説明

レーザ加工機

【課題】 レーザ加工機において、簡素な構成によりレーザ光の光強度分布を変化させることができ、それによりレーザ加工の品質を向上することができるようにする。
【解決手段】 リペア装置50として、ガラス基板2を加工するためのレーザ光rを発生するリペア用光源14と、レーザ光rをガラス基板2上に導くレンズ20、対物レンズ9からなる投影光学系とを備え、リペア用光源14とガラス基板2との間の光路中に、レーザ光rの瞳内の光強度分布を変化させる面積分布型減光フィルタ14Aを設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工機に関する。例えば、レーザ光を被加工物に対して相対移動して加工を行ったり、レーザ光を空間変調素子などにより所望の加工形状に変形して被加工物に照射することにより加工を行ったりするレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光により被加工物を加工するレーザ加工機が広く用いられるようになってきた。レーザ加工は、レーザ光を微小スポットに絞って被加工物を加工したり、空間変調素子などにより空間変調を行い一定の光束を所望の加工形状に応じて変形することにより加工を行ったりすることができるので精密加工に適している。
一方、レーザ光は、ガウス分布もしくはガウス分布に近い光強度分布を有するが、加工精度や加工効率などを向上するためには、他の光強度分布とすることが好ましい場合がある。
そのため、従来、所定の光束径の範囲で光強度を均一化して断面矩形状の光強度分布とすることが行われている。
例えば、特許文献1には、ホログラム素子(回折素子)とシリンドリカルレンズアレイを用いて、レーザ発振部を複数並べたレーザアレイ光源から均一な光強度分布を有する光束を形成するレーザ照明光学系およびレーザ加工機が記載されている。
また、特許文献2には、レーザ光を平行光学系により平行レーザビームとし、プリズムにより光強度分布を均一化するレーザ加工ヘッドが記載されている。
また、特許文献3には、レーザ光を回折型光学素子(DOE)と集光レンズに入射して、集光レンズの焦点面から外れたデフォーカス面に像面を設置し、回折型光学素子によって分岐されたレーザ光をデフォーカス面で合体して一様な光量分布を形成するレーザ光学システムおよびレーザ加工方法が記載されている。
【特許文献1】特開2003−90959号公報(図1、6、8、10)
【特許文献2】特開2003−48095号公報(図1)
【特許文献3】特表2003−114400号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来のレーザ加工機には、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、レーザアレイ、回折素子、シリンドリカルレンズアレイなどの製作の難易度が高い光学素子を複数組み合わせる構成とするので、大型で高価な装置となってしまうという問題がある。
特許文献2に記載の技術では、平行光学系が2段必要となるなど、複雑な光学系となり、プリズムの加工精度や配置精度なども高精度にする必要があるので、製作コストが高価な装置となってしまうという問題がある。
特許文献3に記載の技術では、回折型光学素子のような製作の難易度が高い光学素子を用いるため高価な装置となるという問題がある。また、所望の光強度分布を得るためは、配置精度を高精度なものとする必要があるので、製作コストが高価につく装置となってしまうという問題がある。
また、特許文献1〜3のいずれの場合も、光学素子の反射、屈折、回折などの現象を用いるので、上記のような光学系を構成するためにある程度の光路長が必要となり、装置が大型化するという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、簡素な構成によりレーザ光の光強度分布を変化させることができ、それによりレーザ加工の品質を向上することができるレーザ加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明のレーザ加工機は、被加工物を加工するためのレーザ光を発生するレーザ光源と、該レーザ光源で発生されたレーザ光を前記被加工物上に導く投影光学系とを備え、前記レーザ光源と前記被加工物との間の光路中に、前記レーザ光の瞳内の光強度分布を変化させる面積分布型減光フィルタを設けた構成とする。
この発明によれば、レーザ光源と被加工物との間の光路中に、面積分布型減光フィルタを設けるので、その透過率分布を適宜設定することにより、レーザ光の瞳内の光強度分布を変更し、投影光学系を透過後の被加工物上の光強度分布の最適化を図ることができる。このような構成では、面積分布型減光フィルタを光路中に配置して透過率を調整するだけなので、簡素かつコンパクトな装置とすることができる。
【0006】
また、本発明のレーザ加工機では、前記レーザ光源と前記投影光学系との間の光路中に、前記レーザ光源で発生されたレーザ光を前記被加工物の加工情報に応じて空間変調する空間変調素子を備え、該空間変調素子により変調されたレーザ光による画像が、前記投影光学系により前記被加工物上に投影されるようにした構成とすることが好ましい。
この場合、レーザ光が、空間変調素子により、被加工物の加工情報に応じて空間変調されて被加工物上に投影されるので、1ショットの照射により、レーザ光の照射範囲内で加工情報に応じた適宜形状の加工を行うことが可能になる。その際、面積分布型減光フィルタを備えるので、例えば、レーザ光が空間変調素子に入射する前の光路上に面積分布型減光フィルタを配置する場合には空間変調素子に照射されるレーザ光の光強度分布を調整することにより、また、レーザ光が空間変調素子から出射された後の光路上に面積分布型減光フィルタを配置する場合には空間変調素子からの出射光の光強度分布を調整することにより、それぞれ、被加工物上での光強度のムラを低減することができるので、加工ムラを低減したレーザ加工を行うことができる。
【0007】
また、本発明の空間変調素子を備えるレーザ加工機では、予め記憶された情報を基に前記被加工物の加工形状を決定し、前記空間変調素子を変調駆動する変調信号を算出する空間変調算出手段を備えた構成とすることが好ましい。
この場合、空間変調算出手段を備えることにより、予め記憶された情報により加工形状を決定して空間変調素子を変調駆動するので、種々の加工形状に対応して迅速な加工を行うことができる。
【0008】
