説明

レーザ加工方法及びレーザ加工装置

【課題】パーティクル汚染が無く、品質の良好な薄膜でパターニングされた基板を歩留まり良く得ることが可能なレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】基板1を所定経路に沿って搬送する搬送手段と、基板1の搬送経路の途中で基板1が液体21に浸漬されて取り出されるように配置された液槽20と、液槽20中の液体21を通してレーザ光を薄膜に照射して薄膜を所定形状にパターニングするレーザ光照射装置30と、液槽20から取り出された表面に付着した液体を除去する液体除去装置40とを備えるレーザ加工装置を用いて、薄膜が形成された基板をレーザ加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜が形成された基板にレーザ光を照射してパターニングするレーザ加工方法及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工技術の一つとして、レーザ加工がある。レーザ加工は、加工精度に優れることから、太陽電池の製造工程など、様々な分野において広く用いられている。
【0003】
しかしながら、被加工物にレーザ光を照射してレーザ加工する際、被加工物の加工残渣が飛散して被加工物表面に再付着し易かった。
【0004】
このため、レーザ加工部の周辺に、パーティクル回収用の集塵機構などを設けて、加工残渣の飛散を防止することが従来より行われているが、集塵機構は排気により行うため、大容量の排気ブロアが必要であり、設備の大型化、消費電力の増大などの問題があった。また、集塵機構から大量の排気を行った場合、製造ラインの温度や湿度が変動するので、空調設備の増強が必要であった。
【0005】
また、特許文献1、2には、被加工物を液体中に配置してレーザ加工を行うことで、加工残渣の飛散を防止でき、パーティクル汚染を抑制できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−142971号公報
【特許文献2】特開2001−219290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1,2には、レーザ加工後の被加工物を液体から取出した後の処理に関しては何ら開示されていない。液滴が付着したまま、次工程に搬送されて、最終製品などに組み込まれると、最終製品の品質にバラつきが生じたり、故障の原因につながる。特に、太陽電池基板などの半導体薄膜が形成された基板においては、薄膜の不純物濃度が液滴によって変動し、該基板を取り込んだ最終製品の性能がバラツキ易かった。
【0008】
よって、本発明の目的は、パーティクル汚染が無く、品質の良好な薄膜でパターニングされた基板を歩留まり良く得ることが可能なレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するに当たり、本発明のレーザ加工方法は、薄膜が形成された基板にレーザ光を照射して前記薄膜の一部を除去するレーザ加工方法において、
前記基板を搬送途中で液槽中の液体に浸漬させ、該液体を通してレーザ光を前記薄膜に照射して前記薄膜を所定形状にパターニングするレーザ加工工程と、
前記基板を前記液槽から取り出して、前記基板表面に付着した前記液体を除去する液体除去工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のレーザ加工方法によれば、基板を搬送途中で液槽中の液体に浸漬させ、該液体を通してレーザ光を基板表面の薄膜に照射してパターニングするので、レーザ加工時に加工残渣が発生しても、周囲に飛散せず、基板周囲の液体によって流される。このため、基板表面への加工残渣の再付着を防止でき、パーティクル汚染を抑制できる。また、液体中でレーザ加工するので、基板の熱的損傷を低減できる。そして、このようにして基板をレーザ加工した後、液槽から取出して基板表面に付着した液体をただちに除去するので、液滴による薄膜の不純物濃度などの変動を抑制でき、薄膜の品質のばらつきを抑えることができる。このため、パーティクル汚染が無く、品質の良好な薄膜でパターニングされた基板を歩留まり良く製造することができる。
【0011】
