加工処理を行なうことにある。これは、前述の第3の特徴に記載のレーザ加工方法に対応したレーザ加工装置の発明である。
【0015】
本発明に係るソーラパネル製造方法の特徴は、前記第1、第2若しくは第3の特徴に記載のレーザ加工位置アライメント方法、前記第1、第2若しくは第3の特徴に記載のレーザ加工方法、又は前記第1、第2若しくは第3の特徴に記載のレーザ加工装置を用いて、ソーラパネルを製造することにある。これは、前述のレーザ加工位置アライメント方法、レーザ加工方法、又はレーザ加工装置のいずれか1を用いて、ソーラパネルを製造するようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板上にアライメントマークを設けることなく複数の加工線同士が重なったり交差しないように加工することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す図である。
【図2】スクライブ線の加工処理を行う図1の加工エリア部の詳細構成を示す図である。
【図3】図2の光学系部材の詳細構成を示す図である。
【図4】図3のフォーカス調整用駆動機構の詳細構成を示す断面図である。
【図5】図3のフォーカス調整用駆動機構の一部分を抜き出して示した斜視図である。
【図6】アライメントカメラ装置、第1検出光学系部材及び第2検出光学系部材の構成を示す模式図である。
【図7】ワークであるガラス基板の歪みや捩じれ(うねり等)によって加工線が曲がって形成された場合を示す図である。
【図8】図2の制御装置の処理の詳細を示すブロック図である。
【図9】図8のパルス抜け判定手段の動作の一例を示す図である。
【図10】図4の高速フォトダイオードから出力される波形の一例を示す図である。
【図11】図8の加工線検出手段の動作の一例を示す図である。
【図12】グレーティングを用いて加工線P1をトラッキングする方式の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す図である。このレーザ加工装置は、ソーラパネル製造装置のレーザ光加工処理(レーザスクライブ)工程を行なうものである。本発明に係るレーザ加工装置は、アライメント処理を行うアライメント部をレーザ加工ステーションの両側2箇所に設けて、レーザ加工処理中に同時にアライメント処理を行い、待ち時間を短縮できるように構成されたものである。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係るレーザ加工装置を用いたソーラパネル(光電変換装置)製造装置の概略構成を示す図であり、リターン方式の一例を示す図である。この製造装置は、搬入出ロボットステーション141とレーザ加工ステーション10とから構成される。ローラコンベア121は、成膜装置(図示せず)やレーザスクライブ加工処理を行う製造装置間でガラス基板1x〜1zを順次搬送するものである。搬入出ロボットステーション141は、ローラコンベア121上を搬送される前段の成膜装置(図示せず)にて成膜されたガラス基板1xを搬入してガラス基板1mとして一時的に保持すると共にガラス基板1mの表裏を反転する表裏反転機構部143を備えており、レーザ加工処理の内容(スクライブ線P1加工、P2加工又はP3加工)及びガラス基板1mが下に凸の曲がり(反り)となるように、ガラス基板1mを表裏反転してレーザ加工ステーション10に搬送する。このとき、搬入出ロボットステーション141は、表裏反転された又は表裏反転されなかったガラス基板1mをそのままレーザ加工ステーション10に搬送すると共に表裏反転された又は表裏反転されなかったガラス基板1mをレーザ加工ステーション10の右端位置までローラ搬送してからレーザ加工ステーション10に搬送するように構成されている。また、搬入出ロボットステーション141は、レーザ加工ステーション10で加工されたガラス基板を表裏反転機構部143で直接受取るか又はレーザ加工ステーション10の右端位置で受け取ったガラス基板1rを表裏反転機構部143までローラ搬送又はエア浮上搬送し、表裏反転機構部143でレーザ加工処理後のガラス基板を表裏反転して又は表裏反転せずにローラコンベア121に搬出する。
【0020】
レーザ加工ステーション10は、搬入出ロボットステーション141から搬入されたガラス基板上の薄膜にスクライブ線を形成するものであり、アライメント部102,104、グリッパ部106〜109、グリッパ支持駆動部110,111、加工エリア部112を備えている。アライメント部102は、搬入出ロボットステーション141の表裏反転機構部143上のガラス基板1mを受取り、受け取ったガラス基板1nを所定の位置にアライメント処理すると共に加工エリア部112でスクライブ加工処理の施されたガラス基板1nを搬入出ロボットステーション141の表裏反転機構部143に搬出する。一方、アライメント部104は、搬入出ロボットステーション141の表裏反転機構部143で表裏反転された又は表裏反転されなかったガラス基板であって右端までローラ搬送又はエア浮上搬送されたガラス基板1rを受取り、受け取ったガラス基板を所定の位置にアライメント処理すると共に加工エリア部112でスクライブ加工処理の施されたガラス基板1qを搬入出ロボットステーション141の右端の位置に搬出する。
【0021】