また、本発明の空間変調素子を備えるレーザ加工機では、前記レーザ光源と前記空間変調素子との間の光路中に、前記レーザ光源から照射されるレーザ光のビーム形状を、前記空間変調素子の有効変調面の範囲に合わせて整形するビーム整形手段を備えた構成とすることが好ましい。
この場合、ビーム整形手段により、レーザ光を空間変調素子の有効変調面の範囲に合わせて整形するので、空間変調素子の有効変調面の利用効率を向上したり、有効変調面外に照射されるレーザ光を遮光して迷光の発生を防止したりすることができる。
【0009】
また、本発明のレーザ加工機では、前記面積分布型減光フィルタの透過率が、フィルタ面の中心から外縁部に向けて透過率が増大する分布を有する構成とすることが好ましい。
この場合、面積分布型減光フィルタのフィルタ面の中心を透過するレーザ光が、中心で最も減光され、光束の外縁側で減光する割合が減退するので、レーザ光が、ガウス分布などの中心で最大強度を備える場合、光束の中央部において光強度分布を均一化する方向に補正することができる。
【0010】
また、本発明の面積分布型減光フィルタの透過率が、フィルタ面の中心から外縁部に向けて透過率が増大する分布を有するレーザ加工機では、前記フィルタ面の中心から外縁部に向けて透過率が増大する分布が、前記中心の同心円上での透過率が略一定の分布である構成とすることが好ましい。
また、本発明のレーザ加工機では、前記面積分布型減光フィルタの透過率が、フィルタ面上で連続的に変化する構成とすることが好ましい。
いずれの場合も、光強度分布をより均一化することができる。
【0011】
また、本発明のレーザ加工機では、前記面積分布型減光フィルタの透過率が、フィルタ面に入射するレーザ光の光強度分布における光軸まわりの円周方向の光強度分布に応じて、前記フィルタ面の中心に対する円周方向に変化する分布を有する構成とすることが好ましい。
この場合、光軸まわりの円周方向に光強度分布を有するレーザ光であっても、それに応じて、面積分布型減光フィルタのフィルタ面の中心に対する円周方向の透過率を変化させることにより、レーザ光の光強度分布を光軸まわりの円周方向に容易に変更することができ、例えば均一化することができる。
【0012】
また、本発明のレーザ加工機では、前記面積分布型減光フィルタの透過率が、フィルタ面の中心を通る直交する2方向に沿う断面において、異なる分布特性を有する構成とすることが好ましい場合がある。
この場合、レーザ光の光強度分布を直交する2方向において、独立に変更することができる。したがって、例えば、半導体レーザのように、光軸に対して直交する2方向に異なる光強度分布を有するレーザ光の光強度分布を容易に変更することができ、例えば、同心円状または軸対称に均一化することができる。
【0013】
また、本発明のレーザ加工機では、前記面積分布型減光フィルタが、透過するレーザ光の光強度分布を半径rの範囲で略平坦な光強度分布となるように設定する場合において、前記面積分布型減光フィルタの透過前のレーザ光のピーク強度に対する1/eとなる半径をrとするとき、次式を満足する構成とすることが好ましい。
0.3≦r/r≦0.7 ・・・(1)
この場合、式(1)は、レーザ光の光強度分布がガウス分布であると仮定して、面積分布型減光フィルタにより光強度分布が断面略矩形状とされたレーザ光を形成する場合に、レーザ光の光利用効率が良好となる条件を表している。すなわち、面積分布型減光フィルタを設けることにより、被加工物に照射されるレーザ光には、光損失が発生するが、式(1)の条件下では、式(1)を満たさない場合に比べて、光利用効率を向上することができる。
【0014】
なお、式(1)の範囲はより狭いことが好ましい。例えば、上限値として0.6、下限値として0.4であればより好ましい。
例えば、式(1)に代えて、次式を満足すればさらに好ましい。
0.4≦r/r≦0.6 ・・・(1a)
【0015】
また、本発明のレーザ加工機では、前記面積分布型減光フィルタが、該面積分布型減光フィルタに入射するレーザ光の中心強度をIin、前記面積分布型減光フィルタを透過後のレーザ光の中心強度をIoutとするとき、次式を満足する構成とすることが好ましい。
0.4≦Iin/Iout≦0.8 ・・・(2)
この場合、式(2)は、レーザ光の光強度分布がガウス分布であると仮定して、面積分布型減光フィルタにより光強度分布が断面略矩形状とされたレーザ光を形成する場合に、レーザ光の光利用効率が良好となる条件を表している。すなわち、面積分布型減光フィルタを設けることにより、被加工物に照射されるレーザ光には、光損失が発生するが、式(2)の条件下では、式(2)を満たさない場合に比べて、光利用効率を向上することができる。
式(2)の条件は、レーザ光の光強度分布がガウス分布である場合には、式(1)を満足することと略同等である。
【0016】
なお、式(2)の範囲はより狭いことが好ましい。例えば、上限値として0.7、下限値として0.5であればより好ましい。
例えば、式(2)に代えて、次式を満足すればさらに好ましい。
0.5≦Iin/Iout≦0.7 ・・・(2a)
【0017】
これら、式(1)、(1a)、(2)、(2a)は、レーザ光の光強度分布が、ガウス分布から離れている場合でも、その離れ方が少なければ、光利用効率を向上するために有効な条件となる。
【0018】
また、本発明のレーザ加工機では、前記面積分布型減光フィルタが、前記レーザ光源と前記空間変調素子との間の光路中に配置される構成とすることが好ましい。
この場合、空間変調素子に照射されるレーザ光の光強度分布を面積分布型減光フィルタにより変更することができるので、空間変調素子による反射光の光強度を適宜に設定することができ、変調光の輝度ムラの発生などを抑えることができる。
【0019】
また、本発明のレーザ加工機では、前記面積分布型減光フィルタが、前記レーザ光源と前記ビーム整形手段との間の光路中に配置される構成とすることが好ましい。
この場合、面積分布型減光フィルタをレーザ光源とビーム整形手段との間の光路中に配置するので、レーザ光のビーム整形前の光強度分布に対して、面積分布型減光フィルタの透過率分布を設定すればよく、透過率分布の設定が簡素かつ容易となる。また、ビーム整形手段がレーザ光を拡大するようなビーム整形を行う場合は、面積分布型減光フィルタの透過面積を小さくすることができるので、面積分布型減光フィルタを安価に製造することができる。
【0020】
また、本発明のレーザ加工機では、前記面積分布型減光フィルタの適用波長範囲をΔλとするとき、次式を満足する構成とすることが好ましい。
5nm<Δλ<50nm ・・・(3)