本発明のレーザ加工方法は、前記基板が可撓性基板であって、可撓性基板が巻取られた巻出し装置から前記可撓性基板を引出して前記液槽中の液体に浸漬させ、該液体中で前記可撓性基板をガイドロールにより搬送させながら前記レーザ加工工程を行った後、前記可撓性基板を前記液槽から取出して前記液体除去工程を行い、巻取り装置で巻き取ることが好ましい。この態様によれば、パーティクル汚染や、液滴による基板の汚染を防止しつつ、ロール・ツー・ロール方式でレーザ加工できる。
【0012】
本発明のレーザ加工方法は、前記液槽中の液体を循環させて使用すると共に、その循環経路の途中で前記液体中の加工残渣を除去することが好ましい。この態様によれば、液槽中の液体を循環利用するので、レーザ加工に要する運転コストをより低減できる。
【0013】
本発明のレーザ加工方法は、前記基板の加工面を鉛直方向下方又は水平方向側方に向けて前記液槽中の液体に浸漬させ、前記レーザ光を鉛直方向下方又は水平方向側方から、前記液体を通して前記薄膜に照射することが好ましい。
【0014】
本発明のレーザ加工方法は、前記液体を前記基板の搬送方向と反対方向に流動させながら前記レーザ加工工程を行うことが好ましい。この態様によれば、レーザ加工時に発生した加工残渣を液槽中の液体で効率よく洗い流すことができるので、パーティクル汚染を効率よく防止できる。
【0015】
本発明のレーザ加工方法は、前記液体を前記レーザ光の照射位置の移動方向と反対方向に流動させながら前記レーザ加工工程を行うことが好ましい。この態様によれば、レーザ加工時に発生した加工残渣を液槽中の液体で効率よく洗い流すことができるので、パーティクル汚染を効率よく防止できる。
【0016】
本発明のレーザ加工方法は、前記液体除去工程は、エアーブローによる液滴の除去、吸水ロールによる拭き取り、及び乾燥炉での乾燥の少なくとも1つの手段によって行うことが好ましい。
【0017】
また、本発明のレーザ加工装置は、薄膜が形成された基板にレーザ光を照射して前記薄膜の一部を除去するレーザ加工装置において、
前記基板を所定経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記基板の搬送経路の途中で前記基板が液体に浸漬されて取り出されるように配置された液槽と、
前記液槽中の液体を通してレーザ光を前記薄膜に照射して前記薄膜を所定形状にパターニングするレーザ光照射装置と、
前記液槽から取り出された前記表面に付着した前記液体を除去する液体除去装置とを備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明のレーザ加工装置によれば、基板を搬送途中で液槽中の液体に浸漬させ、該液体を通してレーザ光を基板表面の薄膜に照射してパターニングするので、レーザ加工時に加工残渣が発生しても、周囲に飛散せず、基板周囲の液体によって洗い流され、基板への再付着が抑制される。そして、このようにしてレーザ加工された基板は、液槽から取出され、液体除去装置にて基板表面に付着した液体が除去される。このため、パーティクル汚染が無く、品質の良好な薄膜でパターニングされた基板を歩留まり良く製造することができる。
【0019】
本発明のレーザ加工装置は、前記基板が可撓性基板であって、前記液槽の前段に、可撓性基板が巻取られた基板巻出し装置が配置され、前記液体除去装置の後段に、液体が除去された基板を巻取る基板巻取り装置が配置され、前記液槽は、前記基板を搬送するためのガイドロールが配置されていることが好ましい。この態様によれば、ロール・ツー・ロール方式で基板をレーザ加工できる。
【0020】
本発明のレーザ加工装置は、前記液槽中の液体を取り出して所定経路に沿って流動させた後、前記液槽中に戻す液体循環手段と、前記循環経路の途中で液体中の加工残渣を除去する加工残渣除去装置とを備えることが好ましい。この態様によれば、液槽中の液体を循環利用するので、レーザ加工に要する運転コストをより低減できる。
【0021】
本発明のレーザ加工装置は、前記搬送手段が、前記基板の加工面を鉛直方向下方又は水平方向側方に向けて前記液槽中の液体に浸漬させるように構成され、前記レーザ光照射装置が、前記レーザ光を鉛直方向下方又は水平方向側方から前記薄膜に照射するように構成されていることが好ましい。
【0022】
本発明のレーザ加工装置は、前記液槽中で前記液体を前記基板の搬送方向と反対方向に流動させる流動手段を備えることが好ましい。
【0023】
