レーザ加工方法
【課題】 面取りされた角部を有する有効部を板状の加工対象物から精度良く切り出すことを可能にするレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】 板状の加工対象物1から、面取りされた角部19を有する有効部18を切り出すためのレーザ加工方法である。角部19に至る有効部18の一方の側面18aに沿いかつ角部19を通るように延在する切断予定ライン51に沿って、レーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させることにより、切断予定ライン51に沿って加工対象物1の内部に改質領域を形成する。その後に、角部19の面取り面19aに沿うように延在する切断予定ライン53に沿って、レーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させることにより、切断予定ライン53に沿って加工対象物1の内部に改質領域を形成する。
【解決手段】 板状の加工対象物1から、面取りされた角部19を有する有効部18を切り出すためのレーザ加工方法である。角部19に至る有効部18の一方の側面18aに沿いかつ角部19を通るように延在する切断予定ライン51に沿って、レーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させることにより、切断予定ライン51に沿って加工対象物1の内部に改質領域を形成する。その後に、角部19の面取り面19aに沿うように延在する切断予定ライン53に沿って、レーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させることにより、切断予定ライン53に沿って加工対象物1の内部に改質領域を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の加工対象物から、面取りされた角部を有する有効部を切り出すためのレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野のレーザ加工方法として、次のようなものが知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、切断予定ラインの直線部に沿ってレーザ光の集光点を移動させるときには、レーザ光の集光点のスポット形状を楕円形にして、その長軸を切断予定ラインの直線部に一致させ、切断予定ラインの曲線部に沿ってレーザ光の集光点を移動させるときには、レーザ光の集光点のスポット形状を円形にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−062289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなレーザ加工方法にあっては、切断予定ラインの曲線部に沿ってレーザ光を照射した際に、曲線部から不要な方向に亀裂が伸展し、その結果、加工対象物から切り出すべき有効部に損傷が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、面取りされた角部を有する有効部を板状の加工対象物から精度良く切り出すことを可能にするレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザ加工方法は、板状の加工対象物から、面取りされた角部を有する有効部を切り出すためのレーザ加工方法であって、角部に至る有効部の一方の側面に沿いかつ角部を通るように延在する第1の切断予定ラインに沿って、レーザ光の集光点を相対的に移動させることにより、第1の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる第1の改質領域を加工対象物の内部に形成する第1の工程と、第1の工程の後に、角部の面取り面に沿うように延在する第2の切断予定ラインに沿って、レーザ光の集光点を相対的に移動させることにより、第2の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる第2の改質領域を加工対象物の内部に形成する第2の工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このレーザ加工方法では、角部に至る有効部の一方の側面に沿いかつ角部を通るように延在する第1の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる第1の改質領域を形成し、その後に、角部の面取り面に沿うように延在する第2の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる第2の改質領域を形成する。これにより、面取り面に沿って形成された第2の改質領域から発生する亀裂は、既に形成された第1の改質領域に沿うように伸展することになる。よって、このレーザ加工方法によれば、面取り面から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することができ、その結果、面取りされた角部を有する有効部を板状の加工対象物から精度良く切り出すことが可能となる。
【0008】
本発明のレーザ加工方法は、角部に至る有効部の他方の側面に沿いかつ角部を通るように第3の切断予定ラインが延在している場合には、第2の工程の前に、第3の切断予定ラインに沿って、レーザ光の集光点を相対的に移動させることにより、第3の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる第3の改質領域を加工対象物の内部に形成する第3の工程を更に備えていてもよい。この場合、面取り面に沿って形成された第2の改質領域から発生する亀裂は、既に形成された第1の改質領域及び第3の改質領域のそれぞれに沿うように伸展することになる。従って、面取り面から不要な方向に亀裂が伸展するのをより確実に防止することが可能となる。
【0009】
本発明のレーザ加工方法においては、第1の切断予定ラインは、隣り合う有効部同士の境界面に沿うように延在していてもよい。この場合、一方の有効部の面取り面に沿って形成された第2の改質領域から発生する亀裂は、隣り合う有効部同士の境界面に沿って既に形成された第1の改質領域に沿うように伸展することになる。従って、一方の有効部の面取り面から他方の有効部内に亀裂が伸展するのを防止することが可能となる。
【0010】
本発明のレーザ加工方法においては、第1の切断予定ラインは、有効部と、加工対象物の側面を含む外縁部との境界面に沿うように延在していてもよい。この場合、有効部から加工対象物の側面を切り落として、有効部の側面の品質を均一化することが可能となる。
【0011】
本発明のレーザ加工方法においては、第1の切断予定ラインは、加工対象物を横切るように延在していてもよい。この場合、第1の切断予定ラインに沿って形成された第1の改質領域の端部から発生する亀裂は、加工対象物の側面に至ることになる。従って、第1の改質領域の端部から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することが可能となる。
【0012】
本発明のレーザ加工方法においては、面取り面は、凸曲面であってもよいし、或いは、略平面であってもよい。いずれの場合にも、面取り面から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することが可能である。
【0013】
本発明のレーザ加工方法においては、第1の工程では、第1の周波数でレーザ光をパルス発振させると共に、第1の速度で集光点を相対的に移動させ、第2の工程では、第1の周波数よりも低い第2の周波数でレーザ光をパルス発振させると共に、第1の速度よりも低い第2の速度で集光点を相対的に移動させてもよい。これによれば、第2の改質領域を面取り面に沿って精度良く形成することができ、しかも、第2の改質領域を、亀裂を伸展させ易いものとして形成することができる。
【0014】
本発明のレーザ加工方法は、第2の工程の後に、第1の改質領域及び第2の改質領域から発生した亀裂を加工対象物の表面及び裏面に到達させることにより、第1の切断予定ライン及び第2の切断予定ラインに沿って加工対象物を切断する第4の工程を更に備えていてもよい。これによれば、面取りされた角部を有する有効部を板状の加工対象物から精度良く切り出すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、面取りされた角部を有する有効部を板状の加工対象物から精度良く切り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】改質領域の形成に用いられるレーザ加工装置の概略構成図である。
【図2】改質領域の形成の対象となる加工対象物の平面図である。
【図3】図2の加工対象物のIII−III線に沿っての断面図である。
【図4】レーザ加工後の加工対象物の平面図である。
【図5】図4の加工対象物のV−V線に沿っての断面図である。
【図6】図4の加工対象物のVI−VI線に沿っての断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図16】本発明の第4の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。
【図17】本発明の第4の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図18】本発明の第4の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図19】比較例の加工順序及び加工結果の写真を示す図である。
【図20】第1の実施例の加工順序及び加工結果の写真を示す図である。
【図21】第2の実施例の加工順序及び加工結果の写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
本発明の一実施形態のレーザ加工方法では、切断予定ラインに沿って加工対象物にレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に切断の起点となる改質領域を形成する。そこで、まず、この改質領域の形成について、図1〜図6を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるためのステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の駆動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
【0020】
このレーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して切断予定ライン5に沿って相対移動させられる。これにより、切断予定ライン5に沿った改質領域が加工対象物1に形成されることとなる。
【0021】
加工対象物1としては、種々の材料(例えば、ガラス、半導体材料、圧電材料等)からなる板状の部材(例えば、基板、ウェハ等)が用いられる。図2に示すように、加工対象物1には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5が設定されている。切断予定ライン5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示すように、加工対象物1の内部に集光点Pを合わせた状態で、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4〜図6に示すように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に形成され、切断予定ライン5に沿って形成された改質領域7が切断起点領域8となる。
【0022】
なお、集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。また、切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、仮想線に限らず加工対象物1の表面3に実際に引かれた線であってもよい。また、改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。また、改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部に形成されていればよい。また、改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。
【0023】
ちなみに、ここでのレーザ光Lは、加工対象物1を透過すると共に加工対象物1の内部の集光点近傍にて特に吸収され、これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一般的に、表面3から溶融され除去されて穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)場合、加工領域は表面3側から徐々に裏面側に進行する。
【0024】
ところで、本実施形態で形成される改質領域は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。更に、改質領域としては、加工対象物の材料において改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある(これらをまとめて高密転移領域ともいう)。
【0025】
また、溶融処理領域や屈折率変化領域、改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、格子欠陥が形成された領域は、更に、それら領域の内部や改質領域と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック等)を内包している場合がある。内包される亀裂は改質領域の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1としては、例えばシリコン、ガラス、LiTaO3又はサファイア(Al2O3)からなる基板やウェハ、又はそのような基板やウェハを含むものが挙げられる。
【0026】