この場合、面積分布型減光フィルタの適用波長範囲Δλを式(3)の範囲とするので、例えば白色光や式(3)の範囲に比べて広帯域の波長光を対象とするよりも、面積分布型減光フィルタを設計、製造することが容易となる。また、面積分布型減光フィルタの光学特性の精度を向上することができる。下限の5nmより小さい場合には、狭帯域になりすぎて製造難易度が非常に高くなる。
【0021】
なお、式(3)の範囲はより狭いことが好ましい。
例えば、式(3)に代えて、次式を満足すればより好ましい。
10nm<Δλ<20nm ・・・(3a)
【0022】
また、本発明のレーザ加工機では、前記レーザ光源と前記面積分布型減光フィルタとの間の光路中に、前記面積分布型減光フィルタに入射するレーザ光の波長帯域を制限する狭帯域フィルタを設けた構成とすることが好ましい。
この場合、狭帯域フィルタにより面積分布型減光フィルタに入射するレーザ光の波長帯域が狭められるので、面積分布型減光フィルタを簡素とすることができ、安価に製造することができる。
また、レーザ光に基本波、高調波など被加工物の加工に不要な波長帯域の光が混じっている場合に、それらが迷光になってゴーストやフレアを発生しないようにすることができる。
【0023】
また、本発明のレーザ加工機では、前記面積分布型減光フィルタが、フィルタ面に入射するレーザ光の光軸に対して偏心または傾いて配置された構成とすることが好ましい場合がある。
この場合、面積分布型減光フィルタをレーザ光の光軸に対して偏心または傾いて配置することにより、光軸に対して偏心していたり、光強度分布に偏りが生じてガウス分布からずれていたりする場合に、それらの専用の透過率分布を備えることなく、それらの光強度分布を簡易的に修正することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のレーザ加工機によれば、レーザ光の光路中に面積分布型減光フィルタを配置するという簡素な構成により被加工物上の光強度分布を変更して必要に応じた分布特性を形成することができるので、レーザ加工の品質を向上することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下では、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0026】
本発明の実施形態に係るレーザ加工機について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るレーザ加工機の概略構成を示す構成図である。図2は、本発明の実施形態に係るレーザ加工機に用いる面積分布型減光フィルタの波長透過特性について説明するためのグラフである。図3は、レーザ光のガウス分布型の光強度分布について説明するためのグラフである。図4は、本発明の実施形態に係る面積分布型減光フィルタを透過後のレーザ光の光強度分布の一例について説明するためのグラフである。図2の縦軸は透過率を示し、図3、4の縦軸は、面積分布型減光フィルタに入射するレーザ光の最大強度に対する輝度比を示す。また、図2〜4の横軸はレーザ光の中心からの半径方向位置を、面積分布型減光フィルタ透過前のレーザ光の1/eビーム径で規格化して表したものである。図5は、本発明の実施形態に係るレーザ加工機に用いる空間変調素子の一変調要素の外観を示す斜視外観図である。図6は、本発明の実施形態に係るレーザ加工機に用いる空間変調素子の各変調要素の配列を示す配列図である。
なお、図1に示すXYZ座標系は、以下で方向参照の便宜のために記載したものである。Z軸正方向が図示上方向、X軸正方向が図示右方向とされ、ZX平面が紙面に平行で、Y軸正方向が紙面奥側に向けられた右手系直角座標系である。
【0027】
本実施形態のリペア装置50(レーザ加工機)の概略構成は、XYステージ1、制御装置400、移動駆動制御部3、照明光源5、カメラ11、リペア対象抽出画像処理部12、リペア用光源14(レーザ光源)、面積分布型減光フィルタ14A、レーザビーム整形光学系14B(ビーム整形手段)、デジタルマイクロミラーデバイスユニット(以下、DMDユニットと略称する)16(空間変調素子)、レーザ形状制御部21(空間変調算出手段)、および基板搬送装置28からなる。
【0028】
XYステージ1上には、リペア対象である基板としてLCDのガラス基板2(被加工物)が載置されている。このようなリペア対象基板としては、半導体ウエハ、プリント基板、LCD用カラーフィルタ、パターンマスクなど微細なパターンが形成された適宜の基板を採用することができる。XYステージ1は、移動駆動制御部3の駆動制御によって図示XY方向に移動する。
【0029】
制御装置400は、画像処理部12、レーザ形状制御部21、基板搬送装置28、移動駆動制御部3、データベースサーバー401に接続されている。データベースサーバー401には、基板検査装置4が接続されている。
基板検査装置4は、先立つ工程において、ガラス基板2の検査を行うものである。その検査結果であるガラス基板2上の欠陥部の座標、大きさ、欠陥の種類などを含む検査結果データは、データベースサーバ−401に保存されている。
制御装置400は、データベースサーバー401にアクセスして、それらの検査結果データを呼び出し必要に応じて記憶する。そして、この検査結果データの各欠陥部の座標データに従ってXYステージ1を図示のXY方向に移動制御し、ガラス基板2上の各欠陥部をリペア位置L、すなわち後述するリペア用光源14から出射されるレーザ光rの照射位置に自動的に位置決めする。
また、移動駆動制御部3は、後述する支持台16bと接続され、支持台16bの位置、姿勢を微動制御する。
なお、制御装置400は、コンピュータで構成されていてもよく、画像処理部12、レーザ形状制御部21、レタッチ部23などがソフトウェアとして組み込まれていてもよい。
【0030】
照明光源5は、ガラス基板2を照明するための照明光を出射する。この照明光の光路上には、レンズ6を介してビームスプリッタ7が設けられている。このビームスプリッタ7の反射光路上にビームスプリッタ8を介して対物レンズ9が設けられている。
【0031】
これら対物レンズ9、各ビームスプリッタ8、7を通る光軸pの延長上には、レンズ10を介してCCD等からなるカメラ11が設けられている。このカメラ11は、レンズ10及び対物レンズ9を通してガラス基板2を撮像し、その画像信号を出力する。
対物レンズ9は、1つだけ図示しているが、図示しないレボルバに備えられた複数種類の倍率の対物レンズから構成されている。
【0032】