本発明のレーザ加工装置は、前記液槽中で前記液体を前記レーザ光の照射位置の移動方向と反対方向に流動させる流動手段を備えることが好ましい。この態様によれば、レーザ加工時に発生した加工残渣を液槽中の液体で効率よく洗い流すことができるので、パーティクル汚染を効率よく防止できる。
【0024】
本発明のレーザ加工装置は、前記液体除去装置が、エアーブロー、吸水ロール、及び乾燥炉の少なくとも1つの手段を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、パーティクル汚染が無く、品質の良好な薄膜でパターニングされた基板を歩留まり良く得ることできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のレーザ加工装置の第1の実施形態の概略図である。
【図2】本発明のレーザ加工装置の第2の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明で用いる、「薄膜が表面に形成された基板(以下、薄膜形成基板という)」は、特に限定は無く、どのような形態のものであっても好ましく用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリサルフォン(PSF)等の材質から構成される可撓性基板、ガラス基板、ステンレス基板などの表面に、半導体等の薄膜が形成された、太陽電池形成基板等が一例として挙げられる。基板の種類としては、可撓性基板が好ましい。可撓性基板を用いることで、ロール・ツー・ロール方式でのレーザ加工が可能となり、生産性よくレーザ加工することができる。以下、基板材料として可撓性基板を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
図1を用いて、本発明のレーザ加工装置の第1の実施形態を説明する。
【0029】
図1に示すように、このレーザ加工装置は、薄膜形成基板1が巻取られた巻出しロール10の後段(薄膜形成基板1の進行方向下流)に、液槽20が配置されている。巻出しロール10から引き出された薄膜形成基板1は、ガイドロール11により導かれて液槽20に搬送される。
【0030】
液槽20には、レーザ光の吸収率が低く、揮発性の高く、そして薄膜形成基板1の薄膜積層体や基板に腐食や溶出・剥離などのダメージを与えない液体21が充填されている。液体21としては、水が好ましい。
【0031】
液槽20内の液体21の液面上方には、搬送ロール22が複数(この実施形態では2個)が配置され、液槽20の液体21に浸漬された薄膜形成基板1が、搬送ロール22,22により張力がかけられた状態で搬送される。この実施形態では、薄膜形成基板1のレーザ加工面が鉛直方向下方となるように液体21に浸漬されて搬送される。
【0032】
液槽20の下方には、薄膜形成基板1の進行方向上流側と、進行方向下流側とに接続され、液槽20中の液体21を上流側から抜き取って、下流側に返送する循環経路L1が配置されている。循環経路L1には、加工残渣除去装置23、送液ポンプP1が配置されている。送液ポンプP1を作動することで、液体21に含まれる加工残渣が加工残渣除去装置23で回収されつつ、液槽20内の液体21が、薄膜形成基板1の搬送方向と反対方向(図1の矢印方向)に流動する。加工残渣除去装置23としては、特に限定は無く、液体に含まれる加工残渣を回収できるものであればよく、加工残渣の種類に応じて適宜選択できる。例えば、フィルタ等の濾過装置、薬品により凝集沈殿させて回収する装置、電極間に電圧をかけて加工残渣を電極に引き寄せて回収する装置、遠心分離装置等が挙げられる。加工残渣が電荷を有するものの場合は、電極間に電圧をかけて加工残渣を電極に引き寄せて回収する装置が好ましく用いられる。また、加工残渣が重量物の場合は、遠心分離装置等が好ましく用いられる。
【0033】
レーザ光照射装置30は、レーザ発振機31と、集光レンズ又はミラー32と、X−Yステージ33とで主に構成され、液体21中で薄膜形成基板1のレーザ加工面に対し、鉛直方向下方からレーザ光を照射できるように配置されている。なお、レーザ光の照射方向は、必ずしも鉛直方向に沿っていなくてもよい。レーザ光としては、YAGレーザ、第二高調波YAGレーザ、第三高調波YAGレーザ、アルゴンイオンレーザ、等が挙げられ、特に限定は無い。
【0034】