また、本実施形態においては、切断予定ライン5に沿って改質スポット(加工痕)を複数形成することによって、改質領域7を形成している。改質スポットとは、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ照射:レーザショット)で形成される改質部分であり、改質スポットが集まることにより改質領域7となる。改質スポットとしては、クラックスポット、溶融処理スポット若しくは屈折率変化スポット、又はこれらの少なくとも1つが混在するもの等が挙げられる。
【0027】
この改質スポットについては、要求される切断精度、要求される切断面の平坦性、加工対象物の厚さ、種類、結晶方位等を考慮して、その大きさや発生する亀裂の長さを適宜制御することが好ましい。
[第1の実施形態]
【0028】
図7は、本発明の第1の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。図7に示すように、第1の実施形態は、ガラスからなる矩形板状の加工対象物1を、その側面1a,1bに沿ってスペースを設けずに複数行複数列(ここでは、2行2列)に切断し、加工対象物1から矩形板状の有効部18を複数(ここでは、4枚)切り出す場合である。有効部18は、行方向に略平行な一対の側面18a,18a、列方向に略平行な一対の側面18b,18b、及び面取りされた4つの角部19を有するように、加工対象物1から切り出される。角部19は、その面取り面19aが凸曲面となるようにR面取りされる。このような有効部18は、携帯型端末のディスプレイの保護基板等に用いられる。
【0029】
加工対象物1には、切断予定ライン(第1の切断予定ライン)51、切断予定ライン(第3の切断予定ライン)52及び切断予定ライン(第2の切断予定ライン)53が設定される。
【0030】
切断予定ライン51は、角部19に至る一方の側面18aに沿いかつ角部19を通るように延在している。ここでは、切断予定ライン51は、列方向において隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。更には、切断予定ライン51は、加工対象物1を横切るように延在している。すなわち、切断予定ライン51は、列方向に略平行な一対の側面1b,1b間に渡っている。なお、切断予定ライン51が角部19を通るとは、有効部18の一方の側面18aと角部19の面取り面19aとの交線に交差するように(ここでは、略直交するように)切断予定ライン51が延在していることを意味する。
【0031】
切断予定ライン52は、角部19に至る他方の側面18bに沿いかつ角部19を通るように延在している。ここでは、切断予定ライン52は、行方向において隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。更には、切断予定ライン52は、加工対象物1を横切るように延在している。すなわち、切断予定ライン52は、行方向に略平行な一対の側面1a,1a間に渡っている。なお、切断予定ライン52が角部19を通るとは、有効部18の他方の側面18bと角部19の面取り面19aとの交線に交差するように(ここでは、略直交するように)切断予定ライン52が延在していることを意味する。
【0032】
切断予定ライン53は、角部19の面取り面19aに沿うように延在している。すなわち、切断予定ライン53は、有効部18の一方の側面18aと角部19の面取り面19aとの交線と、有効部18の他方の側面18bと角部19の面取り面19aとの交線との間に渡っている。
【0033】
以上のように切断予定ライン51,52,53が設定された加工対象物1から、以下のように、複数の有効部18を切り出す。まず、加工対象物1をレーザ加工装置100の支持台107上に載置する。このとき、加工対象物1の裏面4にテープを貼ったり、或いは支持台107を多孔質状に形成して加工対象物1を真空吸着したりするなど、加工対象物1を保持する。この状態で、加工対象物1の表面3から所定の距離だけ内側にレーザ光Lの集光点Pが位置するようにステージ111を駆動させる。
【0034】
続いて、図8(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン51に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン51に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動(スキャン)させる。このとき、周波数F1でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1で集光点Pを相対的に移動させる。周波数F1が50kHzであり、速度V1が500mm/sであれば、レーザ光Lのパルスピッチ(速度V1/周波数F1)は10μmとなる。このようなレーザ光Lの照射によって、切断予定ライン51に沿って、切断の起点となる改質領域(第1の改質領域)71を加工対象物1の内部に形成する(図9(a)参照)。
【0035】
続いて、図8(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン52に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン52に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F2でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V2で集光点Pを相対的に移動させる。周波数F2が50kHzであり、速度V2が500mm/sであれば、レーザ光Lのパルスピッチ(速度V2/周波数F2)は10μmとなる。このようなレーザ光Lの照射によって、切断予定ライン52に沿って、切断の起点となる改質領域(第3の改質領域)72を加工対象物1の内部に形成する(図9(a)参照)。
【0036】
ここで、ステージ111がレーザ光Lの光軸に略垂直な平面内の2軸方向に移動可能であり、かつレーザ光Lの光軸回りに回転可能なものであれば、次のように、ステージ111を駆動させる。すなわち、切断予定ライン51に沿ってレーザ光Lの集光点Pが相対的に移動するようにステージ111を駆動させる。続いて、その状態で(レーザ光Lの光軸回りに回転するようにステージ111を駆動させずに)、切断予定ライン52に沿ってレーザ光Lの集光点Pが相対的に移動するようにステージ111を駆動させる。
【0037】
一方、ステージ111がレーザ光Lの光軸に略垂直な平面内の1軸方向に移動可能であり、かつレーザ光Lの光軸回りに回転可能なものであれば、次のように、ステージ111を駆動させる。すなわち、切断予定ライン51に沿ってレーザ光Lの集光点Pが相対的に移動するようにステージ111を駆動させる。続いて、レーザ光Lの光軸回りに90°回転するようにステージ111を駆動させ、その状態で、切断予定ライン52に沿ってレーザ光Lの集光点Pが相対的に移動するようにステージ111を駆動させる。
【0038】
なお、切断予定ライン52に沿ってのレーザ光Lの集光点Pの移動及び改質領域72の形成を先に行い、切断予定ライン51に沿ってのレーザ光Lの集光点Pの移動及び改質領域71の形成を後に行ってもよい。また、切断予定ライン51,52に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させるために、レーザ光L側(レーザ光源101、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105等)を移動させてもよいし、加工対象物1側(支持台107等)及びレーザ光L側の両方を移動させてもよい。
【0039】
切断予定ライン51,52に沿って改質領域71,72を形成した後に、図8(b)に示すように、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1,F2よりも低い周波数F3でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1,V2よりも低い速度V3で集光点Pを相対的に移動させる。周波数F3が1kHzであり、速度V3が10mm/sであれば、レーザ光Lのパルスピッチ(速度V3/周波数F3)は10μmとなる。このようなレーザ光Lの照射によって、切断予定ライン53に沿って、切断の起点となる改質領域(第2の改質領域)73を加工対象物1の内部に形成する(図9(a)参照)。
【0040】
ここで、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する場合、図8(b)に示すように、有効部18の外縁に沿ってレーザ光Lの集光点Pが矩形環状に移動するようステージ111を駆動させる。このとき、各角部19の面取り面19aでは、加工対象物1にレーザ光Lが照射されるようにレーザ光Lの照射をONに切り替え(図8(b)の実線の矢印)、各側面18a,18bでは、加工対象物1にレーザ光Lが照射されないようにレーザ光Lの照射をOFFに切り替える(図8(b)の破線の矢印)。そして、各側面18a,18bでは、速度V3よりも高い速度(例えば、速度V1,V2に相当する速度)でレーザ光Lの集光点Pが移動するようステージ111を駆動させる。
【0041】
なお、レーザ光Lの繰返し周波数の調整は、レーザ光源101及びレーザ光源制御部102に超音波光変調器(AOM)等の光学素子を付加することにより実現される。AOMによって繰返し周波数を間引くことで、繰返し周波数を周波数F1,F2から周波数F3に低くすることができる。また、切断予定ライン53に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させるために、レーザ光L側を移動させてもよいし、加工対象物1側及びレーザ光L側の両方を移動させてもよい。
【0042】
図9(a)に示すように、切断予定ライン51,52,53に沿って改質領域71,72,73を形成した後に、切断予定ライン51,52,53に沿って外力を作用させ、改質領域71,72,73から発生した亀裂を加工対象物1の表面3及び裏面4に到達させることにより、切断予定ライン51,52,53に沿って加工対象物1を切断する。以上のようにして、図9(b)に示すように、加工対象物1から、面取りされた角部19を有する有効部18を切り出す。
【0043】
以上説明したように、第1の実施形態のレーザ加工方法では、切断予定ライン51,52に沿って(すなわち、有効部18の側面18a,18bに沿って)改質領域71,72を形成し、その後に、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する。これにより、面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、既に形成された改質領域71,72に沿うように伸展することになる。よって、第1の実施形態のレーザ加工方法によれば、面取り面19aから不要な方向に亀裂が伸展するのを確実に防止し、面取りされた角部19を有する有効部18を板状の加工対象物1から精度良く切り出すことができる。このようなレーザ加工方法は、1枚の加工対象物1から複数の有効部18を切り出す場合に極めて有効である。
【0044】
ここで、切断予定ライン51,52は、隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。これにより、一方の有効部18の面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿って既に形成された改質領域71,72に沿うように伸展することになる。従って、一方の有効部18の面取り面19aから他方の有効部18内に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0045】
更に、切断予定ライン51,52は、加工対象物1を横切るように延在していている。これにより、切断予定ライン51,52に沿って形成された改質領域71,72の端部から発生する亀裂は、加工対象物1の側面1a,1bに至ることになる。従って、改質領域71,72の端部から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0046】
また、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する場合には、切断予定ライン51,52に沿って(すなわち、有効部18の側面18a,18bに沿って)改質領域71,72を形成する場合に比べ、レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度を低くする。これにより、有効部18に対して面取り面19aの外側をレーザ光Lの集光点Pが通るような事態を防止し、改質領域73を面取り面19aに沿って精度良く形成することができる。
【0047】
更に、レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度を低くすると共に、切断予定ライン53に沿って改質領域73を形成する場合には、切断予定ライン51,52に沿って改質領域71,72を形成する場合に比べ、レーザ光Lの繰返し周波数を低くする。レーザ光Lの繰返し周波数を低くせずにレーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度を低くすると、パルスピッチが短くなるため、改質スポット(レーザ光Lの1パルスの照射で形成される改質部分)が密の状態で改質領域73が形成され、その結果、加工対象物1の厚さ方向等に亀裂が伸展し難くなるおそれがある。レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度を低くすると共にレーザ光Lの繰返し周波数を低くすることで、パルスピッチが短くなるのを防止し、有効部18の面取り面19aに沿った改質領域73を、亀裂を伸展させ易いものとして形成することができる。
[第2の実施形態]
【0048】