リペア対象抽出画像処理部12は、カメラ11から出力された画像信号を入力して欠陥画像データを取得し、この欠陥画像データと基準画像データとを比較してその差画像データからガラス基板2上の欠陥部を抽出し、2値化処理を行って欠陥形状画像データを作成する。また、欠陥形状画像データまたは差画像データから画像処理によって欠陥部の輪郭を求めて、輪郭内部を除去できるようにした欠陥形状データを作成することもできる。このリぺア対象抽出画像処理部12は、欠陥画像データ、欠陥抽出画像データまたは欠陥形状データをモニタ13に表示する。
【0033】
リペア用光源14は、ガラス基板2の欠陥部をリペアするためのレーザ光rを出射する。このリペア用光源14は、例えば、基本波長λ=1.064μmで第2、第3、第4高調波(それぞれ波長λ=532nm、λ=355nm、λ=266nm)が出射可能なYAGレーザ発振器を用いる。このため、レーザ光rは、いずれの波長でも、光軸を含む断面の光強度分布が略ガウス分布となっている。
レーザ光rとしては、例えば、波長λ=355nmを1ショットで出射してもよいし、リペア対象のガラス基板2の種類や工程などにより必要に応じて各波長光を使い分けるようにしてもよい。
【0034】
このリペア用光源14から出射されるレーザ光rの光路上には、面積分布型減光フィルタ14A、レーザビーム整形光学系14B、ミラー15がこの順に設けられ、それらを介して、レーザ光rがDMDユニット16に導かれる。
【0035】
面積分布型減光フィルタ14Aは、リペア用光源14から出射されるレーザ光rの光強度分布を変化させるための光学素子であり、レーザ光rを照射しても透過率特性が変化しないように、石英ガラス上に誘電体多層膜または金属膜のコーティングを施すことにより製作される。
本実施形態では、レーザ光rのガウス分布を、ビームの中心から所定の半径の範囲でビーム強度が平坦となり断面が略矩形状となる光強度分布、すなわちフラットトップな光強度分布とするように構成されている。
なお、以下では、完全にフラットトップな光強度分布を形成する例で説明するが、完全にフラットトップな分布でないとしても、ガウス分布の釣り鐘型の分布に比べて平坦化されていれば、輝度ムラが改善されるので、半径方向に多少輝度ムラを残した略平坦な分布であってもよい。
【0036】
面積分布型減光フィルタ14Aの適用波長範囲Δλは、使用するレーザ光rの波長すべてに対して、共通な透過率特性を有するようにしてもよいが、コーティングの薄膜設計を容易にするためには、レーザ光rの波長を含む狭い波長帯域とすることが好ましい。その場合、レーザ光rの波長を切り換えて加工するには、波長帯域ごとに複数の面積分布型減光フィルタ14Aを用意しておき必要に応じて切り換えればよい。
薄膜設計が容易となり、フィルタの光学特性の精度を向上しやすい適用波長範囲Δλとしては、上記の式(3)を満足することが好ましい。また、上記の式(3a)を満足することがさらに好ましい。
【0037】
面積分布型減光フィルタ14Aのレーザ光rの波長に対する透過率分布は、平面視では、同心円状に透過率が変化する2次元分布を有している。そして中心を通る任意断面における透過率分布が、例えば、図2に透過率曲線f0.5として示すように、中心位置で透過率が最低となり、半径が増大するとともに透過率が増大し、所定半径で透過率が1となるU字型の減光特性を形成し、その所定半径の外側で透過率を0とした透過率分布を有する。U字部分の形状は、対応するレーザ光rの光強度分布を略一定強度に減光する形状に設定される。
例えば、透過率曲線f0.5では、レーザ光rの光強度分布をガウス分布とした場合に、透過前のレーザ光rの1/eのビーム半径rとし、半径方向の位置rが、r=0.5・r以下の範囲で光強度が一定となるフラットトップな光強度分布を得るための透過率分布となっている。そして位置rにおけるガウス分布のピーク強度に対する輝度比に応じて、U字状の最低透過率が約0.6に設定されている。
透過率曲線f0.5のような透過率分布によれば、図3に示すガウス分布201を有するレーザ光rを減光して、図4に示すような、透過前のレーザ光rのピーク強度に対する輝度比が約0.6となるフラットトップな光強度分布を形成することができる。
【0038】
レーザビーム整形光学系14Bは、ビームエキスパンダ光学系を構成するレンズ14aと必要に応じて設けられた絞り14bとからなる。なお、図1は模式図のため、レンズ14aを単レンズのように描いているが、適宜のレンズ群により構成することができる(他のレンズも同様)。
【0039】
レンズ14aは、リペア用光源14から出射されるレーザ光rを光束径が拡大された略平行光とする。このため、面積分布型減光フィルタ14Aを透過する光束径が実際の照射範囲より小さく済むので、面積分布型減光フィルタ14Aをコンパクトに構成することができるため、製作が容易となる。
レンズ14aを透過した光路上にミラー15が配置され、それによりレーザ光rを偏向してDMDユニット16に一定角度で入射させる。レンズ14aとミラー15の光路中には、後述するリペア位置確認用光源25の照明光を反射して、レーザ光rと同一光路上に導くミラー24が挿脱可能に設けられている。
【0040】
図1に2点鎖線で示すように、レンズ14aとミラー24との間には、必要に応じてレーザ光rの断面形状を整形する絞り14bが設けることができる。絞り14bの開口形状は、例えば、DMDユニット16の有効変調面などの照射面の形状に合わせて矩形状とてもよい。この場合、不要なレーザ光rが照射されて迷光が発生するのを防止するようにしてもよい。
また、DMDユニット16の有効変調面と無関係に、レーザ光rの断面形状を変えるために適宜の開口形状を採用してもよい。
【0041】
DMDユニット16は、図5に示すようなデジタルマイクロミラーデバイス(以下、DMDと略称する)17を複数2次元に縦横方向に配列してなる(図6参照)。
各DMD17は、図5に示すように駆動用メモリーセル18の上部に微小ミラー19が、例えば角度約±10°と0°(水平)とに傾斜可能に設けられ、それらの傾斜状態を切り換えるデジタル制御が可能とされている。
【0042】
これらDMD17は、当該各微小ミラー19と駆動用メモリーセル18との間のギャップに働く電圧差によって起こる静電引力によって角度約±10°と0°に高速に切り換えられるもので、例えば特開2000−28937号公報に開示されたものが知られている。なお、この微小ミラー19は、半導体製造技術、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術などを用いて、外形の辺長が例えば数μm〜数十μmオーダの矩形状に形成されたマイクロミラーである。本実施形態では、例えば16μm角のマイクロミラーを採用している。