グリッパ部106は、アライメント部102でアライメント処理されたガラス基板1oの搬送方向に沿った辺の一方側(図1におけるガラス基板1oの下辺側)保持し、グリッパ部107は、同じガラス基板1oの搬送方向に沿った辺の他方側(図1におけるガラス基板1oの上辺側)を保持する。グリッパ部108は、アライメント部104でアライメント処理されたガラス基板1qの搬送方向に沿った辺の一方側(図1におけるガラス基板1qの下辺側)を保持し、グリッパ部107は、同じガラス基板1qの搬送方向に沿った辺の他方側(図1におけるガラス基板1qの上辺側)を保持する。グリッパ支持駆動部110,111は、グリッパ部106,107又はグリッパ部108,109に保持されたガラス基板1o,1qを加工エリア部112のレーザ光に同期させてし、レーザ加工時にガラス基板1oと点線のガラス基板1pとの間を移動させる。この移動に同期させて加工エリア部112は、グリッパ部106,107又はグリッパ部108,109に保持されエア浮上搬送されるガラス基板1o,1qにレーザ光を照射して所定のスクライブ線の加工処理を行う。図1では、グリッパ部106,107に保持されたガラス基板1oを点線で示されたガラス基板1qの位置までエア浮上した状態で移動させながら、所定のスクライブ線加工を行う状態が示してある。
【0022】
図1のリターン方式のソーラパネル製造装置の動作の一例を説明する。まず、前段の成膜装置からローラコンベア121を介して搬送されて来たガラス基板1xは、搬入出ロボットステーション141によって表裏反転機構部143上にガラス基板1mとして一時的に保持され、そこで表裏反転されるか又は表裏反転されない。表裏反転された又は表示反転されなかったガラス基板1mは、レーザ加工ステーション10のアライメント部102に搬送され、そこでアライメント処理される。アライメント処理されたガラス基板1nは、グリッパ部106,107に保持され、ガラス基板1o,1pとして加工エリア部112にエア浮上移動され、所定のスクライブ線の加工処理が行われる。一方、アライメント部102のアライメント処理時及び加工エリア部112の加工処理時に、ローラコンベア121を介して搬送されて来た次のガラス基板1yが搬入出ロボットステーション141によって表裏反転機構部143上にガラス基板1mとして一時的に保持され、そこで表裏反転されるか又は表裏反転されない。表裏反転された又は表裏反転されなかったガラス基板1mは、ガラス基板1rとして、レーザ加工ステーション10のアライメント部104に対応した右端位置までローラ搬送される。ガラス基板1rは、レーザ加工ステーション10のアライメント部104に搬送され、そこでアライメント処理される。アライメント処理されたガラス基板1qは、グリッパ部108,109に保持され、グリッパ部106,107に保持されエア浮上搬送されたガラス基板への加工処理が終了するまで待機される。
【0023】
グリッパ部106,107に保持されているガラス基板に対するレーザ加工処理が終了すると、グリッパ部106,107に保持されているガラス基板1oは、アライメント部102を介してガラス基板1nの位置から表裏反転機構部143上のガラス基板1mとして一時的に保持され、そこで表裏反転されて又は表裏反転されずに次段の成膜装置へ搬送されるために、ローラコンベア121上に搬送される。一方、グリッパ部106,107に保持されているガラス基板1oがアライメント部102上にガラス基板1nとしてエア浮上移動した時点で、グリッパ部108,109に保持されているガラス基板1qがガラス基板1o,1pとして加工エリア部112にエア浮上移動され、所定のスクライブ線の加工処理が行われる。図1のリターン方式のソーラパネル製造装置では、以上の処理を交互に繰り返すことによって、アライメント処理による待ち時間等を大幅に短縮している。また、いずれか一方のアライメント部が故障した場合でも、他方のアライメント部によって処理を続行することが可能となる。この実施の形態では、アライメント部102,104は、ガラス基板にレーザ光を照射する最初のスクライブ線P1加工時のアライメント処理を行い、2回目以降のスクライブ線P2,P3加工時には、後述するアライメントカメラ装置及びフォーカス調整用駆動機構を用いたアライメント処理を行なう。
【0024】
図2は、スクライブ線の加工処理を行う図1の加工エリア部の詳細構成を示す図である。加工エリア部は、レーザ加工ステーション10、エア浮上ステージ20、グリッパ部106,107、レーザ発生装置40、光学系部材50、アライメントカメラ装置60、リニアエンコーダ70、制御装置80及び検出光学系部材等によって構成されている。
【0025】
図1において、レーザ加工ステーション10のX方向に沿った大部分にエア浮上ステージ20が設けられているが、図2では、その一部分のみが示してある。エア浮上ステージ20の上側にはレーザ加工の対象となるガラス基板1がグリッパ部106,107によって、X軸方向に移動可能に保持制御されている。また、レーザ加工ステーション10の上には光学系部材50を保持しながらY軸方向にスライド駆動するスライドフレーム30が設けられている。エア浮上ステージ20は、Z軸を回転軸としてθ方向に回転可能に構成されている。なお、スライドフレーム30によりY軸方向の移動量が十分に確保できる場合には、エア浮上ステージ20は、X軸方向の移動だけを行なう構成であってもよい。この場合、エア浮上ステージ20はX軸テーブルの構成でもよい。また、図2では、アライメント部102,104については図示を省略してある。
【0026】