図10は、本発明の第2の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。図10に示すように、第2の実施形態は、ガラスからなる矩形板状の加工対象物1を、その側面1a,1bに沿ってスペースを設けて複数行複数列(ここでは、2行2列)に切断する点で、第1の実施形態と相違する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第2の実施形態について説明する。
【0049】
加工対象物1には、切断予定ライン(第1の切断予定ライン)51a,51b、切断予定ライン(第3の切断予定ライン)52a,52b及び切断予定ライン53が設定される。
【0050】
切断予定ライン51a,51bは、角部19に至る一方の側面18aに沿いかつ角部19を通るように延在している。ここでは、切断予定ライン51aは、列方向において隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。また、切断予定ライン51bは、有効部18と、加工対象物1の側面1aを含む外縁部21aとの境界面に沿うように延在している。更には、切断予定ライン51a,51bは、加工対象物1を横切るように延在している。すなわち、切断予定ライン51a,51bは、列方向に略平行な一対の側面1b,1b間に渡っている。
【0051】
切断予定ライン52a,52bは、角部19に至る他方の側面18bに沿いかつ角部19を通るように延在している。ここでは、切断予定ライン52aは、行方向において隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。また、切断予定ライン52bは、有効部18と、加工対象物1の側面1bを含む外縁部21bとの境界面に沿うように延在している。更には、切断予定ライン52a,52bは、加工対象物1を横切るように延在している。すなわち、切断予定ライン52a,52bは、行方向に略平行な一対の側面1a,1a間に渡っている。
【0052】
以上のように切断予定ライン51a,51b,52a,52b,53が設定された加工対象物1から、以下のように、複数(ここでは、4枚)の有効部18を切り出す。まず、加工対象物1をレーザ加工装置100の支持台107上に載置し、続いて、図11(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン51a,51bに沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン51a,51bに沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン51a,51bに沿って改質領域71を加工対象物1の内部に形成する(図12(a)参照)。
【0053】
続いて、図11(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン52a,52bに沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン52a,52bに沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F2でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V2で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン52a,52bに沿って改質領域72を加工対象物1の内部に形成する(図12(a)参照)。
【0054】
なお、切断予定ライン52a,52bに沿ってのレーザ光Lの集光点Pの移動及び改質領域72の形成を先に行い、切断予定ライン51a,51bに沿ってのレーザ光Lの集光点Pの移動及び改質領域71の形成を後に行ってもよい。
【0055】
切断予定ライン51a,51b,52a,52bに沿って改質領域71,72を形成した後に、図11(b)に示すように、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1,F2よりも低い周波数F3でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1,V2よりも低い速度V3で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン53に沿って改質領域73を加工対象物1の内部に形成する(図12(a)参照)。
【0056】
なお、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する場合には、第1の実施形態と同様に、レーザ光Lの照射のON/OFFの切替え、及びレーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度の切替えを行う。
【0057】
図12(a)に示すように、切断予定ライン51a,51b,52a,52b,53に沿って改質領域71,72,73を形成した後に、切断予定ライン51a,51b,52a,52b,53に沿って外力を作用させ、改質領域71,72,73から発生した亀裂を加工対象物1の表面3及び裏面4に到達させることにより、切断予定ライン51a,51b,52a,52b,53に沿って加工対象物1を切断する。以上のようにして、図12(b)に示すように、加工対象物1から、面取りされた角部19を有する有効部18を切り出す。
【0058】
以上説明したように、第2の実施形態のレーザ加工方法では、切断予定ライン51a,51b,52a,52bに沿って(すなわち、有効部18の側面18a,18bに沿って)改質領域71,72を形成し、その後に、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する。これにより、面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、既に形成された改質領域71,72に沿うように伸展することになる。よって、第2の実施形態のレーザ加工方法によれば、面取り面19aから不要な方向に亀裂が伸展するのを確実に防止し、面取りされた角部19を有する有効部18を板状の加工対象物1から精度良く切り出すことができる。
【0059】
ここで、切断予定ライン51a,52aは、隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。これにより、一方の有効部18の面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿って既に形成された改質領域71,72に沿うように伸展することになる。従って、一方の有効部18の面取り面19aから他方の有効部18内に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0060】
また、切断予定ライン51b,52bは、有効部18と外縁部21a,21bとの境界面に沿うように延在している。これにより、有効部18から加工対象物1の側面1a,1bを切り落として、有効部18の側面18a,18bの品質を均一化することができる。
【0061】
更に、切断予定ライン51a,51b,52a,52bは、加工対象物1を横切るように延在していている。これにより、切断予定ライン51a,51b,52a,52bに沿って形成された改質領域71,72の端部から発生する亀裂は、加工対象物1の側面1a,1bに至ることになる。従って、改質領域71,72の端部から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0062】
また、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する場合には、切断予定ライン51a,51b,52a,52bに沿って(すなわち、有効部18の側面18a,18bに沿って)改質領域71,72を形成する場合に比べ、レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度、及びレーザ光Lの繰返し周波数を低くする。これにより、改質領域73を面取り面19aに沿って精度良く形成することができ、しかも、改質領域73を、亀裂を伸展させ易いものとして形成することができる。
[第3の実施形態]
【0063】
図13は、本発明の第3の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。図13に示すように、第3の実施形態は、ガラスからなる矩形板状の加工対象物1を複数行1列(ここでは、2行1列)に切断する点で、第1の実施形態と相違する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第3の実施形態について説明する。
【0064】
加工対象物1には、切断予定ライン51及び切断予定ライン53が設定される。このように切断予定ライン51,53が設定された加工対象物1から、以下のように、複数(ここでは、2枚)の有効部18を切り出す。まず、加工対象物1をレーザ加工装置100の支持台107上に載置し、続いて、図14(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン51に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン51に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン51に沿って改質領域71を加工対象物1の内部に形成する(図15(a)参照)。
【0065】
切断予定ライン51に沿って改質領域71を形成した後に、図14(b)に示すように、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1よりも低い周波数F3でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1よりも低い速度V3で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン53に沿って改質領域73を加工対象物1の内部に形成する(図15(a)参照)。
【0066】
なお、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する場合には、第1の実施形態と同様に、レーザ光Lの照射のON/OFFの切替え、及びレーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度の切替えを行う。
【0067】
図15(a)に示すように、切断予定ライン51,53に沿って改質領域71,73を形成した後に、切断予定ライン51,53に沿って外力を作用させ、改質領域71,73から発生した亀裂を加工対象物1の表面3及び裏面4に到達させることにより、切断予定ライン51,53に沿って加工対象物1を切断する。以上のようにして、図15(b)に示すように、加工対象物1から、面取りされた角部19を有する有効部18を切り出す。
【0068】
以上説明したように、第3の実施形態のレーザ加工方法では、切断予定ライン51に沿って(すなわち、有効部18の側面18aに沿って)改質領域71を形成し、その後に、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する。これにより、面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、既に形成された改質領域71に沿うように伸展することになる。よって、第3の実施形態のレーザ加工方法によれば、面取り面19aから不要な方向に亀裂が伸展するのを確実に防止し、面取りされた角部19を有する有効部18を板状の加工対象物1から精度良く切り出すことができる。
【0069】
ここで、切断予定ライン51は、隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。これにより、一方の有効部18の面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿って既に形成された改質領域71に沿うように伸展することになる。従って、一方の有効部18の面取り面19aから他方の有効部18内に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0070】
更に、切断予定ライン51は、加工対象物1を横切るように延在していている。これにより、切断予定ライン51に沿って形成された改質領域71の端部から発生する亀裂は、加工対象物1の側面1bに至ることになる。従って、改質領域71の端部から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0071】
また、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する場合には、切断予定ライン51に沿って(すなわち、有効部18の側面18aに沿って)改質領域71を形成する場合に比べ、レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度、及びレーザ光Lの繰返し周波数を低くする。これにより、改質領域73を面取り面19aに沿って精度良く形成することができ、しかも、改質領域73を、亀裂を伸展させ易いものとして形成することができる。
[第4の実施形態]
【0072】
図16は、本発明の第4の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。図16に示すように、第4の実施形態は、ガラスからなる矩形板状の加工対象物1を、その側面1a,1bに沿ってスペースを設けると共に、隣り合う有効部18,18間にスペースを設けて、1行複数列(ここでは、1行2列)に切断する点で、第1の実施形態と相違する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第4の実施形態について説明する。
【0073】
加工対象物1には、切断予定ライン51b、切断予定ライン52b,52c及び切断予定ライン53が設定される。
【0074】
切断予定ライン51bは、角部19に至る一方の側面18aに沿いかつ角部19を通るように延在している。ここでは、切断予定ライン51bは、有効部18と、加工対象物1の側面1aを含む外縁部21aとの境界面に沿うように延在している。更には、切断予定ライン51bは、加工対象物1を横切るように延在している。すなわち、切断予定ライン51bは、列方向に略平行な一対の側面1b,1b間に渡っている。