液槽20の後段(薄膜形成基板1の進行方向下流)には、液体除去装置40が配置されている。液体除去装置40としては、特に限定は無いが、吸水ロール、エアーブロー装置、乾燥炉等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。吸水ロールとしては、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系等の材質からなるものなどが一例として挙げられる。乾燥炉としては、電気乾燥炉、熱風乾燥炉等が挙げられる。
【0035】
この実施形態では、液体除去装置40は、エアーブロー装置41と、吸水ロール42と、乾燥炉43とで構成され、搬送方向上流から、エアーブロー装置41、吸水ロール42、乾燥炉43の順にそれぞれ配置されている。そして、エアーブロー装置41は、薄膜形成基板1の両面に気体を吹き付けることができるようにノズルが配置されている。また、吸水ロール42は、バックアップロール45と吸水ロール42との隙間を、薄膜形成基板1を通過させることで、薄膜形成基板1の表面に付着した液体を吸水ロール42で拭き取ることができるようにされている。
【0036】
液体除去装置40の後段(薄膜形成基板1の進行方向下流)には、徐電器51、ガイドロール52、巻取りロール50の順に配置され、徐電処理された薄膜形成基板1が、ガイドロール52により導かれて巻取りロール50に巻取られる。
【0037】
次に、このレーザ加工装置を用いた、本発明のレーザ加工方法について説明する。
【0038】
まず、薄膜形成基板1を、巻出しロール10から一定速度で引き出して液槽20に導き、薄膜形成基板1を液体21に浸漬させる。なお、液体21には、薄膜形成基板1のレーザ加工面が少なくとも浸漬されればよく、薄膜形成基板1の全体を液体に浸漬させなくてもよい。
【0039】
次に、液体21に浸漬した薄膜形成基板1を、搬送ロール22によって張力をかけた状態で液体中を搬送させる。そして、搬送途中で、レーザ光照射装置30から薄膜形成基板1のレーザ加工面にレーザ光を照射し、薄膜形成基板1をレーザ加工する。レーザ光は、薄膜形成基板1の搬送方向と反対方向で、液槽20内の液体21の流動方向と同じに走査させてレーザ加工を行うことが、液中に存在する加工残渣によるレーザ光の吸収での加工品質低下を回避すると理由から好ましい。このような構成とぜずに、レーザ加工残渣が、その後にレーザ加工領域に浮遊している状態にすると、浮遊している加工残渣が、レーザ透過の妨げになり、所定の深さの加工が行えなかったりするレーザ加工の品質劣化や、浮遊物がレーザにより薄膜形成基板上に付着し、切断箇所が導通状態になったりする問題が生ずることになり、好ましくない。
【0040】
薄膜形成基板1にレーザ光を照射してレーザ加工すると、基板や薄膜等の屑などの加工残渣が発生するが、液体21は送液ポンプP1により、薄膜形成基板1の搬送方向と反対方向(図1の矢印方向)に流動しているため、発生した加工残渣は液体21によって洗い流され、薄膜形成基板1の周囲から流去される。そして、加工残渣を含んだ液体21は、循環経路L1を通って加工残渣除去装置23に導かれ、加工残渣が取り除かれた後、液槽20に還流する。このため、薄膜形成基板1の周囲には、常に、加工残渣等の異物の少ない液体21が存在している。そのため、薄膜形成基板1の表面には、加工残渣が再付着し難く、パーティクル汚染が生じ難い。また、液体中でレーザ加工を行うので、薄膜が過熱され難く、薄膜が熱的損傷を受けにくい。
【0041】
ここで、液体21中で薄膜形成基板1にレーザ光を照射する際、水流によって薄膜形成基板1がバタつき、歪みが発生することがある。水流による薄膜形成基板1のバタつきを低減する対策として、以下の(1)、(2)の方法が挙げられる。
【0042】
(1)隣接する搬送ロール22どうしの中心間距離を狭くして、液体21の流れに負けない張力で薄膜形成基板1を引っ張る。隣接する搬送ロール22,22どうしの中心間距離は、薄膜形成基板1の材質、膜厚などにより異なるので特に限定しない。
(2)薄膜形成基板1のレーザ加工を搬送ロール22上で行う。薄膜形成基板1が搬送ロール22に接触した状態であれば、液体21中での薄膜形成基板1のばたつきを低減できる。そして、アクチュエーターをレーザ光照射装置30に設置し、レーザ光照射装置30の光学ヘッドと、搬送ロール22との間隔を一定に保ち、焦点距離が一定になるように制御する。