スライドフレーム30は、レーザ加工ステーション10上の四隅に設けられた移動台に取り付けられている。スライドフレーム30は、この移動台によってY軸方向へ移動制御される。ベース板31と移動台との間には除振部材(図示せず)が設けられている。スライドフレーム30のベース板31には、レーザ発生装置40、光学系部材50及び制御装置80が設置されている。光学系部材50は、ミラーやレンズの組み合わせで構成され、レーザ発生装置40で発生したレーザ光を4系列に分割してエア浮上ステージ20上のガラス基板1上に導くものである。なお、レーザ光の分割数は4系列に限るものではなく、2系列以上であればよい。
【0027】
アライメントカメラ装置60は、2回目以降のスクライブ線P2,P3加工時のアライメント処理を行なうものであり、光学系部材50の側面にレーザ光の分割数に対応した数だけ設けられ、エア浮上ステージ20上であってガラス基板1上の4系列分の加工線(スクライブ線P1及び/又はP2)の画像をそれぞれ取得する。このアライメントカメラ装置60で取得された画像は、制御装置80に出力される。制御装置80は、アライメントカメラ装置60からの画像をガラス基板1の2回目以降のスクライブ線P2,P3加工時のアライメント処理に利用する。
【0028】
リニアエンコーダ70は、エア浮上ステージ20のX軸移動テーブルの側面に設けられたスケール部材と、グリッパ部106,107に取り付けられた検出部で構成される。リニアエンコーダ70の検出信号は、制御装置80に出力される。制御装置80は、リニアエンコーダ70からの検出信号に基づいてグリッパ部106,107のX軸方向の移動速度(移動周波数)を検出し、レーザ発生装置40の出力(レーザ周波数)を制御する。
【0029】
光学系部材50は、図示のように、ベース板31の側面側に設けられており、ベース板31の側面に沿ってY軸方向に移動するように構成されている。光学系部材50は、先端部がZ軸を中心に回転可能となっている。レーザ発生装置40から出射されるレーザ光を光学系部材50に導くためのガルバノミラー33はベース板31上に設けられている。ガルバノミラー33は、2つのモーター(ロータリーエンコーダー)を使用してXZ2次元エリアにレーザー光を走査させるものである。ガルバノミラー33は、2軸式(X,Z)で構成され、2個のモーターと、このモータに取り付けられるミラーとで構成される。ガルバノ制御裝置331は、モータを動かすためのドライバおよび電源、これらを制御するマイクロコンピュータなどで構成される。
【0030】
ミラー34,35は、光学系部材50上に設けられており、光学系部材50のスライド移動に連動するようになっている。レーザ発生装置40から出射されたレーザ光は、ガルバノミラー33によってミラー34へ向かって反射され、ミラー34に向かうレーザ光はミラー34によってミラー35に向かって反射される。ミラー35は、ミラー34からの反射レーザ光をベース板31に設けられた貫通穴を介して光学系部材50内に導く。なお、レーザ発生装置40から出射されたレーザ光は、ベース板31に設けられた貫通穴から光学系部材50に対して上側から導入されるように構成されれば、どのような構成のものであってもよい。例えば、レーザ発生装置40を貫通穴の上側に設け、貫通穴を介して光学系部材50に直接レーザ光を導くようにしてもよい。
【0031】
ビームサンプラ332は、ガルバノミラー33と反射ミラー34との間の光学系部材50上に、光学系部材50のスライド移動と共に移動するように設けられている。ビームサンプラ332はレーザ光の一部(例えば、レーザ光の約1割程度又はそれ以下の光量)をサンプリングして外部に分岐出力する素子である。4分割フォトダイオード333は、ビームサンプラ332で分岐されたレーザ光の一部(サンプリングビーム)を受光面のほぼ中央付近で受光するように配置されている。4分割フォトダイオード333によって検出されたレーザ光の強度に対応した4種類の出力信号がガルバノ制御裝置331に出力される。ガルバノ制御裝置331は、4分割フォトダイオード333からの4種類の出力信号に応じてガルバノミラー33の2個のモータ33xy,33yzをリアルタイムで駆動制御する。モータ33xyは、ガルバノミラー33の反射レーザ光がベース板31の上面(XY平面)と平行な面内で回転移動するように制御し、モータ33zyは、ガルバノミラー33の反射レーザ光がベース板31の上面と直交する面(YZ平面)と平行な面内で回転移動するようにリアルタイムで制御する。
【0032】
図3は、光学系部材50の詳細構成を示す図である。実際の光学系部材50の構成は、複雑であるが、ここでは説明を簡単にするために図示を簡略化して示している。図3は、光学系部材50の内部を図2の−X軸方向から見た図である。図3に示すようにベース板31にはミラー35で反射されたレーザ光を光学系部材50内に導入するための貫通穴37を有する。この貫通穴37の直下には、ガウシアン強度分布のレーザ光をトップハット強度分布のレーザ光に変換する位相型回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)500が設けられている。
【0033】