【0075】
切断予定ライン52b,52cは、角部19に至る他方の側面18bに沿いかつ角部19を通るように延在している。ここでは、切断予定ライン52bは、有効部18と、加工対象物1の側面1bを含む外縁部21bとの境界面に沿うように延在している。また、切断予定ライン52cは、有効部18と、隣り合う有効部18,18間に介在された中間部22との境界面に沿うように延在している。更には、切断予定ライン52b,52cは、加工対象物1を横切るように延在している。すなわち、切断予定ライン52b,52cは、行方向に略平行な一対の側面1a,1a間に渡っている。
【0076】
以上のように切断予定ライン51b,52b,52c,53が設定された加工対象物1から、以下のように、複数(ここでは、2枚)の有効部18を切り出す。まず、加工対象物1をレーザ加工装置100の支持台107上に載置し、続いて、図17(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン51bに沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン51bに沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン51bに沿って改質領域71を加工対象物1の内部に形成する(図18(a)参照)。
【0077】
続いて、図17(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン52b,52cに沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン52b,52cに沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F2でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V2で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン52b,52cに沿って改質領域72を加工対象物1の内部に形成する(図18(a)参照)。
【0078】
なお、切断予定ライン52b,52cに沿ってのレーザ光Lの集光点Pの移動及び改質領域72の形成を先に行い、切断予定ライン51bに沿ってのレーザ光Lの集光点Pの移動及び改質領域71の形成を後に行ってもよい。
【0079】
切断予定ライン51b,52b,52cに沿って改質領域71,72を形成した後に、図17(b)に示すように、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1,F2よりも低い周波数F3でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1,V2よりも低い速度V3で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン53に沿って改質領域73を加工対象物1の内部に形成する(図18(a)参照)。
【0080】
なお、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する場合には、第1の実施形態と同様に、レーザ光Lの照射のON/OFFの切替え、及びレーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度の切替えを行う。
【0081】
図18(a)に示すように、切断予定ライン51b,52b,52c,53に沿って改質領域71,72,73を形成した後に、切断予定ライン51b,52b,52c,53に沿って外力を作用させ、改質領域71,72,73から発生した亀裂を加工対象物1の表面3及び裏面4に到達させることにより、切断予定ライン51b,52b,52c,53に沿って加工対象物1を切断する。以上のようにして、図18(b)に示すように、加工対象物1から、面取りされた角部19を有する有効部18を切り出す。
【0082】
以上説明したように、第4の実施形態のレーザ加工方法では、切断予定ライン51b,52b,52cに沿って(すなわち、有効部18の側面18a,18bに沿って)改質領域71,72を形成し、その後に、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する。これにより、面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、既に形成された改質領域71,72に沿うように伸展することになる。よって、第4の実施形態のレーザ加工方法によれば、面取り面19aから不要な方向に亀裂が伸展するのを確実に防止し、面取りされた角部19を有する有効部18を板状の加工対象物1から精度良く切り出すことができる。
【0083】
ここで、切断予定ライン51b,52bは、有効部18と外縁部21a,21bとの境界面に沿うように延在している。これにより、有効部18から加工対象物1の側面1a,1bを切り落として、有効部18の側面18a,18bの品質を均一化することができる。
【0084】
更に、切断予定ライン51b,52b,52cは、加工対象物1を横切るように延在していている。これにより、切断予定ライン51b,52b,52cに沿って形成された改質領域71,72の端部から発生する亀裂は、加工対象物1の側面1a,1bに至ることになる。従って、改質領域71,72の端部から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0085】
また、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する場合には、切断予定ライン51b,52b,52cに沿って(すなわち、有効部18の側面18a,18bに沿って)改質領域71,72を形成する場合に比べ、レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度、及びレーザ光Lの繰返し周波数を低くする。これにより、改質領域73を面取り面19aに沿って精度良く形成することができ、しかも、改質領域73を、亀裂を伸展させ易いものとして形成することができる。
【0086】
次に、比較例及び実施例について説明する。ここでは、加工対象物として、外形60mm×60mm、厚さ900μmの強化ガラス板を用意した。この加工対象物に対して、出力20μJ、繰返し周波数1kHz、集光点の相対的移動速度10mm/sの条件でレーザ光を照射し、各切断予定ラインに対して、加工対象物の厚さ方向に並ぶように5列(「加工対象物のレーザ光入射面と集光点との距離」は、それぞれ、380μm,310μm,240μm,170μm,100μm)の改質領域を形成した。そして、切断予定ラインに沿って加工対象物を切断するために、各切断予定ラインに沿って手で外力を作用させた。
【0087】
図19は、比較例の加工順序及び加工結果の写真を示す図である。図19(a)に示すように、切断予定ライン(図19(a)の一点鎖線)に沿ってレーザ光を照射し(図19(a)の実線の矢印)、各切断予定ラインに対して5列の改質領域を形成した。加工順序は、縦横の切断予定ライン、正方形環状(外形30mm×30mm)の切断予定ライン、R5〜R10(単位mm)の面取り面に沿った切断予定ラインの順序である。この比較例では、面取り面に沿った切断予定ラインが縦横の切断予定ラインの端点間に渡るように、縦横の切断予定ラインを交差させなかった。その結果、図19(b)に示すように、右下の面取り面の右上の端部からから右上に向かって、切断予定ラインから外れた不要な亀裂が伸展してしまった。
【0088】
図20は、第1の実施例の加工順序及び加工結果の写真を示す図である。図20(a)に示すように、切断予定ライン(図20(a)の一点鎖線)に沿ってレーザ光を照射し(図20(a)の実線の矢印)、各切断予定ラインに対して5列の改質領域を形成した。加工順序は、縦横の切断予定ライン、正方形環状(外形30mm×30mm)の切断予定ライン、R5〜R10(単位mm)の面取り面に沿った切断予定ラインの順序である。この第1の実施例では、面取り面に沿った切断予定ラインが縦横の切断予定ラインの中間点間に渡るように、縦横の切断予定ラインを交差させた。その結果、図20(b)に示すように、切断予定ラインから外れた不要な亀裂は伸展せずに、各切断予定ラインに沿って精度良く加工対象物を切断することができた。
【0089】
図21は、第2の実施例の加工順序及び加工結果の写真を示す図である。図21(a)に示すように、切断予定ライン(図21(a)の一点鎖線)に沿ってレーザ光を照射し(図21(a)の実線の矢印)、各切断予定ラインに対して5列の改質領域を形成した。加工順序は、縦横の切断予定ライン、正方形環状(外形30mm×30mm)の切断予定ライン、C1〜C5(単位mm)の面取り面に沿った切断予定ラインの順序である。この第2の実施例では、面取り面に沿った切断予定ラインが縦横の切断予定ラインの中間点間に渡るように、縦横の切断予定ラインを交差させた。その結果、図21(b)に示すように、切断予定ラインから外れた不要な亀裂は伸展せずに、各切断予定ラインに沿って精度良く加工対象物を切断することができた。
【0090】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、各切断予定ラインに対して、加工対象物の厚さ方向に並ぶように複数列の改質領域を形成してもよい。その場合にも、本発明によれば、面取りされた角部を有する有効部を板状の加工対象物から精度良く切り出すことができる。1本の切断予定ラインに対する改質領域の列数は、加工対象物の厚さ等に応じて適宜決定することができるものである。
【0091】
また、上記実施形態では、切断予定ラインに沿って外力を作用させて、改質領域から発生した亀裂を加工対象物の表面及び裏面に到達させたが、これに限定されない。各切断予定ラインに対する1列又は複数列の改質領域の形成に伴って(加工対象物に何ら外力を作用させずに)、改質領域から発生した亀裂を加工対象物の表面及び裏面に到達させて、それにより、切断予定ラインに沿って加工対象物を切断する場合もある。
【0092】
また、有効部の角部は、その面取り面が略平面となるようにC面取りされたものであってもよい。その場合にも、本発明によれば、面取り面から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止し、面取りされた角部を有する有効部を板状の加工対象物から精度良く切り出すことができる。
【0093】
また、加工対象物の材料としては、ガラスに限定されず、種々の材料が適用可能である。そして、改質領域としては、材料の種類及びレーザ光の照射条件等によって、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等や、これらが混在した領域が形成される。
【符号の説明】
【0094】
1…加工対象物、1a,1b…側面、3…表面、4…裏面、18…有効部、19…角部、19a…面取り面、21a,21b…外縁部、51,51a,51b…切断予定ライン(第1の切断予定ライン)、52,52a,52b…切断予定ライン(第3の切断予定ライン)、53…切断予定ライン(第2の切断予定ライン)、71…改質領域(第1の改質領域)、72…改質領域(第3の改質領域)、73…改質領域(第2の改質領域)、L…レーザ光、P…集光点。
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の加工対象物から、面取りされた角部を有する有効部を切り出すためのレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野のレーザ加工方法として、次のようなものが知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、切断予定ラインの直線部に沿ってレーザ光の集光点を移動させるときには、レーザ光の集光点のスポット形状を楕円形にして、その長軸を切断予定ラインの直線部に一致させ、切断予定ラインの曲線部に沿ってレーザ光の集光点を移動させるときには、レーザ光の集光点のスポット形状を円形にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−062289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなレーザ加工方法にあっては、切断予定ラインの曲線部に沿ってレーザ光を照射した際に、曲線部から不要な方向に亀裂が伸展し、その結果、加工対象物から切り出すべき有効部に損傷が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、面取りされた角部を有する有効部を板状の加工対象物から精度良く切り出すことを可能にするレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザ加工方法は、板状の加工対象物から、面取りされた角部を有する有効部を切り出すためのレーザ加工方法であって、角部に至る有効部の一方の側面に沿いかつ角部を通るように延在する第1の切断予定ラインに沿って、レーザ光の集光点を相対的に移動させることにより、第1の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる第1の改質領域を加工対象物の内部に形成する第1の工程と、第1の工程の後に、角部の面取り面に沿うように延在する第2の切断予定ラインに沿って、レーザ光の集光点を相対的に移動させることにより、第2の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる第2の改質領域を加工対象物の内部に形成する第2の工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このレーザ加工方法では、角部に至る有効部の一方の側面に沿いかつ角部を通るように延在する第1の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる第1の改質領域を形成し、その後に、角部の面取り面に沿うように延在する第2の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる第2の改質領域を形成する。これにより、面取り面に沿って形成された第2の改質領域から発生する亀裂は、既に形成された第1の改質領域に沿うように伸展することになる。よって、このレーザ加工方法によれば、面取り面から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することができ、その結果、面取りされた角部を有する有効部を板状の加工対象物から精度良く切り出すことが可能となる。