【0043】
DMDユニット16の基準反射面16aは、各DMD17の微小ミラー19の傾斜角度が0°とされたときの反射面であり、図1に示すように、レーザ光rの入射光軸に対する出射方向の角度が図示ZX平面内で反時計回りにθ(ただし、θ>0)となり(図示h方向)、各微小ミラー19がオン状態で角度+10°に傾いたときレーザ光rの出射方向が、図示h方向に対して入射方向と反対側に角度θ(ただし、θ>0)となるように、図示XY平面に対して傾斜角θに傾斜されている。
傾斜角θは、基準反射面16aに入射するレーザ光rがオン状態でレンズ20、ビームスプリッタ8の光軸に入射するように設定される。
このDMDユニット16は、レーザ光rの入射方向や出射方向に応じて基準反射面16aの傾斜角θが図示XY方向及び傾斜角θを可変するθ方向に調整可能な支持台16bに取り付けられている。支持台16bは、独立の駆動制御部を備えていてもよいが、本実施形態では移動駆動制御部3と接続され、移動駆動制御部3を介してXYθ方向に微動制御できるようになっている。そのような微動制御により、ガラス基板2の欠陥部にレーザ光rの断面形状を一致させることが可能となっている。
【0044】
出射角θで出射されるレーザ光rは、レンズ20を介してビームスプリッタ8に入射する。ここでレンズ20の焦点位置に基準反射面16aが配置されているため、対物レンズ9に達するまでは無限遠の光束となっている。
また、駆動用メモリーセル18をオフ状態にすれば、レーザ光rは、h方向に反射し、レンズ20を介してビームスプリッタ8に入射しない。
すなわち、レンズ20と対物レンズ9とは、DMDユニット16による変調光をガラス基板2に投影する投影光学系を構成している。
【0045】
なお、リペア用光源14から出射されたレーザ光rは、ミラー15で反射してDMDユニット16に入射角θで入射しているが、ミラー15を無くしてリペア用光源14から出射されたレーザ光rを直接DMDユニット16に入射させてもよい。
【0046】
リペア位置確認用光源25は、DMDユニット16にレーザ光rと略同一光束径の照明光を照射するための光源である。この照明光は、レンズ25aにより略平行光束とされ、必要に応じて不図示の絞りなどによりレーザ光rと略同一光束径とされ、リペア用光源14とミラー15との間の光路に挿入されたミラー24に入射され、レーザ光rと同一光路に導かれる。
なお、リペア用光源14、リペア位置確認用光源25の光を光ファイバーに入射させ、光ファイバー射出端を光軸上の所定位置に配置させる構成としてもよい。この場合は、レンズ14a、25aはコリメートレンズを採用する。
リペア位置確認用光源25により照明光がDMDユニット16に導かれると、オン状態になっている各微小ミラー19により反射され、ガラス基板2に、欠陥形状パターンと同じ画像パターンが投影される。
【0047】
このような構成の光学系において、ガラス基板2からビームスプリッタ8を介してカメラ11が配置されると共に、ガラス基板2からビームスプリッタ8を介してDMDユニット16が配置されており、これらカメラ11とDMDユニット16との配置位置は、ガラス基板2に対して共役な位置関係になっている。
【0048】
レーザ形状制御部21は、リぺア対象抽出画像処理部12により作成されたガラス基板2の各欠陥部の欠陥形状データや、制御装置400に記憶された欠陥検査データ(予め記憶された情報)などの情報から、ガラス基板2上でレーザ加工すべき領域の形状を算出する。そして、その加工形状に対応してDMDユニット16の各微小ミラー19の駆動用メモリーセル18をオン状態にし、他の領域に配置されている各微小ミラー19の駆動用メモリーセル18をオフ状態にする制御信号(変調信号)を算出し、DMDドライバ22に送出する。
【0049】
また、レーザ形状制御部21には、リぺア対象抽出画像処理部12により作成された欠陥形状画像データから抽出された欠陥部の領域をマニュアルで修正するレタッチ部23が接続されており、レタッチ部23による修正を反映した制御信号を算出することも可能となっている。
【0050】
DMDドライバ22は、レーザ形状制御部21から送出された制御信号に従ってDMDユニット16の各駆動用メモリーセル18をオン・オフ状態に駆動する。
【0051】
このような構成のリペア装置50によれば、データベース401や制御装置400に記憶された検査結果データの欠陥部の情報、あるいは、カメラ11により撮像した欠陥部の画像をリペア対象抽出画像処理部12やレタッチ部23によりマニュアル操作で修正された情報に基づいてガラス基板2をリペアすることができる。すなわち、レーザ形状制御部21により算出された制御信号をDMDドライバ22に送出し、DMDユニット16を駆動することにより、レーザ光rを空間変調し、レーザ光rの断面形状をガラス基板2上の欠陥部の形状に一致させて照射してリペア加工を行うことができる。
【0052】
その際、リペア装置50では、面積分布型減光フィルタ14Aの作用により、レーザ光rの光強度分布がフラットトップな光強度分布とされているため、DMDユニット16を均一に照射することができ、欠陥部に照射されるレーザ光rを略均一強度とすることができる。そのため、DMDユニット16によりどのような形状に変調されても、そのような形状や加工位置により加工ムラが生じることなく効率的なレーザ加工を行うことができるものである。
【0053】
本実施形態の面積分布型減光フィルタ14Aの透過率分布は、上記の透過率曲線f0.5のように、一定の光強度となる規格化半径が0.5に限定されるものではない。
図7は、本発明の実施形態に係るレーザ加工機に用いる種々の面積分布型減光フィルタの透過率分布について説明するためのグラフである。図8は、図7の各面積分布型減光フィルタを透過した後の各レーザ光の光強度分布について説明するためのグラフである。図7、8の横軸、縦軸は、それぞれ図2、4の横軸、縦軸と同様である。また、f0.5、p0.5は、図2、4と同じものを再載している。
【0054】
図7に示す透過率曲線f0.3、f0.4、f0.6、f0.7は、フラットトップとなる半径方向の位置rをrで規格化した規格化半径R=r/rが、それぞれ、0.3、0.4、0.6、0.7となる場合の透過率分布を示す。いずれも、レーザ光rの中心部に対してU字状に減光する特性を有するとともに、規格化半径より大きい位置で透過率を0とする分布を有する。