DOE500によってトップハット強度分布のレーザ光(トップハットビーム)に変換されたレーザ光はハーフミラー511によって反射ビームと透過ビームにそれぞれ分岐され、反射ビームは右方向のハーフミラー512に向かって、透過ビームは下方向の反射ミラー524に向かって進む。ハーフミラー511で反射したビームは、ハーフミラー512によってさらに反射ビームと透過ビームに分岐され、反射ビームは下方向の反射ミラー522に向かって、透過ビームは右方向の反射ミラー521に向かって進む。ハーフミラー512を透過したビームは反射ミラー521によって反射され、下方向の集光レンズ541を介してガラス基板1に照射される。ハーフミラー512で反射したビームは、反射ミラー522,523によって反射され、下方向の集光レンズ542を介してガラス基板1に照射される。ハーフミラー511を透過したビームは、反射ミラー524によって反射され、左方向に向かって進む。反射ミラー524で反射したビームは、ハーフミラー513によって反射ビームと透過ビームに分岐され、反射ビームは下方向の反射ミラー526に向かって、透過ビームは左方向の反射ミラー528に向かって進む。ハーフミラー513で反射したビームは、反射ミラー526,527によって反射され、下方向の集光レンズ543を介してガラス基板1に照射される。ハーフミラー513を透過したビームは反射ミラー528によって反射され、下方向の集光レンズ544を介してガラス基板1に照射される。
【0034】
DOE500によって変換されたトップハットビームは、上述のハーフミラー511〜513及び反射ミラー521〜528によって、透過・反射されて集光レンズ541〜544に導かれる。このとき、DOE500から各集光レンズ541〜544までの光路長は等しくなるように設定されている。すなわち、ハーフミラー511で反射したビームがハーフミラ512を透過して反射ミラー521で反射して集光レンズ541に到達するまでの光路長、ハーフミラー511で反射したビームがハーフミラー512、反射ミラー522,523でそれぞれ反射して集光レンズ542に到達するまでの光路長、ハーフミラー511を透過したビームが反射ミラー523、ハーフミラー513、反射ミラー526,527でそれぞれ反射して集光レンズ543に到達するまでの光路長、ハーフミラー511を透過したビームが反射ミラー523で反射してハーフミラー513を透過して反射ミラー528で反射して集光レンズ544に到達するまでの光路長は、それぞれ等しい距離である。これによって、ビームが分岐される直前にDOE500を配置しても、トップハット強度分布のレーザ光を集光レンズ541〜544に同様に導くことが可能となる。なお、図3の実施例では、光路長が完全に一致する場合について説明したが、レーザ光のトップハット強度分布を維持することが可能な範囲で光路長を若干異ならせることは可能である。
【0035】
シャッター機構531〜534は、光学系部材50の各集光レンズ541〜544から出射されるレーザ光がガラス基板1から外れた場合にレーザ光の出射を遮蔽するものである。測長システム52,54は、図示していない検出光照射用レーザとオートフォーカス用フォトダイオードとから構成され、検出光照射用レーザから照射された光の中でガラス基板1の表面から反射した反射光を受光し、その反射光量に応じて光学系部材50の下端部とガラス基板1の表面との間の距離すなわち光学系部材50の高さを調整する。
【0036】
フォーカス調整用駆動機構46〜49は、ガラス基板1に対する各集光レンズ541〜544の高さ方向(フォーカス)及びY方向(倣い方向)の各制御を個別に行うものである。図4は、図3のフォーカス調整用駆動機構の詳細構成を示す断面図であり、図5は、フォーカス調整用駆動機構の一部分を抜き出して示した斜視図である。図において、フォーカス調整用駆動機構46は、駆動部本体461、駆動部カバー462、マグネット保持部463a〜463d、マグネット464a〜464d、可動部465、垂直駆動力発生コイル群466、水平駆動力発生コイル群467とから構成される。図5において、駆動部本体461は省略してある。
【0037】
図において、可動部465は、集光レンズ541を保持すると共に垂直駆動力発生コイル群466、水平駆動力発生コイル群467,468が巻き回されている。垂直駆動力発生コイル群466は、略正方形状(矩形状)となるように可動部465の下端部に巻き回されている。マグネット保持部463a〜463dは、略コの字形をしており、内側内壁面に直方体形状のマグネット464a〜464dをそれぞれ保持している。図5に示すように、略正方形状に巻き回された垂直駆動力発生コイル群466は、マグネット保持部463a〜463dとマグネット464a〜464dとの間の間隙に挿入され、駆動部本体461内に収納される。一方、水平駆動力発生コイル群467,468は、図5に示すように、可動部465の対向する頂辺同士を結ぶように交差して巻き回され、マグネット保持部463c,463dとマグネット464c,464dとの間の間隙に挿入されている。従って、垂直駆動力発生コイル群466に流れる電流に応じて可動部465は垂直方向(Z方向)に駆動制御され、水平駆動力発生コイル群467,468に流れる電流に応じて可動部465は水平方向(Y方向)に駆動制御される。
【0038】
図4に示すように、駆動部本体461の側面には、エア供給部461a,461bが設けられている。エア供給部461a,461bから供給されるエアはエア流路461c,461dを介して駆動部本体461内に導入される。エア流路461c,461dは、終端部がY字に分岐されており、Y字分岐路の一方であって上斜め方向に向かうものは、可動部465の傾斜部(テーパ部)にエアを吹き付けられるようになっており、Y字分岐路の他方であって水平方向に向かうものは、駆動部本体461内にエアを導入するようになっている。可動部465の傾斜部に吹き付けられるエアによって、可動部465と駆動部本体461との接触が回避され、可動部465の水平方向(Y方向)の移動量も規制される。また可動部465の傾斜部に吹き付けられるエアは、可動部465の初期位置を設定するカウンターバランスとして機能する。一方、駆動部本体461内に導入されるエアは、集光レンズ541の冷却用のエアとして利用される。なお、図示していないが、可動部465の上側四隅には、X方向(図面の前後方向)に延びたスプリング部材が駆動部本体461の内壁面に取り付けられている。このスプリング部材は、可動部465を初期位置に復帰させる復元力を与えるものである。