【0008】
本発明のレーザ加工方法は、角部に至る有効部の他方の側面に沿いかつ角部を通るように第3の切断予定ラインが延在している場合には、第2の工程の前に、第3の切断予定ラインに沿って、レーザ光の集光点を相対的に移動させることにより、第3の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる第3の改質領域を加工対象物の内部に形成する第3の工程を更に備えていてもよい。この場合、面取り面に沿って形成された第2の改質領域から発生する亀裂は、既に形成された第1の改質領域及び第3の改質領域のそれぞれに沿うように伸展することになる。従って、面取り面から不要な方向に亀裂が伸展するのをより確実に防止することが可能となる。
【0009】
本発明のレーザ加工方法においては、第1の切断予定ラインは、隣り合う有効部同士の境界面に沿うように延在していてもよい。この場合、一方の有効部の面取り面に沿って形成された第2の改質領域から発生する亀裂は、隣り合う有効部同士の境界面に沿って既に形成された第1の改質領域に沿うように伸展することになる。従って、一方の有効部の面取り面から他方の有効部内に亀裂が伸展するのを防止することが可能となる。
【0010】
本発明のレーザ加工方法においては、第1の切断予定ラインは、有効部と、加工対象物の側面を含む外縁部との境界面に沿うように延在していてもよい。この場合、有効部から加工対象物の側面を切り落として、有効部の側面の品質を均一化することが可能となる。
【0011】
本発明のレーザ加工方法においては、第1の切断予定ラインは、加工対象物を横切るように延在していてもよい。この場合、第1の切断予定ラインに沿って形成された第1の改質領域の端部から発生する亀裂は、加工対象物の側面に至ることになる。従って、第1の改質領域の端部から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することが可能となる。
【0012】
本発明のレーザ加工方法においては、面取り面は、凸曲面であってもよいし、或いは、略平面であってもよい。いずれの場合にも、面取り面から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することが可能である。
【0013】
本発明のレーザ加工方法においては、第1の工程では、第1の周波数でレーザ光をパルス発振させると共に、第1の速度で集光点を相対的に移動させ、第2の工程では、第1の周波数よりも低い第2の周波数でレーザ光をパルス発振させると共に、第1の速度よりも低い第2の速度で集光点を相対的に移動させてもよい。これによれば、第2の改質領域を面取り面に沿って精度良く形成することができ、しかも、第2の改質領域を、亀裂を伸展させ易いものとして形成することができる。
【0014】
本発明のレーザ加工方法は、第2の工程の後に、第1の改質領域及び第2の改質領域から発生した亀裂を加工対象物の表面及び裏面に到達させることにより、第1の切断予定ライン及び第2の切断予定ラインに沿って加工対象物を切断する第4の工程を更に備えていてもよい。これによれば、面取りされた角部を有する有効部を板状の加工対象物から精度良く切り出すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、面取りされた角部を有する有効部を板状の加工対象物から精度良く切り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】改質領域の形成に用いられるレーザ加工装置の概略構成図である。
【図2】改質領域の形成の対象となる加工対象物の平面図である。
【図3】図2の加工対象物のIII−III線に沿っての断面図である。
【図4】レーザ加工後の加工対象物の平面図である。
【図5】図4の加工対象物のV−V線に沿っての断面図である。
【図6】図4の加工対象物のVI−VI線に沿っての断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図16】本発明の第4の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。
【図17】本発明の第4の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図18】本発明の第4の実施形態のレーザ加工方法が実施されている加工対象物の平面図である。
【図19】比較例の加工順序及び加工結果の写真を示す図である。
【図20】第1の実施例の加工順序及び加工結果の写真を示す図である。
【図21】第2の実施例の加工順序及び加工結果の写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
本発明の一実施形態のレーザ加工方法では、切断予定ラインに沿って加工対象物にレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に切断の起点となる改質領域を形成する。そこで、まず、この改質領域の形成について、図1〜図6を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるためのステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の駆動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
【0020】
このレーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して切断予定ライン5に沿って相対移動させられる。これにより、切断予定ライン5に沿った改質領域が加工対象物1に形成されることとなる。
【0021】
加工対象物1としては、種々の材料(例えば、ガラス、半導体材料、圧電材料等)からなる板状の部材(例えば、基板、ウェハ等)が用いられる。図2に示すように、加工対象物1には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5が設定されている。切断予定ライン5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示すように、加工対象物1の内部に集光点Pを合わせた状態で、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4〜図6に示すように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に形成され、切断予定ライン5に沿って形成された改質領域7が切断起点領域8となる。
【0022】
なお、集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。また、切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、仮想線に限らず加工対象物1の表面3に実際に引かれた線であってもよい。また、改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。また、改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部に形成されていればよい。また、改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。
【0023】
ちなみに、ここでのレーザ光Lは、加工対象物1を透過すると共に加工対象物1の内部の集光点近傍にて特に吸収され、これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一般的に、表面3から溶融され除去されて穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)場合、加工領域は表面3側から徐々に裏面側に進行する。
【0024】
ところで、本実施形態で形成される改質領域は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。更に、改質領域としては、加工対象物の材料において改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある(これらをまとめて高密転移領域ともいう)。
【0025】
また、溶融処理領域や屈折率変化領域、改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、格子欠陥が形成された領域は、更に、それら領域の内部や改質領域と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック等)を内包している場合がある。内包される亀裂は改質領域の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1としては、例えばシリコン、ガラス、LiTaO3又はサファイア(Al2O3)からなる基板やウェハ、又はそのような基板やウェハを含むものが挙げられる。
【0026】
また、本実施形態においては、切断予定ライン5に沿って改質スポット(加工痕)を複数形成することによって、改質領域7を形成している。改質スポットとは、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ照射:レーザショット)で形成される改質部分であり、改質スポットが集まることにより改質領域7となる。改質スポットとしては、クラックスポット、溶融処理スポット若しくは屈折率変化スポット、又はこれらの少なくとも1つが混在するもの等が挙げられる。
【0027】
この改質スポットについては、要求される切断精度、要求される切断面の平坦性、加工対象物の厚さ、種類、結晶方位等を考慮して、その大きさや発生する亀裂の長さを適宜制御することが好ましい。
[第1の実施形態]
【0028】
図7は、本発明の第1の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。図7に示すように、第1の実施形態は、ガラスからなる矩形板状の加工対象物1を、その側面1a,1bに沿ってスペースを設けずに複数行複数列(ここでは、2行2列)に切断し、加工対象物1から矩形板状の有効部18を複数(ここでは、4枚)切り出す場合である。有効部18は、行方向に略平行な一対の側面18a,18a、列方向に略平行な一対の側面18b,18b、及び面取りされた4つの角部19を有するように、加工対象物1から切り出される。角部19は、その面取り面19aが凸曲面となるようにR面取りされる。このような有効部18は、携帯型端末のディスプレイの保護基板等に用いられる。
【0029】
加工対象物1には、切断予定ライン(第1の切断予定ライン)51、切断予定ライン(第3の切断予定ライン)52及び切断予定ライン(第2の切断予定ライン)53が設定される。
【0030】
切断予定ライン51は、角部19に至る一方の側面18aに沿いかつ角部19を通るように延在している。ここでは、切断予定ライン51は、列方向において隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。更には、切断予定ライン51は、加工対象物1を横切るように延在している。すなわち、切断予定ライン51は、列方向に略平行な一対の側面1b,1b間に渡っている。なお、切断予定ライン51が角部19を通るとは、有効部18の一方の側面18aと角部19の面取り面19aとの交線に交差するように(ここでは、略直交するように)切断予定ライン51が延在していることを意味する。
【0031】
切断予定ライン52は、角部19に至る他方の側面18bに沿いかつ角部19を通るように延在している。ここでは、切断予定ライン52は、行方向において隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。更には、切断予定ライン52は、加工対象物1を横切るように延在している。すなわち、切断予定ライン52は、行方向に略平行な一対の側面1a,1a間に渡っている。なお、切断予定ライン52が角部19を通るとは、有効部18の他方の側面18bと角部19の面取り面19aとの交線に交差するように(ここでは、略直交するように)切断予定ライン52が延在していることを意味する。
【0032】
切断予定ライン53は、角部19の面取り面19aに沿うように延在している。すなわち、切断予定ライン53は、有効部18の一方の側面18aと角部19の面取り面19aとの交線と、有効部18の他方の側面18bと角部19の面取り面19aとの交線との間に渡っている。
【0033】
以上のように切断予定ライン51,52,53が設定された加工対象物1から、以下のように、複数の有効部18を切り出す。まず、加工対象物1をレーザ加工装置100の支持台107上に載置する。このとき、加工対象物1の裏面4にテープを貼ったり、或いは支持台107を多孔質状に形成して加工対象物1を真空吸着したりするなど、加工対象物1を保持する。この状態で、加工対象物1の表面3から所定の距離だけ内側にレーザ光Lの集光点Pが位置するようにステージ111を駆動させる。
【0034】
続いて、図8(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン51に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン51に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動(スキャン)させる。このとき、周波数F1でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1で集光点Pを相対的に移動させる。周波数F1が50kHzであり、速度V1が500mm/sであれば、レーザ光Lのパルスピッチ(速度V1/周波数F1)は10μmとなる。このようなレーザ光Lの照射によって、切断予定ライン51に沿って、切断の起点となる改質領域(第1の改質領域)71を加工対象物1の内部に形成する(図9(a)参照)。