これらの透過率分布が形成された面積分布型減光フィルタ14Aにより、透過後のレーザ光rは、図8に光強度分布p0.3、p0.4、p0.6、p0.7として示すように、それぞれフラットトップ部の光強度が、約0.84、0.73、0.49、0.38となるような光強度分布に変換される。
【0055】
このような透過率曲線を選択する場合、例えばレーザ光rの照射面の面積に応じて、規格化半径Rが適切となるように選択してもよいが、透過前のレーザ光rに対する光エネルギーの利用効率の観点から選択すると、効率的なレーザ照射を行うことができて好都合である。後者の場合について、以下に説明する。
表1に、フラットトップ部の最大光強度比I、フラットトップ部の規格化半径Rと、光エネルギーの利用効率P/Pとの関係を示した。ここで、最大光強度比Iは、透過前のガウス分布のピーク強度をIin、透過後のフラットトップ部の光強度Ioutとしたときに、I=Iout/Iinで定義される。光エネルギーの利用効率は、光軸断面におけるガウス分布の面積Pに対する、面積分布型減光フィルタ14A透過後の光強度分布の面積Pの比で表した。ここで、P=I・2・Rである。
【0056】
【表1】

【0057】
表1によれば、光エネルギーの利用効率は、最大光強度Iが0.6、すなわち規格化半径Rが0.5のときに0.48となり、最大となっていることが分かる。
実際には、レーザ光rがガウス分布から外れた光強度分布になっていることもあるので、最適値はその近傍に分布する。そのため、光エネルギーの利用効率が、例えば0.38以上となるような光透過率分布を採用することが好ましい。
すなわち、I=Iout/Iinが、上記の式(2)を満足することが好ましい。また、同様の条件として、R=r/rが、上記の式(1)を満足するようにしてもよい。
光エネルギーの利用効率をより向上するには、I、Rの範囲はさらに狭いことが好ましく、上記の式(2a)、式(1a)を満足することが好ましい。
【0058】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図9(a)、(b)は、本発明の実施形態の変形例について説明するための面積分布型減光フィルタの光強度分布について説明するための模式的なグラフである。図9(a)、(b)の横軸はレーザ光rの光軸201aを中心とした半径方向の位置を示し、縦軸は光強度および透過率を示す。図10は、本発明の実施形態の変形例の動作について説明するための概念図である。
【0059】
本変形例は、面積分布型減光フィルタ14Aを移動可能に保持して、ガウス分布からやや外れた光強度分布になっているレーザ光rの場合に面積分布型減光フィルタ14Aを変えることなく簡易的に補正できるようにしたものである。
本変形例では、図9(a)に示すように、面積分布型減光フィルタ14Aとして、上記実施形態と同様、ガウス分布201をフラットトップ分布203に変換する透過率分布を形成したものを採用する。なお、図9は、模式図のため、光強度分布と透過率分布とをそれぞれの尺度で混在して描いている。
透過率曲線202のような透過率分布を有する面積分布型減光フィルタ14Aに入射するレーザ光rが光軸201aを中心とするガウス分布201を有する場合、透過光の光強度分布は、光軸201aを中心とするフラットトップ分布203に変換される。
【0060】
例えば、図9(b)に示すように、面積分布型減光フィルタ14Aに、ガウス分布から外れた図示左右方向に非対称な非対称分布204を有するレーザ光rが入射する場合を考える。例えば光強度分布の中心204aが、光軸201aから図示右側にずれているものとする。
この場合、図示左側は、ガウス分布201に対して光強度が減少している減光部204Lとなっており、図示右側は、同じく光強度が増大する増光部204Rとなっている。
このような変化を補正するためには、透過率曲線202に対して、減光部204L、増光部204Rの分だけ光強度分布を補正して、図示左上がりの透過率曲線205とすればよい。
ただし、非対称分布204が、ガウス分布201が多少歪んだような分布であれば、減光部204L、増光部204Rは、略左右対称に発生する。そのため、透過率曲線205として、透過率曲線202を図示の紙面鉛直軸を中心に時計回りに回転させたものを採用すれば、近似的な補正を行うことができる。
【0061】
このことを利用して、本変形例では、レーザ光rの光強度分布の偏りに応じて、面積分布型減光フィルタ14Aを光軸に対して偏心または傾いて配置する。面積分布型減光フィルタ14Aの保持手段は、手動または自動のステージ機構などを採用することができる。
例えば、図10に示すように、図9(b)と同様な光強度分布の偏りを有するレーザ光rに対して、面積分布型減光フィルタ14Aを図示の紙面鉛直軸対して時計回りに角度φだけ回転し、光軸201aに対して傾けて配置する。
この場合、レーザ光rは、面積分布型減光フィルタ14A内を図示右下側から左上方向の斜め方向に進むので、面積分布型減光フィルタ14Aは、傾斜させない場合と異なり、左右非対称な透過率分布を有するフィルタと等価となる。
その結果、レーザ光rは、図10に示すようにフラットトップ分布203を有する光束に変換される。
非対称分布204が変化した場合には、角度φの大きさ、方向を、非対称分布204の偏りの大きさ、方向によって適宜調整することが可能となる。また、必要に応じて、面積分布型減光フィルタ14Aを光軸201aに対して偏心させてもよい。これらは、非対称分布204が予め知られていれば、それに応じて変化させてもよいし、加工に先立って、加工が進行しない程度の低光量で、ガラス基板2にレーザ光を照射して、カメラ11によりその光量分布を観察して調整してもよい。
【0062】
なお、上記の説明では、ビーム整形手段として、ビームエキスパンダ光学系を備える例で説明したが、レーザ光の照射範囲が狭くてもよい場合や、レーザ光の光量に余裕がある場合には、ビームエキスパンダ光学系を設けなくてもよい。
その場合、ビーム整形手段として、絞りのみでレーザ光の照射範囲やレーザ光の光束の形状を調整してもよい。
【0063】
また、上記の説明では、面積分布型減光フィルタの透過率分布として、半径方向の所定位置で透過率を1から0に変化する不連続分布を形成し、その半径方向の所定位置を変えることにより、光利用効率の高いフラットトップな光強度分布を形成する例で説明した。
ただし、レーザ光の光量に余裕がある場合には、面積分布型減光フィルタによりレーザ光の瞳内の広い範囲にフラットトップな光強度分布を形成し、その光路上にビーム整形手段である適宜径の絞りを設けて、フラットトップな光強度分布の光束径を調整するようにしてもよい。この場合の絞りは、面積分布型減光フィルタと空間変調素子との間の光路上であれば、どこに配置されていてもよい。