【0039】
図6は、アライメントカメラ装置、第1検出光学系部材及び第2検出光学系部材の構成を示す模式図である。アライメントカメラ装置60は、前述のように光学系部材50の側面に設けており、ガラス基板1上に施されたスクライブ線P1加工線の画像を取得し、その情報を制御装置80に出力し、各集光レンズ541〜544のフォーカス位置及びY方向位置、すなわち2回目以降のスクライブ線P2,P3加工時のアライメント処理に利用される。
【0040】
図7は、ワークであるガラス基板の歪みや捩じれ(うねり等)によって加工線が曲がって形成される場合の一例を示す図である。最初の加工線となるスクライブ線P1がガラス基板1の歪みや捩じれ(うねり等)によって図7に示すように湾曲(蛇行)した場合、この実施の形態では、スクライブ線P2及びP3は、この最初のスクライブ線P1の湾曲(蛇行)線に倣って加工処理される。この実施の形態では、スクライブ線P1〜P3の幅が約30[μm]、スクライブ線P1−P2間,P2−P3間の間隔は約40[μm]となっており、スクライブ線P1に倣って、スクライブ線P2,P3のレーザ加工が行なわれる。
【0041】
第1検出光学系部材は、レーザ光状態検査用CCDカメラ28から構成される。レーザ光状態検査用CCDカメラ28は、エア浮上ステージ20に形成された間隙部からガラス基板1を介してレーザ光を受光するようになっている。レーザ光状態検査用CCDカメラ28は、エア浮上ステージ20に形成された間隙部からステージ面のガラス基板1の裏面側に位置するように設けられている。レーザ光状態検査用CCDカメラ28は、エア浮上ステージ20の上空側を視認可能に設置されている。レーザ光状態検査用CCDカメラ28によって撮像された映像は、制御装置80に出力される。制御装置80は、各集光レンズ541〜544から出射されるレーザ光のスポット径、形状、出力等が適正であるか否かの判定を行なう。すなわち、レーザ光状態検査用CCDカメラ28は、光学系部材50の各集光レンズ541〜544から出射するレーザ光を直接観察することができるので、これを画像化することによって、制御装置80は、分岐後のレーザ光のそれぞれについて、その加工箇所におけるレーザ光の特性を測定することができる。また、レーザ発生装置40、光学系部材50などのレーザ光に係わる各光学系の交換した時に、交換前と交換後の画像を取得し数値化しておくことによって、交換後のフォーカス及び光軸の調整などを容易に行なうことができる。さらに、各光学へッドから出力される各レーザ光の画像を取得して数値化することによって、各光学ヘッドのバラツキなどを適正に調整することができる。
【0042】
第2検出光学系部材は、ビームサンプラ91,93、高速フォトダイオード94及び光軸検査用CCDカメラ96から構成される。ビームサンプラ91,93は、光学系部材50内に導入されるレーザ光の光路中に設けられている。この実施の形態では、レーザ発生装置40とガルバノミラー33との間に設けられている。ビームサンプラ91,93はレーザ光の一部(例えば、レーザ光の約0.4割程度又はそれ以下の光量)をサンプリングして外部に分岐出力する素子である。高速フォトダイオード94は、ビームサンプラ91で分岐出力されたレーザ光の一部(サンプリングビーム)を受光面のほぼ中央付近で受光するように配置される。高速フォトダイオード94によって検出されたレーザ光の強度に対応した出力信号は、制御装置80に出力される。光軸検査用CCDカメラ96は、ビームサンプラ93で分岐出力されたレーザ光の一部(サンプリングビーム)を受光面のほぼ中央付近で受光するように配置される。光軸検査用CCDカメラ96によって撮像された映像は、制御装置80に出力される。なお、光軸検査用CCDカメラ96は、高速フォトダイオード94に照射されるレーザ光の位置を示す画像を取り込み、その画像を制御装置80に出力するようにしてもよい。
【0043】
制御装置80は、リニアエンコーダ70からの検出信号に基づいてグリッパ部106,107のX軸方向の移動速度(移動周波数)を検出し、レーザ発生装置40の出力(レーザ周波数)を制御し、高速フォトダイオード94及び光軸検査用CCDカメラ96から出力される信号に基づいてレーザ発生装置40から出射されるレーザ光のパルス抜けを検出したり、レーザ光の光軸ずれ量に基づいてレーザ発生装置40の出射条件を制御したり、光学系部材50内のレーザ光を導入するためのガルバノミラー33、反射ミラー34,35の配置等をフィードバック制御する。
【0044】
図8は、図2の制御装置80の処理の詳細を示すブロック図である。制御装置80は、分岐手段81、パルス抜け判定手段82、アラーム発生手段83、基準CCD画像記憶手段84、光軸ずれ量計測手段85、レーザコントローラ86、照射レーザ状態検査手段89、照射レーザ調整手段8A、加工線検出手段8C及び倣い加工調整手段8Eから構成される。
【0045】
分岐手段81は、リニアエンコーダ70の検出信号(クロックパルス)を分岐して後段のレーザコントローラ86に出力する。パルス抜け判定手段82は、高速フォトダイオード94からのレーザ光強度に対応した出力信号(ダイオード出力)と分岐手段81から出力される検出信号(クロックパルス)とを入力し、それに基づいてレーザ光のパルス抜けを判定する。図9は、図8のパルス抜け判定手段82の動作の一例を示す図である。図9において、図9(A)は分岐手段81から出力される検出信号(クロックパルス)の一例、図9(B)は高速フォトダイオード94から出力されるレーザ光強度に対応した出力信号(ダイオード出力)の一例、図9(C)はパルス抜け判定手段82がパルス抜け検出時に出力するアラーム信号の一例をそれぞれ示す。