【0043】
なお、薄膜形成基板1を長時間液体に浸漬させていると、薄膜や基板に悪影響を及ぼすことがある。例えば、薄膜形成基板1が太陽電池基板である場合、薄膜の不純物濃度が変動し、電池特性のバラつきの原因となる。このため、薄膜形成基板1を液体21に浸漬させる時間は短時間であることが好ましい。
【0044】
このようにして、薄膜形成基板1のレーザ加工を液体21内で行った後、液槽20からレーザ加工を行った薄膜形成基板1を取出して液体除去装置40に導き、薄膜形成基板1に付着した液体の除去処理を行う。
【0045】
液体除去装置40では、薄膜形成基板1に対し、エアーブロー装置41から気体(空気、窒素ガスなど)を吹き付けて、表面に付着した液滴を除去する。次に、薄膜形成基板1を、バックアップロール45と吸水ロール42との間を通過させて、薄膜形成基板1の表面に付着している液体を吸水ロール42で拭き取る。そして、乾燥炉43に導入し、乾燥処理を行う。乾燥炉43での乾燥温度は、可撓性基板の融点もしくは形成した薄膜の化学的特性・構造が変化する温度を超えると、基板表面に形成された薄膜が熱的損傷を受けることがある。
【0046】
吸水ロール42の交換時期、乾燥炉での乾燥条件は、液体除去装置40の後段に水分計などを設けてインラインで薄膜形成基板1の含水量を検出し、薄膜形成基板1の含水量に応じて調整してもよい。
【0047】
このようにして液体除去装置40にて、薄膜形成基板1に付着した液体の除去処理を行った後、徐電器51で徐電処理し、巻取りロール50に巻取る。
【0048】
なお、この実施形態では、薄膜形成基板1の加工面を鉛直方向下方に向けて液槽20中の液体21に浸漬させ、レーザ光を鉛直方向下方から薄膜形成基板1の加工面に照射しているが、薄膜形成基板1の加工面を水平方向側方に向けて液槽20中の液体21に浸漬させ、レーザ光を水平方向側方から薄膜形成基板1の加工面に照射するようにしてもよい。この場合、レーザ光の照射方向は、必ずしも水平方向に沿っていなくてもよい。
【0049】
(第2の実施形態)
本発明のレーザ加工装置の第2の実施形態について、図2を用いて説明する。なお、第1の実施形態と実質的に同一箇所には、同一符号を付して説明を省略することとする。
【0050】
この実施形態では、液槽20a内の液体21の液面上方に、搬送ロール22aが1個配置されている。この搬送ロール22aは、一部が液体21内に浸漬していて、薄膜形成基板1が搬送ロール22aに密着した箇所に加工用のレーザを照射してレーザ加工を行う。液槽20aは、断面形状が搬送ロール22aのロール面に沿った形状をなし、液槽20a内を流通する液体の断面積が一定とされている。
【0051】
この実施形態のレーザ加工装置によれば、薄膜形成基板1の裏面側が、搬送ロール22aに密着した状態で液体21に浸漬されるので、レーザ加工の不要な面が液体に曝されずにすみ、液体除去装置40での液体除去処理をより短時間で行うことができる。
【0052】
また、薄膜形成基板1が搬送ロール22aに密着した状態でレーザ加工するので、液体21中での薄膜形成基板1のばたつきを抑え、精度よくレーザ加工できる。
【符号の説明】
【0053】
1:薄膜形成基板
10:巻出しロール
11、52:ガイドロール
20、20a:液槽
21:液体
22、22a:搬送ロール
23:加工残渣除去装置
30:レーザ光照射装置
31:レーザ発振機
32:集光ミラー
33:X−Yステージ
40:液体除去装置
41:エアーブロー装置
42:吸水ロール
43:乾燥炉
45:バックアップロール
50:巻取りロール
51:徐電器
L1:循環経路
P1:送液ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜が形成された基板にレーザ光を照射して前記薄膜の一部を除去するレーザ加工方法において、
前記基板を搬送途中で液槽中の液体に浸漬させ、該液体を通してレーザ光を前記薄膜に照射して前記薄膜を所定形状にパターニングするレーザ加工工程と、
前記基板を前記液槽から取り出して、前記基板表面に付着した前記液体を除去する液体除去工程とを含むことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