【0035】
続いて、図8(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン52に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン52に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F2でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V2で集光点Pを相対的に移動させる。周波数F2が50kHzであり、速度V2が500mm/sであれば、レーザ光Lのパルスピッチ(速度V2/周波数F2)は10μmとなる。このようなレーザ光Lの照射によって、切断予定ライン52に沿って、切断の起点となる改質領域(第3の改質領域)72を加工対象物1の内部に形成する(図9(a)参照)。
【0036】
ここで、ステージ111がレーザ光Lの光軸に略垂直な平面内の2軸方向に移動可能であり、かつレーザ光Lの光軸回りに回転可能なものであれば、次のように、ステージ111を駆動させる。すなわち、切断予定ライン51に沿ってレーザ光Lの集光点Pが相対的に移動するようにステージ111を駆動させる。続いて、その状態で(レーザ光Lの光軸回りに回転するようにステージ111を駆動させずに)、切断予定ライン52に沿ってレーザ光Lの集光点Pが相対的に移動するようにステージ111を駆動させる。
【0037】
一方、ステージ111がレーザ光Lの光軸に略垂直な平面内の1軸方向に移動可能であり、かつレーザ光Lの光軸回りに回転可能なものであれば、次のように、ステージ111を駆動させる。すなわち、切断予定ライン51に沿ってレーザ光Lの集光点Pが相対的に移動するようにステージ111を駆動させる。続いて、レーザ光Lの光軸回りに90°回転するようにステージ111を駆動させ、その状態で、切断予定ライン52に沿ってレーザ光Lの集光点Pが相対的に移動するようにステージ111を駆動させる。
【0038】
なお、切断予定ライン52に沿ってのレーザ光Lの集光点Pの移動及び改質領域72の形成を先に行い、切断予定ライン51に沿ってのレーザ光Lの集光点Pの移動及び改質領域71の形成を後に行ってもよい。また、切断予定ライン51,52に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させるために、レーザ光L側(レーザ光源101、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105等)を移動させてもよいし、加工対象物1側(支持台107等)及びレーザ光L側の両方を移動させてもよい。
【0039】
切断予定ライン51,52に沿って改質領域71,72を形成した後に、図8(b)に示すように、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1,F2よりも低い周波数F3でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1,V2よりも低い速度V3で集光点Pを相対的に移動させる。周波数F3が1kHzであり、速度V3が10mm/sであれば、レーザ光Lのパルスピッチ(速度V3/周波数F3)は10μmとなる。このようなレーザ光Lの照射によって、切断予定ライン53に沿って、切断の起点となる改質領域(第2の改質領域)73を加工対象物1の内部に形成する(図9(a)参照)。
【0040】
ここで、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する場合、図8(b)に示すように、有効部18の外縁に沿ってレーザ光Lの集光点Pが矩形環状に移動するようステージ111を駆動させる。このとき、各角部19の面取り面19aでは、加工対象物1にレーザ光Lが照射されるようにレーザ光Lの照射をONに切り替え(図8(b)の実線の矢印)、各側面18a,18bでは、加工対象物1にレーザ光Lが照射されないようにレーザ光Lの照射をOFFに切り替える(図8(b)の破線の矢印)。そして、各側面18a,18bでは、速度V3よりも高い速度(例えば、速度V1,V2に相当する速度)でレーザ光Lの集光点Pが移動するようステージ111を駆動させる。
【0041】
なお、レーザ光Lの繰返し周波数の調整は、レーザ光源101及びレーザ光源制御部102に超音波光変調器(AOM)等の光学素子を付加することにより実現される。AOMによって繰返し周波数を間引くことで、繰返し周波数を周波数F1,F2から周波数F3に低くすることができる。また、切断予定ライン53に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させるために、レーザ光L側を移動させてもよいし、加工対象物1側及びレーザ光L側の両方を移動させてもよい。
【0042】
図9(a)に示すように、切断予定ライン51,52,53に沿って改質領域71,72,73を形成した後に、切断予定ライン51,52,53に沿って外力を作用させ、改質領域71,72,73から発生した亀裂を加工対象物1の表面3及び裏面4に到達させることにより、切断予定ライン51,52,53に沿って加工対象物1を切断する。以上のようにして、図9(b)に示すように、加工対象物1から、面取りされた角部19を有する有効部18を切り出す。
【0043】
以上説明したように、第1の実施形態のレーザ加工方法では、切断予定ライン51,52に沿って(すなわち、有効部18の側面18a,18bに沿って)改質領域71,72を形成し、その後に、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する。これにより、面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、既に形成された改質領域71,72に沿うように伸展することになる。よって、第1の実施形態のレーザ加工方法によれば、面取り面19aから不要な方向に亀裂が伸展するのを確実に防止し、面取りされた角部19を有する有効部18を板状の加工対象物1から精度良く切り出すことができる。このようなレーザ加工方法は、1枚の加工対象物1から複数の有効部18を切り出す場合に極めて有効である。
【0044】
ここで、切断予定ライン51,52は、隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。これにより、一方の有効部18の面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿って既に形成された改質領域71,72に沿うように伸展することになる。従って、一方の有効部18の面取り面19aから他方の有効部18内に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0045】
更に、切断予定ライン51,52は、加工対象物1を横切るように延在していている。これにより、切断予定ライン51,52に沿って形成された改質領域71,72の端部から発生する亀裂は、加工対象物1の側面1a,1bに至ることになる。従って、改質領域71,72の端部から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0046】
また、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する場合には、切断予定ライン51,52に沿って(すなわち、有効部18の側面18a,18bに沿って)改質領域71,72を形成する場合に比べ、レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度を低くする。これにより、有効部18に対して面取り面19aの外側をレーザ光Lの集光点Pが通るような事態を防止し、改質領域73を面取り面19aに沿って精度良く形成することができる。
【0047】
更に、レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度を低くすると共に、切断予定ライン53に沿って改質領域73を形成する場合には、切断予定ライン51,52に沿って改質領域71,72を形成する場合に比べ、レーザ光Lの繰返し周波数を低くする。レーザ光Lの繰返し周波数を低くせずにレーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度を低くすると、パルスピッチが短くなるため、改質スポット(レーザ光Lの1パルスの照射で形成される改質部分)が密の状態で改質領域73が形成され、その結果、加工対象物1の厚さ方向等に亀裂が伸展し難くなるおそれがある。レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度を低くすると共にレーザ光Lの繰返し周波数を低くすることで、パルスピッチが短くなるのを防止し、有効部18の面取り面19aに沿った改質領域73を、亀裂を伸展させ易いものとして形成することができる。
[第2の実施形態]
【0048】
図10は、本発明の第2の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。図10に示すように、第2の実施形態は、ガラスからなる矩形板状の加工対象物1を、その側面1a,1bに沿ってスペースを設けて複数行複数列(ここでは、2行2列)に切断する点で、第1の実施形態と相違する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第2の実施形態について説明する。
【0049】
加工対象物1には、切断予定ライン(第1の切断予定ライン)51a,51b、切断予定ライン(第3の切断予定ライン)52a,52b及び切断予定ライン53が設定される。
【0050】
切断予定ライン51a,51bは、角部19に至る一方の側面18aに沿いかつ角部19を通るように延在している。ここでは、切断予定ライン51aは、列方向において隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。また、切断予定ライン51bは、有効部18と、加工対象物1の側面1aを含む外縁部21aとの境界面に沿うように延在している。更には、切断予定ライン51a,51bは、加工対象物1を横切るように延在している。すなわち、切断予定ライン51a,51bは、列方向に略平行な一対の側面1b,1b間に渡っている。
【0051】
切断予定ライン52a,52bは、角部19に至る他方の側面18bに沿いかつ角部19を通るように延在している。ここでは、切断予定ライン52aは、行方向において隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。また、切断予定ライン52bは、有効部18と、加工対象物1の側面1bを含む外縁部21bとの境界面に沿うように延在している。更には、切断予定ライン52a,52bは、加工対象物1を横切るように延在している。すなわち、切断予定ライン52a,52bは、行方向に略平行な一対の側面1a,1a間に渡っている。
【0052】
以上のように切断予定ライン51a,51b,52a,52b,53が設定された加工対象物1から、以下のように、複数(ここでは、4枚)の有効部18を切り出す。まず、加工対象物1をレーザ加工装置100の支持台107上に載置し、続いて、図11(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン51a,51bに沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン51a,51bに沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン51a,51bに沿って改質領域71を加工対象物1の内部に形成する(図12(a)参照)。
【0053】
続いて、図11(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン52a,52bに沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン52a,52bに沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F2でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V2で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン52a,52bに沿って改質領域72を加工対象物1の内部に形成する(図12(a)参照)。
【0054】
なお、切断予定ライン52a,52bに沿ってのレーザ光Lの集光点Pの移動及び改質領域72の形成を先に行い、切断予定ライン51a,51bに沿ってのレーザ光Lの集光点Pの移動及び改質領域71の形成を後に行ってもよい。
【0055】
切断予定ライン51a,51b,52a,52bに沿って改質領域71,72を形成した後に、図11(b)に示すように、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1,F2よりも低い周波数F3でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1,V2よりも低い速度V3で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン53に沿って改質領域73を加工対象物1の内部に形成する(図12(a)参照)。
【0056】
なお、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する場合には、第1の実施形態と同様に、レーザ光Lの照射のON/OFFの切替え、及びレーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度の切替えを行う。