【0046】
図9に示すように、パルス抜け判定手段82は、分岐手段81からのクロックパルスの立ち下がり時点をトリガ信号として、ダイオード出力値が所定のしきい値Th以上であるか否かの判定を行い、ダイオード出力値がしきい値Thよりも小さい場合には、ハイレベル信号をアラーム発生手段83に出力する。アラーム発生手段83は、パルス抜け判定手段82からの信号がローレベルからハイレベルに変化した時点でパルス抜けが発生したことを示すアラームを外部に報知する。アラームの報知は、画像表示、発音等の種々の方法で行なう。アラームの発生によって、オペレータはパルス抜けが発生したことを認識することができる。また、このアラームが頻繁に発生する場合には、レーザ発生装置の性能が劣化したか又は寿命になったことを意味する。
【0047】
基準CCD画像記憶手段84は、図8に示すような基準CCD画像84aを記憶している。この基準CCD画像84aは、光軸検査用CCDカメラ96の受光面の中央にレーザ光が受光した状態の画像を示すものである。光軸検査用CCDカメラ96からは、図8に示すような被検査画像85aが出力される。光軸ずれ量計測手段85は、光軸検査用CCDカメラ96からの被検査画像85aを取り込み、これと基準CCD画像84aとを比較し、光軸のずれ量を計測し、そのずれ量をレーザコントローラ86に出力する。例えば、図8に示す被検査画像85aのような画像が光軸検査用CCDカメラ96から出力された場合には、光軸ずれ量計測手段85は、両者を比較して、X軸及びY軸方向のずれ量を計測し、それをレーザコントローラ86に出力する。レーザコントローラ86は、被検査画像85aと基準CCD画像84aとが一致するように、レーザ光の光軸に関係する装置、すなわちレーザ発生装置40の出射条件や光学系部材50内にレーザ光を導入するためのガルバノミラー33、反射ミラー34,35の配置等をフィードバックして調整する。
【0048】
照射レーザ状態検査手段89は、レーザ光状態検査用CCDカメラ28からの画像89aを取り込み、これに基づいてレーザ光の特性(スポット径、形状、出力等)を計測し、その計測値を照射レーザ調整手段8Aに出力する。例えば、図8に示すような画像89aがレーザ光状態検査用CCDカメラから出力された場合には、照射レーザ状態検査手段89は、画像89a内の円状の輪郭線89b(集光レンズ541〜544の外縁に対応した線)を基準にフォーカス円89c(画像89a内の小円)の位置を検出し、フォーカス円89cが輪郭線89bのほぼ中央に位置しているか否かに基づいて光軸のX軸及びY軸方向のずれ量を計測し、それを照射レーザ調整手段8Aに出力する。また、照射レーザ状態検査手段89は、フォーカス円89cの大きさ(スポット径・照射面積)を計測し、それも基づいたフォーカス位置を照射レーザ調整手段8Aに出力する。さらに、照射レーザ状態検査手段89は、フォーカス円89cの輝度レベルに基づいたレーザ光出力を照射レーザ調整手段8Aに出力する。照射レーザ調整手段8Aは、照射レーザ状態検査手段89からの光軸のずれ量、フォーカス位置及び光出力に対応した信号に基づいて、光学系部材50内の各ハーフミラー511〜513及び反射ミラー521〜528の配置等をフィードバックして調整したり、レーザコントローラ86を介してレーザ発生装置40の出射条件等を制御する。なお、照射レーザ調整手段8Aを省略して、これらの機能をレーザコントローラ86に持たせるようにしてもよい。
【0049】
上述の実施の形態では、レーザ加工(スクライブ加工)時に光軸ずれ量計測手段85でレーザ光の光軸ずれを、パルス抜け判定手段82でパルス抜けをそれぞれ検査する場合について説明したが、図10に示すように高速フォトダイオード94からの出力波形に基づいてレーザ光のパルス状態を検査するようにしてもよい。例えば、図10では、レーザ光のパルス幅及びパルス高さを計測し、これらに異常が発生した場合にはアラームを発生するようにしてもよい。なお、レーザ光のパルス幅は、高速フォトダイオード94からの出力波形が所定値以上になっている期間が所定の範囲にある場合を正常とし、この範囲よりも大きかったり小さい場合にはパルス幅異常と判定し、アラームを出力する。また、レーザ光のパルス高さは、高速フォトダイオード94からの出力波形の最大値が許容範囲内に存在する場合を正常とし、この許容範囲よもも大きかったり小さい場合にはパルス高さ異常と判定し、アラームを出力する。このように、レーザ光を常時サンプリングしているので、リアルタイムでパルス幅、パルス高さ(パワー)などのレーザ光の品質を管理することができる。上述のようなパルス抜けが頻発するようになったら、レーザ発生装置40の劣化あるいは寿命と判断できる。
【0050】
上述の実施の形態では、パルス抜けの発生だけを見ているが、パルス抜けが発生した箇所の座標データ(位置データ)を取得して記憶することによって、スクライブ線のリペア処理を行なうことが可能となる。
上述の実施の形態では、光軸検査用CCDカメラ96を用いてビームサンプラ93で分岐出力されたレーザ光の一部(サンプリングビーム)を直接受光して、それを画像処理することによって、光軸ずれを検査する場合について説明したが、高速フォトダイオード94の受光面の中央にレーザ光が受光した状態を示す画像を被検査画像として光軸検査用CCDカメラ96あるいは分割型フォトダイオードで取得することによって光軸ずれを検査するようにしてもよい。