このような構成の場合、絞りにより遮光される領域では、どのような光強度分布であってもよい。そこで、例えば、絞りにより遮光される半径方向の所定位置より外側で、透過率を1として、周辺部の光強度が入射するレーザ光の光強度分布に沿って漸減するような面積分布型減光フィルタを形成してもよい。
この面積分布型減光フィルタは、連続分布を有するフィルタの例となっている。このような面積分布型減光フィルタは、不連続分布を形成する場合のように、不連続部の位置を高精度に設ける必要がないので、製作が容易となる。
また、この面積分布型減光フィルタは、透過率がフィルタ面の中心から外縁部に向けて透過率が増大する分布を有するフィルタの例にもなっている。
【0064】
また、上記の説明では、レーザ光がガウス分布またはガウス分布に偏りを持たせたような非対称分布を有する例で説明したが、レーザ光の光強度分布はこれらに限定されるものではない。
レーザ光の光強度分布が分かっていれば、それに対応した透過率分布を有する面積分布型減光フィルタを用いることにより所望のフラットトップな光強度分布を形成することができる。
例えば、レーザ光の光軸まわりの円周方向に光強度分布が変化する場合に応じて、フィルタ面の中心に対する円周方向の透過率分布を変化させた構成としてもよい。
また、例えば、半導体レーザの場合には、半導体上に形成されたレーザの構造やへき界面の形状などによって、レーザ光の光強度分布が活性層に平行な方向と直交する方向とで、光強度分布が異なる場合がある。そのため、そのような光強度分布の変化に応じて、フィルタ面の中心を通る直交する2方向に沿う断面において異なる透過率分布を備えるようにしてもよい。
また、例えば、レーザ光がレーザ光源の内部構造などに依存する特異的な光強度分布を有する場合に、その特異性を解消するような透過率分布を備えるようにしてもよい。
【0065】
また、上記の説明では、面積分布型減光フィルタの前側に、帯域制限フィルタを設けていないが、レーザ加工に用いる波長のみを透過させる狭帯域フィルタをレーザ光源と面積分布型減光フィルタとの間に設けてもよい。
例えば、YAGレーザの波長532nmを用いる場合、基本波である波長1.06μmの光が若干放出されていることがある。この光は、加工に用いる光とは異なる振る舞いを示し、いわゆる迷光となって悪影響を与えることがある。狭帯域フィルタを設けることにより、レーザ加工に用いる波長光以外を透過しないため、このような迷光によるゴースト、フレア等の悪影響を除去することが可能となる。
また、面積分布型減光フィルタに、非加工光を遮光するための透過率分布を形成しなくてよいので、面積分布型減光フィルタの構成をより簡素にすることができる。
【0066】
また、上記の説明では、面積分布型減光フィルタの透過光がフラットトップな光強度分布を有する例で説明したが、面積分布型減光フィルタの透過率分布は、フラットトップな光強度分布と異なる光強度分布が得られるようにしてもよい。
すなわち、面積分布型減光フィルタ透過後の光強度分布は、面積分布型減光フィルタと被加工物との間の光学系の透過率分布から逆補正することにより、被加工物上で均一な光強度分布を有するように設定してもよい。例えば、被加工物までの光学系において、外縁部で透過率が悪化する場合には、レーザ光の外縁部の輝度が高くなるような透過率分布とすることができる。
【0067】
また、上記の説明では、面積分布型減光フィルタをレーザ光源とビーム整形手段との間の光路上に配置した例で説明したが、レーザ光源と被加工物との間の光路上であれば、どこに配置されていてもよい。
ただし、光軸方向の配置精度が光強度分布に影響しないように、平行光の光路上に配置されることが好ましい。
面積分布型減光フィルタ14Aを好適に配置できる位置の例としては、ビーム整形手段と空間変調素子との間の光路に設けることができる。すなわち、図1において、2点鎖線で示したように、レーザビーム整形光学系14Bと、ミラー15との間の光路上の位置を挙げることができる。
【0068】
また、上記の説明では、空間変調素子として、DMDを用いた例で説明したが、レーザ光を加工情報に応じて空間変調することができれば、DMDのような反射型空間変調素子に限定されない。例えば、レーザ光が透過する微小な開口をフリップによりオン・オフ制御するような透過型空間変調素子であってもよい。
【0069】
また、上記の説明では、レーザ加工機の例として、レーザリペア加工を行うリペア装置の例で説明したが、レーザ光の光エネルギー分布を可変することにより加工精度や加工効率などを向上できるものであれば、どのようなレーザ加工を行う場合にも適用することができる。また、レーザ加工機は、空間変調素子を備えていてもよいし備えていなくてもよい。
例えば、レーザ光を被加工物に照射して、切断したり、凹凸を形成したりするレーザ加工機に好適に用いることができる。この場合、例えばフラットトップな光強度分布を有するレーザ光により、光エネルギーが所定のビーム径内に集中されたレーザ光で加工を行うことができるので、加工領域外にレーザ光が照射されないから、加工精度を向上することができる。
【0070】
また、上記実施形態、変形例に説明した各構成要素は、技術的に可能な組合せであれば、本発明の技術的思想の範囲内において適宜組み合わせて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザ加工機の概略構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るレーザ加工機に用いる面積分布型減光フィルタの波長透過特性について説明するためのグラフである。
【図3】レーザ光のガウス分布型の光強度分布について説明するためのグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係る面積分布型減光フィルタを透過後のレーザ光の光強度分布の一例について説明するためのグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係るレーザ加工機に用いる空間変調素子の一変調要素の外観を示す斜視外観図である。
【図6】本発明の実施形態に係るレーザ加工機に用いる空間変調素子の各変調要素の配列を示す配列図である。
【図7】本発明の実施形態に係るレーザ加工機に用いる種々の面積分布型減光フィルタの透過率分布について説明するためのグラフである。