【0057】
図12(a)に示すように、切断予定ライン51a,51b,52a,52b,53に沿って改質領域71,72,73を形成した後に、切断予定ライン51a,51b,52a,52b,53に沿って外力を作用させ、改質領域71,72,73から発生した亀裂を加工対象物1の表面3及び裏面4に到達させることにより、切断予定ライン51a,51b,52a,52b,53に沿って加工対象物1を切断する。以上のようにして、図12(b)に示すように、加工対象物1から、面取りされた角部19を有する有効部18を切り出す。
【0058】
以上説明したように、第2の実施形態のレーザ加工方法では、切断予定ライン51a,51b,52a,52bに沿って(すなわち、有効部18の側面18a,18bに沿って)改質領域71,72を形成し、その後に、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する。これにより、面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、既に形成された改質領域71,72に沿うように伸展することになる。よって、第2の実施形態のレーザ加工方法によれば、面取り面19aから不要な方向に亀裂が伸展するのを確実に防止し、面取りされた角部19を有する有効部18を板状の加工対象物1から精度良く切り出すことができる。
【0059】
ここで、切断予定ライン51a,52aは、隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。これにより、一方の有効部18の面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿って既に形成された改質領域71,72に沿うように伸展することになる。従って、一方の有効部18の面取り面19aから他方の有効部18内に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0060】
また、切断予定ライン51b,52bは、有効部18と外縁部21a,21bとの境界面に沿うように延在している。これにより、有効部18から加工対象物1の側面1a,1bを切り落として、有効部18の側面18a,18bの品質を均一化することができる。
【0061】
更に、切断予定ライン51a,51b,52a,52bは、加工対象物1を横切るように延在していている。これにより、切断予定ライン51a,51b,52a,52bに沿って形成された改質領域71,72の端部から発生する亀裂は、加工対象物1の側面1a,1bに至ることになる。従って、改質領域71,72の端部から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0062】
また、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する場合には、切断予定ライン51a,51b,52a,52bに沿って(すなわち、有効部18の側面18a,18bに沿って)改質領域71,72を形成する場合に比べ、レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度、及びレーザ光Lの繰返し周波数を低くする。これにより、改質領域73を面取り面19aに沿って精度良く形成することができ、しかも、改質領域73を、亀裂を伸展させ易いものとして形成することができる。
[第3の実施形態]
【0063】
図13は、本発明の第3の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。図13に示すように、第3の実施形態は、ガラスからなる矩形板状の加工対象物1を複数行1列(ここでは、2行1列)に切断する点で、第1の実施形態と相違する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第3の実施形態について説明する。
【0064】
加工対象物1には、切断予定ライン51及び切断予定ライン53が設定される。このように切断予定ライン51,53が設定された加工対象物1から、以下のように、複数(ここでは、2枚)の有効部18を切り出す。まず、加工対象物1をレーザ加工装置100の支持台107上に載置し、続いて、図14(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン51に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン51に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン51に沿って改質領域71を加工対象物1の内部に形成する(図15(a)参照)。
【0065】
切断予定ライン51に沿って改質領域71を形成した後に、図14(b)に示すように、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1よりも低い周波数F3でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1よりも低い速度V3で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン53に沿って改質領域73を加工対象物1の内部に形成する(図15(a)参照)。
【0066】
なお、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する場合には、第1の実施形態と同様に、レーザ光Lの照射のON/OFFの切替え、及びレーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度の切替えを行う。
【0067】
図15(a)に示すように、切断予定ライン51,53に沿って改質領域71,73を形成した後に、切断予定ライン51,53に沿って外力を作用させ、改質領域71,73から発生した亀裂を加工対象物1の表面3及び裏面4に到達させることにより、切断予定ライン51,53に沿って加工対象物1を切断する。以上のようにして、図15(b)に示すように、加工対象物1から、面取りされた角部19を有する有効部18を切り出す。
【0068】
以上説明したように、第3の実施形態のレーザ加工方法では、切断予定ライン51に沿って(すなわち、有効部18の側面18aに沿って)改質領域71を形成し、その後に、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する。これにより、面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、既に形成された改質領域71に沿うように伸展することになる。よって、第3の実施形態のレーザ加工方法によれば、面取り面19aから不要な方向に亀裂が伸展するのを確実に防止し、面取りされた角部19を有する有効部18を板状の加工対象物1から精度良く切り出すことができる。
【0069】
ここで、切断予定ライン51は、隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿うように延在している。これにより、一方の有効部18の面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、隣り合う有効部18,18同士の境界面に沿って既に形成された改質領域71に沿うように伸展することになる。従って、一方の有効部18の面取り面19aから他方の有効部18内に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0070】
更に、切断予定ライン51は、加工対象物1を横切るように延在していている。これにより、切断予定ライン51に沿って形成された改質領域71の端部から発生する亀裂は、加工対象物1の側面1bに至ることになる。従って、改質領域71の端部から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0071】
また、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する場合には、切断予定ライン51に沿って(すなわち、有効部18の側面18aに沿って)改質領域71を形成する場合に比べ、レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度、及びレーザ光Lの繰返し周波数を低くする。これにより、改質領域73を面取り面19aに沿って精度良く形成することができ、しかも、改質領域73を、亀裂を伸展させ易いものとして形成することができる。
[第4の実施形態]
【0072】
図16は、本発明の第4の実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。図16に示すように、第4の実施形態は、ガラスからなる矩形板状の加工対象物1を、その側面1a,1bに沿ってスペースを設けると共に、隣り合う有効部18,18間にスペースを設けて、1行複数列(ここでは、1行2列)に切断する点で、第1の実施形態と相違する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第4の実施形態について説明する。
【0073】
加工対象物1には、切断予定ライン51b、切断予定ライン52b,52c及び切断予定ライン53が設定される。
【0074】
切断予定ライン51bは、角部19に至る一方の側面18aに沿いかつ角部19を通るように延在している。ここでは、切断予定ライン51bは、有効部18と、加工対象物1の側面1aを含む外縁部21aとの境界面に沿うように延在している。更には、切断予定ライン51bは、加工対象物1を横切るように延在している。すなわち、切断予定ライン51bは、列方向に略平行な一対の側面1b,1b間に渡っている。
【0075】
切断予定ライン52b,52cは、角部19に至る他方の側面18bに沿いかつ角部19を通るように延在している。ここでは、切断予定ライン52bは、有効部18と、加工対象物1の側面1bを含む外縁部21bとの境界面に沿うように延在している。また、切断予定ライン52cは、有効部18と、隣り合う有効部18,18間に介在された中間部22との境界面に沿うように延在している。更には、切断予定ライン52b,52cは、加工対象物1を横切るように延在している。すなわち、切断予定ライン52b,52cは、行方向に略平行な一対の側面1a,1a間に渡っている。
【0076】
以上のように切断予定ライン51b,52b,52c,53が設定された加工対象物1から、以下のように、複数(ここでは、2枚)の有効部18を切り出す。まず、加工対象物1をレーザ加工装置100の支持台107上に載置し、続いて、図17(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン51bに沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン51bに沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン51bに沿って改質領域71を加工対象物1の内部に形成する(図18(a)参照)。
【0077】
続いて、図17(a)に示すように、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、切断予定ライン52b,52cに沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、切断予定ライン52b,52cに沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F2でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V2で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン52b,52cに沿って改質領域72を加工対象物1の内部に形成する(図18(a)参照)。
【0078】
なお、切断予定ライン52b,52cに沿ってのレーザ光Lの集光点Pの移動及び改質領域72の形成を先に行い、切断予定ライン51bに沿ってのレーザ光Lの集光点Pの移動及び改質領域71の形成を後に行ってもよい。
【0079】
切断予定ライン51b,52b,52cに沿って改質領域71,72を形成した後に、図17(b)に示すように、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。つまり、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させる。このとき、周波数F1,F2よりも低い周波数F3でレーザ光Lをパルス発振させると共に、速度V1,V2よりも低い速度V3で集光点Pを相対的に移動させる。これにより、切断予定ライン53に沿って改質領域73を加工対象物1の内部に形成する(図18(a)参照)。
【0080】
なお、有効部18ごとに、切断予定ライン53に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する場合には、第1の実施形態と同様に、レーザ光Lの照射のON/OFFの切替え、及びレーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度の切替えを行う。
【0081】
図18(a)に示すように、切断予定ライン51b,52b,52c,53に沿って改質領域71,72,73を形成した後に、切断予定ライン51b,52b,52c,53に沿って外力を作用させ、改質領域71,72,73から発生した亀裂を加工対象物1の表面3及び裏面4に到達させることにより、切断予定ライン51b,52b,52c,53に沿って加工対象物1を切断する。以上のようにして、図18(b)に示すように、加工対象物1から、面取りされた角部19を有する有効部18を切り出す。
【0082】