上述の実施の形態では、レーザ光の光軸ずれ及びパルス抜けを検査する場合について説明したが、光軸ずれ、パルス抜け、パルス幅及びパルス高さのそれぞれを適宜組み合わせてレーザ光の状態を検査するようにしてもよい。
【0051】
加工線検出手段8Cは、アライメントカメラ装置60からの画像に基づいて加工線P1の画像認識処理を実行する。図11は、加工線検出手段8Cの動作の一例を示す図である。図11(A)に示すようにガラス基板1を載置した状態でガラス基板1上の金属層にレーザ光を照射し、スクライブ処理(スクライブ線P1加工)を実行する。最初のスクライブ処理の結果、ガラス基板1上には、約ピッチ10mmで加工線が形成される。なお、図11では複数の加工線P1のうちの1本の加工線90のみを示す。線100は、加工線90が直線に加工される場合の期待線である。アライメントカメラ装置60は、この期待線100上の複数の点、すなわち図11(B)に示すような撮影点61〜64付近の画像61a〜64aを取得する。各画像61a〜64aを見ると分かるように、画像の中に実際の加工線90の画像を含んでいる。この各画像61a〜64aと期待線100との差により、加工線90の曲りの状態を画像認識することができる。
【0052】
倣い加工調整手段8Eは、加工線検出手段8Cの画像処理の結果に応じて、各画像61a〜64aと期待線100とを比較してアライメント処理を行い、その結果をレーザコントローラ86に出力する。レーザコントローラ86は、倣い加工調整手段8Eのアライメン処理の結果に基づいて前回の加工線90から約30μmはなれた位置にレーザ光が照射されるように、フォーカス調整用駆動機構46〜49を駆動制御して、各集光レンズ541〜544の高さ方向(フォーカス)及びY方向を調整して、スクライブ処理(スクライブ線P2加工)を実行する。これによって、図11(C)に示すように、加工線90から約30μmはなれた位置に加工線92が形成される。また、このスクライブ処理(スクライブ線P2加工)が終了すると、別の装置で半導体層の上に透明電極層を形成する処理が行なわれる。再び、レーザ加工装置にガラス基板1が搬入され、前回と同様のアライメント処理が行なわれ、ガラス基板1に対して同様にレーザ光によるスクライブ処理(スクライブ線P3加工)が実行される。これによって、ガラス基板1には、図7に示すような3本の加工線P1〜P3が形成される。
【0053】
上述の実施の形態では、アライメントカメラ装置60を用いて画像処理にて倣い加工を行なう場合について説明したが、スクライブ線P1をトラッキング処理して加工線P2,P3を加工するようにしてもよい。図12は、グレーティングを用いて加工線P1をトラッキングする方式の一例を示す図である。図において、グレーティングを用いて1個のレーザ光を3個に分割してレーザ光123〜125として、ガラス基板1の加工線P1に照射する。反射光検出用センサである4分割センサ126〜128は各レーザ光123〜125の反射光を図12(A)のように受光すれる。膜面反射強度は加工線P1以外の箇所が高いので、4分割センサ126〜128からの各出力に応じて、レーザ光123〜125が加工線P1上を正確にトラッキングしているか否かを検出することができる。このトラッキング用レーザ光及び反射光検出用センサをフォーカス調整用駆動機構46〜49に固定的に設けて、加工線P1を正確にトラッキングさせることによって、加工線P1を正確に倣った加工線P2,P3を形成することが可能になる。図12(B)及び図12(C)は、加工線P1に対してトラッキング用レーザ光及び反射光検出用センサが横方向(Y方向)ずれた場合を示す。このように加工線P1に対してレーザ光123〜125がずれると、反射光検出用センサである4分割センサからの出力信号の平衡状態がくずれるので、フォーカス調整用駆動機構46〜49は集光レンズを541〜544を±Y方向に駆動制御して、図12(A)の関係となるようにトラッキング制御することによって、加工線P1を倣った加工線P2,P3を加工することが可能となる。
【0054】
上述の実施の形態では、薄膜の形成されたガラス基板1の表面からレーザ光を照射して薄膜に加工線(溝)を形成する場合について説明したが、ガラス基板1の裏面からレーザ光を照射して、ワーク表面の薄膜に加工線を形成するようにしてもよい。また、上述の実施の形態では、最初の加工処理の結果、ガラス基板1上に形成された最初の加工線を含む画像を取得する場合について説明したが、2回目のスクライブ処理(スクライブ線P2加工処理)の結果、ガラス基板1上に形成された2本の加工線(スクライブ線P1,P2)を含む画像を取得して、その画像にある2本のスクライブ線P1及び/又はスクライブ線P2を用いてアライメント処理を行なうようにしてもよい。
上述の実施の形態では、ソーラパネル製造装置を例に説明したが、本発明はELパネル製造装置、ELパネル修正装置、FPD修正装置などのレーザ加工を行なう装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…ガラス基板
1x,1y,1m〜1r…ガラス基板
10…レーザ加工ステーション
100…期待線
102,104…アライメント部
106,107,108,109…グリッパ部
110…グリッパ支持駆動部
112…加工エリア部
121…ローラコンベア
126〜128…4分割センサ
141…搬入出ロボットステーション
143…表裏反転機構部
20…エア浮上ステージ