前記基板が可撓性基板であって、可撓性基板が巻取られた巻出し装置から前記可撓性基板を引出して前記液槽中の液体に浸漬させ、該液体中で前記可撓性基板をガイドロールにより搬送させながら前記レーザ加工工程を行った後、前記可撓性基板を前記液槽から取出して前記液体除去工程を行い、巻取り装置で巻き取る、請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記液槽中の液体を循環させて使用すると共に、その循環経路の途中で前記液体中の加工残渣を除去する請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記基板の加工面を鉛直方向下方又は水平方向側方に向けて前記液槽中の液体に浸漬させ、前記レーザ光を鉛直方向下方又は水平方向側方から、前記液体を通して前記薄膜に照射する請求項1〜3のいずれか1つに記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記液体を前記基板の搬送方向と反対方向に流動させながら前記レーザ加工工程を行う請求項1〜4のいずれか1つに記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記液体を前記レーザ光の照射位置の移動方向と反対方向に流動させながら前記レーザ加工工程を行う請求項1〜5のいずれか1つに記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記液体除去工程は、エアーブローによる液滴の除去、吸水ロールによる拭き取り、及び乾燥炉での乾燥の少なくとも1つの手段によって行う請求項1〜6のいずれか1つに記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
薄膜が形成された基板にレーザ光を照射して前記薄膜の一部を除去するレーザ加工装置において、
前記基板を所定経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記基板の搬送経路の途中で前記基板が液体に浸漬されて取り出されるように配置された液槽と、
前記液槽中の液体を通してレーザ光を前記薄膜に照射して前記薄膜を所定形状にパターニングするレーザ光照射装置と、
前記液槽から取り出された前記表面に付着した前記液体を除去する液体除去装置とを備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項9】
前記基板が可撓性基板であって、
前記液槽の前段に、可撓性基板が巻取られた基板巻出し装置が配置され、
前記液体除去装置の後段に、液体が除去された基板を巻取る基板巻取り装置が配置され、
前記液槽は、前記基板を搬送するためのガイドロールが配置されている、請求項8に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記液槽中の液体を取り出して所定経路に沿って流動させた後、前記液槽中に戻す液体循環手段と、前記循環経路の途中で液体中の加工残渣を除去する加工残渣除去装置とを備える請求項8又は9に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記搬送手段は、前記基板の加工面を鉛直方向下方又は水平方向側方に向けて前記液槽中の液体に浸漬させるように構成され、前記レーザ光照射装置は、前記レーザ光を鉛直方向下方又は水平方向側方から前記薄膜に照射するように構成されている請求項8〜10のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記液槽中で前記液体を前記基板の搬送方向と反対方向に流動させる流動手段を備える請求項8〜11のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
前記液槽中で前記液体を前記レーザ光の照射位置の移動方向と反対方向に流動させる流動手段を備える請求項8〜12のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。
【請求項14】
前記液体除去装置は、エアーブロー、吸水ロール、及び乾燥炉の少なくとも1つの手段を有する請求項8〜13のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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