以上説明したように、第4の実施形態のレーザ加工方法では、切断予定ライン51b,52b,52cに沿って(すなわち、有効部18の側面18a,18bに沿って)改質領域71,72を形成し、その後に、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する。これにより、面取り面19aに沿って形成された改質領域73から発生する亀裂は、既に形成された改質領域71,72に沿うように伸展することになる。よって、第4の実施形態のレーザ加工方法によれば、面取り面19aから不要な方向に亀裂が伸展するのを確実に防止し、面取りされた角部19を有する有効部18を板状の加工対象物1から精度良く切り出すことができる。
【0083】
ここで、切断予定ライン51b,52bは、有効部18と外縁部21a,21bとの境界面に沿うように延在している。これにより、有効部18から加工対象物1の側面1a,1bを切り落として、有効部18の側面18a,18bの品質を均一化することができる。
【0084】
更に、切断予定ライン51b,52b,52cは、加工対象物1を横切るように延在していている。これにより、切断予定ライン51b,52b,52cに沿って形成された改質領域71,72の端部から発生する亀裂は、加工対象物1の側面1a,1bに至ることになる。従って、改質領域71,72の端部から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止することができる。
【0085】
また、切断予定ライン53に沿って(すなわち、有効部18の面取り面19aに沿って)改質領域73を形成する場合には、切断予定ライン51b,52b,52cに沿って(すなわち、有効部18の側面18a,18bに沿って)改質領域71,72を形成する場合に比べ、レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度、及びレーザ光Lの繰返し周波数を低くする。これにより、改質領域73を面取り面19aに沿って精度良く形成することができ、しかも、改質領域73を、亀裂を伸展させ易いものとして形成することができる。
【0086】
次に、比較例及び実施例について説明する。ここでは、加工対象物として、外形60mm×60mm、厚さ900μmの強化ガラス板を用意した。この加工対象物に対して、出力20μJ、繰返し周波数1kHz、集光点の相対的移動速度10mm/sの条件でレーザ光を照射し、各切断予定ラインに対して、加工対象物の厚さ方向に並ぶように5列(「加工対象物のレーザ光入射面と集光点との距離」は、それぞれ、380μm,310μm,240μm,170μm,100μm)の改質領域を形成した。そして、切断予定ラインに沿って加工対象物を切断するために、各切断予定ラインに沿って手で外力を作用させた。
【0087】
図19は、比較例の加工順序及び加工結果の写真を示す図である。図19(a)に示すように、切断予定ライン(図19(a)の一点鎖線)に沿ってレーザ光を照射し(図19(a)の実線の矢印)、各切断予定ラインに対して5列の改質領域を形成した。加工順序は、縦横の切断予定ライン、正方形環状(外形30mm×30mm)の切断予定ライン、R5〜R10(単位mm)の面取り面に沿った切断予定ラインの順序である。この比較例では、面取り面に沿った切断予定ラインが縦横の切断予定ラインの端点間に渡るように、縦横の切断予定ラインを交差させなかった。その結果、図19(b)に示すように、右下の面取り面の右上の端部からから右上に向かって、切断予定ラインから外れた不要な亀裂が伸展してしまった。
【0088】
図20は、第1の実施例の加工順序及び加工結果の写真を示す図である。図20(a)に示すように、切断予定ライン(図20(a)の一点鎖線)に沿ってレーザ光を照射し(図20(a)の実線の矢印)、各切断予定ラインに対して5列の改質領域を形成した。加工順序は、縦横の切断予定ライン、正方形環状(外形30mm×30mm)の切断予定ライン、R5〜R10(単位mm)の面取り面に沿った切断予定ラインの順序である。この第1の実施例では、面取り面に沿った切断予定ラインが縦横の切断予定ラインの中間点間に渡るように、縦横の切断予定ラインを交差させた。その結果、図20(b)に示すように、切断予定ラインから外れた不要な亀裂は伸展せずに、各切断予定ラインに沿って精度良く加工対象物を切断することができた。
【0089】
図21は、第2の実施例の加工順序及び加工結果の写真を示す図である。図21(a)に示すように、切断予定ライン(図21(a)の一点鎖線)に沿ってレーザ光を照射し(図21(a)の実線の矢印)、各切断予定ラインに対して5列の改質領域を形成した。加工順序は、縦横の切断予定ライン、正方形環状(外形30mm×30mm)の切断予定ライン、C1〜C5(単位mm)の面取り面に沿った切断予定ラインの順序である。この第2の実施例では、面取り面に沿った切断予定ラインが縦横の切断予定ラインの中間点間に渡るように、縦横の切断予定ラインを交差させた。その結果、図21(b)に示すように、切断予定ラインから外れた不要な亀裂は伸展せずに、各切断予定ラインに沿って精度良く加工対象物を切断することができた。
【0090】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、各切断予定ラインに対して、加工対象物の厚さ方向に並ぶように複数列の改質領域を形成してもよい。その場合にも、本発明によれば、面取りされた角部を有する有効部を板状の加工対象物から精度良く切り出すことができる。1本の切断予定ラインに対する改質領域の列数は、加工対象物の厚さ等に応じて適宜決定することができるものである。
【0091】
また、上記実施形態では、切断予定ラインに沿って外力を作用させて、改質領域から発生した亀裂を加工対象物の表面及び裏面に到達させたが、これに限定されない。各切断予定ラインに対する1列又は複数列の改質領域の形成に伴って(加工対象物に何ら外力を作用させずに)、改質領域から発生した亀裂を加工対象物の表面及び裏面に到達させて、それにより、切断予定ラインに沿って加工対象物を切断する場合もある。
【0092】
また、有効部の角部は、その面取り面が略平面となるようにC面取りされたものであってもよい。その場合にも、本発明によれば、面取り面から不要な方向に亀裂が伸展するのを防止し、面取りされた角部を有する有効部を板状の加工対象物から精度良く切り出すことができる。
【0093】
また、加工対象物の材料としては、ガラスに限定されず、種々の材料が適用可能である。そして、改質領域としては、材料の種類及びレーザ光の照射条件等によって、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等や、これらが混在した領域が形成される。
【符号の説明】
【0094】
1…加工対象物、1a,1b…側面、3…表面、4…裏面、18…有効部、19…角部、19a…面取り面、21a,21b…外縁部、51,51a,51b…切断予定ライン(第1の切断予定ライン)、52,52a,52b…切断予定ライン(第3の切断予定ライン)、53…切断予定ライン(第2の切断予定ライン)、71…改質領域(第1の改質領域)、72…改質領域(第3の改質領域)、73…改質領域(第2の改質領域)、L…レーザ光、P…集光点。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の加工対象物から、面取りされた角部を有する有効部を切り出すためのレーザ加工方法であって、
前記角部に至る前記有効部の一方の側面に沿いかつ前記角部を通るように延在する第1の切断予定ラインに沿って、レーザ光の集光点を相対的に移動させることにより、前記第1の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に第1の改質領域を形成する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記角部の面取り面に沿うように延在する第2の切断予定ラインに沿って、レーザ光の集光点を相対的に移動させることにより、前記第2の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に第2の改質領域を形成する第2の工程と、を備えることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
前記角部に至る前記有効部の他方の側面に沿いかつ前記角部を通るように第3の切断予定ラインが延在している場合には、
前記第2の工程の前に、前記第3の切断予定ラインに沿って、レーザ光の集光点を相対的に移動させることにより、前記第3の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に第3の改質領域を形成する第3の工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記第1の切断予定ラインは、隣り合う前記有効部同士の境界面に沿うように延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記第1の切断予定ラインは、前記有効部と、前記加工対象物の側面を含む外縁部との境界面に沿うように延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記第1の切断予定ラインは、前記加工対象物を横切るように延在していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記面取り面は、凸曲面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記面取り面は、略平面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記第1の工程では、第1の周波数で前記レーザ光をパルス発振させると共に、第1の速度で前記集光点を相対的に移動させ、
前記第2の工程では、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数で前記レーザ光をパルス発振させると共に、前記第1の速度よりも低い第2の速度で前記集光点を相対的に移動させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記第2の工程の後に、前記第1の改質領域及び前記第2の改質領域から発生した亀裂を前記加工対象物の表面及び裏面に到達させることにより、前記第1の切断予定ライン及び前記第2の切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断する第4の工程を更に備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項1】
板状の加工対象物から、面取りされた角部を有する有効部を切り出すためのレーザ加工方法であって、
前記角部に至る前記有効部の一方の側面に沿いかつ前記角部を通るように延在する第1の切断予定ラインに沿って、レーザ光の集光点を相対的に移動させることにより、前記第1の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に第1の改質領域を形成する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記角部の面取り面に沿うように延在する第2の切断予定ラインに沿って、レーザ光の集光点を相対的に移動させることにより、前記第2の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に第2の改質領域を形成する第2の工程と、を備えることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
前記角部に至る前記有効部の他方の側面に沿いかつ前記角部を通るように第3の切断予定ラインが延在している場合には、
前記第2の工程の前に、前記第3の切断予定ラインに沿って、レーザ光の集光点を相対的に移動させることにより、前記第3の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に第3の改質領域を形成する第3の工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記第1の切断予定ラインは、隣り合う前記有効部同士の境界面に沿うように延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記第1の切断予定ラインは、前記有効部と、前記加工対象物の側面を含む外縁部との境界面に沿うように延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記第1の切断予定ラインは、前記加工対象物を横切るように延在していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記面取り面は、凸曲面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記面取り面は、略平面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記第1の工程では、第1の周波数で前記レーザ光をパルス発振させると共に、第1の速度で前記集光点を相対的に移動させ、
前記第2の工程では、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数で前記レーザ光をパルス発振させると共に、前記第1の速度よりも低い第2の速度で前記集光点を相対的に移動させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記第2の工程の後に、前記第1の改質領域及び前記第2の改質領域から発生した亀裂を前記加工対象物の表面及び裏面に到達させることにより、前記第1の切断予定ライン及び前記第2の切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断する第4の工程を更に備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−240107(P2012−240107A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114852(P2011−114852)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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