28…レーザ光状態検査用CCDカメラ
30…スライドフレーム
31…ベース板
33…ガルバノミラー
331…ガルバノ制御裝置
332…ビームサンプラ
333…4分割フォトダイオード
33xy,33yz…モータ
34,35…反射ミラー
37…貫通穴
40…レーザ発生装置
46…フォーカス調整用駆動機構
461…駆動部本体
461a,461a…エア供給部
461c,461d…エア流路
462…駆動部カバー
463a〜463d…マグネット保持部
464a〜464d…マグネット
465…可動部
466…垂直駆動力発生コイル群
467…水平駆動力発生コイル群
50…光学系部材
500…位相型回折光学素子(DOE)
511〜513…ハーフミラー
52…測長システム
521〜528…反射ミラー
531〜534…シャッター機構
541〜544…集光レンズ
60…アライメントカメラ装置
61…撮影点
70…リニアエンコーダ
80…制御装置
81…分岐手段
82…パルス抜け判定手段
83…アラーム発生手段
84…基準CCD画像記憶手段
85…光軸ずれ量計測手段
86…レーザコントローラ
89…照射レーザ状態検査手段
8A…照射レーザ調整手段
8C…加工線検出手段
8E…加工調整手段
90,92…加工線
91,93…ビームサンプラ
94…高速フォトダイオード
96…光軸検査用CCDカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光をワークに対して相対的に移動させながら照射して前記ワークに所定のレーザ加工を施す際に、前記ワークを前記レーザ加工の所定位置にアライメント処理するレーザ加工位置アライメント方法であって、
前記レーザ光による2回目以降の加工において、前記レーザ加工によって形成された前記ワークの形状変化部分を含む箇所の画像に基づいて、前記アライメント処理を行なうことを特徴とするレーザ加工位置アライメント方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工位置アライメント方法において、前記ワークの形状変化部分を含む複数箇所の画像を取得し、前記取得された複数箇所の画像に基づいて前記アライメント処理を行なうことを特徴とするレーザ加工位置アライメント方法。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ加工位置アライメント方法において、前記ワークの形状変化部分に倣って前記レーザ光による2回目以降のレーザ加工処理を行なうことを特徴とするレーザ加工位置アライメント方法。
【請求項4】
レーザ光をワークに対して相対的に移動させながら照射することによってワークに所定の加工を施すレーザ加工方法であって、
前記レーザ光による2回目以降の加工において、前記レーザ加工によって形成された前記ワークの形状変化部分を含む箇所の画像に基づいて前記レーザ加工処理を施す際のアライメント処理を行なうことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ加工方法において、前記ワークの形状変化部分を含む複数箇所の画像を取得し、前記取得された複数箇所の画像に基づいて前記アライメント処理を行なうことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項6】
請求項4に記載のレーザ加工方法において、前記ワークの形状変化部分に倣って前記レーザ光による2回目以降のレーザ加工処理を行なうことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項7】
ワークを保持する保持手段と、
前記ワークにレーザ光を照射して所定の加工処理を施すレーザ光照射手段と、
前記レーザ光照射手段による加工処理によって形成された前記ワークの形状変化部分を含む箇所の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段によって取得された前記画像に基づいて2回目以降のレーザ加工処理を施す際のアライメント処理を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザ加工装置において、前記画像取得手段は、前記ワークの形状変化部分を含む複数箇所の画像を取得し、前記制御手段は、前記画像取得手段によって取得された前記画像を補正処理し、補正処理された画像に基づいて前記アライメント処理を制御することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項7に記載のレーザ加工装置において、前記制御手段は、前記ワークの形状変化部分に倣って前記レーザ光による2回目以降のレーザ加工処理を行なうことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項10】
請求項1、2若しくは3に記載のレーザ加工位置アライメント方法、請求項4、5若しくは6に記載のレーザ加工方法、又は請求項7、8若しくは9に記載のレーザ加工装置を用いて、ソーラパネルを製造することを特徴とするソーラパネル製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−173141(P2011−173141A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38263(P2010−38263)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】