【図8】図7の各面積分布型減光フィルタを透過した後の各レーザ光の光強度分布について説明するためのグラフである。
【図9】本発明の実施形態の変形例について説明するための面積分布型減光フィルタの光強度分布について説明するための模式的なグラフである。
【図10】本発明の実施形態の変形例の動作について説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0072】
2 ガラス基板(被加工物)
9 対物レンズ(投影光学系)
20 レンズ(投影光学系)
14 リペア用光源(レーザ光源)
14A 面積分布型減光フィルタ
14B レーザビーム整形光学系(ビーム整形手段)
14a レンズ
14b 絞り
16 DMDユニット(空間変調素子)
16a 基準反射面
19 微小ミラー
21 レーザ形状制御部(空間変調算出手段)
22 DMDドライバ
23 レタッチ部
50 リペア装置(レーザ加工機)
201 ガウス分布
201a 光軸
202、205 透過率曲線
203 フラットトップ分布
204 非対称分布
400 制御装置
0.3、f0.4、f0.5、f0.6、f0.7 透過率曲線
r レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工するためのレーザ光を発生するレーザ光源と、
該レーザ光源で発生されたレーザ光を前記被加工物上に導く投影光学系とを備え、
前記レーザ光源と前記被加工物との間の光路中に、前記レーザ光の瞳内の光強度分布を変化させる面積分布型減光フィルタを設けたことを特徴とするレーザ加工機。
【請求項2】
前記レーザ光源と前記投影光学系との間の光路中に、前記レーザ光源で発生されたレーザ光を前記被加工物の加工情報に応じて空間変調する空間変調素子を備え、
該空間変調素子により変調されたレーザ光による画像が、前記投影光学系により前記被加工物上に投影されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工機。
【請求項3】
予め記憶された情報を基に前記被加工物の加工形状を決定し、前記空間変調素子を変調駆動する変調信号を算出する空間変調算出手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記レーザ光源と前記空間変調素子との間の光路中に、前記レーザ光源から照射されるレーザ光のビーム形状を、前記空間変調素子の有効変調面の範囲に合わせて整形するビーム整形手段を備えたことを特徴とする請求項2または3に記載のレーザ加工機。
【請求項5】
前記面積分布型減光フィルタの透過率が、フィルタ面の中心から外縁部に向けて透過率が増大する分布を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ加工機。
【請求項6】
前記フィルタ面の中心から外縁部に向けて透過率が増大する分布が、前記中心の同心円上での透過率が略一定の分布であることを特徴とする請求項5に記載のレーザ加工機。
【請求項7】
前記面積分布型減光フィルタの透過率が、フィルタ面上で連続的に変化することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のレーザ加工機。
【請求項8】
前記面積分布型減光フィルタの透過率が、フィルタ面に入射するレーザ光の光強度分布における光軸まわりの円周方向の光強度分布に応じて、前記フィルタ面の中心に対する円周方向に変化する分布を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のレーザ加工機。
【請求項9】
前記面積分布型減光フィルタの透過率が、フィルタ面の中心を通る直交する2方向に沿う断面において、異なる分布特性を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のレーザ加工機。
【請求項10】
前記面積分布型減光フィルタが、透過するレーザ光の光強度分布を半径rの範囲で略平坦な光強度分布となるように設定する場合において、
前記面積分布型減光フィルタの透過前のレーザ光のピーク強度に対する1/eとなる半径をrとするとき、
次式を満足するようにしたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のレーザ加工機。
0.3≦r/r≦0.7 ・・・(1)
【請求項11】
前記面積分布型減光フィルタが、該面積分布型減光フィルタに入射するレーザ光の中心強度をIin、前記面積分布型減光フィルタを透過後のレーザ光の中心強度をIoutとするとき、次式を満足することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のレーザ加工機。
0.4≦Iin/Iout≦0.8 ・・・(2)
【請求項12】
前記面積分布型減光フィルタが、前記レーザ光源と前記空間変調素子との間の光路中に配置されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のレーザ加工機。
【請求項13】
前記面積分布型減光フィルタが、前記レーザ光源と前記ビーム整形手段との間の光路中に配置されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のレーザ加工機。
【請求項14】
前記面積分布型減光フィルタの適用波長範囲をΔλとするとき、次式を満足することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のレーザ加工機。
5nm<Δλ<50nm ・・・(3)
【請求項15】
前記レーザ光源と前記面積分布型減光フィルタとの間の光路中に、前記面積分布型減光フィルタに入射するレーザ光の波長帯域を制限する狭帯域フィルタを設けたことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のレーザ加工機。
【請求項16】
前記面積分布型減光フィルタが、フィルタ面に入射するレーザ光の光軸に対して偏心または傾いて配置されたことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−29959(P2007−29959A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212839(P2005−212839)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】